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  • 特開-ファン付きヘルメットライナー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010907
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ファン付きヘルメットライナー
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/28 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A42B3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111693
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】595042427
【氏名又は名称】株式会社コミネ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 直哉
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107DA04
3B107EA02
3B107EA03
3B107EA04
(57)【要約】
【課題】ヘルメットの安全性を良好に維持しつつ、簡単な構造により着用者の頭部を効率よく冷却できるファン付きヘルメットライナーを提供する。
【解決手段】ヘルメット50に取り付けられるファン付きヘルメットライナー10であって、ヘルメット50と着用者60の頭部61との間、および、ヘルメット50の外部にわたって延びるライナー1と、ライナー1のうちヘルメット50の外部に位置する部分に設けられるファン2と、を備え、ライナー1は、少なくともヘルメット50の内部に位置し、通気性を有する第1生地20と、第1生地20に比べて空気が通りにくい性質の第2生地30と、を有し、第1生地20は、ライナー1の厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能な通気層24を有し、第2生地30は、通気層24とファン2とを連通する連通路33を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに取り付けられるファン付きヘルメットライナーであって、
前記ヘルメットと着用者の頭部との間、および、前記ヘルメットの外部にわたって延びるライナーと、
前記ライナーのうち前記ヘルメットの外部に位置する部分に設けられるファンと、を備え、
前記ライナーは、
少なくとも前記ヘルメットの内部に位置し、通気性を有する第1生地と、
前記第1生地に比べて空気が通りにくい性質の第2生地と、を有し、
前記第1生地は、前記ライナーの厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能な通気層を有し、
前記第2生地は、前記通気層と前記ファンとを連通する連通路を有する、
ファン付きヘルメットライナー。
【請求項2】
前記ファンは、前記連通路を通して前記通気層へ空気を送る、
請求項1に記載のファン付きヘルメットライナー。
【請求項3】
前記ファンは、前記連通路を通して前記通気層から空気を吸い出す、
請求項1に記載のファン付きヘルメットライナー。
【請求項4】
前記ヘルメットに着脱可能に取り付けられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のファン付きヘルメットライナー。
【請求項5】
前記第2生地は、前記第1生地のうち前記連通路よりも前側に位置する部分を前記厚さ方向の上側から覆うカバー部を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載のファン付きヘルメットライナー。
【請求項6】
前記ファンが、前記ヘルメットに固定可能である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のファン付きヘルメットライナー。
【請求項7】
前記第1生地は、
第1層と、
前記厚さ方向において前記第1層と間隔をあけて配置される第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に位置する前記通気層と、を有し、
前記通気層は、前記第1層と前記第2層とを前記厚さ方向に離間させた状態で保持する弾性変形可能な複数の支持糸を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のファン付きヘルメットライナー。
【請求項8】
前記第1生地は、前記厚さ方向において1~3N/cmの外力を受けたときに弾性変形し始める、
請求項1から7のいずれか1項に記載のファン付きヘルメットライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン付きヘルメットライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の温度調整機能付きヘルメットが知られている。この温度調整機能付きヘルメットは、衝撃吸収部材の内部に空気流路や送風ファンが設けられており、着用者の頭部に風を送ることで汗の蒸発を促し、頭部を効率よく冷却できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-9181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にヘルメットは、使用の用途などに応じて、衝撃吸収性を含む安全基準を満たす必要がある。特に、バイクライダーなどが使用する乗車用ヘルメットは、安全基準レベルが高い。ヘルメットの衝撃吸収部材の内部に空気流路や送風ファンを配置した場合、安全基準を満たすことが難しい。またこの場合、構造が複雑となり、金型などを用いた大掛かりな設備等が必要となり、コストが嵩む。
【0005】
本発明は、ヘルメットの安全性を良好に維持しつつ、簡単な構造により着用者の頭部を効率よく冷却できるファン付きヘルメットライナーを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、ヘルメットに取り付けられるファン付きヘルメットライナーであって、前記ヘルメットと着用者の頭部との間、および、前記ヘルメットの外部にわたって延びるライナーと、前記ライナーのうち前記ヘルメットの外部に位置する部分に設けられるファンと、を備え、前記ライナーは、少なくとも前記ヘルメットの内部に位置し、通気性を有する第1生地と、前記第1生地に比べて空気が通りにくい性質の第2生地と、を有し、前記第1生地は、前記ライナーの厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能な通気層を有し、前記第2生地は、前記通気層と前記ファンとを連通する連通路を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のファン付きヘルメットライナーによれば、ヘルメットの安全性を良好に維持しつつ、簡単な構造により着用者の頭部を効率よく冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のファン付きヘルメットライナーをヘルメットに装着した状態を示す側断面図である。
図2図2(a)は、ファン付きヘルメットライナーを示す上面図であり、図2(b)は、ファン付きヘルメットライナーを示す下面図である。
図3図3は、ライナーの一部を拡大して示す断面図である。
図4図4は、第1生地の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のファン付きヘルメットライナー10について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ファン付きヘルメットライナー10は、例えば、乗車用ヘルメット50(以下、単にヘルメット50と呼ぶ場合がある)に取り付けられる。乗車用ヘルメット50は、例えば、自動二輪車等のオートバイに乗るバイクライダーなどが着用するヘルメットである。本実施形態では、ファン付きヘルメットライナー10が、ヘルメット50に着脱可能に取り付けられる。
【0010】
図1および図2(a)に示すように、ファン付きヘルメットライナー10は、ヘルメット50を着用する着用者60の頭部61とヘルメット50との間、および、ヘルメット50の外部にわたって延びるライナー1と、ライナー1のうちヘルメット50の外部に位置する部分に設けられるファン2と、ファン2に接続される配線部材3と、を備える。
【0011】
図2(a)、(b)に示すように、ライナー1は、シート状の生地である。ライナー1は、ライナー1の厚さ方向に重なる複数層の生地20,30,40を有する。
図2(a)、(b)に示すライナー1の平面視で、ライナー1は、所定方向(Y軸方向)に延びる。本実施形態では、ライナー1が延びる方向(所定方向)を前後方向と呼ぶ。ファン2は、ライナー1の前後方向の両端部のうち、一端部に配置される。前後方向のうち、ライナー1の一端部から他端部へ向かう方向(+Y側)を前側と呼び、他端部から一端部へ向かう方向(-Y側)を後側と呼ぶ。ライナー1の一端部は後端部に相当し、他端部は前端部に相当する。
【0012】
ライナー1の平面視で、前後方向と直交する方向(X軸方向)を左右方向と呼ぶ。図2(a)に示すライナー1の上面視で、+X側が右側であり、-X側が左側である。
ライナー1の前後方向および左右方向と直交する方向を、ライナー1の厚さ方向(Z軸方向)と呼ぶ。厚さ方向のうち、+Z側は上側であり、-Z側は下側である。ライナー1がヘルメット50と着用者60の頭部61との間に配置されたときに、ライナー1の上面は、ヘルメット50の内張り等の内面と対向し、ライナー1の下面は、頭部61と対向する。厚さ方向の上側は、厚さ方向において着用者60の頭部61から離れる方向であり、厚さ方向の下側は、厚さ方向において着用者60の頭部61に近づく方向である。なお、厚さ方向の上側は、厚さ方向の一方側と言い換えてもよく、厚さ方向の下側は、厚さ方向の他方側と言い換えてもよい。
【0013】
図1に示すように、ライナー1は、少なくとも前側部分がヘルメット50内に配置される。本実施形態では、ライナー1のうち後端部以外の部分が、ヘルメット50内に配置され、ライナー1の後端部が、ヘルメット50外に配置される。ライナー1のうち後端部以外の部分は、着用者60の頭部61と対向し、ライナー1の後端部は、着用者60の首部62と対向する。詳しくは、ライナー1のうち後端部以外の部分は、頭部61の前頭部、頭頂部および後頭部にわたって対向し、ライナー1の後端部は、首部62の後側に配置される。
【0014】
図2(a)、(b)に示すように、ライナー1のうち後端部以外の部分の左右方向の最大幅は、ライナー1の後端部の左右方向の最大幅よりも大きい。すなわち、ライナー1のうちヘルメット50の内部に位置する部分の左右方向の最大幅は、ヘルメット50の外部に位置する部分の左右方向の最大幅よりも大きい。
【0015】
ライナー1は、少なくともヘルメット50の内部に位置し、通気性を有する第1生地20と、第1生地20に比べて空気が通りにくい性質の第2生地30と、ライナー1の周縁部に沿って配置される周縁生地40と、を有する。
【0016】
図2(b)に示すように、第1生地20は、ライナー1の外面のうち、少なくとも厚さ方向の下側つまり頭部61側に露出される。第1生地20は、ライナー1のうち少なくとも前側部分に配置される。本実施形態では第1生地20が、ライナー1の前側部分および後側部分にわたって配置される。ライナー1の平面視で、第1生地20は、ライナー1の略全域にわたって配置される。
【0017】
図3および図4に示すように、第1生地20は、立体(3次元)メッシュ構造を有する。第1生地20は、第1層21と、第2層22と、通気層24と、を有する。
第1層21は、厚さ方向と垂直な方向に拡がる。第1層21は、例えば撚糸が網状に編まれて構成される。本実施形態では第1層21が、ハニカム(六角形)構造の網状に形成される。すなわち、第1層21の各網目は、第1層21を厚さ方向に貫通する六角形孔状の開口を有する。なお第1層21の各網目の開口形状は、例えば、六角形孔状以外の多角形孔状、円孔状、楕円孔状、長孔状等であってもよい。
【0018】
第2層22は、厚さ方向において第1層21と間隔をあけて配置される。第2層22は、第1層21よりも厚さ方向の下側に位置する。第2層22は、厚さ方向と垂直な方向に拡がる。第2層22は、例えば撚糸が網状に編まれて構成される。本実施形態では第2層22が、ハニカム構造の網状に形成される。すなわち、第2層22の各網目は、第2層22を厚さ方向に貫通する六角形孔状の開口を有する。なお第2層22の各網目の開口形状は、例えば、六角形孔状以外の多角形孔状、円孔状、楕円孔状、長孔状等であってもよい。
本実施形態では、第1層21と第2層22とが、互いに同じ構造を有する。つまり第1層21と第2層22とは、同一部材(共通素材)により構成される。
【0019】
通気層24は、厚さ方向において第1層21と第2層22との間に位置する。通気層24は、厚さ方向と垂直な方向に拡がる。通気層24の厚さ方向の寸法は、第1層21および第2層22の各厚さ方向の寸法よりも大きい。通気層24は、少なくとも厚さ方向と垂直な方向に空気が流通可能である。通気層24の内部空間と、第1層21の各網目の開口および第2層22の各網目の開口とは、互いに連通する。このため通気層24には、厚さ方向にも空気が流通可能である。
【0020】
通気層24は、第1層21と第2層22とを厚さ方向に離間させた状態で保持する弾性変形可能な複数の支持糸23を有する。複数の支持糸23は、厚さ方向と垂直な方向に互いに間隔をあけて配置される。各支持糸23は、厚さ方向に延びる。各支持糸23間には、空気が流通可能である。各支持糸23は、第1層21と第2層22とを連結しつつ、第1層21と第2層22とが厚さ方向に所定寸法以上に離間した状態を維持するように、第1層21と第2層22とを支持する。
【0021】
支持糸23は、弾性変形可能なモノフィラメント(単繊維)により形成される。支持糸23は、第1層21および第2層22を構成する各撚糸よりも、強度が大きく剛性が高い。支持糸23の厚さ方向の中央部23cは、厚さ方向の両端部に対して、厚さ方向と垂直な方向に膨出する。つまり支持糸23は、湾曲した曲線状に延びる。
【0022】
支持糸23は、厚さ方向の上側(+Z側)と下側(-Z側)とに交互に折り返されながら、第1層21と第2層22とに縫い合わされている。具体的に、本実施形態の支持糸23は、第1層21および第2層22の各網目の開口縁部(六角形の辺)に沿って、第1層21と第2層22とに縫い込まれる。
【0023】
上記構造とされた第1生地20は、厚さ方向において1~3N/cm の外力を受けたときに、弾性変形し始める。すなわち、第1生地20は、10cm×10cmの単位面積当たりに10~30kgfの均等荷重(外力)を厚さ方向から受けたときに、複数の支持糸23がさらに湾曲するように弾性変形する。本実施形態では、第1生地20が、10cm×10cmの単位面積当たりに20kgf以上の均等荷重を厚さ方向から受けたとき、つまり厚さ方向において2N/cm 以上の外力を受けたときに、弾性変形し始める。
なお上記「弾性変形し始める」とは、第1生地20の厚さ方向に沿う断面を目視したときに、第1生地20が外力を受けて弾性変形し始めたことが明らかに認識できる程度の変形状態(度合い)を指し、具体的には、厚さ方向に例えば1mm以上(1~2mm程度)の弾性変形が生じた状態を指す。
【0024】
また、第1生地20の厚さ方向の寸法は、支持糸23が弾性変形させられていない状態において、例えば3~15mmであり、本実施形態では5~10mmである。
【0025】
図2(a)、(b)および図3において、本実施形態では第2生地30が、空気を通さない性質の生地からなる。具体的に、第2生地30は、例えば防水コーティングが施された水滴を通さない構造の生地等により形成される。
【0026】
図2(a)、(b)に示すように、第2生地30は、上側生地31と、下側生地32と、連通路33と、を有する。
上側生地31は、ライナー1の外面のうち、厚さ方向の上側つまりヘルメット50の内面側に露出される。ライナー1の平面視で、上側生地31は、ライナー1の略全域にわたって配置される。上側生地31は、厚さ方向の上側から第1生地20を覆う。
【0027】
上側生地31は、吸気孔31aと、カバー部31bと、を有する。つまり第2生地30は、吸気孔31aと、カバー部31bと、を有する。
吸気孔31aは、上側生地31の後端部に配置される。吸気孔31aは、上側生地31を厚さ方向に貫通する。図示の例では吸気孔31aが、円孔状である。吸気孔31aには、ファン2が取り付けられる。
【0028】
カバー部31bは、上側生地31のうち少なくとも前側部分に配置される。カバー部31bは、第1生地20のうち後述する連通路33よりも前側に位置する部分を厚さ方向の上側から覆う。
【0029】
図2(b)に示すように、下側生地32は、ライナー1の外面のうち、厚さ方向の下側つまり頭部61側に露出される。下側生地32は、ライナー1のうち後側部分に配置される。下側生地32は、上側生地31よりも厚さ方向の下側に配置される。下側生地32は、厚さ方向から見て、第1生地20の後側部分および上側生地31の後側部分と重なる。下側生地32は、厚さ方向の下側から第1生地20の後側部分を覆う。また下側生地32は、吸気孔31aおよびファン2を厚さ方向の下側から覆う。
【0030】
図2(a)、(b)に示すように、連通路33は、上側生地31と下側生地32との間に配置される。連通路33は、上側生地31と下側生地32との間に画成される空間である。連通路33には、空気が流通可能である。連通路33は、前後方向に延びる。連通路33は、ライナー1のうち少なくとも前側部分に配置される第1生地20の通気層24と、吸気孔31aに配置されるファン2と、を連通する。本実施形態では、連通路33の内部に、第1生地20のうち後側部分が配置される。連通路33内に通気層24の一部が配置されることにより、ファン2の動作がONであるかOFFであるかに係わらず、連通路33の流路断面積が所定以上に確保される。
【0031】
周縁生地40は、ライナー1の周縁部に沿って延び、ライナー1の周縁部をカバーする。周縁生地40は、ライナー1の周縁部の外周全長にわたって配置される。周縁生地40は、厚さ方向に折り返された上層および下層を有する。周縁生地40の上層と下層とは、厚さ方向において互いに対向する。
【0032】
ライナー1の前側部分では、周縁生地40の上層と下層との間に、上側生地31の前側部分および第1生地20の前側部分の各周縁部が挟み込まれた状態で、周縁生地40、上側生地31および第1生地20が互いに縫い合わされている。
ライナー1の後側部分では、周縁生地40の上層と下層との間に、上側生地31の後側部分、第1生地20の後側部分および下側生地32の各周縁部が挟み込まれた状態で、周縁生地40、上側生地31、第1生地20および下側生地32が互いに縫い合わされている。
【0033】
図1および図2(a)に示すように、ファン2は、ライナー1の後端部に着脱可能に取り付けられる。本実施形態ではファン2が、1つ設けられる。図2(a)に示すように、厚さ方向から見て、ファン2の開口つまり羽根部が配置される部分は、吸気孔31aと重なる。本実施形態では、ファン2の開口が、厚さ方向において第1生地20の後端部と対向する。ファン2は、吸気孔31aを通してライナー1の外部から内部へ空気を吸気する。ファン2は、連通路33を通して通気層24へ空気を送る。
【0034】
配線部材3は、一端部がファン2に接続され、他端部が図示しないバッテリー等に接続される。なおバッテリーに接続する場合は、携帯型のバッテリーでもよく、車載型のバッテリーでもよい。配線部材3は、作動スイッチ3aを有する。
ファン付きヘルメットライナー10のユーザーつまりヘルメット50の着用者は、作動スイッチ3aを操作することにより、ファン2の動作をON-OFF可能である。なお作動スイッチ3aを操作することにより、ファン2の風量が調整可能とされてもよい。
【0035】
以上説明した本実施形態のファン付きヘルメットライナー10によれば、図1に示すように、ヘルメット50外のファン2からライナー1を介してヘルメット50内に空気を送ることで、ヘルメット50内の空気を循環させることができる。具体的には、ファン2から吸気された空気が、第2生地30の連通路33を通って、ヘルメット50内に位置する第1生地20の通気層24に供給される。通気層24に供給された空気が、通気層24内を厚さ方向と垂直な方向に流れることにより、着用者60の頭部61上において広範囲に汗の蒸発が促され、気化熱により頭部61が効率よく冷却される。例えば夏季などにおけるヘルメット50内の蒸れを抑制できる。
【0036】
本実施形態のファン付きヘルメットライナー10は、安全基準を満たした既存のヘルメット50に、後付けで簡単に取り付けることができる。ヘルメット50の安全基準に影響を与えることなく、つまりヘルメット50の安全性を良好に維持しつつ、簡単な構造により、着用者60の頭部61を効率よく冷却できる。また製作にあたり、金型などを用いた大掛かりな設備等を必要としないため、製造が容易であり、コストを低減できる。
【0037】
また本実施形態では、ファン付きヘルメットライナー10がヘルメット50に着脱可能に取り付けられる。
この場合、ファン付きヘルメットライナー10をメンテナンスしたり交換したりすることが容易であり、利便性が向上する。
【0038】
また本実施形態では、第2生地30が、第1生地20のうち連通路33よりも前側に位置する部分を厚さ方向の上側から覆うカバー部31bを有する。
この場合、第1生地20の前側部分の通気層24から厚さ方向のカバー部31bとは反対側(下側)へ向けて、つまり着用者60の頭部61側へ向けて、空気を効率よく供給でき、冷却効率がより高められる。
【0039】
また本実施形態では、ヘルメット50の内面と着用者60の頭部61との間に、通気層24を有する第1生地20が配置される。この第1生地20は、複数の支持糸23により通気層24の厚さが所定以上に保持されるため、通気層24内を空気が流通可能な状態が良好に維持される。これにより、本実施形態の上述した作用効果が安定して奏功される。
【0040】
また本実施形態では、第1生地20が、厚さ方向において1~3N/cmの外力を受けたときに弾性変形し始める。
この場合、第1生地20が厚さ方向において1N/cm以上の外力を受けたときに弾性変形し始めるので、第1生地20の強度が十分に確保され、通気層24の通気性が良好に維持される。また本実施形態のように、ファン付きヘルメットライナー10が乗車用ヘルメット50内に装着される場合には、バイク転倒時などに、第1生地20が弾性変形することによって着用者60の頭部61に伝わる衝撃が緩和され、頭部61を保護する機能が得られる。つまりヘルメット50に、より高い安全性を付加することができる。
また、第1生地20が厚さ方向において3N/cm以下の外力を受けたときに弾性変形し始めるので、第1生地20の剛性が高くなり過ぎることを抑えて、ファン付きヘルメットライナー10の着用感を良好に維持できる。
【0041】
また本実施形態では、第1生地20の第1層21と第2層22とを繋ぐ支持糸23が湾曲して形成されており、支持糸23は、厚さ方向と垂直な方向への中央部23cの膨出量を増減させるように、弾性変形する。
このため、例えば着用者60がヘルメット50を上側から押さえるなどして第1生地20が厚さ方向に弾性変形させられたときに、厚さ方向と垂直な方向への第1層21と第2層22との相対的な位置ずれは抑えられる。つまり、第1層21と第2層22とが第1生地20の面方向に位置ずれしにくいため、第1生地20の弾性変形時においても、着用感が良好に維持される。
【0042】
また支持糸23が、モノフィラメント(単繊維)により形成されるので、支持糸23を弾性変形可能に形成しつつ、支持糸23に十分な強度を付与しやすい。つまり、支持糸23が、第1層21と第2層22とを厚さ方向に離間させた状態で安定して支持できる。
【0043】
また本実施形態では、第1生地20の第1層21および第2層22が網状に形成されるので、第1層21および第2層22の各網目の開口を通した通気性についても確保される。このため、より爽快な着用感が得られる。また第1層21および第2層22の各網目がハニカム構造であるので、第1生地20が破れにくい。
【0044】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0045】
特に図示しないが、ライナー1は、例えば上側生地31の上面などに、ヘルメット50の内張り等の内面に着脱可能な面ファスナー等の貼付部を有していてもよい。この場合、ヘルメット50の内部でライナー1が動くことが抑制され、着用感がより安定する。
【0046】
前述の実施形態では、ライナー1のうち後端部以外の部分が、頭部61の前頭部、頭頂部および後頭部にわたって対向し、ライナー1の後端部が、首部62の後側に配置される例を挙げたが、これに限らない。
例えば、ライナー1のうち後端部以外の部分が、さらに頭部61の側頭部に対向していてもよい。詳しくは、ライナー1のうち後端部以外の部分は、ライナー1の厚さ方向において、頭部61の前頭部、頭頂部、後頭部および側頭部の少なくともいずれかに対向していればよい。
またライナー1の後端部が、ヘルメット50の外面のうち後側を向く部分(ヘルメット50後面)、つまりヘルメット50の後側に配置されてもよい。この場合、ファン2が取り付けられる吸気孔31aは、上側生地31の代わりに、下側生地32を厚さ方向に貫通して形成されてもよい。
【0047】
またファン2が、ヘルメット50に固定可能であってもよい。この場合、ヘルメット50の外部でファン2がぶらつくことが抑えられ、ファン2がヘルメット50や着用者60にぶつかることを抑制できる。
またファン2が、ライナー1のうちヘルメット50の外部に位置する部分に、複数設けられていてもよい。
【0048】
前述の実施形態では、ファン2が、連通路33を通して通気層24へ空気を送る(吸気する)構成について説明したが、これに限らない。
ファン2が、連通路33を通して通気層24から空気を吸い出す(排気する)こととしてもよい。すなわち、通気層24の空気が、連通路33およびファン2を通してヘルメット50の外部に排出されてもよい。この場合においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0049】
特に図示しないが、ファン2の動作がONであるかOFFであるかに係わらず、連通路33の流路断面積が所定以上に確保可能な構成である場合には、連通路33の内部に通気層24の一部が配置されなくてもよい。
【0050】
前述の実施形態では、ファン付きヘルメットライナー10が、乗車用ヘルメット50に取り付けられる例を挙げたが、これに限らない。ファン付きヘルメットライナー10は、乗車用以外の例えば作業用などのヘルメットに取り付けられてもよい。
【0051】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のファン付きヘルメットライナーによれば、ヘルメットの安全性を良好に維持しつつ、簡単な構造により着用者の頭部を効率よく冷却できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0053】
1…ライナー、2…ファン、50…乗車用ヘルメット(ヘルメット)、10…ファン付きヘルメットライナー、20…第1生地、21…第1層、22…第2層、23…支持糸、24…通気層、30…第2生地、31b…カバー部、33…連通路、60…着用者、61…頭部
図1
図2
図3
図4