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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109186
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】交差構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20220720BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20220720BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
E04B1/26 Z
E04B5/43 D
E04B9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004573
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(71)【出願人】
【識別番号】510082053
【氏名又は名称】株式会社ストローグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】特許業務法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大氏 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】大倉 憲峰
(57)【要約】
【課題】
異なる方向に伸びる二部材の交差部で双方を結合する場合において、部材側面の陥没を抑制可能な交差構造を提供すること。
【解決手段】
この交差構造は、第一材11と第二材21との二部材の双方に切り欠き15、25を形成し、そこに嵌まり込む受圧具31を用いており、この受圧具31は、第一材11の切り欠き15の内壁面16に接触する第二防護部46と、第二材21の切り欠き25の内壁面24に接触する第一防護部44と、を備えている。そして第一防護部44は、第一材11の側面14と平行に揃え、第二防護部46は、第二材21の側面26と平行に揃える。その結果、第一材11と第二材21との交角を変化させるような荷重が作用した場合、第一防護部44が第二材21の内壁面24を押し返すため、第一材11の側面14が保護され、同様に第二材21の側面26も保護され、その陥没を抑制可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる方向に伸びる第一材(11)と第二材(21)との交差構造であって、
前記第一材(11)および前記第二材(21)のそれぞれには段差状の切り欠き(15、25)を形成し、双方の該切り欠き(15、25)の底面が対向するように該第一材(11)と該第二材(21)を嵌め合わせるほか、双方の該切り欠き(15、25)に嵌まり込む受圧具(31乃至36)を用い、
前記受圧具(31乃至36)は、前記第一材(11)の前記切り欠き(15)の内壁面(16)に接触する第二防護部(46)と、前記第二材(21)の前記切り欠き(25)の内壁面(24)に接触する第一防護部(44)と、を備えており、該第一防護部(44)は、該第一材(11)の側面(14)と平行に揃い、該第二防護部(46)は、該第二材(21)の側面(26)と平行に揃うことを特徴とする交差構造。
【請求項2】
前記受圧具(32乃至36)は、底板(45)と前記第一防護部(44)と前記第二防護部(46)とで構成され、該底板(45)は四角形であり且つ前記切り欠き(15、25)の底面同士の間に挟み込まれ、また該底板(45)において対向する二箇所の側端面からは該第一防護部(44)が突出し、残る二箇所の側端面からは該第二防護部(46)が突出し、該第一防護部(44)と該第二防護部(46)では突出方向が反転していることを特徴とする請求項1記載の交差構造。
【請求項3】
前記受圧具(33乃至34)の前記第一防護部(44)および前記第二防護部(46)は板状であり、且つ該第一防護部(44)および第二防護部(46)には、前記底板(45)から最も離れた位置で折り返しを設けてあり、二枚の板が隙間を隔てて並ぶ構造であることを特徴とする請求項2記載の交差構造。
【請求項4】
互いに異なる方向に伸びる第一材(11)と第二材(21)との交差構造であって、
前記第一材(11)には、その幅方向に伸びる切れ込み(17)を形成してあり、また前記第二材(21)には、その幅方向に伸びる切れ込み(27)を形成してあり、
前記第一材(11)と前記第二材(21)は、双方の前記切れ込み(17、27)が対向するように配置するほか、該第一材(11)と該第二材(21)との間に挟み込まれる受圧具(37)を用い、
前記受圧具(37)は、底板(45)と第一防護部(44)と第二防護部(46)とで構成され、該底板(45)は四角形であり且つ前記第一材(11)と前記第二材(21)との間に挟み込まれ、また該底板(45)において対向する二箇所の側端面からは該第一防護部(44)が突出し、残る二箇所の側端面からは該第二防護部(46)が突出し、該第一防護部(44)と該第二防護部(46)では突出方向が反転しており、該第一防護部(44)は該第一材(11)の前記切れ込み(17)に差し込み、該第二防護部(46)は該第二材(21)の前記切れ込み(27)に差し込むことを特徴とする交差構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種木構造において、異なる方向に伸びる二部材の交差部で双方を結合し、剛性を向上することのできる交差構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築などの各種木構造において、屋根や床など、面状の領域を構築するため、棒状の部材を格子状に並べることがある。この格子状に並ぶ部材同士の交差部では、双方に段差状の切り欠きを形成し、この切り欠き同士を嵌め合わせることで、両部材が緩みなく結合し、木構造の剛性を高めることができる。なお切り欠きの深さを調整することで、交差部の上面を段差なく揃えることもできるが、強度上、切り欠きの深さを浅くすると、交差部の上面に段差を生じることになる。
【0003】
このように、棒状の部材を格子状に並べる場合の一例を図11に示す。この図では、二部材のうち一方を第一材と称しており、他方を第二材と称しており、いずれも矩形断面の棒状の木材である。そして図の上方は、第一材と第二材を格子状に並べた状態を描いてあり、第一材と第二材は直角に交わるほか、第一材と第二材のいずれも、複数本が一定の間隔で平行に配置されている。また第一材と第二材との交差部では、双方に切り欠きを形成してあり、この図では第二材の上に第一材が載るため、第一材については、その下面側に切り欠きを配置してあり、第二材については、その上面側に切り欠きを配置してある。
【0004】
このように、異なる方向に伸びる二部材の交差部において、双方を嵌め合わせて強度を向上する技術は広く普及しており、その例として後記の特許文献が挙げられる。そのうち特許文献1では、狭い壁断面内に配置された二本の筋かいについて、耐震性能の低下を防ぐことのできる筋かい補強具が開示されている。この補強具は、矩形状の基板の四隅付近に取付片を設けた構造であり、各取付片は、基板の長辺の端部に配置され、基板に対して直交方向に突出しているほか、双方の筋かいの交差部には、相欠きを形成してある。そして施工時は、双方の筋かいの相欠きを嵌め合わせるほか、筋かい同士の交差部を跨ぐように補強具を組み込むことになるが、その際、対向する取付片の間には、一方の筋かいを挟み込み、また基板の中央付近には、他方の筋かいを面接触させる。さらに基板や取付片から各筋交いに向けて釘などを打ち込むことで、補強具を介して筋かい同士が強固に連結され、耐震性能の低下を防ぐことができる。
【0005】
特許文献2では、耐震構造物と、これに用いる耐震連結用具が開示されている。この耐震構造物は、四角形に並ぶ枠部材の内部に二本の対角点連結部材をX字状に配置してあり、さらに対角点連結部材同士の交差部分では、粘弾性部材を介して双方を連結しており、その特性を利用して耐震性を向上することができる。また耐震連結用具については、対角点連結部材を嵌め込み可能なコの字状の取付金具や、粘弾性部材などで構成され、二個の取付金具が背中合わせで配置してあり、その間に粘弾性部材が挟み込まれている。なお取付金具は、木ねじなどで対角点連結部材に固定する。
【0006】
特許文献3では、施工作業性を向上することのできる木造建物用筋交い接続金物が開示されている。ここでは、第1筋交いと第2筋交いが同一面内でX字状に交差しているが、第2筋交いは、第1筋交いを境として分断されている。また接続金物を構成するプレート体は、第2筋交いに沿って伸びる帯状であり、分断された第2筋交いを結び付けるように配置され、さらにプレート体から第1筋交いや第2筋交いに向けてビスなどの固定具を差し込むことで、プレート体を介して第1筋交いと第2筋交いが接合される。そしてプレート体の表面には、凸状に隆起した突条部が線状に伸びており、これを第1筋交いと第2筋交いとの境界を跨ぐように配置する。その結果、プレート体の厚さを増やすことなくその強度を高めることができ、重量の増加による施工性の悪化を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-231558号公報
【特許文献2】特開2000-248620号公報
【特許文献3】特開2019-143444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11の左下のように、第一材には、反時計回りに移動させるような荷重を作用させ、また第二材には、時計回りに移動させるような荷重を作用させると、第一材と第二材との交差部では、図の右下のように双方が押し合い、圧縮荷重を受ける箇所(図中に網掛けしてある箇所)が発生する。特に切り欠きの内壁面において、第一材や第二材の側面近傍では、双方が激しく押し合い、圧縮荷重が局地的に増大することになる。ただし、この切り欠きの内壁面については、第一材や第二材の木目方向とほぼ直交しているため、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくい。対して、切り欠きの内壁面と接触する第一材や第二材の側面については、木目方向に沿って展開する面であり、局地的な圧縮荷重によって復元不能な陥没を生じる恐れがある。
【0009】
このように、第一材と第二材との交角を変化させるような過大な荷重が作用すると、第一材と第二材との交差部で復元不能な陥没を生じる恐れがある。そして、実際に地震などに遭遇して復元不能な陥没を生じた場合、以降、第一材と第二材との結合が緩み、第一材と第二材で構成される面状の領域の剛性が低下し、建築物などの木構造の強度を維持できなくなる危険性がある。
【0010】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、異なる方向に伸びる二部材の交差部で双方を結合する場合において、部材側面の陥没を抑制可能な交差構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、互いに異なる方向に伸びる第一材と第二材との交差構造であって、前記第一材および前記第二材のそれぞれには段差状の切り欠きを形成し、双方の該切り欠きの底面が対向するように該第一材と該第二材を嵌め合わせるほか、双方の該切り欠きに嵌まり込む受圧具を用い、前記受圧具は、前記第一材の前記切り欠きの内壁面に接触する第二防護部と、前記第二材の前記切り欠きの内壁面に接触する第一防護部と、を備えており、該第一防護部は、該第一材の側面と平行に揃い、該第二防護部は、該第二材の側面と平行に揃うことを特徴とする。
【0012】
本発明による交差構造は、第一材および第二材と称する二本の部材が交差する箇所で用い、この箇所では双方に切り欠きを形成してあり、この切り欠き同士が互いに嵌まり合うことで、第一材と第二材が噛み合うように結合される。ここで第一材および第二材は、棒状の木材を角断面に削り出したものを想定している。また切り欠きは、第一材および第二材の表面の一部を段差状に削り落としたものだが、一般的なホゾのような周囲が閉じた形状(穴状)ではなく、その深さ方向に直交する方向(第一材や第二材の幅方向)については、第一材や第二材の側面に到達するものとする。さらにこの切り欠きに関し、第一材および第二材の表面(削り始めの面)から最も深い位置を底面と称し、この底面に隣接する壁状の領域を内壁面と称するものとする。内壁面は、第一材や第二材の長手方向と直交するため、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止める役割を担うことができる。
【0013】
第一材の切り欠きに関し、対向する内壁面の間隔は、第二材を緩みなく嵌め込み可能な大きさとしてあり、第二材の内壁面の間隔に関しても、同様に第一材を緩みなく嵌め込み可能な大きさとしてある。また第一材と第二材を嵌め合わせる際は、まず双方の切り欠きの底面を対向するように配置し、次にこの底面同士が接触するよう、双方の切り欠きを嵌め合わせ、それぞれの内壁面で相手方の側面を挟み込むと、第一材と第二材との嵌め合わせが完了する。なお嵌め合わせが完了した際、第一材と第二材の双方の上面は、段差なく同一面上に揃う場合もあれば、段差を生じる場合もあるが、この関係は切り欠きの深さによって決定される。そのほか第一材と第二材との交差角は、90度に限定されるものではない。
【0014】
受圧具は、第一材と第二材との境界に挟み込む金属部品であり、第一材と第二材の双方の切り欠きの中に緩みなく嵌まり込む大きさとしてある。したがって本発明では、切り欠きの底面同士が実際に接触することはなく、その間に受圧具が挟み込まれる。そして受圧具は、第一防護部および第二防護部と称する部位を有しており、そのうち第一防護部は、第二材の切り欠きの内壁面に接触する部位である。そのため第一防護部は、受圧具の中心を挟んで対向するように配置される。また第二防護部は、第一材の切り欠きの内壁面に接触する部位であり、これについても、受圧具の中心を挟んで対向するように配置される。
【0015】
第一防護部は、第二材の内壁面に接触するため、必然的に第一材の側面と平行に揃うことになり、第一材の側面を保護する役割を担う。また第二防護部は、第一材の内壁面に接触するため、必然的に第二材の側面と平行に揃うことになり、第二材の側面を保護する役割を担う。このように、第一防護部と第二防護部が存在することで、第一材や第二材の側面の陥没を抑制することができる。なお受圧具の形状は様々だが、仮に単純な四角形の板とする場合、その各側端面のうち、対向する二側端面が第一防護部になり、残る二側端面が第二防護部になる。
【0016】
第二材の内壁面は、第一材の側面に接触するほか、必然的に第一防護部とも接触する。したがって、第一材と第二材との交角を変化させるような荷重が作用し、第二材の内壁面が第一材の側面を押圧する際は、第一防護部も一体的に押圧することになる。この際、受圧具は、第一材によって拘束(第二防護部が第一材に嵌まり込み)されているため、第二材と一体で変位することはない。そのため受圧具は、第二材からの押圧に対抗し、第二材の内壁面を押し返すことになり、必然的に第一材の側面に作用する圧縮荷重が緩和され、その陥没を抑制することができる。
【0017】
さらに第一材の内壁面は、第二材の側面に接触するほか、必然的に第二防護部とも接触する。したがって、第一材と第二材との交角を変化させるような荷重が作用し、第一材の内壁面が第二材の側面を押圧する際は、第二防護部も一体的に押圧することになる。この際、受圧具は、第二材によって拘束(第一防護部が第二材に嵌まり込み)されているため、第一材と一体で変位することはない。そのため受圧具は、第一材からの押圧に対抗し、第一材の内壁面を押し返すことになり、必然的に第二材の側面に作用する圧縮荷重が緩和され、その陥没を抑制することができる。
【0018】
このように、第一材と第二材の双方に切り欠きを形成し、この切り欠き同士を嵌め合わせるほか、切り欠きの中に受圧具を嵌め込む交差構造において、受圧具には、第一材の側面を保護する第一防護部と、第二材の側面を保護する第二防護部を設けることで、第一材と第二材との交角を変化させるような荷重が作用した場合でも、第一防護部に作用した圧縮荷重は、第二防護部で受け止められ、その反力によって第二材の内壁面を押し返し、第一材の側面を保護することができる。同様に、第二防護部に作用した圧縮荷重は、第一防護部で受け止められ、その反力によって第一材の内壁面を押し返し、第二材の側面を保護することができる。
【0019】
請求項2記載の発明は、受圧具の形状例を示すもので、受圧具は、底板と第一防護部と第二防護部とで構成され、底板は四角形であり且つ切り欠きの底面同士の間に挟み込まれ、また底板において対向する二箇所の側端面からは第一防護部が突出し、残る二箇所の側端面からは第二防護部が突出し、第一防護部と第二防護部では、突出方向が反転していることを特徴とする。この受圧具は、四角形の底板の側端面から第一防護部と第二防護部が突出した形状であり、第一防護部や第二防護部は、底板に対して概ね直交方向に突出しているが、第一防護部と第二防護部では、突出方向が反転している。そのほか、底板と第一防護部と第二防護部のいずれも、金属板で形成される。
【0020】
底板を挟んで対向するように配置される第一防護部は、第二材の切り欠きの内壁面を覆うように嵌まり込み、さらに第一防護部の内側に第一材が嵌まり込む。したがって、第一材の側面と第二材の内壁面は、直に接触することなく、その間に第一防護部が挟み込まれる。また第二防護部については、第一材の切り欠きの内壁面に覆うように嵌まり込み、その内側に第二材が嵌まり込む。そのため、第二材の側面と第一材の内壁面についても、直に接触することなく、その間に第二防護部が挟み込まれる。なお、第一材と第二材が直角に交差することなく交角を有する場合、底板はこれに対応するため、矩形状ではなく、平行四辺形やひし形になる。
【0021】
このように受圧具を底板と第一防護部と第二防護部で構成し、底板の側端面から第一防護部と第二防護部を逆方向に突出させることで、第一材の側面と第二材の内壁面が直に接触することを防止できるほか、第二材の側面と第一材の内壁面が直に接触することも防止でき、応力の集中が緩和されるため、第一材および第二材の側面をより確実に保護することができる。
【0022】
請求項3記載の発明は、底板と第一防護部と第二防護部で構成される受圧具に関するもので、受圧具の第一防護部および第二防護部は板状であり、且つ第一防護部および第二防護部には、底板から最も離れた位置で折り返しを設けてあり、二枚の板が隙間を隔てて並ぶ構造であることを特徴とする。
【0023】
このように第一防護部と第二防護部を単純な平面状とすることなく、その途中で折り返しを設けることで、第一防護部と第二防護部は板バネのような形状になり、これらが第一材や第二材で挟み込まれた際は、弾性変形による反力を生じることになる。その結果、切り欠きなどの加工に誤差が生じた場合でも、それを吸収して緩みを防止できるほか、第一材や第二材の経年変形による緩みも防止できる。なお、第一防護部や第二防護部の折り返し箇所から先に伸びる部分については、受圧具の中心側に向けることもあれば、外側に向けることもある。また板バネとしての機能を発揮できるよう、折り返しによって並ぶ二枚の板は、密着させることなく隙間を確保する。
【0024】
請求項4記載の発明は、互いに異なる方向に伸びる第一材と第二材との交差構造であって、前記第一材には、その幅方向に伸びる切れ込みを形成してあり、また前記第二材には、その幅方向に伸びる切れ込みを形成してあり、前記第一材と前記第二材は、双方の前記切れ込みが対向するように配置するほか、該第一材と該第二材との間に挟み込まれる受圧具を用い、前記受圧具は、底板と第一防護部と第二防護部とで構成され、該底板は四角形であり且つ前記第一材と前記第二材との間に挟み込まれ、また該底板において対向する二箇所の側端面からは該第一防護部が突出し、残る二箇所の側端面からは該第二防護部が突出し、該第一防護部と該第二防護部では突出方向が反転しており、該第一防護部は該第一材の前記切れ込みに差し込み、該第二防護部は該第二材の前記切れ込みに差し込むことを特徴とする。
【0025】
この発明では、第一材および第二材のいずれも、これまでの各請求項のような切り欠きを形成しないため、第一材と第二材が互いに嵌まり合うことはなく、双方の表面同士が向かい合う状態で第一材と第二材が交差することなる。また、これまでの「切り欠き」の代替として「切れ込み」を形成する。この切れ込みは、第一材と第二材のいずれも、第一材や第二材の長手方向に対して直交する方向(第一材や第二材の幅方向)に伸びる細い線状の溝であり、その幅は、これまでの切り欠きと比べ、はるかに狭い。
【0026】
さらに第一材と第二材との交差部には、受圧具を挟み込む。この受圧具は、底板と第一防護部と第二防護部で構成され、底板は四角形であり、しかも底板は、第一材と第二材との境界に挟み込まれる。また底板の各側端面において、対向する二箇所からは、第一材の切れ込みに差し込む第一防護部が突出しており、残る二箇所の側端面からは、第二材の切れ込みに差し込む第二防護部が突出している。なお第一防護部と第二防護部は、いずれも底板に対して概ね直交方向に突出しているが、その目的から、第一防護部と第二防護部では、突出方向が反転することになる。そのほか第一防護部や第二防護部は板状であり、その厚さについては、切れ込みの幅と同等とする。その結果、第一防護部は第一材と接触し、第二防護部は第二材と接触し、荷重の伝達が実現する。ただし施工性との兼ね合いから、切れ込みの幅については、最低限の余裕を確保することもある。
【0027】
切れ込みは前記のように、第一材や第二材の長手方向に対して直交する方向に伸びている。そのため第一材と第一防護部との接触面は、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止めることができる。同様に、第二材と第二防護部との接触面についても、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止めることができる。しかもここでの受圧具は、第一材や第二材の側面と接触することがなく、必然的にこれらの側面を陥没させることもない。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の発明のように、第一材と第二材のそれぞれに形成した切り欠きを嵌め合わせる交差構造において、第一材と第二材との境界に挟み込む受圧具には、第二材に緩みなく嵌まり込む第一防護部と、第一材に緩みなく嵌まり込む第二防護部と、を設けることで、第一材と第二材との交角を変化させるような荷重が作用した場合でも、第一防護部に作用した圧縮荷重は第二防護部で受け止められ、その反力によって第二材の内壁面を押し返すため、第一材の側面を保護することができる。同様に、第二防護部に作用した圧縮荷重は第一防護部で受け止められ、その反力によって第一材の内壁面を押し返し、第二材の側面を保護することができる。そのため第一材や第二材の側面の陥没が抑制され、第一材と第二材との結合に緩みが生じることを防ぎ、地震などで過大な外力を受けた後も、木構造の強度を維持することができる。
【0029】
請求項2記載の発明のように、受圧具を底板と第一防護部と第二防護部で構成し、底板の側端面から第一防護部と第二防護部を逆方向に突出させることで、第一材の側面と第二材の内壁面が直に接触することを防止できるほか、第二材の側面と第一材の内壁面が直に接触することも防止でき、第一材と第二材の側面をより確実に保護することができる。また、第一防護部と第二防護部の面積が増大するため、荷重が広範囲に分散され、応力の集中を緩和することができる。
【0030】
請求項3記載の発明のように、底板と第一防護部と第二防護部で構成される受圧具について、第一防護部および第二防護部には、底板から最も離れた位置で折り返しを設けることで、第一防護部と第二防護部に板バネのような機能を付加することができる。その結果、切り欠きなどの加工に誤差があった場合でも、それを吸収して緩みを防止できるほか、第一材や第二材の経年変形による緩みも防止できる。また第一防護部と第二防護部を意図的に弾性変形させるこことで、これらが第一材や第二材を常時押圧し、交差構造の剛性と高めることができる。
【0031】
請求項4記載の発明のように、第一材と第二材の双方に切れ込みを形成するほか、第一材と第二材との交差部に挟み込む受圧具は、底板と第一防護部と第二防護部で構成し、この第一防護部を第一材の切れ込みに差し込み、また第二防護部を第二材の切れ込みに差し込むことで、第一材と第一防護部との接触面は、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止めることができる。同様に、第二材と第二防護部との接触面についても、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止めることができる。さらに受圧具は、第一材や第二材の側面と接触することがない。そのため、これらの側面の陥没を引き起こすこともなく、第一材と第二材との結合に緩みが生じることを防ぎ、地震などで過大な外力を受けた後も、木構造の強度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による交差構造において、最も基本的な形態を示す斜視図であり、ここでの受圧具は、金属製の矩形状の板を用いている。
図2図1とは異なる構成の受圧具を用いた交差構造を示す斜視図であり、この受圧具は、底板と第一防護部と第二防護部で構成されている。
図3】第二材の上下に第一材が配置され、それぞれの境界に受圧具を組み込む場合を示す斜視図である。
図4図3の第一材と第二材を一体化する過程を示す斜視図であり、図の上方は、第二材の上下に受圧具を組み込んだ状態で、図の下方は、第一材と第二材を一体化した状態である。
図5】受圧具の第一防護部および第二防護部を外側に折り返した場合を示す斜視図である。
図6図5とは逆に、受圧具の第一防護部および第二防護部を内側に折り返した場合を示す斜視図である。
図7】受圧具の第一防護部と第二防護部を湾曲させた場合を示す斜視図である。
図8】第一材と第二材が丁字状に交差する場合を示す斜視図であり、第二材については、その端部に切り欠きを形成してあり、これに対応した受圧具を用いている。
図9】第一材と第二材が互いに嵌まり合うことなく交差する箇所において、受圧具を用いて双方を結合する交差構造を示す斜視図である。
図10図9の交差構造を一部だけ変更し、第一材と第二材が丁字状に交差する場合を示す斜視図である。
図11】棒状の部材を格子状に並べる場合について、従来技術の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明による交差構造において、最も基本的な形態を示している。この図では、第一材11および第二材21と称する棒状の木材を水平面に沿って格子状に並べ、面状の領域を構築することを想定しており、第一材11と第二材21は直交するように配置するほか、双方の交差部では、互いに切り欠き15、25を形成してあり、これらを嵌め合わせることで、第一材11と第二材21が強固に結合される。なおこの図では、第一材11と第二材21の横断面を同一形状としてあり、しかも切り欠き15、25の深さを調整してあり、双方を嵌め合わせた際、第一材11と第二材21の上面および下面は、段差なく同一面上に揃う。
【0034】
第一材11の切り欠き15は、その下面側から矩形状に削り込んだもので、その両端は、第一材11の側面14に到達しているため、外部に開いた構成となっており、ここに第二材21が嵌まり込む。そしてこの切り欠き15において、第一材11の下面から最も離れた奥面を「底面」と称するほか、この「底面」と第一材11の下面を結ぶ垂直面を内壁面16と称するものとする。内壁面16は、切り欠き15を挟んで対向するように配置され、この内壁面16同士の間隔は、第二材21の幅と等しくしてある。
【0035】
第二材21の切り欠き25は、その上面側から矩形状に削り込んだもので、その両端は、第二材21の側面26に到達しているため、外部に開いた構成となっており、ここに第一材11が嵌まり込む。そしてこの切り欠き25において、第二材21の上面から最も離れた奥面を「底面」と称するほか、この「底面」と第二材21の上面を結ぶ垂直面を内壁面24と称するものとする。内壁面24は、切り欠き25を挟んで対向するように配置され、この内壁面24同士の間隔は、第一材11の幅と等しくしてある。したがって双方の切り欠き15、25を嵌め合わせると、第一材11と第二材21は緩みなく噛み合って結合される。
【0036】
受圧具31は、金属製の矩形状の板であり、第一材11と第二材21の双方の切り欠き15、25の底面の間に挟み込まれる。しかも受圧具31は、第一材11の内壁面16同士の間に緩みなく挟み込まれるほか、第二材21の内壁面24同士の間にも緩みなく挟み込まれる大きさとしてある。そして受圧具31の側端面のうち、第一材11の内壁面16と対向する方を第二防護部46と称し、第二材21の内壁面24と対向する方を第一防護部44と称するものとする。
【0037】
第一材11と第二材21を嵌め合わせる際は、図の右中程のように、まず受圧具31を第二材21の切り欠き25の底面に嵌め込む。その際、受圧具31の第一防護部44は、内壁面24を押圧するため、受圧具31は第二材21に固定された状態になる。さらに受圧具31の第二防護部46は、第二材21の各側面26と段差なく並ぶものとする。その後、第二材21の上方から第一材11を接近させ、双方の切り欠き15、25を嵌め合わせると、図の右下のように、第一材11と第二材21が段差なく並ぶほか、第一材11は第二材21で拘束され、第二材21は第一材11で拘束され、緩みのない交差構造が構築される。
【0038】
第一材11と第二材21との嵌め合わせが完了した後、第二材21の内壁面24は、第一材11の側面14に接触するほか、必然的に第一防護部44とも接触する。そのため、第一材11と第二材21との交角を変化させるような荷重が作用し、第二材21の内壁面24が第一材11の側面14を押圧する際は、第一防護部44も一体的に押圧することになる。その際、受圧具31は、第一材11によって拘束(第二防護部46が第一材11に嵌まり込んでいる)されているため、第二材21と一体で変位することはない。したがって受圧具31は、第二材21からの押圧に対抗し、第二材21の内壁面24を押し返すことになる。その結果、第一材11の側面14に作用する圧縮荷重が緩和され、その陥没を抑制することができる。
【0039】
さらに第一材11の内壁面16は、第二材21の側面26に接触するほか、必然的に第二防護部46とも接触する。そのため、第一材11と第二材21との交角を変化させるような荷重が作用し、第一材11の内壁面16が第二材21の側面26を押圧する際は、第二防護部46も一体的に押圧することになる。その際、受圧具31は、第二材21によって拘束(第一防護部44が第二材21に嵌まり込んでいる)されているため、第一材11と一体で変位することはない。したがって受圧具31は、第一材11からの押圧に対抗し、第一材11の内壁面16を押し返すことになる。その結果、第二材21の側面26に作用する圧縮荷重が緩和され、その陥没を抑制することができる。
【0040】
このように受圧具31を用いることで、第一材11と第二材21との交差部において、これらの側面14、26に作用する圧縮荷重が緩和され、この面の陥没による第一材11と第二材21との緩みを抑制できる。なおこのような効果を発揮するには、第一防護部44や第二防護部46の面積を増大させるべきであり、この図のような板状の受圧具31を用いる場合、その厚さを可能な範囲で増大させることが望ましい。
【0041】
図2は、図1とは異なる構成の受圧具32を用いた交差構造を示している。この受圧具32は、金属板を折り曲げて形成したもので、底板45と第一防護部44と第二防護部46で構成され、底板45は四角形の平面状の板であり、先の図1の受圧具31と同様、双方の切り欠き15、25の底面で挟み込まれる。また第一防護部44と第二防護部46は、底板45の側端面から直角方向に突出した板状のもので、第一防護部44については、底板45の各側端面のうち、対向する二面から上方に伸びており、第二防護部46については、第一防護部44と直交する二面から下方に伸びている。このように第一防護部44と第二防護部46では、突出方向が反転している。
【0042】
この受圧具32を用いる場合についても、第一材11や第二材21に形成する切り欠き15、25は、先の図1と全く同じであり、その内側の垂直面が内壁面16、24となる。そして図2の右中程のように、第二材21の切り欠き25に受圧具32を嵌め込み、その底板45を切り欠き25の底面に接触させると、対向する第二防護部46の間で第二材21の側面26が挟み込まれる。また第二材21の内壁面24同士の間には、第一防護部44が挟み込まれる。その結果、受圧具32は第二材21と一体化した状態になる。
【0043】
その後、第二材21の上方に第一材11を配置し、双方の切り欠き15、25を嵌め合わせると、図の右下のように、第一材11と第二材21が緩みなく結合する。この状態では、対向する第一防護部44の間に第一材11の側面14が挟み込まれ、第一防護部44により、第一材11の側面14に作用する荷重は広範囲に分散され、その陥没を抑制することができる。また第一材11の内壁面16は、第二防護部46を介して第二材21の側面26に接触する。そのため、第二材21の側面26に作用する荷重は広範囲に分散され、その陥没を抑制することができる。
【0044】
第一材11と第二材21の嵌め合わせが完了した後、第一材11と第二材21との交角を変化させるような荷重が作用した際は、第二材21の内壁面24が第一防護部44を押圧し、さらに第一材11の側面14を押圧することになる。しかしこの際、受圧具32は、第一材11によって拘束(第二防護部46が第一材11の内壁面16に嵌まり込んでいる)されているため、第二材21と一体で変位することはない。したがって受圧具32は、第二材21からの押圧に対抗し、第二材21の内壁面24を押し返すことになる。その結果、第一材11の側面14に作用する圧縮荷重が緩和され、その陥没を抑制することができる。これとは逆に、第一材11の内壁面16が第二防護部46を押圧し、さらに第二材21の側面26を押圧する場合についても、同様の効果が発揮され、第二材21の側面26の陥没を抑制することができる。
【0045】
この図では、第一材11と第二材21の嵌め合わせを完了させた際、双方の上面や下面に段差を生じている。このように切り欠き15、25の深さなどにより、第一材11と第二材21との配置が変化する。またこの図では、第一防護部44が第一材11の側面14を挟み込むほか、第二防護部46が第二材21の側面26を挟み込むため、受圧具32の一部が外部に露出する。
【0046】
図3は、第二材21の上下に第一材11が配置され、それぞれの境界に受圧具32を組み込む場合を示している。ここでの第一材11と第二材21は、いずれも同一の横断面であり、しかも上下方向に長い矩形断面となっている。さらに第二材21については、その上下の両方に受圧具32が配置されるため、上面と下面の両方に切り欠き25を形成してある。また上方に配置される第一材11については、その下面に切り欠き15を形成してあり、逆に下方に配置される第一材11については、その上面に切り欠き15を形成してある。そのほか、第二材21の上方に配置される受圧具32は、その第一防護部44が上方に位置しており、第二材21の下方に配置される受圧具32は、その第一防護部44が下方に位置している。
【0047】
さらにこの図では、第一材11と第二材21のいずれも、その側面14、26から第一防護部44や第二防護部46が突出することを防ぐため、埋め溝19、29を形成してある。埋め溝19、29は、対向する内壁面16、24の間を結ぶ範囲において、切り欠き15、25の底面よりも奥側の区間に形成され、その深さ(側面14、26からの深さ)は、第一防護部44や第二防護部46の厚さと一致させる。なお埋め溝19、29の底面(側面14、26と平行に揃う面)については、第一材11や第二材21の側面14、26に含まれるものとする。したがって第一防護部44は、第一材11の側面14を緩みなく挟み込み、同様に第二防護部46は、第二材21の側面26を緩みなく挟み込むことになる。
【0048】
図4は、図3の第一材11と第二材21を一体化する過程を示しており、図の上方は、第二材21の上下に受圧具32を組み込んだ状態で、図の下方は、第一材11と第二材21を一体化した状態である。この図の上方のように、第二材21に受圧具32を組み込んだ際、その第二防護部46は、埋め溝29に緩みなく嵌まり込み、第二防護部46の外面は、第二材21の側面26と段差なく並ぶ。そのため第二防護部46は、第一材11の内壁面16と接触することができる。また第一防護部44は、対向する内壁面24の間に挟み込まれており、その内側では第一材11の埋め溝19が挟み込まれる。
【0049】
図4の下方のように、第一材11と第二材21を一体化すると、第二材21の上下に第一材11が配置され、しかも上下の第一材11は、一定の隙間が確保され、平行に揃っている。そのほかこの図では、第一材11との第二材21の双方に埋め溝19、29を形成してあり、受圧具32が完全に埋め込まれる。そのため美観が向上するほか、受圧具32による熱伝導を防ぐことができる。
【0050】
図5は、受圧具33の第一防護部44および第二防護部46を外側に折り返した場合を示している。この受圧具33は、先の図2などに描いたものと同様、底板45の側端面から第一防護部44と第二防護部46が突出した構成だが、第一防護部44と第二防護部46は単純な平面状ではなく、底板45から最も離れた位置でU字状の折り返しを設け、その先の部分を底板45の方に向けている。なおこの折り返しは、第一防護部44や第二防護部46の付け根に対して外側を向いており、第一防護部44や第二防護部46の先端付近では、二枚の板が隙間を隔てて並び、板バネのように弾性変形を生じることになる。
【0051】
その結果、図の右中程のように、第二材21に受圧具33を組み込んだ際、第一防護部44は第二材21の内壁面24によって押圧され、内側に向けて弾性変形することになる。その後、対向する第一防護部44の間に第一材11が嵌め込まれると、第一防護部44の先端付近の折り返し箇所が押し潰されるように弾性変形し、その反力で埋め溝19と内壁面24を押し返すため、緩みを強力に防ぐことができる。また第二防護部46についても、同様に埋め溝29と内壁面16を押し返し、緩みを強力に防ぐことができる。
【0052】
図6は、図5とは逆に、受圧具34の第一防護部44および第二防護部46を内側に折り返した場合を示している。このように第一防護部44や第二防護部46について、底板45から最も離れた位置で折り返しを設ける場合、その方向は内外のいずれでも構わない。ただしこの図では、受圧具34を第一材11や第二材21に組み込む際、第一防護部44や第二防護部46の先端の半円形状がガイドとして機能するため、第一防護部44や第二防護部46が自然に押し広げられ、無理なく受圧具34を所定の位置まで移動させることができる。
【0053】
図7は、受圧具35の第一防護部44と第二防護部46を湾曲させた場合を示している。この図の第一材11や第二材21は先の図2と全く同じ物だが、受圧具35の第一防護部44と第二防護部46については、その根元から先端に向かうに連れ、外側に湾曲させた構成としてある。したがって図の右上のように、受圧具35を第二材21に組み込むと、第一防護部44は内壁面24によって押圧され、内側に向けて弾性変形するため、受圧具35の緩みを強力に防ぐことができる。同様に、第二防護部46は第一材11の内壁面16によって押圧され、受圧具35の緩みを強力に防ぐことができる。
【0054】
第一材11と第二材21との交角を変化させるような荷重が作用した際、切り欠き15、25の内壁面16、24には圧縮荷重が作用するが、この圧縮荷重が最も大きくなる箇所は、内壁面16、24において、第一材11や第二材21の側面14、26近傍であり、内壁面16、24の中央付近では、大きな荷重が作用することはない。そこで、内壁面16、24と接触する第二防護部46や第一防護部44の中央付近については、その構成の簡素化が可能であり、この図の受圧具35では、第一防護部44および第二防護部46の中央付近に窓48を設けてある。その結果、受圧具35の軽量化などが実現する。
【0055】
図8は、第一材11と第二材21が丁字状に交差する場合を示しており、第二材21については、その端部に切り欠き25を形成してあり、これに対応した受圧具36を用いている。この図の第一材11は、これまでの各図と同様、その中間部に切り欠き15を形成してあるが、第二材21については、その端面に切り欠き25が露出しており、切り欠き25の内壁面24は一面だけになる。また受圧具36は、先の図2などのものと同様、底板45と第一防護部44と第二防護部46で構成されるが、これらに加え、対向する第二防護部46の一端側同士を結ぶように端面防護部49を設けてある。端面防護部49は、第一防護部44と段差なく並ぶが、底板45よりも上方が第一防護部44になり、底板45よりも下方が端面防護部49になる。
【0056】
図の右上のように、第二材21の切り欠き25に受圧具36を組み込むと、その第二防護部46は第二材21の側面26を挟み込むほか、その端面防護部49は第二材21の端面に接触し、さらに第一防護部44は、切り欠き25の内壁面24に接触する。なおこの状態では、受圧具36を固定できないため、釘類や接着剤などを用い、受圧具36を第二材21に取り付けることがある。そしてこの後、第二材21の切り欠き25に第一材11の切り欠き15を嵌め込むと、図の右中程のように、第一材11と第二材21は丁字状に交差した状態で結合される。この場合においても、先の図2などと同様、第一防護部44や第二防護部46により、第一材11や第二材の21の側面14、26に作用する圧縮荷重が緩和され、その陥没を抑制することができる。
【0057】
図9は、第一材11と第二材21が互いに嵌まり合うことなく交差する箇所において、受圧具37を用いて双方を結合する交差構造を示している。この受圧具37は、先の図2などと同様、底板45と第一防護部44と第二防護部46で構成され、四角形の底板45の各側端面のうち、対向する二箇所からは第一防護部44が突出しており、残る二箇所からは第二防護部46が突出しており、しかも第一防護部44と第二防護部46では、突出方向が反転している。また第一材11と第二材21との交差部では、第一材11の下面と第二材21の上面がわずかな隙間を隔てて向かい合うことになり、そこに受圧具37を組み込むため、第一材11の下面には二列の切れ込み17を形成し、第二材21の上面にも二列の切れ込み27を形成する。なお切れ込み17は、第一材11の長手方向に対して直交する方向に伸びており、その両端は第一材11の側面14に露出しており、同様に切れ込み27は、第二材21の長手方向に対して直交する方向に伸びており、その両端は第二材21の側面26に露出している。
【0058】
図の右上のように、受圧具37の第二防護部46を第二材21の切れ込み27に差し込むと、受圧具37の底板45は、第二材21の上面に載った状態となる。その後、第一材11を第二材21の上方に配置し、第一材11の切れ込み17に第一防護部44を差し込むと、図の右下のように、受圧具37を介して第一材11と第二材21が結合した交差構造が完成する。なお第一材11の切れ込み17の幅は、第一防護部44の厚さと同等としてあり、第二材21の切れ込み27の幅は、第二防護部46の厚さと同等としてある。その結果、第一防護部44は第一材11と接触し、第二防護部46は第二材21と接触し、荷重の伝達が実現する。
【0059】
第一材11と第一防護部44との接触面は、第一材11の長手方向に対して直交している。そのためこの接触面は、通常の木口面と同様、圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止めることができる。また第二材21についても同様の構成となるため、やはり圧縮荷重による変形を生じにくく、荷重を受け止めることができる。さらに受圧具37は、第一材11や第二材21の側面14、26と接触することがない。その結果、これらの側面14、26の陥没を引き起こすこともなく、第一材11と第二材21との結合に緩みが生じることを防ぐ。
【0060】
図10は、図9の交差構造を一部だけ変更し、第一材11と第二材21が丁字状に交差する場合を示している。この図の第一材11は、先の図9と同様、その中間部に二列の切れ込み17を形成してあるが、第二材21については、その端部で第一材11と交差するため、切れ込み27を一列だけとしてある。なお、この切れ込み27から第二材21の端面までの距離は、受圧具37の第二防護部46の間隔と等しくしてある。そのため図の右上のように、受圧具37を第二材21の端部上面に載せると、一方の第二防護部46は切れ込み27に差し込まれ、他方の第二防護部46は第二材21の端面に接触し、第二防護部46によって第二材21が挟み込まれた状態になる。
【0061】
その後、第一材11を第二材21の上方に配置し、第一材11の切れ込み17に第一防護部44を差し込むと、図の右下のように、受圧具37を介して第一材11と第二材21が丁字状に結合した交差構造が完成する。ここでも受圧具37は、第一材11や第二材21の側面14、26と接触することがなく、これらの陥没を引き起こすこともない。なお本発明は、これまでの各図に示した形態に限定される訳ではなく、各図に示した技術的特徴を可能な範囲で組み合わせ、様々な形態を構築可能である。
【符号の説明】
【0062】
11 第一材
14 側面
15 切り欠き
16 内壁面
17 切れ込み
19 埋め溝
21 第二材
24 内壁面
25 切り欠き
26 側面
27 切れ込み
29 埋め溝
31 受圧具(平面状のもの)
32 受圧具(底板から第一防護部と第二防護部が突出しているもの)
33 受圧具(第一防護部と第二防護部に外向きの折り返しを設けてあるもの)
34 受圧具(第一防護部と第二防護部に内向きの折り返しを設けてあるもの)
35 受圧具(第一防護部と第二防護部が湾曲しているもの)
36 受圧具(端面防護部を有するもの)
37 受圧具(一方材や他方材の切れ込みに差し込まれるもの)
44 第一防護部
45 底板
46 第二防護部
48 窓
49 端面防護部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11