(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010925
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ポンプチューブユニット及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/12 20060101AFI20220107BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61B1/12 522
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111716
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000147785
【氏名又は名称】フォルテ グロウ メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(71)【出願人】
【識別番号】521082134
【氏名又は名称】ORTメディカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 幸司
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA51
2H040DA57
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF08
4C161FF39
4C161GG16
4C161HH02
4C161HH04
4C161HH05
4C161HH22
4C161LL02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行い、停止時における水切れの良い送水装置を提供する。
【解決手段】ポンプチューブユニットは、外周縁部に複数の押圧部を配置した回転体を有するポンプに設置され、回転体の回転時に、複数の押圧部のいずれかによって順次押圧されることで液体を下流側に送り出し、新たな液体を上流側から引き込む動作を繰り返すポンプチューブ62と、ポンプチューブの上流側端部に接続される上流側送水チューブ61と、ポンプチューブの下流側端部に接続される下流側送水チューブ63と、上流側送水チューブと下流側送水チューブとに跨って接続され、下流側送水チューブを流れる液体の一部を上流側送水チューブに還流するバイパス用送水チューブ64と、を有し、バイパス用送水チューブは、バイパス用送水チューブの両端部を除く所定の範囲に、他の範囲の内径よりも小さい内径となる小径部82を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で配置される複数の押圧部とを有するポンプに設置され、前記回転体の回転時に、前記複数の押圧部のいずれかによって順次押圧されることで、内部に保持した液体を下流側に送り出し、新たな液体を上流側から引き込む動作を繰り返すポンプチューブと、
前記ポンプチューブの上流側端部に接続され、前記ポンプチューブに引き込まれる液体が流れる上流側送水チューブと、
前記ポンプチューブの下流側端部に接続され、前記ポンプチューブから送り出される液体が流れる下流側送水チューブと、
前記上流側送水チューブと前記下流側送水チューブとに跨って接続され、前記下流側送水チューブを流れる液体の一部を前記上流側送水チューブに還流するバイパス用送水チューブとを、有し、
前記バイパス用送水チューブは、前記バイパス用送水チューブの長手方向における両端部を除く所定の範囲に、前記所定の範囲を除いた他の範囲の内径よりも小さい内径となる小径部を備えることを特徴とするポンプチューブユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプチューブユニットにおいて、
前記バイパス用送水チューブは、
前記下流側送水チューブに接続される第1の送水チューブと、
前記第1の送水チューブと同一径からなり、前記上流側送水チューブに接続される第2の送水チューブと、
前記第1の送水チューブと、前記第2の送水チューブとの間に配置され、前記第1の送水チューブの内径及び前記第2の送水チューブの内径よりも小さい内径を有する第3の送水チューブと、
を含むことを特徴とするポンプチューブユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のポンプチューブユニットにおいて、
前記第1の送水チューブを閉塞する状態と、前記第1の送水チューブを開放する状態との間で切り替えることが可能なクランプを、前記第1の送水チューブに配置し、
前記クランプは、前記下流側送水チューブを内視鏡の副送水チャンネルに接続したときに前記第1の送水チューブを開放した状態に保持し、前記下流側送水チューブを前記内視鏡の鉗子チャンネルに接続したときに前記第1の送水チューブを閉塞した状態に保持することを特徴とするポンプチューブユニット。
【請求項4】
少なくとも鉗子などの処置具が挿通される鉗子チャンネルと、前記液体が流れる送水チャンネルと、を有する内視鏡と、
液体を貯留した送水タンクと、
回転体と、前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で配置される複数の押圧部とを有するポンプと、
一端部が前記送水タンクに、他端部が前記内視鏡の鉗子チャンネル又は送水チャンネルの少なくとも一方のチャンネルに接続される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポンプチューブユニットと、
を有し、
前記ポンプチューブユニットの下流側端部を前記内視鏡の送水チャンネルに接続したとき、前記バイパス用送水チューブを開放した状態に保持した状態で前記ポンプを駆動して、前記ポンプチューブにより送り出された液体の一部を前記ポンプチューブユニットの内部で還流させながら、前記液体を前記内視鏡の送水チャンネルに送水し、
前記ポンプチューブユニットの下流側端部を前記内視鏡の鉗子チャンネルに接続したとき、前記バイパス用送水チューブを閉塞した状態に保持した状態で前記ポンプを駆動して、前記ポンプチューブにより送り出された液体を前記ポンプチューブユニットの内部で還流させずに、前記内視鏡の鉗子チャンネルに送水することを特徴とする内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプチューブユニット及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、内視鏡を用いた検査や手術が普及している。内視鏡は、体腔内の対象部位に照明光を照射するライトガイドや、体腔内の対象部位の観察や撮影を行う撮像装置の対物レンズの他、体腔内に空気や生理食塩水などの液体を送り込む送気/送水ノズルや、鉗子などの処置具を体腔内に突出させる鉗子口を挿入部の先端に備えている。鉗子口は、体腔内の対象部位の洗浄に用いた液体や対象部位から出血した血液を吸引する吸引口や、体腔内に液体を注入する注入口としても機能する。また、近年では、体腔内に液体を噴出する副送水口を挿入部の先端に備えた内視鏡も提供されている(特許文献1参照)。挿入部の先端に副送水口を備えた内視鏡では、鉗子チャンネルを用いた処置具の利用と並行して体腔内の対象部位の洗浄が行えるため、内視鏡を用いた検査や手術を効率良く行うことができる。
【0003】
内視鏡を用いた検査や手術で使用される液体は例えば送水タンクに貯留され、送水装置を駆動させることで、内視鏡に設けた鉗子チャンネルや副送水チャンネルに送水される。送水装置は、例えばフットスイッチの踏み込みにより内蔵されたポンプが駆動して、送水タンクに貯留された液体を送水チューブに吸い上げ、内視鏡に向けて送り出す装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、鉗子口の内径は2~3.2mmであるのに対して、副送水口の内径は1mm前後と小径であることから、送水装置の駆動時には、送水チューブの内圧は大気圧よりも高くなる。例えば送水装置の停止後は、送水チューブの内圧が大気圧まで戻るまでに時間がかかる。その結果、送水装置を停止したとしても、副送水チューブの内圧が大気圧まで戻るまでの間、副送水口から液体が出続ける、いわゆる水切れが悪いという問題が生じる。この水切れが悪いという問題は、内視鏡を用いた検査や手術の施術効率が悪くなるという問題を引き起こす。
【0006】
また、送水装置は、複数のローラを外周縁部に軸支した回転体を回転させながら、内部に設置された送水チューブを複数のローラの各々でしごくことで、送水タンクに貯留された液体を吸引し、吸引した液体を内視鏡に向けて送り出す動作を繰り返している。したがって、送水チューブの内圧が高くなると、複数のローラの各々によってしごかれる送水チューブが送水チューブの延出方向に割れる事象や、チューブが破損して漏水する事象が発生する。このような事象が発生することは、内視鏡を用いた検査や手術を効率良く行うことができなくなるだけでなく、患者を危険にさらすことにつながる。したがって、内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行うことができる手段の要望が高まっている。
【0007】
本発明は、内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行い、また、送水装置の停止時における水切れを良くすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの観点によれば、本発明のポンプチューブユニットは、回転体と前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で配置される複数の押圧部とを有するポンプに設置され、前記回転体の回転時に、前記複数の押圧部のいずれかによって順次押圧されることで、内部に保持した液体を下流側に送り出し、新たな液体を上流側から引き込む動作を繰り返すポンプチューブと、前記ポンプチューブの上流側端部に接続され、前記ポンプチューブに引き込まれる液体が流れる上流側送水チューブと、前記ポンプチューブの下流側端部に接続され、前記ポンプチューブから送り出される液体が流れる下流側送水チューブと、前記上流側送水チューブと前記下流側送水チューブとに跨って接続され、前記下流側送水チューブを流れる液体の一部を前記上流側送水チューブに還流するバイパス用送水チューブとを、有し、前記バイパス用送水チューブは、前記バイパス用送水チューブの長手方向における両端部を除く所定の範囲に、前記所定の範囲を除いた他の範囲の内径よりも小さい内径となる小径部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記バイパス用送水チューブは、前記下流側送水チューブに接続される第1の送水チューブと、前記第1の送水チューブと同一径からなり、前記上流側送水チューブに接続される第2の送水チューブと、前記第1の送水チューブと、前記第2の送水チューブとの間に配置され、前記第1の送水チューブの内径及び前記第2の送水チューブの内径よりも小さい内径を有する第3の送水チューブと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記第1の送水チューブを閉塞する状態と、前記第1の送水チューブを開放する状態との間で切り替えることが可能なクランプを、前記第1の送水チューブに配置し、前記クランプは、前記下流側送水チューブを内視鏡の副送水チャンネルに接続したときに前記第1の送水チューブを開放した状態に保持し、前記下流側送水チューブを前記内視鏡の鉗子チャンネルに接続したときに前記第1の送水チューブを閉塞した状態に保持することが好ましい。
【0011】
また、一つの観点によれば、本発明の内視鏡システムは、少なくとも鉗子などの処置具が挿通される鉗子チャンネルと、前記液体が流れる送水チャンネルと、を有する内視鏡と、液体を貯留した送水タンクと、回転体と、前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で配置される複数の押圧部とを有するポンプと、一端部が前記送水タンクに、他端部が前記内視鏡の鉗子チャンネル又は送水チャンネルの少なくとも一方のチャンネルに接続される、上記に記載のポンプチューブユニットと、を有し、前記ポンプチューブユニットの下流側端部を前記内視鏡の送水チャンネルに接続したとき、前記バイパス用送水チューブを開放した状態に保持した状態で前記ポンプを駆動して、前記ポンプチューブにより送り出された液体の一部を前記ポンプチューブユニットの内部で還流させながら、前記液体を前記内視鏡の送水チャンネルに送水し、前記ポンプチューブユニットの下流側端部を前記内視鏡の鉗子チャンネルに接続したとき、前記バイパス用送水チューブを閉塞した状態に保持した状態で前記ポンプを駆動して、前記ポンプチューブにより送り出された液体を前記ポンプチューブユニットの内部で還流させずに、前記内視鏡の鉗子チャンネルに送水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本件開示によれば、内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行い、また、送水装置の停止時における水切れを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の内視鏡システムの一構成を示す図である。
【
図2】内視鏡挿入部に設けたノズル先端の構成を示す図である。
【
図3】給水装置が有するローラポンプの一構成を示す図である。
【
図4】ポンプチューブユニットの一構成を示す図である。
【
図5】ポンプチューブユニットを内視鏡の鉗子挿入部に接続して使用する場合において、(a)バイパス用送水チューブを開放したときの鉗子口から吐出される吐出量、(b)バイパス用送水チューブを閉塞したときの鉗子口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
【
図6】ポンプチューブユニットを内視鏡のコネクタのチューブ接続部に接続して使用する場合において、(a)バイパス用送水チューブを開放したときの副送水口から吐出される吐出量、(b)バイパス用送水チューブを閉塞したときの副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡15、送水装置16、送水タンク17、及びポンプチューブユニット18などを含む。内視鏡15は、操作ハンドル21、内視鏡挿入部22、ユニバーサルチューブ23及びコネクタ24を含む。
【0015】
操作ハンドル21は、複数の操作部25、鉗子挿入部26などを備える。複数の操作部25は、例えばアンクルノブ28の他、送気/送水ボタン29、吸引ボタン30、シャッターボタン31などの各種ボタンを含む。アンクルノブ28は、内視鏡挿入部22の先端側に設けた湾曲部22aの湾曲動作を行う際に回動動作される。送気/送水ボタン29は、内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた観察口40や照明口41,42を洗浄する際に操作される。吸引ボタン30は、内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた鉗子口44を用いて体腔内の汚物(体腔内の対象部位を洗浄した液体を含む)の吸引する際に操作される。シャッターボタン31は、内視鏡挿入部22の先端内部に設けた撮像装置(不図示)を用いて体腔内の対象部位などを撮像する際に操作される。
【0016】
鉗子挿入部26は、鉗子などの処置具が挿入される。鉗子挿入部26は、内視鏡15の未使用時には、鉗子栓32が取り付けられる。なお、鉗子栓32には、後述するポンプチューブユニット18のロックアダプタ79がコネクタ(不図示)を介して接続することが可能である。
【0017】
内視鏡挿入部22は、図示を省略した送気チャンネル及び送水チャンネルの他、ライトガイド35、鉗子チャンネル36、副送水チャンネル37を内部に有する。ライトガイド35は、コネクタ24が接続された光源装置(不図示)から出射された光を内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた照明口41,42に案内する。
【0018】
鉗子チャンネル36は、操作ハンドル21に設けた鉗子挿入部26から挿入された鉗子などの処置具を、内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた鉗子口44に案内する。また、鉗子チャンネル36は、鉗子挿入部26にポンプチューブユニット18が接続された場合、送水装置16により送り込まれる液体を鉗子口44へと送水する。
【0019】
副送水チャンネル37は、チューブ接続部24bに接続されたポンプチューブユニット18からの液体を内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた副送水口45に送水する。
【0020】
ユニバーサルチューブ23は、操作ハンドル21とコネクタ24とを接続する。ユニバーサルチューブ23は、ライトガイド35や副送水チャンネル37などを内部に有する。
【0021】
コネクタ24は、光源装置への接続を可能とする光源接続部24a、ポンプチューブユニットの接続を可能とするチューブ接続部24bなど、複数のコネクタ部を有する。
【0022】
図2に示すように、内視鏡挿入部22のノズル22bは、観察口40、照明口41,42、送気/送水ノズル43、鉗子口44、副送水口45を備える。なお、ノズル22bの構成は一例を示したに過ぎず、ノズル22bに設ける開口の種類や位置は適宜設定することができる。
【0023】
観察口40は、内視鏡挿入部22の先端内部に設けた撮像装置の対物レンズ46を露呈する。対物レンズ46は、体腔内の対象部位の観察像を撮像装置に取り込む。照明口41,42は、ライトガイド35により導光された光を照明光として、体腔内の対象部位及び対象部位の近傍に向けて出射する。
【0024】
送気/送水ノズル43は、観察口40や照明口41,42に向けて、空気又は液体を噴出して、観察口40や照明口41,42及びその近傍を洗浄する。
【0025】
鉗子口44は、鉗子挿入部26から挿入された処置具の先端を出し入れする。なお、鉗子口44は、内視鏡15に吸引装置が接続される場合、体腔内で出血した血液などの汚物を吸引する吸引口としても機能する。ここで、鉗子口44の内径は2~3.2mmである。副送水口45は、送水装置16を介して内視鏡15の副送水チャンネル37に送水される液体を噴出する。ここで、副送水口45の内径は1mmである。
【0026】
送水装置16は、装置が有するポンプの駆動により、送水タンク17に貯留される液体を内視鏡15に向けて送水する装置である。なお、送水装置16は、不図示のフットスイッチの押圧操作などにより駆動する。本実施形態では、
図3に示すように、ローラポンプ51を有する送水装置16の場合について説明する。
【0027】
図3に示すように、ローラポンプ51は、前面に設けた円弧状のガイド壁53の内側に沿って、ポンプチューブ62を設置する。ローラポンプ51に設置されたポンプチューブ62は、後述する回転体55の外周に沿って保持される。
【0028】
ローラポンプ51は、回転体55、ローラ56、モータ57を含む。回転体55は、一例として略三角形状の板部材である。なお、回転体55の形状は、軸支するローラの数に応じた多角形状の板部材としてもよいし、円板状の部材であってもよい。回転体55は、モータ57の駆動軸57aに固着され、モータ57の駆動時に、
図3中反時計方向(A方向)に回転する。
【0029】
ローラ56は、回転体55がモータ57に固着される固着面とは反対となる面側で、且つ回転体55の回転中心からの距離が同一距離となる位置に各々軸支される。
図3においては、ローラ56は、正三角形状の板部材となる回転体55の各頂点近傍に各々軸支される場合を例示している。つまり、ローラ56は、120°間隔で配置される。ここで、複数のローラ56の回転軌跡と、円弧状のガイド壁53との隙間(クリアランス)は、例えば3.1mmである。
【0030】
ローラ56は、回転体55の回転時に、円弧状のガイド壁53の内側に沿って引き回されたポンプチューブ62を円弧状のガイド壁53に向けて押圧しながら(しごきながら)回転する。ローラ56がポンプチューブ62をしごくことにより、ポンプチューブ62の内部の液体が内視鏡15に向けて押し出される。また、ポンプチューブ62は、ローラ56によりしごかれた後に元の状態に復帰する際に、送水タンク17に貯留される液体を引き込む。上述したように、ローラ56は120°間隔で配置されている。したがって、回転体52が一回転すると、3つのローラ56のすべてのローラにより、上記動作が行われる。なお、押圧部の一例としてローラ56を取り上げているが、ローラの代わりに、回転体52の外方に突出する押圧片であってもよい。
【0031】
ここで、送水装置16における送水量は、例えば内径6.6mm、外径9.7mmのポンプチューブを使用したときに送水される送水量に設定される。ここで、内径6.6mm、外径9.7mmのポンプチューブを使用したときに送水される送水量は、例えば700ml/minに設定される。
【0032】
図1に戻って、内視鏡システム10では、送水タンク17に貯留される液体は、送水装置16が駆動する間、送水装置16に設置されたポンプチューブユニット18を介して内視鏡15に送水される。
【0033】
図4に示すように、ポンプチューブユニット18は、フィルタ付き送水チューブ61、ポンプチューブ62、継手付き送水チューブ63の他、バイパス用送水チューブ64を含む。
【0034】
ポンプチューブユニット18は、フィルタ付き送水チューブ61及びポンプチューブ62をジョイント65で、ポンプチューブ62及び送水チューブ63をジョイント66で接続し、さらに、バイパス用送水チューブ64をフィルタ付き送水チューブ61及び継手付き送水チューブ63に跨って接続することで一体としたものである。
【0035】
フィルタ付き送水チューブ61は、フィルタ装置68、送水チューブ69,70,71及びT字継手72を含む。フィルタ装置68は、ケース68aと、ケース68aに収納されるフィルタ本体70bとを含む。ケース68aは、両端が開口された筒状の部材である。ケース68aの材質は、透明または半透明の合成樹脂材又はガラスなどである。なお、ケース68aは、内径17.0mm、外径20.0mmである。フィルタ本体70bは、底面が開口され、円錐面にフィルタ網を形成した略円錐形状の部材である。フィルタ本体68bは、底面が下流側に配置されるようにケース68aの内部に固定される。
【0036】
送水チューブ69,70、71は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を材質としたチューブである。送水チューブ69,70、71は、内径4mm、外径6.0mmである。送水チューブ69,70、71のうち、送水チューブ69は、フィルタ装置68の上流側で、ジョイント73を用いてフィルタ装置68に接続される。また、送水チューブ69は、フィルタ装置68に接続される一端とは反対側となる端部にコネクタ74を有する。コネクタ74は、送水タンク17の吸引チューブに接続される。
【0037】
また、送水チューブ70は、フィルタ装置68の下流側で、ジョイント75を用いてフィルタ装置68に接続される。同時に、送水チューブ70は、フィルタ装置68に接続される一端とは反対側となる端部に、T字継手72を介して、送水チューブ71を接続する。さらに、送水チューブ71は、T字継手72に接続される端部とは反対側の端部に、ジョイント65に接続される。
【0038】
T字継手72は、例えば一方向に流れる液体の流れを分流させる、又は2方向から流れる液体の流れを合流させる部材である。T字継手72は、送水チューブ70,71の他に、バイパス用送水チューブ64を接続する。T字継手72は、送水チューブ70からの液体と、バイパス用送水チューブ64からの液体とを合流させる。
【0039】
ポンプチューブ62は、ローラポンプ51に設けた円弧状のガイド壁53の内周面に沿って引き回される部材である。ポンプチューブ62は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)から製造される。ポンプチューブ62は、内径6.6mm、外径9.7mmである。
【0040】
継手付き送水チューブ63は、送水チューブ76,77及びT字継手78を有する。送水チューブ76,77は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を材質としたチューブである。送水チューブ76,77は、内径4mm、外径6.0mmである。送水チューブ76は、一端がジョイント65に接続され、他端がT字継手78に接続される。送水チューブ77は、一端がT字継手78に接続される。送水チューブ77は、T字継手78に接続される一端とは反対側となる他端にロックアダプタ(ルアーコネクタ)79を固定する。ロックアダプタ79は、内視鏡15の操作ハンドル21に設けた鉗子挿入部26、又は内視鏡15のコネクタ24に設けたチューブ接続部24bに接続される。
【0041】
T字継手78は、T字継手72と同様に、例えば一方向に流れる液体の流れを分岐させる、又は2方向に流れる液体の流れを合流させる部材である。T字継手78は、送水チューブ76,77の他に、バイパス用送水チューブ64を接続する。T字継手78は、送水チューブ76からの液体を、送水チューブ77を流れる液体の流れと、バイパス用送水チューブ64を流れる液体の流れとに分流させる。
【0042】
バイパス用送水チューブ64は、送水チューブ80,81、制御チューブ82を有する。送水チューブ80,81は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を材質としたチューブである。送水チューブ80,81は、内径3.1mm、外径5.1mmである。なお、送水チューブ80は、送水チューブ81との間に制御チューブ82を固着した状態でT字継手78に接続される。また、送水チューブ81は、T字継手72に接続される。
【0043】
送水チューブ80は、ローラクランプ83を有する。ローラクランプ83は、ローラにより送水チューブ80を押圧することで、押圧した位置における送水チューブ80の内部における断面積を変化させて、送水チューブ80を流れる液体の流量を調整する。詳細には、ローラクランプ83は、ローラにより送水チューブ80を押圧して、その押圧部分を閉塞する位置(以下、閉塞位置)と、ローラによる送水チューブ80の押圧を解除する位置(以下、開放位置)との間で移動する。
【0044】
制御チューブ82は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を材質としたチューブである。制御チューブ82は、内径0.8mm、外径3.2mmである。なお、制御チューブ82は、例えばシクロヘキサノンなどの溶剤を用いて、送水チューブ80,81に固着される。ここで、制御チューブ82の材質は、ポリ塩化ビニル樹脂ではなく、ABS樹脂やポリプロピレン(PP)などを用いることも可能である。
【0045】
次に、上述したポンプチューブユニット18を用いて内視鏡15に送水を行う場合について説明する。まず、ポンプチューブユニット18を内視鏡15の鉗子挿入部26に接続した場合を説明する。このとき、バイパス用送水チューブ64のローラクランプ83のローラは、閉塞位置で保持される。送水装置16を駆動すると、ローラポンプ51が作動して、回転体55が回転する。回転体55の回転により、回転体55に軸支された複数のローラ56のいずれかによってポンプチューブ62をしごく。複数のローラ56のいずれかによりポンプチューブ62がしごかれることで、ポンプチューブ62の内部の液体が押し出され、同時に送水タンク17に貯留された液体がポンプチューブ62の内部に引き込まれる(吸引される)。
【0046】
上述したように、バイパス用送水チューブ64のローラクランプ83のローラは、閉塞位置で保持されるので、バイパス用送水チューブ64は、液体は流れない閉塞状態にある。したがって、ポンプチューブ62から押し出された液体は、送水チューブ76を介してT字継手78に到達した後、バイパス用送水チューブ64には分流されることはなく、送水チューブ77へと送水される。つまり、ポンプチューブから押し出された液体は、全て内視鏡15に向けて送水され、鉗子チャンネル36を介して鉗子口44から吐出される。なお、バイパス用送水チューブ64は閉塞状態にあるので、ポンプチューブ62により吸引される液体は、T字継手72からバイパス用送水チューブ64に流れ込むことはなく、そのままポンプチューブ62に向けて流れる。
【0047】
次に、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続した場合を説明する。このとき、バイパス用送水チューブ64のローラクランプ83のローラは、開放位置に保持される。送水装置16の駆動によりローラポンプ51が作動することで、ポンプチューブ62における液体の送り出しと、送水タンク17からの液体の吸引が行われる。
【0048】
ポンプチューブ62から送り出された液体は、送水チューブ76を流れた後、送水チューブ77又は送水チューブ80に流れる。なお、バイパス用送水チューブ64は、送水チューブ80,81の間に、送水チューブ80,81よりも内径が小さい制御チューブ82を配置している。制御チューブ82を配置することにより、送水装置16が駆動しているときには、ポンプチューブ62から送り出される液体によって、送水チューブ80の内圧が送水チューブ81の内圧よりも高い状態が維持される。したがって、バイパス用送水チューブ64において、液体は送水チューブ80から送水チューブ81に向けて流れるが、送水チューブ81から送水チューブ80に向けて流れることはない。なお、送水チューブ80から送水チューブ81へと流れ込んだ液体は、T字継手72にて、送水チューブ70を流れる液体と合流する。
【0049】
このように、ポンプチューブ62から送り出された液体の一部がバイパス用送水チューブ64を流れることで、内視鏡15に送り込まれる液体の送水量は減少するというマイナス点はあるが、ポンプチューブ62の内圧の上昇を抑えることができるという格別の効果を有することができる。ポンプチューブ62の内圧の上昇を抑えることで、送水装置16の停止時に、内視鏡15の副送水口45からの水垂れの発生が抑制される。同時に、ポンプチューブユニット18の内圧の上昇が抑えられることで、ポンプチューブ62のひび割れの発生や、ポンプチューブ62の破損による漏水の発生が防止される。
【0050】
以下、本実施形態のポンプチューブユニット18を採用するにあたり、検証試験を行った。
【0051】
まず、ポンプチューブユニット18を内視鏡15の鉗子挿入部26に接続したときに鉗子口から吐出される液体の吐出量を、バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合と、閉塞状態とした場合の2つの場合について測定した。なお、液体の送水量及び液体の吐出量は30秒間隔で測定した。また、送水を開始してから、30秒、60秒,90秒,120秒及び150秒経過したときに送水装置16を停止させ、副送水口45からの水垂れの有無について確認した。さらに、ポンプチューブ62にひびや割れが発生しているか否かの確認も行った。この場合、30秒経過したときの変化量から、鉗子口から吐出される平均吐出量を求めている。
【0052】
図5(a)に示すように、バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合、鉗子口44からの吐出量の平均は、258.4mlであった。バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合、経過時間が30秒,60秒,90秒,120秒及び150秒のいずれかが経過したときに送水装置を停止しても、鉗子口44からの水垂れは発生しなかった。また、ポンプチューブ62にひび割れなどは発生しなかった。
【0053】
また、
図5(b)に示すように、バイパス用送水チューブ64を閉塞状態とした場合、鉗子口44からの吐出量の平均は、343mlであった。バイパス用送水チューブ64を閉塞状態とした場合、経過時間が30秒,60秒,90秒,120秒及び150秒のいずれかが経過したときに送水装置を停止しても、鉗子口44からの水垂れは発生しなかった。
【0054】
上記の検証試験の結果、ポンプチューブユニット18を内視鏡15の鉗子挿入部26に接続して使用するときには、ポンプチューブ62の割れの発生を抑える点においては、バイパス用送水チューブ64を開放状態とすることは有効である。
【0055】
なお、バイパス用送水チューブ64を閉塞状態としたときの鉗子口44からの吐出量は686l/min、バイパス用送水チューブ64を開放状態としたときの鉗子口44からの吐出量は516.8l/minである。つまり、バイパス用送水チューブ64を開放状態とすると、25%の液体がバイパス用送水チューブ64にて還流されると考えられる。ここで、送水装置16にて設定される送水量は700ml/minであることを考慮すると、バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合には、送水装置16の送水性能を十分に活用できていないことが分かった。したがって、送水装置16の送水性能を有効に活用することを考慮すると、バイパス用送水チューブ64を閉塞状態とすることが有効であることがわかった。
【0056】
次に、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続したときに副送水口45から吐出される液体の吐出量を、バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合と、閉塞状態とした場合の2つの場合について測定した。なお、液体の送水量及び液体の吐出量は30秒間隔で測定した。また、送水を開始してから、30秒、60秒,90秒,120秒及び150秒経過したときに送水装置16を停止させ、副送水口45からの水垂れの有無について確認した。さらに、ポンプチューブ62にひびや割れが発生しているか否かの確認も行った。この場合も、30秒経過したときの変化量から、副送水口45から吐出される平均吐出量を求めている。
【0057】
図6(a)に示すように、バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合、副送水口45からの吐出量の平均は、104.4mlであった。バイパス用送水チューブ64を開放状態とした場合、経過時間が30秒,60秒,90秒,120秒及び150秒のいずれかが経過したときに送水装置を停止したときには、副送水口45からの水垂れが発生したが、1秒以下で水垂れが解消した。また、ポンプチューブ62にひび割れなどは発生しなかった。
【0058】
また、
図6(b)に示すように、バイパス用送水チューブ64を閉塞状態とした場合、副送水口45からの吐出量の平均は、134mlであった。しかしながら、バイパス用送水チューブ64を閉塞状態とした場合、2リットル送水したときに、ポンプチューブ62が破損し、漏水した。なお、バイパス用送水チューブ64を閉塞状態とした場合、経過時間が30秒,60秒,90秒,120秒及び150秒のいずれかが経過したときに送水装置を停止したときには、副送水口45からの水垂れが発生した。なお、水垂れは、5秒程度継続した。
【0059】
上記の検証試験の結果、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続して使用するときには、副送水口45からの水垂れは発生するが、水垂れしている時間を短時間に抑えることができるので、バイパス用送水チューブを開放状態にすることが有効であることが分かった。また、ポンプチューブの破損を防止する点においても、バイパス用送水チューブを開放状態とすることが有効であることが分かった。
【符号の説明】
【0060】
10…内視鏡システム
15…内視鏡
16…送水装置
17…送水タンク
18…ポンプチューブユニット
37…副送水チャンネル
45…副送水口
51…ローラポンプ
55…回転体
56…ローラ
62…ポンプチューブ
64…バイパス用送水チューブ
80,81…送水チューブ
82…制御チューブ
83…ローラクランプ