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  • 特開-速乾性に優れた編地 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022108956
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】速乾性に優れた編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/14 20060101AFI20220720BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20220720BHJP
   D06M 15/39 20060101ALI20220720BHJP
   D02G 3/26 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
D04B1/14
D06M15/643
D06M15/39
D02G3/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004207
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】浜口 雄二
(72)【発明者】
【氏名】河端 秀樹
【テーマコード(参考)】
4L002
4L033
4L036
【Fターム(参考)】
4L002AA02
4L002AB01
4L002AC00
4L002AC07
4L002BA00
4L002BA01
4L002BA02
4L002BA04
4L002DA03
4L002EA00
4L002EA01
4L002EA03
4L002FA01
4L033AA02
4L033AB04
4L033AC07
4L033AC15
4L033CA33
4L033CA59
4L036MA09
4L036MA35
4L036PA21
4L036PA31
4L036UA06
(57)【要約】
【課題】生地破裂強力の低下や、斜行、風合い硬化等の問題を発生させずに、吸水性と速乾性に優れた綿素材を用いた編地を提供する。
【解決手段】ASTM D4605-86に準拠したマイクロネアリーティング値が3.7~6.0である木綿からなるリング糸を85%以上含む編物であって、編地の斜行度が3.0%以下であり、脱水後水分率が40%以下であることを特徴とする。編地のコース密度とウエール密度の積が1000~1800であり、編地が、ウエルトを含まない一層の編組織からなり、リング糸の撚係数が2.8~3.6であり、編組織が天竺、カノコ、又はフライスであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D4605-86に準拠したマイクロネアリーティング値が3.7~6.0である木綿からなるリング糸を85%以上含む編物であって、編地の斜行度が3.0%以下であり、脱水後水分率が40%以下であることを特徴とする編地。
【請求項2】
編地のコース密度とウエール密度の積が1000~1800であり、編地が、ウエルトを含まない一層の編組織からなることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項3】
リング糸の撚係数が2.8~3.6であることを特徴とする請求項1又は2に記載の編地。
【請求項4】
編組織が天竺、カノコ、又はフライスから選ばれることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の編地。
【請求項5】
脱水後に水分率が10%に至る時間が45~70分であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の編地。
【請求項6】
保温性が18~25であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の編地。
【請求項7】
編地が架橋剤で形態安定加工を施されており、編地の結合ホルムアルデヒド量が0.1~0.8%owfの範囲であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の編地。
【請求項8】
ASTM D4605-86に準拠したマイクロネアリーティング値が3.7~6.0である木綿からなるリング糸を85%以上含む編物を28~46Gのシングル編機で製編し、グリオキザール樹脂で架橋処理を行った後、更に吸水シリコーン樹脂を付与して、ウェール密度を28~45個/inchに仕上げることを含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の編地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥にかかる時間が短い速乾性を有する木綿の編地及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然繊維である綿を用いた織編物は、吸水性や吸湿性が高く、風合いも良いので、各種衣料品に多く用いられている。しかし、綿は、水分を取り込むと膨潤し、乾燥に非常に長い時間がかかることが欠点である。
【0003】
従って、綿素材を用いた肌着用生地では、吸水性と速乾性の両方に優れる性能が特に望まれていた。綿素材生地に速乾性を付与する方法としては、例えば特許文献1では、綿100%を含むセルロース系繊維にシルケット加工を施した後、グリオキザール系樹脂を付与する方法が提案されている。この方法は、生地にグリオキザール系樹脂を付与することにより、綿繊維の非結晶領域の分子同士を架橋させており、架橋された綿繊維が非結晶領域の水膨潤が抑制されるため、製編または製織した生地は速乾性に優れている。しかし、この方法だけで生地の速乾性を実現するためには、グリオキザール系樹脂などの反応樹脂の濃度を高くする必要があり、そうすると生地の破裂強力が著しく低下してしまう問題があった。
【0004】
また、特許文献2では、優れた風合いを有し、吸水性及び速乾性を兼ね備えた吸水速乾性編地として、綿からなる芯部繊維と、綿からなる鞘部繊維を有する複重層紡績糸で構成されたものが提案されており、この複重層紡績糸は、撚係数が3.0~5.5である芯部繊維を鞘部繊維により撚係数2.5~4.0で同方向へ加撚したものであり、編地全体に対する綿の混率が85重量%以上であることを特徴とする。しかし、この編地は、芯部が非常に強い強撚糸となっているので、風合いが非常に硬く、また糸の撚り戻り力が強いので、編地がひどく斜行してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-207672号公報
【特許文献2】特開2015-67927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、綿素材の生地に速乾性を付与することによる生地破裂強力の低下や、斜行、風合い硬化等の問題を発生させずに、吸水性と速乾性に優れ、さらに風合いの良い、綿素材を用いた編地及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の範囲のマイクロネアリーティング値を持つ木綿からなるリング糸を使用し、必要により特定の撚係数、編組織、形態安定加工などを適宜採用することにより、従来技術の問題を克服しながら、吸水性と速乾性に優れた編地を提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(8)の構成を有するものである。
(1)ASTM D4605-86に準拠したマイクロネアリーティング値が3.7~6.0である木綿からなるリング糸を85%以上含む編物であって、編地の斜行度が3.0%以下であり、脱水後水分率が40%以下であることを特徴とする編地。
(2)編地のコース密度とウエール密度の積が1000~1800であり、編地が、ウエルトを含まない一層の編組織からなることを特徴とする(1)に記載の編地。
(3)リング糸の撚係数が2.8~3.6であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の編地。
(4)編組織が天竺、カノコ、又はフライスから選ばれることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の編地。
(5)脱水後に水分率が10%に至る時間が45~70分であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の編地。
(6)保温性が18~25であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の編地。
(7)編地が架橋剤で形態安定加工を施されており、編地の結合ホルムアルデヒド量が0.1~0.8%owfの範囲であることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の編地。
(8)ASTM D4605-86に準拠したマイクロネアリーティング値が3.7~6.0である木綿からなるリング糸を85%以上含む編物を28~46Gのシングル編機で製編し、グリオキザール樹脂で架橋処理を行った後、更に吸水シリコーン樹脂を付与して、ウェール密度を28~45個/inchに仕上げることを含むことを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の編地の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木綿からなる編地は、吸水性と速乾性に優れていながら、斜行が起こり難く、風合い、保温性にも優れている。このため本発明の編地は、汗をかいたときに乾燥しやすく、また冬でも乾燥が早く、快適で温かいため、インナー衣料、アウトドア衣料、スポーツ衣料、カジュアル衣料などの生地に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、結合ホルムアルデヒド量の測定に用いた装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えることができる。
【0012】
本発明の編地のリング糸に用いる木綿原料は、ASTM D4605-86に準拠したマイクロネアリーティング値が3.7~6.0、好ましくは3.9~5.8の繊維直径が大きな繊維であることが必要である。マイクロネアリーディング値がこの範囲にあることで、洗濯脱水性が高く、また速乾性が得られやすくなる。マイクロネアリーディング値が上記範囲未満であると、繊維が吸水したときに水分を保持しやすくなり、脱水性が悪くなったり、乾燥速度が遅くなりやすい。マイクロネアリーディングが上記範囲を超えると、繊維が硬くなりすぎて風合いが悪くなり、本発明の衣料用途に使い難くなってくる。
【0013】
本発明の編物は、吸湿性が求められる肌着やシャツなどに好適に使用されるため、綿紡績糸を主に用いることが好ましい。ここで、綿紡績糸とは、木綿を使用してリング紡績により得られるリング糸である。綿紡績糸の使用量は、編物の質量に対して、85%以上であり、90%以上であることが好ましい。使用量を前記数値以上とすることで、吸汗性や吸湿姓の高い編地を得ることができる。
【0014】
本発明の編地には、上記の綿紡績糸以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の繊維を混用してもよい。混用できる繊維としては、麻、羊毛、絹などの天然繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリルなどの合成繊維が挙げられる。しかし、本発明の効果を損なわないために混用するのは、編地質量の15%以下である。
【0015】
本発明の編物に用いる綿紡績糸の撚係数は、2.8~3.6が好ましく、2.9~3.5がより好ましい。綿紡績糸の撚係数を前記範囲とすることで、編物の洗濯脱水性を向上させることができる。洗濯脱水性が高まる理由は、紡績糸の撚りが少ないことで個々の繊維の捻じれが少なく、直線性が高まり、繊維同士の平行度が上がるため、脱水したときに繊維間の水が抜けやすいためである。また、繊維の捻じれが少ないことで編地の斜行を抑制できる利点もある。一方、撚係数が上記範囲未満であると、紡績糸の強力が低くなり、これを用いた編物は速乾性が付与された後、その破裂強力が著しく低くなり、実用性が低下しやすい。また、撚係数が上記範囲より大きい場合は、編物の強力は高まるが、原糸の撚りトルクが強くなるため、これを用いたシングル編物は、編目の斜行が強くなり実用性が低下しやすい。
【0016】
前記綿紡績糸の繊維構成本数は、50本以上150本以下であることが好ましく、より好ましくは60本以上140本以下である。繊維構成本数を前記範囲とすることで、編物の脱水後の水分率を下げる効果が期待できる。一方、繊維構成本数が上記範囲未満である場合、紡績糸強力が低く、その結果これを用いた編物の破裂強力が低くなるため実用性が低下しやすい。また、上記範囲より大きくなると、太番手になるか、マイクロネアリーティング値が低くなるので、洗濯脱水性や乾燥速度が低下しやすい。
【0017】
前記綿紡績糸の番手は、特に限定されるものではないが、英式綿番手で20以上、さらには25以上であることが好ましく、一方、60以下、さらには50以下であることが好ましい。綿紡績糸の番手を前記範囲とすることで、破裂強力が良く、速乾性の優れた編物を得ることができる。一方、綿紡績糸の番手が上記範囲未満である場合は、速乾性を出しにくい。また、上記範囲を超えると、破裂強力が低下し、実用性能を下回る可能性がある。
【0018】
本発明の編地は、針密度が28~46Gの編機で製編することが好ましい。この範囲の編ゲージで編みたてると、仕上がった編地の密度が好ましい範囲にしやすくなる。編地の密度は、編組織、紡績糸等を勘案して適宜設定するが、本発明では、仕上がった編地のコース密度は35~60個/inchであることが好ましい。また、仕上がった編地のウェール密度は28~45個/inchであることが好ましい。本発明の編地が速乾性を得るためには、コース密度とウェール密度の積が1000~1800の編地であることが好ましい。より好ましくは1100~1700である。コース密度とウェール密度の積を上記範囲とすることで、脱水後の水分率を適正な範囲に留めやすくなる。
【0019】
本発明の編物は、単層のニット構造を有することが好ましい。編地の編組織は、シリンダのみまたはダイヤルのみで編成されるシングル丸編みからなる組織か、リブ出合いのフライス組織で編まれたものであることが好ましい。フライスは、シリンダ針及びダイヤル針の両方を用いるが、表の編ループの裏側には裏の組織はなく、また裏の編ループの表側には表の組織がなく、また糸は表裏を交互に繰り返すため、実質的に一層の編地とみなせる。本発明の編地は、洗濯脱水性を高めるために、ウエルトを含まない一層の編組織とすることが好ましい。これは、ニットのみでできた天竺や、ニットとタックを交互に編まれるカノコ等の組織が好ましい。編組織としては、天竺、カノコ、サッカー、片畦編、両畦編、フライス、2×1、2×2、3×3等のゴム編などが挙げられるが、天竺、カノコ、又はフライスが好ましい。
【0020】
本発明の編地の目付は、100~200g/mであることが好ましく、120~190g/mであることがより好ましい。目付を上記範囲とすることにより、スポーツシャツなどに好適な編地にすることができる。さらに、仕上がった編地の厚みは、0.3~1.2mmであることが好ましく、0.4~1.0mmであることがより好ましい。厚みを前記範囲とすることにより、速乾性を良くすることができる。
【0021】
上述した本発明の編地は、前述のマイクロネアリーティング値が3.7~6.0である木綿原料を用いて、(i)リング精紡機を用いて特定のリング糸を製造し、(ii)このリング糸を85%以上用いて28~46Gのシングル編機で編地を製編し、(iii)得られた編地に、通常の精練・漂白・染色に加えて、グリオキザール樹脂での架橋処理、吸水シリコーン樹脂の付与などの機能加工を施し、ウェール密度を28~45個/inchに仕上げることによって製造されることができる。
【0022】
前記工程(i)は、リング糸を作製する工程であり、リング精紡機を用いることにより、撚係数が2.8~3.6で繊維構成本数が80~250本のリング糸を作製することが好ましい。具体的には、一般的な紡績の前紡工程(混打綿-カード(梳綿)-コーミング-練条-粗紡)を経て篠巻きを作成し、リング精紡機を用いて作製することができる。また、紡績単糸だけでなく、紡績糸中の繊維の平行度を高めるために精紡工程に2本の篠巻きを供給・ドラフトした後合撚する精紡交撚糸や、2本の紡績糸を単糸の下撚と逆方向に上撚する双糸とすることも好ましい。
【0023】
前記の紡績工程をさらに説明すると、まず、圧縮梱包して輸送されてきた原綿を混打綿機を使って解きほぐすと同時に、原綿に付着している葉かすや種子片、砂塵などのゴミを除去してシート状の「ラップ」にする。混打綿工程を経て出来上がったラップを、カード(梳綿)機を用いてくしけずって繊維を1本1本に分離し平行に引き揃え、小さいゴミや短い繊維を取り除く。残った長い繊維をある程度平行状態に揃え、集束し、紐状の「カード・スライバー」にする。カード・スライバー18~24本を並列して供給し、1枚のシート状にして巻き取り、「スライバー・ラップ」にする。
【0024】
コーミング工程では、カード・スライバーをくしけずり、混打綿・カード工程では十分に除去できなかった短い繊維やゴミを取り除き、繊維を平行に引き揃えることによって、均斉なコーマ・スライバーを作る。このコーミング工程を通った精紡糸は、コーマ糸と呼ばれている。本発明で使用する紡績糸は、繊維がより平行に引き揃えられているコーマ糸であることが好ましい。
【0025】
次の練条は、コーミング工程を経て出来上がったスライバーを、練条機を用いて6本または8本を合わせ、6倍ないし8倍に引き伸ばしながら繊維を真っ直ぐにして太さのムラをなくす。この工程で紐状のスライバーにする。粗紡工程では、粗紡機を用いて練条スライバーをさらに引き伸ばすと共に、ここで初めて“撚り”をかけてボビンに「粗糸」を巻き取る。紡績工程では、精紡機を使って粗糸をさらに引き伸ばし、所定の太さに細くし、撚りをかけて最終製品である糸をボビンに巻き取る。この精紡機にリング精紡機を用いて作られた精紡糸をリング糸とも呼ぶが、本発明の編地はこのリング糸を用いる。この後、ボビンに巻かれた糸を用途に応じて、チーズやコーンの形態に巻き返したり、ワックスを付与して精紡糸が完成する。
【0026】
前記工程(iii)では、工程(ii)で得られた編地を、一般的な綿編物の精練・漂白等の条件にて加工する。この工程の途中または、後工程にて編地にマーセライズ加工を施すことが好ましい。この加工により、木綿の吸水性が高まるとともに、繊維の捻じれが減少して、繊維同士の平行性が向上しやすくなる。また、編地に形態安定加工したときの破裂強力の低下を抑制することもできる。
【0027】
本発明の編地は、前述のようにマーセライズ加工を行うことが好ましいが、必要以上に強いマーセライズ化を行うと乾燥性が逆に低下しやすくなる。木綿のマーセライズ化の程度は、バリウム活性値で測定することが可能である。バリウム活性値は80以上、さらには100以上、さらには110以上であることが好ましい。また、150以下、さらには140以下、さらには130以下であることが好ましい。編地のバリウム活性値を前記範囲とすることで、編地に速乾性を付与することによる破裂強力の低下を抑制することができる。一方、バリウム活性値が上記範囲未満である場合は、速乾性や染色濃度が高まりにくい。また、上記範囲より大きい場合は、マーセル化が強すぎて編地が硬くなったり、速乾性も上がり難くなる場合がある。
【0028】
前記マーセライズ加工では、丸編みを開反する前に加工する丸シルケット加工機でも、開反してから拡布状で加工するオープン・シルケット加工機等を用いても良い。編地は、苛性ソーダ溶液に浸漬した後、中和・水洗・脱水される。苛性ソーダ溶液の濃度は5°Be(ボーメー度)以上、さらには10°Be以上であることが好ましく、25°Be以下、さらには20°Be以下であることが好ましい。苛性ソーダ溶液の濃度を前記範囲とすることにより、マーセル化の効果を得ることができる。一方、苛性ソーダ溶液の濃度が上記範囲より少ないとマーセル化の効果が少なく、目的とする速乾性が低下しやすくなる。また、苛性ソーダ溶液の濃度が上記範囲を超えると、木綿の膨潤性が高くなりすぎることで速乾性が低くなる場合がある。また、前記シルケット加工の温度は、常温でも低温(冷シル)でも高温でも行うことができるが、温度が低くなるほど、風合いは硬くなりやすいので、常温または高温で行う方が好ましい。なお、実施状況から述べると、濃度10°Beの苛性ソーダでシルケット加工を行う場合、編地のバリウム活性値は110~120程度となり、20°Beで加工を行う場合、バリウム活性値は120~135程度となる。
【0029】
なお、編地の精練・漂白等の処理は一般的な条件で、前記シルケット加工を施す前又は施した後に行えば良く、染色、乾燥などは前記シルケット加工を施した後に一般的な方法で適宜行えば良い。
【0030】
また、本発明の編地は、形態安定加工を施すことが好ましい。この形態安定加工は、木綿を構成するセルロース分子同士を架橋結合させる加工であり、洗濯後のシワを起こり難くしたり、寸法安定性を向上させるが、綿の膨潤を抑えることから、速乾性を高める効果もある。この形態安定加工は、セルロース繊維のヒドロキシル基と反応することができるグリオキザール樹脂などの架橋剤を利用することが好ましい。
【0031】
また、架橋剤の使用量は、固形分量で0.5~5.0%owf(on the weight of fiber)であることが好ましい。架橋剤の使用量を前記範囲とすることで、本発明の目的とする速乾性を容易に実現することができる。一方、架橋剤の使用量が上記範囲より少ないと、目的とする速乾性を得にくくなる。また、使用量が上記範囲より多くなると、架橋数が多すぎて繊維の柔軟性が落ち、その結果繊維強度が著しく弱くなり、編地の破裂強力が著しく低下しやすい。
【0032】
加工方法は、パディングや含浸によりこれらの化合物を繊維に付着させて、乾熱又は湿熱により加熱してセルロースを架橋させる。尚、この形態安定加工の強さは、編地の結合ホルムアルデヒド量を測定することで判断できる。結合ホルムアルデヒド量は、0.1%owf以上、さらには0.2%owf以上であることが好ましく、0.8%owf以下、さらには0.65%owf以下であることが好ましい。この結合ホルムアルデヒド量とは、編地に架橋剤で架橋処理を施した後の綿繊維の架橋結合数を示す指標である。編地の結合ホルムアルデヒド量を前記範囲とすることで、編地に速乾性を付与することができる。一方、結合ホルムアルデヒド量が上記範囲未満の場合は、綿繊維の架橋結合数が少ないため、吸水時の水による膨潤を抑制することが不十分で、目標とする速乾性を実現しにくい。また、上記範囲より大きい場合は、架橋数が多すぎて繊維の柔軟性が落ち、その結果繊維強度が著しく弱くなり、編地の破裂強力が著しく低下しやすい。
【0033】
一般的に木綿を架橋処理すると繊維強度は低くなるが、衣料用には実用最低限度の強度は必要である。本発明の編地の破裂強力は300kPa以上であることが好ましく、500kPa以上であることがより好ましい。破裂強力が前記範囲未満である場合、該編地を使用した衣料を着用した場合、破れや穴開きが起りやすくなる。
【0034】
なお、本発明の編地に、上記以外の各種の機能加工を単独または併用で施しても良い。かかる機能加工としては、例えば防汚加工、UVカット加工、スキンケア加工、吸水シリコーン樹脂による柔軟加工などが挙げられる。但し、柔軟加工剤やフィックス剤においては、吸水性を阻害しないタイプを使用することも重要である。例えば、撥水性のあるシリコーン系柔軟剤を使用しないことが好ましい。
【0035】
本発明の編地は、吸水性として、JIS-L-1096法に基づく滴下吸水時間で5秒以内であることができる。滴下吸水時間が5秒を越えると、該編地を使用した衣料を着用して運動したときに、衣服と肌の間に汗が溜りやすくなり濡れ感が残りやすくなる。
【0036】
編地の脱水速乾性としては、洗濯して5分間脱水直後の編地の水分率と(脱水後水分率)、洗濯して5分間脱水後に水分率が10%に至る時間(脱水後水分率10%に至る時間)が測定される。本発明の編地は、脱水後水分率を40%以下、さらには38%以下にすることができる。また、本発明の編地は、脱水後から水分率10%に至る時間を45~70分、さらには45~60分にすることができる。
【0037】
本発明の編地は、速乾性が高いにも関わらず、斜行が起こり難いという特徴を有する。これは、使用した糸の撚係数が低いことと形態安定加工を行っていることに起因している。本発明の編地は、3%以下、さらには2.5%以下、さらには2%以下に抑えることができる。
【0038】
綿繊維は、冬に冷たく感じる素材の代表的なものであるが、本発明の編地は、綿繊維を主として使用しながら、一層の編地としては、従来にない保温性を実現することが可能である。本発明の編地の保温性は、起毛しなくとも18~25とすることができる。
【実施例0039】
次に、実施例及び比較例を以下に挙げて本発明の効果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各性能評価は以下の方法により行った。
【0040】
<マイクロネアリーディングと繊維長(LEN)>
ASTM D4605-86のマイクロネアリーディングの測定法に準拠して測定した。測定機器は、少なくとも質量の0.2%まで感度のある天秤を備え、キャザプレーションされた空気流試験機HVIを使用した。この測定は、一定圧力の圧縮空気を用いて測定され、空気流1:対する綿繊維の抵抗を求めるもので、綿を通過したときの圧力低下がマイクロネヤーリーディングの指標として表わされる。
【0041】
<撚係数>
JIS-L-1095:2010 9.15.1の撚数A法に準拠して撚り回数を測定して、下記式に当てはめて撚係数(K)を求めた。
撚係数(K)=インチ当たりの撚回数(T)/(綿番手)1/2
【0042】
<紡績糸の繊維構成本数>
編地より測定用の糸を10cm抜き出し、鋭利なカミソリを使って繊維軸に垂直方向に切断し、切断した断面を光学顕微鏡にて写真をとり、繊維本数を数えた。測定値は、サンプル毎に5回行って、それらの測定値の平均値とした。
【0043】
<苛性ソーダ溶液の濃度>
一般的な市販のボーメ度計として横田計器製作所製のものを使用して、調液時に苛性ソーダ濃度を測定した。
【0044】
<編地の結合ホルムアルデヒド量>
編地から約2.0gの試料を採取し、沸水中で15分間処理し、水洗、絶乾後精秤して、その質量をW(g)とした。次に、水蒸気蒸留法により試料を硫酸中で分解し、亜硫酸水素ナトリウム水溶液中に生成したホルムアルデヒドを回収した。続いて、ヨウ素滴定法により、ホルムアルデヒドと反応しなかった亜硫酸水素ナトリウム(即ち、過剰の亜硫酸水素ナトリウム)の量を測定した後、アルカリでホルムアルデヒドと亜硫酸水素ナトリウムの付加物を分解し、再びヨウ素滴定法により亜硫酸水素ナトリウムの総量を測定した。そして、ホルムアルデヒドと付加した亜硫酸水素ナトリウムの量から、試料質量あたりのホルムアルデヒド量を求めた。
【0045】
具体的には、図1のように、20質量%のHSO水溶液200ml及び試料を入れた3Lの蒸留フラスコ1に冷却管3をつけて、抽出装置とした。また、2質量%のNaHSO水溶液20ml及び蒸留水30mlを入れた500mlのメスフラスコ5を、抽出装置の抽出口に取り付けた。蒸気発生器7から水蒸気を注入しながら、蒸留フラスコ1をブンゼンバーナーで加熱して水蒸気蒸留し、試料をゆっくり分解させた。メスフラスコ5の液量が蒸気注入により450ml程度に増えたときに蒸留を終了させ、メスフラスコ5に蒸留水を足して500mlの秤線に合わせた。続いて、500mlの該液から50mlをマイヤーフラスコに採り、デンプン水溶液を指示薬として、青紫色に変色するまで(1/50)N「(1/100)mol/L」のI水溶液をビューレットで滴下して、I水溶液の用量をT1(ml)とした。その後、5質量%のNaCO水溶液5mlとエタノール10mlを加えて、再度青紫色に変色するまで(1/50)NのI水溶液を滴下し、I水溶液の用量をT2(ml)とした。滴定量T(ml)を(T2-T1)から求めて、(1/50)NのI水溶液のファクターをfとして、下記の計算式により編物の結合ホルムアルデヒド量(質量%)を求めた。なお、下記式に、1/100はI水溶液のモル濃度であり、30はホルムアルデヒドの分子量であり、500、50はそれぞれ抽出液、採取量の体積である。
結合ホルムアルデヒド量(%)={(1/100)×f×T×30×500×100}/(W×1000×50)=(0.3×T×f)/W
【0046】
<編地の密度>
JIS-L-1096:2010 8.6の密度に準拠して測定した。
【0047】
<編地の厚み>
JIS-L-1096:2010 8.4の厚さに準拠して測定した。
【0048】
<編地の目付>
JIS-L-1096:2010 8.3の単位面積当たりの質量から備考の目付に準拠して測定した。
【0049】
<斜行度>
JIS-L1096: 8.12の布目曲がりの測定方法によりコースの方向の布目曲がり率%で斜行度を評価した。
【0050】
<編地の吸水性>
JIS-L-1907法により裏面の滴下吸水時間(秒)を測定して吸水性とした。
【0051】
<脱水乾燥性>
20cm×20cmの寸法の試料片を準備し、20℃、65%RHの環境下で12時間以上調湿した後、試験片をポリエステルの糸で筒状に縫い合わせたものの質量(W)を測定した。家庭洗濯洗濯機を用いてJIS-L0217:1995 103法に従って洗濯処理を1回行った。但し遠心脱水は5分間とした。遠心脱水直後の試料の質量(W1)を測定した。その後、標準状態(20℃・65%RH)の部屋に試料を放置して一定時間毎に質量(Wx)を測定し、試験片の水分率が10%になったときの時間を求めた。
脱水後の水分率(%)=(W1-W)/W×100
水分率(%)=(Wx-W)/W×100
【0052】
<保温性>
カトーテック社製のサーモラボIIを用い、20℃、65%RHの環境下で、BT-BOXのBT板(熱板)を人の皮膚温度を想定して35℃に設定し、その上に試料を置き、熱移動量が平衡になったときの消費電力量Wを測定した。また、試料を置かない条件での消費電力量W0を計測した。以下の式で保温性(%)を計算した。
保温性(%)={(W0-W)/W0}×100
BT板は、10cm×10cmの寸法であるが、試料は20cm×20cmの寸法とした。通常は、試料をBT板に接触させて測定するが、本発明では、保温性は、BT板の上に断熱性のある発泡スチロール等のスペーサーを設置して、試料との空隙を5mm設けて測定をした。
【0053】
(実施例1)
有効繊維長35.2mm,マイクロネアリーディング値(4.3)であるカリフォルニア綿を100%を用い、OHARA製混綿機を用いて混綿混紡した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけて繊維長の長いものだけを残し、原織機製練条機に2回通して250ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して130ゲレン/15ydの粗糸を作成した。次いで豊田自動織機製の精紡機でこの粗糸を約32倍のドラフトをかけ、英式番手で25番手の単糸を作製した。この紡績糸の撚係数は3.2、繊維の構成本数は112本であった。
【0054】
出来上がった紡績糸を26”-28Gの天竺編機(福原機械製)により天竺を編成した。編成時の条件は、編成糸長315mm/100ウエールとして編成した。
【0055】
出来上がった生機を開反→セミシルケット→精練、漂白、染色→樹脂加工+柔軟剤処理→ソーピング→柔軟剤処理を行った。
【0056】
次に、山東鐵工製作所製のオープン・シルケット加工機を用いて、走行速度50m/分で、苛性ソーダ濃度12°Be、温度20℃でシルケット加工を行った後、中和・水洗・脱水し、ショートループドライヤーにより150℃で熱風乾燥した。その後、日阪製作所製の液流染色機サーキュラーNSを用いて、処方1にて、浴比1:10、温度95℃・60分間で精練・漂白を施し、酢酸で中和した後、水洗した。引き続き、前記編物を処方2にて、浴比1:10、温度60℃・60分間で染色し、ソーピング・中和・水洗した後、拡布・遠心脱水して、ショートループドライヤーにより150℃・1分間で熱風乾燥した。
【0057】
続いて、市金工業製のパッダー付きテンターを用いて、処方3にて架橋処理を行った。この加工では、ウエットピックアップ率は90%であり、テンター温度150℃・1分間で乾燥処理し、引続き170℃・1.5分間でキュアリング処理した。その後、界面活性剤でソーピング、水洗した後、パッダー付きテンターを用いて処方4にて柔軟処理を行った。
【0058】
<処方1>
苛性ソーダ(日本曹達社製):5g/L
精練剤(ピッチランL250、日華化学社製):2g/L
トリポリ燐酸ソーダ(多田薬品社製):2g/L
過酸化水素安定剤(PLC7000、日華化学社製):1g/L
35%過酸化水素(三菱ガス化学社製):15mL/L
浴中柔軟剤(パーソフタルMAX、日華化学社製):1g/L
<処方2>
反応染料(Sumifix Supra BLUE BRF、住化ケムテックス社製):1%owf
浴中柔軟剤(パーソフタルMAX、日華化学社製):2g/L
無水芒硝(東ソー社製):30g/L
アルカリ剤(MS171、明成化学工業社製):5g/L
<処方3>
グリオキザール系架橋剤(アルコフィックスNZF:固形分50質量%、クラリアントジャパン社製):12.0質量%(固形分量4.2%owfに相当する)
架橋反応触媒(リケンフィクサーMX3、三木理研工業社製):3.0質量%
<処方4>
親水性シリコーン柔軟剤(ニッカシリコンAQ-1、日華化学社製):2.0質量%
【0059】
得られた編地のバリウム活性値は115、結合ホルムアルデヒド量は0.28%owfであった。続いて脱水乾燥性を評価したところ、脱水後の水分率が34.3%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は65.3分と良好な値を得た。実施例1の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例2)
紡績単糸の撚係数を3.0に変えた以外は実施例1と同条件で編地を作成した。脱水後の水分率が36.6%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は63.4分と良好な値を得た。実施例2の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
紡績単糸の撚係数を3.5に変えた以外は実施例1と同条件で編地を作成した。脱水後の水分率が37.1%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は66.3分で良好な値を得た。実施例3の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
紡績単糸25/1を精紡交撚糸25/1に変えた以外は実施例1と同じ条件で編地を作成した。精紡交撚糸を紡績するのに用いた粗糸は70ゲレンを2本用いて約31倍のドラフトを掛けて紡出した。交撚撚数は3.2、繊維構成本数は110本であった。製造して仕上がった編地を測定した結果、脱水後の水分率が38.7%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は69.3分で良好な値を得た。実施例4の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例5)
編成する糸を単糸25/1から双糸50/2とした以外は実施例1と同条件にて天竺編地を作成した。双糸は実施例3の単糸を2本合わせて下撚と逆方向に上撚を施撚した。この双糸の撚係数は下撚3.5、上撚2.3、上撚りを逆方向に掛けたことで各単糸の見掛けの下撚数は1.2となっている。繊維構成本数は128本であった。脱水後の水分率が35.4%で、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は62.0分と良好な値を得た。実施例5の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例6)
原綿のマイクロネアリーディング値を4.3から5.5のインド綿を使用している以外は実施例1と同条件で編地を作成した。紡績単糸の撚係数は3.2、繊維構成本数は102本であった。脱水後の水分率が36.6%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は68.3分と良好な値を得た。実施例6の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例7)
編組織を表鹿の子にして編成糸長を298mm/100Wした以外は実施例1と同じ条件にて編地を作成した。その結果、目付が182g/mであった。脱水後の水分率が37.2%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は61.2分で良好な値を得た。実施例7の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例8)
実施例1と同じ原綿を用いて粗糸ゲレンが125ゲレン/15ydの粗糸を製造し、それを用いて約40倍のドラフトを掛けて40/1の糸を紡出した。この紡績単糸の撚係数は3.2、繊維構成本数は79本であった。この糸を用いて30“-18ゲージのフライス編機にてフライス編地を作成した。加工の工程は実施例1と同条件にて作成した。脱水後の水分率が38.8%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は58.1分で良好な値を得た。実施例8の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
綿繊維のマイクロネアリーディング値を3.0の新彊綿を用いた以外は実施例1と同条件で編地を作成した。紡績糸の撚係数は実施例1と同じ3.2としたが、繊維の構成本数は178本であった。脱水後の水分率が41.1%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は85.4分と悪い値であった。比較例1の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
紡績糸の撚係数を5.5に変えた以外は実施例1と同条件で編地を作成した。繊維構成本数は125本であった。脱水後の水分率が36.5%と良好な結果を得たが、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は71.7分と乾燥し難い結果となった。比較例2の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例3)
綿粗糸を100ゲレン/15ydとして約40倍のドラフトを掛けて番手を50/1を作成した。出来上がった糸の撚係数は3.6、繊維構成本数は68本であった。この糸を用いて、ダンボールニット組織(ダブルニット機30インチ22ゲージ)を編成して実施例1と同加工を実施し編地を測定した結果、脱水後の水分率は51.2%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は72.9分といずれも悪い結果であった。比較例3の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例4)
比較例3と同じ糸(綿50/1)を用いてダブルニット機(30インチ22ゲージ)にてスムースを編成して実施例1と同加工を実施し編地を作成した。脱水後の水分率は43.1%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は72.4分といずれも悪い結果であった。比較例4の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0071】
(比較例5)
糸、編成方法ともに実施例1と同方法であるが、加工処方で樹脂加工を無しとして編地を仕上げた。得られた編地の結合ホルムアルデヒド量は0であった。脱水後の水分率を測定した結果が50.2%、脱水後水分率が10%に至るまでの時間は90分以上で最も脱水性が悪く乾燥性も悪い結果となった。比較例5の編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の編地は、生地破裂強力の低下や斜行、風合い硬化等の問題を生じずに、吸水性と速乾性に優れており、インナー衣料、登山等のアウトドア衣料、スポーツ衣料に好適に用いることができる。
図1