(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109150
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20220720BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K31/06 305L
F16K31/06 305K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004517
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】兼子 史聖
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正
【テーマコード(参考)】
3H051
3H106
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051AA08
3H051BB10
3H051CC11
3H051FF02
3H106DA08
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC04
3H106DC18
3H106DD05
3H106EE34
3H106EE38
3H106KK05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より小さいバネの押圧力で弁体が弁座から離脱した状態を維持するこができるようにする。
【解決手段】作動流体の流入通路222、流出通路223、流入通路とこの流出通路との間に形成され弁体214が当接する弁座227、この弁座と流入通路との間に形成され弁体を収容する弁室225、及びこの弁室内で流入通路と弁体との間に配置される流路壁240とをバルブボディに形成する。流入通路から弁室に流入した作動流体は、流路壁により弁体とは非衝突状態となるようにしているので、弁室内での弁体の挙動が安定する。そのため、ノーマルオープン圧縮バネ231のバネ力をより小さくしても、弁座の開弁状態を維持できる。その結果、ノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力も小さくでき、ひいてはコイルの励磁力も小さくできる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に励磁するコイルと、
このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内にこのコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
このプランジャと当接して、前記プランジャと一体に移動する弁体と、
作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、前記流入通路とこの流出通路との間に形成され前記弁体が当接する弁座と、この弁座と前記流入通路との間に形成され前記弁体を収容する弁室と、この弁室内で前記流入通路と前記弁体との間に配置される流路壁とを有するバルブボディと、
前記プランジャと当接して、前記プランジャを前記コアから離れる方向であって、前記弁体を前記弁座に接する方向に押圧するノーマルクローズ圧縮バネと、
前記弁体と当接して、前記弁体を前記弁座から離れる方向に押圧するノーマルオープン圧縮バネとを備え、
前記流入通路から前記弁室に流入した作動流体は、前記流路壁により前記弁体とは非衝突状態となることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記流路壁は、前記弁室内で前記弁体側から前記弁座側に向けて前記弁体を覆うように延出している
ことを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記流路壁は、前記流路壁を回り込んだ作動流体が前記弁座側から前記弁体側に向かう流れとなるように、前記弁室内に形成されている
ことを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載の電磁弁。
【請求項4】
前記流路壁は前記バルブボディに一体成形されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の電磁弁。
【請求項5】
前記流路壁は流路壁部材により形成され、この流路壁部材が前記弁室内に配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の電磁弁。
【請求項6】
前記弁体は赤道部分に円環状のバネ受けを形成する球状であり、
前記プランジャは前記弁体の中心軸位置に当接し、
前記ノーマルオープン圧縮バネは前記弁体の前記バネ受けに当接する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれかに記載の電磁弁。
【請求項7】
前記流路壁は、前記弁体を覆い前記流入通路側に膨らむ弧状である
ことを特徴とする請求項6記載の電磁弁。
【請求項8】
通電時に励磁するコイルと、
このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内にこのコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
このプランジャと当接して、前記プランジャと一体に移動する弁体と、
作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、前記流入通路とこの流出通路との間に形成され前記弁体が当接する弁座と、この弁座と前記流入通路との間に形成され前記弁体を収容する弁室とを有するバルブボディと、
前記プランジャと当接して、前記プランジャを前記コアから離れる方向であって、前記弁体を前記弁座に接する方向に押圧するノーマルクローズ圧縮バネと、
前記弁体と当接して、前記弁体を前記弁座から離れる方向に押圧するノーマルオープン圧縮バネとを備え、
前記流入通路から前記弁室に流入した作動流体は、前記弁座により前記弁体とは非衝突状態となることを特徴とする電磁弁。
【請求項9】
前記流入通路は、前記弁室のうち前記弁座と対向する部位に開口している
ことを特徴とする請求項8記載の電磁弁。
【請求項10】
前記流出通路と前記弁室とを前記弁座をバイパスして連通する圧力逃がし通路と、前記流出通路内圧力が前記弁室内圧力より所定圧以上高い時この圧力逃がし通路を開く圧力逃がし弁とを更に備え、
前記圧力逃がし通路は、前記弁室のうち前記弁座を挟んで前記流入通路と反対側の部位に開口する
ことを特徴とする請求項8若しくは9記載の電磁弁。
【請求項11】
前記バルブボディは、前記弁室と連通する第2流出通路と、この第2流出通路と前記弁室との間に形成される第2弁座とを備え、
前記第2弁座は前記弁座と対向して、前記弁体が前記弁座と接しているとき前記弁体は前記第2弁座より離脱し、前記弁体が前記弁座より離脱しているとき前記弁体は前記第2弁座と接する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項11いずれかに記載の電磁弁。
【請求項12】
前記弁座は、前記コイルの非励磁時に前記弁体が接するノーマルクローズ弁座であり、
前記第2弁座は、前記コイルの非励磁時に前記弁体が離脱するノーマルオープン弁座である
ことを特徴とする請求項11記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作動流体の流路を開閉する電磁弁に関し、例えば、ウォッシャー液の流路の制御に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、先に特許文献1を先行技術文献としてウォッシャー液等の流路の切り替えに用いる電磁弁を提案した(特願2020-44326号、特願2020-44326)。この本発明者等が提案した電磁弁は、電磁部の体格を小型化できるものであるが、一方で、弁座が開いている際に、流入通路から弁座に向かう作動流体が弁体と衝突して、弁体を弁座閉方向に押圧する可能性も否定できなかった。
【0003】
作動流体が衝突しても弁体が弁座から離れた状態を維持するには、所定荷重以上の押圧力を維持するバネを弁体に付勢する必要がある。その結果、弁体やプランジャを移動させるために必要となるコイルの励磁力もバネの付勢力を上回る大きさにすることが求められる。ひいては、コイルを含む電磁弁の体格も大型化することとなり、一層の小型化を進める上での課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、流体流入通路から弁座に向かう作動流体が弁体に直接衝突するのを抑制して、より小さいバネの押圧力で弁体が弁座から離脱した状態を維持することができる電磁弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1は、通電時に励磁するコイルと、このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、コイルの通電時磁気回路内にこのコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、このプランジャと当接して、プランジャと一体に移動する弁体とを備えている。
【0007】
また、本開示の第1は、作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、流入通路とこの流出通路との間に形成され弁体が当接する弁座、この弁座と流入通路との間に形成され弁体を収容する弁室、及びこの弁室内で流入通路と弁体との間に配置される流路壁を有するバルブボディも備えている。
【0008】
更に、本開示の第1は、プランジャと当接して、プランジャをコアから離れる方向であって、弁体を弁座に接する方向に押圧するノーマルクローズ圧縮バネと、弁体と当接して、弁体を弁座から離れる方向に押圧するノーマルオープン圧縮バネとも備えている。
【0009】
そして、本開示の第1は、流入通路から弁室に流入した作動流体は、流路壁により弁体とは非衝突状態となるようにしている。流入通路から弁室に流入した作動流体が弁体に直接衝突するのを流路壁が防ぐので、弁室内での弁体の挙動が安定する。その結果、ノーマルオープン圧縮バネのバネ力をより小さくしても、弁座の開弁状態を維持できる。ノーマルオープン圧縮バネの圧縮力をより小さくすることができる結果、ノーマルクローズ圧縮バネの圧縮力も小さくでき、ひいてはコイルの励磁力も小さくできる。これにより、本開示の第1では電磁弁の小型化が図れる。
【0010】
本開示の第2は、弁室内で弁体側から弁座側に向けて弁体を覆うように流路壁が延出している。弁体が流路壁によって覆われる結果、作動流体が弁体に直接衝突するのをより効果的に防ぐことができる。
【0011】
本開示の第3は、流路壁を回り込んだ作動流体が弁座側から弁体側に向かう流れとなるように、流路壁が弁室内に形成されている。作動流体が弁座側から弁体側に向かう流れとなる結果、弁体が作動流体によって弁座側に押圧される事態を、より効果的に防いでいる。
【0012】
本開示の第4は、流路壁をバルブボディに一体成形している。一体成形することで部品点数の増加を防ぐことができる。
【0013】
本開示の第5は、流路壁を流路壁部材によって形成し、この流路壁部材を弁室内に配置している。流路壁部材を設けるため部品点数は増加するが、流路壁の形成が容易となる。
【0014】
本開示の第6は、弁体を赤道部分に円環状のバネ受けを形成する球状にしている。そして、プランジャは弁体の中心軸位置に当接し、ノーマルオープン圧縮バネは弁体のバネ受けに当接するようにしている。弁体を球状とすることで、弁体が多少傾いてもシール性が確保できる。その結果電磁弁を簡易な構成と出来、小型化に貢献する。
【0015】
本開示の第7は、流路壁の形状を、流入通路側に膨らむ弧状にして、弁体を覆うようにしている。弁体の球状に対応した弧状とすることで、作動流体が弁体に直接衝突するのをより効果的に防ぐことができる。
本開示の第8は、流入通路から弁室に流入した作動流体は、弁座により弁体とは非衝突状態となるようにしている。特別な流路壁を形成することがなく、弁座により弁室に流入した作動流体の流れを規制することが可能である。その結果、弁室内での弁体の挙動が安定することができ、ノーマルオープン圧縮バネのバネ力をより小さくしても、弁座の開弁状態を維持できるのは、上記第1の開示と同様である。ノーマルオープン圧縮バネの圧縮力をより小さくすることができる結果、ノーマルクローズ圧縮バネの圧縮力も小さくでき、ひいてはコイルの励磁力も小さくでき、電磁弁の小型化が図れるのも第1の開示と同様である。
本開示の第9は、流入通路を弁室のうち弁座と対向する部位に開口させている。流入通路から弁室に流入した作動流体は、まず弁座に衝突し、弁座によって流れを規制されて弁座側から弁体に向かうこととなる。これにより、弁体が作動流体によって弁座側に押圧される事態が防がれる。
本開示の第10は、流出通路と弁室とを弁座をバイパスして連通する圧力逃がし通路と、流出通路内圧力が弁室内圧力より所定圧以上高い時この圧力逃がし通路を開く圧力逃がし弁とを更に備えている。そして、圧力逃がし通路は、弁室のうち弁座を挟んで流入通路と反対側の部位に開口するようにしている。
圧力逃がし通路と圧力逃がし弁とを設けているので、作動流体が流出通路内に閉じ込められる事態を防ぐことができる。さらに、圧力逃がし通路を弁室のうち弁座を挟んで流入通路と反対側の部位に開口させているので、流入通路を弁座と対向する位置に形成しても、圧力逃がし弁をバルブボディ内に配置することが可能である。加えて、流入通路より流入した作動流体の流れが圧力逃がし弁に直接影響を及ぼすこともない。
【0016】
本開示の第11は、バルブボディに、弁室と連通する第2流出通路と、この第2流出通路と弁室との間に形成される第2弁座とを備えている。そして、第2弁座は弁座と対向して、弁体が弁座と接しているとき弁体は第2弁座より離脱し、弁体が弁座より離脱しているとき弁体は第2弁座と接する構成としている。
【0017】
本開示の第11によれば、流入通路から流入した作動流体を流出通路側と第2流出通路側とに切り替える三方弁として機能させることができる。
【0018】
本開示の第12では、弁座がコイルの非励磁時に弁体が接するノーマルクローズ弁座で、第2弁座がコイルの非励磁時に弁体が離脱するノーマルオープン弁座となっている。三方弁をコイルの非励磁時に流出通路が閉じる弁として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図18】第4実施形態の圧力逃がし弁を示す断面図である。
【
図20】第5実施形態の電磁弁の流入通路開口位置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
第1実施形態は、
図1に示すような配管102の配置であり、電磁弁200として流路の切り替えを行う三方弁を用いている。ノーマルクローズ配管102aのノズル100はリアウィンドガラス130に対向し、ウォッシャー液をリアウィンドガラス130に噴出する。ノーマルオープン配管102bのノズルは、ウォッシャー液をカメラ131に噴出する。本開示では、電磁弁200の非通電時には、ポンプ120からのウォッシャー液がカメラ131に吹き付けられる。これは、使用頻度がカメラ131の方がリアウィンドガラス130より多いためである。
【0021】
図2及び
図3に示すように、電磁弁200は樹脂製のコイルボビン204の周囲に銅線からなるコイル205が多数回巻装されている。コイルボビン204の内周にはスリーブ210を介してステータ211が配置される。なお、スリーブ210は非磁性材で、例えばSUS304が用いられる。一方、ステータ211は磁性材で、例えばSUS430が用いられる。
【0022】
また、コイルボビン204の外周は樹脂製の外郭220によって覆われている。外郭220は、コネクタ202と一体に形成されている。コネクタ202内には一対の端子221が埋込成形されており、一対の端子221はコイル205のプラス側及びマイナス側にそれぞれ接続している。
【0023】
コイルボビン204の内側には、磁性材製のコア206が配置されている。コア206は上端が閉じた円筒形状をしており、開口端部はテーパ形状をしている。
【0024】
このコア206のテーパ形状部と対向してプランジャ209が配置されている。プランジャ209は円柱形状で、上端はコア206のテーパ形状に対応するテーパ形状となっている。プランジャ209はテーパ形状の上端に連続して肩部209aを有しており、この肩部209aにワッシャが係合している。ワッシャは、例えばSUS304等の非磁性材料で、磁性材製のコア206とプランジャ209が通電終了後の残留磁力によって吸引したままとなるのを防止する。なお、プランジャ209はステータ211の円筒状部211aによってガイドされ、
図2の上下方向に移動する。
【0025】
コア206内には、プランジャ209をコア206から引き離す方向に付勢するノーマルクローズ圧縮バネ207が配置される。コイルボビン204の外郭220の更に外周に、ヨーク201が配置される。ヨーク201は磁性材の鋼製で、コイル205通電時に、このヨーク201とコア206、プランジャ209及びステータ211によって磁気回路が形成される。
【0026】
以上の構成によって、電磁部230が構成される。この電磁部230はOリング213を介して流路部250と結合する。流路部250は、バルブボディを備え、バルブボディは、アッパボディ212とロアボディ219とに分かれる。
【0027】
アッパボディ212には、ポンプ120からの高圧のウォッシャー液が流入する流入通路222と、カメラ131に向かうノーマルオープン配管102bと接続されるノーマルオープン流出通路223が形成されている。このノーマルオープン流出通路223が第2流出通路に相当する。流入通路222及びノーマルオープン流出通路223の端部の外周は、配管102の接続が容易になるようテーパ形状となっている。テーパ形状の端部には肩部224が形成され、配管102の抜け止めを図っている。
【0028】
アッパボディ212には弁室225が形成されており、弁室225は連通穴226を介して流入通路222と連通している。弁室225は、また、ノーマルオープン弁座227を介してノーマルオープン流出通路223と連通している。このノーマルオープン弁座227が第2弁座に相当する。
【0029】
アッパボディ212の上部には、電磁部230との接続部251が形成されている。接続部251は円管形状で、内部にプランジャ209が配置される。また、接続部251の上部は広がって、Oリング213を受ける上面252を形成すると共に、ヨーク201と係止する係止肩部253を形成する。
【0030】
ロアボディ219には、リアウィンドガラス130に向かうノーマルクローズ配管102aと接続されるノーマルクローズ流出通路228が形成されている。このノーマルクローズ流出通路228が流出通路に相当する。ノーマルクローズ流出通路228の端部がテーパ形状となり、肩部224が形成されるのは、上述の流入通路222と同様である。このノーマルクローズ流出通路228と、流入通路222及びノーマルオープン流出通路223は共に内径が3ミリメートル程度の大きさである。
【0031】
ロアボディ219には、弁室225に突出する円筒状のノーマルクローズ弁座229が形成されている。このノーマルクローズ弁座229が弁座に相当する。ノーマルオープン弁座227とノーマルクローズ弁座229との間の弁室225に球状の弁体214が配置される。なお、ノーマルオープン弁座227とノーマルクローズ弁座229とはテーパ形状であり、ともに内径は5ミリメートル弱である。
【0032】
アッパボディ212には、流路壁240が
図2の上下方向に延出して形成されている。
図4に拡大図示するように、流路壁240の基部241は連通穴226に対向している。また、流路壁240の先端242は、ノーマルクローズ弁座229の先端229aより更に弁室225の底部側に延びている。従って、流入通路222から連通穴226を介して弁室225内に流入したウォッシャー液は、流路壁240に沿って弁室225内を下方に流れ、弁室225の底部で反転し、ノーマルクローズ弁座229に沿って上方に流れることとなる。
【0033】
図4のV-V線に沿う断面図である
図5に示すように、流路壁240の弁体214側の面は、弁体214の外形に沿った円弧状をしている。そのため、流路壁240は弁体214の流入通路222側の面を広く覆うことができる。このように流路壁240が弁体214を覆う結果、流入通路222から弁室225に流入したウォッシャー液が弁体214に直接衝突することは無い。
【0034】
ロアボディ219のノーマルクローズ弁座229の下流はノーマルクローズ流出通路228と連通し、ノーマルクローズ弁座229を通過したウォッシャー液はノーマルクローズ流出通路228に流出する。
【0035】
弁体214は、
図6に示すように、直径が7ミリメートル強の球状であり、赤道部分に円環状のバネ受け214aが1ミリメートル弱突出している。弁体214は、バネ受け214aと共に耐水性ゴムにより一体成形され、表面にコーティングがされている。このゴム材料は、Oリング213と同様である。コーティング材料は、フッ素やモリブデンといったゴムの表面融解防止や弁体と相手弁座の着座性を向上させる物質である。
【0036】
円筒状のノーマルクローズ弁座229の外周には、ノーマルオープン圧縮バネ231が配置されている。このノーマルオープン圧縮バネ231の内径はノーマルクローズ弁座229の外径より多少大きく、ノーマルクローズ弁座229の外周によって保持されている。そして、このノーマルオープン圧縮バネ231は、弁体214のバネ受け214aに係合して、弁体214をノーマルオープン弁座227側に付勢する。
【0037】
この結果、弁体214には、プランジャ209を介して受けるノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力とノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力の双方が加わることとなる。ここで、ノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力に比して、ノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力は充分に大きいので、コイル205の非通電時には、弁体214はノーマルクローズ弁座229に押し付けられ、ノーマルクローズ流出通路228を閉じる。
【0038】
ロアボディ219には、ノーマルクローズ弁座229をバイパスして流入通路222とノーマルクローズ流出通路228とを結ぶ圧力逃がし通路232が形成されている。また、アッパボディ212にも、圧力逃がし通路232が形成されている。圧力逃がし通路232の内径は2ミリメートル程度である。
【0039】
アッパボディ212には、この圧力逃がし通路232を開閉する圧力逃がし弁233が配置されている。圧力逃がし弁233は、圧力逃がし弁座218と、圧力逃がし弁体217と、圧力逃がしバネ216からなる。圧力逃がし弁座218は、弁体214と同様の表面にフッ素コーティングしたゴム材料製で、アッパボディ212とロアボディ219とで挟持される。
【0040】
圧力逃がし弁体217は樹脂製で、円柱形状をしており、アッパボディ212に形成された圧力逃がしガイド234に沿って移動可能である。圧力逃がし弁体217の外径も、圧力逃がしガイド234の内径も共に5ミリメートル強である。
【0041】
圧力逃がし弁体217の外周には、
図7に示すように、圧力逃がし溝217aが3か所形成されている。圧力逃がし溝217aは半径0.3ミリメートル程度の半円形である。圧力逃がし弁体217の上面には、圧力逃がしバネ216を受ける圧力逃がしバネ受け217bが、円柱状に突出形成されている。
【0042】
従って、圧力逃がしバネ216は、この圧力逃がしバネ受け217bとアッパボディ212の圧力逃がし通路232の下端に形成されたバネ受けによって挟持され、圧力逃がし弁体217を圧力逃がし弁座218側に押圧する。この圧力逃がしバネ216の設定圧力(逃がし圧力)は、5キロパスカル程度で、ストップ弁101の設定圧力(解放圧力)の半分程度である。
【0043】
次に、上記構造の電磁弁200の組み立て方法を説明する。
【0044】
まず、電磁部230を説明する。コイルボビン204の外周にコイル205を多数回巻装し、一対の端子221をコイル205の両端に接続し、その状態で、外郭220とコネクタ202とを樹脂でモールド成形する。樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイトを用いる。次いで、コイルボビン204の内周にスリーブ210を介してコア206とステータ211とを配設する。その後、外郭220の外周にヨーク201を配置する。
【0045】
アッパボディ212の上面252にOリング213を配置し、コア206内部にノーマルクローズ圧縮バネ207を配置し、ステータ211内径にプランジャ209を配置した後、ヨーク201の下端をアッパボディ212の係止肩部253に向けてカシメる。カシメは、コネクタ202が位置する部分を除いてヨーク201の全周でカシメを行う。
【0046】
このヨーク201のカシメによって、アッパボディ212の上端がステータ211の下端と当接し、Oリング213はステータ211の下端とアッパボディ212の上面252によって圧縮されて変形する。
【0047】
流路部250は、アッパボディ212の圧力逃がしガイド234に圧力逃がしバネ216と圧力逃がし弁体217を配置する。その後、圧力逃がしガイド234の開口部に圧力逃がし弁座218を配置する。また、ノーマルオープン弁座227上に弁体214を配置し、ノーマルオープン圧縮バネ231をバネ受け214aに当たるように配置する。
【0048】
その状態で、アッパボディ212のフランジ212aとロアボディ219のフランジ219aとを当接させて、両者間を溶着する。
【0049】
本開示によれば、電磁部230を組み立てた後に流路部250を組み立てているので、アッパボディ212以降の部品形状を選択でき、電磁部230の共通化を図ることができる。第2実施形態以降で説明するが、流路部250は、流入通路222やノーマルオープン流出通路223、ノーマルクローズ流出通路228の方向を変更する場合がある。更には、ノーマルオープン流出通路223又はノーマルクローズ流出通路228を廃止して2方弁とする場合もある。このように流路部250が変更されても、電磁部230は同一のものを共通使用することが可能である。
【0050】
本開示によれば、プランジャ209と弁体214とを分離し、プランジャ209は電磁部230に配置し、弁体214を流路部250に配置している。そのため、上記のように電磁部230を組み立てた後に流路部250の組み立てが可能となり、組み立て性も向上する。
【0051】
次に、本開示の電磁弁200の作動を説明する。
【0052】
ノズル100からカメラ131に向けてウォッシャー液を噴出する際には、電磁弁200には通電しない。そのため、弁体214にはノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力がプランジャ209を介してかかり、ノーマルクローズ弁座229を閉じている。
【0053】
ポンプ120の運転を開始すると、配管102を介して高圧のウォッシャー液が電磁弁200に送られる。送られたウォッシャー液は流入通路222に流入し、次いで、連通穴226、弁室225、ノーマルオープン弁座227を介してノーマルオープン流出通路223より流出する。
【0054】
この間、弁体214はノーマルクローズ圧縮バネ207の押圧力とウォッシャー液の圧力を受けてノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。ここで、弁体214の位置に多少のずれが生じたとしても、弁体214のノーマルクローズ弁座229との当接面は球面形状であり、ノーマルクローズ弁座229はテーパ形状であるので、常に中心軸が一致する方向にガイドされる。そのため、弁体214は、ノーマルクローズ弁座229に確実に当接して、十分なシール性能を発揮する。
【0055】
電磁弁200を通過したウォッシャー液は、ノーマルオープン配管102b介してノズル100より噴射される。ウォッシャー液の圧力は400キロパスカル程度まで上がるので、ストップ弁101の解放圧力(10キロパスカル程度)はほとんど問題とならない。
【0056】
カメラ131の洗浄が終了すると、ポンプ120を停止させる。ポンプ停止に伴い配管102内の圧力は大気圧となるので、配管102はストップ弁101によって閉じられる。ストップ弁101が閉じることで、噴射終了の液切れを良くすることができる。かつ、配管102内にウォッシャー液を貯めることができ、次回作動時の応答性を良くすることができる。
【0057】
リアウィンドガラス130にウォッシャー液を噴射する際には、電磁弁200に通電する。通電によりコイル205が励磁し、ヨーク201、コア206、プランジャ209、ステータ211に磁気回路が形成される。コア206のテーパ形状部とプランジャ209のテーパ形状部との間の磁気間隙が磁力によって狭まり、プランジャ209はノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力に反してコア206側に移動する。
【0058】
プランジャ209の移動に伴い、弁体214はノーマルオープン圧縮バネ231によって押し上げられて、ノーマルオープン弁座227を閉じる。なお、電磁弁200の以上の動作は、ポンプ120の運転開始前に行われる。そのため、弁体214にはポンプ120からの高圧ウォッシャー液圧力は加わっておらず、弁体214の移動が妨げられることはない。
【0059】
ここで、プランジャ209は弁体214の球面形状部に離脱可能に当接する構造であるので、弁体214はプランジャ209の移動時に多少ずれる可能性がある。換言すれば、本開示は弁体214の多少のずれを許容する構成である。しかしながら、弁体214は球状をしており、ノーマルオープン弁座227も弁体214に対応したテーパ形状であるので、ノーマルオープン圧縮バネ231の伸長に伴い多少ずれたとしても、ノーマルオープン弁座227を確実にシールすることができる。特に、弁体214はゴム製であるので、自身の弾力性でノーマルオープン弁座227に密着でき、シール性を一層高めることができる。
【0060】
また、ノーマルオープン圧縮バネ231は、弁体214赤道部の円環状のバネ受け214aに当接しているので、常に所定の押圧力を維持することができる。即ち、ノーマルオープン圧縮バネ231が弁体214の球面形状部分に当接したのでは、ノーマルオープン圧縮バネ231の径のばらつきにより弁体214の中心部分に当接した方が周辺部分に当接した場合より、より多く圧縮されることとなる。それに対し、本例では円環状部分にノーマルオープン圧縮バネ231が当接するため、径のばらつきに拘わらず、装着状態でのノーマルオープン圧縮バネ231の長さを一定に保つことができる。
【0061】
電磁弁200に通電して流路の切り替えを行った後に、ポンプ120の運転を開始する。ポンプ120からの高圧のウォッシャー液は流入通路222に流入し、次いで、連通穴226、弁室225、ノーマルクローズ弁座229を介してノーマルクローズ流出通路228より流出する。流出したウォッシャー液は、ノーマルクローズ配管102aからストップ弁101を介してノズル100よりリアウィンドガラス130に噴射される。
【0062】
この間、弁体214をノーマルオープン弁座227側に押し上げる力は、ノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力である。コイル205の励磁力Fsはノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力に抗するのみで、プランジャ209と弁体214とは別体であるので、弁体214の押し上げには働かない。そして、電磁弁200の小型化を図るためには、ノーマルオープン圧縮バネ231を含めてバネの圧縮力やコイル205の励磁力はできる限り小さくする必要がある。
このバネの圧縮力は、例えばノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力が1.6ニュートン程度であり、コイル205の励磁力Fsはノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力との合計がノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力に打ち勝つ大きさで、例えば1.3ニュートン程度である。そして、ノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力はノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力の半分の0.8ニュートン程度である。
【0063】
ここで、弁室225内に流路壁240が形成されておらず、流入通路222から弁室225内に流入したウォッシャー液が直接弁体214に衝突する構成であれば、ウォッシャー液の流れによる圧力を受けて弁体214がノーマルクローズ弁座229側に押し下げられる恐れもある。
【0064】
更に、ポンプ120から送出されるウォッシャー液は毎分2.5リットル程度の流量で、弁室225ではかなり高速で流れている。例えば、毎秒9.5メートル程度の速さで流れる場合もある。加えて、ノーマルクローズ弁座229を通過する際にはノーマルクローズ弁座229と弁体214との間の隙間を通ることになるので、ウォッシャー液の流速は一層早くなる。その結果、弁体214の直下でのウォッシャー液圧力は低下する。このウォッシャー液の圧力低下は弁体214をノーマルクローズ弁座229が閉じる方向に作用する。
【0065】
ノーマルオープン弁座227が閉じている場合には、ノーマルオープン流出通路223は大気圧である。そのため、弁室225内のウォッシャー液圧力PAは、基本的にはノーマルオープン弁座227を閉じる方向に作用する。ただ、ノーマルオープン圧縮バネ231のバネ力が弱いことと、弁体214直下でウォッシャー液圧力が低下することで、弁体214が
図2で下方に移動してノーマルオープン弁座227を開く可能性がある。
【0066】
弁体214が少しでもノーマルオープン弁座227を開くと、弁室225とノーマルオープン流出通路223との圧力バランスが崩れ、ノーマルオープン弁座227をより開く方向に作用する。その結果、ウォッシャー液がノーマルオープン流出通路223に流れることとなる。これでは、意図しない状態でウォッシャー液がカメラ131に吹き付けられることとなる。
【0067】
本開示では、このような意図しないノーマルオープン弁座227の開弁を防ぐ為、弁室225内に流路壁240を設けている。流路壁240は弁体214の流入通路222側の面を覆うように配置されているので、流入通路222から流入したウォッシャー液が直接弁体214と衝突することは無い。その結果、ウォッシャー液の衝突によって弁体214の位置が不安定となって、ノーマルクローズ弁座229側に押し下げられることはない。
【0068】
また、流路壁240は、その基部241が連通穴226と連続しているので、流入通路222から流入したウォッシャー液は流路壁240に沿って弁室225内を底部側に流れる。そして、流路壁240の先端242はノーマルクローズ弁座229の先端229aより更に弁室225の底部側まで伸びているので、流路壁240に沿って弁室225内を底部側に流れたウォッシャー液は、弁室225の底部で反転して、ノーマルクローズ弁座229の外周に沿ってノーマルクローズ弁座229の先端229a側に向かうこととなる。
【0069】
その結果、弁体214に向かうウォッシャー液の流れは弁体214をノーマルクローズ弁座229から引き離す方向となる。従って、ウォッシャー液の流れによって弁体214がノーマルクローズ弁座229側に押し下げられることはない。その結果、ノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力は、弁室225内圧力と弁体214下流の圧力との差圧を上回ればよく、ウォッシャー液の流れに起因する力を考慮して必要以上に大きな圧縮力とする必要もなくなる。
【0070】
ノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力が小さく設定できれば、ノーマルオープン圧縮バネ231に抗して弁体214をノーマルクローズ弁座229に押し付けるノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力も小さく設定できる。そして、ノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力が小さくなれば、ノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力に反してプランジャ209を移動させる励磁力も弱くて良くなる。その結果、コイル205の巻き数も少なくでき、コイルボビン204、ヨーク201、ステータ211等の部材の薄肉化も図れる。これらの効果によって、電磁弁200の小型化が達成できる。
【0071】
特に、電磁弁200は自動車のバックドアの内部のように極狭い空間に配置されることがあり、そのような場合には、電磁弁200の体格を極力小型化することが求められる。本開示によれば、このような小型化のニーズに応えることができる。
【0072】
なお、弁体214がノーマルオープン弁座227に押し付けられている状態では、上述のように、弁体214の球面形状部がノーマルオープン弁座227のテーパ形状に当接するので、軸心が一致する方向にガイドされる。その結果、弁体214はノーマルオープン弁座227に確実に当接して、十分なシール性能を発揮する。
【0073】
リアウィンドガラス130の洗浄が終了すると、ポンプ120の運転を停止し、ノーマルクローズ配管102aの圧力がストップ弁101の解放圧力以下に下がるとストップ弁101も閉じる。かつ、電磁弁200への通電も終了する。コア206とプランジャ209との間に非磁性材製のワッシャが介在しているので、通電終了と共に、ノーマルクローズ圧縮バネ207によりプランジャ209は押し下げられる。
【0074】
ノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力の方がノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力より大きいので、弁体214はノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。ノーマルクローズ弁座229も弁体214の球面形状に対応したテーパ形状であるので、上記の通り、確実にシールすることができる。
【0075】
このように、本開示によれば、弁体214をプランジャ209と離脱可能に当接させるとともに、弁体214を球状にし、ノーマルオープン弁座227及びノーマルクローズ弁座229のテーパ形状内に収まるように配置しているので、弁体214用のガイドを設ける必要がなく、弁体214の組付けが容易となる。即ち、ノーマルオープン圧縮バネ231やウォッシャー液流れの影響で弁体214の軸芯が多少ずれたとしても、弁体214のずれはノーマルオープン弁座227及びノーマルクローズ弁座229の範囲内であるので、ノーマルクローズ圧縮バネ207やウォッシャー液圧力によってノーマルオープン弁座227若しくはノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。そして、ノーマルオープン弁座227及びノーマルクローズ弁座229は共にテーパ形状しているので、テーパ形状によって案内されて、弁体214はその全周でノーマルオープン弁座227若しくはノーマルクローズ弁座229と当接することとなる。
【0076】
ポンプ120の運転が終了した状態で周囲温度が上昇すると、配管102内のウォッシャー液や空気が膨張する。ノーマルオープン配管102bはストップ弁101によって閉じられていても、ノーマルオープン弁座227が開いているため、圧力はポンプ120側に解放されて高くなることはない。しかし、ノーマルクローズ配管102aは、ノーマルクローズ弁座229とストップ弁101の双方が閉じているため、ノーマルクローズ配管102a内にウォッシャー液が閉じ込められることとなる。そのため、ウォッシャー液や空気の膨張によりノーマルクローズ配管102a内の圧力が上昇する恐れがある。
【0077】
圧力がストップ弁101の解放圧力以上となれば、ノーマルクローズ配管102a内のウォッシャー液がノズル100からリアウィンドガラス130に垂れ出る恐れもある。しかしながら、本開示では、圧力逃がし弁233が開いて圧力を解放するので、ウォッシャー液の漏洩は確実に阻止できる。
【0078】
ノーマルクローズ配管102a内の圧力が逃がし圧力より高くなれば、圧力逃がしバネ216の付勢力に打ち勝って圧力逃がし弁体217を持ち上げる。その結果、圧力逃がし弁座218が開き、圧力逃がし通路232が開かれる。ノーマルクローズ流出通路228は、圧力逃がし弁体217の圧力逃がし溝217a、圧力逃がしガイド234を介して、流入通路222と連通する。
【0079】
そして、圧力逃がし弁233の逃がし圧力は、ストップ弁101の解放圧力の半分程度であるので、ストップ弁101が開く前に、圧力逃がし弁233が開いて、ノーマルクローズ配管102a内の圧力上昇を抑えることができる。
【0080】
ここで、圧力逃がし通路232は、閉じ込められたウォッシャー液の圧力を解放するものであるので、圧力逃がし通路232内をウォッシャー液が多量に流れるものではない。従って、圧力逃がし溝217aのように流路断面積が小さい部分があっても、作動に不良は生じない。
図6では圧力逃がし溝217aを3か所形成したが、これは軸芯周りに対称形状としてバランスを図ったものであり、流路断面積では圧力逃がし溝217aの数は1つでよい。
【0081】
また、圧力逃がし弁体217はガイド234によって保持されているので、圧力逃がしバネ216の設定圧が小さくても、圧力逃がし弁座218との間のシールは確実になされる。
【0082】
(第2実施形態)
上述の実施形態は、流出通路としてノーマルクローズ流出通路228(流出通路)とノーマルオープン流出通路223(第2流出通路)とを備える三方弁であったが、第2実施形態は流出通路がノーマルクローズ流出通路228のみのオンオフ二方弁である。
図8に第2実施形態を示すが、ノーマルオープン流出通路223を省いた点を除き、電磁弁200の構造は第1実施形態と同様である。
【0083】
二方弁は、ノーマルクローズ配管102aが複数ある場合に効果的である。ウォッシャー液で洗浄すべきセンサが複数存在するような事例である。二方弁もコイル205の非励磁時には、ノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力で弁体は弁座(ノーマルクローズ弁座229)を閉じている。
【0084】
図8はコイル205の励磁状態を示すが、第1実施形態と同様に、弁体214の流入通路222側の面は流路壁240によって覆われているので、流入通路222から弁室225に流入したウォッシャー液が弁体214に直接衝突することは無い。よって、第1実施形態と同様、電磁弁200の小型化を達成することが可能である。
【0085】
(第3実施形態)
第1実施形態では、流路壁240をアッパボディ212に一体形成していた。そのため、部品点数を増やさないというメリットがあったが、一方で、流路壁240を形成するための金型が複雑となるというデメリットもあった。
【0086】
第3実施形態では、
図9ないし
図11に示すように、流路壁部材243を別部材として形成し、この流路壁部材243をアッパボディ212に組み込むようにしている。即ち、流路壁部材243はアッパボディ212と同様の樹脂材料で成型され、弁体214の外形に対応した円弧状をしており、両側面に係止部244が形成されている。また、アッパボディ212には係止部244が挿入される係止凹部245が形成されていて、係止部244を係止凹部245に嵌入することで、流路壁部材243とアッパボディ212との組付けを行う。
【0087】
弁室225に流入したウォッシャー液が弁体214に直接衝突することが無いよう、流路壁部材243で弁体214を覆うことは第1実施形態の流路壁240と同様である。また、先端242をノーマルクローズ弁座229の先端229aより弁室225の底部側として、底部で反転したウォッシャー液が弁体214側に向かうのも第1実施形態と同様である。
【0088】
(第4実施形態)
図12ないし
図15で示す第4実施形態も第3実施形態と同様、流路壁240を流路壁部材243により形成している。係止部244を係止凹部245に嵌入することで、流路壁部材243とアッパボディ212との組付けを行うことも、第3実施形態と同様である。
【0089】
第4実施形態では、流路壁部材243に連通穴226と対向する衝突部246を設け、流入通路222から連通穴226を介して弁室225に流入したウォッシャー液が、この衝突部246に衝突するようにしている。衝突部246によりウォッシャー液の流れを弱め、ウォッシャー液の流れ方向を調整することが可能である。
【0090】
図15に示すように、衝突部246に衝突したウォッシャー液は左右に分かれて弁室225内を底部側に流れる。このように、流れ方向の調整によってウォッシャー液の流れが一部に集中しないよう分散させることができる。それにより、弁室225内の圧力を均一化することができ、弁体214に加わる弁室225内の圧力と弁体214通過後の圧力との差圧を安定化することができる。
【0091】
差圧が安定することで、ノーマルオープン圧縮バネ231に求められる圧縮力をより正確に設計することができ、ノーマルオープン圧縮バネ231に必要以上の圧縮力を持たせる必要がなくなる。その結果、ノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力やコイル205の励磁力も必要以上に大きくする必要がなくなり、電磁弁200の一層の小型化に繋がる。
【0092】
(第5実施形態)
上述の実施形態では、流路壁240により流入通路222から流入したウォッシャー液が弁体214に直接衝突することを防止していたが、第5実施例では流路壁240の代わりにノーマルクローズ弁座229を用いてウォッシャー液の流れを規制している。
図17に示すように、流入通路222は弁室225のうち弁体214より図中の下方に開口している。より具体的にはノーマルクローズ弁座229を形成する円筒状部229aに対向している。
そのため、流入通路222より弁室225に流入したウォッシャー液は、ノーマルクローズ弁座229の円筒状部229aによって向きが代えられ、弁体214には
図17の下方から上方に向けて流れる。本実施形態によれば、特別な流路壁240を形成することなく、単に流入通路222の位置を変更するのみでウォッシャー液の流れが弁体214に直接衝突することを防ぐことができる。
ただ、流入通路222をアッパボディ212のうち、ロアボディ219に近い部位に形成する結果、圧力逃がし弁233をロアボディ219と流入通路222との間に形成することが困難となる。そこで、本実施形態では、圧力逃がし通路232をノーマルクローズ流出通路228と弁室225とを連通する部位に形成している。
特に、圧力逃がし弁233を、ノーマルクローズ弁座229を挟んで流入通路222と反対側に配置することにより、流入通路222から弁室225に流入したウォッシャー液の流れの影響を圧力逃がし弁233が受けにくい構造としている。なお、流入通路222と反対側とは、180度の位置に限定されるものではなく、流入通路222より流入したウォッシャー液の影響がノーマルクローズ弁座229により緩和される位置であればよい。
この圧力逃がし弁233の圧力逃がし弁体217にも、
図19に示すように、圧力逃がし溝217aが3か所形成されている。圧力逃がし弁体217、圧力逃がし弁座218、及び圧力逃がしバネ216の構成は、上述の第1実施形態と同様である。
(第6実施形態)
第5実施形態では、流入通路222がノーマルクローズ弁座229の円筒状部229aと直接対向していたが、
図20に示すように、斜めに対向するようにしても良い。この第6実施形態では、ノーマルクローズ弁座229が開かれた状態で、流入通路222から弁室225に流入したウォッシャー液は弁室225内を螺旋状に流れて、ノーマルクローズ弁座229と弁体214との隙間からノーマルクローズ流出通路228に流れることとなる。 (他の実施形態)
第3及び第4実施形態では、係止部244と係止凹部245とを圧入としたが、圧入に代え、若しくは圧入と共に接着剤による接着や溶着を行ってもよい。また、流路壁部材243とアッパボディ212との固定は、流路壁部材243の両側のみではなく、両側に代え、若しくは両側と共に流路壁部材243の基部241で行ってもよい。
【0093】
流路壁240は、その先端242がノーマルクローズ弁座229の先端より弁室225の底部側に延びていることが望ましいが、設計上必要がある場合はより短くしてもよい。弁室225に流入したウォッシャー液が弁体214に直接衝突することを無くすだけでも所定の効果は得られる。
【0094】
上述の実施形態では、流路壁240で弁体214の流入通路222側の面を覆っていたが、弁体214の全周を覆うようにしてもよい。この場合、流路壁240を迂回してノーマルクローズ弁座229に向かうウォッシャー液の流れはより安定する。
【0095】
逆に、流路壁240を弁体214の流入通路222側の面の全面を覆うのではなく、一部に開口部を設けてもよい。ウォッシャー液の流れの圧力損失を軽減することができる。一部に開口部を設けても、ウォッシャー液流れの主流が直接弁体214に衝突することは防止できる。
【0096】
上述の実施形態では、アッパボディ212とロアボディ219とを溶着したが、ボルト固定やクリップ止め等他の固定方法を用いても良い。また、アッパボディ212とロアボディ219との接合にフランジ212a及び219aを用いることは効果的であるが、フランジがなくても両者の結合は可能である。
【0097】
上述の実施形態では、流入通路222とノーマルオープン流出通路223とを直線状に配置したが、直交させてもよく、他の角度で交差するようにしてもよい。流入通路222とノーマルクローズ流出通路228との関係も同様である。直交させずに並行配置とすることも可能であり、他の角度で交差させてもよい。
【0098】
上述の実施形態では弁体214を球状としたが、
図16に示すように、ノーマルオープン弁座227と当接する上面214b、及びノーマルクローズ弁座229と当接する下面214cを共に半球状とし、間に円筒部214dを備える形状としてもよい。かつ、間に円筒部214dを形成する実施形態では、円筒部にバネ受け214aを形成しても良い。
【0099】
弁体214の形状を球面とすることは望ましいが、必ずしも球面を有する形状には限定されない。テーパ面としても良く、また、平面とすることも可能である。また、ノーマルクローズ弁座229やノーマルオープン弁座227の形状もテーパ状に限らず、弁体214をガイド可能な円弧形状としてもよい。
【0100】
また、作動流体としてウォッシャー液を用いたが、水やオイル等他の液体を作動粒体としてもよい。
【0101】
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。
【符号の説明】
【0102】
205・・・コイル
206・・・コア
207・・・・ノーマルクローズ圧縮バネ
209・・・プランジャ
214・・・弁体
222・・・流入通路
223・・・ノーマルオープン流出通路
225・・・弁室
227・・・ノーマルオープン弁座
228・・・ノーマルクローズ流出通路
229・・・ノーマルクローズ弁座
231・・・ノーマルオープン圧縮バネ
240・・・流路壁
243・・・流路壁部材