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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010905
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】蓋付き飲料用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/04 20060101AFI20220107BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B65D43/04
B65D47/06 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111690
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】593215829
【氏名又は名称】アテナ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健司
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 謙二
(72)【発明者】
【氏名】杉本 藤康
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA25
3E084AA26
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB03
3E084CC03
3E084CC04
3E084CC05
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084DC04
3E084DC05
3E084DC07
3E084FA09
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA20
3E084KB01
3E084LA18
3E084LB02
3E084LB09
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】容器のコップ本体の上部開口に被着される蓋体に飲用部を有する飲料用容器において、容器が傾けられる喫飲時に嵌合部分からの液漏れに強い飲料用容器を提供することを目的とする。
【解決手段】コップ本体20及びコップ本体の上部開口21に被着される蓋体30よりなり、コップ本体の上部開口の内周壁部24に内周密着部25が周設されているとともに、蓋体は、コップ本体の上部開口の外周鍔部27上面に当接する蓋鍔部31と、蓋鍔部からコップ本体の上部開口の内周内に入り込む垂下部33と、垂下部を介して上部開口を覆う蓋面部40が形成されており、垂下部の外周壁部34には閉蓋時にコップ本体の内周密着部に密着する外周嵌着部35が形成されており、かつ蓋面部に飲用部41が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コップ本体及び前記コップ本体の上部開口に被着される蓋体よりなり、
前記コップ本体の上部開口の内周壁部に内周密着部が周設されているとともに、
前記蓋体は、前記コップ本体の前記上部開口の外周鍔部上面に当接する蓋鍔部と、前記蓋鍔部から前記コップ本体の上部開口の内周内に入り込む垂下部と、前記垂下部を介して前記上部開口を覆う蓋面部が形成されており、前記垂下部の外周壁部には閉蓋時に前記コップ本体の内周密着部に密着する外周嵌着部が形成されており、かつ前記蓋面部に飲用部が形成されている
ことを特徴とする蓋付き飲料用容器。
【請求項2】
前記蓋面部の飲用部が飲み口部である請求項1に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項3】
前記蓋面部が前記外周嵌着部より下部に形成されている請求項1又は2に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項4】
前記コップ本体及び蓋体がプラスチックシート成形品よりなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項5】
前記コップ本体の内周密着部が下部側の直径が上部側の直径より大きいテーパー状密着面であり、前記蓋体の外周嵌着部が下部側の直径が上部側の直径より大きいテーパー状嵌着面である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器。
【請求項6】
前記コップ本体の上部開口の外周鍔部の外縁部に曲面部が形成されているとともに、前記蓋体の蓋鍔部が水平面として前記コップ本体の外周鍔部外縁部の曲面部より小さく形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓋付き飲料用容器、特にはコップ本体及び前記コップ本体の上部開口に被着される蓋体に飲用部を有する飲料用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンビニエンスストア、ファストフード店、コーヒーショップ、屋台、その他の飲料販売店におけるテイクアウト形式の飲料販売では、PET、PS、PP等の使い捨て飲料用容器に適宜の飲料が充填されて提供される。テイクアウト形式の飲料用容器は、購入者が商品を持ち歩くことから、内容物がこぼれないようにするために、コップ本体の上部開口にPET、PS、PP等の蓋体が着脱可能に嵌着される。
【0003】
この種の大半のテイクアウト用の飲料用容器では、例えば図7に示す容器100のように、蓋体130の外周縁部135から下方に延設した周壁部136をコップ本体120の上部開口121の外側にオーバーラップ状に被着させて、蓋体130の周壁部136の下縁137をコップ本体120の外周縁部125の下側に係止させるいわゆる外嵌合によって閉蓋される。そして、この外嵌合構造の容器100では、蓋体130の外周縁部135から蓋面140をドーム状の盛上り部141として形成し、この盛上り部141に設けられた飲用部(飲み口部)145から容器内の飲料を飲む。図において、符号122はコップ本体120の底部、123はコップ本体120の胴部である。
【0004】
しかるに、コップ本体の上部開口の外側に蓋体外周縁部がオーバーラップ状に嵌着する外嵌合構造の容器にあっては、両者の密着性は必ずしも常に完全というわけではではなく、蓋体取り付け時のわずかなずれや変形によっても、コップ本体と蓋体との嵌合部分に隙間が生じやすく、中身の飲料が漏れたり垂れたりするトラブルが生じやすい。プラスチックシート成形品からなる蓋体の容器開口に対する密着性を確保、維持するためにプラスチックの材質やシート厚み等の剛性を高める必要もあった。
【0005】
このように、従来の蓋付き飲料用容器では、コップ本体と蓋体との外嵌合部分には隙間が生じやすく、持ち運びや喫飲する際に容器が傾けられると、嵌合部分の隙間から中味の液体飲料が外側へ漏出するおそれがある。特に、容器が傾けられる喫飲時に、嵌合部分の隙間から飲料が漏出する場合には、喫飲中の使用者が気付かないことも多く、不意の漏出に服等を汚してしまうことがある。とりわけ現在多用されている飲み口部が蓋面部のドーム状の盛り上がり部に形成された容器にあっては、飲み口部と容器の外嵌合部位置が離れていて容器の傾け具合と実際の飲料の液面の感覚が捉えにくく、こぼしやすいといった点も指摘されている。
【0006】
そこで、コップ本体と蓋体との嵌合部分からの液漏れを防止するために、コップ本体と蓋体との嵌合部分にシーリング材を設けて両者を密着させて密閉した容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、コンビニエンスストア、コーヒーショップ等のテイクアウト形式の販売では、使用者が代金を支払った後に店内で容器に飲料が充填され、コップ本体に蓋体を装着させることが一般的である。そのため、コップ本体と蓋体との嵌合部分にシーリング材を設けた容器は、テイクアウト形式の飲料販売には適しておらず、蓋付き飲料用容器のさらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3194783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、容器のコップ本体の上部開口に被着される蓋体に飲用部を有する飲料用容器において、容器が傾けられる喫飲時に嵌合部分からの液漏れに強い飲料用容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、コップ本体及び前記コップ本体の上部開口に被着される蓋体よりなり、前記コップ本体の上部開口の内周壁部に内周密着部が周設されているとともに、前記蓋体は、前記コップ本体の前記上部開口の外周鍔部上面に当接する蓋鍔部と、前記蓋鍔部から前記コップ本体の上部開口の内周内に入り込む垂下部と、前記垂下部を介して前記上部開口を覆う蓋面部が形成されており、前記垂下部の外周壁部には閉蓋時に前記コップ本体の内周密着部に密着する外周嵌着部が形成されており、かつ前記蓋面部に飲用部が形成されていることを特徴とする蓋付き飲料用容器に係る。
【0010】
請求項2の発明は、前記蓋面部の飲用部が飲み口部である請求項1に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0011】
請求項3の発明は、前記蓋面部が前記外周嵌着部より下部に形成されている請求項1又は2に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0012】
請求項4の発明は、前記コップ本体及び蓋体がプラスチックシート成形品よりなる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0013】
請求項5の発明は、前記コップ本体の内周密着部が下部側の直径が上部側の直径より大きいテーパー状密着面であり、前記蓋体の外周嵌着部が下部側の直径が上部側の直径より大きいテーパー状嵌着面である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【0014】
請求項6の発明は、前記コップ本体の上部開口の外周鍔部の外縁部に曲面部が形成されているとともに、前記蓋体の蓋鍔部が水平面として前記コップ本体の外周鍔部外縁部の曲面部より小さく形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器に係る。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、コップ本体及び前記コップ本体の上部開口に被着される蓋体よりなり、前記コップ本体の上部開口の内周壁部に内周密着部が周設されているとともに、前記蓋体は、前記コップ本体の前記上部開口の外周鍔部上面に当接する蓋鍔部と、前記蓋鍔部から前記コップ本体の上部開口の内周内に入り込む垂下部と、前記垂下部を介して前記上部開口を覆う蓋面部が形成されており、前記垂下部の外周壁部には閉蓋時に前記コップ本体の内周密着部に密着する外周嵌着部が形成されており、かつ前記蓋面部に飲用部が形成されているものであるから、いわゆる内嵌合構造を採ることにより、コップ本体に対する蓋体の閉蓋に際して液漏れに強い蓋付き飲料用容器が提供できる。
【0016】
また、請求項2の発明によると、請求項1に記載の蓋付き飲料用容器において、前記蓋面部の飲用部が飲み口部であるから、容器が傾けられる喫飲時に嵌合部分からの液漏れに強い飲料用容器を提供できる。
【0017】
また、請求項3の発明によると、請求項1又は2に記載の蓋付き飲料用容器において、前記蓋面部が前記外周嵌着部より下部に形成されているから、喫飲時に容器を傾けた際に蓋面部の飲用部が口もとに近接しかつシール部がコップ内周面であるので嵌合部分からの口外への液漏れや液たれをより効果的に抑止することができる。とともに、従来の蓋面部にドーム型の盛り上げ部を有する容器に比して、形状的にも構造的にも使用するプラスチック使用量を抑制することができ、あわせて外観的にもすっきりと小型化して使用者の使用感を高めることができる蓋付き飲料用容器を提供することができる。
【0018】
請求項4の発明によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器において、前記コップ本体及び蓋体がプラスチックシート成形品よりなるから、形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるので好ましく、量産性、経済性等の点からも好ましい
【0019】
さらに、請求項5の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器において、前記コップ本体の内周密着部が下部側の直径が上部側の直径より大きいテーパー状密着面であり、前記蓋体の外周嵌着部が下部側の直径が上部側の直径より大きいテーパー状嵌着面であるから、成形が簡単かつ効率的であるばかりでなく、コップ本体と蓋体との密着性を構造的により大きくかつ確実にすることができる。
【0020】
請求項6の発明に係る蓋付き飲料用容器によると、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蓋付き飲料用容器において、前記コップ本体の上部開口の外周鍔部の外縁部に曲面部が形成されているとともに、前記蓋体の蓋鍔部が水平面として前記コップ本体の外周鍔部外縁部の曲面部より小さく形成されているものであるから、使用者にあっては、口あたりが良く、外観的にも快く、使用感により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例に係る蓋付き飲料用容器の概略断面図である。
図2図1の蓋体の平面図である。
図3図1の蓋付き飲料用容器の開蓋時の上部開口の縁部近傍の部分拡大断面図である。
図4図3の蓋付き飲料用容器の閉蓋時の部分概略断面図である。
図5】蓋体の蓋面部の他の実施例を表す部分概略断面である。
図6】本発明の蓋付き飲料用容器の喫飲時の状態を説明的に表す飲み口部近傍の概略断面図である。
図7】従来の蓋付き飲料用容器の概略断面図である。
図8】従来の蓋付き飲料用容器の喫飲時の状態を説明的に表す飲み口部近傍の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示す本発明の一実施例に係る蓋付き飲料用容器10は、各種の飲料を充填するための容器であって、コップ本体20と蓋体30とよりなる。飲料用容器10に充填される飲料の種類は特段制約されない。例えば、水、ジュースや炭酸飲料等の清涼飲料水、コーヒー、紅茶、各種のお茶、乳飲料、ココア、アルコール飲料、カクテル、その他地域ごとの特産飲料等の飲料である。
【0023】
飲料用容器10は、紙又は合成樹脂あるいは各種複合材料を使用することができる。実施例では、合成樹脂シート(プラスチックシート)成形品からなる。合成樹脂シート成形品は、形状の自由度が大きくかつ精密な成形を容易に行うことができるので好ましく、量産性、経済性等の点からも好ましい。飲料用容器10を構成する合成樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂のシート、さらにはポリ乳酸等の生分解性樹脂の熱可塑性樹脂のシート等が挙げられる。前記の合成樹脂シートは真空成形等により図示をはじめとする各種形状に成形される。容器10を構成するコップ本体20と蓋体30との組み合わせにおいて、それぞれ同一材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。特に容器10は、内部が視認可能となる透明な材料で構成されることにより、コールド飲料の清涼感をより強調することができる。
【0024】
この飲料用容器10は、例えば、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、デパート、飲食店、屋台等における飲料の販売時、さらにはビュッフェ形式等の提供、ケータリング、仕出し、宅配サービス等に用いられる。主に想定される用途は、ワンウェイ(one-way)やディスポーザブル(disposable)等と称される1回のみの使用に用いられる使い切り容器(使い捨て容器)である。使い切り容器とすることにより、飲料の衛生管理に都合よい。飲料用容器10は、販売に際してコップ本体20に飲料が充填され蓋体30が被せられて、顧客に提供される。
【0025】
コップ本体20は、上部開口21から底部22側へ胴部23が縮径する逆円錐台形状に形成され、上部開口21の内周壁部24に内周密着部(本体密着部)25であるテーパー状密着面26が周設されている。内周密着部25としては、図示のテーパー状密着面26のほかに、凹溝部又は突条部等とすることができる。図において、符号27は上部開口21の外側に延設された外周鍔部、28は外周鍔部27の外縁部に折り返して形成されて外周鍔部27を補強する曲面部(カール部)である。
【0026】
この実施例のテーパー状密着面26は、図1,3に示すように、コップ本体20の上部開口21の内周壁部24に下部側の直径が上部側の直径より大きく形成されている。テーパー状密着面26の傾斜角度は、例えば垂直線に対して3~20°程度が好ましく、実施例では5°である。テーパー状密着面26の傾斜角度が小さすぎると後述の蓋体30との内嵌合が不十分となるおそれがあり、大きすぎると成形が困難となる。ちなみに、この実施例のテーパー状密着面26は、幅が3.29mmで、凹み深さは0.8mmである。
【0027】
蓋体30は、図1図4に示すように、コップ本体20の上部開口21に被着される部材であって、蓋鍔部31と、垂下部33と、蓋面部40とを有する。蓋鍔部31は、外周縁部に形成されてコップ本体20の上部開口21の外周鍔部27上面に当接する部位である。蓋鍔部31の形状は、コップ本体20の上部開口21の外周鍔部27に当接可能であれば特に限定されない。実施例の蓋鍔部は、水平面32として形成され、コップ本体20の外周鍔部27より小さく(実施例では直径で外周鍔部27より1~3mm小さく)形成される。すなわち、蓋鍔部31は、最外部がコップ本体20の外周鍔部27の最外部より内側となるように外周鍔部27に当接される。なお、蓋鍔部31には、必要に応じてローレット加工を施してもよい。
【0028】
垂下部33は、蓋鍔部31からコップ本体20の上部開口21の内周内に入り込むように周設された部位であり、コップ本体20の内周密着部に密着する外周嵌着部35であるテーパー状嵌着面36を有する。テーパー状嵌着面36は、垂下部33の外周壁部34に、下部側の直径が上部側の直径より大きく形成された傾斜面であり、閉蓋時にコップ本体20のテーパー状密着面26に嵌合密着するように構成される。テーパー状嵌着面36のテーパー角度は、テーパー状密着面26のテーパー角度に対応して設定される。このテーパー状嵌着面36の形状は、対応するコップ本体20のテーパー状密着面26の形状と含めて成形が簡単かつ効率的であるばかりでなく、コップ本体20と蓋体30との密着性を構造的により大きくかつ確実にすることができるものである。なお、前記したように、コップ本体20の内周密着部25として凹溝部又は突条部等とした場合には、蓋体30の外周嵌着部35はそれらに対応して密着する突条部又は凹溝部等とすることはいうまでもない。
【0029】
蓋面部40は、垂下部33を介してコップ本体20の上部開口21を覆う面部である。図4の実施例の蓋面部40は、垂下部33の下端に設けられて、蓋鍔部31(コップ本体20の上部開口21)より下方に位置するように構成されている。この蓋面部40には、飲用部41が形成されており、必要に応じて凸段部46が設けられる。
【0030】
飲用部41は、使用者が飲料を喫飲可能とする部位であり、喫飲しやすさの観点から蓋面部40の外縁側である垂下部33近傍に形成されることが好ましい。また、飲用部41は、内容物の漏出を抑制するために、使用前に閉鎖状態で使用時(喫飲時)に開放状態となる構造からなる。例えば、蓋面部40の一部を引き上げて開口させるプルタブやステイオンタブ等のプルトップ式、蓋面部40の一部を内部側へ押し込んで開口させるプッシュダウン式、ストロー等の吸引部材の差し込みにより開口させる差込口等、内容物の種類等に応じて適宜の構造とすることができる。図1,2に示す飲用部41は、蓋面部40に突設された指掛部42と、指掛部42の周囲に形成された破断部43とを有し、指掛部42の引き上げ(42a)により破断部43が破断されて飲み口部45を開口するプルトップ式の飲み口である。
【0031】
凸段部46は、搬送時や保管時等の蓋体同士の積み重ね時の密着を防止するために蓋面部40に突設された部位である。この凸段部46は、積み重ね時に他の蓋体の蓋面部裏側等と当接することによって、蓋面同士の密着を回避する。積み重ねた蓋体の密着が回避されることにより、積み重ねた複数の蓋体から一の蓋体を取り外すことができる。
【0032】
蓋面部40は、上述のように、コップ本体20の内周密着部25に密着する外周嵌着部35を有する垂下部33を介して形成されるところ、図4の実施例のように垂下部33の下端から水平に設けられるほか、図5のように、垂下部33から持ち上げ部47を経て上方に設けることができる。容器10内に収容される飲料の種類あるいは外観性等を考慮して、図中の実線で示す持ち上げ部47aのように蓋面部40をコップ本体20の上部開口21より低く、又は破線で示す持ち上げ部47bのように蓋面部40をコップ本体20の上部開口21より高く形成することは自由である。
【0033】
本発明の飲料用容器10では、コップ本体20の上部開口21内に蓋体30の垂下部33を進入させて、コップ本体20の内周密着部25に対して垂下部33の外周嵌着部35を密着させることにより、蓋体30をコップ本体20に内嵌合させる。コップ本体20と蓋体30との内嵌合は、コップ本体20のテーパー状密着面26と蓋体30側のテーパー状嵌着面36とによるコップ本体20内面の全周にわたる嵌合(面接触)からなる密着であるため、高い密着性が得られて優れた液漏れ防止効果を奏する。
【0034】
また、飲料容器10は、コップ本体20と蓋体30とが内嵌合であることにより、蓋体30の最外部である蓋鍔部31がコップ本体20の上部開口21の最外部である外周鍔部27に当接され、特に蓋体30の蓋鍔部31がコップ本体20の外周鍔部27より小さく形成されて、蓋鍔部31が外周鍔部27の最外部より内側に配置される。そのため、コップ本体20から外側へ必要以上に突出する部位がなくなり、コップ本体20の外観形状が損なわれない。
【0035】
さらに、図4の実施例のように、蓋体30の蓋面部40が蓋体30の外周嵌着部35(テーパー状嵌着面36)よりも下部に形成された場合には、蓋面部40の飲用部41(飲み口部45)が蓋鍔部31より下方に設けられることになる。そのため、使用者Mが喫飲する場合には、図6の説明図からよく理解されるように、使用者Mの口付け部分は蓋体30の蓋鍔部31を含むコップ本体20の上部開口21となる。なお、蓋鍔部31がコップ本体20の外周鍔部27の最外部より内側に配置されて不要な突出部がないことに加え、外周鍔部27に曲面部28が設けられることにより、使用者Mの喫飲時の口あたりは良好となる。
【0036】
これに対して、図7,8に示す従来の外嵌合の飲料用容器100の場合では、蓋体130の外周縁部135がコップ本体120の外周縁部125の外側にオーバーラップ状に被着される外嵌合構造であるために、そもそも液体である内容物Lのシール部(嵌合部)がコップ本体120の外面側となり外部への液漏れや液たれが生じやすい。そして、図8の説明図のように喫飲時に容器100を傾けた際には、蓋体130の外周縁部135の端部135eがコップ本体120の外周縁部125よりも下方に位置し、かつ蓋面140が盛上り部141により蓋体130の外周縁部135よりも上方に位置する。そのため、飲用部(飲み口部)145が外周縁部135よりも上方に設けられて、使用者Mの口付け部分が蓋体130の盛上り部141の上縁部142となる。
【0037】
このような従来の飲料用容器100では、使用者Mが喫飲時に容器100を傾けた場合、内容物Lがコップ本体120の外周縁部125と蓋体130の外周縁部135との間から漏出し、漏出した内容物L1が外周縁部135の端部135e側から容器下方にこぼれて、使用者Mにかかってしまうおそれがある。
【0038】
本発明の飲料用容器10では、図6に示すように使用者Mの口付け部分が蓋体30の蓋鍔部31を含むコップ本体20の上部開口21であることにより、喫飲時に容器10が傾けられた場合に蓋鍔部31より下方の飲用部41(飲み口部45)が使用者Mの口もとに近接するため飲みやすい。特に、万が一コップ本体20の外周鍔部27と蓋体30の蓋鍔部31との間から内容物Lが漏出したとしても、使用者Mは蓋体30の蓋鍔部31を含むコップ本体20の上部開口21に口をつけているため、漏出した内容物はそのまま使用者Mの口に入ってこぼれるおそれがない。
【0039】
このように、本発明の実施例の飲料用容器10は、コップ本体20と蓋体30とが内嵌合であり、蓋体30の飲用部41(飲み口部45)を蓋鍔部31より下方に設けて、蓋体30の蓋鍔部31を含むコップ本体20の上部開口21を喫飲時の口付け部分としたことにより、容器が傾けられる喫飲時に、従来のように不意の内容物の漏出によって使用者が服等を汚してしまう等の問題を適切に回避することができ、液漏れに強い飲料用容器とすることができる。また、この実施例の蓋体30の形状は、従来のドーム型の盛上り部を有する外嵌合に比して、形状的にも構造的にも使用するプラスチック使用量を抑制することができ、あわせて外観的にもすっきりと小型化して使用者の使用感を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上の通り、本発明の蓋付き飲料用容器は、いわゆる内嵌合構造を採ることにより、コップ本体に対する蓋体の閉蓋に際して、容器を傾ける喫飲時の液漏れに強い容器とすることができる。したがって、従来の蓋付き飲料用容器の代替として有望である。
【符号の説明】
【0041】
10 蓋付き飲料用容器
20 コップ本体
21 上部開口
22 底部
23 胴部
24 上部開口の内周壁部
25 内周密着部(本体密着部)
26 テーパー状密着面
27 外周鍔部
28 曲面部(カール部)
30 蓋体
31 蓋鍔部
32 水平面
33 垂下部
34 垂下部の外周壁部
35 外周嵌着部(蓋体嵌着部)
36 テーパー状嵌着面
40 蓋面部
41 飲用部
42,42a 指掛部
43 破断部
44 保持凹部
45 飲み口部
46 凸段部
47,47a,47b 持ち上げ部
M 使用者
L 内容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8