IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニチリンの特許一覧

<>
  • 特開-内面樹脂複層ホース 図1
  • 特開-内面樹脂複層ホース 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109067
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】内面樹脂複層ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/08 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
F16L11/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004397
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 靖史
(72)【発明者】
【氏名】久谷 敏仁
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA12
3H111BA15
3H111BA24
3H111CB05
3H111CB22
3H111CC03
3H111DB09
(57)【要約】
【課題】冷媒の透過を抑えるガスバリア性を確保しつつ、酸が生成し得る冷媒を使用した場合に劣化しにくいホースを提供する。
【解決手段】冷媒輸送用ホース1は、内面樹脂層2と、中間ゴム層3と、繊維補強層4と、外面ゴム層5とを、内側から順に有する。内面樹脂層2は、フッ素樹脂を含む内層11と、ポリアミド樹脂を含む外層13とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面樹脂層と、中間ゴム層と、繊維補強層と、外面ゴム層とを、内側から順に有する内面樹脂複層ホースであり、
前記内面樹脂層は、
フッ素樹脂を含む内層と、
前記内層の外側に配置されているとともに、ポリアミド樹脂を含む外層と、
を有することを特徴とする内面樹脂複層ホース。
【請求項2】
前記内面樹脂層は、前記内層と前記外層との間に、接着性ポリアミド樹脂を含む中間層を有することを特徴とする請求項1に記載の内面樹脂複層ホース。
【請求項3】
前記内面樹脂複層ホースは、冷媒輸送用ホースであることを特徴とする請求項1または2に記載の内面樹脂複層ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面樹脂層と、中間ゴム層と、繊維補強層と、外面ゴム層とを、内側から順に有するベニア構造のホースにおいて、内面樹脂層が複数の層を有するホースに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される冷媒輸送用ホースは、カーエアコン用の冷媒の輸送や冷蔵冷凍用の冷媒の輸送などに用いられる。特許文献1には、冷媒輸送用ホースとして、内側から順に、内面樹脂層である最内層(2)、中間ゴム層(3)、繊維補強層(4)および外面ゴム層(5)が積層された複合フレキシブルホース(1)が開示されている。最内層(2)にポリアミド樹脂が含まれていることにより、冷媒の透過を抑えるガスバリア性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3891718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、温暖化係数が低い化合物を含む冷媒が使用されている。このような冷媒のなかには、水分が混入することにより酸が生成し得る冷媒がある。冷媒輸送用ホースの最内層(内面樹脂層)には、ガスバリア性を確保するため、上述したように、ポリアミド樹脂が含まれるが、ポリアミド樹脂は酸により劣化しやすい。そのため、酸が生成し得る冷媒を使用した場合、最内層(内面樹脂層)に割れ等が発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、従来と同様に、冷媒輸送用ホースとして要求されるガスバリア性を確保しつつ、酸が生成し得る冷媒を使用した場合に劣化しにくい冷媒輸送用ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内面樹脂複層ホースは、内面樹脂層と、中間ゴム層と、繊維補強層と、外面ゴム層とを、内側から順に有する内面樹脂複層ホースであり、前記内面樹脂層は、フッ素樹脂を含む内層と、前記内層の外側に配置されているとともに、ポリアミド樹脂を含む外層と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来と同様に、冷媒輸送用ホースとして要求されるガスバリア性を確保しつつ、酸が生成し得る冷媒を使用した場合に劣化しにくい冷媒輸送用ホースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る冷媒輸送用ホースの構成を示す模式的な斜視図である。
図2】本発明の変形例に係る冷媒輸送用ホースの構成を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0010】
図1に、冷媒輸送用ホースの一例を示している。図1に示す冷媒輸送用ホース1は、内側から順に、内面樹脂層2と、中間ゴム層3と、繊維補強層4と、外面ゴム層5と、を有するベニア構造の内面樹脂複層ホースである。冷媒輸送用ホース1は、例えば、カーエアコン用の冷媒の輸送や冷蔵冷凍車用の冷媒の輸送などに用いられる。
【0011】
内面樹脂層2は、内層11と、中間層12と、外層13とを有する。内層11は、冷媒輸送用ホース1の最内層である。中間層12は、内層11の外側に配置されている。外層13は、中間層12の外側に配置されている。内層11と外層13との間に、中間層12が配置されている。内層11の厚さ、中間層12の厚さおよび外層13の厚さは、特に限定されない。
【0012】
内層11は、フッ素樹脂を含む層である。フッ素樹脂として、例えば、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(EFEP)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)-テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)-テトラフルオロエチレン(TFE)-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体からなる群から選択される、少なくとも1種が挙げられる。これらの群からなる1種を使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。内層11に、フッ素樹脂以外の成分が含まれていてもよい。
【0013】
中間層12は、接着性ポリアミド樹脂を含む。接着性ポリアミド樹脂とは、内層11との接着性を有するポリアミド樹脂である。接着性ポリアミド樹脂は、常温で、内層11との接着性を有するものでもよく、加熱および/または加圧されることにより、内層11との接着性を有するものでもよい。内層11と中間層12とを重ね合わせた場合、接着性ポリアミド樹脂により、内層11と中間層12とが接した状態で、一方の層が他方の層から離れないようになる。接着性ポリアミド樹脂によって、常温で、内層11および中間層12の一方の層が他方の層から離れないようになってもよく、加熱および/または加圧されることにより、内層11および中間層12の一方の層が他方の層から離れないようになってもよい。
【0014】
接着性ポリアミド樹脂としては、内層11との接着性を付与したポリアミド樹脂であり、例えば、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド612(PA612)および、これらの2種以上のコポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種が挙げられる。これらの群の1種を使用してもよく、2種以上を使用してもよい。中間層12は、接着性ポリアミド樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【0015】
外層13に、ポリアミド樹脂が含まれる。外層13に含まれるポリアミド樹脂は、冷媒の透過を抑えるガスバリア性を有する樹脂である。外層13に含まれるポリアミド樹脂として、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミドMXD-6、および、これらの2種以上のコポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種が挙げられる。これらの群からなる1種を用いてもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。外層13は、ポリアミド樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【0016】
中間層12は、主に、内層11と外層13との接着層として機能する。外層13は、主に、冷媒の透過を抑制するガスバリア性を有する層として機能する。中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂と、外層13に含まれるポリアミド樹脂とは異なるが、中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂および外層13に含まれるポリアミド樹脂のいずれもポリアミド樹脂であるため、中間層12と外層13との接着性は高い。
【0017】
中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂は、内層11に含まれるフッ素樹脂と接着性を有することに加え、冷媒の透過を抑制するガスバリア性を有していてもよい。外層13に含まれるポリアミド樹脂は、冷媒の透過を抑制するガスバリア性を有することに加え、内層11に含まれるフッ素樹脂と接着性を有していてもよい。例えば、中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂は、外層13に含まれるポリアミド樹脂より、内層11に含まれるフッ素樹脂との接着性が高い樹脂であってもよい。
中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂として、外層13に含まれるポリアミド樹脂として例示した樹脂を使用してもよい。外層13に含まれるポリアミド樹脂として、中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂として例示した樹脂を使用してもよい。
例えば、外層13に含まれるポリアミド樹脂として、PA6を使用するとき、中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂として、内層11との接着性を付与したPA612を使用する。この場合、外層13が、冷媒の透過を抑制するガスバリア性を有しつつ、中間層12と内層11との接着性が高い。
【0018】
中間ゴム層3は、ゴムを含む。中間ゴム層3に含まれるゴムとして、例えば、ブチルゴム(IIR)が挙げられる。ブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンとの共重合体である。ブチルゴムとして、例えば、レギュラーIIR、ハロゲン化IIR(臭素化IIR,塩素化IIR等)が挙げられる。中間ゴム層3に、これらのゴムを単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。ブチルゴムは、他のゴムに比べて、性能面でガスバリア性や水分バリア性などに優れる。中間ゴム層3は、ブチルゴム以外の成分を含んでいてもよい。例えば、ブチルゴム以外のゴム、充填剤、加工助剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を含んでいてもよい。
【0019】
繊維補強層4は、補強糸を中間ゴム層3に巻き付け、編み組むことによって形成されている。補強糸は、繊維材料からなる。繊維材料として、例えば、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維が挙げられる。補強糸を編み組む方法は、特に限定されず、例えば、スパイラル編み、ブレード編みが挙げられる。
【0020】
外面ゴム層5は、ゴムを含む。外面ゴム層5に含まれるゴムとして、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が挙げられる。エチレンプロピレンジエンゴムは、他のゴムに比べて、コスト面で入手しやすく、性能面で耐候性や耐熱性などに優れる。外面ゴム層5は、エチレンプロピレンジエンゴム以外の成分を含んでいてもよい。外面ゴム層5は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム以外のゴム、充填剤、加工助剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を含んでいてもよい。
【0021】
冷媒輸送用ホース1は、例えば、以下の方法によって作製される。
【0022】
内面樹脂層2を作製するため、内層11と中間層12と外層13とを、同時押出成形によって形成し、内層11の上に中間層12を積層し、中間層12の上に外層13を積層する。上記により、内面樹脂層2が得られる。
【0023】
中間ゴム層3を押出成形によって形成し、中間ゴム層3を内面樹脂層2の上に積層する。その後、中間ゴム層3に補強糸を巻き付けることにより、繊維補強層4を形成する。続いて、繊維補強層4の外側に、押出成形によって得られた外面ゴム層5を積層する。
【0024】
本実施形態に係る冷媒輸送用ホース1によると、以下の効果が得られる。
【0025】
従来のベニア構造の冷媒輸送用ホースは、内面樹脂層、中間ゴム層、繊維補強層、および、外面ゴム層が内側から順に積層されたホースであって、内面樹脂層が、ポリアミド樹脂を含む層(本実施形態の図1に示す「外層13」に相当)である。ポリアミド樹脂を含む層により、冷媒輸送用ホースとして求められるガスバリア性が確保される。しかし、ポリアミド樹脂は、酸によって劣化しやすい。そのため、酸が生成し得る冷媒を使用した場合、ポリアミド樹脂を含む内面樹脂層が劣化するおそれがある。
【0026】
本実施形態に係る冷媒輸送用ホース1は、図1に示すように、内面樹脂層2、中間ゴム層3、繊維補強層4、および、外面ゴム層5が内側から順に積層されたベニア構造のホースであり、内面樹脂層2は、内層11と、中間層12と、外層13とが、内側から順に積層された複層である。内層11はフッ素樹脂を含み、中間層12は接着性ポリアミド樹脂を含み、外層13はポリアミド樹脂を含む。
【0027】
本実施形態によると、最内層である内層11が、フッ素樹脂を含むことにより、酸が生成し得る冷媒を使用しても、最内層である内層11が劣化しにくい。そのため、内面樹脂層2が劣化しにくい。また、外層13がポリアミド樹脂を含むため、外層13により、冷媒輸送用ホースとして求められるガスバリア性が確保される。
上記より、本実施形態のベニア構造の冷媒輸送用ホース1は、従来と同様にガスバリア性を確保しつつ、酸が生成し得る冷媒を使用した場合に劣化しにくいホースである。なお、本実施形態のベニア構造の冷媒輸送用ホース1は、酸が生成しない冷媒を使用した場合にも、従来と同様に劣化しにくい。
【0028】
また、内層11と外層13との間に、中間層12が配置されている。中間層12は、接着性ポリアミド樹脂を含む。この接着性ポリアミド樹脂は、内層11に含まれるフッ素樹脂との接着性を有する。そのため、内層11と中間層12とが接着する。
また、中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂と、外層13に含まれるポリアミド樹脂とは異なるものの、中間層12には接着性ポリアミド樹脂が含まれるため、中間層12と外層13との接着性が良い。
上記により、中間層12は、内層11および外層13の接着層として機能するため、内層11と外層13とがずれにくい。これにより、冷媒輸送用ホース1を他の部材に加締め固定する等、冷媒輸送用ホース1に外力が加えられたとき、内面樹脂層2の内層11と外層13とがずれにくい。したがって、冷媒輸送用ホース1の加締め固定部のシール性などが確保される。
【実施例0029】
次に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0030】
〔実験1〕
PA6(Zytel(登録商標)ST811HS、デュポン社製)と、フッ素樹脂(ネオフロン(登録商標)EFEP RP-5000、ダイキン工業社製)とを、150℃の温度下で、168時間、冷媒(HFO-1234yf)と冷凍機油(PAG)と水分とが存在する雰囲気に放置した。冷媒と冷凍機油と水分との重量比は、49:50:1とした。HFO-1234yfは、水分と反応することにより酸が生成し得る冷媒である。その後、上記雰囲気からPA6とフッ素樹脂とを取り出し、割れが発生するか調べた。PA6には、割れが発生した。一方、フッ素樹脂には、割れが発生しなかった。
【0031】
〔実験2〕
(従来例)
内面樹脂層、中間ゴム層、繊維補強層、および、外面ゴム層が内側から順に積層されたベニア構造の冷媒輸送用ホースを作製した。
内面樹脂層は、PA6(Zytel(登録商標)ST811HS、デュポン社製)を含む層からなる。
中間ゴム層のゴムとして、ブチルゴム(臭素化IIR)を使用した。
繊維補強層は、ポリエチレンテレフタレートからなる補強糸を中間ゴム層に巻き付け、ブレード編みにて編み組むことによって形成した。
外面ゴム層のゴムとして、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を使用した。
【0032】
(実施例)
内面樹脂層、中間ゴム層、繊維補強層、および、外面ゴム層が内側から順に積層されたベニア構造の冷媒輸送用ホースを作製した。
内面樹脂層は、内層と中間層と外層とを内側から順に有する。内層は、フッ素樹脂(ネオフロン(登録商標)EFEP RP-5000、ダイキン工業社製)を含む。中間層は、接着性ポリアミド樹脂として、PA612(VESTAMID(登録商標) SX8002、ダイセル・エボニック社製)を含む。外層は、PA6(Zytel(登録商標)ST811HS、デュポン社製)を含む。
内面樹脂層が上記3層を有する以外は、従来例と同様な構成とした。
【0033】
従来例および実施例の冷媒輸送用ホースに、冷媒(HFO-1234yf)と冷凍機油(PAG)と水分とを、ホース内容積の1/2の量を封入し、ホース両端を密封した。冷媒と冷凍機油と水分との重量比は、49:50:1とした。この状態で、冷媒輸送用ホースを150℃の高温下に、168時間、放置した。その後、常温になるまでホースを冷却した後、冷媒と冷凍機油と水分とをとり出した。そして、曲げ試験を実施した。曲げ試験では、冷媒輸送用ホースを、ホース外径の5倍の直径のマンドレルに巻き付け、内面樹脂層に割れが発生するか調べた。従来例の冷媒輸送用ホースの内面樹脂層には、割れが発生した。実施例の冷媒輸送用ホースの内面樹脂層には、割れが発生しなかった。
【0034】
このように、酸が生成し得る冷媒を使用した場合、従来のベニア構造の冷媒輸送用ホースには、内面樹脂層に割れが発生したが、本発明のベニア構造の冷媒輸送用ホースには、内面樹脂層に割れが発生しなかった。
このことから、ベニア構造の冷媒輸送用ホースの内面樹脂層を、本発明の複層の内面樹脂層とすることにより、酸が生成し得る冷媒に対して、内面樹脂層が劣化しにくいことがわかった。
【0035】
以上、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0036】
例えば、上記実施形態では、冷媒輸送用ホース1の内面樹脂層2が、図1に示すように、内層11と中間層12と外層13とを有する。しかし、ベニア構造の冷媒輸送用ホース101の内面樹脂層102が、図2に示すように、内層11と外層13とを有し、中間層12を有さなくてもよい。図2に示す構成によっても、上記実施形態に係る冷媒輸送用ホース1と同様に、ガスバリア性を確保しつつ、酸が生成し得る冷媒を使用した場合に劣化しにくいというホースを提供することができる。なお、図2に示す外層13には、ガスバリア性を確保するためのポリアミド樹脂に加え、接着性ポリアミド樹脂(上記実施形態の中間層12に含まれる接着性ポリアミド樹脂)が、さらに含まれていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態および実施例では、内面樹脂層の中間層に接着性ポリアミド樹脂としてPA612が含まれ、且つ、外層にポリアミド樹脂としてPA6が含まれる場合について説明した。しかし、内面樹脂層の中間層に含まれる接着性ポリアミド樹脂は、PA612に限られない。内面樹脂層の外層に含まれるポリアミド樹脂は、PA6に限られない。また、中間層の接着性ポリアミド樹脂と外層のポリアミド樹脂とは、上記樹脂の組み合わせに限定されない。
【0038】
また、上記実施形態では、冷媒輸送用ホース1は、内側から順に、内面樹脂層2と、中間ゴム層3と、繊維補強層4と、外面ゴム層5と、を有する。しかし、本発明の冷媒輸送用ホースは、上記以外の層をさらに有してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1、101 冷媒輸送用ホース
2、102 内面樹脂層
3 中間ゴム層
4 繊維補強層
5 外面ゴム層
11 内層
12 中間層
13 外層
図1
図2