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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109086
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004429
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁明
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB03
3B087DE05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乗物用シートにおける接続部材に使用する材料を柔軟に選択可能とする技術を提供する。
【解決手段】シートクッションを備える乗物用シートであって、シートクッションは、骨格となるシートクッションフレームと、接続部材と、を備え、シートクッションフレームは、シート幅方向に離間して設けられた一対のクッションサイドフレーム11を有し、一対のクッションサイドフレーム11は、接続部材によって接続されており、接続部材は、第1材料で形成された第1部位13a,14aと、第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部位13b,14bと、が接合されて形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを備える乗物用シートであって、
前記シートクッションは、
骨格となるシートクッションフレームと、
接続部材と、を備え、
前記シートクッションフレームは、前記乗物用シートの幅方向に離間して設けられた一対のサイドフレームを有し、
一対の前記サイドフレームは、前記接続部材によって接続されており、
前記接続部材は、第1材料で形成された第1部位と、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部位と、が接合されて形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第1材料は、前記第2材料よりも比重の小さい材料であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第2材料は、前記第1材料よりも硬度の高い材料であることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記接続部材は、前記乗物用シートの幅方向における中央部が前記第1部位であり、前記乗物用シートの幅方向における両端部が前記第2部位であり、
前記乗物用シートの幅方向において、前記第1部位が前記第2部位よりも長く形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1材料は、アルミニウムを含有することを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第2材料が鉄を含有することを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記接続部材は、中空のパイプ部材であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第2部位は、前記サイドフレームに当接する当接部を備えていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第2部位には、前記シートクッションの高さを調整するリンク部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記シートクッションフレームの上に載置されたパッド部材と、
前記パッド部材を覆うトリムカバーと、を有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートでは、シートフレームを構成するフレーム部材が、接続部材によって互いに接続されている。例えば、特許文献1には、クッションサイドフレームの後端部が、シート幅方向に延在する接続パイプで接続された乗物用シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-83269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の乗物用シートにおける接続パイプは、鉄など1種の材料で構成されていた。軽量化などの観点から、使用する材料を柔軟に選択可能とする技術が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗物用シートにおける接続部材に使用する材料を柔軟に選択可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備える乗物用シートであって、前記シートクッションは、骨格となるシートクッションフレームと、接続部材と、を備え、前記シートクッションフレームは、前記乗物用シートの幅方向に離間して設けられた一対のサイドフレームを有し、一対の前記サイドフレームは、前記接続部材によって接続されており、前記接続部材は、第1材料で形成された第1部位と、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部位と、が接合されて形成されていること、により解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、乗物用シートにおける接続部材に使用する材料を第1部位と第2部位とで柔軟に選択することが可能となる。
【0008】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1材料は、前記第2材料よりも比重の小さい材料であるとよい。
上記の構成では、比重の小さい材料を用いることで乗物用シートを軽量化することが可能となる。
【0009】
上記の乗物用シートにおいて、前記第2材料は、前記第1材料よりも硬度の高い材料であるとよい。
上記の構成では、硬度の高い材料を用いることで接続部材における強度を確保することが可能となる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記接続部材は、前記乗物用シートの幅方向における中央部が前記第1部位であり、前記乗物用シートの幅方向における両端部が前記第2部位であり、前記乗物用シートの幅方向において、前記第1部位が前記第2部位よりも長く形成されているとよい。
上記の構成では、比重の小さい材料で形成された第1部位を、第2部位よりも長くすることで、乗物用シートを効果的に軽量化することが可能となる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1材料は、アルミニウムを含有するとよい。
上記の構成では、比重の小さいアルミニウムを用いることで乗物用シートを効果的に軽量化することが可能となる。
【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記第2材料が鉄を含有するとよい。
上記の構成では、硬度の高い鉄を用いることで接続部材における強度を確保することが可能となる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記接続部材は、中空のパイプ部材であるとよい。
上記の構成では、材料を柔軟に選択して第1部位と第2部位を接合することで接続部材としての中空のパイプ部材を構成することが可能となる。
【0014】
上記の乗物用シートにおいて、前記第2部位は、前記サイドフレームに当接する当接部を備えているとよい。
上記の構成では、サイドフレームに対する接続部材の位置を適切に配置することが可能となる。
【0015】
上記の乗物用シートにおいて、前記第2部位には、前記シートクッションの高さを調整するリンク部材が取り付けられているとよい。
上記の構成では、リンク部材を取り付ける第2部位の材料を柔軟に選択することが可能となる。
【0016】
上記の乗物用シートにおいて、前記シートクッションフレームの上に載置されたパッド部材と、前記パッド部材を覆うトリムカバーと、を有しているとよい。
上記の構成では、接続部材に使用する材料を柔軟に選択することが可能な乗物用シートを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物用シートによれば、乗物用シートにおける接続部材に使用する材料を第1部位と第2部位とで柔軟に選択することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、比重の小さい材料を用いることで乗物用シートを軽量化することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、硬度の高い材料を用いることで接続部材における強度を確保することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、比重の小さい材料で形成された第1部位を、第2部位よりも長くすることで、乗物用シートを効果的に軽量化することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、比重の小さいアルミニウムを用いることで乗物用シートを効果的に軽量化することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、硬度の高い鉄を用いることで接続部材における強度を確保することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、材料を柔軟に選択して第1部位と第2部位を接合することで接続部材としての中空のパイプ部材を構成することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、サイドフレームに対する接続部材の位置を適切に配置することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、リンク部材を取り付ける第2部位の材料を柔軟に選択することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、接続部材に使用する材料を柔軟に選択することが可能な乗物用シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
図2】車両用シートが備えるシートフレームの斜視図である。
図3】シートフレームの上面図である。
図4】シートフレームの後側接続パイプ周辺の構造を説明するための拡大図である。
図5】後側接続パイプの構造を示す斜視図である。
図6図5のA-A断面図である。
図7】変形例に係る後側接続パイプにおける図5のA-A断面に対応する断面図である。
図8】変形例に係る後側接続パイプにおける図5のA-A断面に対応する断面図である。
図9】変形例に係る後側接続パイプにおける図5のA-A断面に対応する断面図である。
図10】変形例の車両用シートが備えるシートフレームの斜視図である。
図11】変形例の車両用シートが備えるシートフレームの側面図である。
図12】変形例の車両用シートが備えるパンフレームの斜視図である。
図13図12のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1乃至図13を参照しながら、本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0021】
本明細書における方向を示す用語に関し、図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
【0022】
[1.車両用シートSの構成]
本実施形態に係る車両用シートSは、図1に図示した外観を有している。なお、図1中、車両用シートSの一部(具体的には、シートクッションS1の一部)については、図示の都合上、トリムカバーTを外した構成にて図示している。
【0023】
車両用シートSは、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS1、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS2、及び、シートバックS2の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素として有する。
【0024】
シートクッションS1は、骨格となるシートクッションフレーム10に、パッド部材Pを載置し、更にパッド部材PをトリムカバーTで覆うことで構成されている。シートバックS2はシートバックフレーム20にパッド部材Pを載置して、トリムカバーTで覆うことで構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材にパッド部材Pを配して、トリムカバーTで被覆して形成されている。
【0025】
[2.シートフレームFの構成]
本実施形態に係るシートフレームF(以下、シートフレームF)の基本構成について、図2乃至図4を参照しながら説明する。図2は、車両用シートSが備えるシートフレームFの斜視図である。
【0026】
図2に示すように、シートフレームFは、シートフレームFにおける着座部分の骨格をなすシートクッションフレーム10と、シートフレームFにおける背もたれ部分の骨格をなすシートバックフレーム20と、を主たる構成要素とする。
【0027】
(シートクッションフレーム10)
次に、シートクッションフレーム10の構成について説明する。図2に示されるように、シートクッションフレーム10は、主に、左右に配置されたクッションサイドフレーム11と、パンフレーム12と、前側接続パイプ13と、後側接続パイプ14と、を備えている。
【0028】
クッションサイドフレーム11は、シート前後方向に延出したフレームである。左右のクッションサイドフレーム11の前端部には、パンフレーム12が連結されている。パンフレーム12は、乗員の大腿部を支持する略矩形状の板状フレームである。
【0029】
左右のクッションサイドフレーム11の前方には前側接続パイプ13が架設されており、後方には後側接続パイプ14が架設されている。また、左右のクッションサイドフレーム11の後端部は、シートバックフレーム20のバックサイドフレーム21に回動可能に連結されている。
【0030】
(シートバックフレーム20)
図2に示すように、シートバックフレーム20は、左右一対のバックサイドフレーム21と、一対のバックサイドフレーム21をシート幅方向において架橋する上部フレーム22と、下部連結フレームとしての下部フレーム23とを備えている。
【0031】
一対のバックサイドフレーム21は、シートバックS2の幅を規定するためにシート幅方向(左右方向)において対向した状態で離間して配置されている。一対のバックサイドフレーム21は、双方ともに上下方向に延在するように配設され、長尺状に形成されている。一対のバックサイドフレーム21は、車両用シートSの側部に配設されて、シートバックS2の左右のフレームを構成する。
【0032】
上部フレーム22は、一対のバックサイドフレーム21の上部同士を連結する部材である。上部フレーム22は、左右の端部がバックサイドフレーム21に溶接によって接続されている。
【0033】
下部フレーム23は、一対のバックサイドフレーム21の下部同士を連結する部材である。下部フレーム23は、左右の端部が、バックサイドフレーム21に溶接により接続されている。
【0034】
[3.スライドレール30の構成]
また、シートクッションS1の下部には、シートクッションS1、シートバックS2及びヘッドレストS3を前後方向にスライド移動させるためのスライドレール30が配置されている。スライドレール30は、図1及び図2に示すように隙間を隔てて左右一対設けられている。各スライドレール30は、図2に示すように、前後方向に延出した状態で車体に固定されているロアレール31と、ロアレール31の延出方向に沿って移動可能なアッパレール32と、を有する。
【0035】
さらに、高さ方向においてシートクッションS1とスライドレール30との間には、シートクッションS1の高さを調整するための高さ調整機構40が備えられている。なお、高さ調整機構40を駆動させるための操作レバーLがシートクッションS1の脇位置に設けられている(図1)。
【0036】
[4.高さ調整機構40の構成]
高さ調整機構40は、駆動機構(不図示)による回動リンクの回動により、シートクッションS1の高さを調整する。回動リンクは、左右それぞれに2つずつ配置されている。具体的に説明すると、左右一対設けられたスライドレール30の各々の直上位置(厳密には、アッパレール32の直上位置)には2つの回動リンクが配置されている。当該2つの回動リンクは、前後方向(すなわち、ロアレール31の延出方向)において互いに離れている。前方の回動リンクをフロントリンク41と呼び、後方の回動リンクをリアリンク42と呼ぶ。
【0037】
リンク支持ブラケット43は、フロントリンク41及びリアリンク42を支持する金属製の板部材である。一対のリンク支持ブラケット43は、前後方向に長く延びており、一対のアッパレール32の上面にそれぞれ溶接されている。
【0038】
以下、高さ調整機構40の構造について図2乃至図4を参照しながら説明する。高さ調整機構40において、フロントリンク41及びリアリンク42の双方は、クッションサイドフレーム11及びアッパレール32の各々に対して揺動可能な状態で支持されている。
【0039】
具体的に説明すると、リンク支持ブラケット43の前端部43aにはフロントリンク41の下端部41aが、リンク支持ブラケット43の後端部43bにはリアリンク42の下端部42aが、それぞれピボットピンを介して揺動可能な状態で支持されている。
【0040】
また、前後方向においてクッションサイドフレーム11の中央部分よりもやや前方寄りの部分には、フロントリンク41の上端部41bがピボットピンを介して揺動可能な状態で支持されている。さらに、クッションサイドフレーム11の後方の端部領域には、リアリンク42の上端部42bが揺動可能な状態で支持されている。
【0041】
[5.接続部材について]
本実施形態の車両用シートSが備える接続部材としての前側接続パイプ13と後側接続パイプ14について、以下に説明をする。なお、以下の説明において、前側接続パイプ13と後側接続パイプ14は、径が異なるが、同様の形状を有しているため、後側接続パイプ14を例示して説明をする。以下に説明する後側接続パイプ14の特徴は、前側接続パイプ13でも同様である。
【0042】
図2乃至図4に示すように、後側接続パイプ14は、一対のクッションサイドフレーム11をシート幅方向において接続している。後側接続パイプ14は、シート幅方向において中央に配置される中央部14a(第1部位)と、端部に配置される端部14b(第2部位)で形成されている。
【0043】
より詳細には、後側接続パイプ14は、第1材料で形成された中央部14a(第1部位)と、第1材料とは異なる第2材料で形成された端部14b(第2部位)が、境界部14cにおいて互いに接合されて形成されている。つまり、本実施形態の車両用シートSでは、接続部材に使用する材料を第1部位と第2部位とで柔軟に選択することが可能である。
【0044】
本実施形態の車両用シートSでは、接続部材としての後側接続パイプ14が、中空のパイプ部材である(図6)。このような構成によれば、第1材料や第2材料を柔軟に選択して、中央部14a(第1部位)と端部14b(第2部位)を接合することで、中空のパイプ部材を構成することが可能である。
【0045】
図5及び図6に示すように、端部14b(第2部位)は、クッションサイドフレーム11に当接する当接部14dを備えている。当接部14dは、端部14bの外表面から突出しており、中央部14aよりも外形が大きくなっている。当接部14dがあることで、クッションサイドフレーム11に対する後側接続パイプ14の位置を適切に配置することが可能となる。
【0046】
(第1部位と第2部位の接合態様について)
図6に断面図を示すように、境界部14cにおいて、中央部14aと端部14bは互いに端面を突き当てた状態で接合されている。境界部14cにおける中央部14aと端部14bの接合の方式は、特に限定されるものではないが、溶接、圧入、接着、摩擦圧接などが例示される。例えば、境界部14cにおいて、中央部14aと端部14bは互いに端面を突き当てた状態で全周が溶接されて接合されていてもよい。
【0047】
このとき、中央部14aと端部14bが塑性流動を利用した異種材料の接合技術によって接合されていると好適である。具体的には、中央部14aと端部14bが境界部14cにおいて、塑性流動によって接合されているとよい。換言すると、機械的強度の異なる第1材料及び第2材料が、境界部14cにおいて塑性流動により接合されているとよい。異種材料である第1材料及び第2材料が、塑性流動にて接合を形成する場合、強固な接合が実現される。
【0048】
なお、境界部14cにおける、中央部14aと端部14bの接合様式は図6に示すものに限定されるものではない。例えば、図7に示されるように、境界部14cにおいて中央部14aの内側に端部14bが係合して接合されていてもよい。また、図8に示されるように、境界部14cにおいて中央部14aの外側に端部14bが係合して接合されていてもよい。さらに、図9に示されるように、境界部14cにおいて中実に形成された端部14bが中央部14aの内側に嵌り込んで接合されていてもよい。このように、用いる第1材料と第2材料の組み合わせや、重量、強度の観点から、境界部14cにおける中央部14aと端部14bの接合様式を適宜選択すればよい。
【0049】
(第1材料や第2材料について)
第1材料や第2材料の例としては、特に限定されるものではないが、金属、合金、セラミクス、樹脂などが例示される。金属、合金、セラミクスに含まれる元素の例としては、特に限定されるものではないが、アルミニウム、マグネシウム、鉄、銅、チタン、亜鉛及びこれらの組合せが例示される。
【0050】
樹脂の例としては、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフタールアミド(PPA)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)及びこれらの組合せが例示される。
【0051】
樹脂として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP、Carbon Fiber Reinforced Plastics)を用いることも可能である。樹脂を炭素繊維で強化することで、樹脂単体よりも高い強度や剛性を得ることが可能である。
【0052】
ここで、中央部14a(第1部位)を形成する第1材料は、端部14b(第2部位)を形成する第2材料よりも比重の小さい材料であるとよい。このような構成によれば、比重の小さい材料を用いることで車両用シートSを軽量化することが可能となる。
【0053】
また、端部14b(第2部位)を形成する第2材料は、中央部14a(第1部位)を形成する第1材料よりも硬度(強度)の高い材料であるとよい。このような構成によれば、硬度(強度)の高い材料を用いることで接続部材における強度を確保することが可能となる。また、シート幅方向において外側における接続部材の強度が高くなるため好適である。
【0054】
このとき、シート幅方向において、比重の小さい第1材料で形成された中央部14a(第1部位)が、端部14b(第2部位)よりも長く形成されているとよい。このような構成によれば、比重の小さい材料で形成された中央部14a(第1部位)を、端部14b(第2部位)よりも長くすることで、車両用シートSを効果的に軽量化することが可能となる。
【0055】
ここで、中央部14a(第1部位)を形成する第1材料を、アルミニウムを主成分として含有する材料とする場合には、アルミニウムは比重が小さいため、車両用シートSを効果的に軽量化することが可能となる。
【0056】
また、端部14b(第2部位)には、シートクッションS1の高さを調整するリンク部材であるリアリンク42が取り付けられている。換言すると、シート幅方向において、リアリンク42よりも内側の位置まで端部14b(第2部位)が延びている。このような構成によれば、リアリンク42(リンク部材)を取り付ける端部13b(第2部位)の材料を柔軟に選択することが可能となる。端部13b(第2部位)を形成する第2材料を、鋼などの鉄を主成分として含有する材料とする場合には、鉄を含有する材料は硬度が高いため、接続部材における強度を確保することが可能となる。
【0057】
端部13b(第2部位)のような、他部材との接続箇所や、荷重が加わる箇所や、磨耗の多い箇所には、硬度が高く、高強度で耐磨耗性の材料、例えば、鋼などの鉄を主成分として含有する材料を用いると好適である。また、中央部13a(第1部位)のように、機械的な強度要求が比較的低い箇所には、軽量化の観点から、例えば、アルミニウムを主成分として含有する材料や、樹脂系の材料を用いると好適である。
【0058】
[6.変形例]
以上までに本発明の乗物用シートの構成について一例を挙げて説明してきたが、上述した実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の実施形態も考えられる。
【0059】
上記実施形態では、接続部材としての前側接続パイプ13と後側接続パイプ14が、中空のパイプ部材であったが、接続部材が中実の棒であってもよい。
【0060】
以下、上記の接続部材を適用可能な変形例に係る車両用シートについて、図10乃至図13を参照して説明をする。図10は、変形例の車両用シートが備えるシートフレームFXの斜視図であり、図11は、シートフレームFXの側面図である。
【0061】
以下に説明をするように、シートフレームFXのシートクッションフレーム10Xが備えるクッションサイドフレーム11Xは、トラス構造を備えていることで剛性が向上している。クッションサイドフレーム11Xは、三角形状の貫通孔11Xaを複数有している。クッションサイドフレーム11Xでは、前後方向において一対の貫通孔11Xaの間の位置に、フロントリンク41の上端部41bが接続される箇所が配置されている。クッションサイドフレーム11Xは、三角形状の貫通孔11Xaや台形状の貫通孔11Xbを有することでトラス構造を備えている。
【0062】
図10及び図11に示されるように、クッションサイドフレーム11Xが備える貫通孔11Xaや貫通孔11Xbは、その外周に立ち上がりが付けられたバーリング孔であると好適である。隣接するバーリング孔について、立ち上がりの方向が互い違い(つまり、シート幅方向における内側と外側)になっていると、各方向(前後方向や上下方向)における剛性が高められるため好適である。
【0063】
図12は、変形例の車両用シートが備えるパンフレーム12Xの斜視図であり、図13は、図12のB-B断面図であり、パンフレーム12Xの模式的な断面を示している。パンフレーム12Xは、その前端部12Xaや側端部12Xbがカーリング成形されている。具体的には、前端部12Xaの先端部分は、前方から後方に向かって湾曲しており、側端部12Xbの先端部分は、外方から内方に向かって湾曲している。
【0064】
パンフレーム12Xでは、前端部12Xaや側端部12Xbがカーリング成形されていることで、切り放し面をなくしつつ、端部が補強される。従来技術では、端部の処理としてヘミング加工(折り返し曲げ)が行われていたが、カーリング加工を行うことで加工コストが抑制される。
【0065】
また、図12に示されるように、シート幅方向において、カーリング成形された前端部12Xaは、隙間12Xcによって、3つの部分に分かれている。このように、隙間12Xcを設けることで、隙間12Xcが無い場合と比較して、前端部12Xaにおけるカーリング成形を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0066】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
T トリムカバー
P パッド部材
F シートフレーム
10 シートクッションフレーム
11 クッションサイドフレーム(サイドフレーム)
12 パンフレーム
13 前側接続パイプ(接続部材)
13a 中央部(第1部位)
13b 端部(第2部位)
14 後側接続パイプ(接続部材)
14a 中央部(第1部位)
14b 端部(第2部位)
14c 境界部
14d 当接部
20 シートバックフレーム
21 バックサイドフレーム
22 上部フレーム
23 下部フレーム
30 スライドレール
31 ロアレール
32 アッパーレール
40 高さ調整機構
41 フロントリンク(リンク部材)
41a 下端部
41b 上端部
42 リアリンク(リンク部材)
42a 下端部
42b 上端部
43 リンク支持ブラケット
43a 前端部
43b 後端部
FX シートフレーム
10X シートクッションフレーム
11X クッションサイドフレーム(サイドフレーム)
11Xa 貫通孔
11Xb 貫通孔
20X シートバックフレーム
12X パンフレーム
12Xa 前端部
12Xb 側端部
12Xc 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13