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  • 特開-触覚フィードバックシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109145
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】触覚フィードバックシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20220720BHJP
   G06F 3/0488 20220101ALI20220720BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/0488
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004511
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】391021684
【氏名又は名称】菱洋エレクトロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】原 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】梶 平和
(72)【発明者】
【氏名】松野 公和
(72)【発明者】
【氏名】平原 誠
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA76
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC01
5E555CA12
5E555CB12
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA21
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザの行動パターンに適した触覚フィードバックを提案できる触覚フィードバックシステムを提供すること。
【解決手段】ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムであって、衝撃又は振動を発生するように構成された触覚発生部と、所定の触覚効果パターンを発生するように、前記触覚発生部の動作を制御する制御部と、ユーザによるタッチ入力の行動パターンに関する情報を記憶する行動パターン記憶部と、前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、適切な触覚効果パターンを推定する推定部を含む触覚フィードバックシステム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムであって、
衝撃又は振動を発生するように構成された触覚発生部と、
所定の触覚効果パターンを発生するように、前記触覚発生部の動作を制御する制御部と、
ユーザによるタッチ入力の行動パターンに関する情報を記憶する行動パターン記憶部と、
前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、適切な触覚効果パターンを推定する推定部
を含む触覚フィードバックシステム。
【請求項2】
前記推定部は、前記推定された触覚効果パターンの採用の可否をユーザに確認するように構成されており、前記制御部は、ユーザの選択に応じて、現在の触覚効果パターンの変更又は維持を決定するように構成される、請求項1に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項3】
前記タッチ入力の行動パターンに関する情報は、タッチ強さ、タッチ時間、タッチ間隔のうち少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項4】
前記触覚発生部は、衝撃駆動型のアクチュエータ又は振動駆動型のアクチュエータである、請求項1~3のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項5】
前記推定された触覚効果パターンは、衝撃若しくは振動の強さ、衝撃若しくは振動の継続時間、衝撃若しくは振動の反復回数、及び振動の周波数のうち少なくとも1種に基づくものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項6】
前記推定部は、さらに前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、ユーザによるタッチ入力に対する適切な入力感度を推定するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項7】
前記推定部は、推定された入力感度の採用の可否をユーザに確認するように構成されており、前記制御部は、ユーザの選択に応じて、現在の入力感度の変更又は維持を決定するように構成される、請求項6に記載の触覚フィードバックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムに関する。とりわけ、本発明は、ユーザの行動パターンに応じて適切な触覚効果パターンを推定できる触覚フィードバックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルなどの感圧入力装置は直感的な操作が可能になるという利点により、使用者が機器を操作する際のインターフェースとして幅広い分野に採用されている。また、従来、物理的なボタンやキーボードが用いられていた機器にも、タッチパネルへ置き換える動きが広がっている。
【0003】
タッチパネルを搭載した電子機器は、人体に触覚フィードバック(ハプティク・フィードバック)を付与するハプティク・アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」と称することもある。)をタッチパネルと組み合わせて搭載することがある。ユーザの身体の部位(例えば、手指)若しくはユーザが操作する物体が電子機器の入力部に触れたとき、あるいはシステムが特定のイベントを生成したとき、ハプティク・アクチュエータは、電子機器の筐体やタッチスクリーンなどの構成部品に運動を発生させる。ユーザは、電子機器に接触した身体の部位で振動を知覚したり、音として知覚したりすることで、直感的かつ容易に電子機器を操作し、又は情報を受け取ることができる。
【0004】
ハプティク・アクチュエータは、一般的に駆動源に電力を使用しており、運動の性質から衝撃駆動型と振動駆動型に大別することができる。衝撃駆動型は代表例として、形状記憶合金を利用するSIA(Shape memory alloy Impact Actuator)やピエゾ素子を利用した圧電アクチュエータを挙げることできる。衝撃駆動型アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、電子機器のタッチスクリーンや筐体に対し、動作部品が打撃し、又は連動させることで一過性の衝撃を与える。振動駆動型アクチュエータは代表例として偏心モータを利用するERM(Eccentric Rotating Mass)型アクチュエータ、磁界中のコイルに交流電流を流して可動子を振動させるリニア共振型アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)などを挙げることができる。振動駆動型は振動体に必要な時間だけ一定の振幅の振動を与える。
【0005】
例えば、特許文献1(国際公開第2012/023605号)には、ワイヤー状形態を有する形状記憶合金の長さ方向の伸縮変化を利用して水平方向(または平面方向)または上下方向(前後方向または厚み方向)の衝撃的な動き(衝撃動作)、および当該衝撃動作の繰り返しに基づく回転動作または直進動作を可能にする衝撃駆動型アクチュエータが開示されている。当該衝撃駆動型アクチュエータによれば、所定の配線状態で配置されるワイヤー状形状記憶合金に対して各種形状の絶縁性熱伝導体を可能な限り有効に接触させるように設け、この絶縁性熱伝導体によってワイヤー状形状記憶合金でパルス的通電時に生じた熱を迅速に放散させて逃がすようにしたため、ワイヤー状形状記憶合金の低温化を迅速に行うことができ、比較的に短い時間で繰り返すことが可能な瞬間的動作を実現することができ、実用性の高い衝撃駆動型アクチュエータを実現することができる。
【0006】
また、ユーザのタッチパネルにおける操作やタッチパネルの表示内容などに応じて、多種多様な触覚フィードバックパターンを提供できるように、触覚フィードバック発生機構を複数搭載することがある。例えば、特許文献2(特開2012-203895号公報)には、スマートフォンのガラス基板の下に、当該スマートフォンの上部及び下部にそれぞれ圧電振動素子を搭載したタッチパネル装置が開示されている。圧電振動素子を2ヶ所に設けたので、各々に入力される信号の振幅や位相を制御することにより、保護パネル22の面内の特定の場所に強い振幅を誘起することができ、指などが触れている部分を選択的に振動させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2012/023605号
【特許文献2】特開2012-203895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タッチパネルなどを搭載した電子機器の種類の増加及び応用の普及により、タッチパネルを使用するユーザの数も増加してきた。ユーザの年齢層、職業、生活習慣などの違いによって、タッチパネルの使用習慣にも違いがみられるようになった。例えば、年齢、体力、性別などの差によっては、タッチする際の力加減は人それぞれであり、操作の速さの違いによっては、1回のタッチの時間、タッチとタッチの間の時間差も人それぞれである。そのため、全てのユーザに一様な触覚フィードバックを提供すると、一部のユーザの使用状況に適さない場合があり、さらには一部のユーザに不便をきたす可能性がある。
【0009】
さらには、ユーザの年齢層や体質によっては、指の感覚の鋭さの違いがあるため、同じ触覚フィードバックに対して、長い(又は強い)と感じる人もいれば、短い(又は弱い)と感じる人もいる。そのため、ユーザの個性に応じた触覚フィードバック効果の提供が望ましい。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑み完成されたものであり、一実施形態において、ユーザの行動パターンに適した触覚フィードバックを提案できる触覚フィードバックシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、ユーザによるタッチ入力操作に関する情報からユーザの行動パターンを学習したうえ、当該行動パターンに基づいて適切な触覚効果パターンを推定することにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のように例示される。
[1]
ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムであって、
衝撃又は振動を発生するように構成された触覚発生部と、
所定の触覚効果パターンを発生するように、前記触覚発生部の動作を制御する制御部と、
ユーザによるタッチ入力の行動パターンに関する情報を記憶する行動パターン記憶部と、
前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、適切な触覚効果パターンを推定する推定部
を含む触覚フィードバックシステム。
[2]
前記推定部は、前記推定された触覚効果パターンの採用の可否をユーザに確認するように構成されており、前記制御部は、ユーザの選択に応じて、現在の触覚効果パターンの変更又は維持を決定するように構成される、[1]に記載の触覚フィードバックシステム。
[3]
前記タッチ入力の行動パターンに関する情報は、タッチ強さ、タッチ時間、タッチ間隔のうち少なくとも1種を含む、[1]又は[2]に記載の触覚フィードバックシステム。
[4]
前記触覚発生部は、衝撃駆動型のアクチュエータ又は振動駆動型のアクチュエータである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
[5]
前記推定された触覚効果パターンは、衝撃若しくは振動の強さ、衝撃若しくは振動の継続時間、衝撃若しくは振動の反復回数、及び振動の周波数のうち少なくとも1種に基づくものである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
[6]
前記推定部は、さらに前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、ユーザによるタッチ入力に対する適切な入力感度を推定するように構成される、[1]~[5]のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
[7]
前記推定部は、推定された入力感度の採用の可否をユーザに確認するように構成されており、前記制御部は、ユーザの選択に応じて、現在の入力感度の変更又は維持を決定するように構成される、[6]に記載の触覚フィードバックシステム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、ユーザの行動パターンに適した触覚フィードバックを提案できる触覚フィードバックシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における触覚フィードバックシステムの作動方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態における触覚フィードバックシステム、及び電子機器のタッチ入力手段の機能を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
本発明の触覚フィードバックシステムは、タッチパネルなどのタッチ入力手段を搭載した電子機器において、ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するものである。当該電子機器に付与された触覚フィードバックは、当該電子機器に接触している物体を介して、ユーザに伝達される。
【0016】
タッチ入力手段は、物体によるタッチを検出することが可能なものであれば具体的な構成が限定されないが、典型的には、感圧式タッチパネル、静電容量方式タッチパネル、抵抗膜方式タッチパネルが挙げられる。また、本発明において、物理的ボタンもタッチ入力手段に含まれるものとする。タッチ入力手段の種類、形状、感度などは、電子機器の種類、形状などに基づいて適宜設定され得る。タッチ入力手段は、1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。なお、ここでの「物体」とは、ユーザの身体の一部(例えば、手指)又はユーザが操作する物体を意味する。
【0017】
(1.触覚発生部)
本発明の触覚フィードバックシステムは、一実施形態において、振動又は変位を発生するように構成された触覚発生部を含む。触覚発生部としては、衝撃駆動型のアクチュエータや、振動駆動型のアクチュエータのいずれも、本発明のために用いることができる。アクチュエータは、振動又は変位の一方ができるものであってもよく、両方ができるものであってもよい。本発明の触覚フィードバックシステムの一実施形態において、アクチュエータは、1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0018】
例えば、本発明の一実施形態におけるアクチュエータはコイル、動作部品(例えば金属芯材)及びバネから作られている。コイルは金属の周りに巻きつけられ、(ここで、コイルと金属の部品の両者は「ソレノイド」と称してよい)かつ、コイルが磁界を生成するとき(例えば、電流がコイル端子間を流れる時)金属は移動する。当該金属の移動は電子機器に衝撃をもたらし得る。バネは次いで、電流がコイルから除去されるとき移動金属または他の芯材を静止位置に戻すように用いてよい。
【0019】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する絶縁性熱伝導体が瞬間的に押圧されて変位する。当該絶縁性熱伝導体の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。このようなアクチュエータの詳細は国際公開第2012/023605号に開示されている。
【0020】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体の固定子(固定部品)及び移動子(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する絶縁性熱伝導体の移動子が瞬間的に押圧されて変位する。当該絶縁性熱伝導体の移動子の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。
【0021】
固定子の位置を変更させないように、電子機器の部品に、例えば両面テープや接着剤などで固定し、移動子に電子機器の動作する部品(筐体やタッチスクリーンなど)を密着させ、衝撃駆動型アクチュエータを挟み込み、それらを元に戻すスプリングなどの弾性を持った部品で動作する部品を抑え込むことで電子機器に衝撃をもたらすことが可能となる。固定子と移動子の形状は、上記機能を実現できれば特に限定されず、円盤状、波状、柱状など、適宜選択することができる。
【0022】
(2.制御部)
触覚発生部の動作を適切に制御するために、所定の触覚効果パターンを決定し、それに対応して触覚発生部を駆動するパルス電圧などの信号を発生する制御部が設けられる。本発明の一実施形態において、制御部は、駆動信号を生成するように構成された増幅器、又はより一般的には駆動回路を含み得る。一実施形態では、制御部は、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサコア、プログラマブルロジックアレイ(PLA)又はプログラマブルロジック回路(PLC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、又は任意の他の制御回路を含み得る。制御部がプロセッサを含む場合、プロセッサは、携帯電話又は他のエンドユーザデバイス上の汎用プロセッサなどの汎用プロセッサであってもよく、あるいは、触覚効果の生成専用のプロセッサであってもよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、制御部は、後述する推定部の推定に応じて、様々な触覚効果パターン(強さ、持続時間、振動波形など)を決定することが可能である。これらの触覚効果パターンは、所定のアルゴリズムに基づいて、推定部がその都度算出されてもよく、ハードディスク(HD)やROM、RAMなどで構成される記憶装置にあらかじめ定義されたものから推定部が選定したものであってもよい。本発明の一実施形態において、触覚効果パターンは、ユーザが任意に設定又は変更することができる。
【0024】
決定された触覚効果パターンは、制御部において駆動信号として出力される。触覚効果パターンを表す制御信号は、例えば触覚発生部を駆動する駆動回路に送信される。駆動回路は、触覚発生部に駆動電圧を印加して、触覚発生部を駆動することが可能なものである。典型的には、駆動回路には、DC/DCコンバータ、電池などの電源、充電抵抗、放電用コンデンサ、FETなどのスイッチ素子、センサーなどの検出器、マイコンなどの演算器、駆動パルスのコントローラなどが含まれる。
【0025】
(3.行動パターン記憶部)
ユーザの行動パターンを学習するために、ユーザのタッチ入力操作に関する情報を蓄積する行動パターン記憶部が設けられる。行動パターン記憶部は、ハードディスク(HD)やROM、RAMなどで構成される記憶装置であり得る。
【0026】
ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報は、タッチ強さ、タッチ時間、タッチ間隔などが挙げられる。タッチ強さとは、ユーザがタッチする際の力加減を意味する。タッチ入力手段がタッチ入力による圧力を検出できる場合、当該圧力に関する情報をタッチ入力手段により取得して記憶することが可能である。タッチ入力手段が静電容量方式タッチパネルなど、圧力を直接検出できないようなものである場合があるが、通常、タッチ入力による圧力が高ければ高いほど、タッチ入力手段にタッチしている物体(例えば、ユーザの指)との接触面積が大きいため、例えば、タッチパネル上の静電容量の変化に基づいて、タッチパネルとユーザの指などの物体との接触面積を推定することにより、タッチ入力による圧力を間接的に推定することができる。この場合、タッチ強さに関する情報として、接触面積を直接記憶してもよく、当該接触面積に基づいて推定される圧力を記憶してもよい。
【0027】
タッチ時間は、ユーザの指などがタッチ入力手段に接触してから離れるまでの時間を意味する。ユーザの指などがタッチ入力手段に接触してから離れるまで時間が一定の閾値を超えた場合(いわゆる「長押し」)、通常の操作入力と異なる操作入力が可能な場合や、ゲームなどのプログラム内において、タッチ時間の長さに応じた操作入力が可能な場合があるが、一般的には、タッチ時間の長短にかかわらず、ユーザの指などがタッチ入力手段に接触してから離れるまでが1つの操作として認識される場合が多い。一般的には、若年層のタッチ時間が短く、高齢層のタッチ時間が長い傾向がある。また、電子機器の操作頻度の高い人のタッチ時間が短く、電子機器を操作する機会が少ない人のタッチ時間が長い。
【0028】
タッチ間隔とは、タッチとタッチとの間の時間間隔を意味する。前述のように、タッチ時間の長短にかかわらず、ユーザの指などがタッチ入力手段に接触してから離れるまでが1つの操作として認識される場合が多いが、操作と操作との間の時間差にも個人差が存在する。タッチ間隔の個人差は、典型的にはタイピングの際に現れる。例えば、スマートフォンを使用して文書を入力する際、ユーザは画面上に表示される仮想のキーボードにタッチしてタイピングするが、タッチ間隔の個人差によってタイピングの早さに違いが現れる。一般的には、若年層のタッチ間隔が短く、高齢層のタッチ間隔が長い傾向がある。また、電子機器の操作頻度の高い人のタッチ間隔が短く、電子機器を操作する機会が少ない人のタッチ間隔が長い。
【0029】
本発明の一実施形態において、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報は、ユーザがタッチ入力する度に取得され、行動パターン記憶部に記憶され、適切な触覚効果パターンを推定するために蓄積される。また、本発明の別の一実施形態においては、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報は、ユーザが特定のアプリケーションを使用している間にのみ取得され、行動パターン記憶部に記憶され、適切な触覚効果パターンを推定するために蓄積される。また、本発明の別の一実施形態においては、同一の電子機器を複数のユーザが使用している場合、特定のユーザが使用している間にのみ、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報が取得され、行動パターン記憶部に記憶され、適切な触覚効果パターンを推定するために蓄積される。
【0030】
ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報の取得及び記憶に関する処理は、上記制御部と同じプロセッサによって実行されてもよく、制御部とは別のプロセッサによって実行されてもよい。
【0031】
(4.推定部)
推定部は、行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、適切な触覚効果パターンを推定する。触覚効果パターンは、衝撃若しくは振動の強さ、衝撃若しくは振動の継続時間、衝撃若しくは振動の反復回数、及び振動の周波数などに基づくものであり得る。
【0032】
前述のように、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報は、タッチ強さ、タッチ時間、タッチ間隔などが挙げられるが、これらの行動パターンに関する情報に対応して、以下のように触覚効果パターンを変更することが好ましい可能性がある。
(1)タッチが強い人は、電子機器からの確実な反応を欲する可能性がある(すなわち、タッチ入力操作が認識されたとの反応を欲する可能性がある)。そのため、より強い、又はより長い触覚フィードバックが好ましい可能性がある。
(2)タッチ時間が短い人は、電子機器の操作に慣れており、電子機器の素早いレスポンスを求めている可能性がある。そのため、より弱い、又は短い触覚フィードバックが好ましい可能性がある。
(3)タッチ間隔が短い人は、触覚フィードバックシステムから触覚フィードバックを受ける間隔も短いため、絶え間なく衝撃又は振動を受けてむしろ操作が妨げられる可能性がある。そのため、より弱い、又は短い触覚フィードバックが好ましい可能性がある。
【0033】
推定部は、上記各可能性に基づき、所定のアルゴリズムに基づいて、当該ユーザに適切な触覚効果パターンを推定し、又は任意の記憶装置に記憶された触覚効果パターンから適切な触覚効果パターンを推定することが可能である。
【0034】
本発明の一実施形態において、推定された触覚効果パターンは、そのまま制御部に送信され、制御部において適用される。あるいは、本発明の別の一実施形態において、推定部は、推定された触覚効果パターンの採用の可否をユーザに確認するように構成されている。当該実施形態においては、ユーザへの確認は、触覚フィードバックシステムが搭載された電子機器のユーザインターフェイスなどを介して実行することができる。確認の際、制御部は、一時的に当該推定された触覚効果パターンを適用するように構成されることが可能である。ユーザは、当該推定された触覚効果パターンを試用し、その採用の可否を、ユーザインターフェイスを介して選択することが可能である。制御部は、ユーザの選択に応じて、現在の触覚効果パターンの変更又は維持を決定するように構成される。
【0035】
さらに、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報に対応して、以下のようにタッチ入力手段の感度を変更することが好ましい可能性がある。
(1)タッチが強い人は、弱いタッチによる電子機器の反応を誤作動として認識する可能性がある。そのため、より低い感度(より具体的には、静電容量方式のタッチパネルの場合、より高い静電容量の閾値)が好ましい可能性がある。
(2)タッチ時間が短い人は、短いタッチでも、電子機器の確実なレスポンスを求めている可能性がある。そのため、より高い感度が好ましい可能性がある。
(3)タッチ間隔が短い人は、電子機器の操作に慣れており、電子機器の素早いレスポンスを求めている。そのため、より高い感度が好ましい可能性がある。
【0036】
推定部は、上記各可能性に基づき、所定のアルゴリズムに基づいて、当該ユーザに適切な入力感度を推定し、又は任意の記憶装置に記憶された入力感度から適切な触覚効果パターンを推定することが可能である。さらに、一実施形態において、推定部は入力感度とともに、タッチ入力手段の適切なスキャンスピード(サンプリングレート)を推定するように構成され得る。一般的には、高い入力感度が好ましい場合、高いスキャンスピードも好ましいと考えられる。そのため、高い入力感度が適切と推定された場合、同時に高いスキャンスピードも適切と推定することが可能である。
【0037】
さらには、推定部は、ユーザの行動パターンに関する情報に追加して、ユーザの属性に関する情報(年齢、性別、職業、性格など)も考慮して、適切な触覚効果パターン及び/又は入力感度を推定するように構成され得る。
【0038】
本発明の一実施形態において、推定された入力感度は、そのまま制御部、又は電子機器の制御手段に送信され、適用される。あるいは、本発明の別の一実施形態において、推定部は、推定された入力感度の採用の可否をユーザに確認するように構成されている。当該実施形態においては、ユーザへの確認は、触覚フィードバックシステムが搭載された電子機器のユーザインターフェイスなどを介して実行することができる。確認の際、制御部又は電子機器の制御手段は、一時的に当該推定された入力感度を適用するように構成されることが可能である。ユーザは、当該推定された入力感度を試用し、その採用の可否を、ユーザインターフェイスを介して選択することが可能である。制御部又は電子機器の制御手段は、ユーザの選択に応じて、現在の入力感度の変更又は維持を決定するように構成される。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態における触覚フィードバックシステムの作動方法を示すフローチャートである。タッチ入力手段からユーザによるタッチ入力が検出されると、当該検出されたタッチ入力に関する情報(タッチ強さ、タッチ時間、タッチ間隔など)は取得され、行動パターン記憶部に記憶される。そして、推定部は、記憶された情報を学習・分析して、所定の基準に従い、当該ユーザの行動パターンを決定するために十分なデータが蓄積されたか否かを判断する。当該基準は、一定のものであってもよく、推定部自らの学習により変動するものであってもよい。行動パターンも、いくつかの既定のものであってもよく、推定部自らの学習により追加、変更してもよい。行動パターンとしては、例えば、「入力が早い」、「標準」、「入力が遅い」などが考えられる。
【0040】
推定部は、データの蓄積が不十分と判断した場合、行動パターン記憶部による記憶を引き続き学習・分析する。一方、データの蓄積が十分となり、推定部がユーザの行動パターンを決定した場合、それに適切な触覚効果パターン及び/又は入力感度も推定する。推定された触覚効果パターン及び/又は入力感度が現在の設定と同じである場合もあるが、その場合、制御部において特に設定の変更を行わない。一方、推定された触覚効果パターン及び/又は入力感度が現在の設定と異なる場合、制御部(又は電子機器の制御手段)は、当該推定された触覚効果パターン及び/又は入力感度を適用し、又はその適用の可否をユーザに確認する。
【0041】
例えば、推定部がユーザの行動パターンを「入力が早い」と決定した場合、適切な触覚効果パターンとして、振動が弱く、かつ早い(すなわち、振幅が小さく、周波数が高い)触覚フィードバックを推定することができる。この触覚効果パターンは、例えば、若年層において多く採用されると思われる。また、この場合、任意的に、推定部は、適切な入力感度を「高い」と推定することができる。推定部がユーザの行動パターンを「標準」と決定した場合、適切な触覚効果パターンとして、通常振動(すなわち、振幅及び周波数が通常)の触覚フィードバックを推定することができる。また、この場合、任意的に、推定部は、適切な入力感度を「通常」と推定することができる。推定部がユーザの行動パターンを「入力が遅い」と決定した場合、適切な触覚効果パターンとして、振動が強く、かつ遅い(すなわち、振幅が大きく、周波数が低い)触覚フィードバックを推定することができる。この触覚効果パターンは、例えば、高齢層において多く採用されると思われる。また、この場合、任意的に、推定部は、適切な入力感度を「低い」と推定することができる。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態における触覚フィードバックシステム、及び電子機器のタッチ入力手段の機能を示すブロック図である。タッチ入力手段から取得された入力情報は、触覚フィードバックシステムの記憶部、推定部、及び制御部において処理され、結果として、適切な触覚効果パターンが設定され、触覚発生部において実現される。また、任意的には、タッチ入力手段から取得された入力情報は、触覚フィードバックシステムの記憶部、推定部、及び制御部において処理され、結果として、適切な入力感度が設定され、タッチ入力手段において実現される。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本明細書において開示される各実施形態の各具体的な特徴は互いに独立するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜組み合わせることができることが理解されるべきである。
図1
図2