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▶ スミノエ テイジン テクノ株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109196
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】自動車用内装布帛
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021032131
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】510206039
【氏名又は名称】スミノエ テイジン テクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】真川 和久
【テーマコード(参考)】
4L048
【Fターム(参考)】
4L048AA20
4L048AA56
4L048AB06
4L048AB09
4L048AB11
4L048DA25
(57)【要約】
【課題】本発明は、環境負荷の少ない製品、すなわち再生材料の使用率による環境性能評価に優れるのはもちろんのこと従来のフッ素系樹脂、親水性樹脂、バインダー樹脂や微粒子コーティングによる加工を施さなくても、比較的明度が高い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り汚れが目立ちにくく、しかも防汚耐久性に優れ、耐摩耗性にも優れた、良好な触感の自動車用内装布帛を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の自動車用内装布帛は、ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が40~75の範囲、かつ前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする。(1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、
前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ
前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が、40~75の範囲、かつ
前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする自動車用内装布帛。
(1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上
(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
【請求項2】
前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸である請求項1に記載の自動車用内装布帛。
【請求項3】
前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.1~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸である請求項2に記載の自動車用内装布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の座席シート、ドア張りなどをはじめ自動車内装材の表皮などの用途に好適に用いられる自動車用内装布帛に関する。
【0002】
なお、本願の特許請求の範囲及び本明細書において、繊維と糸の太さ(番手)の単位として、Tはテックス、dTとdtexはデシテックスの意味で用いている。
【背景技術】
【0003】
自動車用内装布帛には、自動車の使用環境により砂や埃等の汚れや、手垢などによる汚れが付着してしまい、これらの汚れを流水で洗い流そうとしても必ずしも容易とはいえない。なお、特に汚れが目立つのは白物ではあるが、中色~淡色であっても汚れが認められるため問題となっていた。
【0004】
このため、従来から、自動車用内装布帛に例えば汚れにくくする加工や、汚れてしまったとしても汚れが落ちやすい加工を施すことが行われている。前者はフッ素系加工剤で布帛の繊維表面を被覆し、汚れを付きにくくする加工(SG加工)として知られている(例えば特許文献1)。後者は一度付着した汚れを洗濯等で落ちやすくする加工(SR加工)として知られている(例えば特許文献2)。
【0005】
さらに、SG加工では一旦汚れが付いてしまうと洗濯しても汚れを除去することが難しく、この問題を解決するためにフッ素系化合物と親水性を付与する加工剤を組み合わせた加工(SGR加工)も知られている。
【0006】
また、自動車用内装布帛においては、排気ガスに含まれる粉塵などが付着し、蓄積する経年汚れによる黒ずみが問題となっており、この問題を解決するために近年は、ナノレベルの微粒子で繊維表面をコーティングした後に、フッ素系樹脂を塗布するといったより複雑な工程を必要とする加工も行われている。
【0007】
ところで、上述の方法は防汚性に優れるものの、フッ素系樹脂、親水性樹脂やバインダー樹脂などの樹脂を使用することから自動車に求められる難燃性能の低下が懸念される。このため自動車用内装布帛には難燃剤による加工が必要となり、布帛の製造工程における工程、工数の増加や、材料費の増加によって製造費がアップしてしまう要因となっていていた。
【0008】
また、自動車用内装布帛のうち、特にシート表皮として用いられる布帛については、その使用耐久性として乗降に対する厳しい摩耗性能が求められ、従来の加工による方法では、たとえバインダー樹脂によって布帛に加工剤を固着させたとしても、摩耗後にはその性能が低下してしまう欠点があった。そこで、樹脂剤が2層になるように2回に分けてコーティングするような工夫も行われているが、布帛の風合いを損ない布帛としての魅力を失ってしまう結果となっていた。
【0009】
一方、近年のグリーン調達、サスティナビリティの観点からも、余分な樹脂剤の使用や、製造工程や工数の追加は、製品の製造過程におけるCO排出量の増加を招くとともに、製品自体の易リサイクル性を阻害するため回避することが求められている。すなわち、環境負荷の少ない製品が求められている。
【0010】
また、カーシェアリングといったニーズの高まりから、自動車に公共性が求められ、不特定多数の人が利用する自動車には、長期間使用しても外観変化の少ない布帛が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004-76231号公報
【特許文献2】特開平5-59669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、環境負荷の少ない製品、すなわち再生材料の使用率による環境性能に優れるのはもちろんのこと、従来のフッ素系樹脂、親水性樹脂、バインダー樹脂や微粒子コーティングによる加工を施さなくても、比較的明度が高い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り汚れが目立ちにくく、しかも防汚耐久性に優れ、耐摩耗性にも優れた、良好な触感の自動車用内装布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、自動車用内装布帛のフッ素系樹脂に頼らない防汚性の実現について鋭意検討した結果、布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の太さや原料を特定なものに限定したところ、前記課題を一挙に解決できることを見出した。すなわち、L*の値が40~75の汚れが目立ちやすい比較的明度が高くても優れた防汚性を実現でき、しかも環境性能に優れ、防汚耐久性に優れ、摩耗性に優れた、良好な触感の自動車用内装布帛を提供することができることを見出し本発明に到達した。なお、L*の値が40未満では明度が暗いことから、本願の構成要件を満たさなかったとしても防汚性は良好といえる。本発明は以下の手段を提供する。
【0014】
[1]ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、
前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ
前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が、40~75の範囲、かつ
前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする自動車用内装布帛。
(1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上
(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
【0015】
[2]前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸である前項1に記載の自動車用内装布帛。
【0016】
[3]前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.1~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸である前項2に記載の自動車用内装布帛。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、再生材料の使用率による環境性能に優れるのはもちろんのこと、従来のフッ素系樹脂、親水性樹脂、バインダー樹脂や微粒子コーティングによる加工を施すことなく、従来汚れが十分認められる濃色でない中色~淡色、すなわち比較的明度が高い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り汚れが目立ちにくく、しかも防汚耐久性に優れ、耐摩耗性にも優れた良好な触感の自動車用内装布帛を提供することができる。
【0018】
[2]の発明では、前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸であるので、より一層汚れが目立ちにくくなるという利点がある。
【0019】
[3]の発明では、異なる顔料を混入することで付着した汚れをさらに目立ちにくくするという利点があり、布帛の色合い面で自動車用内装用として適正を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る布帛の一実施形態について詳しく説明する。
【0021】
本発明の自動車用内装布帛は、ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が、40~75の範囲、かつ前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする。(1)前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
【0022】
このような構成を採用することで、再生材料の使用率による環境性能に優れるのはもちろんのこと、従来のフッ素系樹脂、親水性樹脂、バインダー樹脂や微粒子コーティングによる加工を施すことなく、従来汚れが十分認められる濃色でない中色~淡色、すなわち比較的明度が高い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り汚れが目立ちにくく、しかも防汚耐久性に優れ、耐摩耗性にも優れた良好な触感の自動車用内装布帛を提供することができる。また、加工剤を用いないので製造工程における工程、工数の増加や、材料費の増加によって製造費のアップも発生することなく、風合いの点で布帛としての魅力を失うこともない。さらに、自動車内装用布帛として、車室内を明るく演出することが可能で、任意の顔料色を選択することで、意匠性を高め、内装色に合わせることができるというという利点がある。
【0023】
前記布帛の最表面に突出したポリエステル長繊維の糸の太さを、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上とすることで、砂や埃等の汚れや手垢などの皮脂汚れが、単繊維の表面や単繊維間の隙間に付き難くすることができ、しかも、たとえ汚れが付着してしまったとしても汚れが目立たないという効果がある。単繊度2.5~4.5dtexの範囲、かつ総繊度1,000~1,500dtexの範囲がより好ましい。
【0024】
前記ポリエステル長繊維の糸が、前記ポリエステル樹脂成形品廃材の粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸であるので、環境負荷の低減に貢献できる。50重量%未満では、環境負荷低減の効果が少なくなり、逆に75重量%を超えると光沢感が強くなり品位を損なうことになるので50~75重量%の範囲にする必要がある。
【0025】
前記ポリエステル長繊維の糸は、3色混繊の原着糸が好ましい。この構成を採用することで、より一層汚れが目立ちにくくなる。前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.1~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸が好ましい。こうして、布帛の色合い面で自動車用内装用として適正をさらに高めることができる。すなわち、比較的明度が高い布帛でも汚れが目立ちにくいことから車室内を明るく演出でき、異なる顔料の繊維を混繊することで、汚れがさらに目立ちにくくなるという利点がある。
【0026】
本発明において原着糸は、例えば顔料が混練されたポリエステル系樹脂ペレットを溶融紡糸することで得られるが、3色混繊の原着糸は、3基(原着糸1、原着糸2、原着糸3)の二軸押出機を介して溶融紡糸された各繊維を合糸することで得られる。
【0027】
原着糸用の顔料としては、例えばフタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン系などの有機顔料及び酸化チタン、酸化鉄、群青、カーボンブラックなどの無機顔料を挙げることができる。
【0028】
前記樹脂成形品廃材としては、ポリエステル系樹脂を主体とするものであれば特に限定されないが、数多く出回っていることからポリエチレンテレフタレート製の液状飲食料品用、例えば水、ジュース、茶等のペットボトルを主体とするものであることが好ましい。分別回収によって安定した品質のものを入手しやすいので、前記ポリエステル長繊維の繊度を安定させることができる。さらに、サスティナビリティの観点から廃材を使用することで、グリーン調達可能な製品であるという利点がある。
【0029】
本発明の自動車用内装布帛を構成する繊維素材としては、ポリエステル長繊維を含んでなり、上述の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率を30~70重量%の範囲とすることより他は特に限定されず、例えばポリアミド繊維、アクリル繊維などの繊維を、混繊、混紡、撚糸等で複合化して含んでもよい。
【0030】
本発明の自動車用内装布帛の形態としては特に限定されないが、織物、編物が好ましい。また、特定のポリエステル長繊維を布帛の最表面に突出させるには、織物では、布帛を構成する繊維の番手差を3倍以上にすればよく、例えば本発明では、1000dtex以上に対して340dtex以下の番手の糸と交織することが挙げられ、どちらか一方をタテ糸、もう一方をヨコ糸としても良く、1000dtex以上の糸の比率が30~70重量%であればそれぞれの番手の糸の配置は特に制限されない。1000dtex以上の番手の糸の比率を30~70重量%の範囲とすることで、風合いの悪化を抑えられることから自動車用内装材として使用できる。すなわち、1000dtex以上の番手の糸の比率が70重量%を超えると徒に目付が増えて生地が硬くなり、良好な触感と言えず、風合いも布帛表面がややざらざらになるため自動車用内装布帛に適さない。逆に30重量%未満では本発明の効果が乏しく適さない。また、本発明での1000dtex以上の番手の糸の色相・明度については、完成した織物で一見視の明度L*の値が40~75の範囲であればよい。なお、汚れが目立ち易いように1000dtex以上の糸と同系色の色相・明度にて交織し評価した。また、編物でも上述の織物と同様に3倍以上の番手差の糸を交編すればよい。
【0031】
また、本発明において織物、編物などでは、裏面側にバッキング層を設けるのが好ましい。裏面側にバッキング層を設けることにより寸法安定性の向上や、難燃性などの機能性を付与することができる。バッキング層としては、特に限定されないが、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂等の樹脂組成物に公知の難燃剤を配合したものを挙げることができる。なお、バッキング層を積層するには、前記樹脂組成物のエマルジョンに難燃剤等を配合し、公知のロールコーター、コンマコーター、ナイフコーター等によって塗工し、乾燥すればよい。
【0032】
前記布帛は、JIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が40~75の範囲で、布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることから、従来技術であるフッ素系樹脂による防汚加工を施さなくても、汚れが目立ちにくいし、製造コストが抑えられる。
【実施例0033】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。なお、表1に各実施例、比較例を示し、表2に耐摩耗性試験、風合評価及び環境性能評価の結果を示す。
【0034】
<ポリエステル長繊維の糸の準備>
(A)樹脂成型品廃材を70重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1は青系を含む顔料を0.26重量%含み、原着糸2は酸化チタンを0.11重量%含み、原着糸3は青系を含む顔料を0.67重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し3色混繊の原着糸を得る方法で、紡糸ヘッドのノズルの違いにより次の4種類の3色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はグレイ色であった。
1220dtex/432f(単糸繊度2.8dtex)・・・GR1
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・GR2
660dtex/288f(単糸繊度2.3dtex)・・・GR4
250dtex/216f(単糸繊度1.1dtex)・・・GR5
(B)樹脂成型品廃材を50重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1は、赤系を含む顔料を0.3重量%含み、原着糸2は、同じく赤系の顔料を0.21重量%含み、原着糸3は、酸化鉄を含む顔料を0.27重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し3色混繊の原着糸を得る方法で、次の3色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はベージュ色であった。
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・BE1
(C)樹脂成型品廃材を70重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1は、酸化鉄を含む顔料を0.25重量%含み、原着糸2は、酸化チタンを含む顔料を0.11重量%含み、原着糸3は、青系を含む顔料を0.13重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し3色混繊の原着糸を得る方法で、次の3色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はブルー色であった。
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・BU1
(D)樹脂成型品廃材を70重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1は、酸化チタンと青系顔料とカーボンブラックを含む顔料を0.44重量%含み、原着糸2は、原着糸1と同じ配合の顔料を0.44重量%含み、原着糸3は、原着糸1と同じ配合の顔料を0.44重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し単一色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はグレイ色であった。
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・GR3
(E)樹脂成型品廃材を45重量%とバージン(市販品)のポリエステル系樹脂ペレットに原着糸1は、酸化鉄、酸化チタンを含む顔料を0.09重量%含み、原着糸2は、酸化チタンを含む顔料を0.08重量%含み、原着糸3は、ブルー系顔料と酸化チタンを含む顔料を0.11重量%含む配合とし、3基の二軸押出機を介して溶融紡糸された原着糸1、原着糸2、原着糸3を合糸し3色混繊原着糸を得た。この原着糸の一見視はグレイ色であった。
1100dtex/288f(単糸繊度3.8dtex)・・・GR6
【0035】
【表1】
【実施例0036】
上述の3色混繊原着糸GR1と167dtex/48fのポリエステル長繊維(グレー色)を交織し、GR1の構成比率が60重量%となるよう製織(織組織は表1を参照)した。交織される167dtex/48fのポリエステル長繊維の色については、3色混繊糸との太さの影響で表面には出現しにくいが、一見視の色相・明度は、GR1と同様になるよう調色した。続いて製織した生機を液流染色機で精練し、乾燥した後、アクリル系樹脂エマルジョンを生機の裏面に塗布し、熱風乾燥機で温度150℃×5分乾燥し、幅出しセットして経密度69本/インチ、緯密度57本/インチに仕上げ、自動車用内装布帛を得た。布帛のL*の値は67であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に4級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【実施例0037】
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸GR2を用い、GR2の構成比率が60重量%となるように製織(織組織は表1を参照)した以外は実施例1と同様にして、自動車用内装布帛を得た。布帛のL*の値は67であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に4級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【実施例0038】
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸BE1を用い、BE1の構成比率が50重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度70本/インチ、緯密度56本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、自動車用内装布帛を得た。布帛のL*の値は69であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に4級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【実施例0039】
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸BU1を用い、BU1の構成比率が40重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度70本/インチ、緯密度56本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、自動車用内装布帛を得た。布帛のL*の値は72であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に3級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【実施例0040】
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて単一色混繊原着糸GR3を用い、GR3の構成比率が66重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度70本/インチ、緯密度56本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、自動車用内装布帛を得た。布帛のL*の値は58であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に3級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0041】
<比較例1>
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸GR4を用い、GR4の構成比率が60重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度80本/インチ、緯密度60本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、布帛を得た。布帛のL*の値は68であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は順に2級、1級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が3級、ヨコ方向が3級で共に不合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0042】
<比較例2>
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸GR5を用い、GR5の構成比率が50重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度180本/インチ、緯密度85本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、布帛を得た。布帛のL*の値は65であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は順に2級、1級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が3級、ヨコ方向が3級で共に不合格であった。また、風合いの官能評価は4級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0043】
<比較例3>
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸GR2を用い、GR2の構成比率が20重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度70本/インチ、緯密度56本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、布帛を得た。布帛のL*の値は66であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に2級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級で合格であったが、ヨコ方向は3級で不合格であった。また、風合いの官能評価は4級で合格、環境性能評価は「×」で不合格であった。
【0044】
<比較例4>
実施例1において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸GR2を用い、GR2の構成比率が80重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度50本/インチ、緯密度40本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、布帛を得た。布帛のL*の値は70であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に4級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は2級で不合格、環境性能評価「○」で合格であった。
【0045】
<比較例5>
実施例2において、3色混繊原着糸GR1に替えて3色混繊原着糸GR6を用い、GR6の構成比率が60重量%となるように製織(織組織は表1を参照)し、幅出しセットして経密度69本/インチ、緯密度57本/インチに仕上げた以外は実施例1と同様にして、布帛を得た。布帛のL*の値は82であり、防汚性、防汚性(摩耗後)は共に2級の布帛である。耐摩耗性試験の結果はタテ方向が4級、ヨコ方向が4級で共に合格であった。また、風合いの官能評価は3級、環境性能評価は「○」で、それぞれ合格であった。
【0046】
【表2】
【0047】
表1、表2から分かるように実施例1~5の自動車用内装布帛は、環境性能に優れ、比較的明度が高い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り汚れが目立ちにくく、しかも防汚耐久性に優れ、耐摩耗性にも優れたしかも風合いも満足する良好な触感の自動車用内装布帛であった。
【0048】
一方、比較例1~4の布帛は、自動車用内装に必要な耐摩耗性試験、風合い及び環境性能評価のすべてを同時に満足するものではなかった。また、比較例5の布帛はこれらの試験による評価は満足するものの、L*の値が82と明度がかなり高くそもそも淡色というより白物に近く防汚性、防汚性(摩耗後)は共に2級の布帛である。
【0049】
<明度L*>
布帛の明度L*の値を、JIS Z8722-2009に準拠して日本電色工業(株)社製の分光色差計(品番NF555)を用いて測定した。
【0050】
<防汚性試験>
繊維製品の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験により判定した。判定が3級以上のものを、実際の使用において汚れが目立ちにくいものと判断した。
【0051】
<耐摩耗性試験>
平面摩耗試験機(形式:AR-2S、インテック株式会社製)を用いた耐摩耗性試験により評価した。測定は、幅70mm、長さ300mmの試験片をタテ方向及び、ヨコ方向から1枚ずつ採取し、平面摩耗試験機の平面摩耗台に厚み10±1mm、20%圧縮応力が0.79~1.08N/cmのウレタンフォームを敷いた上に試験片を置き、クランプで固定した。次に、JIS L3102で規定の6号綿帆布を取り付けた摩擦子を試験片の上にのせ、摩擦子を含めた押圧荷重を9.81N、ストロークを140mm、速度を60m±10往復/分として、10,000回往復の試験を行った。試験片の中央部の摩耗具合を目視で観察して、次の5段階で評価した。なお、4級以上を合格とした。
(等級)
5級・・・変化が認められない
4級・・・変化がわずかに認められるが、ほとんど目立たない
3級・・・変化が明らかに認められるが、目立たない
2級・・・変化がやや著しい
1級・・・変化が著しい
【0052】
<風合い評価>
自動車用内装布帛の風合いを触感での官能評価し、次の4段階で評価した。なお、3級以上を合格とした。
(等級)
4級・・・表面がスムースでざらざらしない
3級・・・表面がややざらざらするが、気にならない
2級・・・表面がややざらざらする
1級・・・表面が著しくざらざらする
【0053】
<環境性能評価>
自動車用内装布帛の総重量に対する再生材料の比率で評価した。すなわち、再生材料が総重量の25重量%以上のものはグリーン調達の対象となることから合格で「○」とし、25重量%未満のものは不合格で「×」とした。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の自動車用内装布帛は、自動車の座席シート、ドア張りなどをはじめ自動車内装材の表皮などの用途に好適である。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、
前記布帛は、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上のポリエステル長繊維の糸、及び総繊度340dtex以下の糸が少なくとも経糸及び緯糸に織り込まれた織物であり、
前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ
前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が、40~75の範囲、かつ
前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする自動車用内装布帛。
(1)前記布帛のポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上
(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材であるペットボトルの粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
【請求項2】
前記ポリエステル長繊維の糸が、3色混繊の原着糸である請求項1に記載の自動車用内装布帛。
【請求項3】
前記3色混繊の原着糸は、互いに異なる顔料を0.1~1.5重量%混入した繊維3種類を混繊した糸である請求項2に記載の自動車用内装布帛。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
[1]ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、
前記布帛は、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上のポリエステル長繊維の糸、及び総繊度340dtex以下の糸が少なくとも経糸及び緯糸に織り込まれた織物であり、
前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ
前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が、40~75の範囲、かつ
前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする自動車用内装布帛。
(1)前記布帛のポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上
(2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材であるペットボトルの粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
[1]の発明では、前記布帛は単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1000dtex以上のポリエステル長繊維の糸、及び総繊度340dtex以下の番手の糸が少なくとも経糸及び緯糸に織り込まれた織物で、特定のポリエステル長繊維を布帛の最表面に突出させることができる。また、1000dtex以上の番手の糸の比率を30~70重量%の範囲とすることで、風合いの悪化を抑えられる。また、ペットボトルは分別回収によって安定した品質のものを入手しやすいので、前記ポリエステル長繊維の繊度を安定させることができる。さらに、サスティナビリティの観点から廃材を使用することで、グリーン調達可能な製品であるという利点がある。また、本発明では、再生材料の使用率による環境性能に優れるのはもちろんのこと、従来のフッ素系樹脂、親水性樹脂、バインダー樹脂や微粒子コーティングによる加工を施すことなく、従来汚れが十分認められる濃色でない中色~淡色、すなわち比較的明度が高い布帛であっても布帛の素材や構成によって長期に亘り汚れが目立ちにくく、しかも防汚耐久性に優れ、耐摩耗性にも優れた良好な触感の自動車用内装布帛を提供することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の自動車用内装布帛は、ポリエステル長繊維を含んでなる布帛であって、前記布帛は、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上のポリエステル長繊維の糸、及び総繊度340dtex以下の糸が少なくとも経糸及び緯糸に織り込まれた織物であり、前記布帛を構成する糸において、次の(1)と(2)の条件を同時に満たす糸の比率が30~70重量%の範囲、かつ前記布帛のJIS Z8722-2009に準拠して測定されたL*の値が、40~75の範囲、かつ前記布帛の防汚性試験方法JIS L1919(2012年度版)A-2法による汚れにくさ試験の判定が3級以上であることを特徴とする。 (1)前記布帛のポリエステル長繊維の糸の太さが、単繊度2.5dtex以上、かつ総繊度1,000dtex以上 (2)前記ポリエステル長繊維の糸が、樹脂成形品廃材であるペットボトルの粉砕品を50~75重量%とバージンのポリエステル系樹脂ペレットを含んでなる原料を紡糸してなる糸