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特開2022-109290センシングシステムおよび情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109290
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】センシングシステムおよび情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 5/02 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076019
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2017247051の分割
【原出願日】2017-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恩田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】服部 将志
(72)【発明者】
【氏名】下舞 賢一
(72)【発明者】
【氏名】三ケ田 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰治
(57)【要約】
【課題】匂いを精度良く検出する。
【解決手段】センシングシステムは、空気に含まれる匂いの原因物質を除去するフィルタと、空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する少なくとも1つの検出素子を含むセンサユニットとを有するセンサ装置と、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値と、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタを通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値との差を算出する差分算出部と、算出した差に基づき、空気の匂いを判定する判定部とを有する情報処理装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
匂いの検出対象となる対象空気に含まれる匂いの原因物質を除去するフィルタと、前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する互いに異なる種類の複数の検出素子を含むセンサユニットと、を有するセンサ装置と、
情報処理装置と、
を備え、
前記情報処理装置は、
所定時間毎に、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値、および、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過していない前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を取得する取得部と、
前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値と、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過していない前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値との差を表す差分パターンを算出する差分算出部と、
算出した前記差分パターンに基づき、前記対象空気の匂いを判定する判定部と、
生成された前記差分パターンを、前記差分パターンの基となる検出値の取得時刻に対応付けて記憶するログ記憶部と、
前記ログ記憶部に記憶された、第1時刻より前の前記取得時刻に対応する少なくとも1つの前記差分パターンに基づき、前記第1時刻における前記差分パターンを推定し、前記第1時刻における前記対象空気の匂いを判定する推定部と、
を備えるセンシングシステム。
【請求項2】
前記フィルタは、前記匂いの原因物質を除去し、前記匂いの原因物質以外を通過させる
請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項3】
前記センサ装置は、
前記対象空気を前記フィルタを通過させて前記センサユニットに供給する第1ファンと、
前記対象空気を前記フィルタを通過させずに前記センサユニットに供給する第2ファンと、
をさらに有する請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項4】
前記センサ装置は、前記第1ファンを動作させて前記第2ファンを停止させる第1モードと、前記第1ファンを停止させて前記第2ファンを動作させる第2モードとを切り換える制御部をさらに有し、
前記差分算出部は、前記第1モードにおける前記複数の検出素子のそれぞれの検出値と、前記第2モードにおける前記複数の検出素子のそれぞれの検出値との差を表す前記差分パターンを算出する
請求項3に記載のセンシングシステム。
【請求項5】
前記情報処理装置は、複数の種類の匂い毎に、1以上の基準パターンを紐付けて記憶するパターン記憶部をさらに有し、
前記基準パターンは、前記複数の検出素子のそれぞれの、対応する匂いの空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表し、
前記判定部および前記推定部は、前記差分パターンと、前記基準パターンとをマッチングして、前記対象空気の匂いの種類を判定する
請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項6】
匂いの検出対象となる対象空気に含まれる匂いの原因物質を除去するフィルタと、前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する互いに異なる種類の複数の検出素子を含むセンサユニットと、を有するセンサ装置から、所定時間毎に、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値、および、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過していない前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を取得する取得部と、
前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値と、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過していない前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値との差を表す差分パターンを算出する差分算出部と、
算出した前記差分パターンに基づき、前記対象空気の匂いを判定する判定部と、
生成された前記差分パターンを、前記差分パターンの基となる検出値の取得時刻に対応付けて記憶するログ記憶部と、
前記ログ記憶部に記憶された、第1時刻より前の前記取得時刻に対応する少なくとも1つの前記差分パターンに基づき、前記第1時刻における前記差分パターンを推定し、前記第1時刻における前記対象空気の匂いを判定する推定部と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングシステムおよび情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、匂いセンサ素子の開発が広く行われている。例えば、匂いセンサ素子として、水晶振動子の表面に、匂いの原因物質を吸着する膜を設けたQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサが知られている。ATカットされた水晶振動子は、質量変化により共振周波数が変化する。QCMセンサは、ATカットされた水晶振動子を振動させて共振周波数の変化量を検出することにより、原因物質の質量を検出する。
【0003】
また、それぞれが異なる原因物質の質量を検出する複数の匂いセンサ素子を備えるセンサ装置も知られている。このようなセンサ装置は、複数の原因物質のそれぞれの質量を出力することができる。情報処理装置は、このようなセンサ装置から出力された複数の原因物質のそれぞれの量を受け取り、受け取った複数の原因物質のそれぞれの量のパターンを予め登録されたパターンと比較する。これにより、情報処理装置は、匂いの種類を特定することができる。
【0004】
このようなセンサ装置は、例えば、IOT(Internet of Things)技術等の情報処理技術と組み合わせることにより、例えば、室内または車両内の環境の管理、食品の衛生管理、工場の工程管理、および、人間またはペット等の体調管理等に適用することができる。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、空気清浄装置のフィルタの交換時期を通知する技術が記載されている。特許文献3には、車両内の匂いに応じて車両の中の環境を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-156131号公報
【特許文献2】特開2000-210518号公報
【特許文献3】特開2016-199098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の中の空間は、非常に狭く、密閉され、乗車者が長期間滞在する。このため、車両の中は、匂いが強くなる可能性が高い。車両の中の空間の匂いは、シートの汚れが原因の一つである。シートの汚れは、蓄積量が増えると除去が難しい。
【0008】
しかし、乗車者本人は、シートの汚れにより車両の中の空間の匂いが強くなったことを気づきにくい。従って、シートの汚れに気づいたときには、クリーニングしてもシートの汚れを除去しづらい状況となってしまう可能性がある。このため、シートの汚れ等を検出するために、シートの匂いを精度良く検出することが要求される。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、匂いを精度良く検出することができるセンシングシステムおよび情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るセンシングシステムは、匂いの検出対象となる対象空気に含まれる匂いの原因物質を除去するフィルタと、前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する互いに異なる種類の複数の検出素子を含むセンサユニットと、を有するセンサ装置と、情報処理装置と、を備え、前記情報処理装置は、所定時間毎に、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値、および、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過していない前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を取得する取得部と、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過した前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値と、前記複数の検出素子のそれぞれの前記フィルタを通過していない前記対象空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値との差を表す差分パターンを算出する差分算出部と、算出した前記差分パターンに基づき、前記対象空気の匂いを判定する判定部と、生成された前記差分パターンを、前記差分パターンの基となる検出値の取得時刻に対応付けて記憶するログ記憶部と、前記ログ記憶部に記憶された、第1時刻より前の前記取得時刻に対応する少なくとも1つの前記差分パターンに基づき、前記第1時刻における前記差分パターンを推定し、前記第1時刻における前記対象空気の匂いを判定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、匂いを精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るセンシングシステムを示す図である。
図2図2は、センサ装置の構成を示す図である。
図3図3は、センサユニットの構成の一例を示す図である。
図4図4は、匂いの判定処理を説明するための図である。
図5図5は、第1モードでの空気の流れを示す図である。
図6図6は、第2モードでの空気の流れを示す図である。
図7図7は、情報処理装置の機能構成を示す図である。
図8図8は、情報処理装置による匂いの検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、情報処理装置の表示例を示す図である。
図10図10は、情報処理装置による乗車者の匂いの検出処理の流れを示すフローチャートである。
図11図11は、変形例に係るセンサ装置の構成の一部を示す図である。
図12図12は、情報処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るセンシングシステム10について説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るセンシングシステム10を示す図である。センシングシステム10は、対象物体を発生源とする匂いを精度良く検出する。本実施形態において、センシングシステム10は、車両18に適用される。車両18に適用されたセンシングシステム10は、車両18の中(車内)のシート32を発生源とする匂いを検出する。なお、センシングシステム10は、車両18内のシート32に限らず、他の装置に適用されてもよい。例えば、センシングシステム10は、ベッド、椅子またはトイレ等を発生源とする匂いを検出してもよい。
【0015】
センシングシステム10は、情報処理装置20と、少なくとも1つのセンサ装置30とを備える。
【0016】
情報処理装置20は、データ処理機能、通信機能および表示機能を有するコンピュータである。例えば、情報処理装置20は、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルコンピュータ、携帯電話またはノート型パソコン等のコンピュータである。また、情報処理装置20は、車両18の内部に設けられた専用または汎用のコンピュータであってもよい。また、情報処理装置20は、通信装置を介して接続可能なサーバ等であってもよい。情報処理装置20は、車両18を使用するユーザ(乗車者)により使用される。
【0017】
少なくとも1つのセンサ装置30のそれぞれは、上述の少なくとも1つの検出素子を含む。少なくとも1つの検出素子のそれぞれは、空気に含まれる匂いを感じさせる匂いの原因物質の量を検出する。検出素子は、原因物質の量として、原因物質の質量を検出する。これに代えて、検出素子は、原因物質の量として、原因物質の体積または分子量を検出してもよい。
【0018】
センサ装置30は、内蔵する少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を、無線通信により情報処理装置20に送信する。例えば、センサ装置30は、IEEE802.11等の無線LAN(Local Area Network)またはIEEE802.15等のデジタル機器用の近距離無線通信等により情報処理装置20と通信可能である。また、情報処理装置20が車両18の中に設けられた専用または汎用のコンピュータである場合には、センサ装置30は、内蔵する少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を、有線通信により情報処理装置20に送信してもよい。
【0019】
少なくとも1つのセンサ装置30のそれぞれは、車両18の中におけるシート32に近接して取り付けられる。センサ装置30は、例えば、シート32における、座部、背もたれまたはヘッドレストの何れかに近接して取り付けられる。これにより、センサ装置30は、シート32(例えば、座部、背もたれまたはヘッドレスト)を発生源とする原因物質の量を検出することができる。
【0020】
車両18が複数のシート32を備える場合、センシングシステム10は、複数のシート32のそれぞれに対応して複数のセンサ装置30を備えてもよい。また、センシングシステム10は、シート32における座部、背もたれまたはヘッドレストのそれぞれに対応して複数のセンサ装置30を備えてもよい。
【0021】
情報処理装置20は、少なくとも1つのセンサ装置30のそれぞれから、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号を受信する。情報処理装置20は、少なくとも1つのセンサ装置30のそれぞれについて、受信した少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値に基づき、対象のセンサ装置30が取り付けられた周囲の空気の匂いを検出する。例えば、情報処理装置20は、取り付け位置の周囲の空気の匂いの種類および強度を判定する。
【0022】
そして、情報処理装置20は、検出した匂いに基づき、センサ装置30が取り付けられたシート32(座部、背もたれまたはヘッドレスト)の匂いを表す情報を出力する。例えば、情報処理装置20は、取り付けられたシート32(座部、背もたれまたはヘッドレスト)の匂いの種類および強さを表す情報を出力する。さらに、情報処理装置20は、過去における匂いの判定結果に基づき、センサ装置30が取り付けられたシート32(座部、背もたれまたはヘッドレスト)のクリーニング時期を推定して出力してもよい。
【0023】
図2は、センサ装置30の構成を示す図である。センサ装置30は、例えば、片手で持ち運び可能な程度の大きさである。例えば、センサ装置30は、1辺が数mmから数cm程度の大きさの筐体内に収納される。センサ装置30の形状は一例であり、どのようであってもよい。
【0024】
センサ装置30は、フィルタ34と、第1ファン36と、第2ファン38と、センサユニット40と、通信部48と、制御部50と、電池52とを有する。
【0025】
フィルタ34は、空気を通過させ、通過させた空気から匂いの原因物質を除去する。フィルタ34は、検出対象の少なくとも1つの匂いの原因物質を除去する。なお、フィルタ34は、検出対象の少なくとも1つの匂いの原因物質のうちの一部の匂いの原因物質を除去してもよい。
【0026】
第1ファン36は、空気を取り込んで、取り込んだ空気をフィルタ34を通過させてセンサユニット40に供給する。例えば、第1ファン36は、フィルタ34とセンサユニット40との間に配置され、フィルタ34を通過した空気をセンサユニット40に送り出す。なお、センサ装置30は、第1ファン36の空気の取り込み口が、対象物体(例えば、シート32の座部、背もたれまたはヘッドレスト)の近傍に位置するように配置される。第1ファン36は、対象物体の近傍から空気を取り込んで、フィルタ34を通過させてセンサユニット40に供給する。これにより、第1ファン36は、対象物体に付着していた微小物質を含む空気を取り込んで、フィルタ34を通過させてセンサユニット40に供給することができる。
【0027】
第2ファン38は、空気を取り込んで、取り込んだ空気をフィルタ34を通過させずにセンサユニット40に供給する。例えば、第2ファン38は、空気の取り込み口とセンサユニット40との間に配置され、フィルタ34を通過していない空気をセンサユニット40に送り出す。なお、センサ装置30は、第2ファン38の空気の取り込み口が、対象物体(例えば、シート32の座部、背もたれまたはヘッドレスト)の近傍に位置するように配置される。第2ファン38は、対象物体の近傍から空気を取り込んで、フィルタ34を通過させずにセンサユニット40に供給する。これにより、第2ファン38は、対象物体に付着していた微小物質を含む空気を取り込んで、フィルタ34を通過させずにセンサユニット40に供給することができる。
【0028】
センサユニット40は、上述の検出素子を少なくとも1つ含む。センサユニット40には、フィルタ34を通過した空気と、フィルタ34を通過していない空気とが異なるタイミングで与えられる。少なくとも1つの検出素子のそれぞれは、フィルタ34を通過した空気が与えられた場合に、匂いの原因物質の量を検出する。さらに、少なくとも1つの検出素子のそれぞれは、フィルタ34を通過していない空気が与えられた場合にも、匂いの原因物質の量を検出する。
【0029】
センサユニット40は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値、および、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を出力する。具体的には、センサユニット40は、第1ファン36から送風されたフィルタ34を通過した空気が与えられた場合における少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値、および、第2ファン38から送風されたフィルタ34を通過していない空気が与えられた場合における少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を出力する。
【0030】
なお、センサユニット40が複数の検出素子を含む場合、複数の検出素子は、互いに異なる種類の素子である。
【0031】
例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、互いに異なる種類の匂いの原因物質の量を検出する。例えば、第1の検出素子は、物質Xの量を検出し、第2の検出素子は、物質Yの量を検出する。また、例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、同一の種類の匂いの原因物質の量を、異なる感度で検出してもよい。例えば、第1の検出素子は、物質Xの量を第1の感度で検出し、第2の検出素子は、物質Xの量を第1の感度より低い第2の感度で検出する。
【0032】
また、例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、互いに異なる種類の組み合わせの複数の匂いの原因物質の量を検出してもよい。例えば、第1の検出素子は、物質Xと物質Yとの合計量を検出し、第2の検出素子は、物質Xと物質Zとの合計量を検出する。また、例えば、センサユニット40に含まれる何れか2つの検出素子は、同一の種類の組み合わせの複数の匂いの原因物質の量を、異なる感度で検出してもよい。例えば、第1の検出素子は、物質Xと物質Yとの合計量を第1の感度で検出し、第2の検出素子は、物質Xと物質Yとの合計量を第1の感度より低い第2の感度で検出してもよい。
【0033】
通信部48は、センサユニット40により検出された信号を情報処理装置20に送信する。すなわち、通信部48は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す信号、および、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す信号を情報処理装置20に送信する。
【0034】
制御部50は、第1ファン36、第2ファン38、センサユニット40および通信部48の動作を管理および制御する。例えば、制御部50は、第1ファン36および第2ファン38の動作開始タイミングおよび動作終了タイミングを制御する。
【0035】
電池52は、第1ファン36、第2ファン38、通信部48および制御部50へ動作電力を供給する。なお、センサ装置30は、電池52に代えて、車両18に備えられた電力源を取得する電力取得部を有してもよい。電力取得部は、第1ファン36、第2ファン38、センサユニット40、通信部48および制御部50へ動作電力を供給する。
【0036】
図3は、センサユニット40の構成を示す図である。本実施形態において、センサユニット40は、空気に含まれる微小物質の質量を検出可能なQCMセンサである。なお、センサユニット40は、QCMセンサに限らず、半導体薄膜を用いたガスセンサ等の他の方式のセンサであってもよい。
【0037】
本実施形態において、センサユニット40は、支持部58と、少なくとも1つのガス検出素子60と、駆動検出回路62とを有する。支持部58は、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれが取り付けられる。
【0038】
ガス検出素子60は、検出素子の一例である。図3の例では、センサユニット40は、異なる種類の6個のガス検出素子60-A~60-Fを有する。例えば、6個のガス検出素子60-A~60-Fのそれぞれは、異なる種類の匂いの原因物質を検出する。
【0039】
少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれは、圧電効果により振動可能にカットされた水晶振動子と、水晶振動子の両側の平面に設けられた2つの電極と、水晶振動子の平面の少なくとも一方に設けられた吸着膜とを含む。
【0040】
水晶振動子は、側面の一部が、振動可能に支持部58に保持される。2つの電極は、駆動検出回路62から交流電圧が印加される。吸着膜は、周囲の空気に含まれる特定の原因物質を吸着する。少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれは、互いに異なる物質を吸着する吸着膜を含む。具体的には、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれは、センサ装置30の検出対象となる原因物質を吸着する吸着膜を含む。
【0041】
このようなガス検出素子60は、2つの電極に共振周波数の交流電圧が印加されると、圧電効果により水晶振動子が振動する。水晶振動子の基本共振周波数は、質量および粘弾性により定まる。従って、吸着膜に原因物質が吸着されて質量が変化した場合、ガス検出素子60は、吸着した質量の変化に応じて、基本共振周波数が変化する。
【0042】
駆動検出回路62は、第1ファン36または第2ファン38の送風時において、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれに交流電圧を印加して、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれの基本共振周波数の変化を検出する。これにより、駆動検出回路62は、少なくとも1つのガス検出素子60のそれぞれ毎に、第1ファン36または第2ファン38による送風により与えられた空気に含まれる匂いの原因物質の質量を検出することができる。駆動検出回路62は、検出値を通信部48に与える。
【0043】
図4は、匂いの判定処理を説明するための図である。
【0044】
情報処理装置20は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す信号をセンサ装置30から取得する。例えば、図4の例においては、情報処理装置20は、ガス検出素子60-A、ガス検出素子60-B、ガス検出素子60-C、ガス検出素子60-D、ガス検出素子60-Eおよびガス検出素子60-Fのそれぞれの検出値を表す信号を取得する。
【0045】
また、情報処理装置20は、所定の種類の匂いが発生した場合に取得される、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す基準パターンを記憶している。例えば、図4の例においては、情報処理装置20は、加齢臭、カビ臭および汗の匂いのそれぞれが検出された場合におけるガス検出素子60-A~Fのそれぞれの検出値を表す基準パターンを記憶している。
【0046】
情報処理装置20は、センサ装置30から取得した信号に含まれる、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す検出パターンと、予め記憶している所定の種類の匂いが発生した場合の少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す基準パターンとをマッチングする。そして、情報処理装置20は、センサ装置30から取得した検出パターンが、基準パターンとマッチングする場合、センサ装置30に与えられた空気の匂いが、所定の種類の匂いであると判定する。情報処理装置20は、複数の種類の匂いについて基準パターンを記憶しておき、1つの検出パターンが何れの匂いの基準パターンにマッチングするかを判定してもよい。例えば、図4の例においては、情報処理装置20は、センサ装置30に与えられた空気の匂いが、カビ臭であると判定している。
【0047】
さらに、情報処理装置20は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さもマッチングにより判定してもよい。例えば、情報処理装置20は、匂いの種類毎且つ匂いの強さ毎に基準パターンを記憶しておき、センサ装置30から取得した検出パターンと、予め記憶している匂いの種類毎且つ匂いの強さ毎の基準パターンとをマッチングしてもよい。
【0048】
また、情報処理装置20は、所定の種類の匂いが発生しているとユーザが感じた時に得られた検出パターンを教師データとして、予め記憶している基準パターンを、学習処理により更新してもよい。情報処理装置20は、複数の匂いの種類毎および匂いの強さ毎の基準パターンをサーバ等から定期的に取得して、記憶している基準パターンを更新してもよい。
【0049】
情報処理装置20は、このようなパターンマッチングに代えて、他の方法で匂いの種類および強さを判定してもよい。例えば、情報処理装置20は、ニューラルネットワーク等の技術を用いて匂いの種類および匂いの強さを判定してもよい。
【0050】
なお、図4の例では、センサ装置30が、6種類のガス検出素子60-A~60-Fの検出値を出力する例を示している。しかし、センサ装置30は、6種類よりも少ない数、または、6種類よりも多い数の検出素子の検出値を出力してもよい。また、図4の例では、加齢臭、カビ臭および汗の匂いを判定する例を示している。しかし、情報処理装置20は、これら以外の匂いを判定してもよい。また、本実施形態のセンサ装置30は、1個の検出素子の検出値を出力してもよい。
【0051】
ここで、センサ装置30は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値、および、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を出力する。そして、センサ装置30は、これらの検出値を情報処理装置20へと出力する。
【0052】
情報処理装置20は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第1パターンと、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第2パターンとの差分を表す差分パターンを算出する。そして、情報処理装置20は、差分パターンに基づき、空気の匂いを検出する。例えば、情報処理装置20は、差分パターンを、予め記憶している基準パターンに対してマッチングを行い、空気の匂いの種類および強さを判定する。
【0053】
図5は、第1モードでの空気の流れを示す図である。センサ装置30の制御部50は、匂いの検出時において、第1モードと第2モードとを切り換える。第1モードでは、制御部50は、第1ファン36を動作させて第2ファン38を停止させる。そして、センサユニット40は、第1モードにおいて、内蔵する少なくとも1つの検出素子のそれぞれを用いて、第1ファン36から送風された空気から匂いの原因物質の量を検出する。これにより、センサユニット40は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を出力することができる。
【0054】
図6は、第2モードでの空気の流れを示す図である。第2モードでは、制御部50は、第1ファン36を停止させて第2ファン38を動作させる。そして、センサユニット40は、このような第2モードにおいて、内蔵する少なくとも1つの検出素子のそれぞれを用いて、第2ファン38から送風された空気から匂いの原因物質の量を検出する。これにより、センサユニット40は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を出力することができる。
【0055】
図7は、情報処理装置20の機能構成を示す図である。情報処理装置20は、所定のアプリケーションプログラムを実行することにより、図7に示す各ブロックに示す機能を実現する。
【0056】
このような機能を実現した情報処理装置20は、第1取得部72と、第2取得部74と、差分算出部76と、パターン記憶部78と、判定部80と、出力部82と、ログ記憶部84と、推定部86とを有する。
【0057】
第1取得部72は、センサ装置30から、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す信号を取得する。第2取得部74は、センサ装置30から、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す信号を取得する。なお、第1取得部72および第2取得部74は、共通のハードウェアにより実現されてもよいし、別々のハードウェアにより実現されてもよい。
【0058】
差分算出部76は、第1取得部72により取得された少なくとも1つの検出素子の検出値を表す第1パターンと、第2取得部74により取得された少なくとも1つの検出素子の検出値を表す第2パターンとの差を表す差分パターンを算出する。すなわち、差分算出部76は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第1パターンと、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第2パターンとの差を表す差分パターンを算出する。
【0059】
例えば、差分算出部76は、第2パターンに含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値から、第1パターンに含まれる対応する検出素子の検出値を減算する。このように算出された差分パターンは、原因物質以外の物質が吸着膜に吸着したこと等により生じるノイズおよびセンサ装置30のオフセット等の誤差成分を除いた、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す。
【0060】
パターン記憶部78は、複数の種類の匂い毎に、1以上の基準パターンを紐付けて記憶する。基準パターンは、少なくとも1つの検出素子のそれぞれの、対応する種類の匂いの空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す。例えば、パターン記憶部78は、加齢臭、カビ臭および汗の匂いのそれぞれが検出された場合における、センサ装置30により取得される少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値を表す基準パターンを記憶する。なお、パターン記憶部78は、このような種類の匂いに限らず、他の匂いのパターンを記憶してもよい。さらに、パターン記憶部78は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さ毎に基準パターンを記憶してもよい。
【0061】
判定部80は、差分パターンと、パターン記憶部78に記憶されている1または複数の基準パターンとの間でマッチングを行う。そして、判定部80は、差分パターンが、何れかの基準パターンとマッチングする場合、何れか種類の匂いであると判定する。より具体的には、判定部80は、1または複数の基準パターンのうち、差分パターンと一致または所定の範囲内となる何れかの基準パターンを選択する。そして、判定部80は、選択した基準パターンに対応する種類の匂いであると判定する。
【0062】
なお、パターンがマッチングする場合とは、2つのパターンが完全に一致した場合のみならず、所定の誤差以下で一致する場合、または、複数の基準パターンのうち最も近い基準パターンを選択する場合等を含む。さらに、判定部80は、それぞれの種類の匂いについて、匂いの強さを判定してもよい。これにより、判定部80は、匂いの種類および匂いの強さを判定することができる。また、判定部80は、このようなパターンマッチングに限らず、他の方法で匂いの種類および匂いの強さを判定してもよい。例えば、判定部80は、ニューラルネットワーク等を用いて差分パターンにマッチングする匂いの種類および匂いの強さを判定してもよい。
【0063】
出力部82は、判定部80により判定された空気の匂いを示す情報を出力する。例えば、出力部82は、匂いの種類および匂いの強さを出力する。例えば、出力部82は、表示部に、判定された匂いの種類および匂いの強さを表示させる。なお、出力部82は、匂いの種類および匂いの強さを示す情報を、音声により出力させてもよいし、ネットワークを介して他の装置に送信してもよい。また、出力部82は、匂いの発生源の匂いの種類および匂いの強さに基づき、対象物体であるシート32(例えば、座部、背もたれまたはヘッドレスト)の汚染度を判定し、判定した汚染度を表示してもよい。
【0064】
ログ記憶部84は、差分算出部76により算出された差分パターンを、差分パターンの基となる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値の取得時刻に対応付けて記憶する。さらに、ログ記憶部84は、過去に算出された差分パターンおよび取得時刻も対応付けて記憶する。なお、ログ記憶部84は、差分パターンに代えて、第1パターンおよび第2パターンを記憶してもよい。
【0065】
推定部86は、ログ記憶部84に記憶されている差分パターンおよび対応する取得時刻に基づき、任意の時刻において算出されると予測される差分パターンを推定する。例えば、推定部86は、任意の第1時刻より前の少なくとも1つの差分パターンに基づき、第1時刻における差分パターンを推定する。例えば、推定部86は、差分パターンに含まれる複数の差分検出値のそれぞれについて、差分検出値の時間変化を表す関数を同定し、同定した関数に第1時刻を代入する。これにより、推定部86は、第1時刻における差分パターンを推定することができる。
【0066】
さらに、推定部86は、第1時刻における差分パターンと、パターン記憶部78に記憶されたパターンとのマッチングを行い、第1時刻において発生する匂いを推定する。例えば、推定部86は、第1時刻における匂いの種類および強さを推定する。
【0067】
そして、推定部86により第1時刻において発生する匂いが推定された場合、出力部82は、第1時刻において発生する匂いの推定結果を出力する。例えば、出力部82は、表示部に、第1時刻において発生する匂いの推定結果を表示させる。
【0068】
また、さらに、推定部86は、ログ記憶部84に記憶されている複数の差分パターンおよび対応する複数の取得時刻に基づき、所定の種類の匂いが発生する時刻を推定してもよい。例えば、推定部86は、所定の種類の匂いが、所定の強さとなる時刻を推定する。この場合、例えば、推定部86は、差分パターンに含まれる複数の差分検出値のそれぞれについて、差分検出値の時間変化を表す関数を同定する。そして、複数の差分検出値のそれぞれの時間変化を表す関数に基づき、複数の差分検出値のパターンが、パターン記憶部78に記憶されているパターンにマッチングする時刻を算出する。
【0069】
そして、推定部86により所定の種類の匂いが発生する時刻が推定された場合、出力部82は、所定の種類の匂いが発生する時刻を出力する。例えば、出力部82は、表示部に、所定の種類の匂いが発生する時刻を表示させる。また、出力部82は、所定の種類の匂いが発生する時刻において、対象物体であるシート32(座部、背もたれまたはヘッドレスト)の交換またはクリーニングを促す情報を出力してもよい。
【0070】
なお、センシングシステム10が複数のセンサ装置30を備える場合、情報処理装置20は、複数のセンサ装置30のそれぞれについて、各ブロックでの処理を実行させる。また、情報処理装置20は、所定時間毎にセンサ装置30に第1パターンおよび第2パターンを取得させ、所定時間毎に取得した第1パターンおよび第2パターンに基づき各ブロックでの処理を実行させてもよい。
【0071】
図8は、情報処理装置20による匂いの検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。情報処理装置20は、複数のセンサ装置30のそれぞれ毎、且つ、所定時間毎に、例えば、図8のステップS11からステップS17の処理を実行する。情報処理装置20は、車両18が使用されないタイミング、例えば、深夜または早朝等に、一日に1回程度、図8のステップS11からステップS17の処理を実行する。
【0072】
まず、ステップS11において、情報処理装置20は、車両18の中に乗車者が存在するか否かを判断する。情報処理装置20は、車両18の中に乗車者が存在する場合(S11のYes)、処理をステップS11で待機するか、または、本フローを終了する。
【0073】
車両18の中に乗車者が存在しない場合(S11のNo)、情報処理装置20は、処理をステップS12に進める。ステップS12において、情報処理装置20は、センサ装置30から、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第1パターンを取得する。続いて、ステップS13において、情報処理装置20は、センサ装置30から、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第2パターンを取得する。
【0074】
続いて、ステップS14において、情報処理装置20は、第1パターンと第2パターンとの差を表す差分パターンを算出する。例えば、情報処理装置20は、第2パターンに含まれる少なくとも1つの検出素子のそれぞれの検出値から、第1パターンに含まれる対応する検出素子のそれぞれの検出値を減算することにより、差分パターンを算出する。
【0075】
続いて、ステップS15において、情報処理装置20は、差分パターンを基準パターンとマッチングすることにより匂いを検出する。例えば、情報処理装置20は、匂いの種類および匂いの強さを判定する。
【0076】
続いて、ステップS16において、情報処理装置20は、過去に算出した複数の差分パターンおよび対応する複数の取得時刻に基づき、所定の種類の匂いが所定の匂いの強さとなる時刻を推定する。
【0077】
続いて、ステップS17において、情報処理装置20は、判定された匂いを示す情報を出力する。例えば、情報処理装置20は、表示部に、判定された匂いの種類および強さを示す情報を表示する。さらに、ステップS17において、情報処理装置20は、所定の種類の匂いが所定の匂いの強さとなる時刻を表示する。
【0078】
情報処理装置20は、ステップS17の処理を終えると本フローを終了する。なお、情報処理装置20は、センシングシステム10が複数のセンサ装置30を備える場合には、以上の処理を複数のセンサ装置30のそれぞれ毎に実行する。また、情報処理装置20は、以上の処理を、所定時間毎に繰り返して実行する。
【0079】
図9は、情報処理装置20の表示例を示す図である。情報処理装置20は、シート32のヘッドレストに取り付けられたセンサ装置30に対してステップS11からステップS17の処理を実行した場合、例えば、図9に示すような画像を表示する。
【0080】
情報処理装置20は、例えば、加齢臭、カビ臭および汗の匂いが発生しているか否かを判定する。さらに、情報処理装置20は、加齢臭、カビ臭および汗の匂いのそれぞれの匂いの強さも判定する。そして、情報処理装置20は、加齢臭、カビ臭および汗の匂いのそれぞれの匂いの強さを示す情報を表示する。
【0081】
また、情報処理装置20は、加齢臭、カビ臭および汗の匂いの何れかが、所定の強さとなる時期を推定する。情報処理装置20は、推定した時期を、ヘッドレストのクリーニング時期を表す情報として表示する。
【0082】
図10は、情報処理装置20による乗車者の匂いの検出処理の流れを示すフローチャートである。情報処理装置20は、さらに、図10のステップS21からステップS27の処理を実行して、乗車者の匂いを判定してもよい。
【0083】
まず、ステップS21において、情報処理装置20は、車両18に乗車者が乗車したか否かを判断する。例えば、情報処理装置20は、キーを用いてドアが開けられたタイミング、キーを用いて車両18を起動したタイミング、または、ハンドルを握ったタイミングを、乗車者が乗車したタイミングとして判断する。
【0084】
車両18に乗車者が乗車していない場合(S21のNo)、情報処理装置20は、処理をステップS21で待機する。車両18に乗車者が乗車した場合(S21のYes)、情報処理装置20は、処理をステップS22に進める。
【0085】
ステップS22において、情報処理装置20は、乗車者を特定する。例えば、情報処理装置20は、車両18に搭載された車載カメラ等により撮像された画像に基づき顔認証または光彩認証等を行って、乗車者が予め登録されたユーザであるかを認証してもよい。また、例えば、情報処理装置20は、車両18に搭載された指紋画像センサにより撮像された画像に基づき指紋認証を行って、乗車者が予め登録されたユーザであるかを認証してもよい。
【0086】
情報処理装置20は、認証が成功した場合には、ステップS23以降の処理を進める。また、情報処理装置20は、認証が失敗した場合には、ステップS22で処理を終了してもよいし、乗車者を特定せずにステップS23以降の処理を進めてもよい。
【0087】
ステップS23において、情報処理装置20は、センサ装置30から、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第1パターンを取得する。続いて、ステップS24において、情報処理装置20は、センサ装置30から、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を表す第2パターンを取得する。
【0088】
続いて、ステップS25において、情報処理装置20は、第1パターンと第2パターンとの差を表す差分パターンを算出する。なお、情報処理装置20は、車両18に乗車者が乗車したタイミングの差分パターンと、車両18に乗車者が乗車する前(乗車者が不存在の時)の差分パターンとの差を表す2回差分パターンを算出してもよい。これにより、情報処理装置20は、車両18に乗車者が乗車することにより増加した匂いをより精度良く検出することができる。
【0089】
続いて、ステップS26において、情報処理装置20は、差分パターン(または2回差分パターン)を基準パターンとマッチングすることにより匂いを検出する。例えば、情報処理装置20は、匂いの種類および匂いの強さを判定する。
【0090】
続いて、ステップS27において、情報処理装置20は、判定された空気の匂いを示す情報を、例えば、特定した乗車者に関するユーザ情報とともに、健康管理用のアプリケーションプログラムに通知する。そして、体調管理用のアプリケーションプログラムは、取得した匂いを示す情報をユーザ情報に対応付けて記憶する。さらに、健康管理用のアプリケーションプログラムは、取得した匂いを示す情報に基づき乗車者の体調または健康状態を判定し、判定結果を表示してもよい。
【0091】
図11は、変形例に係るセンサ装置30の構成の一部を示す図である。センサユニット40は、図2に示す構成に代えて、図11に示す構成であってもよい。図11に示す変形例に係るセンサユニット40は、第1センサ94と、第2センサ96とを含む。第1センサ94および第2センサ96のそれぞれは、図3で示したセンサユニット40と同一の構成である。
【0092】
変形例において、第1ファン36は、外部から空気を取り込んで、取り込んだ空気をフィルタ34を通過させて第1センサ94に供給する。第2ファン38は、外部から空気を取り込んで、取り込んだ空気をフィルタ34を通過させずに第2センサ96に供給する。すなわち、フィルタ34を通過した空気は、第1センサ94には供給されるが、第2センサ96には供給されない。また、フィルタ34を通過していない空気は、第2センサ96には供給されるが、第1センサ94には供給されない。例えば、変形例に係るセンサ装置30は、第1ファン36および第1センサ94と、第2ファン38および第2センサ96とを区切る壁68を有する。
【0093】
第1センサ94は、内蔵する少なくとも1つの検出素子のそれぞれを用いて、第1ファン36から送風された空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。これにより、第1センサ94は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を出力することができる。
【0094】
第2センサ96は、内蔵する少なくとも1つの検出素子のそれぞれを用いて、第2ファン38から送風された空気に含まれる匂いの原因物質の量を検出する。これにより、第2センサ96は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値を出力することができる。
【0095】
(実施形態の効果)
以上、本実施形態に係るセンシングシステム10について説明した。このような本実施形態に係るセンシングシステム10は、例えば次のような効果を奏する。
【0096】
本実施形態に係るセンシングシステム10は、対象物体であるシート32(例えば、座部、背もたれまたはヘッドレスト)を発生源とする匂い(例えば、匂いの種類および強さ)を判定することができる。特に、センシングシステム10は、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過した空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値と、少なくとも1つの検出素子のそれぞれのフィルタ34を通過していない空気に含まれる匂いの原因物質の量を示す検出値との差に基づき、匂いを判定する。これにより、センシングシステム10は、例えば、原因物質以外の物質が吸着膜に吸着したこと等により生じるノイズおよびセンサ装置30のオフセット等の誤差成分を除くことができる。これにより、センシングシステム10は、精度良く匂いを検出することができる。
【0097】
また、本実施形態に係るセンシングシステム10は、対象物体に近接してセンサ装置30を取り付けることができるので、対象物体の匂いを精度良く判定することができる。また、センシングシステム10は、乗車者が存在しないタイミングにおいて測定をするので、乗車者からの匂いを排除して、対象物体の匂いを判定することができる。
【0098】
また、本実施形態に係るセンシングシステム10は、所定の匂いが発生する時期(例えば、所定の種類の匂いが所定の強さとなる時期)を推定するので、使用者に、適切なタイミングで、対象物体のクリーニングをさせることができる。これにより、本実施形態に係るセンシングシステム10は、使用者のクリーニングの負担を軽減し、また、対象物体に汚れが蓄積して除去が困難となってしまう事態を回避することができる。
【0099】
また、本実施形態に係るセンシングシステム10は、乗車者が車両18の中に入ったタイミングにおいて匂いを測定することにより、乗車者の匂いを判定することができる。また、センシングシステム10は、車両18等の使用者が特定可能な空間にセンサ装置30を備えるので、個人を特定して、乗車者の匂いを判定することができる。これにより、センシングシステム10は、検出した匂いを個人の健康管理情報等に用いることができる。
【0100】
(情報処理装置20のハードウェア構成)
図12は、情報処理装置20のハードウェア構成を示す図である。情報処理装置20は、一例として、一般のコンピュータと同様のハードウェア構成により実現される。情報処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)201と、操作装置202と、表示装置203と、マイクロフォン204と、ROM(Read Only Memory)205と、RAM(Random Access Memory)206と、記憶装置207と、通信装置208と、バス209とを備える。各部は、バス209により接続される。
【0101】
CPU201は、RAM206の所定領域を作業領域としてROM205または記憶装置207に予め記憶された各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、情報処理装置20を構成する各部の動作を統括的に制御する。また、CPU201は、ROM205または記憶装置207に予め記憶されたプログラムとの協働により、操作装置202、表示装置203、マイクロフォン204および通信装置208等を動作させる。
【0102】
操作装置202は、タッチパネル、マウスやキーボード等の入力デバイスであって、ユーザから操作入力された情報を指示信号として受け付け、その指示信号をCPU201に出力する。
【0103】
表示装置203は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部である。表示装置203は、CPU201からの表示信号に基づいて、各種情報を表示する。例えば、表示装置203は、匂いの種類、匂いの強さおよび推定時期等を表示する。
【0104】
マイクロフォン204は、音声信号を入力するデバイスである。予め記録された音声信号または通信装置208から入力される音声信号を認識する場合には、情報処理装置20は、マイクロフォン204を備えなくてもよい。
【0105】
ROM205は、情報処理装置20の制御に用いられるプログラムおよび各種設定情報等を書き換え不可能に記憶する。RAM206は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体である。RAM206は、CPU201の作業領域として機能する。
【0106】
記憶装置207は、フラッシュメモリ等の半導体による記憶媒体、磁気的または光学的に記録可能な記憶媒体等の書き換え可能な記録装置である。記憶装置207は、情報処理装置20の制御に用いられるプログラムを記憶する。また、記憶装置207は、パターン記憶部78およびログ記憶部84として機能する。
【0107】
通信装置208は、センサ装置30とデータの送受信をする。また、通信装置208は、ネットワークを介してサーバ等とデータの送受信をしてもよい。
【0108】
本実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、例えば、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供される。また、本実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、持ち運び可能な記憶媒体等に予め組み込んで提供されてもよい。
【0109】
本実施形態の情報処理装置20で実行されるプログラムは、第1取得モジュールと、第2取得モジュールと、差分算出モジュールと、判定モジュールと、出力モジュールと、推定モジュールとを含むモジュール構成となっている。CPU201(プロセッサ)は、記憶媒体等からこのようなプログラムを読み出して、上記各モジュールをRAM206(主記憶装置)にロードする。そして、CPU201(プロセッサ)は、このようなプログラムを実行することにより、第1取得部72、第2取得部74、差分算出部76、判定部80、出力部82および推定部86として機能する。なお、第1取得部72、第2取得部74、差分算出部76、判定部80、出力部82および推定部86の一部または全部がハードウェアにより構成されていてもよい。
【0110】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0111】
10 センシングシステム
18 車両
20 情報処理装置
30 センサ装置
32 シート
34 フィルタ
36 第1ファン
38 第2ファン
40 センサユニット
48 通信部
50 制御部
52 電池
58 支持部
60 ガス検出素子
62 駆動検出回路
68 壁
72 第1取得部
74 第2取得部
76 差分算出部
78 パターン記憶部
80 判定部
82 出力部
84 ログ記憶部
86 推定部
94 第1センサ
96 第2センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12