(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109146
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】触覚フィードバックシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20220720BHJP
G06F 3/0488 20220101ALI20220720BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/0488
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004512
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】391021684
【氏名又は名称】菱洋エレクトロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梶 平和
(72)【発明者】
【氏名】原 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】松野 公和
(72)【発明者】
【氏名】平原 誠
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA76
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC01
5E555CA12
5E555CB12
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA21
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザによる誤入力の判定の精度を高めた触覚フィードバックシステムを提供すること。
【解決手段】ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムであって、衝撃又は振動を発生するように構成された触覚発生部と、所定の触覚効果パターンを発生するように、前記触覚発生部の動作を制御する制御部と、ユーザによるタッチ入力の行動パターンに関する情報を記憶する行動パターン記憶部と、前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定する推定部を含む触覚フィードバックシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムであって、
衝撃又は振動を発生するように構成された触覚発生部と、
所定の触覚効果パターンを発生するように、前記触覚発生部の動作を制御する制御部と、
ユーザによるタッチ入力の行動パターンに関する情報を記憶する行動パターン記憶部と、
前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定する推定部
を含む触覚フィードバックシステム。
【請求項2】
前記推定部は、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定した場合、ユーザに確認するように構成されている、請求項1に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項3】
前記推定部がユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定した場合、前記制御部は、通常の触覚効果パターンと異なる触覚効果パターンを発生するために、前記触覚発生部を動作させるように構成される、請求項1又は2に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項4】
前記タッチ入力の行動パターンに関する情報は、数値、個人の特定につながる情報、Yes/Noの選択のうち少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項5】
前記触覚発生部は、衝撃駆動型のアクチュエータ又は振動駆動型のアクチュエータである、請求項1~4のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【請求項6】
前記触覚効果パターンは、衝撃若しくは振動の強さ、衝撃若しくは振動の継続時間、衝撃若しくは振動の反復回数、及び振動の周波数のうち少なくとも1種に基づくものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムに関する。とりわけ、本発明は、ユーザによる誤入力の判定の精度を高めた触覚フィードバックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルなどの感圧入力装置は直感的な操作が可能になるという利点により、使用者が機器を操作する際のインターフェースとして幅広い分野に採用されている。また、従来、物理的なボタンやキーボードが用いられていた機器にも、タッチパネルへ置き換える動きが広がっている。
【0003】
タッチパネルを搭載した電子機器は、人体に触覚フィードバック(ハプティク・フィードバック)を付与するハプティク・アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」と称することもある。)をタッチパネルと組み合わせて搭載することがある。ユーザの身体の部位(例えば、手指)若しくはユーザが操作する物体が電子機器の入力部に触れたとき、あるいはシステムが特定のイベントを生成したとき、ハプティク・アクチュエータは、電子機器の筐体やタッチスクリーンなどの構成部品に運動を発生させる。ユーザは、電子機器に接触した身体の部位で振動を知覚したり、音として知覚したりすることで、直感的かつ容易に電子機器を操作し、又は情報を受け取ることができる。
【0004】
ハプティク・アクチュエータは、一般的に駆動源に電力を使用しており、運動の性質から衝撃駆動型と振動駆動型に大別することができる。衝撃駆動型は代表例として、形状記憶合金を利用するSIA(Shape memory alloy Impact Actuator)やピエゾ素子を利用した圧電アクチュエータを挙げることできる。衝撃駆動型アクチュエータは、衝撃的な動きが可能な動作部品を含み、電子機器のタッチスクリーンや筐体に対し、動作部品が打撃し、又は連動させることで一過性の衝撃を与える。振動駆動型アクチュエータは代表例として偏心モータを利用するERM(Eccentric Rotating Mass)型アクチュエータ、磁界中のコイルに交流電流を流して可動子を振動させるリニア共振型アクチュエータ(LRA:Linear Resonant Actuator)などを挙げることができる。振動駆動型は振動体に必要な時間だけ一定の振幅の振動を与える。
【0005】
例えば、特許文献1(国際公開第2012/023605号)には、ワイヤー状形態を有する形状記憶合金の長さ方向の伸縮変化を利用して水平方向(または平面方向)または上下方向(前後方向または厚み方向)の衝撃的な動き(衝撃動作)、および当該衝撃動作の繰り返しに基づく回転動作または直進動作を可能にする衝撃駆動型アクチュエータが開示されている。当該衝撃駆動型アクチュエータによれば、所定の配線状態で配置されるワイヤー状形状記憶合金に対して各種形状の絶縁性熱伝導体を可能な限り有効に接触させるように設け、この絶縁性熱伝導体によってワイヤー状形状記憶合金でパルス的通電時に生じた熱を迅速に放散させて逃がすようにしたため、ワイヤー状形状記憶合金の低温化を迅速に行うことができ、比較的に短い時間で繰り返すことが可能な瞬間的動作を実現することができ、実用性の高い衝撃駆動型アクチュエータを実現することができる。
【0006】
また、ユーザのタッチパネルにおける操作やタッチパネルの表示内容などに応じて、多種多様な触覚フィードバックパターンを提供できるように、触覚フィードバック発生機構を複数搭載することがある。例えば、特許文献2(特開2012-203895号公報)には、スマートフォンのガラス基板の下に、当該スマートフォンの上部及び下部にそれぞれ圧電振動素子を搭載したタッチパネル装置が開示されている。圧電振動素子を2ヶ所に設けたので、各々に入力される信号の振幅や位相を制御することにより、保護パネル22の面内の特定の場所に強い振幅を誘起することができ、指などが触れている部分を選択的に振動させることが可能となる。
【0007】
さらに、触覚フィードバックを利用して、ユーザによる誤入力を未然に回避するための技術も存在している。例えば、特許文献3(特開2009-080720号公報)には、操作者が数字の「5」を誤って重複入力してしまった場合に、かかる誤入力について注意を喚起することで、キー入力に係る誤入力を未然に回避することが可能な情報入力装置を得ることを目的として、操作者により操作される複数のキーと、当該キーの操作入力を受け付ける受付部と、前記キーを振動させる振動部と、前記受付部で前記キーの操作入力を受け付ける毎に、前記振動部を受付振動モードで駆動するための制御信号を出力する駆動制御部と、を有する情報入力装置が開示されている。振動部は、注意喚起振動モードで振動することを通じて、重複入力操作があった旨の注意を操作者に対して喚起することが可能となる結果として、キー入力に係る誤入力を未然に回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2012/023605号
【特許文献2】特開2012-203895号公報
【特許文献3】特開2009-080720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
タッチパネルなどを搭載した電子機器の種類の増加及び応用の普及により、タッチパネルを使用する場面も増加してきた。しかし、タッチ操作は、通常はユーザの指により行われる以上、指の動作の精度や、ヒューマンエラーなどにより、誤入力の危険が常に存在する。特許文献3に開示される技術は、一定程度、誤入力を未然に防ぐことができるが、今回と前回のキー入力値を比較し、この比較の結果、今回と前回のキー入力値が同じである旨の判定が下されたとき、振動部を受付振動モードとは相異する注意喚起振動モードで駆動するための制御信号を出力するように構成されているので、数字の重複入力のときのみ、ユーザに対して注意喚起をすることができるが、それ以外の誤入力の場面では機能しない。例えば、ユーザが情報入力装置を操作して商品の注文を行う際、通常と異なる数量を誤入力した場合、誤った数量に数字の重複がなければ、特許文献3に開示される技術ではユーザに対して注意喚起することができない。
【0010】
さらに、特許文献3に開示される技術では、数字の重複入力の有無のみを基準として、注意喚起振動モードで駆動するための制御信号を出力するように構成されているので、ユーザが意図的に数字を重複入力する場合でも、注意喚起振動が発生し、ユーザの使用体験を損なう可能性がある。すなわち、特許文献3に開示される技術では、誤入力であるか否かの判断基準が簡素なものであり、精度面において向上する余地がある。
【0011】
本発明は上記の問題点に鑑み完成されたものであり、一実施形態において、ユーザによる誤入力の判定の精度を高めた触覚フィードバックシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが鋭意検討した結果、ユーザによるタッチ入力操作に関する情報からユーザの行動パターンを学習したうえ、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定することにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のように例示される。
[1]
ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するための触覚フィードバックシステムであって、
衝撃又は振動を発生するように構成された触覚発生部と、
所定の触覚効果パターンを発生するように、前記触覚発生部の動作を制御する制御部と、
ユーザによるタッチ入力の行動パターンに関する情報を記憶する行動パターン記憶部と、
前記行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定する推定部
を含む触覚フィードバックシステム。
[2]
前記推定部は、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定した場合、ユーザに確認するように構成されている、[1]に記載の触覚フィードバックシステム。
[3]
前記推定部がユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定した場合、前記制御部は、通常の触覚効果パターンと異なる触覚効果パターンを発生するために、前記触覚発生部を動作させるように構成される、[1]又は[2]に記載の触覚フィードバックシステム。
[4]
前記タッチ入力の行動パターンに関する情報は、数値、個人の特定につながる情報、Yes/Noの選択のうち少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
[5]
前記触覚発生部は、衝撃駆動型のアクチュエータ又は振動駆動型のアクチュエータである、[1]~[4]のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
[6]
前記触覚効果パターンは、衝撃若しくは振動の強さ、衝撃若しくは振動の継続時間、衝撃若しくは振動の反復回数、及び振動の周波数のうち少なくとも1種に基づくものである、[1]~[5]のいずれか1項に記載の触覚フィードバックシステム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、ユーザによる誤入力の判定の精度を高めた触覚フィードバックシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における触覚フィードバックシステムの作動方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0016】
本発明の触覚フィードバックシステムは、タッチパネルなどのタッチ入力手段を搭載した電子機器において、ユーザによるタッチ入力に応じて、電子機器に触覚フィードバックを付与するものである。当該電子機器に付与された触覚フィードバックは、当該電子機器に接触している物体を介して、ユーザに伝達される。
【0017】
タッチ入力手段は、物体によるタッチを検出することが可能なものであれば具体的な構成が限定されないが、典型的には、感圧式タッチパネル、静電容量方式タッチパネル、抵抗膜方式タッチパネルが挙げられる。また、本発明において、物理的ボタンもタッチ入力手段に含まれるものとする。タッチ入力手段の種類、形状、感度などは、電子機器の種類、形状などに基づいて適宜設定され得る。タッチ入力手段は、1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。なお、ここでの「物体」とは、ユーザの身体の一部(例えば、手指)又はユーザが操作する物体を意味する。
【0018】
(1.触覚発生部)
本発明の触覚フィードバックシステムは、一実施形態において、振動又は変位を発生するように構成された触覚発生部を含む。触覚発生部としては、衝撃駆動型のアクチュエータや、振動駆動型のアクチュエータのいずれも、本発明のために用いることができる。アクチュエータは、振動又は変位の一方ができるものであってもよく、両方ができるものであってもよい。本発明の触覚フィードバックシステムの一実施形態において、アクチュエータは、1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0019】
例えば、本発明の一実施形態におけるアクチュエータはコイル、動作部品(例えば金属芯材)及びバネから作られている。コイルは金属の周りに巻きつけられ、(ここで、コイルと金属の部品の両者は「ソレノイド」と称してよい)かつ、コイルが磁界を生成するとき(例えば、電流がコイル端子間を流れる時)金属は移動する。当該金属の移動は電子機器に衝撃をもたらし得る。バネは次いで、電流がコイルから除去されるとき移動金属または他の芯材を静止位置に戻すように用いてよい。
【0020】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する絶縁性熱伝導体が瞬間的に押圧されて変位する。当該絶縁性熱伝導体の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。このようなアクチュエータの詳細は国際公開第2012/023605号に開示されている。
【0021】
あるいは、別の実施形態における衝撃駆動型アクチュエータは、通電加熱で収縮するワイヤー状形状記憶合金と、このワイヤー状形状記憶合金に接触し当該ワイヤー状形状記憶合金で生じた熱を逃がす絶縁性熱伝導体の固定子(固定部品)及び移動子(動作部品)と、を備えるように構成される。駆動回路により、当該ワイヤー状形状記憶合金に対して瞬間的に通電を行い、ワイヤー状形状記憶合金を瞬間的に収縮させると、それに接触する絶縁性熱伝導体の移動子が瞬間的に押圧されて変位する。当該絶縁性熱伝導体の移動子の変位は電子機器に衝撃をもたらし得る。そして、絶縁性熱伝導体による熱伝導作用によってワイヤー状形状記憶合金で生じた熱が急速に放熱され、その結果、ワイヤー状形状記憶合金は直ぐに元の長さ状態(伸長状態)に戻る。こうして、ワイヤー状形状記憶合金において、相対的に短い時間間隔での瞬間的な収縮を行うことが可能となる。
【0022】
固定子の位置を変更させないように、電子機器の部品に、例えば両面テープや接着剤などで固定し、移動子に電子機器の動作する部品(筐体やタッチスクリーンなど)を密着させ、衝撃駆動型アクチュエータを挟み込み、それらを元に戻すスプリングなどの弾性を持った部品で動作する部品を抑え込むことで電子機器に衝撃をもたらすことが可能となる。固定子と移動子の形状は、上記機能を実現できれば特に限定されず、円盤状、波状、柱状など、適宜選択することができる。
【0023】
(2.制御部)
触覚発生部の動作を適切に制御するために、所定の触覚効果パターンを決定し、それに対応して触覚発生部を駆動するパルス電圧などの信号を発生する制御部が設けられる。本発明の一実施形態において、制御部は、駆動信号を生成するように構成された増幅器、又はより一般的には駆動回路を含み得る。一実施形態では、制御部は、1つ又は複数のプロセッサ又はプロセッサコア、プログラマブルロジックアレイ(PLA)又はプログラマブルロジック回路(PLC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、又は任意の他の制御回路を含み得る。制御部がプロセッサを含む場合、プロセッサは、携帯電話又は他のエンドユーザデバイス上の汎用プロセッサなどの汎用プロセッサであってもよく、あるいは、触覚効果の生成専用のプロセッサであってもよい。
【0024】
本発明の一実施形態において、制御部は、後述する推定部の推定に応じて、通常の触覚効果パターンと異なる触覚効果パターン(強さ、持続時間、振動波形など)を決定することが可能である。これらの触覚効果パターンは、所定のアルゴリズムに基づいて、推定部がその都度算出されてもよく、ハードディスク(HD)やROM、RAMなどで構成される記憶装置にあらかじめ定義されたものから推定部が選定したものであってもよい。本発明の一実施形態において、触覚効果パターンは、ユーザが任意に設定又は変更することができる。
【0025】
決定された触覚効果パターンは、制御部において駆動信号として出力される。触覚効果パターンを表す制御信号は、例えば触覚発生部を駆動する駆動回路に送信される。駆動回路は、触覚発生部に駆動電圧を印加して、触覚発生部を駆動することが可能なものである。典型的には、駆動回路には、DC/DCコンバータ、電池などの電源、充電抵抗、放電用コンデンサ、FETなどのスイッチ素子、センサーなどの検出器、マイコンなどの演算器、駆動パルスのコントローラなどが含まれる。
【0026】
(3.行動パターン記憶部)
ユーザのタッチ入力の行動パターンを学習するために、ユーザのタッチ入力操作に関する情報を蓄積する行動パターン記憶部が設けられる。行動パターン記憶部は、ハードディスク(HD)やROM、RAMなどで構成される記憶装置であり得る。
【0027】
ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報としては、数値、個人の特定につながる情報、Yes/Noの選択などが考えられる。
【0028】
数値としては、特定の入力部において入力された数値であることが好ましい。例えば、ユーザが通常使用するアプリケーション内における、商品の注文数量の入力部、振込金額の入力部などが挙げられる。行動パターン記憶部は、ユーザが入力した数値とともに、当該数値に関連する、商品の名称や、振込先に関する情報を併せて記憶することができる。
【0029】
個人の特定につながる情報としては、氏名、性別、生年月日、電話番号、FAX番号、郵便番号、住所などが挙げられる。行動パターン記憶部は、ユーザが入力した個人につながる情報とともに、当該ユーザのアカウント情報(アカウント名など)を併せて記憶することができる。
【0030】
Yes/Noの選択は、特定の入力部において選択されたものであることが好ましい。例えば、ユーザが通常使用するアプリケーション内における、特定の指令の要否に関する入力部が挙げられる。行動パターン記憶部は、ユーザの選択とともに、当該選択に関連する指令に関する情報を併せて記憶することができる。
【0031】
本発明の一実施形態において、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報は、ユーザがタッチ入力する度に取得され、行動パターン記憶部に記憶され、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定するために蓄積される。また、本発明の別の一実施形態においては、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報は、ユーザが特定のアプリケーションを使用している間にのみ取得され、行動パターン記憶部に記憶され、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定するために蓄積される。また、本発明の別の一実施形態においては、同一の電子機器を複数のユーザが使用している場合、特定のユーザが使用している間にのみ、ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報が取得され、行動パターン記憶部に記憶され、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定するために蓄積される。
【0032】
ユーザのタッチ入力の行動パターンに関する情報の取得及び記憶に関する処理は、上記制御部と同じプロセッサによって実行されてもよく、制御部とは別のプロセッサによって実行されてもよい。
【0033】
(4.推定部)
推定部は、行動パターン記憶部に記憶された情報に基づき、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定する。
【0034】
例えば、推定部は、行動パターン記憶部に記憶された情報から、ユーザが通常入力する数値の平均値を算出し、当該平均値から大きく離れた数値が入力された場合(例えば、平均値の20%、50%、又は100%の差がある場合、桁数が異なる場合など)、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定することができる。あるいは、推定部は、ユーザが通常入力する数値の最大値及び最小値の間の範囲を正常区間と定義し、当該正常区間外の数値が入力された場合、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定することができる。
【0035】
また、ユーザが個人の特定につながる情報を入力した場合、推定部は、行動パターン記憶部に記憶された情報から、ユーザが以前入力した個人の特定につながる情報を参照し、これらの情報を照合することができる。ユーザが入力した情報が行動パターン記憶部に記憶された情報が一致しない場合、推定部は、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定することができる。
【0036】
また、ユーザがYes/Noの選択を入力した場合、推定部は、行動パターン記憶部に記憶された情報から、ユーザが以前入力した選択を参照し、これらの情報を照合することができる。ユーザが入力した選択が行動パターン記憶部に記憶された情報が一致しない場合、推定部は、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定することができる。なお、ユーザによる「Yes」の選択と、「No」選択の両方が行動パターン記憶部に規則された場合、推定部は、一方の選択が他方の選択より明らかに多い場合(例えば、「Yes」を選択した回数が「No」を選択した回数の3倍以上など)のみ、当該一方の選択を正常選択と定義し、他方の選択が入力された場合、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定することができる。
【0037】
このように、推定部は、以前のユーザ入力に関する情報に基づいて、ユーザの行動パターンを学習し、これにより誤入力の判定の精度を継続的に向上させることが可能である。
【0038】
推定部による処理は、上記制御部又は行動パターン記憶部と同じプロセッサによって実行されてもよく、制御部又は行動パターン記憶部とは別のプロセッサによって実行されてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、推定部は、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると決定した場合、ユーザに確認するように構成されている。当該実施形態のいては、ユーザへの確認は、触覚フィードバックシステムが搭載された電子機器のユーザインターフェイスなどを介して、視覚情報又は音声を利用して行うことができる。ユーザは、注意喚起を受けて、自らの入力が誤入力である可能性を察知し、入力内容を見直すことが可能である。
【0040】
さらに、本発明の一実施形態において、視覚情報若しくは音声を利用した確認の代わり、又は視覚情報若しくは音声を利用した確認とともに、制御部は、一時的に通常適用されている触覚効果パターンと異なる触覚効果パターンを発生するために、触覚発生部を動作させるように構成されることが可能である。ユーザは、通常と異なる触覚効果パターンを感知し、自らの入力が誤入力である可能性を察知し、入力内容を見直すことが可能である。さらに、推定部による確認又は制御部の制御による触覚効果パターンの発生は、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると推定部が決定したその都度行ってもよく、ユーザがすべての入力を完了して「決定」や「送信」ボタンを押したときに行ってもよい(その場合、「決定」や「送信」ボタンの機能は一時的に停止される)。なお、ここでは、「通常適用されている触覚効果パターン」とは、ユーザがタッチ入力する際に通常発生する触覚効果パターンを意味する。また、「通常適用されている触覚効果パターン」には、「触覚フィードバックなし」の設定も含まれる。
【0041】
触覚効果パターンは、衝撃若しくは振動の強さ、衝撃若しくは振動の継続時間、衝撃若しくは振動の反復回数、及び振動の周波数などに基づくものであり得る。通常と異なる触覚効果パターンであることをユーザが感知できる限り、これらのパラメーターのいずれの変更でもよく、特に限定されないが、注意喚起という観点から、通常より強い衝撃若しくは振動、長い衝撃若しくは振動、反復回数の多い衝撃若しくは振動、又は高い振動の周波数は注意喚起用の触覚効果パターンとして好ましい。
【0042】
図1は、本発明の一実施形態における触覚フィードバックシステムの作動方法を示すフローチャートである。タッチ入力手段からユーザによるタッチ入力が検出されると、当該検出されたタッチ入力に関する情報(数値、個人の特定につながる情報、Yes/Noの選択など)は取得される。そして、推定部は、行動パターン記憶部を参照して、行動パターン記憶部に記憶されるデータを洗い出し、所定の基準に従い、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を決定するために十分なデータが蓄積されたか否かを判断する。当該基準は、一定のものであってもよく、推定部自らの学習により変動するものであってもよい。
【0043】
推定部は、データの蓄積が不十分と判断した場合、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を推定しない。一方、推定部は、データの蓄積が十分と判断した場合、蓄積されたデータとユーザによって入力された情報と比較して、所定の基準に従い、ユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性を決定する。当該基準は、一定のものであってもよく、推定部自らの学習により変動するものであってもよい。
【0044】
推定部がユーザによるタッチ入力が誤入力であることの可能性があると推定した場合、制御部は、通常と異なる触覚効果パターンを発生するように、触覚発生部を動作させて、ユーザの注意を喚起する。一方、推定部がユーザによるタッチ入力が通常入力であると推定した場合、注意喚起が行われない。
【0045】
注意喚起を受けて、ユーザが入力内容を修正した場合、修正後の内容が誤入力である可能性を判断するため、上記手順が繰り返される。なお、データの蓄積が十分であるかどうかの判断は、その都度行ってもよく、十分であると判断があった後に省略してもよい。
【0046】
注意喚起を受けても、ユーザが入力内容を修正しない場合、当該入力内容は通常入力であるので、ユーザによる入力終了後、当該入力内容は行動パターン記憶部に記憶され、推定部は、当該入力内容を学習して、ユーザの行動パターンを修正することが可能である。なお、ユーザによる入力が既に記憶された情報と同様である(例えば、個人の特定につながる情報が同一である)ことなどにより、ユーザの行動パターンを修正する必要がない場合、当該ユーザ入力の記憶・学習を省略することもできる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本明細書において開示される各実施形態の各具体的な特徴は互いに独立するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜組み合わせることができることが理解されるべきである。