(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109060
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220720BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004384
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】関 雄太
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA01
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770GA17
5H770HA02Z
5H770HA03Z
5H770HA04Z
5H770HA07Z
5H770LA03Z
5H770LB09
(57)【要約】
【課題】低電圧状態における電力変換装置の誤動作を防止する。
【解決手段】出力段210は、上アーム212と下アーム214を有する。コントローラ220は、ソフトウェア制御により、上アーム212と下アーム214のオン、オフを指示する制御信号Sctrlを生成する。ドライバ回路230は、イネーブル状態とディセーブル状態が切りかえ可能であり、イネーブル状態において制御信号Sctrlにもとづいて出力段210を制御し、ディセーブル状態において出力Sdrvを停止する。保護回路250は、コントローラ220に供給される電源電圧Vddが、コントローラ220の最低動作電圧より高く定められる所定の第1しきい値Vth1を下回ると、ドライバ回路230をディセーブル状態とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームと下アームを有する出力段と、
ソフトウェア制御により、前記上アームと前記下アームのオン、オフを指示する制御信号を生成するコントローラと、
イネーブル状態とディセーブル状態が切りかえ可能であり、前記イネーブル状態において前記制御信号にもとづいて前記出力段を制御し、前記ディセーブル状態において出力を停止するドライバ回路と、
前記コントローラに供給される電源電圧が、前記コントローラの最低動作電圧より高く定められる所定の第1しきい値を下回ると、前記ドライバ回路を前記ディセーブル状態とする保護回路と、
を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記コントローラは前記電源電圧を監視し、前記電源電圧が所定の第2しきい値を下回ると、前記制御信号の生成を停止することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記保護回路は、リセットIC(Integrated Circuit)であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記保護回路は、
前記電源電圧を前記しきい値と比較するコンパレータと、
前記コンパレータの出力にもとづいて前記ドライバ回路の前記イネーブル状態、前記ディセーブル状態を制御するインタフェース回路と、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記保護回路による保護がかかったことをログとして残すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械、産業車両、工場、電気自動車、発電システムなどに、インバータやコンバータをはじめとする電力変換装置が使用される。
図1は、インバータ装置のブロック図である。
【0003】
インバータ装置100Rは、出力段110、コントローラ120、ドライバ回路130、電源回路140を備える。出力段110は、上アーム112と下アーム114を含み、その出力には、負荷2としてたとえばモータが接続される。出力段110は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やIPM(Intelligent Power Module)などのパワートランジスタで構成される。コントローラ120は、負荷2の状態にもとづくフィードバック信号Sfbが目標値Srefに近づくように、フィードバック制御により、制御信号Sctrlを生成する。制御信号Sctrlは、たとえば負荷2に供給すべき電圧レベルに応じたデューティサイクルを有するパルス信号である。ドライバ回路130は、制御信号Sctrlに応じて駆動信号Sdrvを発生し、上アーム112と下アーム114を制御する。
【0004】
電源回路140は、AC/DCコンバータを含み、系統からの交流電圧Vacを受け、直流の電源電圧Vdd、Vdcに変換する。制御系の電源電圧Vddは、コントローラ120やドライバ回路130等に供給される。駆動系の電源電圧Vdcは、出力段110やドライバ回路130に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-358377号公報
【特許文献2】特開2016-127737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コントローラ120は、プロセッサを有するマイクロコントローラやCPU(Central Processing Unit)などで実装され、プロセッサがソフトウェアプログラムを実行することにより、制御信号Sctrlが生成される。
【0007】
インバータ装置100Rの使用環境下では、瞬時的なあるいは長期的な交流電圧Vacの遮断や、交流電圧Vacの電圧レベルの変動が生ずる。交流電圧Vacの遮断や変動は、電源電圧VddやVdcの低下あるいは変動を引き起こす。特に電源電圧Vddの低下や変動は、コントローラ120やドライバ回路130を誤動作させ、不適切な駆動信号Sdrvが発生する要因となる。不適切な駆動信号Sdrvは、出力段110の上アーム112、下アーム114を、意図しない状態に遷移させる場合がある。
【0008】
電源変動に起因する誤動作を防止するための第1のアプローチとして、交流電圧Vacの遮断時に、電源電圧Vddが低下しないように非常用電源を設けるものが考えられる。このアプローチでは、非常用電源を追加する必要があり、システムのコストが高くなる。
【0009】
第2のアプローチとしては、コントローラ120に保護機能を実装するものが考えられる。具体的には、コントローラ120のプロセッサは、コントローラ120に供給される電源電圧Vddを監視し、電源電圧Vddが所定のしきい値電圧Vthを下回ると、所定の保護シーケンスを実行し、出力段110が安全な状態となるように、制御信号Sctrlを変化させる。
【0010】
このようなコントローラ120による保護機能は、ソフトウェアプログラムにもとづくソフトウェア処理で実装されるため、追加のハードウェアは不要である。しかしながら、保護シーケンスが終了する前に、電源電圧Vddがプロセッサの最低動作電圧Vminを下回ると、コントローラ120の処理が停止し、出力段110が不適切な状態で動作不能に陥ることになる。
【0011】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、低電圧状態における電力変換装置の誤動作を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のある態様は、電力変換装置に関する。電力変換装置は、上アームと下アームを有する出力段と、ソフトウェア制御により、上アームと下アームのオン、オフを指示する制御信号を生成するコントローラと、イネーブル状態とディセーブル状態が切りかえ可能であり、イネーブル状態において制御信号にもとづいて出力段を制御し、ディセーブル状態において出力を停止するドライバ回路と、コントローラに供給される電源電圧が、コントローラの最低動作電圧より高く定められる所定の第1しきい値を下回ると、ドライバ回路をディセーブル状態とする保護回路と、を備える。
【0013】
この構成によれば、電源変動によって仮にコントローラが動作不能に陥ったとしても、ドライバ回路を、コントローラのソフトウェア制御には依存しない経路でディセーブル状態に遷移させることができる。これにより、ドライバ回路を確実にディセーブル状態とし、出力段を適切な状態で停止させることができる。
【0014】
コントローラは電源電圧を監視し、電源電圧が所定の第2しきい値を下回ると、制御信号の生成を停止してもよい。保護回路を経由するハードウェア制御の保護処理と並列に、コントローラを経由するソフトウェア制御の保護処理を併存させることで、より堅牢な保護が実現できる。
【0015】
保護回路は、リセットIC(Integrated Circuit)であってもよい。無停電電源に比べてはるかに安価な市販のリセットICを利用することで、コスト増を抑制できる。
【0016】
保護回路は、電源電圧をしきい値と比較するコンパレータと、コンパレータの出力にもとづいてドライバ回路のイネーブル状態、ディセーブル状態を制御するインタフェース回路と、を含んでもよい。
【0017】
コントローラは、保護回路による保護がかかったことをログとして残してもよい。これにより、電力変換装置のユーザは、電源環境を評価し、あるいは対策を施すことが可能となる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低電圧状態における電力変換装置の誤動作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】実施形態に係るインバータ装置のブロック図である。
【
図4】
図2のインバータ装置の動作を説明する図である。
【
図5】
図2のインバータ装置の別の保護動作を説明する図である。
【
図6】変形例1に係るインバータ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0022】
ここではインバータ装置を例として、実施形態に係る電力変換装置について説明する。
図2は、実施形態に係るインバータ装置200のブロック図である。
【0023】
インバータ装置200は、出力段210、コントローラ220、ドライバ回路230、電源回路240、保護回路250を備える。
【0024】
出力段210は、上アーム212と下アーム214を有する。出力段210の相数は特に限定されず、単相であってもよいし、三相であってもよい。
【0025】
コントローラ220は、ソフトウェアプログラムを実行可能なプロセッサを含むマイクロコントローラやCPU(Central Processing Unit)で実装される。コントローラ220は、ソフトウェア制御により、上アーム212と下アーム214それぞれのオン、オフを指示する制御信号Sctrlを生成する。より詳しくは、コントローラ220は、ソフトウェアプログラムを実行し、負荷2の状態にもとづくフィードバック信号Sfbが、目標信号Srefに近づくように、制御信号Sctrlを生成する(サーボ制御)。負荷2の状態は、負荷2の電気的状態、たとえば電流や電圧、電力であってもよい。あるいは負荷2の状態は、負荷2の機械的な状態、たとえば回転数や回転角(位置)であってもよい。
【0026】
ドライバ回路230は、イネーブル端子ENを有し、イネーブル端子ENの状態に応じて、イネーブル状態とディセーブル状態が切りかえ可能である。イネーブル端子付きのドライバ回路230は、市販品を用いてもよいし、専用に設計してもよい。ドライバ回路230は、イネーブル状態において制御信号Sctrlにもとづいて駆動信号Sdrvを発生し、出力段210の上アーム212および下アーム214それぞれのオン、オフを制御する。またドライバ回路230は、ディセーブル状態において出力である駆動信号Sdrvを停止する。出力段210の出力OUTは、駆動信号Sdrvに応じて、(i)上アーム212がオン、下アーム214がオフであるハイ出力状態(H)、(ii)上アーム212がオフ、下アーム214がオンであるロー出力状態(L)、(iii)上アーム212と下アーム214が両方オフであるハイインピーダンス状態(HiZ)の三状態を取り得る。本実施形態において、ドライバ回路230はディセーブル状態において、制御信号Sctrlにかかわらず、出力段210の出力OUTがハイインピーダンス状態となるように、駆動信号Sdrvを生成する。
【0027】
電源回路240は、AC/DCコンバータを含み、系統からの交流電圧Vacを受け、直流の電源電圧Vdd、Vdcに変換する。制御系の電源電圧Vddは、コントローラ220やドライバ回路230等に供給される。駆動系の電源電圧Vdcは、出力段210やドライバ回路230に供給される。
【0028】
保護回路250は、コントローラ220に供給される電源電圧Vddが所定の第1しきい値Vth1を下回ると、ドライバ回路230をディセーブル状態とする。第1しきい値Vth1は、低電圧状態の判定のためのしきい値であり、コントローラ220の最低動作電圧Vminよりわずかに高く定められる。保護回路250は、ハードウェアのみで構成されており、保護回路250における処理には、ソフトウェアは介在しない。
【0029】
また、コントローラ220は、自分自身に供給される電源電圧Vddを監視し、電源電圧Vddが所定の第2しきい値Vth2を下回ると、制御信号Sctrlの生成を停止する。コントローラ220は上述のようにソフトウェアプログラムとプロセッサの組み合わせで実装されており、コントローラ220による低電圧状態の保護処理も、ソフトウェアが介在している。コントローラ220をマイクロコントローラで実装する場合、マイクロコントローラが内蔵するA/Dコンバータを利用して電源電圧Vddをデジタルの検出信号に変換し、この検出信号を第2しきい値Vth2に対応するデジタルのしきい値と比較し、検出信号がしきい値を下回ると、低電圧状態を検出してもよい。コントローラ220は、低電圧状態を検出すると、フィードバック信号Sfbにもとづくフィードバック制御の制御ループを抜けて、回路保護のためのルーチンにジャンプし、出力段210が適切な状態(ハイインピーダンス状態)で停止するように、制御信号Sctrlを生成する。
【0030】
2つのしきい値電圧Vth1,Vth2は、以下の関係を満たすように定めてもよい。
Vmin<Vth2≦Vth1
【0031】
図3は、保護回路250の構成例を示すブロック図である。保護回路250は、市販のリセットIC(Integrated Circuit)を用いて構成することができる。リセットIC252は、ボルテージディテクタとも称され、電圧の監視に広く利用されいる。リセットIC252は、入力端子INに入力された電圧信号Vinを、内部の基準電圧Vrefと比較し、大小関係に応じた信号を、出力端子OUTから出力する。リセットIC252の入力端子INには、抵抗分圧回路R11,R12によって分圧された電圧信号Vinが入力される。
Vin=Vdd×(R12)/(R11+R12)
【0032】
リセットIC252の出力信号(比較信号Scompという)は、入力電圧Vinと基準電圧Vrefの比較結果に応じて二状態で変化する。たとえば比較信号Scompは、ハイ、ローの2状態で変化してもよい。
【0033】
リセットIC252の出力端子OUTとドライバ回路230のイネーブル端子ENの間には、必要に応じてインタフェース回路254を設けてもよい。インタフェース回路254は、必要に応じて、リセットIC252の出力Scompをレベル変換し、および/または論理反転し、ドライバ回路230のイネーブル端子ENに供給する。インタフェース回路254は、ディスクリート素子で構成することができる。
【0034】
以上がインバータ装置200の構成である。続いてその動作を説明する。
図4は、
図2のインバータ装置200の動作を説明する図である。制御信号Sctrlおよび駆動信号Sdrvに関して、Hはハイ出力状態を指示する状態、Lはロー出力状態を指示する状態、HiZはハイインピーダンス状態を指示する状態を表す。
【0035】
時刻t0に電源が投入され、電源電圧Vddが上昇し始める。時刻t1に、電源電圧Vddが、コントローラ220の最低動作電圧Vminを上回ると、コントローラ220を構成するプロセッサが起動を開始する。
【0036】
プロセッサの起動の完了後、時刻t1~t2の間は、電源電圧Vddが、第2しきい値電圧Vth2より低いため、プロセッサは、低電圧保護状態となり、サーボ制御を開始せず、制御信号Sctrlを、安全なレベル(ここではHiZ)に固定している。
【0037】
時刻t2に電源電圧Vddが第2しきい値電圧Vth2を超えると、プロセッサはサーボ制御を開始し、負荷の状態に応じてハイ・ローをとる制御信号Sctrlの生成を開始する。ただし、この時点では、ドライバ回路230はディセーブル状態であるから、駆動信号Sdrvはハイインピーダンスである。
【0038】
時刻t3に電源電圧Vddが第1しきい値電圧Vth1を超えると、通常動作状態となる。通常動作状態では、電源電圧Vddは、第1しきい値電圧Vth1より高い正常電圧範囲となり、コントローラ220はサーボ制御を実行し、制御信号Sctrlは、負荷2が目標とする状態となるように生成されている。ここでは制御信号SctrlがH,Lを交互に繰り返しているが、実際には、H,Lの間に、HiZが挿入されてもよい。
【0039】
時刻t4に、電源電圧Vddが低下する。時刻t5に電源電圧Vddが第1しきい値電圧Vth1を下回ると、保護回路250は、ドライバ回路230をディセーブル状態に移行させる。これにより、駆動信号Sdrvは、ハイインピーダンス状態HiZを指示する状態となる。その結果、インバータ装置200は、出力段210の出力OUTをハイインピーダンス状態HiZとして停止することができる。
【0040】
また時刻t6に電源電圧Vddが第2しきい値Vth2を下回ると、コントローラ220は保護処理を実行し、制御信号Sctrlをハイインピーダンス状態HiZとする。
【0041】
図4の例では、コントローラ220におけるソフトウェア制御による保護処理と、保護回路250およびドライバ回路230によるハードウェア制御による保護処理の両方によって、出力段210が適切な状態で停止する。
【0042】
図5は、
図2のインバータ装置200の別の保護動作を説明する図である。時刻t
4より前の動作は、
図4と同様である。
図5が
図4と異なるのは、時刻t
4に電源電圧Vddが低下した後、コントローラ220のマイクロコントローラの最低動作電圧Vminを下回っている点である。
【0043】
時刻t7に電源電圧Vddが、最低動作電圧Vminを下回ると、コントローラ220は、保護処理を実行できなくなり、制御不能となる。コントローラ220からは、不適切な状態(たとえばH)の制御信号Sctrlが出力され続ける。
【0044】
この場合であっても、それより前に、ドライバ回路230がディセーブル状態に移行しているため、制御信号Sctrlが不適切レベルであるにもかかわらず、インバータ装置200は、出力段210の出力OUTをハイインピーダンス状態HiZとして停止することができる。
【0045】
このように、
図5の例では、コントローラ220におけるソフトウェア制御による保護処理が実行不可能な状況においても、保護回路250およびドライバ回路230によるハードウェア制御による保護処理によって、出力段210を適切な状態で停止させることができる。
【0046】
ここで説明した実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0047】
(変形例1)
図6は、変形例1に係るインバータ装置200Aのブロック図である。コントローラ220Aは、保護回路250の出力、すなわちドライバ回路230のイネーブル状態/ディセーブル状態を監視する。具体的には、コントローラ220Aの監視用の端子MONには、保護回路250の出力に応じた信号が入力されている。監視用の端子MONとしては、マイクロコントローラに標準的に備わるGPIO(General Purpose Input/Output)を用いてもよいし、割り込み用のピンを用いてもよい。
【0048】
コントローラ220Aは、ドライバ回路230がディセーブル状態に切り替わると、つまり、ハードウェアによる低電圧保護がかかると、それに関する情報を、不揮発性メモリ222にログとして残す。不揮発性メモリ222は、コントローラ220Aに内蔵されてもよいし、外付けの記憶装置であってもよい。これにより、インバータ装置200Aのユーザは、インバータ装置200Aの電源環境を評価し、あるいは対策を施すことが可能となる。
【0049】
変形例1において、コントローラ220Aは、監視用の端子MONにもとづいて、ソフトウェア処理による保護を実行してもよい。すなわち、ドライバ回路230がディセーブル状態に切り替わったことをトリガーとして、保護処理のためのルーチンに移行してもよい。これにより、コントローラ220Aを構成するマイクロコントローラがA/Dコンバータを内蔵しない場合や、内蔵する場合であっても、ピンが不足するような場合に、ソフトウェア制御による保護をかけることができる。
【0050】
(変形例2)
実施形態では、ハードウェアによる保護処理とソフトウェアによる保護処理を二重で行ったが、ソフトウェアによる保護処理は省略してもよい。
【0051】
(変形例3)
保護回路250の構成は、
図3のそれに限定されない。
図7は、変形例2に係る保護回路250Aの回路図である。保護回路250Aは、電圧コンパレータ256およびインタフェース回路258を含む。電圧コンパレータ256は、電源電圧Vdd(もしくは
図3のように電源電圧Vddを分圧して得られる検出電圧)を、基準電圧Vrefと比較する。インタフェース回路258は、必要に応じて、電圧コンパレータ256の出力Scompをラッチし、電圧コンパレータ256の出力Scompをレベル変換し、および/または論理反転し、ドライバ回路230のイネーブル端子に供給する。インタフェース回路258は、組み合わせ回路、順序回路あるいは組み合わせ順序回路で構成してもよい。電圧コンパレータ256はヒステリシスコンパレータであってもよい。
【0052】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0053】
200 インバータ装置
210 出力段
212 上アーム
214 下アーム
220 コントローラ
230 ドライバ回路
240 電源回路
250 保護回路
252 リセットIC
254 インタフェース回路
256 電圧コンパレータ
258 インタフェース回路