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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010906
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ファン付き衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20220107BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D27/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111692
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】595042427
【氏名又は名称】株式会社コミネ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 直哉
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB16
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC08
3B035AA01
3B035AB03
3B035AB20
3B035AC02
(57)【要約】
【課題】着用時の外観デザインがよく、着心地がよいファン付き衣服を提供する。
【解決手段】衣服1にファン2が取り付けられたファン付き衣服10であって、ファン2は、衣服1の内部から外部へ空気を排出し、衣服1は、通気性を有する内側生地20と、内側生地20を外側から覆い、内側生地20に比べて空気が通りにくい性質の外側生地30と、を有し、内側生地20は、第1層と、内側生地20の厚さ方向において第1層と間隔をあけて配置される第2層と、第1層と第2層との間に位置し、厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能な通気層と、を有し、通気層は、第1層と第2層とを厚さ方向に離間させた状態で保持する弾性変形可能な複数の支持糸を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服にファンが取り付けられたファン付き衣服であって、
前記ファンは、前記衣服の内部から外部へ空気を排出し、
前記衣服は、
通気性を有する内側生地と、
前記内側生地を外側から覆い、前記内側生地に比べて空気が通りにくい性質の外側生地と、を有し、
前記内側生地は、
第1層と、
前記内側生地の厚さ方向において前記第1層と間隔をあけて配置される第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に位置し、前記厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能な通気層と、を有し、
前記通気層は、前記第1層と前記第2層とを前記厚さ方向に離間させた状態で保持する弾性変形可能な複数の支持糸を有する、
ファン付き衣服。
【請求項2】
前記外側生地は、前記外側生地を貫通する吸気孔を有し、
前記吸気孔は、前記ファンから離れた前記衣服の縁部に配置される、
請求項1に記載のファン付き衣服。
【請求項3】
前記外側生地は、空気を通さない性質の生地からなる、
請求項1または2に記載のファン付き衣服。
【請求項4】
前記衣服は、
着用者の胸部と対向する前身頃と、
着用者の背部と対向し、前記前身頃と一体に裁断された後見頃と、を有し、
前記前身頃と前記後見頃との境界部分に、縫製部を有さない、
請求項1から3のいずれか1項に記載のファン付き衣服。
【請求項5】
前記衣服は、
着用者の腕部が通されるアームホールと、
着用者の胴部が通されるボトムホールと、
前記アームホールおよび前記ボトムホールの少なくともいずれかの開口縁部に沿って配置され、弾性変形により前記開口縁部の開口を狭める弾性ひもと、を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のファン付き衣服。
【請求項6】
前記衣服は、
着用者の胸部と対向する一対の前身頃と、
一対の前記前身頃の互いに対向する縁部同士を着脱可能に連結する連結部と、
着用者の背部と対向し、前記ファンが配置される後見頃と、
着用者の首部が通されるネックホールと、を有し、
前記外側生地は、前記外側生地を貫通する複数の吸気孔を有し、
複数の前記吸気孔は、少なくとも前記連結部および前記ネックホールのいずれかに沿って、前記衣服の縁部に配列する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のファン付き衣服。
【請求項7】
前記内側生地は、前記厚さ方向において1~3N/cmの外力を受けたときに弾性変形し始める、
請求項1から6のいずれか1項に記載のファン付き衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン付き衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に記載のファン付き衣服が知られている。ファン付き衣服は、例えば夏季などにおいて、衣服に取り付けたファンを作動させて衣服の外部から内部に空気を取り込むことにより、着用者がかいた汗の蒸発を促して、身体を効率よく冷却できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6017069号公報
【特許文献2】特開2018-178334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のファン付き衣服は、衣服の内部に空気を取り入れることで衣服が膨らみ、衣服の外観デザイン(ファッション性)が損なわれる点に課題を有していた。なお、衣服の内部から外部へファンで空気を吸い出すと、衣服が着用者の身体に貼り付いて、着心地が悪くなる。
【0005】
本発明は、着用時の外観デザインがよく、着心地がよいファン付き衣服を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、衣服にファンが取り付けられたファン付き衣服であって、前記ファンは、前記衣服の内部から外部へ空気を排出し、前記衣服は、通気性を有する内側生地と、前記内側生地を外側から覆い、前記内側生地に比べて空気が通りにくい性質の外側生地と、を有し、前記内側生地は、第1層と、前記内側生地の厚さ方向において前記第1層と間隔をあけて配置される第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置し、前記厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能な通気層と、を有し、前記通気層は、前記第1層と前記第2層とを前記厚さ方向に離間させた状態で保持する弾性変形可能な複数の支持糸を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のファン付き衣服によれば、着用時の外観デザインがよく、着心地がよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(a)は、本実施形態のファン付き衣服を示す正面図であり、図1(b)は、本実施形態のファン付き衣服を示す背面図である。
図2図2は、衣服の一部を拡大して示す断面図である。
図3図3は、内側生地の一部を拡大して示す斜視図である。
図4図4は、衣服の裁断形状を示す展開図である。
図5図5(a)は、ファン付き衣服の風の流れを説明する正面図であり、図5(b)は、ファン付き衣服の風の流れを説明する背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のファン付き衣服10について、図面を参照して説明する。
本実施形態のファン付き衣服10は、例えば、自動二輪車等のオートバイや自転車などに乗るバイクライダーが着用する、バイクライダー用ファン付き衣服である。
【0010】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態のファン付き衣服10は、着用者の身体に着用されるベストである。ファン付き衣服10は、衣服1と、ファン2と、作動スイッチ3と、配線部材4と、を備える。
【0011】
衣服1は、前身頃1aと、連結部1bと、後見頃1cと、アームホール1dと、ボトムホール1eと、弾性ひも1f,1gと、ネックホール1hと、を有する。
前身頃1aは、衣服1の前側部分に配置される。前身頃1aは、図示しない着用者の胸部と対向する。本実施形態では前身頃1aが、着用者の胴部回りの周方向(左右方向)に並んで、一対設けられる。一対の前身頃1aは、周方向に互いに対向する各縁部が、上下方向に延びる。
【0012】
連結部1bは、衣服1の前側部分に配置される。連結部1bは、例えばファスナー等である。連結部1bは、一対の前身頃1aの互いに対向する縁部同士を着脱可能に連結する。連結部1bは、一対の前身頃1aの互いに対向する各縁部に沿って、上下方向に延びる。
【0013】
後見頃1cは、衣服1の後側部分に配置される。後見頃1cは、着用者の背部と対向する。図4に示すように、本実施形態では後見頃1cが、前身頃1aと一体に裁断される。すなわち、一対の前身頃1aと後見頃1cとは、互いの境界部分Bに縫製部を有することなく、一体の生地により形成される。
【0014】
図1(b)に示すように、後見頃1cは、後見頃1cを生地の厚さ方向に貫通する排気孔5を有する。排気孔5は、ファン2の開口形状と同じ形状を有しており、例えば円孔状である。本実施形態では排気孔5が、後見頃1cの下端部に配置される。排気孔5は、後見頃1cに互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態では排気孔5が、後見頃1cの左右方向の両端部に一対配置される。
【0015】
図1(a)、(b)に示すように、アームホール1dは、衣服1の上側部分に配置される。アームホール1dは、衣服1の左右方向の両端部に一対設けられる。アームホール1dには、着用者の腕部が通される。
ボトムホール1eは、衣服1の下端部に配置される。ボトムホール1eには、着用者の胴部が通される。
【0016】
弾性ひも1f,1gは、例えばゴムひも等である。なお弾性ひも1f,1gは、弾性変形可能なひも状であればよく、ゴム製に限らない。弾性ひも1f,1gは、アームホール1dおよびボトムホール1eの少なくともいずれかの開口縁部に沿って配置され、弾性変形により開口縁部の開口を狭める。つまり、弾性ひも1f,1gの弾性変形作用によって、各開口縁部の開口面積が縮小させられる。
【0017】
本実施形態では、アームホール1dおよびボトムホール1eの各開口縁部に、弾性ひも1f,1gがそれぞれ設けられる。具体的に、一対のアームホール1dの各開口縁部には、第1弾性ひも1fがそれぞれ、つまり一対配置される。ボトムホール1eの開口縁部には、第2弾性ひも1gが配置される。第1弾性ひも1fおよび第2弾性ひも1gはそれぞれ、各開口縁部に沿って延びる環状である。
ネックホール1hは、衣服1の上端部に配置される。ネックホール1hには、着用者の首部が通される。
【0018】
図2および図3に示すように、衣服1は、通気性を有する内側生地20と、内側生地20を外側から覆い、内側生地20に比べて空気が通りにくい性質の外側生地30と、を有する。つまり衣服1は、互いに通気性が異なる内側生地20および外側生地30を備えた2層構造とされる。
なお各図に示す符号Tは、各生地20,30の厚さ方向を示す。内側生地20と外側生地30とは、厚さ方向Tに互いに重なって配置される。本実施形態では、厚さ方向Tのうち、内側生地20から外側生地30へ向かう方向(+T側)を外側と呼び、外側生地30から内側生地20へ向かう方向(-T側)を内側と呼ぶ。外側とは、厚さ方向Tにおいて着用者の身体から離れる方向であり、内側とは、厚さ方向Tにおいて着用者の身体に近づく方向である。
【0019】
図4に示すように、内側生地20は、前身頃1aに位置する部分と後見頃1cに位置する部分とが、一体に裁断されている。すなわち内側生地20は、前身頃1aを構成する部分と、後見頃1cを構成する部分とを有し、これらの部分が連続する単一のパネル素材から一体に切り出されている。
【0020】
図2および図3に示すように、内側生地20は、立体(3次元)メッシュ構造を有する。内側生地20は、第1層21と、第2層22と、通気層24と、を有する。
第1層21は、厚さ方向Tと垂直な方向に拡がる。第1層21は、例えば撚糸が網状に編まれて構成される。本実施形態では第1層21が、ハニカム(六角形)構造の網状に形成される。すなわち、第1層21の各網目は、第1層21を厚さ方向Tに貫通する六角形孔状の開口を有する。なお第1層21の各網目の開口形状は、例えば、六角形孔状以外の多角形孔状、円孔状、楕円孔状、長孔状等であってもよい。
【0021】
第2層22は、厚さ方向Tにおいて第1層21と間隔をあけて配置される。第2層22は、厚さ方向Tと垂直な方向に拡がる。第2層22は、例えば撚糸が網状に編まれて構成される。本実施形態では第2層22が、ハニカム構造の網状に形成される。すなわち、第2層22の各網目は、第2層22を厚さ方向Tに貫通する六角形孔状の開口を有する。なお第2層22の各網目の開口形状は、例えば、六角形孔状以外の多角形孔状、円孔状、楕円孔状、長孔状等であってもよい。
本実施形態では、第1層21と第2層22とが、互いに同じ構造を有する。つまり第1層21と第2層22とは、同一部材(共通素材)により構成される。
【0022】
通気層24は、厚さ方向Tにおいて第1層21と第2層22との間に位置する。通気層24は、厚さ方向Tと垂直な方向に拡がる。通気層24の厚さ方向Tの寸法は、第1層21および第2層22の各厚さ方向Tの寸法よりも大きい。通気層24は、少なくとも厚さ方向Tと垂直な方向に空気が流通可能である。通気層24の内部空間と、第1層21の各網目の開口および第2層22の各網目の開口とは、互いに連通する。このため通気層24には、厚さ方向Tにも空気が流通可能である。
【0023】
通気層24は、第1層21と第2層22とを厚さ方向Tに離間させた状態で保持する弾性変形可能な複数の支持糸23を有する。複数の支持糸23は、厚さ方向Tと垂直な方向に互いに間隔をあけて配置される。各支持糸23は、厚さ方向Tに延びる。各支持糸23間には、空気が流通可能である。各支持糸23は、第1層21と第2層22とを連結しつつ、第1層21と第2層22とが厚さ方向Tに所定寸法以上に離間した状態を維持するように、第1層21と第2層22とを支持する。
【0024】
支持糸23は、弾性変形可能なモノフィラメント(単繊維)により形成される。支持糸23は、第1層21および第2層22を構成する各撚糸よりも、強度が大きく剛性が高い。支持糸23の厚さ方向Tの中央部23cは、厚さ方向Tの両端部に対して、厚さ方向Tと垂直な方向に膨出する。つまり支持糸23は、湾曲した曲線状に延びる。
【0025】
支持糸23は、厚さ方向Tの外側(+T側)と内側(-T側)とに交互に折り返されながら、第1層21と第2層22とに縫い合わされている。具体的に、本実施形態の支持糸23は、第1層21および第2層22の各網目の開口縁部(六角形の辺)に沿って、第1層21と第2層22とに縫い込まれる。
【0026】
上記構造とされた内側生地20は、厚さ方向Tにおいて1~3N/cm の外力を受けたときに、弾性変形し始める。すなわち、内側生地20は、10cm×10cmの単位面積当たりに10~30kgfの均等荷重(外力)を厚さ方向Tから受けたときに、複数の支持糸23がさらに湾曲するように弾性変形する。本実施形態では、内側生地20が、10cm×10cmの単位面積当たりに20kgf以上の均等荷重を厚さ方向Tから受けたとき、つまり厚さ方向Tにおいて2N/cm 以上の外力を受けたときに、弾性変形し始める。
なお上記「弾性変形し始める」とは、内側生地20の厚さ方向Tに沿う断面を目視したときに、内側生地20が外力を受けて弾性変形し始めたことが明らかに認識できる程度の変形状態(度合い)を指し、具体的には、厚さ方向Tに例えば1mm以上(1~2mm程度)の弾性変形が生じた状態を指す。
【0027】
また、内側生地20の厚さ方向Tの寸法は、支持糸23が弾性変形させられていない状態において、例えば3~15mmであり、本実施形態では5~10mmである。
【0028】
図2において、本実施形態では外側生地30が、空気を通さない性質の生地からなる。具体的に、外側生地30は、例えば防水コーティングが施された水滴を通さない構造の生地等により形成される。
【0029】
図4に示すように、外側生地30は、前身頃1aに位置する部分と後見頃1cに位置する部分とが、一体に裁断されている。すなわち外側生地30は、前身頃1aを構成する部分と、後見頃1cを構成する部分とを有し、これらの部分が連続する単一のパネル素材から一体に切り出されている。具体的に、衣服1の製造時には、外側生地30を構成するパネル素材および内側生地20を構成するパネル素材を、厚さ方向Tに重ねた状態として、これらの生地20,30を一体に裁断することとしてもよい。この場合、製造が容易である。
なお外側生地30については、前身頃1aに位置する部分と後見頃1cに位置する部分とが、別体で裁断されて、境界部分Bで縫合されてもよい。この場合、衣服1の外観デザインの自由度が高められる。
【0030】
図1(a)、(b)に示すように、外側生地30は、外側生地30を厚さ方向Tに貫通する吸気孔31を有する。図示の例では吸気孔31が、円孔状である。なお吸気孔31は、例えば、多角形孔状、楕円孔状、長孔状、網(メッシュ)状等であってもよい。
吸気孔31は、ファン2から離れた衣服1の縁部に配置される。吸気孔31は、外側生地30に複数設けられる。複数の吸気孔31は、少なくとも連結部1bおよびネックホール1hのいずれかに沿って、衣服1の縁部に配列する。
【0031】
本実施形態では、複数の吸気孔31が、第1吸気孔31aと、第2吸気孔31bと、を有する。
第1吸気孔31aは、連結部1bに沿って複数配置される。複数の第1吸気孔31aは、直線状に配列する。複数の第1吸気孔31aのうち、衣服1の下端部以外の部分つまり下端部よりも上側に配置される第1吸気孔31aの配列ピッチは、衣服1の下端部に配置される第1吸気孔31aの配列ピッチよりも狭い。すなわち、複数の第1吸気孔31aのうち、ファン2から離れて配置される第1吸気孔31aであるほど配列ピッチが小さい。
第2吸気孔31bは、ネックホール1hの開口縁部に沿って複数配置される。複数の第2吸気孔31bは、等ピッチで環状に配列する。
【0032】
ファン2は、衣服1に取り付けられる。なおファン2は、衣服1に着脱可能に取り付けられることが好ましい。ファン2は、衣服1の後見頃1cに配置される。本実施形態ではファン2が、複数設けられる。図示の例ではファン2が、後見頃1cの下端部に、着用者の胴部回りの周方向(左右方向)に互いに間隔をあけて一対配置される。衣服1を厚さ方向Tから見て、ファン2の開口つまり羽根部が配置される部分は、排気孔5と重なる。ファン2は、排気孔5を通して衣服1の内部から外部へ空気を排出する。
【0033】
作動スイッチ3は、衣服1に取り付けられる。なお作動スイッチ3は、衣服1に着脱可能に取り付けられることが好ましい。本実施形態では作動スイッチ3が、衣服1の下端部に配置される。作動スイッチ3は、ボトムホール1eから下側に突出し、ボトムホール1e内に収納可能である。
ファン付き衣服10を着用する着用者は、作動スイッチ3を操作することにより、ファン2の動作をON-OFF可能である。なお作動スイッチ3を操作することにより、ファン2の風量が調整可能とされてもよい。
【0034】
配線部材4は、一端部がファン2および作動スイッチ3のいずれかに接続され、他端部が図示しないバッテリー等に接続される。なおバッテリーに接続する場合は、携帯型のバッテリーでもよく、車載型のバッテリーでもよい。
【0035】
以上説明した本実施形態のファン付き衣服10では、着用者の身体と外側生地30との間に、通気層24を有する内側生地20が配置される。ファン2を作動させて衣服1の内部から外部へ空気を吸い出し、衣服1の内部が負圧となっても、複数の支持糸23により通気層24の厚さが所定以上に保持されるため、通気層24内を空気が流通可能な状態が維持される。
【0036】
本実施形態によれば、衣服1の内部から外部へファン2で空気を排出するので、ファン2を作動させても衣服1が膨らむことが抑えられ、着用時の外観デザイン(ファッション性)が良好に維持される。また、内側生地20の通気層24を空気が安定して流れるため、衣服1が着用者の身体に貼り付くことが抑制される。このため、着用者がかいた汗の蒸発を促して、気化熱により身体を効率よく冷却でき、着用感が爽快で着心地がよい。
【0037】
また本実施形態では、吸気孔31が、ファン2から離れた衣服1の縁部に配置されるので、吸気孔31とファン2との間の距離を大きく確保できる。すなわち、図5(a)、(b)に示すように、吸気孔31を通して衣服1内に吸気された空気が、着用者の身体上を広範囲にわたって流れた後、ファン2によって衣服1外へと排出されるため、冷却効率が高められる。
【0038】
また本実施形態では、外側生地30が、空気を通さない性質の生地からなる。
この場合、外側生地30の吸気孔31以外の部分から、意図せず衣服1内に空気が吸気されることが抑えられ、冷却効率が安定して高められる。また本実施形態のように、外側生地30として、例えば水滴を通さない防水コーティング生地等を用いることができる。このため、ファン付き衣服10をレインウェア等の雨具として使用することも可能である。
【0039】
また本実施形態では、前身頃1aと後見頃1cとが一体に裁断され、前身頃1aと後見頃1cとの境界部分Bには縫製部が形成されない。具体的に、内側生地20および外側生地30のうち少なくとも内側生地20は、前身頃1aに位置する部分と後見頃1cに位置する部分とが、単一のパネル素材から一体に裁断される。
例えば本実施形態と異なり、互いに別体(別部材)として裁断された前身頃1aと後見頃1cとが縫製により接続される場合には、前身頃1aと後見頃1cとの境界部分Bの縫製部によって、空気の流れが遮られる。一方、本実施形態によれば、前身頃1aと後見頃1cとの境界部分Bにおいても空気が通気層24内を自由に流通でき、つまり境界部分Bで空気の流れが遮られることが抑制されて、冷却効率が安定して高められる。
【0040】
また本実施形態では、弾性ひも1f,1gが、アームホール1dおよびボトムホール1eの少なくともいずれかの開口縁部に沿って配置され、弾性変形により開口縁部の開口を狭める。
この場合、アームホール1dおよびボトムホール1eの少なくともいずれかの開口縁部が、弾性ひも1f,1gの作用によって着用者の身体に密着する。これにより、開口縁部から意図せず衣服1内に空気が吸気されることが抑えられて、冷却効率が安定して高められる。なお本実施形態では、アームホール1dおよびボトムホール1eの両方で上述の作用効果が得られるため、より効率よく着用者の身体を冷却できる。
【0041】
また本実施形態では、複数の吸気孔31が、衣服1の縁部のうち連結部1bおよびネックホール1hの少なくともいずれかに沿って並ぶので、複数の吸気孔31と、後見頃1cに位置するファン2と、の間の距離を安定して大きく確保できる。複数の吸気孔31から吸気された空気が、着用者の身体上を広範囲にわたって流通した後、ファン2によって衣服1の外部へと排出されるため、冷却効率が高められる。
なお本実施形態では、連結部1bに沿って配列する第1吸気孔31a、および、ネックホール1hに沿って配列する第2吸気孔31bの両方において、上述の作用効果が得られるため、より効率よく着用者の身体を冷却できる。
また本実施形態のファン付き衣服10は、バイクライダー用ファン付き衣服であり、バイク走行時には、着用者が前方から風を受ける。また着用者が前傾姿勢となれば、頭部側から風を受ける。このため本実施形態の構成により、衣服1内において、前から後側へ向けた風の流れや上から下側へ向けた風の流れを安定して作りやすく、より冷却効率を高めることができる。
【0042】
また本実施形態では、内側生地20が、厚さ方向Tにおいて1~3N/cmの外力を受けたときに弾性変形し始める。
この場合、内側生地20が厚さ方向Tにおいて1N/cm以上の外力を受けたときに弾性変形し始めるので、内側生地20の強度が十分に確保され、通気層24の通気性が良好に維持される。例えば本実施形態のように、ファン付き衣服10がバイクライダー用ファン付き衣服である場合には、バイク走行時の風圧等によって内側生地20が潰されるようなことが抑制される。またバイク転倒時などにおいては、内側生地20が弾性変形することによって着用者に伝わる衝撃が緩和され、着用者の身体を保護する機能が安定して得られる。
また、内側生地20が厚さ方向Tにおいて3N/cm以下の外力を受けたときに弾性変形し始めるので、内側生地20の剛性が高くなり過ぎることを抑えて、ファン付き衣服10の着心地を良好に維持できる。
【0043】
また本実施形態では、内側生地20の第1層21と第2層22とを繋ぐ支持糸23が湾曲して形成されており、支持糸23は、厚さ方向Tと垂直な方向への中央部23cの膨出量を増減させるように、弾性変形する。
このため、例えば着用者が身体を動かすなどして内側生地20が厚さ方向Tに弾性変形させられたときに、厚さ方向Tと垂直な方向への第1層21と第2層22との相対的な位置ずれは抑えられる。つまり、第1層21と第2層22とが内側生地20の面方向に位置ずれしにくいため、内側生地20の弾性変形時においても、着心地の良さが維持される。
【0044】
また支持糸23が、モノフィラメント(単繊維)により形成されるので、支持糸23を弾性変形可能に形成しつつ、支持糸23に十分な強度を付与しやすい。つまり、支持糸23が、第1層21と第2層22とを厚さ方向Tに離間させた状態で安定して支持できる。
【0045】
また本実施形態では、内側生地20の第1層21および第2層22が網状に形成されるので、第1層21および第2層22の各網目の開口を通した通気性についても確保される。このため、より爽快な着心地が得られる。また第1層21および第2層22の各網目がハニカム構造であるので、内側生地20が破れにくい。
【0046】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0047】
前述の実施形態では、ファン付き衣服10がベストである例を挙げたが、これに限らない。衣服1は、着用者の腕部の少なくとも一部を覆う袖を有していてもよい。なお袖が、着用者の腕部のうち手首より先端側の部分以外の部分を覆う長袖である場合などには、複数の吸気孔31は、長袖の袖口つまりアームホール1dに沿って、衣服1の縁部に配列されてもよい。すなわち、ファン付き衣服10はジャンパーやジャケット等の上着であってもよい。また、ファン付き衣服10の構成をズボン等に適用してもよい。
【0048】
前述の実施形態では、ファン付き衣服10がバイクライダー用ファン付き衣服である例を挙げたが、これに限らない。ファン付き衣服10は、バイクライダー用以外の用途に適用してもよい。
【0049】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のファン付き衣服によれば、着用時の外観デザインがよく、着心地がよい。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
1…衣服、1a…前身頃、1b…連結部、1c…後見頃、1d…アームホール、1e…ボトムホール、1h…ネックホール、2…ファン、10…ファン付き衣服、20…内側生地、21…第1層、22…第2層、23…支持糸、24…通気層、30…外側生地、31…吸気孔、B…境界部分、T…厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5