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特開2022-109054車両の制御装置、方法、プログラム、及び車両
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  • 特開-車両の制御装置、方法、プログラム、及び車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109054
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】車両の制御装置、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/00 20060101AFI20220720BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20220720BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20220720BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20220720BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220720BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
B60W30/00
B60W30/02
B60W30/09
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004378
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】神田 渉
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 達也
(72)【発明者】
【氏名】東 祥太
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BA18
3D241BA33
3D241CD05
3D241DB20Z
5H181AA01
5H181FF04
5H181FF27
5H181KK01
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】優先度の高いアプリケーション要求を優先的に実現するようにアクチュエータに対して要求を出力することができる制御装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される制御装置であって、運転支援機能を実現する複数のアプリケーションから、自身のアプリケーションを特定する識別子及びアプリケーション要求を受け付ける受付部と、複数のアプリケーションの優先度に関する情報を記憶する記憶部と、情報と識別子とに基づいて、受付部が受け付けた複数のアプリケーション要求を調停する調停部と、調停部の調停結果に基づいて、アクチュエータに対する要求を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される制御装置であって、
運転支援機能を実現する複数のアプリケーションから、自身のアプリケーションを特定する識別子及びアプリケーション要求を受け付ける受付部と、
複数の前記アプリケーションの優先度に関する情報を記憶する記憶部と、
前記情報と前記識別子とに基づいて、前記受付部が受け付けた複数の前記アプリケーション要求を調停する調停部と、
前記調停部の調停結果に基づいて、アクチュエータに対する要求を出力する出力部と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記アプリケーション要求は、前記車両の横方向運動に関する要求である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数のアプリケーションが実現する機能は、自動運転機能と衝突回避支援機能とを含み、
前記情報は、前記自動運転機能を実現するアプリケーションよりも前記衝突回避支援機能を実現するアプリケーションの方が、優先度が高く設定されている、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記複数のアプリケーションが実現する機能は、車線維持支援機能をさらに含み、
前記情報は、前記車線維持支援機能を実現するアプリケーションよりも前記自動運転機能を実現するアプリケーションの方が、優先度が高く設定されている、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記調停部は、前記車両の状態又はドライバーの状態に基づいて前記情報の優先度を変更し、当該変更後の優先度に基づいて複数の前記アプリケーション要求を調停する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
MGRであって、
ADASアプリケーションの機能を実装した複数の装置からアプリケーションIDと行動計画要求とを受け付ける受付部と、
複数の前記アプリケーションIDの優先度に関する情報を記憶する記憶部と、
前記情報に基づいて、前記受付部が受け付けた複数の前記行動計画要求を調停する調停部と、
前記調停部による調停結果に基づいて、運動要求をアクチュエータに出力する出力部と、を備える、
MGR。
【請求項7】
車両に搭載される制御装置のコンピューターが実行する制御方法であって、
運転支援機能を実現する複数のアプリケーションから、自身のアプリケーションを特定する識別子及びアプリケーション要求を受け付けるステップと、
所定の記憶部が記憶する複数の前記アプリケーションの優先度に関する情報と前記識別子とに基づいて、前記受け付けた複数の前記アプリケーション要求を調停するステップと、
前記調停するステップの調停結果に基づいてアクチュエータに対する要求を出力するステップと、を含む、
制御方法。
【請求項8】
車両に搭載される制御装置のコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
運転支援機能を実現する複数のアプリケーションから、自身のアプリケーションを特定する識別子及びアプリケーション要求を受け付けるステップと、
所定の記憶部が記憶する複数の前記アプリケーションの優先度に関する情報と前記識別子とに基づいて、前記受け付けた複数の前記アプリケーション要求を調停するステップと、
前記調停するステップの調停結果に基づいてアクチュエータに対する要求を出力するステップと、を含む、
制御プログラム。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される制御装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転支援機能(自動運転や自動駐車など)を実現する複数のアプリケーションが車両に実装されている。特許文献1には、これらの複数のアプリケーションから出力される要求(以下「アプリケーション要求」という)をそれぞれ受け付けて、この受け付けた複数のアプリケーション要求を調停し、その調停結果に基づいてアクチュエータ(ステアリング装置やブレーキ装置など)を駆動するための要求を出力する、制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-032894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転支援機能を実現する複数のアプリケーションには、それぞれの機能に応じた作動の優先度があるため、この優先度に基づいて運転支援機能に関するアプリケーション要求を実現させることが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された制御装置では、複数のアプリケーション要求を同時に受け付けた場合、優先度の高いアプリケーション要求ではなく優先度の低いアプリケーション要求を実現するようにアクチュエータに対して要求を出力するおそれがあった。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、優先度の高いアプリケーション要求を優先的に実現するようにアクチュエータに対して要求を出力することができる制御装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載される制御装置であって、運転支援機能を実現する複数のアプリケーションから、自身のアプリケーションを特定する識別子及びアプリケーション要求を受け付ける受付部と、複数のアプリケーションの優先度に関する情報を記憶する記憶部と、情報と識別子とに基づいて、受付部が受け付けた複数のアプリケーション要求を調停する調停部と、調停部の調停結果に基づいて、アクチュエータに対する要求を出力する出力部と、を備える、制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の制御装置によれば、記憶部に記憶された優先度に関する情報に基づいて複数のアプリケーション要求の調停を行うため、優先度の高いアプリケーション要求を優先的に実現するようにアクチュエータに対して要求を出力する(指示を行う)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る制御装置とその周辺部の機能ブロック図
図2】記憶部が記憶するアプリケーション優先順位情報の一例
図3】アプリケーションの優先順位を設定するための各種基準の一例
図4】車両に実装されるアプリケーション及び機能の一例
図5】アプリケーション優先順位情報の応用例
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の制御装置は、所定の基準に従って予め設定した複数のアプリケーションの優先順位に基づいて、複数のアプリケーション要求の調停を行う。これにより、優先度の高いアプリケーション要求を優先的に実現するようにアクチュエータに対して指示を行うことができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車両に搭載される制御装置とその周辺部の機能ブロック図である。図1に例示した機能ブロックは、複数の運転支援装置11~13と、制御装置20と、アクチュエータ30と、を備える。
【0012】
運転支援装置11~13は、各装置に実装されるアプリケーションを実行することにより、少なくとも車両の駆動制御及び制動制御を含む車両の運転を支援するための様々な機能(運転支援機能)を実現するための構成である。運転支援装置11~13が実装するアプリケーションとしては、自動運転の機能を実現するアプリケーション、自動駐車の機能を実現するアプリケーション、及び先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)の機能を実現するアプリケーションを例示できる。先進運転支援システムのアプリケーション(ADASアプリケーション)には、衝突回避支援(PCSなど)の機能を実現するアプリケーション、歩行者リスク回避の機能を実現するアプリケーション、前走車との車間距離を一定に保ちながら走行する前車追従走行(ACCなど)の機能を実現するアプリケーションや、走行する車線の維持を行う車線維持支援(LKA、LTAなど)の機能を実現するアプリケーションや、衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ(AEBなど)の機能を実現するアプリケーション、車両の走行車線の逸脱を警告する車線逸脱警報(LDW、LDAなど)の機能を実現するアプリケーション、ハンドル操作ガイドの機能を実現するアプリケーションなどが含まれる。
【0013】
この運転支援装置11~13は、図示しない各種センサなどから取得(入力)する車両の情報(認識センサ情報など)に基づいて、アプリケーション要求として、アプリケーション単独での機能性(商品性)を担保した行動計画(前後加速度/減速度など)の要求を、制御装置20にそれぞれ出力する。また、運転支援装置11~13は、アプリケーション要求と共に、その要求を行ったアプリケーションを一意に特定することができる識別子(アプリケーションID)を制御装置20にそれぞれ出力する。アプリケーションIDは、アプリケーションごとに予め定められている。
【0014】
この運転支援装置11~13は、CPUなどのプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスを有する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)などのコンピューターによって実現される。例えば、自動運転アプリケーションが実装された自動運転ECU、自動駐車アプリケーションが実装された自動駐車ECU、及び先進運転支援アプリケーションが実装されたADAS-ECUによって、運転支援装置11~13が構成され得る。また、各運転支援装置11~13が実装するアプリケーションの数は、図1に示した1つに限定されず、2つ以上であってもよい。例えば、ACCアプリケーション、LKAアプリケーション、及びAEBアプリケーションが、1つの運転支援装置に実装されてもよい。また、運転支援装置11~13の数も、図1に示した3つに限定されず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0015】
制御装置20は、運転支援装置11~13から受け付けるアプリケーション要求(行動計画要求)及びアプリケーションIDに基づいて、車両の運動のうち少なくとも横方向運動に関する制御内容を決定し、この決定した制御内容に基づいてアクチュエータ30に対して必要な要求を出力する。この制御装置20は、いわゆる車両の運動に関わるマネージャ(ADAS-MGRやVehicle-MGRなど)として、あるいはマネージャの一部として機能し、車両の動きを制御する。制御装置20は、受付部21と、記憶部22と、調停部23と、出力部24と、を含む。
【0016】
受付部21は、各運転支援装置11~13のアプリケーションが出力するアプリケーション要求(行動計画要求)及びアプリケーションIDを、それぞれ受け付ける。本実施形態におけるアプリケーション要求としては、車両の横方向運動に関する舵角(又は操舵角)などを例示できる。受付部21が受け付けたアプリケーション要求及びアプリケーションIDは、調停部23に出力される。
【0017】
記憶部22は、各運転支援装置11~13に実装されたアプリケーションを含む複数のアプリケーションの優先順位に関する情報(アプリケーション優先順位情報)を記憶する。図2は、記憶部22が記憶するアプリケーション優先順位情報の一例である。図2のように、このアプリケーション優先順位情報では、アプリケーションIDで特定される各アプリケーション(さらにはその機能)の優先順位が設定されている。このアプリケーションの優先順位は、予め定められた基準に従って設定される。
【0018】
図3は、アプリケーションの優先順位を設定するための各種基準の一例である。この図3において、上段の<優先基準>は、アプリケーションの内容と優先度との関係を示したものである。図3上段の例では、緊急回避専用のアプリケーションの優先度が最も高く、次いでユーザーが介在しないアプリケーション、これらのアプリケーションを除くアプリ側の要望に準拠するアプリケーション、及び工場内でしか使用されない公道で作動しないアプリケーションの順で優先度が高いことが示されている。また、図3において、中段の<アプリ競合時の判断基準>は、優先度が同一のアプリケーションが存在する場合における選択の判断基準を示したものである。図3中段の例では、まず制御が適用される範囲における車両の速度(制御範囲速度)が高い方のアプリケーションが優先的に選択され(A-1)、制御範囲速度も同一である場合には、次に安全フェーズ(アプリケーションによって保証される範囲)の優先順に選択される(A-2)。また、図3において、下段の<複数機能時の判断基準>は、1つのアプリケーションに複数の機能が存在する場合における選択の判断基準を示したものである。図3下段の例では、複数の機能を比較して安全性への対応や制御性などで優先すべき順で選択される(B-1)。
【0019】
記憶部22には、対象となるアプリケーションに関して、図3に示す基準に沿って事前に決定されたアプリケーションの優先順位(図2)が記憶される。このアプリケーションの優先順位の決定手法については、後述する。
【0020】
調停部23は、受付部21が各運転支援装置11~13から受け付けた複数のアプリケーション要求(行動計画要求)を調停する。この調停に際して、調停部23は、各運転支援装置11~13から取得したアプリケーションIDと、記憶部22が記憶するアプリケーション優先順位情報とに基づいて、要求があったアプリケーションの優先順位を決定する。そして、調停部23は、この決定したアプリケーションの優先順位に従って、複数のアプリケーション要求を調停する。なお、調停部23は、図示しない車載装置から取得する車両の状態やドライバーの状態やアベイラビリティを表す情報にさらに基づいて、アプリケーションの優先順位を決定してもよい。
【0021】
出力部24は、調停部23におけるアプリケーション要求(行動計画要求)の調停結果に基づいて、アクチュエータ30に対する要求(運動要求)を出力する。
【0022】
アクチュエータ30は、運転支援装置11~13が出力するアプリケーション要求(行動計画要求)を実現するためのシステム(実現システム)の1つである。アプリケーション要求が舵角である場合には、アクチュエータ30として電動パワーステアリングシステム(EPS)を例示できる。なお、図1の例では、出力部24が要求(運動要求)を出力するアクチュエータ30が1つである構成を示したが、アクチュエータ30は2つ以上であってもよい。
【0023】
[優先順位の決定処理]
図4をさらに参照して、本実施形態に係る制御装置20によって実施されるアプリケーションの優先順位を決定する手順を説明する。図4は、車両に実装された複数のアプリケーションのうち、制御装置20に対してアプリケーション要求を出力する可能性がある対象アプリケーションを示した一例である。
【0024】
図4に示す11つの対象アプリケーションについて、まず、優先基準(図3上段)に従って優先度1のアプリケーションが特定される。この優先度1である緊急回避専用のアプリケーションは、対象アプリケーションの中で衝突回避支援アプリケーションのみが該当する。従って、この衝突回避支援アプリケーションのアプリケーションIDが優先順位「1位」に決定される。
【0025】
次に、優先基準(図3上段)に従って優先度2のアプリケーションが特定される。この優先度2であるユーザーが介在しないアプリケーションは、対象アプリケーションの中では自動駐車アプリケーション、自動運転(レベル4)のEMアプリケーション、自動運転(レベル4)のADアプリケーション、自動運転(レベル3)のEMアプリケーション、及び自動運転(レベル3)のADアプリケーションの複数が該当する。よって、さらにアプリ競合時の判断基準(図3中段)に従ってアプリケーションの選択が行われる。最初に制御範囲速度が高いか低いかで区別する。自動運転(レベル4)及び自動運転(レベル3)は、低速から高速までの広い範囲で作動するのに対して、自動駐車は低速の範囲でしか作動しない。これにより、自動運転(レベル4)及び自動運転(レベル3)のアプリケーションが選択される。次に、自動運転(レベル4)と自動運転(レベル3)とは制御範囲速度が同じであるため、安全フェーズを判断する。国土交通省自動車局の「自動運転車の安全技術ガイドライン」に示された自動運転化レベルの定義の概要に基づくと、高度運転自動化とされている自動運転(レベル4)の方が、条件付き運転自動化とされている自動運転(レベル3)よりも安全フェーズが上位にある。これにより、自動運転(レベル4)のアプリケーションが選択される。さらに、自動運転(レベル4)のアプリケーションには、EMとADとの複数の機能があるため、複数機能時の判断基準(図3下段)に従って安全性対応や制御性を判断する。EM(Emergency Maneuver)は、国際基準(ACSF法規)にある車両を自動で停止させる機能であり、通常の自動運転であるAD(Autonomous Driving function)よりも優先度が高い。これにより、自動運転(レベル4)のADアプリケーションよりも自動運転(レベル4)のEMアプリケーションが選択される。この選択は、自動運転(レベル3)のアプリケーションについても同様に行われる。以上の選択の結果、優先度2のアプリケーションについて、自動運転(レベル4)のEM、自動運転(レベル4)のAD、自動運転(レベル3)のEM、自動運転(レベル3)のAD、及び自動駐車の順で、各アプリケーションのアプリケーションIDが優先順位「2位~6位」に決定される。
【0026】
次に、優先基準(図3上段)に従って優先度3のアプリケーションが特定される。この優先度3であるアプリ側要望に準拠するアプリケーションは、対象アプリケーションの中では車線逸脱警報アプリケーション、車線維持支援アプリケーション、歩行者リスク回避アプリケーション、及びハンドル操作ガイドアプリケーションの複数が該当する。これらの複数のアプリケーションについては、車両のシステムにおいて要望される順序(予め付与された優先度)に応じて選択が行われる。本実施形態では、車線逸脱警報、車線維持支援、歩行者リスク回避、及びハンドル操作ガイドの順で、各アプリケーションのアプリケーションIDが優先順位「7位~10位」に決定される。
【0027】
最後に、優先基準(図3上段)に従って優先度4のアプリケーションが特定される。この優先度4である公道で作動しないアプリケーションは、対象アプリケーションの中で工場内だけで作動する搬送アプリケーションのみが該当する。従って、この搬送アプリケーションのアプリケーションIDが優先順位「11位」に決定される。
【0028】
以上の手順によって、図2に示したとおりのアプリケーションの優先順位が一義的に決定される。
【0029】
なお、アプリ競合時の判断基準(図3中段)において制御範囲速度が同じ場合にアプリケーションを選択する手法としては、上述した自動運転車の安全技術ガイドラインに示された自動運転化レベルの定義の概要に基づく以外にも、車両の機能安全に関するISO_26262規格で定義されたリスク分類である自動車安全水準(ASIL:Automotive Safety Integrity Level)に基づいてもよい。ASILに基づく場合、ASILパラメータ「D」の優先度を最も高く、ASILパラメータ「A」の優先度を最も低くすることができる。また、アプリ競合時の判断基準(図3中段)において制御範囲速度が同じ場合にアプリケーションを選択する他の手法として、パワーの出力を許容することに関するアプリケーション(下限系アプリ)よりもパワーの出力を抑制することに関するアプリケーション(上限系アプリ)の優先度を高くすることができる。
【0030】
[応用例1]
図3に示す基準に基づいて決定されて記憶部22に記憶されたアプリケーションの優先順位(図2)は、車両の状態やドライバーの状態などに応じて、一時的に入れ替えることが可能である。
【0031】
例えば、車両が駐車場内にいる状態(又は駐車場外から駐車場内に侵入した状態)であれば、車両が駐車するものと認識できるため、駐車に関する制御が終了(又は中止)したと判断できるまで、例えば図2に示す優先順位を図5に示す優先順位のように自動運転と自動駐車との優先順位を一時的に入れ替えてもよい。車両が駐車場内にいるか否かの判断には、例えばナビゲーション装置の位置情報を用いることができる。駐車に関する制御の終了(又は中止)は、イグニッションがオフ(IG-OFF)されたことによって、又はシフトポジションがパーキング(P)の位置になったことによって、あるいはパーキングブレーキがかけられた(PKB-ON)ことによって、判断することができる。なお、このような優先順位の一時的な入れ替えは、最優先とする衝突回避支援のアプリケーションを除いて実施することで、車両の安全性への対応を維持しつつ、アプリケーションの調停を好適に行うことができる。
【0032】
[応用例2]
また、本実施形態では、制御装置20が、車両の運動のうち横方向に関する運動の調停を行う場合にアプリケーションの優先順位を適用する例を説明した。しかし、制御装置20が、縦方向(前後方向)に関する運動の調停を行う場合にアプリケーションの優先順位を適用することも可能である。
【0033】
例えば、制御装置20が、アプリケーション要求として前後加速度を出力している複数のアプリケーション間の調停を、最小の前後加速度(加速度MIN値)を要求しているアプリケーションを選択することで実施する際、この加速度MIN値と次に小さい加速度値との差が微少でかつ互いの大小関係が変動するような場合には、調停によって選択されるアプリケーションが頻繁に切り替わってしまうことになる。そこで、例えば、加速度MIN値と次に小さい加速度値との差分が所定の閾値(例えば、0.01m/sec)以下であるときには、アプリケーションの優先順位に基づいて、1つのアプリケーションを固定的に選択してもよい。
【0034】
[応用例3]
各アプリケーションが制御装置20に対して出力するアプリケーション要求としては、実施形態で例示した車両の横方向運動に関する舵角(又は操舵角)や車両の縦方向運動に関する前後加速度の他に、シフトポジションの要求が挙げられる。この場合、どのシフトポジションを選択するかを、アプリケーションの優先順位に基づいて決定することも可能である。
【0035】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る制御装置によれば、所定の優先度に関する各種の基準に従って予め設定した複数のアプリケーションの優先順位に基づいて、複数のアプリケーション要求の調停を行う。これにより、優先度の高いアプリケーション要求を優先的に実現するようにアクチュエータに対して要求を出力する(指示を行う)ことができる。
【0036】
また、本実施形態に係る制御装置によれば、新たな機能が追加された場合でも、図3に示すアプリケーションの優先順位を設定するための基準に従うことで、優先順位を一義的に決定することができる。例えば、図4の実装された複数のアプリケーションに、自動バレー駐車の機能を実現するアプリケーションが新たに追加されたと仮定する。自動バレー駐車機能とは、駐車場内を自動走行して空いている駐車スペースを探して駐車する機能である。この自動バレー駐車アプリケーションは、優先度2のアプリケーションに該当するが、低速の範囲で作動するため、自動運転(レベル4)及び自動運転(レベル3)のアプリケーションよりも優先度が低い。一方、自動バレー駐車の速度(20km/h程度)は、自動駐車の速度(10km/h程度)よりも一般的に速い。よって、自動バレー駐車アプリケーションは、図2に示す優先順位の5位と6位との間に位置することが一義的に定まるのである。
【0037】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、車両の制御装置だけでなく、制御装置及び他の装置を含む制御システム、プロセッサとメモリを備えた制御装置が実行する制御方法、制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、あるいは制御装置を備えた車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本開示は、車両などに搭載される制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0039】
11~13 運転支援装置
20 制御装置
21 受付部
22 記憶部
23 調停部
24 出力部
30 アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5