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特開2022-109198光触媒活性様式付き塗擦保護剤および塗擦保護膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109198
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】光触媒活性様式付き塗擦保護剤および塗擦保護膜
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/16 20060101AFI20220720BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20220720BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220720BHJP
   A61L 2/08 20060101ALI20220720BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220720BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
B01J35/02 J
A01P1/00
A61L2/08 110
A61L2/18
A61L2/10
A61L2/08 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021032133
(22)【出願日】2021-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】514113946
【氏名又は名称】沓掛 由利子
(72)【発明者】
【氏名】沓掛 由利子
【テーマコード(参考)】
4C058
4G169
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA29
4C058BB06
4C058BB07
4C058BB09
4C058JJ06
4C058KK01
4C058KK02
4C058KK06
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB06A
4G169BB09A
4G169BC12A
4G169BC35A
4G169BC36A
4G169BC37A
4G169BC50A
4G169BC60A
4G169BC66A
4G169DA03
4G169HB01
4G169HB06
4G169HB10
4G169HC21
4G169HE07
4G169HF05
4H011AA04
4H011BB18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光触媒などの作用により、肌荒れ防止と同時に汚れと細菌、ウイルスの剥離、殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ作用効果をいかなる環境でも常態固定し持続させる光触媒活性様式付き塗擦保護剤および塗擦保護膜を提供する。
【解決手段】1種またはそれ以上の光触媒液と、前記光触媒液に分散した複数の担持金属または金属液および化合物、ケイ素およびケイ素化合物類、過酢酸製剤、複数のナノセルロース、砂糖を含む糖類、藻類、パルプ、を含有していることを特徴とした塗擦保護剤、さらに、円筒または角筒型照明と、前記塗擦保護剤を充填させた容器と同心に配置された光触媒活性様式を提供する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種またはそれ以上の光触媒液と、前記光触媒液に分散した複数の担持金属または金属液および化合物、ケイ素およびケイ素化合物類、過酢酸製剤、複数のナノセルロース、砂糖を含む糖類、藻類、パルプ、を含有していることを特徴とした塗擦保護剤。
【請求項2】
円筒または角筒型照明と、前記塗擦保護剤を充填させた容器と同心に配置された光触媒活性様式であって、
前記塗擦保護剤容器と同心外周に活性化光を照射する直線の光源と、前記塗擦保護剤を充填させた容器の外部に沿って延在する熱遮断カバーと、
前記塗擦保護剤容器の上部側と前記円筒または角筒型照明の下部側の端部が解放され、
前記下部側の端部に前記円筒または角筒型照明の点灯手段が接され、前記上部側の端部に前記塗擦保護剤発生手段が接されており、
動作時には、前記円筒または角筒型照明が、前記塗擦保護剤容器を透過して内部および容器外周に直線の光源を放出することを特徴とする光触媒活性様式。
【請求項3】
前記塗擦保護剤の光触媒液が酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化鉄、ジルコニア、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化水銀より選ばれる少なくとも1種またはこれらの2種以上の組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項4】
前記担持金属または金属液および化合物がバナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、タングステン、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、該金属の化合物またはこれらの組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項5】
前記ケイ素およびケイ素化合物類はケイ酸、二酸化ケイ素、ケイ酸塩類のケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムアルミニウムの他、ゼオライト、カオリン、タルクから選ばれる少なくとも1種または2種以上の組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項6】
前記過酢酸製剤は過酢酸、過酸化水素、酢酸、オクタン酸、過オクタン酸、1-ヒドロキシ エチリデン-1・1ジホスホン酸、水の平衡混合液で、少なくても2種以上の組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項7】
前記ナノセルロースがセルロース系高分子ファイバーを構成する高分子、グルカン構造を有する多糖類、高等植物由来のセルロース、天然セルロース繊維、動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース、化学的に合成されたセルロースからなるセルロース・ナノセルロース、キチン、キトサンナノセルロース、シルクナノセルロースおよびカルボキシメチルセルロ―スから選ばれた少なくとも1種から2種以上の組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項8】
前記糖類がシクロデキストリン、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトースおよびグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリンやブチレングリコール等のグリコール系溶媒、キシリトール・マルチトールなどの多価アルコール類、コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸などの多糖類、コラーゲンなどの蛋白質類、ヒドロキシジステアレートなどのステロールエステル類、乳酸ナトリウムなどの有機酸塩類及びジグリセリン付加物類の中から1種または2種以上の組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項9】
前記パルプは木材、植物、草、藁、稲、竹、麻、果実、古紙等の木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプ原料で、機械パルプ、化学パルプ製法から得られた異なる粒径の中から1種から2種以上の組み合わせである請求項1に記載の塗擦保護剤。
【請求項10】
請求項2に記載の光触媒活性様式に使用する円筒または角筒型照明は紫外線UV‐A、UV-B、UV-Cおよび可視光線紫外線波長であるが、限定しない。
【請求項11】
前記塗擦保護剤組成物は液体、ゲル、ペースト、粒粉、固形化された請求項1および3から9に記載の塗擦保護剤。
【請求項12】
前記塗擦保護剤組成物を用いて殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ、抗アレルギー、保湿保水、速乾性、疼痛緩和の請求項1から11に記載の塗擦保護膜と塗擦方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人間への細菌やウイルス感染を防止するために塗擦保護剤に付帯する光源から光を照射する簡便な方法で光触媒活性作用による恒常的な除菌・抗菌・抗ウイルス・防臭・防カビとウイルスを不活化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒で最も多く使用されている酸化チタンは紫外光を当てると活性酸素が生じ、特にOHラジカルは、消毒や殺菌に広く使われている塩素や次亜塩素酸、過酸化水素、オゾンなどよりはるかに強い酸化力で炭酸ガスなどを無毒な物質に変える他、菌の細胞内のコエンザイムAなどの補酵素や呼吸系に作用する酵素や癌細胞などを破壊し、有機物の分解、菌やカビの出す毒素の分解、ウイルスの分解を行い、抗菌・抗ウイルス作用を発揮して菌やかびの繁殖、ウイルスの付着を止める事も出来る。これらの作用により、種々の有害な化学物質や悪臭物質のような空気中の化学物質や、繊維・人体に付着する細菌、ウイルス等、ほぼ全ての有害有機物質を光の照射によって簡単に分解・無害化することができる。近年では紫外光を必要とする光触媒の他に、室内光等でも光触媒効果が得られる可視光応答型光触媒が幅広く利用されその頻度も高い。
【0003】
また、皮膚の主な機能は水分の損失を減少させること及び摩耗的作用や微生物からの保護、環境に対し透過性のあるバリアとして働くことで、皮膚の基本的な構成は最も外側から内側の層への順で表面層(角質層・約10~20μmの厚み)、表皮層(厚さ約50=100μm)、真皮層(厚さ約1~2mm)、皮下組織(厚さ約1~2mm)と続き、経皮的吸収に対するバリアは皮膚の構成の中でも最も薄い角質層内にある。手の皮膚pHは本来酸性を保ち、細菌の発育を抑制する機能を備えているが、高頻度な手洗いや速乾性手指消毒剤等の使用により手荒れが起きるとその機能は十分に発揮せず、細菌の増殖やウイルスの定着を招くことが明らかである。現在の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、医療現場や福祉施設の他、飲食店等の身近な場所での市中感染が次々に報告される中、[非特許文献20]では人の皮膚上でのウイルス生存期間が解明され、その感染対策として手指衛生の必要性が今後のウイルスに対する感染制御になると結論が出されているが、[非特許文献16]でも示されている通り、現行品手指消毒剤においては、皮膚かさつき、皮膚肥厚、紋消失が高く、潤い成分配合手指消毒剤の使用後は、発赤、皮薄化、亀裂、爪周囲亀裂、湿疹について報告され、特に医療従事者は手指に手荒れや皮膚炎等ができると黄色ブドウ球菌ばかりか本来一過性に付着するグラム陰性菌の定着を招くことがあり、それらを原因とする院内感染も多く報告されている。そのため人間の手荒れは感染予防対策上からおろそかにできない大きな問題であり、手荒れは人間にとって手洗いの遵守率の低下を招くことも指摘された為、手指の消毒後にローションの使用を行った結果、前後における手荒れの有無で比較すると有意差はみられなかったものの、潤い成分(リピジュア)配合手指消毒剤においては、手荒れ症状を比較するとわずかではあるが改善傾向が示され、使用感がよく乾燥も速いと効率的に使用可能と考えられ、手荒れ防止対策はとしては、保湿が一番効果的で、毎日のスキンケアも重要が必要であると言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2783339号公報
【特許文献2】特許第2517874号公報
【特許文献3】特許第6576996号公報
【特許文献4】特許第6184108号公報
【特許文献5】特開2002-308712号公報
【特許文献6】特開2014-113576号公報
【特許文献7】特願2020-46968号公報
【特許文献8】特開2016-10724号公報
【特許文献9】特許第6359865号広報
【特許文献10】特許第6427334号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】光触媒の材料開発と産業応用及び国際標準化 垰田博史
【非特許文献2】光触媒技術のバイオ関連応用 中田一弥 フジコー技研 技報「創る」No.26
【非特許文献3】
【非特許文献4】パルプの性質と紙の強度 十条製紙株式会社研究所 奥杏一
【非特許文献5】熱帯樹林の成分と利用(2)大原誠資 熱帯林業No39 1997年
【非特許文献6】光触媒応用技術 橋本和仁 2007年7月25日 東京図書株式会社
【非特許文献7】光触媒のすべて 藤嶋昭 2017年11月22日 ダイヤモンド社
【非特許文献8】抗菌薬剤感受性試験結果に基づく銅イオン溶液の抗菌・殺菌作用過程 石田恒雄 日本微生物生態学会誌 31巻2号45-46 2016年
【非特許文献9】はじめて出会う細胞の分子生物学 伊藤明夫 株式会社岩波書店2006年8月29日
【非特許文献10】可視光下での金属酸化物の抗ウイルス活性に関する試験 砂田香矢乃、畑山靖佳、永井武、石黒斉 KISTEC研究報告2019 2019年7月
【非特許文献11】錯体粉末の熱分解による酸化タングステンナノ粒子の作製 山下洋子、原田智洋、牧野晃久 粉体および粉末治金 59 No6 P333 2012年
【非特許文献12】常識は覆るのか?!光触媒反応における酸素の還元機構 大谷文章、阿部竜 化学レビュー(第6回)光触媒化学 化学,63(9),19-23 2008年9月
【非特許文献13】光触媒標準研究法 光触媒反応系の開発と成果の発表 大谷文章 東京図書株式会社 2017年12月15日
【非特許文献14】人間の手指の摩擦特性の解析 嶋田明広 韓鉱庸 川村貞夫 計測自動制御学会論文集1996年 Vo.32 No12
【非特許文献15】粉体層の摩擦特性に及ぼす粒子形状および粒径の影響 廣田満昭他 粉体工学会誌/粉体工学会[編] 1986年 Vol.23 No.9
【非特許文献16】速乾性手指消毒剤と手荒れの評価潤い成分配合手指消毒剤使用前後の比較 龍口さだ子 第V群19席 P73~76
【非特許文献17】手指消毒による手荒れと除菌効果の検討 高森スミ 久家智子 ▲辻▼明良 日環感 1992年 Vo1.7 no.2
【非特許文献18】粉体粒子の形状 竹林敬 色材基礎講座第XI講 1995年 52-58
【非特許文献19】光殺菌速度に及ぼす装置材料の影響 八木下将史他 秋田高専研究紀要第44号 2008年11月30日
【非特許文献20】ヒトの皮膚上に存在する新型コロナウイルスとインフルエンザ ウイルスの生存評価 COVID-19における手指衛生の重要性 京都府立医科大学 大学院医学研究科 Clinical Infectious Diseases 2020年10月3日
【発明が解決しようとしている課題】
【0006】
しかしながら、[特許文献1]から[特許文献5]に示される光触媒溶液や無光触媒溶液では、一般的に基板を想定した壁や床、住宅用や工業用途等の限定されたものであり、手肌や繊維、住居内で頻繁に使用する場所や不特定多数が使用する固定物を想定した光触媒は光の強度と吸着物質のバランスが重要となる。酸化チタン単独では数十μW/cmから数百μW/cm以上の紫外線が必要になる他、紫外線強度が屋外の約1000分の1になる屋内での微弱紫外線または可視光線の場合はそれらに応答する窒素ドープ酸化チタンやモリブデン、金属イオン等を使用しなければ光触媒の効果が発揮出来ず、光触媒の活性が得られる時間もかかり、頻繁に使用する環境応用や手肌等の人体へ使用するには改良の余地がある。その上、酸化分解力・殺菌力を示す一般的な光触媒液を手肌や繊維に付着させると、紫外線照射が安定的な場合は、細菌やウイルスを分解・殺菌するが、対象物質が表面に来なければ分解などの反応を起こすことができない光触媒は、吸着物質や使用する環境変化により光触媒液を固定化し難い人体や繊維等への適用が不可能であると言われていた。そもそも光触媒は光の照射がないと殺菌・抗菌・抗ウイルス作用を生じる事が無い上、OHラジカルなどの活性酸素は寿命が短く、菌が酸化チタンの近傍に来ないと抗菌効果が発揮されないため、酸化チタンが担体やバインダなどの中に埋もれていると、光が当たり難く抗菌効果は低下する事から、酸化チタン光触媒を繊維や手肌に被膜固定化させることが必要不可欠となる。
【0007】
さらに、光触媒反応は対象物質が表面に来なければ分解などの反応を起こすことが出来ないという難点を持ち、対象物質を吸着によって吸い寄せ、それを光触媒で分解させる等、光触媒と活性炭などの吸着剤とのハイブリッド化も行われているが、活性炭は光を透過しないため光触媒が活性炭の陰にあると反応が起こらない他、光触媒反応によりパルプ等を分解し、粒子結合を切断して物質の安定した使用が出来ない欠点もある。その上、夜間の無光状態の場合は、光触媒の安定した効果が確実に得られる事が困難である。そもそも光-化学エネルギー変換系である水の全分解(HO→H+1/2 O)に効く可視光応答性光触媒は、瞬時の有機化合物の酸化分解反応には使えずバンド位置(構造)と標準電極電位の比較だけでは説明できない現象も起こることは[非特許文献12]にも記されている。
【0008】
また、過酢酸は、無色透明な液体で刺激性の酢酸臭があり、CH3COOOH+H2O⇔CH3COOH+H2O2の平衡反応により生成され、酸化力の強い酸素ラジカルを放出して酢酸に変化し殺菌効果を有するが、過酢酸製剤としては主に医療器具の滅菌・殺菌・消毒に0.2%-0.3%の濃度で用いられている他、食品の表面殺菌、ペットボトル・プラスチックキャップ等の殺菌にも利用され、人体に対する感作性・アレルギー性、変異原性が低く、最も強力な抗菌効果を示す消毒薬で、細菌芽胞、結核菌、ウイルス、糸状真菌、一般細菌等のすべての微生物に有効であり、ウイルス等は5分間以内という短時間で殺滅できる。その過酢酸製剤は、過酢酸、過酸化水素、酢酸、オクタン酸(過オクタン酸)、1-ヒドロキシ エチリデン-1・1ジホスホン酸(以下、HEDP)等を含有する混合物である。消毒剤に多く用いられている塩素系除菌剤に対し、過酢酸製剤は有機物接触による失活が少なく、残留性がない事が認められており、殺菌処理後の水洗いは必要とせず、ステンレスを腐食させないという長所を持っているが、酸化力が強いために鉄、銅、真鍮などにおいては腐食を発生させてしまう問題や金属イオンに対しては、酢酸と酸素に分解、又は、加水分解して、酢酸と過酸化水素に分解される特徴があるが[特許文献9]や[特許文献10]では鉄等の金属に対する腐食の発生を抑止する非腐食性過酸化製剤も開発されている。
【0009】
さらに、細菌やウイルス感染症が流行した場合、一般的に手指消毒がもっとも身近で簡便かつ重要な手段で、細菌等を相当数減少させれば実質的および非実質的な活性成分の何れでも持続活性を持つのは周知である事から消毒剤を頻繁に使用した場合、乾燥・硬化・亀裂・紋消失・紅斑・痒みの順で症状が現れ、特に刺激臭が伴う物が多い塩素系やアルコール類は脱水作用もあるため、皮膚表面の皮脂と水分の両方を奪ってしまう脱脂を行ってしまうことになり、手荒れが起こりやすく、病原菌を増殖させることにも繋がり、細菌繁殖の温床となってしまう。例えば、アルコールを皮膚に塗布した場合に即効の殺菌効果はあるが、揮発性が高く持続性(残留性)が無いため、僅か数分で効果が消失してしまい、衛生状態を保つには頻繁な消毒剤が必須となり、手荒れを起こすことも多くアレルギー症状が伴う事も知られ、そのため消毒の使用を控える状況も見受けられる。手指消毒における消毒剤の殺菌効果や抗菌力については多く報告または周知されるが、手荒れと除菌等効果とを関連して報告されたものは少なく、検討の余地がある。[非特許文献17]でもレプリカ法による形態評価や経皮水分蒸散量測定、皮脂量測定などの物理化学的評価法が報告され、皮水分蒸散量経皮脂量の測定、画像解析を行ったが、十分な結果が得られず報告するに至っていないのが現状である。
【0010】
本発明の課題は、以上のような問題点に鑑み、消費者の使用環境に対応するため、殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ作用がある酸化チタン等の光触媒溶液と無光状態等の使用する環境に左右されず効果を恒常的に持続させる過酸化製剤および酸化モリブデン等の金属化合物と電導性のある保湿・保護作用のナノセルロースおよび海藻類、藻類と抗アレルギー作用のアラントイン、パルプ微粉末、ケイ素類を混合した複合材料を用いた上、光触媒活性様式による紫外線照射で触媒反応の効果的な活性と手肌や繊維の隙間へ入り込む光触媒の剥離性と内側(手肌、繊維側・以後バルク側)と表面側(以後表面)には分子間力が働き、バルク側の分子密度が圧倒的に高いため、表面に存在する分子は常にバルク側に引き込まれる現象を指す界面活性剤の1つである界面張力とパルプ微粉末の摩擦による速乾性と空中上の酸素吸着および、ケイ素類の吸着固定化を利用し、手肌等の人体の他、繊維や固体物にも塗布または噴霧により保護剤を吸着固定させ、瞬時に細菌、ウイルスの剥離、殺菌作用と抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ作用効果、肌荒れ防止を常態持続させる光触媒活性様式付き塗擦保護剤を提供する事を目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は上記課題を解決するために、以下から構成される。
(1)過酸化製剤による空中間を含めた瞬時の殺菌、消毒と同時に超親水性の光触媒溶液とナノセルロースに混和させた非親水性の微粒子パルプ摩擦による塗擦方法と噴霧時の酸素吸着およびケイ素類の吸着固定作用を用いた光触媒溶液を人体皮膚の隙間に吸着固定させ、皮膚等に付着する菌やウイルス等を剥離分解し殺菌・不活化させる光触媒活性様式付き塗擦保護剤(以下保護剤)。
(2)上記保護剤を塗擦し、菌やウイルスの漂白および菌の付着・増殖の発生し難い環境と衛生的に保つ事による殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ・保湿保護作用(以下塗擦作用)が得られる塗擦保護膜(以下保護膜)。
(3)上記保護剤が光触媒材料を含むものであり、光源が透過しやすい容器、例えば石英ガラスや光源透過樹脂等に光源から光を照射することにより光触媒活性が恒常的に得られる他、細菌の殺菌、ウイルスの不活化がなされる保護剤。ただし容器は石英ガラスに限定しない。
(4)前記(1)記載の無味無臭で安全な親水性のナノセルロースおよび糖類による皮膚の保湿・保護効果が得られる保護剤。
(5)前記(1)記載の粒径の異なる2種以上の非親水性微粒子微パルプの摩擦による塗擦方法での浸潤、塗滅、速乾性や、アラントインによる抗アレルギー作用、クエン酸分散による冷涼冷却と痛みの緩和作用が得られる保護剤。
(6)繊維や固体物の塗擦作用や保護膜による殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビをする前記(1)、(2)および(3)に記載の保護剤。
(7)光触媒活性様式の波長は保護剤中の光触媒材料により200~400nmの紫外光である上記(3)に記載の保護剤。
(8)保護剤中の光触媒材料は可視光応答型材料を含むものであり、光源の光が波長360~830nmの可視光域である上記(3)に記載の保護剤。
(9)光源が波長200~400nmの光は、ブラックライト、LED、有機ELのいずれかである上記(3)に記載の保護剤。
【0012】
本発明に使用する酸化チタンは光触媒活性の高いアナターゼ型酸化チタンまたはブルッカイト型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの少なくとも1種以上であるが、限定しない。
【0013】
本発明に使用するナノセルロースは濃度約6%以下の微粒子粉体または液体であるが6%に限定はしない。
【0014】
本発明に使用するナノセルロースは平均繊維径(D)が3nm~100nmであるセルロース系高分子ファイバーと保湿液とを、セルロース系高分子ファイバー:保湿液=1:1~1:20の重量比で含有しているが、重量比は限定しない。
【0015】
本発明の保護剤は、例えば、セルロース繊維を分離抽出した紙パルプのマイクロサイズの微粉末、シクロデキストリン、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトースおよびグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、数平均分子量120~20000)、ポリグリセリン(例えば、数平均分子量が120~20000)やブチレングリコール等のグリコール系溶媒、キシリトール・マルチトールなどの多価アルコール類、コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸などの多糖類、コラーゲンなどの蛋白質類、ヒドロキシジステアレートなどのステロールエステル類、乳酸ナトリウムなどの有機酸塩類及びジグリセリン付加物等が挙げられ、これらの中から一種または二種以上を組み合せて使用しても良い。これらの中でも多価アルコール類や、皮膚への親水性が強いナノセルロースに対し、微粒子のパルプを含有させる事で、保湿剤が噴霧箇所だけに局所浸潤させる事を防ぎ、手を擦り合わせると全体に保湿剤を行き渡らせるようにするのが好ましく、それらから選ばれる1種または2種以上が好適である。
【0016】
本発明に使用する海藻類・藻類は、例えばアカモク、モズクの粉体または液体の少なくても1種以上であるが限定しない。
【0017】
本発明の保護剤に使用する酸化チタン、酸化タングステンは粉体および水分散体またはゲル状であり、一般に製造加工販売されている光触媒材および可視光応答型光触媒材でも良く、1種以上であるが限定しない。
【0018】
本発明の保護剤に使用するにモリブデンは、モリブデンの他、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデンの粉体または液体の1種以上であるが限定しない。
【0019】
本発明の銅イオン水、銅液体濃度はそれぞれ0.2mg~0.3mgであるが使用するかは任意である。
【0020】
本発明の過酸化製剤は、一般に製造販売されている過酸化製剤液でも良く、例えば米国メディベーター社(旧ミンテック社)によって開発された低濃度過酢酸製剤のアクトリルまたは日本国内の過酢酸系溶剤PBioアクトリルであるが限定しない。
【0021】
本発明の過酢酸製剤に含有する安定剤である等は、有機系イオン封鎖剤のヒドロキシ・カーボネイト系、例えばクエン酸、グリコール酸、グルコン酸やその塩等、アミノ・カーボネイト系、例えばEDTA、アセテイト、エチレン、ジアミン、テトラ、トリニトリック酢酸等、ヒドロキシ・アミノカーボネイト系、例えばヒドロキシ、エチレン、ジアミン、四酢酸等であるが限定しない他、使用の有無も限定しない。
【0022】
本発明の保護剤の防腐剤としてはヘキサンジオール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウムの粉体または液体の1種以上であるが、溶液中の配合は100g中、0.005g以下とし、防腐剤の使用は任意である。
【0023】
本発明の保護剤の酸化防止剤としてはジプチルヒドロキシトルエン(BHT)・t-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール類(ビタミンE)、アスコルビン酸類(ビタミンC)、エリソルビン酸類、クロロゲン酸、カテキン、没食子酸の粉体または液体の1種以上であるが、使用の有無は限定しない。
【0024】
本発明の保護剤で使用するアラントインは粉体または液体であるが使用の有無は限定しない。
【0025】
本発明の保護剤は手肌以外の人体、例えば足の踵に使用した場合、水虫等の白癬菌の改善、口腔内等に塗布または噴霧すると歯肉炎等の痛みの緩和も得られ、手以外の使用部位に対しての限定はしない。ただし、眼球以外とし、口腔内で使用する場合、光触媒の含有量は0.01%から0.004%の範囲が好ましく勿論、無害である。
【0026】
本発明の保護剤を塗布または噴霧して使用する繊維は、木や天然繊維の例えば植物繊維(セルロース高分子)、動物繊維(タンパク質高分子)、鉱物繊維や化学繊維の例えば無機繊維、精製繊維(天然高分子)、再生繊維(天然高分子)、半合成繊維(半合成高分子)、合成繊維(合成高分子)の(以後、繊維)素材および、それらで製造された製品や商品であるが、それらに限定しない。
【0027】
本発明の保護剤を塗布または噴霧する固体物のとしては、既に酸化チタンを添加する原理を歯科衛生として歯科医でも利用されているが、例えば口腔ケア用品の歯ブラシ・歯間ブラシ等、うがい液や金属類、例えば鍵や硬貨等、紙製品、例えば紙幣、新聞紙、文房具等、食器類、例えば箸やコップ等、住宅関連類、例えばドアノブ、トイレ、浴室、寝具等、オーディオ類、例えばCD、DVD等であるがそれらに限定しない。。
【0028】
さらに、刺激臭や一時的な効果しか得られない一般的な消毒剤または除菌・抗菌剤は皮膚表面の皮脂と水分の両方を奪ってしまう脱脂による手荒れで、病原菌を増殖させることにも繋がり、細菌繁殖の温床となる可能性が高い塩素系・アルコール類であるが、それらを使用する事無く、殺菌・消毒・菌滅・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ等と、保湿・保水・粘着性等が塗擦方法を用いて同時に得られる保護剤は、日常的に塗布噴霧出来る状況では勿論の事、就寝中や寝たきり状態、仕事の作業中、看護中等の塗布噴霧が困難な状況でも塗布噴霧直後から継続的に効果が保持される保護剤および保護膜である。但し常にヒトに住みつき、外からの侵入菌の増殖を防いでくれる常在細菌や紫外線から守り健康な肌を作り出す善玉常在菌は、健康であれば悪玉常在菌の増殖を防ぎ感染源にはならないが、抵抗力が落ちた状態では感染を起こすこともあり、過酢酸製剤や光触媒活性でそれらを死滅させたとしても、パルプの塗擦作用とナノセルロース等の保湿・保護作用が同時に得られる保護剤は体調に関係なく働くため、より安全で安定的な使用が可能になる。
【0029】
また、光触媒溶液にナノセルロースを配合させ使用するが、混合物質の許容濃度としてこの数値は当該物質が単独で空気中に存在する場合のものであり、2種またはそれ以上の物質に曝露される場合には個々の物質の許容濃度のみによって判断してはならないとなっており、現実的には相加が成り立たない事を示す証明がない場合には、2種またはそれ以上の物質の毒性は相加されると想定し、次式によって計算されるIの値が1を越える場合に許容濃度を越える曝露と判断するのが適当であると示されている。
【数1】
この場合、Ciは各成分の平均曝露濃度を示し、Tiは各成分の許容濃度を示す。ただし有害物質の許容濃度の基準は職場における環境原因による労働者の健康障害を予防するための手引きに用いられることを目的とし、日本産業衛生学会が勧告している。
【0030】
その上、酸化モリブデン(MoO3)は、高い抗菌・抗ウイルス活性が知られている銅化合物や銀化合物以外の金属化合物の中でも、抗菌・抗ウイルス活性を示す化合物の一つとして特に、エンベロープをもたないウイルス、エンベロープをもつウイルスのどちらに対しても抗ウイルス活性をもつと考えられている。さらに、モリブデン酸化物と酸化チタンを組み合わせた可視光応答形光触媒材料(Mo/TiO2)は、暗所下よりも白色蛍光灯照射下で、より高い抗ウイルス活性が公知されており、本発明の保護剤はそれらを加え充用し、光触媒による不活化が確実に得られる考案となる。
【0031】
り、本発明の保護剤に混合後に噴霧すると、微生物と接触し、遊離した活性酸素が細胞内の酵素にある-SH基やS-S結合を破壊して不活性化をしたり、発生したラジカルが膜組成を酸化し細胞膜を破壊して殺菌作用を起こし、反応後は酢酸・水・酸素に分解され残留毒性も無く安全に使用できる。過酢酸製剤は芽胞菌を含む細菌、真菌、ウイルス等、ほぼすべての微生物に対して幅広い効果を示し、過酸化水素よりも強い殺菌力を持つことが古くか
有量で安定して高い効果を発揮する。過酸化水素が0.80%、過酢酸が0.06%であるため、医薬用外劇物に該当せず、使用前の希釈調製も不要となる。生分解性が有り、残留
等の医療用具の滅菌消毒剤として認可されており皮膚毒性や感作性物質も無い事から本発明の保護剤で人体の手肌にも使用が可能となる。但し、過酢酸製剤は鉄や銅、酸化タングステンに使用すると腐食する性質と金属イオン水に対し分解作用がある事から、保護剤中の銅イオンや銅水溶液等の濃度に対してキレート剤含有の過酢酸製剤またはキレート剤の混合使用している。
【0032】
その上、国内で流通している過酢酸製剤でも酢酸と過酸化水素が再度反応して過酢酸に生成し、この反応が過酢酸濃度も安定させ継続的に起こる平衡状態の維持が得られ、アク
為、本発明の保護剤に混合して使用しても良い。また過酢酸製剤の溶液は酸化チタン入り微粒子パルプに浸潤した状態で塗布・噴霧され、乾燥に至るまで残留する持続性の高いものである。
【0033】
さらに、平衡状態が保たれている過酢酸製剤は細菌芽胞、結核菌、ウイルス、糸状真菌、一般細菌等のすべての微生物に有効であり、ウイルス等は5分間以内という短時間で殺滅させる事から光触媒の触媒反応が得難い環境や、空中間などの瞬時の殺菌を求められる環境で、光触媒に代わり殺菌、抗菌、抗ウイルス、除菌、消毒等の作用をし、環境に左右されずに効果が得られる。ただし、金属イオンを含有させる場合は、キレート剤を混合させる。
【0034】
キレート剤の使用については、保護剤に銅イオン等の金属イオンが含有されている場合、過酢酸製剤を混合した際にも分解作用を防ぎ、平衡状態を維持する必要がある為、キレート状に金属イオンを挟み込む形で安定的な錯体を作り、封鎖・隠ぺい状態の作用により、保護剤中では金属イオンを不活化させておき、使用時の噴霧等でキレート状から解放され、過酢酸製剤や金属イオン本来の抗菌、抗ウイルス等の効果の有効性を示す。
【0035】
また、光触媒を応用する分野は、光触媒反応だけに拘らず柔軟な発想で他の技術との組み合わせが試みられているが、本発明の保護剤は光触媒溶液等が、壁や床等の固体物以外でも殺菌抗菌等の光触媒効果を持続させる事に着目し、手肌に保護剤を噴霧・塗布をした状況に於ける酸化チタン入り微粒子パルプの粒径や手指の摩擦による塗擦方法を利用した場合、手肌への摩擦効果の指標である摩擦係数は接線力と法線力との比で表されるが、人間の指先においてはその柔軟性により静止摩擦係数は1.5以上、状況によっては2.5を超える。多くの金属間における摩擦係数が実験結果でほぼ0.6~1.2の間にあることと比較すると人間の指の摩擦係数はかなり大きいことがわかる。このことから人間は様々な角度の力を指先から発生でき、多くの冗長な解の中から最適解を選ぶことができると考えられる。その結果、指全体として巧妙な運動が実現され、一定の摩擦係数では説明できない現像が生じる。人間の指の摩擦特性は摩擦方向によって異なり、指が物体を引っかく方向の摩擦係数はその逆方向のそれに比べて大きくなることが見い出され、固体間の摩擦とは異なり人間の指は弾性を有しているために、指表面での摩擦は縦荷重以外に接触面積が影響すると考えられる。しかも人間の指の皮膚は一般の皮膚とは構造が異なり、特に指紋の存在は他の体部には見られない指独特のものである。人間の指先には爪が存在し、これにより指先の剛性を高め、指による作業の効率を高めているが、これら指独特の諸要素の働きかけは指先の作業により様々であり、一様ではなく指先の摩擦係数も測定方向によって指自身の物理的特性が変化すると考えられる。
【0036】
さらに、人間の指は比較的柔らかい組織が骨格を覆い、指の手背面には爪が存在し、これにより指先に圧縮応力が作用した時、指先部の剛性を高めていると考えられ、この爪の効果は皮膚内部が硬化される範囲が大きい。指姿勢に関しては、姿勢が大きいほど指先の内部組織を介して爪に作用する力は大きくなり、圧縮応力が作用し結果的に指先部の硬化の範囲は大きくなる。組織が硬化するとせん断強さが大きくなり、結果的に摩擦力は大きくなると予想される。すなわち、傾向の原因として指先の柔らかさ、爪の存在が関与し、これらの作用により指先表面及び内部組織の状態が変化するためであると考察される。したがって、人間の指の摩擦係数はほぼ0.5~3の範囲にあり、金属間摩擦と比較してかなり大きく、人間の指の摩擦係数は縦荷重が小さくなるにつれて大きくなる。さらに、人間の指の構造によるものであり、特に爪の存在、指先組織の柔らかさによるところが大きい人間の指の摩擦係数は、指姿勢によって変化し、姿勢が低いほど大きくなる他、人間の指の摩擦係数は摩擦方向によって変化し、方向により大きくなるが、この傾向は指姿勢が大きくなるほど顕著に現れ、人間の指の摩擦係数は、ほぼ縦荷重の約0.7乗に反比例する。これらのテータ及び研究理論の摩擦係数等を基に摩擦による塗擦効果を求められるが、細部については[0037]~[0040]に後述する。
【0037】
本発明で使用するnmサイズ~μmサイズの酸化チタン入り微粒子パルプは、非親水性の水に馴染まない特性を活かし、液状にした親水性のナノセルロースは超親水性の光触媒溶液や過酢酸製剤を包み込み、混和した状態で非親水性の酸化チタン入り微粒子パルプを取り巻き付着して浸潤がなされており、それを塗布や噴霧される際には酸化チタン入り微粒子パルプの微粒子は浸潤状態から解放され、本来の非親水性パルプ微粒子の働き、つまり長期間の混和であっても他成分の影響を受けずパルプの硬度を保つ事による酸化チタン入り微粒子パルプの摩擦を利用し、液体垂れの防止と手指の摩擦係数の大きさを鑑み、手肌の使用時の手指による擦り合わせで酸化チタン入り微粒子パルプが光触媒溶液の水分を万遍なく塗膜遷移しながら湿潤乾燥させる塗擦方法を用いることは必須である。即ち、非親水性の酸化チタン入り微粒子パルプは分解殺菌をしたい細菌やウイルス等を吸着させるための担体であり、それらを手指の塗擦による分離・破壊と湿潤乾燥をさせながら光触媒活性成分の蒸着に重要な役割となるのが保護剤を利用した塗擦方法となる。
【0038】
そもそも、粉体粒子の形状係数については、粒子群の性質ないし現象を表わすある関数関係の中に、粒子形状に関係する因子が含まれる場合、これを一つの係数として取り出し一つの係数とするもので、粒状、球状、立方体状、板状、片状、柱状、棒状、針状、繊維状、塊状、海綿状、角状、圭角状、丸み状等がある。形状係数は均斉度、充足度、球形度、円形度、丸み度、表面指数、体積形状係数と表面積形状係数、比表面積形状係数等で求められる事や、形状に関係する粉体物性に基づいて具体的な目的に直接結びついた評価を行う嵩密度の測定、ストークスの測定がある事は[非特許文献18]に示されている。形状と粒子径はかなり密接な関係があり、その中でも等沈降速度球相当径は、流体中を粒子が沈降するときの終末速度と同じ沈降速度を有する球の直径によって示されるストークス径や立方体相がある。さらに、二次粒子の構造では、結晶的に単一と考えられる単位粒子(一次粒子)が数個もしくはそれ以上集合して複合粒子(二次粒子)を形成する。集合するときの粒子間の力は、化学的結合力による場合と物理的なファンデルワールスカや磁気的引力による場合に大別されるが、前者を分離させることが困難で単位粒子として扱う凝結粒子または凝集体、後者を比較的容易に一次粒子の分散をする集団粒子または集合体といわれ、両者の区別は顕微鏡による幾何学的形態のみからは困難であり、沈降法等の物理的方法に決められる。例えば、白色顔料に用いられる酸化チタンは約0.3μmの立方体の一次粒子が数個集合し、これのみでは凝集体か集合体かの区別ができないが、この粒度を沈降法で測定すると約0.8μmとなり、吸着法や透過法による平均値もほぼこれと同じ値が得られることから、単なる集合体ではなく凝集体であることがわかる。これは酸化チタン粉体の製造工程中の理によって一次粒子が凝結したと考えられ、一次粒子が結晶軸をそろえて集合して集合体や凝集体を形成することがある。五酸化バナジウム(V205)ゾルの粒子は糸状であり、これが繊維軸(長軸)をそろえて集まり、いわゆるタクトイドを作ることはよく知られ、このような平行凝集体は水酸化鉄(FeOOH)、水酸化アルミニウム(AlOOH)、三酸化タングステン(WO3)にも見られる。合成法で得られた炭酸カルシウムは通常2-3μmの紡錘形をしているが、特別な場合は0.05μmの立方形の超微粒子となり、この紡錘形の大粒子は超微粒子がまず集合し次第に凝結した単一粒子になると思われる。大きな結晶から分解、還元、酸化などの固体反応によって得られた粒子の場合、もとの結晶の外形をした集合形態を示すことがあり、このような凝集粒子をとくに形骸粒子ということもある。金属酸化物などの還元によって得られた金属粉体にはこのような粒子のものが多く、もとの結晶の中に新しい結晶の核ができ、それが新しい結晶粒子になるので大きく成長していく粒子の結晶軸は母結晶と一定の結晶学的関係があるトポタクティック反応、さらに、粒子の微細構造として粒子表面を簡便な工業試験上の電子顕微鏡により観察すると、粉体の焼成体ではその生成条件や添加物により結晶粒の大きさや形が異なり、物性に大きく影響し、粉体材料の形態学的検討は粉体材料を扱う上で避けて通れない問題で、粉体の粒度分布一つをとってみても粒子形を全く無視したやり方では粒度分布が不明となる事から、粉体の特性を活かし、手指の摩擦による塗擦方法や保護剤に粉体を用いるにはそれらに合わせた粉体を利用するのが好ましい。
【0039】
また、付着による粒子間力の接触する粒子同士やその付近の粒子の間には、粒子間に引っ張り合う力が働く他、液体によるブリッジ形成では、液体には粒子間をつなぐ効果がありキャピラリー結合を生み出し、粒子の独立性を低下させる。これらのメカニズムは粒子間の独立性を制限する効果があり、一般的にはその影響が強くなるほど、粉体の流動特性は低下する。したがって、乾燥し始め或いは水に濡れた肌や手のひら、指先等で粒子粉体が定位置量を確保した粒子は粒子同士で繋がり、払い落そうとしても強く抵抗し、複数回におよび払い落とす必要になる。さらに、粒径の小さな粉体は付着力が強いとの誤解が見受けられるが、これは必ずしも事実とは限らず、この場合、個々の粒子の質量が小さく、したがって重力に対する凝集力の相対的な規模が大きいため、凝集力の絶対値が小さくなる可能性はあるが、粒子に働く重力は小さくなる。つまり凝集力が大きいため、その集合である粉体は粒子同士、凝集集団に働きかけられ落ち難くなることから、粉体が手指等などで圧密された場合は、粒子が結合させられるため、摩擦力と物理的固着による荷重の方が常に優勢となり、このような状況下では接触点の数、接触圧、および粒子自体の伸展性に応じて接触面積が増大し、付着性の高い粉体に合わせてプロセス設計および構成が最適化されている場合、そのような粉体を、効率的に接着性を高めることが出来るように重要なプロセスや用途に適する粉体の特性を最適化することにある。さらに、粉体の摩擦特性は粒子形状、粒径とその分布、粒子の材質および表面吸着物質の有無など個々の粒子に関係する性質と、空間率や充填構造など粒子集合体としての層に関係する性質など多くの因子の影響は同時に受け、粉体層の摩擦挙動は非常に複雑であるとし、粒子集合体の特性である動摩擦角と、個々の粒子の性質である形状および粒径との関係について[非特許文献15]で考察されている。それによると、粉体層の内部摩擦角は粒子の形状や粒径などの影響を受けるが、同時に粒子の材質や表面の吸着物質などの影響も受ける。層の摩擦特性に及ぼす粒子の形状以外の因子の影響を避けるため、材質と粒径がほぼ等しく形状だけが異なる場合、粒子の材質や粒径が同じであれば粒子の摩擦特性はその形状によって決まるが、偏平な粒子の層を剪断した場合、剪断変位が大きい限界状態では粒子は剪断方向に配向するためφが低くなりの形状以外に粒径の影響も受けることが考えられた結果、層の摩擦特性は粒子形状と強い相関関係を持っているものと考えられ、粒子形状および粒径の関係は粉体層の動摩擦角は粒径の影響をあまり受けず、粉体層の動摩擦角は円形度またはWadellの球形度からほぼ推定でき、摩擦は偏平な粒子ほど小さく、かさばった粒子ほど大きくなることが証明されている事から、保護剤では摩擦特性がより得られる粒径や粒子形状を考慮した酸化チタン入り微粒子パルプを1種または2種以上使用する場合もある。
【0040】
その上、超親水性の光触媒溶液を包み込んだ親水性のナノセルロースと混和した際に粒子全体が包み込まれた酸化チタン入り微粒子パルプは、塗布や噴霧時の液体垂れの防止の他パルプの微粒子が親水成分から解放され手肌に付着した保護剤を手指により擦り合わせると、光触媒溶液成分を被膜させながら非親水性の酸化チタン入り微粒子パルプが光触媒溶液の塗擦作用をした水分を手指等の摩擦で乾燥させる塗擦方法により、保護剤をハンカチやタオル等の繊維物で拭き取る必要も無いため、衛生的な上、どこでも使用が可能である。勿論、パルプ微粒子はnmサイズ~μmサイズの為、擦り合わせてもパルプ成分が目に見える形とは成り得ないが、非親水性のパルプは分解・破壊をしたい細菌やウイルス等を吸着させるための担体となり、手肌や繊維の塗擦による分離・破壊と乾燥時における光触媒活性成分の蒸着で手肌や個体物の抗菌、抗ウイルス効果が持続可能となる。したがって、人間の指先において、その柔軟性により静止摩擦係数は1.5以上、場合によっては2.5を超え、多くの金属間における摩擦係数がほぼ0.6~1.2の間にあることと比較すると人間の指の摩擦係数はかなり大きく保護剤のパルプを利用した塗擦方法は、より重要な事になる。
【0041】
前述の酸化チタン入り微粒子パルプの摩擦を利用した塗擦方法は、例えば酸化チタンを凝集して微粒子パルプを入れると微粒子パルプの水素結合を破壊する事は無く、酸化チタンに直接接する面積も減らす事や、例えば石原産業株式会社より提供された酸化チタンW-10を使用した酸化チタン入り微粒子パルプにより粒子硬度を保つことで、保護剤を噴霧または塗布後の摩擦作用が維持され、保護膜となった手肌等に紫外線や可視光線の照射があれば皮膚表面に付着した菌やウイルスが分解され塗擦作用が得られる。但し、二酸化チタンについてはW-10の他、ST-K211、可視光ではMPT-623白金化合物担持酸化チタン、水分散体STS-427等の使用も効果的と考えられるが、堺化学工業株式会社等、各社の酸化チタンの粉体または水分散体でもよく、限定しない。
【0042】
さらに、[非特許文献3]では、酸化チタン不織布の光触媒反応によるウイルス不活性化についても開発実験の結果により一部で有効性も認められている中で、確定的な報告は検討中とされているが、本発明の液状化し触媒が活性化された保護剤を衣類やマスク等の表面に塗布または噴霧させる場合も酸化チタン入り微粒子パルプの酸素吸着作用と手指等に付着させて使用する事で塗擦効果を遷移固定化させ、活性化された光触媒作用により菌やウイルス等の抑制が期待出来る。
【0043】
また、光触媒活性様式により活性化した光触媒溶液は、紫外線や可視光等の使用する環境に左右されずに塗擦作用が得られる事から、保護剤に使用する事で、光触媒の活性が得られない就寝時等の環境でも保護膜として塗擦作用が得られる。
【0044】
その上、酸化モリブデン(MoO3)は、抗菌・抗ウイルス活性を示す化合物の一つであり、特にエンベロープをもたないウイルス、エンベロープをもつウイルスのどちらに対しても抗ウイルス活性をもつと考えられ、モリブデン酸化物と酸化チタンを組み合わせた可視光応答形光触媒材料(Mo/TiO2)は、暗所下よりも白色蛍光灯照射下で、より高い抗ウイルス活性が得られると示されており、本発明の保護剤でも酸化モリブデン(MoO3)を光触媒溶液等に含有させることで、継続的な抗菌・抗ウイルス作用が得られる。
【0045】
さらに、ケイ素塩類の1つであるケイ酸カルシウムは以前から医薬品原料(医薬品添加物規格,医薬部外品原料規格に収載)として、油状または油溶性ビタミンの吸着剤、生薬抽出物の粉末化等の用途に利用されているが、一般に比表面積によって表されるナノサイズの細孔に加え、マクロ細孔に液体を吸収・保持する能力があり、さらにはマクロ細孔の容量に比例してその能力が増減すると考えられる事から、本発明の保護剤でも手肌や繊維等に噴霧・塗布すると微粒子パルプを吸着させたケイ酸カルシウムが保護膜状に吸着固定化する一方、ケイ酸カルシウムの使用容量により表面を硬膜化させ、被膜部分の崩壊性も高く得られる特性を活かし、手肌等の表面に付着した菌やウイルスに吸着させ酸化チタン入り微粒子パルプの摩擦を利用した塗擦方法により、高い塗擦作用の保護剤となる。
【0046】
一方、紫外線は可視光線よりも波長の短い(=エネルギーの高い)光の一種で波長の長いものから順に約320~400nm波長のUV-A、約290~320nm波長のUV-B、約200~290nm波長のUV-Cとある。紫外線による殺菌効果のピークは260nm程度で、UV-LEDの375nm短波長や蛍光管タイプの315nm~400nmではウイルスの不活化には利用出来ない。現在では、260nm前後のUC-Vが出せる滅菌灯やUV-CLEDが流通しているが、それらがウイルスの不活化の有効性は検証出来ていない。本発明の光触媒活性様式はあくまでも、噴霧した保護剤の光触媒を活性化させるための装置であり、ウイルスの不活化は活性化させた保護剤により効果が得られるが、そもそも紫外線照射は人体の疼痛緩和の治療等に応用され、皮膚疾患や結核、外科的療法に使用されており、人体に対して有効であると公知されている。
【0047】
また、光触媒は太陽光からの紫外線照射により作用する事は既に公知され、光触媒の反応の速さは、光強度×吸収強度×反応効率である。現在では[特許文献6]に示されたように可視光応答型でも様々な開発が為され、光触媒作用が認められているが、本発明の光触媒活性様式を使用すれば、恒常的な紫外線が得られる為、必ずしも可視光を必要としない。保護剤に付帯させる光触媒活性様式は、保護剤中の光触媒活性を目的とし、保護剤が充填されている容器に付帯させ、外出先の携帯用、紫外線や可視光の微弱な屋内外、手袋等の装着をする仕事の前後や水等での手洗いが出来ない環境で、光触媒活性様式による保護剤の活性化による塗擦効果を向上・安定化させ得られる非常に重要な装置となる。ルチル型二酸化チタンの場合、光触媒の活性に最も有効と公知されている紫外線の波長ピークは380nm以下と言われ、本発明の光触媒活性様式では中心波長365nmのブラックライトの他、保護剤成分により波長を選択するため限定しない。
【0048】
本発明の光触媒活性様式は上述された紫外線照射を利用するため、保護剤を充填する容器(噴霧口含む)は石英の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ化炭素ポリマー、アクリル樹脂等があるが、紫外線を透過する材料であればそれらに限定しない。但し、光触媒活性様式を使用しない場合の充填容器の材料は紫外線透過の有無に限定せず、任意である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】光触媒反応による抗ウイルス効果を示した図である。
図2】光触媒反応によるウイルス不活化の仕組みを示した図である。
図3】繊維の空間および繊維にパルプ粒子が付着している状態に光触媒酸化チタンが付着した状態を示した図である。
図4】光触媒で大腸菌を死滅させる仕組みを示した図である。
図5】金属酸化物の抗ウイルス活性を示した図である。
図6】方向による摩擦係数の比較を示した図である。
図7】接触圧力に対するせん断強度の依存性を示した図である。
図8】接触圧力と摩擦係数を示した図である。
図9】人の指の接触において弾性接触実験値との誤差の最小二乗近似を行った結果を示した図である。
図10】摩擦係数の法線への依存性を示した図である。
図11】光触媒活性様式の一例を示した断面図である。
図12】光触媒活性様式の一例を示した使用時断面図である。
図13】光触媒活性様式の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
さらに、感染症を引き起こす細菌とウイルスの大きさは、細菌が1~10μm、ウイルスは0.02~0.2μmであり、大きな違いがある。細菌は単細胞の微生物で自己増殖し、ウイルスは核酸とそれを包む膜というシンプルな構造の他、ミミウイルスの様な糖タンパク質を主成分とした表面繊維と呼ばれる繊維状の物質もあり、人体を含む他の生物(借宿)に寄生して自己繁殖する。これらのウイルス表面にあるタンパク質のヘマグルチニン(HA)が人体(宿主)細胞に吸着、侵入、脱殻、合成、成熟、放出する繰り返しにより体内で増殖するが、光触媒反応の酸化分解効果により、ウイルス表面のタンパク質に変性が起こるため吸着出来なくなり、人体(宿主)に侵入し核酸を増殖する事も無い。したがって、この段階でウイルスが光触媒反応によって、ウイルスの不活化(感染が出来ない状態)がされる。つまり、これら侵入メカニズムを防ぐため、手指等への滅菌、殺菌、消毒、或いは抗菌、除菌をし、ウイルス等の侵入を防御する事である。但し、人為的に目や口、鼻の中や傷口等にウイルス等を挿入させる場合は別とする。その上、図2のように光触媒反応は、ウイルスの膜構造を分解し、中に入っている遺伝情報である核酸(RNA)にも損傷を与え、最終的にはウイルス由来の有機物は完全分解に至る他、ウイルスの10倍以上の大きさのある細菌に対しても光触媒の強い酸化分解力により、菌が不活化されるだけでなく、最終的には有機物として完全分解される。これらを鑑みると光触媒の強い酸化分解を得るには紫外線を照射させ、活性状態を恒常的する事が最も重要であり、本発明の光触媒活性様式保護剤がそれらを可能とした。光触媒の反応機構は、他の除菌・抗菌・抗ウイルス剤と異なり、図4に示した大腸菌を例えたように、細菌・ウイルス等、相手を選ばない非選択性で効果を得て、結果として耐性菌の出来難さにも繋がる事から、噴霧または塗布された保護剤を手肌に蒸着させ塗擦作用と保湿保護を同時に可能とするハイブリッド保護剤となる。
【0051】
また、酸化チタンの粒子形状を金平糖型等にした上で、骨や歯を構成している物質で生体親和性に優れ、表面に光触媒活性を持たないアパタイトを金平糖のツノのようにつけて被覆させ、この金平糖型の粒も開発・販売されており、それを使用する事で人間の体液に近い組成を持つ疑似体液に酸化チタン粒子を浸漬し、体温に近い温度に保つことにより酸化チタンの表面に骨や歯ができるようにアパタイトが自然に生成して調製される光触媒溶液を保護剤に利用する事で、酸化チタンのアパタイト被覆も必要が無く、より安価で効果が得られる保護剤となる。
【0052】
光触媒溶液に使用する酸化チタンはバンドキャップ3.2eV、波長換算で約388nmの光触媒活性の高い天然のアナターゼ型酸化チタン(以下光触媒溶液)またはブルッカイト型酸化チタンやルチル型酸化チタン(以下光触媒溶液)を利用するが、光触媒溶液は不導体被膜を作る特性があり、これは耐食性に優れ、密着性も十分得られる。その上、光触媒酸化チタンの強い酸化力は、表面の汚れを分解・除去する事だけではなく、モラクセラ菌を含めた細菌やウイルス・糸状菌・ガン細胞等を不活性化できることも報告されており、特定の細菌に限定されることがない酸化チタンの抗微生物特性に着目した医学・医療・衛生材料分野への応用も活発に行われている。この効果は光触媒反応を活用するので、コーティングの基本的な考え方は分解活性を主に活用したセルフクリーニング用途と同様となるが、[非特許文献1]に示されている通り、光触媒には殺菌や抗菌・抗ウイルスが可能であると公知されており、酸化チタンは硝酸やクロム配に強い特徴を有し、酸化腐敗や手肌の隙間への薄い被膜を形成する事に特化できるもので、光触媒活性様式による保護剤の活性化で十分な効果を示すと同時に、付着した汚れの隙間に入り込む微粉末パルプの表面張力のエネルギーも加わり、菌やウイルスを殺菌や剥離分解し不要な物質を排除できる事により強い効果が得られる保護剤となる。
【0053】
さらに、保護剤中の光触媒成分は触媒反応の前後で変化しないため、粒子が洗い流されない限り半永久的に使用できる。例えば手肌の皮膚やマスク等の繊維に塗布してあれば、付着したウイルスを徐々に不活化する他、空気清浄機等のフィルタを光触媒加工し、光の照射のうえ送風すると飛沫やエアロゾルに含まれるウイルスを不活化する事も可能とする研究も為されており、光触媒のより高い効果を持続的に得るには、紫外線等の光の照射で活性酸素等のラジカルを何れの環境においても素早く作り出して、ウイルスの不活化や菌の除菌をすることが重要である事から、本発明の保護剤はより有効である。
【0054】
また、微弱な紫外線や可視光でも応答する超親水性光触媒の一例として、固体表面の濡れ性は表面自由エネルギーを与える化学的性質の他、表面粗さという物理的な性質によっても支配される。固体表面のラフネスが大きくなり、表面積がr倍になったとすると、固体表面の表面自由エネルギー、固液界面の界面自由エネルギーもそれぞれr倍になる。したがって、表面積がr倍となった時の接触角θはYoungの式から次式となる。
【数2】
ここで、γ、γSLはそれぞれ平滑な固体表面における固体表面の表面自由エネルギー、固液界面の界面エネルギーである。これを平滑な表面での接触角θを用いて表すとWenzelの式が得られる。
【数3】
この式から表面粗さが大きくなると、接触角θはθ<90°のときにはθより小さくなり、θ>90°のときには逆に大きくなる。即ち、固体表面のラフネスが大きくなることで、親水的な表面はより親水的になり、撥水的な表面はより撥水的になる。酸化チタン表面に微構造を付与することにより、光誘起親水化特性が向上したり、暗所における超親水性状態の維持性向上が公知されている。さらに、異種金属酸化物光触媒との複合化による高活性化として、酸化チタンと酸化タングステンを積層した薄膜の光誘起親水化は、酸化タングステンを下地にして酸化チタンを積層した薄膜では、酸化チタン単独では親水化しないような光照射条件下でも超親水性状態が得られる。酸化タングステンの伝導帯の下端および価電子帯の上端は、酸化チタンに比べてそれぞれエネルギー的により深い位置にある。そのため、光照射を行うと酸化チタンで生じた励起電子は酸化タングステン側に、酸化タングステンで生じた正孔は酸化チタン側にそれぞれ電荷移動する。このことは酸化チタン自体の光電荷分離効率の向上に繋がるとともに酸化チタン表面で利用できる正孔が増えることになり、光誘起親水化反応が促進されたものになる他、酸化タングステンのハンドキャップは2.8eVで可視光も一部利用できることが高活性化につながり、酸化タングステンをアイランド状に酸化チタン表面に析出させた系でも高活性化が達成されている。一般的に、光触媒酸化分解反応の量子効率は数~数十%であるのに対し、光誘起親水化反応は0.1%にも満たない非常に低い数値が出され、酸化チタン表面の親水化の有利となる条件を付与させることで、光誘起親水化に利用される正孔の数を倍加させても酸化分解反応の量子効率は低下させずに維持ができる。
【0055】
過酢酸製剤は80ppmの濃度では、30秒の短時間で5桁以上の菌の減少があり、10ppm程度の低濃度でも1分間で3桁以上の減少が認められ、反応物である過オクタン酸を含む過酸化製剤として酸性触媒の存在下で酢酸と過酸化水素から生成されるが、過酢酸は加水分解をしやすいため、酢酸、過酸化水素及び水との平衡状態で存在し、低濃度、室温で迅速な殺菌効果があり、分解物の毒性や環境汚染がなく、カタラーゼで分解されずに効果が持続することが利点とされている。過酸化製剤は日本国内では関東化学株式会社社・パーサンシリーズ等で商品化されている他、米国メディベーター社(旧ミンテック社)によって開発された低濃度過酢酸製剤のアクトリルは希釈の必要がなく、日本国内の過酢酸系溶剤PBioアクトリルは唯一EPA(米国環境保護局)の認定を受けた除菌剤で細菌芽胞、結核菌、ウイルス等に優れた効果を持ちながら毒性が低く安全に使用できる。
【0056】
過酢酸製剤に含有される過酢酸の安定性は、JECFA及びFSANZによれば、食品中で速やかに水、酸素及び酢酸に分解され、その半減期は数分とされている。仮に食品表面に過酢酸が残留し、ヒトが摂取したとしても、口腔内で分解され、さらに消化管内に入ったとしても、pHの低い胃内では安定であるが、腸管内や細胞内では非酵素的に分解されると考えら、過酢酸は生体にとって特段問題となるような遺伝毒性はないと考えられている。その上で、過酢酸について急性毒性、反復投与毒性及び生殖発生毒性の試験成績を検討した結果、過酢酸に胃粘膜刺激性があるとは認められず、ラット13週間強制経口投与試験において少なくとも0.25mg/kg体重/日(過酢酸として)では毒性影響が認められず、発がん性についても判断できる知見は認められていない。したがって、過酢酸の安定性、体内動態のメカニズム、各種毒性試験における結果及び実際の摂取量を考慮するとともに、分解物である酢酸については食品由来の摂取量が多く、ADIを特定する必要はないと考えていることから、添加物「過酢酸」が添加物として適切に使用される場合、安全性に懸念がないとされ、ADIを特定する必要はないと判断されている。
【0057】
また、過酢酸製剤は過酢酸、酢酸、過酸化水素が平衡されその反応により継続的な過酢酸で芽胞菌を含む細菌、真菌、ウイルス等、ほぼすべての微生物に対して短時間で幅広い効果を示すが、この平衡状態を保護剤での金属イオン下で維持するにはキレート剤を含有する事が必要となる。一般的に、キレート剤には有機系イオン封鎖剤のヒドロキシ・カーボネイト系、例えばクエン酸、グリコール酸、グルコン酸やその塩等、アミノ・カーボネイト系、例えばEDTA、アセテイト、エチレン、ジアミン、テトラ、トリニトリック酢酸等、ヒドロキシ・アミノカーボネイト系、例えばヒドロキシ、エチレン、ジアミン、四酢酸等があるが、有機リン系のキレート剤は分散系でスケールの付着防止等に使用され、アミノカルボン酸系に比べ酸性領域での水溶性が高く本発明の保護剤でも使用する。
【0058】
キレート剤(金属封鎖剤)の添加量については、保護剤の金属イオン量とキレート剤の種類とよって異なり、例えば、EDTA・モリブデン酸ナトリウムにも含有されている4ナトリウム塩・4水和物(キレスト株式会社社製・キレストD)とカルシムイオンの場合、水の全硬度が40ppm(1リットル中に炭酸カルシウムが40mg存在する)の場合、キレストDで金属イオンを封鎖するにはキレストDのC.V.(キレート剤1gで封鎖できる炭酸カルシウムの量をあらわす)が221mgCaCO3/gなので40/221=0.18g/リットルの添加量が必要となり、1リットルで0.18gの数値を目安として使用するが、条件により若干異なる場合がある。
【0059】
過酢酸(PAA)は、沸点110℃、融点-0.2℃、弱酸性(20℃におけるPKα8.2)、無色、刺激臭のある液体で、水とはPAA56.4%のとき最低共沸混合物(45mmHg34℃)を作り、溶液状態では比較的安定で、20℃以下では徐々に、20℃以上ではかなり急速に分解して酢酸に、100℃付近では速やかに分解してAcHとPAAになることが知られている他、PAAのイオン分解は痕跡程度の金属イオンなどによって急速に分解することも公知であり、Achの存在しない系ではCo以外の金属イオンのPAA分解力はあまり大きくないが、AcHが存在する見かけの分解力は大幅に増大し、Mnでは5分間でPAAの90%以上が分解することが認められている。そのため、過酢酸の(PAA)の安定剤としてキレート剤やリン酸塩などであり、ピコリン酸,キノリン誘導体、ピロリン酸塩、ピロリン酸のアルキルエステル、ポリアミノカルボン酸、ロダンカリ、エチレンジアミン四酢酸などを含む多数の処方が特許として発表されている。
【0060】
例えば、種種の薬剤による赤潮プランクトンの駆除に関する研究された中では、過酸化水素水がもっとも実用的であるとされているが、過酸化水素水の比重が海水よりやや高いために淡水域や海域に散布しても沈降して拡散しないという欠点があり、比重の調整を必要とした。そこでALCの多孔体が過酸化水素水の良好な保持特性を持つことに着目し、効果的な拡散方法が考案され、実験としてALC顆粒の粒径2~5mmに所定濃度の過酸化水素水1ml/gを吸収させて実際に発生したプランクトンに投入しプランクトンの運動性・運動停止および細胞破壊の効果を判定するとプランクトンの100%が細胞破壊をおこした。これらを鑑み、過酢酸等の比重は重いが、吸液性が高いケイ酸カルシウムを挿入する事で保護剤中の過酢酸ナトリウムの比重調整上でも有効となり、容器に充填された保護剤全体に満遍なく拡散させ安定した効果を求められる。
【0061】
また、過酢酸製剤でも含有されている過酸化水素は、酸化チタンに混合すると、酸化チタン粉末を分散することが可能であるが、沈殿物を完全に分散させるのは出来ないため、クエン酸水和物で500mlに対し25gまでを混合し実験した結果、2時間経過後の酸化チタン、酸化タングステンの溶解が見られ、より安全性を考慮すると保護剤はクエン酸水和物を採用した。ただし、クエン酸水和物の混合で上澄み液を得た後、それを濾過して酸化タングステンやモリブデンの触媒の働きで光触媒の効果を維持させた無色透明で無害な溶液としても良い。但し、濾過の有無は任意であるが、濾過による効能効果の減衰を防ぐ必要を要するものとし、その濾過度合と方法も任意となる。
【0062】
さらに、図1は、紫外線のみと、酸化チタンによる光触媒反応時にウイルスの減少を示したが、ウイルスの大きさは菌に対して1桁小さく、菌より小さいウイルスを殺すことは光触媒にとり簡単ではあるが、0.4mW/cmの紫外線でウイルスを分解するのに1~2分かかるため、室内では更に時間のかかる可能性がある。これらの事から、光触媒活性様式を使用することで光触媒溶液が恒常的に活性化され、屋外の紫外線と同様の効果で屋内外の場所を限定する事無く使用が出来る本発明の保護剤の高い有効性を示すものである。但し、屋内の天井や壁等の広範囲に渡る場合は、可視光応答の酸化タングステンや金属化合物を使用した保護剤を利用する。
【0063】
紫外線は、波長が短く、エネルギーが高くなると物体に吸収されやすくなり、222nmの波長では皮膚ごく表面の20μm程度の厚さの角質層などで止まり、人体の生きている細胞にまで到達せず、炎症や皮膚癌などを引き起こさない一方で、物体の表面に付着した直径0.1μm程度のウイルスの中までは届くため、遺伝子に損傷を与えて不活化できる。但し、UV-Aでは菌やウイルスを1/100に減らすのに50J/cm2が必要で、紫外線強度が一番強い場合でおおよそ2.5mW/cmなので、50/2.5×10-3=20,000secで5.5時間程必要になり、UV-Bでは1/100に減らすのに、0.45J/cmが必要である。これは季節の日照時間で変動し、7月~8月では、25kJ/m/日となっており、0.18日、ピーク時であれば1.6時間程度で済むが、UV-BはUV-Aよりも吸収されやすく冬場は1/5程度に大きく落ち、滅菌・不活化にはほぼ丸一日必要と言う計算になる。これらを考察すると、UV-AやUV-Bの紫外線のみでの滅菌・不活化の効果を得るためにはかなりの時間が必要であり、例えば医療器具等の様に紫外線照射を断続的にする場合を除くと、光触媒に紫外線を照射させて滅菌・不活化の効果を得る本発明の保護剤がより確実に有効となる。
【0064】
また、新型コロナウイルスに関しての様々な研究開発により、222nmを照射して、細菌・ウイルスのDNAやリボ核酸に損傷を与え、複製による増殖機能を失われる装置も一部で商品化されている。222nmでの紫外線照射で99%ウイルス不活化するためには、天井から0.5mの距離で20秒、1.5mの距離で2.4分、15mの距離では6.7分位が必要になるが、実運用に関しては、222nm紫外線の許容限界値は1日あたり8時間以内で、22mJ/cm以下にする必要がある。ただし、タンパク質の吸収係数で10倍以上差がある222nmと254nmであるが、254nmでは紫外線の生体透過率は厚み20μmで30%以下に対し、222nmでは0.01%以下となり、皮膚内部まで紫外線は浸透しないため、皮膚に対して安全な上、角膜に対しても222nmを吸収し、白内障を引き起こすことはなく、角膜透過率も0.01%以下の安全な紫外線のみを出力される商品も開発されている。本発明の保護剤における紫外線活性装置は光触媒の活性化を主目的とし、塗布される際の紫外線照射は短時間でも効果が得られ、皮膚への影響も考慮したものとなる。
【0065】
さらに、バクテリアが形成する炭酸塩種は、炭酸塩とひと言でいっても、様々な種類があり、例えば石灰石である炭酸カルシウム(CaCO3)、研磨剤や滑り止めに使われる炭酸マグネシウム(MgCO3)、菱鉄鉱であるシデライト(FeCO3)などがあり、更に炭酸カルシウム(CaCO3)の中にも、同じ化学式を持つが結晶構造の異なるカルサイト(方解石)、アラゴナイト(霰石)、ヴァテライトなどがある。地球上に存在する炭酸塩岩ほとんどはカルサイト、アラゴナイト、そしてマグネシウムが含まれる炭酸カルシウムであるドロマイト(CaMg(CO3)2)の3種で占められると言われ、環境中で無機的にどの炭酸塩種が形成されるのかは、塩分・温度・種々のイオン濃度などにより決定されることが明らかになっているので、これらについても、光触媒溶液の有効性とあわせて一考する。
【0066】
また、ウイルスにはタンパク質の殻の中にカプシドを有する核酸があるが、そのタンパク質の一部を破壊する事でウイルスを不活化する事から、光触媒の強い酸化・還元力によってウイルス膜タンパク質の一部に損傷を与え、感染力を低下させることが重要である。紫外線や可視光により光触媒液活性をし、ウイルスが細胞に吸着することが出来なくさせ、宿主への細胞に感染する能力を失うが、銅水溶液による抗ウイルス効果で全てのウイルスではないが、不活化させる事も可能となる。
【0067】
金属酸化物についてのバクテリオファージを対象に抗ウイルス活性評価が行われているが、モリブデン酸化物であるMoO3が高い抗ウイルス活性をもつことを明らかになっている。中でもインフルエンザウイルスやノロウイルス代替のネコカリシウイルスを対象にMoO3の抗ウイルス活性を調べたところ、バクテリオファージを対象とした時と同様に高い抗ウイルス活性をもつことが明らかとなった。MoO3は、抗菌性をもつことは知られていたが、高い抗ウイルス活性も示すという新たな知見が得られ、MoO3のもつ高い抗ウイルス活性を活かして、酸化チタンとモリブデン酸化物を組み合わせた可視光応答型光触媒材料を浸漬法にて作製したが、酸化チタンをルチル型に変えるなど作製方法を改良し、酸化チタンとモリブデン酸化物を組み合わせた材料(以下、Mo/TiO2)を新たに作製し、バクテリオファージ、並びにインフルエンザウイルス、ネコカリシウイルスを対象に作製した材料の抗ウイルス活性を調べたところ、暗所下でも低い抗ウイルス活性が認められたが、1000 lxの可視光照射下では、さらにウイルス感染価が低下し、高い抗ウイルス活性が観察された。これらの結果は、Mo/TiO2が可視光応答性をもちながら、抗ウイルス活性を示すことを示唆されている。
【0068】
モリブデンは、ヒトを含む全ての生物種で必須な微量元素であり、人体には体重1kgあたり約0.1mg含まれていると見積もられ、骨、皮膚、肝臓、腎臓に多く分布している。モリブデンは、食品の中やサプリメントでも使用され、過剰摂取した場合でも尿中に排泄されるため健康に害を及ぼす報告はない。
【0069】
抗菌活性を持つことが知られている金属イオンを含む酸化物のFe2O3,MnO2,CeO2,MoO3,SnO2,NiO,ZnOの抗ウイルス活性値を図5に示したが、白色蛍光灯照射下、暗所下ともに酸化モリブデン(MoO3)においては、非常に高い抗ウイルス活性が認められている。また、バクテリオファージφ6についても、酸化モリブデンが高い抗ウイルス活性が示されている事から、エンベロープをもたないバクテリオファージQβ、エンベロープをもつバクテリオファージφ6のどちらに対しても高い抗ウイルス活性を示したのは7種の金属酸化物の中では酸化モリブデンである事から、本発明の保護剤では、光触媒材料として、モリブデンまたはモリブデン酸ナトリウムを使用し、酸化チタンとの組み合わせにより高い抗菌・抗ウイルス活性が得られる事になる。
【0070】
さらに酸化モリブデンは、暗所下でも高い抗ウイルス活性を示しており、光照射効果すなわち可視光応答性は低いものである。その上、インフルエンザウイルスやネコカリシウイルスを対象に抗ウイルス活性は、バクテリオファージと同様に高い抗ウイルス活性を持つ事から、酸化モリブデンは、抗菌性の他、高い抗ウイルス活性もある。抗菌・抗ウイルス活性のある酸化モリブデンを可視光応答形光触媒材料として利用する為、実験としてモリブデン酸ナトリウム水溶液に酸化チタン粉末を浸漬し、約80℃に加温して3時間攪拌しながら作製、濾過後の溶液500mlに対し0.001mgの過酸化水素を混合し、暗所下でも抗ウイルス活性が観察された。また、ネコカリシウイルス、インフルエンザウイルスに対しても、バクテリオファージQβの場合と同様に、暗所下より光照射下でより高い抗ウイルス活性を示した結果から、Mo/TiO2が可視光応答性をもつことが考察されている事から、本発明の保護剤でも、モリブデンまたはモリブデン酸ナトリウムを使用し、より高い抗菌・抗ウイルス活性が有効となる。ただし、可視光応答性の更なる詳細については今後の検証が必要となるが、光触媒活性様式を使用する事で、モリブデンの有効性を果たす割合は高くなる。当然、太陽光での照射が可能な場合は光触媒活性様式の使用をする必要はない。
【0071】
ケイ素塩類の1つであるケイ酸カルシウムは、米国では一般に安全とみなされる物質(GRAS物質)として固結防止等の目的で適正製造規範のもと卓上塩に対し2%以下ベーキングパウダーに対し5%以下等の基準に基づき使用が認められている他、欧州でも人に対して有害影響を及ぼさない上限値(UL)は現状の知見からは算定することはできないが、ケイ素換算で一日1人(60kg体重)当たり20~50mg、すなわら0.3~0.8mg/kg体重/日の摂取ならばヒトに対して有害影響を示さないと結論付けている。ケイ酸カルシウムは二酸化ケイ素と同様に三次元の網目構造を有する結晶を形成し、高い吸液性があり、手肌に塗布・噴霧された保護剤を表面に吸着固定化し酸化チタン入り微粒子パルプで塗擦作用が得られ、さらに保護膜を形成する事で一定期間の菌やウイルスの付着も予防が出来る。
【0072】
一方、ナノセルロースは粘性・粘着性があり、水溶性でもあることから手肌に浸潤し易く、保湿・保護剤の役割を果たす効果が大きい事は、ナノセルロースの混入有無の実施試験でも認められている。
【0073】
さらに、セルロースシングルナノファイバーを使うとゲルの調製が出来、保護剤が液体の場合、スプレー等で付着性向上等の効果が期待され、スプレー容器に充填した場合、逆さまにしても使用出来るという効果もあり、価格的にも圧倒的に安価である。
【0074】
セルロース系高分子ファイバーを構成するセルロース系高分子としては、β-1,4-グルカン構造を有する多糖類である限り特に制限されず、例えば、高等植物由来のセルロース、例えば、杉等の木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプ等)の天然セルロース繊維(パルプ繊維)や動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース、化学的に合成されたセルロース(再生セルロース;誘導体含む)などのセルロース・ナノセルロース、キチン、キトサン、シルクなどが挙げられる。なお、前記セルロースは、用途に応じてα-セルロース含有量の高い高純度セルロース、例えば、α-セルロース含有量70~100wt%程度であってもよい。前記セルロースは、単独又は二種以上組み合わせて使用してもよく、セルロース系高分子のうち、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)コットンリンターなどの種子毛繊維などが好ましい。その上、セルロースを原料として得られるアニオン系水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースも優れた増粘性・吸水性・保水性を有するため使用が可能であるが、ナノセルロースと併用でも良い。
【0075】
また、一般的なパルプの利用は紙での使用が多く、これはパルプの軽くて一定の強度が保てる事が1つの理由とも言える。そのパルプと酸化チタンを混合させた市販品の微粉体を使用して、指先で擦り合わせると指紋の中に入り込み指先同士で動かしてもパルプ微粉体の微分がぶつかり合い、指先は酸化チタン入り微粒子パルプの乾燥時に滑らなくなる程の抵抗力である事から、保護剤の酸化チタン入り微粒子パルプは、ナノセルロースや光触媒溶液を手指の摩擦により手肌の角質に擦り込ませ、被膜して塗擦作用をすると同時にナノセルロースの保湿成分も浸潤させる事をパルプ微粒子による塗擦方法とした。しかも、保護剤がスプレーボトル等に水溶液状で充填された場合、上部から中間部に浮遊しているパルプ微粒子はスプレーポンプで吸い込まれやすく、噴霧時の手肌等に必ず塗布され摩擦効果が安定的に得られる事となる。但し、本発明の保護剤にはパルプやナノセルロース繊維質の被膜等が浮遊する場合もあるが、これらは無毒・無害であり、噴霧または塗布する際は、容器を振り保護剤を良く混和させた上で使用する事で、パルプ粒子の粘性が増加し塗擦効果の高い保護剤となる。
【0076】
さらに、パルプ微粉末を添加することにより、保護剤の塗擦性能、特に二次塗擦性能に対するセルラーゼの作用を向上させることである。パルプ粒子は、少なくとも部分的に機械圧力により得られる圧縮で破断、次いで顆粒化形態で好ましくはセルロースを含有し、特に微小な物質として形づくられ塗擦性能に対するセルラーゼの作用を刺激するために酸化チタン入り微粒子パルプ粒子を含有するが当然、酸化チタン入り微粒子パルプ粒子のサイズは小さい事が適しており保護剤の酸化チタン入り微粒子パルプ粒子はμm以下とする。
【0077】
本発明の保護剤は酸化チタン入り微粒子パルプによる塗擦方法を用いているため、それを有効化させる人間の手指による摩擦係数は重要であり、固体間の摩擦とは異なり人間の指は弾性を有しているために指表面での摩擦は縦荷重以外に接触面積が影響する。[非特許文献14]では人間の指の摩擦測定等の実験が行われ、指表面に汗や汚れなどが付着して摩擦面の状態が変わらないように十分洗浄し乾燥させ、最大静止摩擦力は同じ縦荷重下においては動摩擦力よりも大きいことが知られているので、得られた一連の接線力データのうち、最大値を最大静止摩擦力とした結果、人間の指の場合は広範囲にわたって金属よりもかなり大きく、縦荷重によってかなり変動し、低荷重域の摩擦係数も高荷重域に比べはるかに大きく、ほぼ0.5~2.5の範囲にあることがわかった。また、摩擦係数は指姿勢θが小さいほど大きくなることも確認でき、その上、人間の指の皮膚は一般の皮膚とは構造が異なっており、特に指紋の存在は他の体部には見られない指独特のものである。人間の指先には爪が存在し、これにより指先の剛性を高め指による作業の効率を高めているが、指独特の諸要素の働きかけは指先の作業によりさまざまであり、一様ではなく、指先の摩擦係数も測定方向によって指自身の物理的特性が変化すると考えられる事から、指に対して接触板が指付け根部から指先部に向かって滑る方向をBW方向(Backward)、その逆方向をFW方向(Forward)とし、逆方向の測定も行い違いを調べた結果、[図6]に示したように低荷重域で摩擦係数は大きく、高荷重になるにつれて減少していくことがわかり、指姿勢に関しては姿勢θが小さいほど摩擦係数は大きくなることが確認できた。この実験の興味ある結果として、BW方向の摩擦係数のほうがFW方向のそれよりも大きくなっていることが挙げられ、比較的指姿勢が低いときは、摩擦方向による摩擦係数の変化はそれほど顕著には見られないが、指姿勢が大きくなるにつれて、その格差がはっきりと現れた。
【0078】
さらに、人間の指の摩擦解析をそれぞれ行った。真実接触面積を正確に推定することは困難であるため、実験システムのCCDカメラから得られる見かけの接触面積に基づいて解析を進め、摩擦モデルを考え、見かけの接触面積Aと真実接触面積A
【数4】
【数5】
となる。ここでs=λstは見かけの接触面積に対するせん断強さで、実際に測定可能である。そこで、このせん断強さについては、多くの材料においてせん断力sは接触圧力pに依存することが知られているが、ここで用いる見かけの接触面積に対するせん断力sと平均圧力pとの関係は明確でないため、計測システムのCCDカメラによって計測された接触面積を用いて平均圧力pは
【数6】
として求めた。また、接触面における圧力が均一に平均圧力であると仮定して以下の解析を行い人間の指が乾燥アクリル面、水濡れアクリル面で接触したときのpとsの測定した結果を[図2]に示したが、近似的にせん断強さは接触圧力に比例しており次の関係が成立することが明らかになった。
【数7】
ここでs、αは定数でありαは接触圧力pに対するせん断強さsの増加率sは表面力による接触部分(荷重ゼロにおける有限な大きさの接触部分)の単位面積当たりのせん断力である。両者とも指姿勢、摩擦方向によって変化し、一般に乾燥した清浄な指ほど大きくなっている。[数7]のように人間の指についてせん断強さと圧力の関係が線形関係にあるという発見は種々の解析や設計にとって重要である。例えば摩擦係数μの変化が[数7]を基にして簡単にモデル化され、[数5][数7]を用いて次式を得る。
【数8】
[数2]より求めたS、αを用いて[数8]から摩擦係数を計算し、その計算値と実験から得た摩擦係数の比較を[図8]に示したが、接触圧力が増加するにつれて摩擦係数が低下することが[数8]よりわかる。
【0079】
また、[0078]では摩擦係数がsとαというパラメータと圧力pによってモデル化出来ることを示したが、人間の指の場合は接触面積Aは荷重Wの関数として表現できるように思われる事から、摩擦係数を荷重の関数として表すと、指先の摩擦係数が指先に加わる荷重のみによって予想されれば運動計画などにも役立つと考えられ、弾性接触ではHertzの解析が有名である。人間の指も粘弾性要素をもつが指形状は完全な球形ではなく、指表面は滑らかではないため必ずしもHertzの式が成り立つとはかぎらない。ただし、多くの種類の弾性接触において仮定されているように人間の指の接触面積Aが荷重Wのべき数乗に比例し、Aを次式で表す。
【数9】
ただし、a、bは荷重によらない定数であり、[数9]より実験値との誤差の最小二乗近似を行った結果を[図9]に示す。これにより人間の指の接触において、aは65~170、bは0.2~0.4の範囲にあることがわかる。[数6]に[数9]を代入すると摩擦力Fは次のようになる。
【数10】
ただし、pは接触圧力でW/Aに等しい。よって、摩擦係数μは次のようになる。
【数11】
したがって摩擦係数μはWb-1に比例する。ここでsとαは[数8]から得られる定数でありaとbは[数9]から得られた定数であるので摩擦係数は荷重Wのみによって決定される。[数9]の正当性を検証するために、実際の人間の指に関して、横軸にWb-1、縦軸に摩擦係数μをとり、実験値をプロットしたものが[図10]である。ここで、bは[図9]における値をそれぞれ用いた。これより、摩擦係数はほぼWb-1に比例しており近似的に「数9]の関係が成立していることがわかる。
【0080】
さらに、人間の指の摩擦特性を調べた結果、指姿勢角θが小さいほど摩擦係数は大きく、摩擦方向に関して、BW方向の摩擦係数はFW方向のそれよりも大きいと言う傾向があることを見い出した。人間の指は比較的柔らかい組織が骨格を覆い、指の手背面には爪が存在し、これにより指先に圧縮応力が作用したとき、指先部の剛性を高めていると考えられこの爪の効果はBW方向のほうがFW方向よりも大きく、皮膚内部が硬化される範囲も大きい。また、指姿勢に関しては姿勢が大きいほど指先の内部組織を介して、爪に作用する力は大きくなり、特にBW方向においては大きな圧縮応力が作用し、結果的に指先部の硬化の範囲は大きくなる。組織が硬化するとせん断強さが大きくなり、結果的に摩擦力は大きくなると予想され、上述の傾向の原因として指先の柔らかさ、爪の存在が関与し、これらの作用により指先表面及び内部組織の状態が変化するためであると考えられるが、人間の指の内部組織について直接的に硬さを調べことは困難でもある。しかしながら、その検証をするべく、人工指等を利用した実験結果として、爪がある場合、無い場合ともに高荷重域に比べ低荷重域の摩擦係数が2~3倍程度にまで大きくなっており、人間の指の摩擦特性と近い傾向を示していることがわかった。摩擦係数の最大値も約2.0と比較的大きな値をとっており、全体としてほぼ0.2~2.0の範囲内にある。また、爪のない場合のBW方向の摩擦係数がほかに比べて極端に小さいことも大きな特徴であった。摩擦方向に関しては爪のない場合はFW方向のほうがBW方向に比べて広い荷重範囲でかなり大きくなり、これに対し爪のある場合はかなりの範囲でBW方向のほうがFW方向を上回っており、特に低荷重域でこの傾向が著しく現れている。全体として爪の存在の影響を見てみると、FW方向においては若干摩擦係数が大きくなる程度で、さほど影響は現れていない。しかし、BW方向に関しては広い荷重範囲で極端に摩擦係数が大きくなっており、特に高荷重域ではμ=0.2からμ=0.6と摩擦係数が跳ね上がり、硬度15の人工指においては爪によりBW方向の摩擦係数がFW方向のそれと同程度またはそれ以上まで向上されることが確認できる。その上、指紋とは別に面積の広い手のひらの皺も加わり、手のひら上での指による摩擦スピードの増力、或いは腕の力も加味されると、より大きい摩擦が得られる事から、液体で湿ったパルプ微粒子を利用した塗擦方法は有効となる。その最も顕著な例として、スポーツ競技等で使用されている手指のすべり止めはパウダー状であり、それらの摩擦によるグリップ維持は手指に影響を及ぼし、係数の大きさもわかる。
【0081】
また、頻繁に消毒液を使用した際の手荒れ部位については、[非特許文献17]による検証結果で、どの消毒剤においても爪周辺が最も多手荒れ症が認められ、次いで指間、手背、指先、手掌とされ、爪周辺の表皮は柔らかく爪半月と爪周囲とに僅かな陥没があり、その部分の消毒液が表皮角層へ浸透しやすく、十分拭き取りきれずに残留する薬剤によって表皮剥離や亀裂が生じやすくなると考えられているが、保護剤は低濃度の過酸化製剤の上、酸化チタン入り微粒子パルプによる塗擦方法の拭き取り効果とナノセルロース等の保湿成分で手荒れの防止が可能になる。
【0082】
保護剤に使用するナノセルロースは,全ての植物の基本骨格物質であり,セルロース繊維を微細化することで得られ、一般的にサイズとしては直径が100nm以下,アスペクト比100以上のファイバーと言われている。木材の断面の一部を電子顕微鏡で1,000倍に拡大してチップ断面として観察し,更にチップから取り出した幅20μm程度のパルプを2,500倍で観察すると、このパルプは,セルロース分子鎖、ミクロフィブリル、フィブリルと階層的に構築された構造を有し、幅10nmのセルロースナノファイバーの場合、数本のミクロフィブリルが集合した状態まで微細化された状態のものを指す。パルプの繊維からセルロースナノファイバーまで1,000分の1のダウンサイジングであり、電子顕微鏡(SEM)写真では、パルプ繊維の表面を観察したものでセルロースナノファイバーが集まってできている沢山の繊維のヒダがわかる。代表的なナノテク素材のカーボンナノチューブでは,ファンデルワールス力によって複数本凝縮してしまうが、セルロースナノファイバーではセルロース分子が6本×6本程度集まって3~4nm径のナノセルロースを形成し、この場合セルロース分子間の結合は主として水素結合によるものでミクロフィブリル、フィブリルと太く成るにしたがってフォンデルワールス力やリグニンによる接着剤効果が効いてくる。カーボンナノチューブの場合,分散されたナノチューブは放っておくと互いにくっついてしまって使い物にならなくなってしまうが,セルロースナノファイバーの場合は解繊して水中に入れておいても直ぐには接着せず、繊維をほぐして微細化する技術と共にできたセルロースナノファイバーを如何にして規則正しく並べるか、あるいは別の材料に如何にして分散して混合させるかの加工利用技術も世界中で開発されている。一般的に使用する様々な材料にもナノ化は必然となりつつあり、保護剤は石鹸に混合している重曹塩等も考慮する事も必要である。
【0083】
また、保護剤に使用するナノセルロースは特に限定はしていないが、国立森林総合研究所より1.6%および6%液体を提供され実施例とし2016年より実験を重ねた他、株式会社スギノマシン社製のセルロースナノファイバーBiNFi-s等を使用した実験も行い、二酸化チタンの粗濾過により沈殿もなく粗透明で結果は良好である。
【0084】
さらに、保護剤の成分構成例として、酸化チタン入り微粒子パルプ粒子15%、ナノセルロース25%、光触媒酸化チタン2.5%、砂糖9%を精製水30%で70~80℃で溶解した。溶液が得られた後、冷却して脂肪酸ナトリウム1%を加え混合した。溶液中41%をセルロースとし、全ての原材料が天然由来とした保護剤となる。但し、あくまでも実験での数値設定であり、これらに限定する事は無く、実施例の1つとして示した。当然、仕上げの際は、濾過する事により、溶液を作る為の数値であり%程度の誤差は生じた。
【0085】
図3に示したが、マスクやハンカチ等の布帛繊維には、光触媒溶液である酸化チタンは表面精が小さい緻密で平滑な表面より、凹凸があり表面積が大きいホーラスな表面であり吸着量が多い事から、保護剤を塗布・噴霧する事で塗擦作用が有効となる。
【0086】
一方、光触媒酸化チタンは、日本曹達製酸化チタンコーティング材であるビストレイタH:アナターゼ型酸化チタンで造られている他、圧倒的多数の石原産業(株)製コーティング剤の光触媒酸化チタン、可視光応答型光触媒で、その導因はナノセルロースの増粘性を混成させる事や微粒子パルプに添加するものである。しかも、手洗いや水分を拭き取って乾燥しても、同時に保護剤の強酸性が物理的・化学的に固定化され、光触媒活性により手肌や繊維に付着する菌やウイルス等が反応し、殺菌・分解による塗擦作用で簡易に取り除かれる他、新たな菌やウイルスの付着・増殖の発生し難い環境と衛生的に保つ塗擦効果が期待出来る。本発明は、数多くの臨床試験データを待つ事が必要なため試験を継続中である。
【0087】
また、光触媒は有機物であれば相手を選ばず最終的には二酸化炭素を水にまで分解してしまう非選択的性の反応であり、多機能、酸化分解力以外にも超親水性という性質がある事から、例えば[特許文献7]の洗濯物の衣類等に遷移・固定化された親水性の高い光触媒ナノセルロース洗剤や添加剤は、光や紫外線、可視光線の照射で必ずしもバインダを必要とせず光触媒が浸透すると殺菌性を発生させる事を知見し、菌の発生の原因を作らない事により可能とした。一般的に洗濯後は雑菌やウイルス等が洗い流されているが、悪天候や湿気の多い部屋内での乾燥等の条件や環境により、モラクセラ・オスロエンシス菌が洗濯物に付着・増殖後、水分や皮脂等を栄養分にして、それらから出される残骸物が雑巾のような悪臭を発する事から、それを抑止する1つの選択肢として[特許文献7]の光触媒ナノセルロース洗剤や添加剤を既成洗剤に混入し洗濯をする方法が好ましい。但し、洗濯機内の雑菌により洗濯直後でも菌の増殖を招く場合もある為、光触媒溶液や保護剤を噴霧または塗布する事で、それらの殺菌も可能となる。
【0088】
さらに、繊維や紙、プラチックなどに酸化チタンをほどよく触れるように使用する方法で公知された市販品の光触媒溶液を保護剤で使用しても、光触媒反応による基材の分解反応を遅らせる又は短時間で済むと、汚れ落としに必要とする濃度で飽和し、防ぐ事が出来る。これは、材質の中や表面に浸透させる方法であり、液状の保護剤を繊維の隙間に入り込ませる為、LEDライトやブラックライトの他、可視光線や紫外線について計算式で求められる事も併せて説明する。可視光線visibie(v)や紫外線Ultraviolet(UV)の光はX線、マイクロ波或は電波と同様に電場と磁場を繰り返しながら進行する波、即ち電磁波である。可視光以外では色の相違は見えないが波長wavelenght(λ)と振動数frequencynumber(ν)を持っており、波長によって単位はメートル(m)で表され、物質はその化学構造と関係して電子遷移に応じ紫外線から可視部の光を吸収する事が計算出来る。それにより、紫外可視吸光度測定法がある。電子遷移に伴う光の吸収を利用するもので、通常200nm~800nmの波長の光紫外線、可視光線を測定する方法である。光が厚さのある布地繊維ιの層を通過する場合を仮に想定し、入射光の強さをIo、透過光の強さをIとした時、両者の比率を(I/Io)を透過度t(transmittance)で、これを100分率で透過率(Percenttransmission)T
【数12】
また、透過度tの逆数(l/t)の常用対数を吸光度A(absorbance)
A=-Iogt=2-Iogt吸光度Aは試料濃度に比例し、これはBeer法則である。吸光度Aは試料溶液の濃度及び層長に比例すると表現され、これはLambert-Beerの法則でA=R・C・ιであり、Rは比例定数、C・ιはそれぞれ濃度、層長を表す。CをmoI/Lで表しRをεと表記、モル吸光係数molarabsorptivity A=ε、c、ι 試料溶液濃度1mol/Lのとき吸光度εに相当する事になり、同一測定条件下で物質に固有の値となる。また、cを%(w/
これが比吸光度specificabsorptionで試料溶液の濃度が1%(w/v)の吸光度に相当する事になる。
【数13】
この値もまた物質固有の値となり、医薬品の示性値や紫外可視吸光度測定法を用い、上記の2式は測定対象化合物の分子量をMとし、試料溶液のモル濃度をXmol/Lとすると、そのパーセント濃度はX、M/10%(w/v)となり
【数14】
これらを考慮した一例として、例えばブラックライトやLEDライトの光触媒活性様式を付帯させた容器に本発明の保護剤を充填し、外出時の携帯用または保管時や塗布噴霧直前または手肌に塗布噴霧後にブラックライトやLEDライトを照射しても光触媒が活性され、効果も持続させられる。
【0089】
その上、光触媒活性様式を付帯させる場合、噴霧・塗布した箇所への紫外線照射による効果を上げる紫外光線の高い透過率の保護剤充填容器が必要になる。紫外線透過材料としてこれまで広く用いられてきている石英は紫外線を非常によく透過するが、高価で加工し難く、衝撃に弱いなどの問題がある。現在ではフッ素樹脂に紫外線を透過するものがあり、携帯時の破損の心配がないことや汚れが付着しにくいなどの利点から、石英に替わる紫外線透過材料の1つと公知されている。また、フッ素樹脂は正透過性の石英とは異なる光透過性を有し、結晶性高分子であるために光を拡散透過する性質があり、フッ素樹脂はこのような特性を持つために容器の形状によっては透過光強度が石英を上回るものも発見されている。[非特許文献19]ではフッ素樹脂を利用した系について芽胞形成状態の枯草菌を対象とした光殺菌実験が行われ、光殺菌に用いられる各種紫外線透過材料を介して紫外線を液表面に照射する表面照射型殺菌装置の場合や石英管、フッ素樹脂製管に対し外から紫外線を照射する流通式外部照射型殺菌装置の場合について光殺菌速度定数を求めると、拡散透過性によって見かけ上低い値となっていても、透過率は実際の透過光強度と関係し、殺菌速度の指標になると考えられ、低殺菌率領域においてはどの条件でも差はみられなかったが、高殺菌率領域においてはフッ素樹脂の条件が石英よりも高い殺菌率となり、照射時間を平均滞留時間に置き換え相関させると、高殺菌率領域において誤差が大きくなっていることから、フッ素樹脂が石英よりも少ない時間で99%の菌を殺菌できた。したがって高殺菌率領域において材料の透過特性の影響が大きいと考えられ、フッ素樹脂管は拡散透過性によって外から照射した光(波長365nm)を石英管と同等以上に管の中へ通すことも報告されている事から、拡散透過性が死滅速度に正の影響を与え、フッ素樹脂は石英に比べ低殺菌率においてほぼ同等の殺菌速度が得られるが、高殺菌率領域においてはフッ素樹脂製のほうが石英製のものよりも殺菌速度が高くなり拡散透過の効果が大きいこともわかっている。これらの結果から、本発明で光触媒活性様式付帯の保護剤容器は、石英の他、フッ素樹脂等を利用する事で、保護剤充填時や塗布・添付後の紫外線照射を利用した除菌やウイルスの不活化等をより早く効果的に継続する事が可能となる。但し、容器は石英やフッ素樹脂に限定するものではない。
【0090】
図11]に光触媒活性様式の具体例を示したが、外部ケース8の内部に保護剤液入りボトル7とその下部に紫外線照射部9とそれに接続された電池10を配列し、電池10の過熱防止として断熱材11を被覆させ、底部には紫外線照射部9の電源により、内部の紫外線2照射が行える。保護剤液入りボトル7内には、塗擦保護剤1を排出させるため保護剤液吸水口6を設け、排出ボタン5で保護剤液排出口3より保護剤液1が排出される。保護剤液入りボトル7周囲には外部ケースの内側の断熱材(容器保護材)11を配置し、光照射部9の直線の紫外線2が保護剤液1の噴霧および塗布時や、手肌に塗擦後に塗擦作用を暗い部屋や仕事中、外出先等、使用する環境に左右されず、効果的に得られる光触媒活性様式となる。この装置は[図12]のように反転させて排出口を塗布・噴霧面に15に押し込みポンプ式でも使用が可能で、液体の他、ジェル状やクリーム状等の保護剤の充填や、電池部は電池種類に限定せず、ソーラーやUSB等の充電式でも良く、限定しない。紫外線照射が得られる環境で無い場合も、保護剤のみで使用しても良くさらに外部ケース8の脱着も簡易に出来る。また、電池部10はカセット型の取り外しや、塗擦保護剤入りボトル7は充填式の他、ボトルの交換でも良い。光触媒活性様式は光照射部を設け、光触媒の活性化を目的としたもので、[図11]~[図13]は光触媒活性様式の一例を示したもので形状仕様等は任意となる。
【0091】
また、二酸化チタン(アナターゼ型)のバンドギャップによる吸収端は380nmであるが、吸収中心は340nm付近にある。ブラックライトの中心波長は352nm、紫外線LEDの中心波長は365~375nmであり,ともに励起光源として使用できる。しかし、それぞれの波長分布は異なるため、ブラックライト・紫外線LEDを励起光源とした脱臭装置で試験した結果、アセトアルデヒド20ppmの除去速度は20~約2ppmの範囲においてはブラックライトを用いた方が除去速度に優れ、それはブラックライトと紫外線LEDの波長分布に依存したものと考えられる。すなわち360nmのピーク強度が同程度であっても380nm以下の積分強度を比較すると、ブラックライトは紫外線LEDの約4倍の積分強度を有する。悪臭が高濃度の場合、悪臭の光触媒への吸着は比較的迅速に進行するので分解速度は紫外線強度に比例する。この事から、高~中濃度域においてブラックライト光源の方が優れた除去速度になった原因と考えられるが、低濃度域(数ppm未満)の除去速度はブラックライトと紫外線LEDとで差は認められなかった。その領域では悪臭ガスの光触媒への吸着速度が著しく遅くなるため、除去速度は吸着速度に依存し紫外線量に依存しなかったためと考えられる。ただし、数十ppmのトルエンが対象ガスとなるような工場環境では、励起光源に紫外線LEDの利用は適当でないが、一般的な生活空間で問題となるような物質の規制基準は数ppmと低濃度域であり、紫外線LEDの使用は有効と考えられる。
【0092】
さらに、アセトアルデヒド・硫化水素の光触媒温度の違いによる除去速度は光触媒温度を適切に制御すれば、常温での分解に比べて数倍の速度で分解でき、トルエン・キシレンの分解には長時間を要するが、その場合でも光触媒加熱効果は明確であり、特に低濃度域の分解速度の差は顕著である。これらから、光触媒加熱は多くの種類の悪臭の除去速度向上に有効と考えられ、光触媒表面で悪臭ガスが捕捉され、光触媒温度と除去速度との関係は明瞭であり、温度の上昇に伴って除去速度も速くなる。すなわち、光触媒の表面温度が上昇すると表面近傍のガス温度も上昇、分子運動が激しくなり、光触媒への接触・補足される機会が増大する。捕捉されたガスは速やかに光触媒反応により分解し、光触媒温度上昇に伴ってガスの捕捉力は低下する。この2つの作用の総合的な現象が光触媒温度と除去速度との関係に示されたものと考えられる。
【0093】
また、保護剤は、光触媒溶液により手指等の摩擦時に菌やウイルス等の中にナノサイズの微粒子が潜り込み、飛躍的な塗擦作用が可能になる。但し、摩擦時に菌やウイルス等の塗擦作用をするが、皮膚や粘膜等の摩耗はナノセルロースやパルプ微粒子、糖類により保護される。また、その他の雑菌に対しても、光触媒の働きによりそれらを殺菌する効力を持つ事は公知されている。
【0094】
さらに、光触媒の毒性・無害性については既に詳細は公知されおり、保護剤はその範囲で製造するが、例えば、金魚や熱帯魚等を入れたまま飼育槽内に光触媒溶液を挿入すると、槽内に繁茂する苔や藻類は死滅し、金魚や熱帯魚等には影響を与えない事等も安全性の証明と言える。しかしながら、一度に多くを処理する能力に劣る光触媒は金魚の排泄物等までは排除出来ず、水の濁りの改善は完全では無い事から、銅イオンを補助的役割として用いるとそれらの違いは確認できる。一方で、光触媒は一般的に壁などの固定物であり固体物に対し有効とされてきたが、現在では手術等にも使用されている体内差し込みカテーテルチューブや歯科治療にも光触媒が使用され公知となっている事から、本発明の保護剤についても同様の効果が得られる。
【0095】
また、酸化チタンに代表される光触媒溶液は、物理的には光伝導性物質の一種で、通常は電気を通さず光があたると導電性が生じ、光を吸収して触媒となるが、光触媒溶液はナノミクロの粒子である為、吸着量が多く効果も大きく、人体の一部である手肌や繊維に保護剤の被膜をコーティング形成するようになるが、手洗い後等でも保護剤のコーティング作用は継続される。
【0096】
さらに、抗生物質も効かないようなバクテリアを死滅させ且つ安全で無害な殺菌技術としては光触媒以外に候補が無く、多くの病院の手術室で光触媒が試され、その効果が実証された事から、この後種々の商品分野への展開が進み、その意味で健康医療技術は現在の光触媒の応用端緒であり、経口避妊薬等に用いられる人工女性ホルモン等の多くの化合物についても光触媒分解が試みられており、女性ホルモン活性を完全にゼロにするのを出来るのがわかっている事から、保護剤は医薬部外品も視野に入れる。
【0097】
ただし、光触媒が短時間で効果が出ない或は出来難い場合を仮定しても、過酢酸製剤による塗擦作用の他、一般的な習慣として、手肌の水洗いは数分~数時間の定期的に行われるが、保護剤をその都度利用しなくても被膜された光触媒の塗擦効果は紫外線や可視光で保持される。ただし、保湿・保護性を重視する点を鑑みると水洗い後に保護剤を使用する事は、結果として手肌の保湿・保護が得られる他、光触媒をより多く物理的、化学的刺激を働かせる事にもなる。
【0098】
光触媒溶液は手肌や繊維に練り込むと、光触媒作用で分解されてしまうため、基板以外の手肌や繊維の適用に対し敬遠されていたが、これらもアパタイト被覆二酸化チタン等で、手肌や繊維への利用を可能とする防止剤または補助剤も公知されている製品を使用する事により解決している。その上、短時間の使用では、光触媒の反応速度や分解速度と併せ、ナノセルロースや非親水性のパルプ微粒子および糖類による手肌接触時の肌荒れを防ぐ保湿・保護構造で手指の擦り合わせる圧力等も付加されるため手肌の適用も有効である。特に冬季は毛穴がない掌や足裏は老人性乾燥皮になりやすくウイルスや細菌の感染症に罹患する可能性が高くなるため、保護膜を施す保護剤は最も有効な手段である。
【0099】
一方、糖類の塗擦能力は、糖類の持つ親和性に関係している。例えば抗菌性が公知されている砂糖はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)の2種類であるスクロースで構成され、主な成分は炭素と水素となり、油の成分である炭素と水素、酸素で構成されている事から類似した成分は混ざりやすく、皮膚よりも砂糖の成分が油に近いためこのような現象が起こるが、水との相性も良い事で効果的に作用し、手荒れの心配もない。また、砂糖はセルロースに比し、分子量が遥かに小さく、8つの水酸基を持ち水に良く溶け、化合物の分子内の小部分が変化した各種の誘導体を与える等、多様な化学的機能を持ち、優れた抗菌・防腐作用と細胞を回復させる作用があると臨床結果も出ている事から、保護剤に混合させ可視光照度が極めて低い場所等で光触媒の塗擦効果を保持するため使用する他、市販されているステロイド系、ワセリン尿素軟膏、ヒアルロンセラシド等の皮膚保湿剤を併用する事も可能であるが、塗擦効果を考慮すれば保護剤だけの使用が好ましい。
【0100】
また、手肌の他、顔(目や目の周囲は除く)や人体に保護剤を使用する場合、ナノセルロースの他に、藻類や海藻類により保湿性や保水性が得られる。その中でもアカモクは褐藻類に属した海藻の1つであり、類似種にシダモクがあるが、気胞の形状がアカモクは円柱状でシダモクは球形から楕円体となり、葉は長さ7cmから幅1.5cmで生命力も強い事から日本各地および海外に分布し、葉の形状等は地域差がある。アカモクは強い粘りを持つことが特徴で、この粘性物質はフコースを主な構成糖とした硫酸多糖の1つであるフコイダンと海藻の構成糖として知られているアルギン酸である。中国では古くからアカモクを消炎用の漢方薬で利用されているが、フコイダンには抗腫瘍効果等、アルギン酸は整腸作用等の様々な機能を有する可能性が多く報告されている。例えば、福岡県宗像市で採取したアカモクと比較対象とした福岡県志摩町産・糸島町産、沖縄県久米島産のモズクを凍結乾燥させ粉砕機で粉末化した結果、アカモクのフコイダン量は約500から700mg程度あり、原藻と比較しても7割から5割もフコイダンを保持する事が明らかになった。さらに加工条件を検討する事で、保護剤ではフコイダンをより多く保持させたフコイダンの微粉末を使用し、塗擦作用の他、ナノセルロースや酸化チタン入り微粒子パルプの補助的または代用として皮膚の保水性、弾力性維持、吸湿性等の美肌作用や保湿保護成分となる。但し、海藻類の消臭として次亜塩素酸を併用する場合もあるが、当然、次亜塩素酸は消臭の目的で使用する事を限定したものではない。その上、海藻類からのナノセルロースも開発され市販品でも流通している状況であり、これを使用する事も一考である。
【0101】
さらに、アカモクは昆布やもずく、わかめ、ひじき等と同じ形成の褐藻類で、硫酸化多糖の一種で粘質物であるフコダインを多く含有している。このフコダインには抗酸化作用、アポトーシス誘導によるアレルギーを抑える等の抗菌作用があり、特にもずくフコダインの化学構造については、1996年に琉球大学農学部グループ等による報告で、4つのフコース、1つのグルクロン酸と2つの硫酸基からなる構造を一つの単位(分子量約1,000、5つの糖からなる)として繰り返し構造をしているとされ、高分子のもずくフコダインは分子量約10,000以上の多糖類である事から、保護剤の糖類の1つとして褐藻類を含有させ、フコダイン成分を利用した粘着性で手肌や布帛繊維の保湿・保護を得る事が可能となる。但し、藻類等の独特の臭いが発生する場合、香料等の併用を考慮する事を一考する。
【0102】
また、保護剤の使用環境や保存環境、使用期間を考慮した場合、防腐剤や酸化防止剤を含有させる事も一考する。ソルビン酸カリウムは、細菌やカビの発生・増殖を抑える働きがあり、腐敗防止として食品等に頻繁に使用されている他、歯磨き粉やシャンプー、化粧品の防腐剤としても使用されている。ソルビン酸カリウムの代謝・排泄に関しては、生体内にソルビン酸として取り込まれ、ソルビン酸は不飽和脂肪酸であることから通常の脂肪酸と同様に最終的に二酸化炭素と水に分解され尿排泄されると考えられているため保護剤に含有しても安全に利用できる。また、ソルビン酸カルシウムは食品の保存料として広く欧米諸国などにおいて使用されている食品添加物で、米国においては、ソルビン酸、同カリウム塩、同カルシウム塩及び同ナトリウム塩はGRAS物質(一般に安全とみなされる物質)として安全性評価がなされており、適正製造規範(GMP)による管理のもと、一般の食品に必要量用いることができる。ソルビン酸とその塩類は、広範な抗菌スペクトラムを有しており、カビ、酵母及び細菌に対し、静菌的に働き、安全性が高いことから、カルシウム塩を含めて各国において広範な食品に保存料として使用が認められており、ソルビン酸カリウム同様、保護剤の防腐剤として利用が出来る。ソルビン酸以外の防腐剤としては、さっぱりした感触と優れた抗菌性を有する多価アルコール(二価アルコール:グリコール)の1,2-ヘキサンジオールで、高い抗菌性を有する多価アルコールの一種のアルカンジオールでもある。グリセリンやソルビトールなどでは効果が無いが、プロピレングリコールのようなグリコール類にグラム陰性菌の抗菌作用が認められている。これらグリコール類の抗菌性は、グリコール類が自分自身を溶解させることで、微生物から水分を奪い取ってしまう作用から起こっており、微生物は増殖が不可能になるうえに死滅してしまうと考えられている。その上、アルカンジオール類は、他の多価アルコール類と比較して顕著に大腸菌の増殖を抑制することが示されており、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、クロカビにも1,2-ヘキサンジオールが優れた抗菌性が示されている。さらに1,2-ヘキサンジオールとペンチレングリコールまたはカプリリルグリコールの併用により相乗的な抗菌性を示すことも公知され、保護剤でも防腐剤として皮膚刺激性も略無く、安全に使用する事が出来る。但し、使用については任意となる。
【0103】
さらに、酸化防止剤のジプチルヒドロキシトルエンは、▲p▼-クレゾールと▲iso▼-ブチレンから化学的合成により製造され、脂溶性で他の酸化防止剤に比べて安定性が優れている他、ビタミンEであり脂溶性ビタミンの一種のトコフェロールは水に溶けず、アルコールやオイルに溶ける性質をもち、αトコフェロール、βトコフェロール、γ(ガンマ)トコフェロール、δ(デルタ)トコフェロールの4種類あり、医薬品や食品添加物の酸化防止剤として広く使用されているが、一部では健康有害性も指摘されているため、本発明で使用する事は一考する。その他、アスコルビン酸(ビタミンC)、クロロゲン酸、カテキンについても保護剤の酸化防止剤として利用が出来る。但し、使用については任意となる。
【0104】
保護剤で酸化防止剤を使用する場合の考察点は、水溶性成分の酸化防止剤として、アスコルビン酸類(ビタミンC)は、ビタミンとしての栄養強化の目的で使われることも多いが、一方では、酸化防止剤として広く使用され、ビタミンC類には、水に溶けるL-アスコルビン酸とL-アスコルビン酸ナトリウム、油脂類に溶け易いL-アスコルビン酸ステアリン酸エステルとL-アスコルビン酸パルミチン酸エステルが使われているが、熱安定性の良い水溶性のビタミンCとしてL-アスコルビン酸2-グルコシドがあり、目的に合わせて使用出来る。トコフェロール(ビタミンE)類のビタミンEは、生体の過酸化物生成を防止する効果を有し、細胞膜や生体膜の機能を維持する効果を持つ油脂類に溶け易いビタミンであり、ビタミンとしての効果の強いα-トコフェロール、酸化防止の効果が強いδ-トコフェロールがあり、他にβ-トコフェロール、γ-トコフェロールなどがある。これらの中で酸化防止の目的で使用するのに適したものは、d-δ-トコフェロールおよびミックストコフェロールである。指定添加物のdl-α-トコフェロールは、使用基準で酸化防止の目的で使用することに限られているが、その効果は、上記した既存添加物の2種類のトコフェロール類に及ばない。さらに、エリソルビン酸類は、アスコルビン酸の異性体であり、イソアスコルビン酸と呼ばれることもある代表的な酸化防止剤で、欧米でも広く使用されているが、エリソルビン酸には、ビタミンCとしての効果はないといわれ、酸化防止の目的のみで使われる。その酸化防止の作用は、ビタミンC類と同様である。BHA(t-ブチルヒドロキシアニソール)とBHT(ジt-ブチルヒドロキシトルエン)は、化学的な合成で得られた酸化防止作用を有する代表的な物質である。いずれも酸化防止作用を有するt-(ターシャリー)ブチルフェノールの効果をより発揮できるように合成された誘導体であるが、一時期、BHAの安全性に疑問が生じたとの理由で使用基準の改正が行われ、改正使用基準の実施時期が定められなかったため、特に輸入食品に関しての実効性は乏しく、この使用基準は、前回の改正前の使用基準に戻る形で改正されたため、BHAは油脂や魚介加工品などに、広く使用することが可能となっている。エチレンジアミン四酢酸を骨格とする塩類がEDTA類であり、2種類が食品添加物として指定され、EDTA類は、酸化を促進する金属イオンを捕捉する力が高いため、酸化を抑える効果を持ち、幅広い食品での使用が考えられるが、日本では、缶詰食品や瓶詰食品での遊離金属イオンを捕捉してその活動を封鎖する金属封鎖剤としてのみ使用が認められており、最終食品に残存する場合は、カルシウム二ナトリウム塩の形にすることが義務づけられている。没食子酸は、ボッショクシサンともモッショクシサンとも呼ばれる植物系の既存添加物である。日本では、五倍子から得られる五倍子タンニンが主要原料であり、ヨーロッパでは、没食子を原料とする没食子タンニンが主体になっているが、いずれも古くから使われてきたものであり、その酸化防止効果は、没食子酸を構成する、ポリフェノール系のトリヒドロキシ安息香酸のさようである。没食子酸プロピルは、没食子酸とプロピルアルコールとのエステル化反応で得られた指定添加物であり、欧米を中心に油脂とバターの酸化防止剤として使用されている。その他の天然系の酸化防止剤として、ルチン類は、クエルセチンの配糖体で、熱に強く、抗酸化作用があるため酸化防止剤として使われている。これらには、「ルチン(抽出物)」、「クエルセチン」、「ルチン酵素分解物」、「酵素処理ルチン(抽出物)」や「酵素処理イソクエルシトリン」などがある他、「チャ抽出物」や、リンゴの果実を酵素で分解した「酵素分解リンゴ抽出物」などもあるが、これらを使用する場合の選択は任意である。
【0105】
また、保護剤に使用するアラントインには、組織修復賦活作用(お肌の組織の修復を活性化させる作用)と抗刺激剤作用、消炎鎮静作用、抗アレルギー作用があり、これらの作用から肌荒れやニキビに効果があり、敏感肌の人や赤ちゃんにも使用出来る。空気に触れると酸化チタンや酸化タングステン等の金属は過酸化物が作られる場合もある為、酸化防止剤とアラントインを併用することにより抗アレルギー不活作用が得られる。ただし、酸化防止剤の併用は任意である。
【0106】
さらに、汗の臭いは、汗に含まれる皮脂等の成分が皮膚常在菌(細菌)により分解されて発生し、その臭いを防ぐためには、衣類に対する損傷やヒト腋窩皮膚に対する刺激が少なく、皮膚表面に近い部位で作用し、表皮内の導管(汗管)にアルミニウムを含む水酸化物のゲルが形成され、表皮内汗管が物理的に閉塞することによって発汗の減少が起こるクロルヒドロキシアルミニウムを保護剤に混合させると、臭いの元を発生させる細菌の殺菌と収れん剤とのダブル効果で、腋臭等の防止が可能になる。
【0107】
保護剤を濾過する場合、その溶液中に有効成分を残存させるため、それぞれの物質が完全分散された状態の溶液であることが必要であり、その上で濾過をすると、それらの抽出液には効果成分の維持が為されており、高い有効性を示す事が出来る。また、一定時間を要した濾過をすれば、より粒子面積が大きい集合体になるため、さらに安定的な効果成分が抽出される。但し、保護剤の効果効能の減衰をさせるには濾過材に合わせた材料の増量も一考するが、必ずしも濾過をする必要はない。
【0108】
また、動物から分離されるウイルスはおよそ570種であると言われ、それらのおよそ2/3は宿主細胞膜と同様の膜(エンベロープ)を持ち、この膜には宿主由来のリン脂質や糖脂質、コレステロールなどの複合脂質の他、そこに埋め込まれているウイルス特異的糖タンパク質スパイクが存在する。このスパイクは、ウイルスが宿主に吸着したり、ウイルスが宿主から発芽により遊離したりする上で必須の役割を果たし、そこに付加される糖鎖は、ウイルスのスパイクの3次元構造の維持、機能発現に必須である。一方、宿主細胞膜上の糖鎖は、極めて多様であると同時に、極めて高い種特異性を持ち、全てのウイルスは、宿主細胞中でのみ増殖するため、必ず宿主(細胞)域、宿主特異性を持っている。ウイルスが宿主特異性を発揮する機構は、宿主細胞膜糖鎖の特異性、多様性を反映している場合が極めて多く、エンベロープウイルスが宿主細胞膜の糖鎖を特異的受容体として認識・結合する事実が明らかになっている。抗原決定領域の変異が起こりやすい、例えば、インフルエンザウイルスの場合でも、受容体糖鎖への結合に関わるスパイクタンパク質上の受容体結合ポケット内の変異は起こりにくいことも見い出され、受容体糖鎖の疑似化合物による受容体結合ポケットのブロックは、変異を克服出来る画期的抗ウイルス薬のシーズとなり得ることを意味し、様々なウイルス感染において、糖鎖の役割は極めて大きく、且つ多様であり、糖鎖を標的とした開発は非常に有効と言われている。本発明の保護剤では、手肌を含む人体の傷口等の粘膜から侵入するウイルス等の予防に対した糖鎖の利用を一考し、より詳細な糖鎖の働きの解明を待ち、それに応じた開発を続けたい。
【0109】
一方、ゲル状の保護剤の場合、スプレー容器や、スポンジキャップ付き容器、ローラキャップ付き容器等に充填させ、手肌へ極度に付着した菌やウイルスを剥離分解する際も、アルエーテルや硫酸エーテル等を添加しなくても、光触媒の濃度の数%を上げた溶液を使用し、より塗擦作用や保湿・保護力が高くなる。また、マスクや衣類等の繊維に対してもゲル状にする事で塗擦作用や塗擦保護膜が大きく上がる他、塗擦効果が多く得られる。
【0110】
さらに、本発明の保護剤を水虫による白癬菌に罹患した爪や足裏に噴霧または塗布を実施した結果、足裏の白癬菌は3ヶ月後、爪に入り込む水虫は1年後に治癒した結果は目視で得られ、光触媒活性様式を利用した場合や塗布噴霧の回数、例えば2日に1回や毎日というように頻繁に使用した場合は早い完治が考えられる。その他、頭部に塗布した場合、痒みやフケ等が無くなるが、これは皮膚糸状菌症である頭部白癬に罹患した事の改善と考えられる。
【0111】
また、手肌等の人体以外に光触媒活性様式付き保護剤を使用した実施結果として、画像のブレや音の変調が生じているCDおよびDVDのディスク表面に保護剤を塗布した後、拭き取ると画像や音の変調が無くなり視聴する事が可能となったが、保護剤を拭き取らない場合でも変調を正常にすることも出来る。
【0112】
さらに、保護剤に香料成分や溶液の着色成分を混合させることは任意である。
【0113】
なお、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0114】
1 塗擦保護剤
2 光線
3 保護剤液排出口
4 排出板
5 排出ボタン
6 保護剤液吸水パイプ
7 保護剤液入りボトル
8 外部ケース
9 光照射部
10 電源部
11 断熱(保護)材
12 照明スイッチ
13 蓋(キャップ)
14 USB充電口
15 塗布・噴霧面
16 ポンプバネ
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