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特開2022-109095血液製剤検査装置および血液製剤検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109095
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】血液製剤検査装置および血液製剤検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20220720BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20220720BHJP
   A61K 35/19 20150101ALI20220720BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01N33/49 X
G01N33/483 C
A61K35/19 A
A61P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004440
(22)【出願日】2021-01-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】302047880
【氏名又は名称】株式会社パパラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
【テーマコード(参考)】
2G045
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA02
2G045CA24
2G045FA19
2G045GA10
2G045GC12
2G045JA06
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB38
4C087DA04
4C087NA03
4C087ZA53
(57)【要約】
【課題】スワーリング検査の機械化を確立することである。
【解決手段】血液製剤検査装置1は、内部空間2aを有する筐体2と、筐体2の上部に設けられ、ICタグの付いたバッグBをセットし、所定方向にスライド可能なスワーリング発生部3と、スワーリング発生部3の上方と側方に開口する開口部4と、把手5aを有し、スワーリング発生部3の開口部4を開閉可能で、開閉を支援するレバー5bを有する蓋5と、スライダ33をスライドされた状態で保持し、リターンスイッチ6aのONで元に戻るストッパ6と、モニタ7と、スワーリング検査のための演算等を行うコンピュータ部8と、スワーリング発生部3にセットされたバッグBを撮像する色彩計9と、斜光LED10a,10bと、面発光LED10cと、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スワーリング発生前の血液製剤の色彩計による第1画像を撮像し、取得した第1画像の第1色分布を生成し、スワーリング発生後の血液製剤の前記色彩計による第2画像を撮像し、取得した第2画像の第2色分布を生成する色分布生成部と、
前記第1色分布と、第2色分布とを対比し、第1色分布と第2色分布の色分布の一致度に基づいて、スワーリング検査を行うスワーリング検査部と、
を備えたことを特徴とする血液製剤検査装置。
【請求項2】
前記色分布が、L*表色系又はL*表色系に基づくものである請求項1の血液製剤検査装置。
【請求項3】
内部空間を備える筐体と、
前記色分布生成部と、前記スワーリング検査部とを有するコンピュータ部と、
前記血液製剤を照明する発光部と、
蓋の開閉により、前記血液製剤バッグを所定の位置にセットし、所定方向にスライドすることにより、前記血液製剤バッグを振盪させるスワーリング発生部と、を備える請求項1又は2の血液製剤検査装置。
【請求項4】
前記スワーリング発生部が前記筐体の上部に設けられ、前記色彩計が前記筐体の下部に設けられ、上面から照明される前記血液製剤バッグを下方から撮像する請求項3の血液製剤検査装置。
【請求項5】
前記スワーリング発生部が、前記蓋の開閉により、前記血液製剤バッグを所定の位置にセットし、所定方向にスライドすることにより、前記血液製剤バッグを振盪させる請求項3又は4の血液製剤検査装置。
【請求項6】
前記スワーリング発生部が所定方向にスライドするスライダと、前記スライダを保持するストッパを有し、前記所定の位置からスライダが保持位置に移動すると、前記ストッパが前記スライダを保持し、前記ストッパを解除すると、前記スライダが所定の位置に戻ることにより、前記血液製剤バッグに振盪を加える請求項3~5いずれかの血液製剤検査装置。
【請求項7】
前記発光部が、斜光部と、面発光部を備え、測定する赤血球、血漿、血小板に応じて、又は、いずれかに切り替える請求項3~6いずれかの血液製剤検査装置。
【請求項8】
前記血液製剤の第1地点での前記色分布の一致度と、前記血液製剤の第2地点での前記色分布の一致度の差を演算する請求項1~7いずれかの血液製剤検査装置。
【請求項9】
スワーリング発生前の血液製剤を色彩計により撮像し、取得した第1画像の第1色分布を生成し、前記色彩計によりスワーリング発生後の血液製剤を撮像し、取得した第2画像の第2色分布を生成する色分布生成ステップと、
前記第1色分布と、第2色分布とを対比し、第1色分布と第2色分布の色分布の一致度を検出し、前記一致度に基づいて、スワーリングを検出するスワーリング検出ステップと、
を備えたことを特徴とする血液製剤検査方法。
【請求項10】
前記一致度のデータがサーバーに保存され、血液製剤センター、病院・搬送センター、及び病院のそれぞれの電気コンピュータ部の間でデータが共有化される請求項9の血液製剤検査方法。
【請求項11】
血液製剤検査を行う血液製剤検査装置の血液製剤検査プログラムであって、
前記血液製剤検査装置は、モニタとコンピュータを備え、
前記コンピュータ部は、記憶部と、演算部と、判断部と、命令部と、を有し、
スワーリング発生前の血液製剤を色彩計により撮像し、取得した第1画像の第1色分布を生成し、前記色彩計によりスワーリング発生後の血液製剤を撮像し、取得した第2画像の第2色分布を生成する色分布生成ステップと、
前記第1色分布と、第2色分布を対比し、第1色分布と第2色分布の色分布の一致度を検出し、前記一致度に基づいて、スワーリングを検出するスワーリング検出ステップと、
を前記コンピュータに実行させ、
前記モニタに、前記第1色分布、第2色分布、及び前記スワーリングの検出結果を表示させることを特徴とする血液製剤検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スワーリングを検査する血液製剤検査装置とその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に示す通り、濃厚血小板(platelet concentrates, PC)にはスワーリングと呼ばれる特有の現象が観察される。スワーリングとは、PCの入ったバッグを光にかざして、ゆっくりと撹拌すると渦巻き状のパターンが見られる現象をいう。これは、無刺激の血小板の形態は円盤状であり、攪拌時、円盤状血小板が光を一様に屈折する光散乱現象(スワーリング)をおこすためであると言われている。血小板の形態が変化すると一様な屈折が生じないためスワーリングが低下し消失する。このことは、PCの光散乱現象の有無が血小板の形態と密接に関係し、血小板の状態を反映していることを示している。PC中に含まれる円盤状血小板の割合は生体内の寿命と相関すると言われている。
【0003】
日常業務におけるスワーリング検査では、スワーリング陰性のPCを確実に除外することが目的であることから、判定は2名で行い、合格と不合格の2段階で評価する。PCバッグを判定者2名が別々に白色光源下(50~100W)にかざしながら軽く揺らし、30~70cmの離れた距離からバッグ内にみられるスワーリングパターンを観察する。2名の判定が不一致のときは、他の観察者が再検査を行い、その結果を採用する。PCのスワーリング検査は、PC中の血小板の形態を外観の観察によって確認することができるため、サンプル採取することなく、PCの品質を簡便かつ短時間に把握できる有用な方法である。スワーリング検査の判定は目視によるため、経験の浅い施設では判定者のトレーニングが大切であり、熟練度の違いが施設間でのばらつきに影響するおそれもある。
【0004】
現在、献血血液は全国11カ所の血液センターに集められ、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤として製造されている。この血液製剤は血液センターにおいて各種製剤は検査されるが、その中に目視検査が行われている工程があり、これには専任の検査員が約2000~4000バッグ/日で行っている。
【0005】
上記のような人の目視による検査の効率を高めるため、特許文献1の発明は、血液製剤バッグの撮像画像はLED白色平行光透過照明による照射により中心部に背面から光の透過により白くなった部分と、その中に黒い渦巻状のパターンとを含む。この画像の画像処理によって、スワーリング現象部のみを白く、それ以外の部分を黒く2値化する。検査画像は所定の検査領域を示し、この検査領域において先に示した2値化処理することにより白画素の面積(スワーリング面積)を求める。このようにして求めたスワーリング面積の占める割合を算出する。当然、スワーリングの発生が少なければ、この割合が小さくなる。
【0006】
上記のスワーリングに係る発明ではないが、血小板の形状パラメータを検査する発明が、特許文献2に開示されている。
【0007】
上記のスワーリングに係る発明ではないが、比重分離した血液の上澄み液に含まれるフィブリンを検査する発明が、特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4929422号公報
【特許文献2】特開2000-46723号公報
【特許文献3】特開2000-88844号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本輸血学会雑誌 第49巻第3号49(3):432-438頁 2003年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の発明の判定結果(スワーリング面積の比率)は血小板形態の評価結果との相関性が安定せず、判定結果をスワーリングの客観的な数値として利用するには未だ十分ではなかった。
【0011】
特許文献1の発明は、実スワーリング検査を画像上での比較を行ったため、スワーリングの違いを、実画像上での解析結果より求めようとしていたが、1度たりとも同じ画像はないことにより、実用化が難しい状況にあった。これまで、スワーリング検査の機械化への検討が様々に行われてきたが、未だ確立された装置の開発には至っていない。特許文献2によっても同様にスワーリング検査の機械化への開発には至っていない。
【0012】
特許文献3は、血液を赤血球、血漿、血小板に分離して対象の血液の分析をするために利用するもので、分離した後の製剤の品質を管理する点で、使う場面が大きく異なる。血球(赤血球)とフェブリンの違いをRGBの色での検査を行う時点で、大きく色が異なる物同士の違いを検出しているので、スワーリングへの適用は困難である。
【0013】
こうした検査は本来この血液製剤が配送される配送センター(場合によっては病院内でも)検査を行うのが最良だが、現在は人員不足が問題となっている。更にコロナ禍で多数のコロナ患者を抱える病院においてもその管理は難しい状況にある。
【0014】
そこで、本発明は、スワーリング検査の機械化を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題に鑑み、本発明は、スワーリング発生前の血液製剤の色彩計による第1画像を撮像し、取得した第1画像の第1色分布を生成し、スワーリング発生後の血液製剤の前記色彩計による第2画像を撮像し、取得した第2画像の第2色分布を生成する色分布生成部と、前記第1色分布と、第2色分布を対比し、第1色分布と第2色分布の色分布の一致度に基づいて、スワーリング検査を行うスワーリング検査部と、を備えたことを特徴とする血液製剤検査装置である。これにより、スワーリング検査の画像の色分布の比較により、スワーリング検査装置の機械化が実現できる。
【0016】
「スワーリング」とは、血液製剤バッグを振蕩させた場合に現われる渦巻き状ないし縞状の模様である。「スワーリング発生前の血液製剤は」は、基準となるもので、スワーリングが消失した血液製剤である。「スワーリング発生後の血液製剤は」は、スワーリングの検査対象となるもので、血液製剤の封入した血液製剤バッグを振盪させた後の状態の血液製剤である。血液製剤バッグを振盪させると、スワーリングを生じる場合がほとんどであるが、結果的に、スワーリングを生じさせない血液製剤バッグの場合もある。
【0017】
本発明は、色分布の実空間上の画像処理ではなく、色空間にマッピングした色分布より判定することが基本的に相違している。本発明では、スワーリングの色分布(3次元分布)として計測するため、実画像のスワーリングパターンが変化しても、ほぼ同様なスワーリング色分布となるため、安定した評価(数値化、グラフ化等)ができる。
【0018】
「色分布」とは、色空間での色の独立な量の分布である。「色空間」は、色は3つの独立な量で指定でき、それぞれの量の大きさを3つの軸方向の原点からの距離で表すと、色を空間の1点の座標として指定できる空間である。
【0019】
「色分布」の表色系は、適宜の表色系が採用できる。例えば、 「XYZ表色系」は、RGB表色系を単純な一次変換で負の値が現れないように、CIEが1931年にRGB表色系と同時に定めたものである。「XYZ表色系」は、例えば、xyY、Yxy、XYZ、Lab、Luv等のCIE表色系を含み、2次元色分布又は3次元色空間を含む概念である。XYZ表色系で、x=X/(X+Y+Z),y=Y/(X+Y+Z)と正規化し、Yxyと定めたものが一般的に使われている。
【0020】
「XYZ表色系」には、2次元座標と3次元座標で規定される色空間が含まれる。色空間の代表例としては、XYZ色空間と、Lab色空間等の構成例がある。2次元の色空間の場合、例えば、Yxy色空間、Luv色空間の場合、2次元平面であるxy色度図(Yxy色空間で正規化したxy色度値(平面))、uv色度図、u’v’色度図が挙げられる。平面上での2次元色度図の画素カウント値の密度として表現されるxy色度ヒストグラム分布又はLuv色度ヒストグラム分布等が対応する。CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された3つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有するXYZ表色系も含まれる。3次元の色空間の場合、例えば、XYZ色空間、Lab色空間が挙げられる。3次元での色空間上に画素の色情報をマッピング処理することで、色分布が得られる。
【0021】
表色系は、CIE Lであり、XYZ表色系から知覚と装置の違いによる色差を測定するために派生したものである。日本ではJIS
Z 8729に規定されている。この表色系は、先のXYZ表色系が、色空間上の人の目の色識別感度が不均等なため、これを是正するために制定され、この空間で計測された色差は広く使われている。一般にLab値はL値のこととされている。
【0022】
表色系は、CIEが1976年に定めた均等色空間のひとつであり、CIE Lは光の波長を基礎に、XYZ表色系のxy色度図の波長間隔の均等性を改善したものである。日本ではJIS
Z8518に規定されている。
【0023】
色彩計は、測定したい対象物からの光を測定して、色空間における座標として出力する測定器である。
【0024】
「色差(ΔE)」は、ふたつの色の違いを、色空間での距離で表したものである。色は色空間における座標で表される。色の違いが大きいと、色空間における2点の距離も大きい。現在はΔE2000という定義が広く用いられている。
【0025】
前記色分布が、L*表色系又はL*表色系に基づくものである。これにより、スワーリング検査の精度を高めることができる。
【0026】
本発明は、内部空間を備える筐体と、前記色分布生成部と、前記スワーリング検査部とを有するコンピュータ部と、前記血液製剤を照明する発光部と、
蓋の開閉により、前記血液製剤バッグを所定の位置にセットし、所定方向にスライドすることにより、前記血液製剤バッグを振盪させるスワーリング発生部と、を備える。これにより、スワーリング検査を効率化できる。
【0027】
前記スワーリング発生部が前記筐体の上部に設けられ、前記色彩計が前記筐体の下部に設けられ、上面から照明される前記血液製剤バッグを下方から撮像する。これにより、スワーリング検査の作業効率が高くなる。
【0028】
前記スワーリング発生部が、前記蓋の開閉により、前記血液製剤バッグを所定の位置にセットし、所定方向にスライドすることにより、前記血液製剤バッグを振盪させる。これにより、スライダするだけで前記血液製剤バッグを振盪させことができるので、スワーリング検査の作業効率が高くなる。
【0029】
前記スワーリング発生部が所定方向にスライドするスライダと、前記スライダを保持するストッパを有し、前記所定の位置からスライダが保持位置に移動すると、前記ストッパが前記スライダを保持し、前記ストッパを解除すると、前記スライダが所定の位置に戻ることにより、前記血液製剤バッグに振盪を加える。これにより、血液製剤バッグをスライダするだけで前記血液製剤バッグを振盪させことができるので、スワーリング検査の作業効率が高くなる。
【0030】
前記発光部が、斜光部と、面発光部を備え、測定する赤血球、血漿、血小板に応じて、又は、いずれかに切り替える。これにより、照明が効率化する。
【0031】
前記血液製剤の第1地点での前記色分布の一致度と、前記血液製剤の第2地点での前記色分布の一致度の差を演算する。これにより、第1地点から第2地点まで血液製剤を輸送する間に、スワーリングが低下した血液製剤を排除することができる。
【0032】
本発明の別の発明は、スワーリング発生前の血液製剤を色彩計により撮像し、取得した第1画像の第1色分布を生成し、前記色彩計によりスワーリング発生後の血液製剤を撮像し、取得した第2画像の第2色分布を生成する色分布生成ステップと、前記第1色分布と、第2色分布を対比し、第1色分布と第2色分布の色分布の一致度を検出し、前記一致度に基づいて、スワーリングを検出するスワーリング検出ステップと、を備えたことを特徴とする血液製剤検査方法である。これにより、スワーリング検査の画像の色分布の比較により、スワーリング検査装置の機械化が実現できる。
【0033】
前記一致度のデータがサーバーに保存され、血液製剤センター、病院・搬送センター、及び病院の間でデータが共有化される。これにより、スワーリング検査結果の追跡が容易になる。
【0034】
本発明の更に別の発明は、血液製剤検査を行う血液製剤検査装置の血液製剤検査プログラムであって、前記血液製剤検査装置は、モニタとコンピュータを備え、前記コンピュータ部は、記憶部と、演算部と、判断部と、命令部と、を有し、スワーリング発生前の血液製剤を色彩計により撮像し、取得した第1画像の第1色分布を生成し、前記色彩計によりスワーリング発生後の血液製剤を撮像し、取得した第2画像の第2色分布を生成する色分布生成ステップと、前記第1色分布と、第2色分布を対比し、第1色分布と第2色分布の色分布の一致度を検出し、前記一致度に基づいて、スワーリングを検出するスワーリング検出ステップと、を前記コンピュータに実行させ、前記モニタに、前記第1色分布、第2色分布、及び前記スワーリングの検出結果を表示させることを特徴とする血液製剤検査プログラムである。
【0035】
これにより、スワーリング検査の画像の色分布の比較により、スワーリング検査装置の機械化が実現できる。複数の地点間でプログラムをダウンロード、又は、アップロードすることで、スワーリング検査プログラムの改善を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、スワーリング検査の画像の色分布の比較により、スワーリング検査装置の機械化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】(a)~(d)本発明実施形態の血液製剤検査装置の斜視図、左側面図、及び右側面図である。
図2】(a)(b)は同血液製剤検査装置の扉の開閉前後の斜視図である。
図3】(a)(b)は同血液製剤検査装置のロック解除を示す斜視図である。
図4】(a)(b)は同血液製剤検査装置のスライダの移動を示す斜視図である。
図5】(a)(b)は同血液製剤検査装置の側面部スイッチの位置を示す斜視図である。
図6】同血液製剤検査装置のスワーリング発生部のスライダが移動しストッパで保持されている状態を示す側面図である。
図7】本発明実施形態の血液製剤検査装置の内部構造図1である。
図8】本発明実施形態の血液製剤検査装置の内部構造図2である。
図9】本発明実施形態の血液製剤検査装置の内部構造図3である。
図10】本発明実施形態におけるXYZ表色系カメラである色彩計9の分光感度を示す関数である。
図11】本発明実施形態において三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像情報を取得する方式の具体例である。(a)はダイクロイックミラーを用いる場合の説明図である。(b)はフィルタターレットを用いる場合の説明図である。(c)は光学フィルタ92a、92b、92cを撮像素子93に微視的に貼着した場合の説明図である。
図12】本発明実施形態のコンピュータ部のブロック図である。
図13】本発明実施形態の血液製剤検査装置の照明エイジングのスクリーンショットである。
図14】同白色校正の画面1を示すスクリーンショットである。
図15】同白色校正の画面2を示すスクリーンショットである。
図16】(a)(b)は、同白色校正の画面3を示すスクリーンショットである。
図17】同血液製剤検査の画面1を示すスクリーンショットである。
図18】同血液製剤検査の画面2を示すスクリーンショットである。
図19】同血液製剤検査の画面3を示すスクリーンショットである。
図20】(a)(b)は同血液製剤検査の画面4を示すスクリーンショットである。
図21】同血液製剤検査の画面5を示すスクリーンショットである。
図22】同血液製剤検査の画面6を示すスクリーンショットである。
図23】同血液製剤検査の画面7を示すスクリーンショットである。
図24】同血液製剤検査の画面7を示すスクリーンショットである。
図25】同血液製剤検査の方法による色分布の例1と例2を示す説明図である。
図26】同血液製剤検査の方法により、血液製剤の品質を担保するための搬送と撮影の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の好適な実施形態による血液製剤検査装置1(以下、BIS1という。)について図1図25を参照して説明する。
【0039】
以下、BIS1は、図1図9に示す通り、内部空間2aを有する筐体2と、筐体2の上部に設けられ、ICタグの付いた血液製剤バッグB(以下、バッグBという。)をセットするスワーリング発生部3と、スワーリング発生部3の上方と側方に開口する開口部4と、把手5aを有し、スワーリング発生部3の開口部4を開閉可能で、開閉を支援するレバー5bを有する蓋5と、血液製剤バッグBをスライドされた状態で保持し、リターンスイッチ6aのONで元に戻すストッパ6と、筐体2に取り付けられるタッチパネル式のモニタ7と、スワーリング検査のための演算等を行うコンピュータ部8(以下、PC部8という。)と、スワーリング発生部3にセットされたバッグBを撮像する色彩計9と、斜光LED10a,10bと、面発光LED10cと、電源部11と、を備えている。
【0040】
筐体2には、色彩計9をON/OFFし、ONであるとランプが点灯する電源スイッチ12と、各部に電源を供給する主電源スイッチ13と、電源と各部を接続する電源ケーブル接続部14と、PC部8の電源スイッチ15と、プログラムのスタートスイッチ16とを備えている。色彩計9の電源は常にONにしておく。起動後すぐには照明を点灯し撮影せず、約30分のエイジングをする。色彩計9のトラブル時のみ色彩計9の電源をOFFにして対処する。初期状態だと数値が安定しないためである。稼動前に色彩計9の電源がONになっているか確認する。以下、各要素を説明する。
【0041】
スワーリング発生部3は、図2図4図6に示す通り、バッグBを収容するスペースを有し、下方から色彩計9で撮像するように、底面に撮像面をなすガラス板31を設けたスライダ32と、スライダ32をスライドさせるスプリングを含むスライド機構33を有する支持部34と、を備えている。バッグBは、スライダ32に収容した状態でスライドさせて、スライダ32が支持部34の壁に衝突する衝撃による振蕩で、バッグBにスワーリングが発生させる。
【0042】
蓋5の開閉により、バッグBをセットしたり、取り出すことができる。
【0043】
ストッパ6は、図6に示す通り、スライダ32をスライドした位置で保持し、リターンスイッチ6aにより、その保持を解除する。この解除に応答して、スワーリング発生部3がバッグBに振盪を加える。当該振盪の検出に応答して、バッグBを自動的に色彩計9で撮像する。
【0044】
モニタ7は、本体の操作と、結果表示等に用いる。
【0045】
コンピュータ部8の入力手段はキーボード、マウス、モニタ7に設けられるタッチパネル等である。
【0046】
スワーリング検査に係る制御を司るPC部8について図12を参照して説明する。このPC部8は、CPU81、RAM82、ROM83、カウンタ84、タイマ85、音声制御部86、記憶部87、入出力インタフェース89をバス90により相互に接続したものである。入出力インタフェース89には、モニタ7、色彩計9、斜光LED10a,10b、面発光LED10c、電源スイッチ12、主電源スイッチ13、電源ケーブル接続部14、電源スイッチ15、スタートスイッチ16等が接続されている。CPU81が初期設定、或いは入力信号を受けて所定の演算等を行い、それらに対して、制御信号が送信されるようになっている。
【0047】
CPU81は、各部に出力する制御信号を生成し、プログラム制御によって、制御信号を出力することで、スワーリング検出等を実行する。RAM82は、スワーリング検出などのデータを一時的に読み書きするものである。ROM83にスワーリング検出などのプログラムが読み出し専用で格納されている。CPU81は、各部に出力する制御信号を生成し、制御信号を出力することで、スワーリング検出を実行する。プログラム制御に代えて、LSIロジック等のハードウェア制御によっても実施が可能である。
【0048】
カウンタ84は、画素等のカウント値N、画素等の累計値Nを示す計数部等として機能するものであり、電源投入後、カウンタ84のカウント値N、累計値Nの初期値を「0」とし、各種入力信号を参照して、カウントやインクリメントするものである。
【0049】
タイマ85はスワーリング検査等に関する時間演算処理等を行なうものである。
【0050】
音声制御部86は音源IC及び増幅器等から構成され、スピーカ等の駆動制御を司るものである。
【0051】
記憶部87には色彩計9で撮像したデータ、スワーリング検査、色分布等の演算データ等を記憶する。記憶部87はハードディスク等である。
【0052】
色彩計9は、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有し、3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iを発生するものである。
【0053】
色彩計9の分光感度はルータ条件を満たすものであって、その分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、図10に示す通り、XYZ等色関数から、負の値を持たず、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりはできるだけ少なくするという条件から等価変換したものである。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は具体的には以下の特性を持つ。

ピーク波長 半値幅 1/10幅
S1 582nm 523~629nm 491~663nm
S2 543nm 506~589nm 464~632nm
S3 446nm 423~478nm 409~508nm
【0054】
色彩計9の分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、図10に示す通り、CIE XYZ分光特性から負の値を持たない、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりは最小限にするという条件から等価変換したものであって、分光特性S1のカーブは、ピーク波長が582nmであり、半値幅が523~629nmであり、1/10幅が491~663nmである。分光特性S2のカーブは、ピーク波長が543nmであり、半値幅が506~589nmであり、1/10幅が464~632nmである。分光特性S3のカーブは、ピーク波長が446nmであり、半値幅が423~478nmであり、1/10幅が409~508nmである。
【0055】
上記の分光特性S1のピーク波長を580±4nm、分光特性S2のピーク波長を543±3nm、分光特性S3のピーク波長を446±7nmとして取り扱うこともできる。
【0056】
三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))と正規化されたxyzとの関係は次の数式1で規定される。分光特性自体についての詳細は特開2005-257827号公報を参照されたい。
【数1】
【0057】
色彩計9の仕様は、例えば、有効頻度値約200~300万画素、有効面積5.12mm×3.84mm、画像サイズ2.5μm×2.45μm、ビデオ出力10bit、カメラインターフェイス・カメラリンク、シャッタースピード1/10,000sec~1/15sec、積算時間30フレーム、S/N比56dB以上、レンズマウントCマウント%である。
【0058】
色彩計9は、図11(a)~(c)に示すように、撮影レンズ91と、この撮影レンズ91の後方に配置された三つの光学フィルタ92a、92b、92cと、光学フィルタ92a、92b、92cの後方に配置された撮像素子93(CCD、CMOSなど)と、を備えている。色彩計9の三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、光学フィルタ92a、92b、92cの分光透過率と撮像素子93の分光感度との積により与えられるものである。図9における光学フィルタ92a、92b、92cと撮像素子93との配列的関係は模式的に示したものにすぎないものである。三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像情報を取得する方式について以下に具体例を挙げるが、本実施形態ではこれらのうちいずれをも採ることができ、また、その他の方式を採ることもできる。
【0059】
図11(a)に示すものはダイクロイックミラーを用いる方式である。これはダイクロイックミラー92c´により特定の波長の光を反射し、透過した残りの光について、さらに別のダイクロイックミラー92a´により別の特定の波長の光を反射して分光し、撮像素子93a、93b、93cを三つ並列にして読み出す方式である。ここでは、ダイクロイックミラー92a´が光学フィルタ92a、92bに相当し、ダイクロイックミラー92c´が光学フィルタ92cに相当する。撮影レンズ91から入射する光はダイクロイックミラー92c´により分光感度S3に従う光が反射され、残りの光は透過する。ダイクロイックミラー92c´により反射された光を反射鏡96により反射して撮像素子23cにより分光感度S3を得る。一方、ダイクロイックミラー92c´を透過した光は、ダイクロイックミラー92a´において、分光感度S1に従う光が反射され、残りの分光感度S2に従う光は透過する。ダイクロイックミラー92a´を透過した光を撮像素子93bにより撮像して分光感度S2を得る。ダイクロイックミラー92a´により反射された光を反射鏡95より反射して撮像素子93aにより分光感度S1を得る。ダイクロイックミラーに代えて同様な特性を有するダイクロイックプリズムを用いて三つに分光し、それぞれの光が透過する位置に撮像素子93a、93b、93cを接着することとしてもよい。
【0060】
図11(b)に示すものはフィルタターレット97を用いる方式である。撮影レンズ91からの入射光と同じ方向を回転軸に持つフィルタターレット97に光学フィルタ92a、92b、92cを設けてこれらを機械的に回転させ、順次透過する光について撮像素子93により三つの分光感度S1、S2、S3を得るものである。
【0061】
図11(c)に示すものは光学フィルタ92a、92b、92cを撮像素子93に微視的に貼着する方式である。撮像素子93上における光学フィルタ92a、92b、92cは、ベイヤー配列型に設けられる。この配列は、格子状に分けた撮像素子93上の領域のうち半分に光学フィルタ92bを設け、残りの半分の領域に光学フィルタ92aと光学フィルタ92cとをそれぞれ均等に配置するものである。すなわち、配置量は光学フィルタ92a:光学フィルタ92b:光学フィルタ92c=1:2:1となる。光学フィルタ92a、92b、92cの配列をベイヤー配列以外のものとすることは本実施形態において特に妨げられない。一つ一つの光学フィルタ92a、92b、92cは非常に微細であるため、印刷により撮像素子93に貼着される。ただし、本発明はこの配列に意味があるのではなく、分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))の特性のフィルタを撮像素子に貼着することにある。
【0062】
斜光LED10a,10bは、色彩計9の撮像方向に対して斜めになるよう、光を内部空間2aに向かって照射する。
【0063】
面発光LED10cは、蓋5の裏面に設けられ、バッグBの上面に向かって光を照射する。
【0064】
電源部11は、モニタ7、PC部8、色彩計9等に電源を供給する。
【0065】
本実施形態のスワーリング検査方法について説明する。主電源スイッチ13の押下後、数秒後にモニタ7、PC部8が立ち上がる。
【0066】
1.測定を始める前の処理を説明する。
【0067】
1-1 照明のエイジング
図13に示す通り、PC部8のモニタ7のデスクトップ上に血液製剤検査用ソフトウェア「Blood Inspector」のアイコンがあるので、ダブルクリックで起動する。ソフトウェアが起動すると画面が表示される。表示されたら画面右上の「開始」ボタンをクリックする。上記のように色彩計9のライブ映像が映る。照明の「面発光」と「斜光」双方のチェックボックスにチェックが入っていることを確認し、両照明が点灯した状態で30分待機する。
【0068】
1-2 白色校正
図14に示す通り、照明のエイジングが完了したら白色校正に移る。白色校正は面発光照明が点灯していると行えないので、「面発光」のチェックボックスをクリックしてチェックを外す。斜光LED10a,10bのみ点灯した状態になったら、一度Blood
Inspectorを閉じる。白色校正用の白紙を機材のスワーリング発生部3のスペースに入れる。
【0069】
その後、デスクトップ上にある「RCView」のアイコンをダブルクリックする。ソフトウェアが起動し以下の画面が表示される。
【0070】
起動後、右下の操作タブから「ROI」タブを選択する。タブ内にある「Load」ボタンをクリックし白色校正用の白枠(この枠をROIと言う。)のデータを読み込む。
【0071】
図15に示す通り、ダイアログが表示されるので、「PC」→「Windows(C;)」→「DATA」→「設定」でフォルダを開き、その中の「白色校正」のFRMファイルを選択する。下図のように画面上に白枠が表示される。この枠内にカーソルを移動させ、右クリックするとメニューが表示される。その中の「Reset
Calibration Value」を選択する。これによって白色校正に一度リセットが掛かる。
【0072】
ソフトウェア画面右上にある撮影ボタン(「Live」と表示されている。)をクリックしてリセットを適用する。
【0073】
適用させると撮影ボタンの表示が「Live」から「Freeze」に変わるのでその「Freeze」をクリックする。撮影ボタンの表示が再度「Live」に戻る。
【0074】
その状態でROI内に再びカーソルを合わせ、右クリックする。メニュー内の「Set Calibration Value」をクリックして白色校正をセットする。セット後、表示が「Live」になっている撮影ボタンをクリックして適用させる。白色校正が適用されると、図16(a)適用前、(b)適用後に示す通り、画面上の色が変わる。
【0075】
画面右側にヒストグラムがあり、その下に「S123」(3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3i)の値が表示されている。「Freeze」表示になっている。撮影ボタンを押すとそこに「ROI」の数値が表示される。その値が13000前後(±100程度)に収まっていれば問題ない。
【0076】
前記「ROI」の数値の範囲に収まっていない場合は、再度ROI内右クリックのメニューで「Reset Calibration Value」をクリックしてリセットし、白色校正をやり直す。
【0077】
白色校正が完了したらソフトウェアを閉じる。以降、白色校正操作以外でこの「RCview」を起動することはない。白色校正は1日1回、測定開始前に行うことが推奨される。
【0078】
2-2 バッグBのセット
把手5aを持ち、蓋5を開く。蓋5を最端部まで開くと、その位置で蓋5はレバー5bにより保持される。バッグBをセットし、蓋5を閉じる。蓋5はストッパ6を解除しないと閉じない機構になっている。
【0079】
2-3 血小板の計測
バッグBをセット後、スライダ32を所定方向、例えば、矢印の方向にスライドさせる。最端まで引くと、その位置でスライダ32は保持される。筐体2の側面部のリターンスイッチ6aを押すとスライダ32が元の位置に戻るときに支持部34の壁に衝突した衝撃で、バッグBが振蕩される。
【0080】
2.血液製剤を測定する
2-0 各血液製剤共通の操作
モニタ7のデスクトップから「Blood Inspector」のアイコンをダブルクリックすると、ソフトウェアが起動し、「設定」タブが開く。
【0081】
図17に示す通り、最初に右上の「開始」ボタンを押し、リアルタイムの色彩計9の映像を表示する。画面がリアルタイム状態になったら、測定する血液製剤に合わせて照明を切り替える。赤血球の場合、斜光LED10a、10bのみを選択する。血漿の場合と血小板の場合、面発光LED10cのみを選択する。
【0082】
照明設定の下、シャッタースピードでは血液製剤毎に設定した露光時間を適用させる。測定する血液製剤の項目を選択する。
【0083】
「開始」ボタンをクリックすると「停止」の表示に変わる。「停止」を押すことで映像をストップさせることができる。
【0084】
色彩計9の映像が停止している状態で測定範囲を設定することが可能である。画像内にカーソルを合わせてドラッグすることで、図18に示す通り、を示す白枠が形成される。
【0085】
白枠の範囲、位置が決定したら「保存」ボタンをクリックする。ダイアログが表示されるので保存先を選択して保存する。
【0086】
使用する測定範囲が既に保存されている場合は「読込」ボタンを押してデータを読み込む。
【0087】
画面上の測定範囲を削除したい場合は白枠内にカーソルを合わせて右クリックし、「Remove ROI」を選択する。測定範囲の設定、保存、読込は色彩計9の映像を停止させた状態でなければ行えないようになっている。測定範囲が設定されていない場合は測定が行えない為、測定範囲を設定する。
【0088】
2-1 赤血球・血漿
バッグBをセットし、測定範囲の設定が完了したら、図19に示す通り、画面右上のタブから「赤血球」「血漿」タブを開く。
【0089】
画面上のIDのバーに測定する血液製剤のID等を入力する。
【0090】
バー右側の「開始」ボタンを押した際、過去に同じIDの血液製剤を撮影している場合にはその中で最も古い画像データが「基準」側に表示される。未だ撮影データの無いIDの血液製剤の場合は「基準」の画面がチェック模様に変わる。図20(a)、(b)に示す通り、過去の撮影データ無しと、過去の撮影データ有りと、を表示する。
【0091】
「基準」側とは、第25図の時間的に先に計測する場所を示す。ここでは、血液製剤センターでの検査をいう。
【0092】
画面右下の「測定」ボタンを押すことで色彩計9の映像が映り、ボタン表記が「停止」に変わる。この「停止」ボタンを押すと撮影を実行し、撮影した画像の下に絶対値、「測定結果」欄に2つの画像データの比較結果が図21に示す通りに表示される。画面に表示される画像のサイズは設定した測定範囲の大きさによって変わる。
【0093】
「保存」ボタンで画像データ及び、測定結果の保存が行える。保存されたデータは「PC」→「Windows(C;)」→「DATA」フォルダ内に「赤血球」「血漿」「血小板」フォルダがあり、各血液製剤に該当するフォルダ内に保存される。「DATA」フォルダはデスクトップ上にショートカットもある。
【0094】
既に保存済のデータから測定する画像を変更したい場合は、各画像下の「基準データ読込」「検査データ読込」ボタンをクリックすることで選択可能である。
【0095】
2-2 血小板
バッグBをスワーリング発生部3にセットし、測定範囲の設定が完了したら、画面右上のタブから「血小板」タブを開く。画面上のIDのバーに測定するバッグBのID等の入力を行う。
【0096】
バー右側の「開始」ボタンを押した際、過去に同じIDのバッグBを撮影している場合には、その中で最も古い画像データが「基準」側に表示される。未だ撮影データの無いIDのバッグBの場合は「基準」の画面がチェック模様に変わる(図22参照)。ここまでは、赤血球・血漿と同様である。右下の「撮影」ボタンを押すと「検査」側の「発生前」画面に、色彩計9のリアルタイム映像が表示され。ボタン表記が「停止」にかわる。「停止」ボタンを押すと、図22に示す通り、「検査」側の「発生前」画像に対して、L、a、b値を表示する。
【0097】
「検査」側とは、第25図の時間的に後で計測する場所を示す。ここでは、病院・配送センターでの検査をいう。
【0098】
その後、スワーリング「発生後」画面にリアルタイム映像が映るので、「測定開始」ボタンを押す。図6に示す通り、スライダ32をスライド機構33の作動により、所定位置までスライドさせると、ストッパ6が作動し、スライダ33の位置が保持される。リターンスイッチ6aが作動すると、ストッパ6が解除され、スライダ33が移動し、元の位置まで戻って停止するときの衝撃で、バッグBが振蕩される。スライダ33が元の位置に戻った2秒後に自動的に撮影が行われ「発生後」画像が停止する。「発生後」画像の撮影が完了すると同時にスワーリング「発生前」とスワーリング「発生後」の比較を行う。図23に示す通り、「基準」側と「検査」側で割り出した一致度、ΔE、L、a、bの差を画面右側に表示する。
【0099】
比較基準となるスワーリング発生前の血液製剤の第1色分布は予め作成してもよいし、その場で撮像して、第1色分布を作成してもよい。スワーリング発生前の血液製剤は同じ血液製剤が好ましいが、他の血液製剤でもよい。
【0100】
状態のよい血小板を含むバッグBを振盪させると、スワーリングが発生する。状態の悪い血小板を含むバッグBを振盪させると、スワーリングが発生しないか、スワーリングが不十分となる。血液製剤の静止状態は、状態の良いものも悪いものもスワーリングが発生していない。スワーリング発生後の血液製剤に振盪を与える前か、振盪あるいは振盪付与後20秒程度時間が経過したものが、スワーリングが発生しないタイミングとなる。
【0101】
上記色分布一致度の詳細を説明する。スワーリング発生前の血液製剤は、基準となるもので、スワーリングが消失した血液製剤である。スワーリング発生後の血液製剤は、スワーリングの検査対象となるもので、スワーリングが生じている血液製剤又は消失した血液製剤となる。分光感度(S(λ),S(λ),S(λ))を有する色彩計9により、スワーリングの消失した、基準となるスワーリング発生前の血液製剤に対応する3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iの測定範囲において、CIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換演算し、数式2に従って、L***値を演算し、ΔEを演算し、それらのデータを記憶部87に保存しておく。
【0102】
スワーリング発生後の血液製剤に対応する3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iの測定範囲において、CIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換演算し、数式2に従って、L***値を演算し、ΔEを演算し、それらのデータを記憶部87に保存する。
【0103】
【数2】
【0104】
図25に示す通り、基準となるスワーリング発生前の血液製剤におけるLab色空間の第1色分布と、スワーリング発生後の血液製剤におけるLab色空間の第2色分布を作成し、それらを対比、例えば、色分布の体積の重なり割合などを演算することで、スワーリングに関する色分布一致度を演算する。
【0105】
図22の例は最初の検査、例えば、図26に示す血液製剤センターでのスクリーンショットである。図22では一致度が86.31%であるので、不適合品と判定されて、病院・配送センターへは輸送されない。スワーリングの出方は血小板の形と相関があり、血小板が球状に変化すると光が屈折しなくなり、スワーリングが発生しなくなる。図23は、その次の輸送先での検査、例えば、病院・搬送センターでのスクリーンショットである。「基準」側は血液製剤センターでの検査であり、一致度は76.30%であるので、適合品と判定されて、病院・配送センターへ輸送される。そこでの検査の一致度は84.96%となり、一致度の差が8.66%となり、時間経過でスワーリングが劣化し不適合品となり、次の輸送先には送られない。図24に示す通り、一致度が基準側でも検査側でも所定割合以下、例えば、70%台又はそれ以下であれば、適合品と判定され、病院へ輸送され、そこで検査を受ける。したがって、輸送先の先々で検査することができるので、不適合品を確実に取り除くことができる。
【0106】
Lab色空間は補色空間の一種で、明度を意味する次元Lと補色次元のa*及びb*を持ち、CIEXYZ色空間の座標を非線形に圧縮したものに基づいている。Lab色空間では、明るさ方向も加味した一致度が得られる。
【0107】
測定範囲に対応するLab空間における色分布の演算の場合、一致度の演算は、L軸、a軸、b軸の3次元空間での分布により行う。Lab色分布一致度は3次元分布の計算となる。
【0108】
一致度の感度は複数段階で設定が可能である。例えば、超高感度一致度(LLab(H))は、測定範囲の1ピクセル毎の色情報をLab空間上にプロットする処理を行い、基準品と検査品のLab空間上での色分布を比較した際に一致している値である。明るさの情報を含んだ色と質感の比較をしている。高感度一致度(Lab(L))は、超高感度一致度(Lab(H))であると、検出感度が高すぎる作業の為に、スワーリングの有無を示す閾値を設定しやすいよう感度を緩くしたものである。立体格子のマス目の大きさで感度を設定できる。
【0109】
超高感度一致度(Lab(H))を利用する場合、図25に示す通り、その例1では、スワーリング発生後の血液製剤が適合品であることを示し、比較基準となる第1色分布と検査対象の第2色分布のL軸方向で色分布が離れているので、色分布に重なりがない状態である。その例2では、スワーリング発生後の血液製剤が適合品であることを示し、比較基準の第1色分布と、検査対象の第2色分布のL軸方向で色分布のずれがあるが、色分布に一定以上の重なりがある状態である。例2で重なりの状態が大きい場合には、不適合品に一致するとの判断をする。
【0110】
ところで、図26に示す通り、献血された血液がバッグに封入されて、ICタグが付され、スワーリング検査を行う。このバッグが血液センター(製造所)に輸送され、そこで血液製剤が製造されて血液製剤バッグとなり、スワーリング検査を行う。この血液製剤バッグが病院・配送センターに輸送され、スワーリング検査を行う。このバッグBが病院に輸送されて、スワーリング検査を行う。これらの地点で行われたスワーリング検査のデータはサーバーに送信され管理される。
【0111】
2-3 メッセージ表示
ソフトウェア「Blood Inspector」操作中は、下記のメッセージが表示されることがある。
【0112】
(1)「測定範囲を設定してください。」
測定範囲が未設定の状態で各バッグBタブの「開始」「測定」「撮影」ボタンを押すと表示される。各バッグBの測定に移る前に「設定」タブで測定範囲を設定する。
【0113】
(2)「蓋5を閉じてください。」
蓋5が開いている状態で測定を実行しようとすると表示される。撮影時は必ず蓋5を閉じた状態で行う。
【0114】
(3)「スライダ33を閉じてください。」
スライダ33が移動している状態で測定を実行しようとすると表示される。血小板測定時以外はスライダ33を動かさないように撮影する。
【0115】
3.測定終了後の操作
測定終了後、Blood Inspectorのウィンドウを閉じる。必要であれば保存してから閉じる。シャットダウン操作によりPC部8を終了する。BIS1の主電源スイッチ13のみを切断する。斜光LED10a、10b及び面発光LED10cは主電源スイッチ13を切ることで消灯する。
【0116】
以上説明した通り、BIS1により、血小板のスワーリング結果との相関性が安定し、スワーリングの一致度をスワーリングの客観的な数値として利用することができるので、スワーリング検査の機械化を確立することができる。スワーリングの違いを、実画像上での解析結果より求めずに、色彩計9の撮像画像に基づく色分布によるためである。すでに分離した赤血球製剤や、血漿、血小板のようなわずかな違いを検出することができ、その精度が求めることができ、L**の極めて精度の高い色検出精度を求めることができる。スワーリング検査の迅速性、精度向上への貢献は大である。
【0117】
バッグBは、新型コロナウイルスにより血管中に発生した血栓の治療において緊急に必要とされている。それは、「血栓(けっせん)の治療や予防のため、凝固因子のはたらきを抑える薬が使われ、これらの薬のはたらきを緊急に中和する必要があるときに、凝固因子の補充が必要になることがある。」との理由による。
【0118】
バッグBはこうした新型コロナウイルス患者が発症した血栓の治療のみならず、通常のガン等の外科手術等でも必要不可欠なもので、献血等でその供給が支えられている。献血等で集められた血液は全国各地の血液センターにて血液製剤が製造され、需給管理・供給されている。
【0119】
バッグBの品質管理は製造される血液製剤メーカ(血液センター)のみならず、供給される医療現場(病院など)においても行われ、その方法は、本発明実施形態の血液製剤検査装置で行う。
【0120】
コロナウイルスの終息が見通せず、ウイルスとの共存を余儀なくされていることから血液製剤が今後これまで以上に必要とされることが想定される。BIS1により、コロナ禍で医療現場や製剤の供給ルートでは慢性的な人員不足を解消し、人の経験知によって血液製剤の品質が維持されている現状を改善し、注意が散漫になったり、体調不良等が原因となって検査ミスが起こるおそれを防止でき、医療の安全を確保することができる。
【0121】
色彩計9での血液製剤の色と色分布を定量化することにより、血液センターのインライン検査から、配送先でのチェック、病院でのチェックまでをカバーできる装置を提供でき、アフターコロナでの医療現場に配備することを1つの目標に、その有効性の確認のための装置を提供することができる。
【0122】
輸血用血液製剤の入ったバッグBは有効期間が血小板製剤で4日である等、短いことから、採血後に迅速に製剤供給する必要性があり、血液製剤は時々刻々品質が変化するため、その有効性を搬送する過程で確認することで品質を確保でき、延いては医療の安全性を確保することができる。
【0123】
BIS1は、血液センターで現在行われている検査員のスキルと同様に判定できる装置であり、コピー機のような手軽さで使用できる利点がある。
【0124】
BIS1は、ICタグリーダー機能を付加することができ、血液センターから出荷された血液製剤を配送センターや病院でゲートを設けて検査する体制を敷くことができる。これは出荷状態の対象品のデータをクラウドに上げ、この出荷状態と現状の画像の色とスワーリングの比較をして、品質の検証に使うことができる。
【0125】
本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、前記技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像情報を取得する方式は具体例に過ぎないものであって、これらに限られず、その他の方式によっても本発明の技術的思想は実施されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の血液製剤検査装置は、従来、手作業と目視で行っていた血小板のスワーリング検査を機械化できるため、献血センター、血液製剤センター(製造所、販売所)、病院配送センター、病院等で利用ができるので、医療産業への利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0127】
1・・・血液製剤検査装置
B・・・血液製剤バッグ
2・・・筐体
3・・・血液製剤セット部
31・・・ガラス板
32・・・スライダ
33・・・スライド機構
34・・・支持部
4・・・開口部
5・・・蓋
5a・・・把手
5b・・・レバー
6・・・ストッパ
6a・・・リターンスイッチ
7・・・モニタ
8・・・コンピュータ部(PC部)
9・・・色彩計
10a,10b・・・斜光LED
10c・・・面発光LED
11・・・電源部
12・・・電源スイッチ
13・・・主電源スイッチ
14・・・電源ケーブル接続部
15・・・電源スイッチ
16・・・スタートスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図26