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特開2022-109002摺動部材用樹脂組成物、押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109002
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】摺動部材用樹脂組成物、押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20220720BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20220720BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20220720BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220720BHJP
   B60J 10/76 20160101ALI20220720BHJP
【FI】
C08L23/04
C08L23/10
C08L23/16
C08L83/04
B60J10/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004285
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】蔡 光珂
【テーマコード(参考)】
3D201
4J002
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201CA19
3D201EA01A
3D201EA29
3D201FA04
4J002BB031
4J002BB123
4J002BB152
4J002CP034
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】追従性と高荷重下での摺動性に優れる摺動部材用樹脂組成物と、この摺動部材用樹脂組成物よりなる押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップを提供する。
【解決手段】プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分と、ポリオルガノシロキサンとを含有する摺動部材用樹脂組成物であって、該オレフィン系樹脂成分におけるプロピレン単位の含有率T1(質量%)とエチレン単位の含有率T2(質量%)の比T1/T2が0.30~0.70である、摺動部材用樹脂組成物。この摺動部材用樹脂組成物の押出成形体。この摺動部材用樹脂組成物を備えた自動車部品。基材とこの摺動部材用樹脂組成物よりなる摺動部材とを具備するウェザーストリップ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分と、ポリオルガノシロキサンとを含有する摺動部材用樹脂組成物であって、該オレフィン系樹脂成分におけるプロピレン単位の含有率T1(質量%)とエチレン単位の含有率T2(質量%)の比T1/T2が0.30~0.70である、摺動部材用樹脂組成物。
【請求項2】
DuroD硬度(ISO 868)が40以上55以下である、請求項1に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項3】
JIS K7210の規格に準拠した方法で測定温度230℃、測定荷重21.2Nで測定したメルトフローレートが0.5/10分以上25g/10分以下である、請求項1又は2に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項4】
前記オレフィン系樹脂成分100質量部に対して前記ポリオルガノシロキサンを5~15質量部含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項5】
前記オレフィン系樹脂成分が下記成分(A)と成分(B)を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン系重合体
【請求項6】
前記オレフィン系樹脂成分100質量%のうち、前記成分(A)の含有率が25~60質量%であり、前記成分(B)の含有率が40~75質量%である、請求項5に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分(B)が密度0.91~0.97g/cmのポリエチレンを含む、請求項5又は6に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物の押出成形体。
【請求項9】
請求項8の押出成形体を備えた自動車部品。
【請求項10】
基材と請求項1~7のいずれか一項に記載の摺動部材用樹脂組成物よりなる摺動部材とを具備するウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材用樹脂組成物と、この摺動部材用樹脂組成物よりなる押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ドアの窓枠に取り付けられるウェザーストリップは、車内への雨、風、異物等の侵入防止のために設けられる自動車部品である。ウェザーストリップは、プロピレン系重合体等の樹脂よりなる基材部と、基材部の一部分に積層されるように設けられた摺動部を有し、この摺動部がガラス窓と接するように窓枠にシールされて用いられる。従って、摺動部を構成する摺動部材には、ガラス窓の開閉時にその円滑動作を妨げることのない摺動性が求められる。
摺動部材としては、一般に、オレフィン系樹脂成分に各種添加物を添加した組成物よりなるものが知られている。
【0003】
摺動部材に摺動性を付与するための添加物の一つとして、超高分子量ポリエチレンを使用する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、オレフィン系樹脂成分にエチレン系樹脂を含有する場合に、そのエチレン系樹脂の一部を架橋させることにより、成形体表面に凹凸形状を形成することで、摺動性を付与する方法も知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-204405号公報
【特許文献2】特開2002-20558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車の走行音を低減させるために、ウェザーストリップを窓ガラスに強く押さえつけシール性を強化する工夫がされている。このような使用環境下においては、ウェザーストリップの摺動部材には、ガラスへの追従性を確保してガラス窓を十分にシールしつつも、ガラス窓に対して高荷重下であっても摺動する摺動性が求められる。
【0006】
特許文献1に記載されている超高分子量ポリエチレンを摺動性付与材として添加したものは、確かに摺動性は向上するが、超高分子量ポリエチレンは粉末状で、取り扱いが難しい。また、特許文献1には追従性については記載がなく、特許文献1に記載された技術は追従性と摺動性の両立について考慮されていない。
【0007】
特許文献2に記載されているエラストマー組成物は、高荷重下での摺動性が十分でない。また、特許文献2には追従性については記載がなく、特許文献2に記載された技術は追従性と摺動性の両立について考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、追従性と高荷重下での摺動性に優れる摺動部材用樹脂組成物と、この摺動部材用樹脂組成物よりなる押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分と、ポリオルガノシロキサンとを含有する摺動部材用樹脂組成物であって、プロピレン単位の含有率T1とエチレン単位の含有率T2の質量比T1/T2を0.30~0.70とした摺動部材用樹脂組成物が、追従性と高荷重下での摺動性に優れる押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップを実現し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
[1] プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分と、ポリオルガノシロキサンとを含有する摺動部材用樹脂組成物であって、該オレフィン系樹脂成分におけるプロピレン単位の含有率T1(質量%)とエチレン単位の含有率T2(質量%)の比T1/T2が0.30~0.70である、摺動部材用樹脂組成物。
【0012】
[2] DuroD硬度(ISO 868)が40以上55以下である、[1]に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【0013】
[3] JIS K7210の規格に準拠した方法で測定温度230℃、測定荷重21.2Nで測定したメルトフローレートが0.5/10分以上25g/10分以下である、[1]又は[2]に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【0014】
[4] 前記オレフィン系樹脂成分100質量部に対して前記ポリオルガノシロキサンを5~15質量部含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の摺動部材用樹脂組成物。
【0015】
[5] 前記オレフィン系樹脂成分が下記成分(A)と成分(B)を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の摺動部材用樹脂組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン系重合体
【0016】
[6] 前記オレフィン系樹脂成分100質量%のうち、前記成分(A)の含有率が25~60質量%であり、前記成分(B)の含有率が40~75質量%である、[5]に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【0017】
[7] 前記成分(B)が密度0.91~0.97g/cmのポリエチレンを含む、[5]又は[6]に記載の摺動部材用樹脂組成物。
【0018】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の摺動部材用樹脂組成物の押出成形体。
【0019】
[9] [8]の押出成形体を備えた自動車部品。
【0020】
[10] 基材と[1]~[7]のいずれかに記載の摺動部材用樹脂組成物よりなる摺動部材とを具備するウェザーストリップ。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、追従性と高荷重下での摺動性に優れる摺動部材用樹脂組成物と、この摺動部材用樹脂組成物よりなる押出成形体、自動車用部品、及びウェザーストリップを提供することができる。
【0022】
本発明の摺動部材用樹脂組成物及び押出成形体は、ガラスに対する優れた追従性と高荷重下での摺動性から、自動車用シール材、建材用シール材として有用である。特に自動車用ウェザーストリップ等の自動車部品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。
【0024】
〔摺動部材用樹脂組成物〕
本発明の摺動部材用樹脂組成物は、プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分と、ポリオルガノシロキサンとを含有する摺動部材用樹脂組成物であって、オレフィン系樹脂成分におけるプロピレン単位の含有率T1(質量%)とエチレン単位の含有率T2(質量%)の比T1/T2(以下、単に「T1/T2」と称す場合がある。)が0.30~0.70であることを特徴とする。このT1/T2は、好ましくは0.35~0.70であり、より好ましくは0.35~0.68である。T1/T2を上記範囲とすることで、摺動部材に求められるガラス窓に対する追従性と高荷重下での摺動性をより高水準で両立することができる。
【0025】
[メカニズム]
本発明の摺動部材用樹脂組成物が前記した効果を奏する理由の詳細は定かではないが、以下の通り推定される。
通常、ポリオルガノシロキサンはオレフィン系樹脂成分中での分散性が悪く、オレフィン系樹脂成分とポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物を用いて成形体を成形する際に、ポリオルガノシロキサンが成形体の表面側に移動しやすい傾向があり、結果として、成形体の表層にポリオルガノシロキサンが偏在してしまい、摺動部材として使用中に表層に存在するポリオルガノシロキサンが摺動部材から系外に排出されてしまう。そのため、成形体として所望の摺動性が得られない。
【0026】
一方で、プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分と、ポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物において、プロピレン単位の含有率T1(質量%)とエチレン単位の含有率T2(質量%)の比T1/T2を0.30~0.70とすると、ポリエチレンとポリプロピレンの共連続構造が形成され、この構造体内にポリオルガノシロキサンが偏在し得る界面が大量に形成されるように設計することができる。このような共連続構造を有する樹脂組成物を用いた成形体では、繰り返しの摺動によってポリオルガノシロキサンが、成形体内から共連続構造の界面を伝って徐々に摺動面に染み出すようになり、優れた摺動性を得ることができると考えられる。
【0027】
[摺動部材用樹脂組成物の物性]
<DuroD硬度>
本発明の摺動部材用樹脂組成物は、ISO 868規格を参考に測定されたDuroD硬度が40~55であることが好ましい。DuroD硬度が40以上であることにより、摺動性に優れたものとなる。本発明の摺動部材用樹脂組成物のDuroD硬度は、好ましくは45以上である。一方、DuroD硬度が55以下であることにより、追従性に優れたものとなる。本発明の摺動部材用樹脂組成物のDuroD硬度は、好ましくは53以下である。特にDuroD硬度が45~53の範囲にあると高荷重下での摺動性及び追従性のバランスに一層優れた摺動部材を得ることができる。
【0028】
摺動部材用樹脂組成物のDuroD硬度は、摺動部材用樹脂組成物中の曲げ弾性率(JIS K7171)1000MPa以上、例えば1000~2300MPaの樹脂成分の含有率C1(質量%)と、曲げ弾性率(JIS K7171)1000MPa未満、例えば20~950MPaの樹脂成分の含有率C2(質量%)を制御することで調整できる。具体的にはC1/C2を1.5~5.0の範囲内に制御することで所望の硬度が得られやすくなる。上記した曲げ弾性率1000MPa以上の樹脂成分、曲げ弾性率1000MPa未満の樹脂成分は、後に説明する成分(A)、成分(B)の中から適宜選んで使用することができる。
【0029】
<メルトフローレート>
本発明の摺動部材用樹脂組成物は、JIS K7210の規格を参考に測定温度230℃、測定荷重21.2Nで測定したメルトフローレート(MFR)が0.5g/10分以上であることが、成形機への負荷軽減の観点から好ましく、より好ましくは0.7g/10分以上、更に好ましくは1g/10分以上である。一方、成形時の賦形性の観点から、本発明の摺動部材用樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、25g/10分以下が好ましく、24g/10分以下がより好ましく、23g/10分以下が更に好ましい。
【0030】
[オレフィン系樹脂成分]
本発明の摺動部材用樹脂組成物はプロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分を含有する。本発明の摺動部材用樹脂組成物は、摺動部材用樹脂組成物としてプロピレン単位の含有率T1(質量%)とエチレン単位の含有率T2(質量%)の比T1/T2が0.30~0.70となるよう、オレフィン系樹脂成分を含有することが好ましい。
【0031】
オレフィン系樹脂成分は、プロピレン単位とエチレン単位を含む非架橋のオレフィン系樹脂成分であれば特に限定されないが、上記したT1/T2を制御しやすい観点から、本発明に係るオレフィン系樹脂成分は、下記成分(A)と成分(B)を含有することが好ましい。これらの成分(A)及び成分(B)の詳細については後述する。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン系重合体
【0032】
上記の成分(A)と成分(B)とを含有するオレフィン系樹脂成分におけるプロピレン単位の含有率T1とエチレン単位の含有率T2は、例えば、以下のようにして求められる。
成分(A)として、成分(A-1)、成分(A-2)……………成分(A-n)を含み、成分(B)として、成分(B-1)、成分(B-2)……………成分(B-n)を含むオレフィン系樹脂成分において、各成分のオレフィン系樹脂成分100質量%の含有率(質量%)、各々の成分中のプロピレン単位の含有率(質量%)、エチレン単位の含有率(質量%)を、
成分(A-1)のオレフィン系樹脂成分中の含有率:M(A-1)質量%
成分(A-2)のオレフィン系樹脂成分中の含有率:M(A-2)質量%
: :
成分(A-n)のオレフィン系樹脂成分中の含有率:M(A-n)質量%
成分(B-1)のオレフィン系樹脂成分中の含有率:M(B-1)質量%
成分(B-2)のオレフィン系樹脂成分中の含有率:M(B-2)質量%
: :
成分(B-n)のオレフィン系樹脂成分中の含有率:M(B-n)質量%
成分(A-1)中のプロピレン単位の含有率:P(A-1)質量%
成分(A-2)中のプロピレン単位の含有率:P(A-2)質量%
: :
成分(A-n)中のプロピレン単位の含有率:P(A-n)質量%
成分(A-1)中のエチレン単位の含有率:E(A-1)質量%
成分(A-2)中のエチレン単位の含有率:E(A-2)質量%
: :
成分(A-n)中のエチレン単位の含有率:E(A-n)質量%
成分(B-1)中のプロピレン単位の含有率:P(B-1)質量%
成分(B-2)中のプロピレン単位の含有率:P(B-2)質量%
: :
成分(B-n)中のプロピレン単位の含有率:P(B-n)質量%
成分(B-1)中のエチレン単位の含有率:E(B-1)質量%
成分(B-2)中のエチレン単位の含有率:E(B-2)質量%
: :
成分(B-n)中のエチレン単位の含有率:E(B-n)質量%
とすると、オレフィン系樹脂成分としてのプロピレン単位の含有率T1とエチレン単位の含有率T2は以下の通り算出される。
T1={M(A-1)×P(A-1)+M(A-2)×P(A-2)+……………+M(A-n)×P(A-n)+M(B-1)×P(B-1)+M(B-2)×P(B-2)……………+M(B-n)×P(B-n)}/100
T2={M(A-1)×E(A-1)+M(A-2)×E(A-2)+……………+M(A-n)×E(A-n)+M(B-1)×E(B-1)+M(B-2)×E(B-2)……………+M(B-n)×E(B-n)}/100
【0033】
前述の通り、本発明の摺動部材用樹脂組成物におけるT1/T2は0.30~0.70、好ましくは0.35~0.70、より好ましくは0.35~0.68であるので、本発明の摺動部材用樹脂組成物に含まれるオレフィン系樹脂成分のT1/T2は、0.30~0.70、特に0.35~0.70、とりわけ0.35~0.68であることが好ましい。
【0034】
<成分(A):プロピレン系重合体>
オレフィン系樹脂成分に用いられる成分(A)のプロピレン系重合体は、特に限定されず、プロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体(プロピレン単位と他の単量体単位とのブロック共重合体又はランダム共重合体)等、いずれであっても使用することができる。
ここで、プロピレン系共重合体とは、プロピレン単位の含有率が50質量%以上であるものを意味する。
【0035】
成分(A)のプロピレン系重合体がプロピレン系共重合体である場合、プロピレンと共重合する他の単量体としては、エチレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等の炭素数2又は4~12のα-オレフィン;シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]-4-ドデセン等の環状オレフィン;5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等のノルボルネン;1,4-ヘキサジエン、メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等のジエン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のビニル単量体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの他の共重合成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
成分(A)のポリプロピレン系重合体は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、230℃、荷重21.2N)が0.3~26g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.3~15g/10分である。このようなMFRを有する成分(A)のポリプロピレン系重合体を使用することにより、良好な成形性と優れた外観を確保することができる。
【0037】
また、成分(A)のプロピレン系重合体は、密度(JIS K7112)が0.85~0.92g/cmの範囲内にあることが好ましい。
【0038】
成分(A)のプロピレン系重合体は、公知の製造方法で得ることができる。その製造方法は、例えば特開昭50-108385号公報、特開昭50-126590号公報、特開昭51-20297号公報、特開昭51-28189号公報、特開昭52-151691号公報に詳細に開示されており、本発明においてもこれらに記載されている技術を利用することができる。
【0039】
また、成分(A)のプロピレン系重合体は、市販のものを用いてもよい。成分(A)の市販品としては、例えば、プライムポリマー社製のPRIME Polypro(登録商標)、住友化学社製の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社製のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社製のノバテック(登録商標)PP、三井化学社製のタフマー(登録商標)、ウェイマックス(WAYMAX(登録商標))、LyondellBasell社製のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社製のExxonMobil PP、ダウ・ケミカル社製のバーシファイ(登録商標)、Formosa Plastics社製のFormolene(登録商標)、Borealis社製のBorealis PP、LG Chemical社製のSEETEC PP、A.Schulman社製のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社製のINEOS PP、Braskem社製のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社製のSumsung Total、Sabic社製のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社製のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社製のYUPLENE(登録商標)が挙げられる。
【0040】
上記の成分(A)のプロピレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
[成分(B):エチレン系重合体]
オレフィン系樹脂成分に用いられる成分(B)のエチレン系重合体は、特に限定されず、エチレン単独重合体、エチレン系共重合体(エチレン単位と他の単量体単位とのブロック共重合体又はランダム共重合体)等、いずれであっても使用することができる。
ここで、エチレン系共重合体は、エチレン単位の含有率が50質量%以上であるものを意味する。
【0042】
成分(B)のエチレン系重合体がエチレン系共重合体である場合、エチレンと共重合する他の単量体としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン等の炭素数3~20のα-オレフィン;1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカンジエン、3,6-ジメチル-1,7-オクタジエン、4,5-ジメチル-1,7-オクタジエン、5-メチル-1,8-ナノジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ナノジエン等の非共役ポリエンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの他の共重合成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。
【0044】
エチレン系重合体は、密度(JIS K6922)が0.91~0.97g/cmであることが好ましい。また、成分(B)の少なくとも一部として、密度0.94~0.97g/cmのポリエチレンを含有することで、摺動部材用樹脂組成物として優れた摺動性と摩耗性が得られやすくなる傾向がある。
【0045】
エチレン系重合体は、密度の観点で、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(L-LDPE、LDPE)、エチレンプラストマー、エチレンエラストマーに分類できる。
【0046】
なお、本明細書中、高密度ポリエチレンは密度0.94g/cm以上(0.98g/cm未満)のポリエチレン系重合体、中密度ポリエチレンは密度0.93g/cm以上0.94g/cm未満のポリエチレン系重合体、低密度ポリエチレンは密度0.91g/cm以上~0.93g/cm未満のポリエチレン系重合体、エチレンプラストマーは密度0.89g/cm以上0.91g/cm未満のポリエチレン系重合体、エチレンエレストマーは密度0.89g/cm未満(0.85g/cm以上)のポリエチレン系重合体を意味する。この中でも、摺動性の観点から高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0047】
本発明においては、エチレン系重合体が、非架橋状態で存在するため、エチレン系重合体が架橋状態で存在する場合と比較し、共連続構造を維持しやすく、所望の摺動性を得ることができる。
【0048】
成分(B)のエチレン系重合体は、メルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、荷重21.2N)が0.1~13g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.1~12g/10分である。このようなMFRを有する成分(B)のエチレン系重合体を使用することにより、ポリプロピレン系樹脂材料より成形された別部材と融着しやすくなり、ウェザーストリップ用摺動部材等の用途に好適に用いることができる。
【0049】
また、成分(B)のエチレン系重合体は、市販のものを用いてもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、日本ポリエチレン社製ノバテック(登録商標)シリーズ、旭化成ケミカルズ社製クレオレックス(登録商標)シリーズ、JSR社製のJSR EP、三井化学社製の三井EPT(登録商標)、住友化学社製のエスプレン(登録商標)、ARLANXEO社製のKeltan(登録商標)が挙げられる。
【0050】
上記の成分(B)のエチレン系重合体は、1種のみを用いてもよく、組成や物性の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
[ポリオルガノシロキサン]
本発明の摺動部材用樹脂組成物に含まれるポリオルガノシロキサンの分子構造におけるシロキサン主鎖に結合する置換基の種類は特に限定されないが、ジメチルシリコーン(ジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルシリコーン、あるいはアルキル変性シリコーンが好適に用いられる。
【0052】
ポリオルガノシロキサンは、本発明の摺動部材用樹脂組成物を構成するその他の材料と十分に混合させるために、プロピレン系重合体やエチレン系重合体のマスターバッチとして用いることが好ましい。マスターバッチとして使用できるプロピレン系重合体としては、例えば、前述の成分(A)のプロピレン系重合体を用いることができる。
【0053】
ポリオルガノシロキサンは、動粘度(JIS Z8803,25℃)が100,000cSt以上であるものが好ましく、この動粘度の上限については特に制限されない。ポリオルガノシロキサンの動粘度が高いほど耐傷付き性、耐摩耗性向上の効果が高く好ましい。
【0054】
ポリオルガノシロキサンは市販品として入手することができる。該当する市販品としては、例えば、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製「DOW CORNING TORAYTM(登録商標)」シリーズ、「バーシファイ(登録商標)」シリーズ、「DOW CORNINGTM(登録商標)」シリーズ、信越化学工業社製「X-22-2101」が挙げられ、これらの中から該当品を適宜選択して使用することができる。
【0055】
ポリオルガノシロキサンは1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
【0056】
[配合割合]
本発明の摺動部材用樹脂組成物は、オレフィン系樹脂成分100質量部に対してポリオルガノシロキサンを5~15質量部含有することが好ましい。ポリオルガノシロキサンの含有量の下限を5質量部以上とすることで、摺動耐久性が一層向上し、ウェザーストリップの摺動部材等の用途において水の除去性能に一層優れたものとなり、また摺動時の異音の発生が一層低減される。ポリオルガノシロキサンの含有量の下限は8質量部以上とすることがより好ましい。また、ポリオルガノシロキサンの含有量の上限を15質量部以下とすることで、摺動部材用樹脂組成物の成形性が一層良好となり、またブリードの発生を抑制できる傾向にある。ポリオルガノシロキサンの含有量の上限は13質量部以下とすることがより好ましい。
【0057】
オレフィン系樹脂成分100質量部における成分(A)のプロピレン系重合体の含有割合は25~60質量%であることが好ましく、より好ましくは25~50質量%であり、更に好ましくは30~50質量%である。また、オレフィン系樹脂成分100質量部における成分(B)のエチレン系重合体の含有割合は40~75質量%であることが好ましく、より好ましくは50~75質量%であり、更に好ましくは50~70質量%である。
【0058】
オレフィン系樹脂成分は、その全量100質量%が成分(A)と成分(B)の合計100質量%より構成されることが好ましい。成分(A)は、成分(A)と成分(B)との合計100質量%に対し、より好ましくは25~60質量%であり、更に好ましくは30~50質量%である。また、成分(B)は、成分(A)と成分(B)との合計100質量%に対し、より好ましくは40~75質量%であり、更に好ましくは50~70質量%である。
【0059】
ポリオルガノシロキサンは、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対し5~15質量部、特に8~13質量部含有されることが好ましい。
【0060】
上記した配合割合で各成分を含有することで、ガラス窓に対する追従性と高荷重下での摺動性をより高水準で達成しやすくなる。
【0061】
[その他の成分]
本発明の摺動部材用樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、オレフィン系樹脂成分及びポリオルガノシロキサン以外の他の成分(本明細書において、単に「その他の成分」と称することがある。)を含有していてもよい。その他の成分としては、成分(A),(B)以外の樹脂やエラストマー(本明細書においてはこれらをまとめて単に「その他の樹脂」と称することがある。)や各種添加剤が挙げられる。
【0062】
本発明の摺動部材用樹脂組成物が含有し得るその他の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ただし、前記成分(A)、成分(B)に該当するものを除く。)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂;ポリアミド・ポリオール共重合体等のポリアミド系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー及びポリブタジエン系エラストマー、これらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの、更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたもの等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。
【0063】
これらの中でも、ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~4のα-オレフィンの単独あるいはこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。これらポリオレフィン樹脂としては、具体的には、ポリ-1-ブテン等の単独重合体に限らず、炭素数2~4のα-オレフィンを主成分とする限り、他の炭素数5~20のα-オレフィンあるいは酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン等のビニル化合物との共重合体をも含むものである。更には、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその誘導体でグラフト変性されたグラフト共重合体でもよい。更にこれらのポリオレフィン樹脂は混合物であってもよい。
【0064】
本発明の摺動部材用樹脂組成物がその他の樹脂を含む場合、本発明の摺動部材用樹脂組成物中のその他の樹脂の含有量は、その合計で、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましく、20質量部以下とすることがより好ましい。
【0065】
また、本発明の摺動部材用樹脂組成物が含有し得る添加剤としては、ポリオルガノシロキサンと共に用いられる滑剤の他、酸化防止剤、結晶核剤等の成形加工助剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤、耐加水分解改良剤、顔料、染料等の着色剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、可塑剤、離型剤、発泡剤等が挙げられる。
【0066】
本発明の摺動部材用樹脂組成物には、酸化防止剤として、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を配合することができる。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の摺動部材用樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部である。酸化防止剤の含有量が0.01質量部以上であると、耐熱劣化性の改良効果の観点で好ましく、一方、5質量部以下であると、ブリード等の問題を起こしにくい点、組成物の機械的強度の観点等から好ましい。
【0068】
また、本発明の摺動部材用樹脂組成物は、意匠性、耐候性の向上のために、カーボンブラック等の着色剤を含有することが好ましく、この場合、着色剤は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して0.1~5質量部、特に0.3~3質量部配合することが好ましい。なお、カーボンブラック等の着色剤のような微量配合成分は、ポリオレフィン樹脂等の樹脂のマスターバッチとして配合することが、摺動部材用樹脂組成物への均一分散性の面で好ましい。
【0069】
また、本発明の動摺動部材用樹脂組成物は、製造安定性、寸法安定性、難燃性向上のために、充填剤を含有してもよく、この場合、充填剤としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる(カーボンブラックは着色剤としても充填剤としても使用可能である。)。充填剤を配合する場合、充填剤は、成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して通常0.1~200質量部で用いられる。
【0070】
[摺動部材用樹脂組成物の成形]
本発明の摺動部材用樹脂組成物の成形には、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形の何れの成形方法も適用できる。
【0071】
[押出成形体]
本発明の摺動部材用樹脂組成物を押出成形することで本発明の押出成形体を製造することができる。
【0072】
本発明の摺動部材用樹脂組成物を用いて、他の部材と一体化させた押出成形体、例えば、プロピレン系重合体等の樹脂よりなる基材部と、基材部の一部分に積層されるように設けられた摺動部とを有するウェザーストリップの摺動部を形成する場合、基材部と摺動部の成形順序は、一方を先に成形して後から他方へ成形しても、同時に成形してもよいが、特に共押出成形法が好適である。
【0073】
[摺動部材]
本発明の摺動部材用樹脂組成物よりなる摺動部材は、表面外観、柔軟性、耐候性、耐熱性、耐温水性、耐傷性に優れるため、屋内外で使用される複合樹脂成形品、特に、ルーフモール、ウェザーストリップ、ウインドウモール、フラッシュマウントモール、サイドモール、グラスランチャンネル等の自動車外装部品、座席シートレールの保護カバーやアシストグリップ、シフトノブ等の自動車内装部品、玄関ドアシール、パッキン材などの建築ガスケット、手すり、テーブルエッジ、デスクエッジ等に適するが、とりわけ自動車用ウェザーストリップ等の自動車用モールディング用途に好適に使用される。
【実施例0074】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0075】
〔原材料〕
以下の実施例及び比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
【0076】
[成分(A):プロピレン系重合体]
<プロピレン単独重合体>
・A-1:日本ポリプロ株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
MFR(230℃、21.2N):2.5g/10分
密度(JIS K7112):0.90g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):1400MPa
・A-2:日本ポリプロ株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
MFR(230℃、21.2N):11g/10分
密度(JIS K7112):0.90g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):1500MPa
・A-3:日本ポリプロ株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
MFR(230℃、21.2N):0.4g/10分
密度(JIS K7112):0.90g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):1950MPa
・A-4:日本ポリプロ株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
MFR(230℃、21.2N):40g/10分
密度(JIS K7112):0.90g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):1450MPa
【0077】
<プロピレン共重合体>
・A-5:ダウ・ケミカル株式会社製 商品名:バーシファイ(登録商標)
プロピレン・エチレン共重合体
プロピレン単位含有率:80~90質量%
MFR(230℃、21.2N):25g/10分
密度(JIS K7112):0.88g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):120MPa
・A-6:ダウ・ケミカル株式会社製 商品名:バーシファイ(登録商標)
プロピレン・エチレン共重合体
プロピレン単位含有率:80~90質量%
MFR(230℃、21.2N):2g/10分
密度(JIS K7112):0.87g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):100MPa
・A-7:三井化学株式会社製 商品名:タフマー(登録商標) XM-7070
プロピレン・1-ブテン共重合体
プロピレン単位含有率:65~75質量%
MFR(230℃、21.2N):7g/10分
曲げ弾性率(JIS K7171):200MPa
【0078】
[成分(B):エチレン系重合体]
・B-1:日本ポリケム株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
高密度ポリエチレン
密度(JIS K6922):0.96g/cm
MFR(230℃、21.2N):12g/10分
曲げ弾性率(JIS K7171):1000MPa
・B-2:日本ポリケム株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
高密度ポリエチレン
密度(JIS K6922):0.96g/cm
MFR(230℃、21.2N):0.3g/10分
曲げ弾性率(JIS K7171):1600MPa
・B-3:旭化成株式会社製 商品名:クレオレックス(登録商標)
高密度ポリエチレン
密度(JIS K6922):0.97g/cm
MFR(230℃、21.2N):12g/10分
曲げ弾性率(JIS K7171):1120MPa
・B-4:日本ポリケム株式会社製 商品名:ノバテック(登録商標)
低密度ポリエチレン
密度(JIS K6922):0.92g/cm
MFR(230℃、21.2N):12g/10分
曲げ弾性率(JIS K7171):200MPa
・B-5:三井化学株式会社製 商品名:三井EPT(登録商標)
エチレンエラストマー
エチレン単位含有率:66質量%
プロピレン単位含有率:29質量%
密度(JIS K6922):0.87g/cm
曲げ弾性率(JIS K7171):<200MPa
【0079】
[ポリオルガノシロキサン]
デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製 商品名:バーシファイ(登録商標)MB50-001G2
ジメチルポリシロキサンマスターバッチ
ジメチルポリシロキサン含有率:50質量%
ジメチルポリシロキサンの動粘度(25℃):1,000,000cSt以上
【0080】
[その他の成分]
・BF300(充填材、備北粉化工業株式会社製)
・アーモスリップCP(滑剤、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)
・イルガノックス 1010(酸化防止剤、BASFジャパン株式会社製)
・TACKIROL 201(架橋剤、田岡化学工業株式会社製)
・酸化亜鉛(架橋活性化剤、和光純薬工業株式会社製)
・塩化第一スズ(架橋活性化剤、和光純薬工業株式会社製)
【0081】
〔評価方法〕
以下の実施例及び比較例における摺動材料の評価方法は以下の通りである。
【0082】
[ペレットの製造]
表1に示す成分を表1に示す割合で配合し、同方向二軸押出機(日本製鋼所「TEX30」、L/D=52.5、シリンダブロック数:14)に混合物を投入した。上流部から下流部を120~210℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ダイスから吐出されるストランドをペレタイザーでカットし、樹脂組成物からなる均一な形状のペレットを得た。
【0083】
[DuroD硬度]
得られたペレットを用いて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(東芝機械社製「IS130」)にて、射出圧力50MPa、シリンダー温度220℃、金型温度40℃の条件下にて射出成形を行い、厚さ2mm×幅120mm×長さ80mmのシートを得た。
このシートについて、ISO 868の規格を参考にしてDuroD硬度を測定した。
DuroD硬度が40~55の範囲にあるものは、摺動部材に求められる追従性に優れるものと評価される。
【0084】
[MFR]
得られたペレットについて、メルトインデクサー(機種名「L220」、立山科学工業株式会社製)を用いて、荷重21.2N、測定温度230℃で、MFRを測定した。
【0085】
[動摩擦係数]
得られたペレットを用いて、単軸押出機の樹脂温度を180℃に設定して押出成形し、幅25mm、厚み1mmの摺動材料用試験片を成形した。
得られた試験片について、ASTM D1894の規格を参考し、新東科学会社製HEIDON摩擦試験機を使用して動摩擦係数を測定した。
試験条件は、相手材:ガラス板、速度:100mm/s、距離:6cm、荷重:500g、測定環境温度:23℃とした。この値が小さいほど、高荷重下での摺動性に優れるものと評価される。
【0086】
〔評価結果〕
実施例1~6及び比較例1~5における評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1より、本発明の摺動部材用樹脂組成物は、追従性と高荷重下での摺動性に優れることが分かる。
これに対して比較例1,2はT1/T2が本発明の範囲外であり、DuroD硬度が40~55の範囲内とならず追従性に劣る上に、比較例2では動摩擦係数が大きく、摺動性に劣る。
比較例3~5は、オレフィン系樹脂成分が架橋剤により架橋されており、動摩擦係数が大きく、高荷重下での摺動性に劣る。