(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010923
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】コラーゲン産生促進剤、細胞増殖促進剤及びメラニン生成抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220107BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220107BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220107BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20220107BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20220107BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00 ZNA
A61Q19/02
A61Q1/12
A61Q19/10
A61Q19/08
A61K36/185
A61P17/16
A61P17/18
A61P43/00 107
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111713
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀場 大生
(72)【発明者】
【氏名】山羽 宏行
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 勉
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD09
4B018MD30
4B018MD32
4B018MD34
4B018MD42
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC542
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD272
4C083AD352
4C083AD512
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC03
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083CC12
4C083CC25
4C083DD41
4C083EE07
4C083EE12
4C083EE16
4C083EE17
4C083FF01
4C088AB12
4C088AC01
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088MA28
4C088MA35
4C088MA43
4C088MA52
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA92
4C088ZB22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コラーゲン産生促進作用、細胞増殖促進作用及びメラニン生成抑制作用に優れた外用剤または内用剤の提供。
【解決手段】スベリヒユの抽出物は、優れたコラーゲン産生促進作用、細胞増殖促進作用及びメラニン生成抑制作用を有し、安定性にも優れる。スベリヒユの抽出物は、皮膚の老化予防といった美容分野だけではなく、老化による機能低下の抑制、ガンの予防、治療等といった医療分野にも利用でき、化粧品、食品、医薬部外品及び医薬品等への応用が期待される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とする細胞増殖促進剤。
【請求項3】
スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤。
【請求項4】
スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とする美白剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン産生促進剤、細胞増殖促進剤及びメラニン生成抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、紫外線、乾燥、寒冷、熱、薬物等の様々な物理的及び化学的ストレスに日々曝されている。その結果、皮膚の機能低下が引き起こされ、様々な皮膚の老化現象が顕在化する。皮膚の老化現象の一つにシワがある。シワには、表皮性のシワと、真皮性のシワの二種類が存在することが知られている。表皮性のシワは小ジワと呼ばれ、皮膚の乾燥により、表皮角質中の水分量が低下することによって一時的に生じるシワである。一方、真皮性のシワは、太陽光線に含まれる紫外線や加齢によって形成されるシワである。その形成メカニズムとしては、紫外線や加齢による真皮線維芽細胞におけるコラーゲン合成能の低下や、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の増加によるコラーゲンの分解促進が挙げられる。
【0003】
乾燥に起因する表皮性のシワと真皮性のシワでは、組織学的形態、発症メカニズム、治療方法が異なり、紫外線や加齢により生じる真皮性のシワは、保湿効果を有する化粧品の使用によって改善することは困難である。
【0004】
これまでに、紫外線によって生じる真皮性のシワを改善することを目的として、加水分解アーモンドを有効成分とする皮膚のシワ形成防止・改善剤(特許文献1)、ジョチョウケイ、テンキシ及びキセンソウの抽出物を有効成分とする紫外線照射に起因するシワの改善剤(特許文献2)が報告されている。
【0005】
また、真皮には線維芽細胞やコラーゲンが存在し、I型コラーゲンが全体の80%を占める。I型コラーゲンの他には、III、V、XII及びXIV型コラーゲンの存在が知られている。シワやたるみの原因の一つとして、I型コラーゲンの減少が挙げられる。従って、I型コラーゲンの産生を促進させることがシワ・たるみの予防・改善に有効である。
【0006】
一般に、加齢と共に表皮細胞の増殖・分裂能は低下し、表皮層自体は薄くなる(非特許文献1)。生体因子であるEpidermal Growth Factor(EGF/上皮細胞成長因子)や女性ホルモン(エストロゲン)は皮膚の表皮細胞増殖に働きかけるが、加齢と共にその分泌は低下する。このような加齢による表皮細胞代謝機能の低下は皮膚のターンオーバー速度を遅らせ、肌荒れや皮膚の老化の原因となる。また、角層表面から剥がれ落ちる角質細胞が滞留することで、表皮内のメラニンの排泄がスムーズに行われなくなり、色素沈着や肌のくすみの原因となる。さらに表皮の創傷治癒が遅くなること等も知られている。これらの現象の進行を防止あるいは改善するために、表皮細胞の増殖を促進させる成分の探索や、皮膚外用剤の提案が多くなされてきた。
【0007】
また、一般に、シミ、ソバカス、日焼け等に見られる皮膚の色素沈着は、ホルモンの異常や紫外線の刺激により、皮膚内に存在するメラニン色素生成細胞がメラニン色素を過剰に生成し、これが皮膚内に沈着することが原因とされている。このような色素沈着を防ぐ方法の一つに、メラニンの過剰な生成を抑制する方法が知られている。従来、色素沈着の治療には、内用や外用等において、アスコルビン酸(ビタミンC)等が美白剤として用いられてきた(特許文献3)。
【0008】
スベリヒユ(学名:Portulaca oleracea)は、ナデシコ目スベリヒユ科スベリヒユ属に属する多年草であり、生薬の馬歯見(バシケン)はスベリヒユの全草を乾燥させたもので、解熱や解毒、利尿、虫刺されに効用があるとして民間薬に用いられている。これまで、スベリヒユの抽出物には、その抽出物に脂肪分解促進作用があること(特許文献4)や抗酸化作用があること(特許文献5)、抗アレルギー作用があること(特許文献6)やIGFBP-5の発現を抑制することで毛髪の形状を制御する作用があること(特許文献7)が知られている。しかしながら、スベリヒユの抽出物がコラーゲン産生促進作用、細胞増殖促進作用及びメラニン生成抑制作用を有することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-119125号公報
【特許文献2】特開2006-199611号公報
【特許文献3】特開平5-229931号公報
【特許文献4】特開2005-60366号公報
【特許文献5】特開2007-126368号公報
【特許文献6】特開2008-247779号公報
【特許文献7】特開2010-150150号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Varani J et al., J Invest Dermatol, Vol.3,pp 57-60,1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
安全で安定性に優れ、コラーゲン産生促進作用、細胞増殖促進作用及びメラニン生成抑制作用に優れた素材が望まれているが、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような事情により、本発明者らは鋭意検討した結果、スベリヒユの抽出物が優れたコラーゲン産生促進作用、細胞増殖促進作用及びメラニン生成抑制作用を持ち、安定性においても優れていることを見出した。さらに、その抽出物を含有する外用剤または内用剤が、安全で安定であり、コラーゲン産生促進作用、細胞増殖促進作用及びメラニン生成抑制作用に優れており、多機能性美容・健康用素材、医薬品と成り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
(2)スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とする細胞増殖促進剤。
(3)スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とするメラニン生成抑制剤。
(4)スベリヒユの抽出物を含有することを特徴とする美白剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スベリヒユの抽出物を有効成分として含有するコラーゲン産生促進剤、細胞増殖促進剤及びメラニン生成抑制剤が提供される。また、スベリヒユの抽出物は、天然の食用植物であるため、副作用がなく安全性が高い。よって、スベリヒユの抽出物を含む外用剤または内用剤は安心して使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いるスベリヒユ(学名:Portulaca oleracea、和名:滑見、生薬名:馬歯見(バシケン))は、ナデシコ目スベリヒユ科スベリヒユ属に属する一年草で、代表的なC4植物として知られている。乾燥耐性があり、熱帯から温帯にかけて広く生息し、日本全土でみられる。全体的に肉質で、茎は赤紫色を帯び、葉は緑色で長円形のへら型である。本発明において、スベリヒユの抽出物は、その花、果実、種子、葉、茎、根等の植物体の一部または植物体全体(全草)、あるいはそれらの混合物の抽出物をいうが、本発明において抽出原料として使用する部位は、生薬(馬歯見)として用いられる全草が好ましい。また、抽出には、植物体をそのまま使用しても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行っても良い。
【0016】
抽出方法は、特に限定されないが、水もしくは熱水、または水と有機溶媒の混合溶媒を用い、撹拌またはカラム抽出する方法等により行うことができる。抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。特に好ましい抽出溶媒としては、水、水-エタノールの混合極性溶媒または水-1,3-ブチレングリコールの混合極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えばスベリヒユの全草(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であれば良いが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。
【0017】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0018】
本発明は、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、化粧品、医薬部外品、医薬品または食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分が含有されていても良い。
【0019】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、軟膏、パップ剤、錠菓、チョコレート、ガム、飴、飲料、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤、坐剤、注射用溶液等が挙げられる。
【0020】
外用の場合、本発明に用いる上記抽出物の含有量は、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。さらに、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を超えると、効果の増強は認められにくく不経済である。
【0021】
内用の場合、摂取量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なる。通常、成人1人当たりの1日の摂取量としては、5mg以上が好ましく、10mg~5gがより好ましい。さらに、20mg~2gが最も好ましい。
【0022】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、実験例及び処方例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例に示す%とは重量%を、処方例に示す含有量の部とは重量部を示す。
【実施例0023】
スベリヒユの抽出物の製造例
スベリヒユの抽出物を以下の通り製造した。製造例1~4において、抽出材料にはスベリヒユの全草を用いた。
【0024】
(製造例1)スベリヒユの熱水抽出物の調製
スベリヒユの乾燥物10gに200mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してスベリヒユの熱水抽出物を2.4g得た。
【0025】
(製造例2)スベリヒユの50%エタノール抽出物の調製
スベリヒユの乾燥物10gを200mLの50%エタノール水溶液に室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してスベリヒユの50%エタノール抽出物を1.7g得た。
【0026】
(製造例3)スベリヒユのエタノール抽出物の調製
スベリヒユの乾燥物10gを200mLのエタノールに室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してスベリヒユのエタノール抽出物を0.2g得た。
【0027】
(製造例4)スベリヒユの1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
スベリヒユの乾燥物10gを200mLの1,3-ブチレングリコールに室温で7日間浸漬し、抽出を行った。得られた抽出液を濾過して、スベリヒユの1,3-ブチレングリコール抽出物を190g得た。