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特開2022-109081レンズアタッチメント及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109081
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】レンズアタッチメント及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20220720BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220720BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220720BHJP
   H04N 5/235 20060101ALI20220720BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20220720BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20220720BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20220720BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20220720BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20220720BHJP
   A61B 3/14 20060101ALI20220720BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G03B17/56 F
H04N5/225 400
H04N5/225 600
H04N5/225 100
H04N5/232 120
H04N5/235 400
G03B15/03 P
G03B15/05
G03B15/02 S
G02B7/28 H
G03B13/36
G03B15/02 U
A61B3/14
A61B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004424
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 恭生
(72)【発明者】
【氏名】高砂 一弥
【テーマコード(参考)】
2H011
2H053
2H105
2H151
4C316
5C122
【Fターム(参考)】
2H011DA06
2H011DA07
2H053BA72
2H053BA85
2H053CA01
2H053CA22
2H053CA33
2H053DA02
2H053DA04
2H105CC01
2H105CC29
2H105EE21
2H105EE36
2H151CC02
2H151CC18
2H151CC20
2H151DC16
2H151EA22
2H151EB07
4C316AA09
4C316AB16
4C316FA08
4C316FC04
4C316FC07
4C316FY05
4C316FY09
4C316FZ01
5C122DA09
5C122DA12
5C122FA05
5C122FD09
5C122FF17
5C122FK23
5C122GD12
5C122GE03
5C122GE11
5C122GG02
5C122GG18
5C122GG25
5C122GG29
5C122HA75
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】携帯端末を利用した接写撮影を可能にするレンズアタッチメントを提供する。
【解決手段】レンズアタッチメント1は、スマートフォン2のカメラ部60を覆うようにスマートフォン2に着脱自在に取付可能な筐体10と、被写体と対向するように筐体10の内部に配置される接写レンズ22と、スマートフォン2のディスプレイ80の少なくとも一部を占める発光領域Eに対向するように配置され、ディスプレイ80の発光領域Hから発される準備光を集める集光板20と、集光板20により集められた準備光を接写レンズ22に導くように構成される第1の光路P1と、被写体からの光を接写レンズ22を介してスマートフォン2のカメラ部60に導く第2の光路P2と、スマートフォン2のフラッシュ光源70から発される照明光を接写レンズ22に導くように構成される第3の光路P3とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末のカメラ部を覆うように前記携帯端末に着脱自在に取付可能な筐体と、
被写体と対向するように前記筐体の内部に配置される接写レンズと、
前記携帯端末のディスプレイの少なくとも一部を占める発光領域に対向するように配置され、前記ディスプレイの前記発光領域から発される準備光を集める集光板と、
前記集光板により集められた前記準備光を前記接写レンズに導くように構成される第1の光路と、
前記被写体からの光を前記接写レンズを介して前記携帯端末の前記カメラ部に導く第2の光路と、
前記携帯端末のフラッシュ光源から発される照明光を前記接写レンズに導くように構成される第3の光路と
を備える、レンズアタッチメント。
【請求項2】
前記接写レンズの画角は15度以上45度以下である、請求項1に記載のレンズアタッチメント。
【請求項3】
オートフォーカス機構を含むカメラ部とディスプレイとフラッシュ光源とを含む携帯端末のプロセッサに、
前記ディスプレイの少なくとも一部を占める発光領域を発光させて準備光を発する第1の発光ステップと、
前記準備光により照明された被写体が前記カメラ部の撮像面に結像するように前記カメラ部の前記オートフォーカス機構を調整するAFステップと、
前記オートフォーカス機構を前記AFステップにおいて調整された状態にして前記フラッシュ光源を点灯して照明光を発する第2の発光ステップと、
前記照明光により照明された前記被写体を前記カメラ部により撮像する撮像ステップと
を実行させるためのプログラム。
【請求項4】
前記携帯端末の前記プロセッサに、さらに、
前記準備光により照明された前記被写体を前記AFステップで前記カメラ部の撮像面に結像できない場合に、前記ディスプレイの前記発光領域の輝度を上げる輝度調整ステップ
を実行させるための請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記第1の発光ステップは、前記被写体を照明する前記準備光のピーク波長が590nm以上770nm以下となるように前記ディスプレイの前記発光領域を発光させる、請求項3又は4に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアタッチメント及びプログラムに係り、特にスマートフォンなどの携帯端末に着脱自在に取り付けられるレンズアタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から眼科における眼の診断には眼底カメラなどの専用の撮影装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。これらの撮影装置は高価なものであるとともにサイズも大きいものである。また、このような撮影装置を用いて遠隔診療を行う場合には、撮影装置とは別に通信装置を用意しなければならず、さらにコストが増大する。近年では、スマートフォンをはじめとする携帯端末が急速に普及してきており、身近にある携帯端末を利用して簡単に眼科診断を行うことができるシステムが要望されている。また、眼科診断以外の分野においても、身近にある携帯端末を利用して簡単に接写撮影を行うことができるシステムが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-34480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、携帯端末を利用した接写撮影を可能にするレンズアタッチメント及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、携帯端末を利用した接写撮影を可能にするレンズアタッチメントが提供される。このレンズアタッチメントは、携帯端末のカメラ部を覆うように上記携帯端末に着脱自在に取付可能な筐体と、被写体と対向するように上記筐体の内部に配置される接写レンズと、上記携帯端末のディスプレイの少なくとも一部を占める発光領域に対向するように配置され、上記ディスプレイの上記発光領域から発される準備光を集める集光板と、上記集光板により集められた上記準備光を上記接写レンズに導くように構成される第1の光路と、上記被写体からの光を上記接写レンズを介して上記携帯端末の上記カメラ部に導く第2の光路と、上記携帯端末のフラッシュ光源から発される照明光を上記接写レンズに導くように構成される第3の光路とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、携帯端末を利用した接写撮影を可能にするプログラムが提供される。このプログラムは、オートフォーカス機構を含むカメラ部とディスプレイとフラッシュ光源とを含む携帯端末のプロセッサに、上記ディスプレイの少なくとも一部を占める発光領域を発光させて準備光を発する第1の発光ステップと、上記準備光により照明された被写体が上記カメラ部の撮像面に結像するように上記カメラ部の上記オートフォーカス機構を調整するAFステップと、上記オートフォーカス機構を上記AFステップにおいて調整された状態にして上記フラッシュ光源を点灯して照明光を発する第2の発光ステップと、上記照明光により照明された上記被写体を上記カメラ部により撮像する撮像ステップとを実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるレンズアタッチメントをスマートフォンとともに示す斜視図である。
図2図2は、図1に示すレンズアタッチメントをスマートフォンに取り付けた状態を示す斜視図である。
図3図3は、図2の後面図である。
図4図4は、図2に示すレンズアタッチメントの底面図である。
図5図5は、図1に示すスマートフォンの機能的構成を示す模式図である。
図6図6は、図1に示すスマートフォンの後面図である。
図7図7は、図1に示すレンズアタッチメント及びスマートフォンにおける光学的構成を模式的に示す図である。
図8図8は、図1に示すレンズアタッチメントを用いてスマートフォンにより被観察者の眼底を撮影するときの動作を説明するフローチャートである。
図9A図9Aは、図7に示すレンズアタッチメントにおける第1の光路を示す模式図である。
図9B図9Bは、図7に示すレンズアタッチメントにおける第2の光路を示す模式図である。
図9C図9Cは、図7に示すレンズアタッチメントにおける第3の光路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るレンズアタッチメントの実施形態について図1から図9Cを参照して詳細に説明する。図1から図9Cにおいて、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図9Cにおいては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は本発明の一実施形態におけるレンズアタッチメント1を携帯端末としてのスマートフォン2とともに示す斜視図、図2はレンズアタッチメント1をスマートフォン2に取り付けた状態を示す斜視図、図3図2の後面図、図4はレンズアタッチメント1の底面図である。本実施形態では、レンズアタッチメント1が取り付けられる携帯端末がスマートフォン2である場合を例に説明するが、レンズアタッチメント1が取り付けられる携帯端末は、このようなスマートフォンに限られるものではなく、タブレットコンピュータやラップトップコンピュータであってもよい。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」、+Y方向を「前」又は「前方」、-Y方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0010】
図5は、図1に示すスマートフォン2の機能的構成を示す模式図である。図5に示すように、スマートフォン2は、オートフォーカス機構61と撮像素子62とを含むカメラ部60と、例えば1以上のLEDから構成されるフラッシュ光源70と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどにより構成されるディスプレイ80と、スマートフォン2の周囲の明るさを検出する光センサ81と、ROMやRAM、フラッシュメモリなどを含む記憶部90と、ネットワークに接続してデータ通信を行うための通信部91と、各構成要素の動作を制御する制御部92とを備えている。
【0011】
記憶部90には、OS(Operating System)やスマートフォン2を制御するためのプログラム、以下に述べるステップを実行するためのプログラム、その他各種データなどが格納されている。制御部92は、プロセッサ(CPU)、ROM、RAMなどを備えており、記憶部90に格納されたプログラムをRAMにロードしてこれをプロセッサにより実行することにより様々な機能を実現している。
【0012】
図1に示すように、カメラ部60はスマートフォン2の内部に配置されており、スマートフォン2の前面にはカメラ部60の撮像素子62に光を導入するカメラカバー63が配置されている。フラッシュ光源70は、このカメラカバー63の近傍に配置されている。図2に示すように、ディスプレイ80は、スマートフォン2の後面の大部分を占めており、本実施形態においては、ユーザからの入力を受け付けるタッチパネル(入力部)としても機能する。
【0013】
図1から図4に示すように、レンズアタッチメント1は、スマートフォン2に着脱自在に取付可能な筐体10を有している。この筐体10は、開口部11が下面に形成されたアタッチメント本体12と、アタッチメント本体12から前方に延びる円筒部13とを含んでいる。スマートフォン2の上部をアタッチメント本体12の開口部11に挿入することで、図2に示すようにレンズアタッチメント1をスマートフォン2に取り付けることができるようになっている。この状態では、レンズアタッチメント1の筐体10がスマートフォン2のカメラ部60を覆っている。
【0014】
また、レンズアタッチメント1は、スマートフォン2のディスプレイ80の上部に対向するように配置される集光板20と、集光板20と筐体10の円筒部13とを接続する導光管21と、筐体10の円筒部13の内部に配置される接写レンズ22とを含んでいる。導光管21は例えば光ファイバなどにより構成することができる。本実施形態におけるレンズアタッチメント1は、スマートフォン2の機能を利用して被観察者の眼底を撮影するために用いられるものである。したがって、接写レンズ22の画角は眼底撮影に好適な15度以上45度以下であることが好ましい。
【0015】
図6は、スマートフォン2の後面図である。図6に示すように、スマートフォン2のディスプレイ80のうち、レンズアタッチメント1の集光板20に対向する部分E(図6の網掛け部分)は、後述する眼底撮影の準備の際に用いられる発光領域となっている。レンズアタッチメント1の集光板20は、このディスプレイ80の発光領域Eに対面しており、この発光領域Eから発される光を集めて導光管21に導くように構成される。
【0016】
図7は、レンズアタッチメント1及びスマートフォン2における光学的構成を模式的に示す図である。図7に示すように、レンズアタッチメント1の筐体10の内部には、上述した接写レンズ22に加えて補助レンズ23、ビームスプリッタ24、及びミラー25が収容されている。ミラー25は、スマートフォン2のフラッシュ光源70から発される光及び集光板20により集められた光を反射してビームスプリッタ24に向けることができるように構成されている。ビームスプリッタ24は、接写レンズ22と補助レンズ23との間に配置されており、ミラー25により反射された光を反射して接写レンズ22に向けるとともに、接写レンズ22を通じて被写体から入射する光を透過してスマートフォン2のカメラ部60の撮像素子62に向けるようになっている。
【0017】
図8は、レンズアタッチメント1を用いて被観察者の眼底を撮影するときにスマートフォン2で行われる処理を示すフローチャートである。上述のように、スマートフォン2の上部をアタッチメント本体12の開口部11に挿入し、レンズアタッチメント1をスマートフォン2に取り付けた後、ユーザがスマートフォン2を操作して所定のプログラム(いわゆるアプリ)を起動することで被観察者の眼底の撮影が可能となる。以下、被観察者の眼底を撮影する際に行われる処理について詳細に説明する。
【0018】
眼底の撮影は暗所で行う必要があるため、上述のようにプログラムが起動されると、スマートフォン2の制御部92は、スマートフォン2が暗所に置かれているか否かを判断する(ステップS1)。例えば、制御部92は、光センサ81の出力をモニタリングしてスマートフォン2の周囲の環境が所定の照度以下になったか否かを判断する。
【0019】
スマートフォン2が暗所に置かれていると判断された場合には、眼底撮影の準備を開始する。すなわち、被観察者の眼底の撮影に先立ち、スマートフォン2のカメラ部60の焦点合わせが行われる。このカメラ部60の焦点合わせにおいては、制御部92は、まず、オートフォーカスの試行回数を示すカウンタ(以下、AFカウンタという)と発光領域Eを発光させる輝度のレベル(以下、輝度レベルという)を初期化して記憶部90に記憶する(ステップS2)。例えば、この初期化によりAFカウンタはゼロ、輝度レベルは最低レベルにセットされる。
【0020】
次に、制御部92は、ディスプレイ80の発光領域Eが現在設定されている輝度レベルで発光するように発光領域Eに特定のパターンを特定の色で表示する(ステップS3(第1の発光ステップ))。このとき発光領域Eから発される光は、眼底の撮影の準備としてカメラ部60の焦点合わせを行うために用いられるものであるため、以下では「準備光」と呼ぶこととする。
【0021】
カメラ部60の撮像素子62の撮像面に被観察者の眼底を結像させるためには、焦点合わせの際に瞳孔を開いた状態にする必要がある。一般的に光量が多くなると瞳孔が閉じてしまうが、赤外光や赤色光であればある程度の光量であっても瞳孔を開いたままにできることが知られている。したがって、上述した準備光が赤色光となるように発光領域Eを発光させることが好ましい。
【0022】
発光領域Eから発された準備光は、図9Aに示すように、レンズアタッチメント1の集光板20によって集められて導光管21に導かれる。この準備光は、導光管21内を伝搬して、導光管21からミラー25に向かって出射される。その後、準備光は、ミラー25で反射し、ビームスプリッタ24でさらに反射して接写レンズ22を介して被観察者の眼底Bに照射される。このように、レンズアタッチメント1には、集光板20によって集められた準備光を接写レンズ22に導く第1の光路P1が形成されている。
【0023】
準備光によって照明された眼底Bからの光は、図9Bに示すように、レンズアタッチメント1の接写レンズ22、ビームスプリッタ24、及び補助レンズ23を通過してスマートフォン2のカメラ部60に至る。このように、レンズアタッチメント1には、被写体である眼底Bからの光を接写レンズ22、ビームスプリッタ24、及び補助レンズ23を介してカメラ部60に導く第2の光路P2が形成されている。
【0024】
上述のように準備光によって眼底Bを照明しているときに、スマートフォン2の制御部92は、カメラ部60のオートフォーカス機構61を動作させ、準備光によって照明された眼底Bが撮像素子62の撮像面に結像するようにオートフォーカス機構61内のレンズ(図示せず)の位置を前後に調整する(ステップS4(AFステップ))。そして、制御部92は、このオートフォーカス機構61の動作によって眼底Bを撮像素子62の撮像面に結像できたか否かを判断する(ステップS5)。
【0025】
ステップS4において、眼底Bを撮像素子62の撮像面に結像できたと判断された場合には、制御部92は、発光領域Eに表示していたパターンを消すことで発光領域Eからの発光を停止する(ステップS6)。そして、制御部92は、オートフォーカス機構61内のレンズの位置を保持しつつ、フラッシュ光源70を点灯する(ステップS7(第2の発光ステップ))。このときフラッシュ光源70から発される光は、眼底Bを照明して眼底Bの撮影に用いられるものであるため、以下では「照明光」と呼ぶこととする。
【0026】
フラッシュ光源70から発された照明光は、図9Cに示すように、ミラー25で反射し、ビームスプリッタ24でさらに反射して接写レンズ22を介して被観察者の眼底Bに照射される。このように、レンズアタッチメント1には、フラッシュ光源70から発される照明光を接写レンズ22に導く第3の光路P3が形成されている。なお、フラッシュ光源70からの照明光の大部分はこの第3の光路P3を通って眼底Bを照明するが、フラッシュ光源70からの照明光の一部が第3の光路P3以外の光路を通って(例えば接写レンズ22の周囲から漏れ出て)眼底Bを照明してもよい。
【0027】
このように、本明細書において「光路」は、光を所定の位置まで導くことが可能な経路を意味するものとする。例えば、少なくとも一部又は全体が集光板及び/又は導光管などから構成される「光路」やレンズ、プリズムおよびこれらの周辺の空間により構成される光路も本明細書における「光路」に含まれる。また、本明細書における「光路」には「画像光路」又は「導波路」と言われるものも含まれる。
【0028】
照明光によって照明された眼底Bからの光は、図9Bに示すように、レンズアタッチメント1の接写レンズ22、ビームスプリッタ24、及び補助レンズ23を通過してスマートフォン2のカメラ部60に至る。このとき、上述のオートフォーカス機構61によって焦点合わせができているため、照明光によって照明された眼底Bは撮像素子62の撮像面に結像する。スマートフォン2の制御部92は、撮像素子62によって眼底Bの画像を取得(撮像)し、取得された画像データを記憶部90に記憶する(ステップS8(撮像ステップ))。このとき、制御部92は、撮像したことを知らせる音をスピーカ(図示せず)から出力してもよい。また、制御部92は、撮像された眼底Bの画像をディスプレイ80の一部(発光領域Eの下方)に表示する(ステップS9)。このとき、撮像素子62により取得される眼底Bの画像は静止画であってもよいし、動画であってもよい。さらに、制御部92は、必要に応じて、通信部91を介して眼底Bの画像を他の携帯端末やサーバに送信し、例えば遠隔診断に利用することもできる。
【0029】
一方、ステップS5において、眼底Bを撮像素子62の撮像面に結像できなかったと判断された場合には、制御部92は、AFカウンタを1つ増やす(ステップS10)。次に、制御部92は、AFカウンタが3以上であるか否かを判断し(ステップS11)、AFカウンタが3未満である場合、すなわちオートフォーカス動作の試行回数が3回未満である場合には、ステップS3に戻り、再度オートフォーカス動作を試行する。
【0030】
ステップS11において、AFカウンタが3以上であると判断された場合、すなわちオートフォーカス動作を連続して3回以上試行したにもかかわらずオートフォーカスに失敗した場合には、準備光の光量が不十分であることが考えられるため、準備光の光量を上げる。すなわち、制御部92は、現在の輝度レベルが最大値であるか否かを判断し(ステップS12)、現在の輝度レベルが最大値ではないと判断された場合には、輝度レベルを1つ上げる(ステップS13(輝度調整ステップ))。また、制御部92は、AFカウンタをゼロに初期化する(ステップS14)。これらの輝度レベル及びAFカウンタは記憶部90に記憶される。そして、制御部92は、ステップS3に戻って、発光領域Eが前回よりも1つ高い輝度レベルで発光するように発光領域Eに特定のパターンを表示する。
【0031】
ステップS12において、現在の輝度レベルが最大値であると判断された場合には、スマートフォン2が明所に移動されたことも考えられるため、発光領域Eの発光を停止して(ステップS15)、ステップS1に戻り、スマートフォン2が暗所に置かれているか否かを再度判断する。
【0032】
このように、本実施形態によれば、レンズアタッチメント1を身近にあるスマートフォン2に取り付けるだけで、スマートフォン2のカメラ部60、ディスプレイ80、及びフラッシュ光源70を利用して簡単に被観察者の眼底Bの撮影を行うことができる。したがって、高価な撮影装置がなくても眼底Bの撮影が可能となる。また、スマートフォン2の通信部91を介して眼底Bの画像を他のスマートフォンやサーバなどに送信すれば遠隔診断も可能となる。また、電力を必要とするデバイスを含めることなくレンズアタッチメント1を構成することができるので、レンズアタッチメント1に電池を内蔵したり、電源コードを接続したりする必要もない。
【0033】
上述したステップS3において発光領域Eから準備光を発する際に、発光領域Eの全体を発光させてもよいし、発光領域Eの一部のみを発光させてもよい。また、発光領域Eに表示するパターンとしては、一色で塗りつぶした画像や一部の色を変化させた画像、多数の点を描画したもの、格子模様のものなど任意のパターンを用いることができる。この場合において、被観察者の瞳孔が閉じてしまわないように、眼底Bを照明する準備光のピーク波長が590nm以上770nm以下となるように発光領域Eにパターンを表示することが好ましい。
【0034】
また、ステップS7においてフラッシュ光源70を発光させる代わりに、発光領域Eをフラッシュ光に相当する光量で発光させてもよい。これにより、フラッシュ機能を持たない携帯端末であっても上述のレンズアタッチメント1を利用することができるようになる。
【0035】
また、フラッシュ光源70が複数のLEDから構成されている場合、一部のLEDの前方に赤色フィルタを配置してもよい。この場合、ステップS3において発光領域Eを発光させることに代えて、制御部92によって発光させるフラッシュ光源70のLEDを制御し、赤色フィルタが前方に配置されているLEDを発光させることで、フラッシュ光源70を準備光の光源として活用できるようになる。そして、ステップS7においては、赤色フィルタが前方に配置されていないLEDを発光させることで、フラッシュ光源70を照明光の光源としても活用できる。なお、このような構成では、上述した集光板20および導光管21は省略することが可能になる。
【0036】
上述した実施形態においては、第1の光路P1の一部と第3の光路P3の一部とが共通しているが、このような共通した光路は必ずしも必要とされるものではなく、第1の光路P1と第3の光路P3とを全く別のものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、レンズアタッチメント1を用いて被観察者の眼底Bの撮影を行う場合の例を説明したが、撮影する対象は眼底に限られるものではない。
【0038】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、携帯端末を利用した接写撮影を可能にするレンズアタッチメントが提供される。このレンズアタッチメントは、携帯端末のカメラ部を覆うように上記携帯端末に着脱自在に取付可能な筐体と、被写体と対向するように上記筐体の内部に配置される接写レンズと、上記携帯端末のディスプレイの少なくとも一部を占める発光領域に対向するように配置され、上記ディスプレイの上記発光領域から発される準備光を集める集光板と、上記集光板により集められた上記準備光を上記接写レンズに導くように構成される第1の光路と、上記被写体からの光を上記接写レンズを介して上記携帯端末の上記カメラ部に導く第2の光路と、上記携帯端末のフラッシュ光源から発される照明光を上記接写レンズに導くように構成される第3の光路とを備える。上記接写レンズの画角は15度以上45度以下であることが好ましい。
【0039】
このようなレンズアタッチメントによれば、携帯端末に取り付けるだけで、携帯端末のカメラ部、ディスプレイ、及びフラッシュ光源を利用して簡単に被写体の接写撮影を行うことが可能となる。したがって、高価な撮影装置を必要とすることなく、被写体の接写撮影を行うことができる。また、被観察者を診断するために接写撮影をする場合には、携帯端末の通信機能を利用することで、遠隔診断を行うことが可能となる。また、電力を必要とするデバイスを含めることなくレンズアタッチメントを構成することができるので、レンズアタッチメントに電池を内蔵したり、電源コードを接続したりする必要もない。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、携帯端末を利用した接写撮影を可能にするプログラムが提供される。このプログラムは、オートフォーカス機構を含むカメラ部とディスプレイとフラッシュ光源とを含む携帯端末のプロセッサに、上記ディスプレイの少なくとも一部を占める発光領域を発光させて準備光を発する第1の発光ステップと、上記準備光により照明された被写体が上記カメラ部の撮像面に結像するように上記カメラ部の上記オートフォーカス機構を調整するAFステップと、上記オートフォーカス機構を上記AFステップにおいて調整された状態にして上記フラッシュ光源を点灯して照明光を発する第2の発光ステップと、上記照明光により照明された上記被写体を上記カメラ部により撮像する撮像ステップとを実行させる。
【0041】
上述したレンズアタッチメントを携帯端末に取り付けた場合に、被写体の接写撮影が上記プログラムによって実現される。
【0042】
上記プログラムは、上記携帯端末の上記プロセッサに、さらに、上記準備光により照明された上記被写体を上記AFステップで上記カメラ部の撮像面に結像できない場合に、上記ディスプレイの上記発光領域の輝度を上げる輝度調整ステップを実行させてもよい。
【0043】
また、眼科診断のために上記プログラムを用いる場合には、被観察者の瞳孔が閉じてしまわないように、上記第1の発光ステップは、上記被写体を照明する上記準備光のピーク波長が590nm以上770nm以下となるように上記ディスプレイの上記発光領域を発光させることが好ましい。
【0044】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 レンズアタッチメント
2 スマートフォン
10 筐体
11 開口部
12 アタッチメント本体
13 円筒部
20 集光板
21 導光管
22 接写レンズ
23 補助レンズ
24 ビームスプリッタ
25 ミラー
60 カメラ部
61 オートフォーカス機構
62 撮像素子
70 フラッシュ光源
80 ディスプレイ
81 光センサ
90 記憶部
91 通信部
92 制御部
B 眼底
E 発光領域
P1 第1の光路
P2 第2の光路
P3 第3の光路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C