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特開2022-109315固体電解質、電極、蓄電素子及び固体電解質の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109315
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】固体電解質、電極、蓄電素子及び固体電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20220720BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220720BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220720BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220720BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220720BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/0562
H01B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081862
(22)【出願日】2022-05-18
(62)【分割の表示】P 2020547157の分割
【原出願日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2019115275
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】シュービン チェン
(72)【発明者】
【氏名】クヌート ビャーネ ガンドラッド
(72)【発明者】
【氏名】マールテン メース
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エム フェレーケン
(72)【発明者】
【氏名】相良 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】矢部 裕城
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 秀和
(57)【要約】
【課題】高いイオン伝導度を示す新規な固体電解質を提供する。
【解決手段】本開示の固体電解質(10)は、相互接続された複数の孔(12)を有する多孔質誘電体(11)と、イオン性化合物及び双極性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つと、金属塩とを含有し、複数の孔(12)の内部を少なくとも部分的に満たしている電解質(13)と、を備えている。多孔質誘電体(11)の複数の孔(12)の内表面は、少なくとも部分的に、ハロゲン原子を含む官能基によって修飾されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互接続された複数の孔を有する多孔質誘電体と、
イオン性化合物及び双極性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つと、金属塩とを含有し、前記複数の孔の内部を少なくとも部分的に満たしている電解質と、
を備え、
前記多孔質誘電体の前記複数の孔の内表面は、少なくとも部分的に、ハロゲン原子を含む官能基によって修飾されている、固体電解質。
【請求項2】
前記ハロゲン原子が前記官能基の末端に存在する、
請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記ハロゲン原子が塩素原子である、
請求項1又は2に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記複数の孔の前記内表面に吸着して分極を誘起する表面吸着層をさらに備えた、
請求項1から3のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項5】
前記電解質は、前記多孔質誘電体の前記孔の前記内表面又は前記表面吸着層の内表面に吸着した分極層を含み、
前記分極層は、第1イオン層、第2イオン層及び第3イオン層を含み、
前記第1イオン層は、前記多孔質誘電体又は前記表面吸着層に結合した複数の第1イオンを含む層であり、
前記複数の第1イオンのそれぞれは、第1の極性を有し、
前記第2イオン層は、前記複数の第1イオンに結合した複数の第2イオンを含む層であり、
前記複数の第2イオンのそれぞれは、前記第1の極性とは反対の極性である第2の極性を有し、
前記第3イオン層は、前記複数の第2イオンに結合した複数の第3イオンを含む層であり、
前記複数の第3イオンのそれぞれは、前記第1の極性を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記複数の第1イオンのそれぞれは、前記イオン性化合物又は前記金属塩に由来するアニオンであり、
前記複数の第2イオンのそれぞれは、前記イオン性化合物に由来するカチオンであり、
前記複数の第3イオンのそれぞれは、前記イオン性化合物又は前記金属塩に由来するアニオンである、
請求項5に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記電解質は、前記分極層が存在する位置よりも前記複数の孔の前記内表面から離れた位置に存在するバルク層をさらに含む、
請求項5又は6に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記表面吸着層が、前記複数の孔の前記内表面に吸着した水を含有する、
請求項4に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記水が、1以上、4以下の単分子層を構成している、
請求項8に記載の固体電解質。
【請求項10】
前記表面吸着層が、前記複数の孔の前記内表面に吸着したポリエーテルを含有する、
請求項4に記載の固体電解質。
【請求項11】
前記ポリエーテルが、ポリエチレングリコールを含む、
請求項10に記載の固体電解質。
【請求項12】
前記金属塩がリチウム塩である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項13】
前記リチウム塩が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む、
請求項12に記載の固体電解質。
【請求項14】
前記イオン性化合物がイオン液体である、
請求項1から13のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項15】
前記イオン液体が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを含む、
請求項14に記載の固体電解質。
【請求項16】
前記イオン液体が、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む、
請求項15に記載の固体電解質。
【請求項17】
前記多孔質誘電体が多孔質シリカである、
請求項1から16のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項18】
前記多孔質誘電体は、単一の層をなし、
前記固体電解質の外形が前記多孔質誘電体によって画定されている、
請求項1から17のいずれか1項に記載の固体電解質。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の固体電解質と、
電極活物質と、
を備えた、電極。
【請求項20】
導電助剤及びバインダーから選ばれる少なくとも1つをさらに備えた、
請求項19に記載の電極。
【請求項21】
正極と、
負極と、
請求項1から18のいずれか1項に記載の固体電解質と、
を備えた、蓄電素子。
【請求項22】
正極と、
負極と、
を備え、
前記正極及び前記負極から選ばれる少なくとも1つは、請求項19又は20に記載の電極である、蓄電素子。
【請求項23】
多孔質誘電体の前駆体と、イオン性化合物及び双極性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つと、金属塩と、水と、有機溶媒とを混合して、混合液を調製することと、
前記混合液をゲル化させることによって混合ゲルを形成することと、
前記混合ゲルを乾燥させることによって固体電解質を形成することと、
を含み、
前記前駆体がハロゲン原子を含む官能基を有する、固体電解質の製造方法。
【請求項24】
前記前駆体は、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドを含む、
請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記金属アルコキシドがシリコンアルコキシドである、
請求項24に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質、電極、蓄電素子及び固体電解質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代電池として全固体リチウム二次電池の開発が進められている。全固体リチウム二次電池などの蓄電素子に用いられる固体電解質のイオン伝導度を向上させることが望まれている。
【0003】
特許文献1は、イオン液体、リチウム塩及びシリカ前駆体を含む混合液を用い、ゾルゲル法によって固体電解質を製造する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-518248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、高いイオン伝導度を示す新規な固体電解質を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
相互接続された複数の孔を有する多孔質誘電体と、
イオン性化合物及び双極性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つと、金属塩とを含有し、前記複数の孔の内部を少なくとも部分的に満たしている電解質と、
を備え、
前記多孔質誘電体の前記複数の孔の内表面は、少なくとも部分的に、ハロゲン原子を含む官能基によって修飾されている、固体電解質を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、高いイオン伝導度を示す新規な固体電解質を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、第1実施形態に係る固体電解質の断面構造の一例を模式的に示す図である。
図1B図1Bは、多孔質誘電体の孔の断面を模式的に示す図である。
図1C図1Cは、多孔質誘電体の複数の孔の内表面の状態を模式的に示す図である。
図1D図1Dは、多孔質誘電体の複数の孔の内表面の他の状態を模式的に示す図である。
図2図2は、分極層の構造の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、分極層の構造の他の例を模式的に示す図である。
図4図4は、分極層の構造のさらに他の例を模式的に示す図である。
図5図5は、分極層の構造のさらに他の例を模式的に示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る固体電解質の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る電極の断面構造の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、第2実施形態に係る電極の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る電極の製造方法の他の例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2実施形態に係る電極の製造方法のさらに他の例を示すフローチャートである。
図11図11は、第3実施形態に係る蓄電素子の断面構造の一例を模式的に示す図である。
図12図12は、第4実施形態に係る蓄電素子の断面構造の一例を模式的に示す図である。
図13図13は、第5実施形態に係る蓄電素子の断面構造の一例を模式的に示す図である。
図14図14は、サンプル1aからサンプル1eの固体電解質のイオン伝導度とCl-TMOSの添加量との関係を示すグラフである。
図15図15は、サンプル2aからサンプル2fの固体電解質のイオン伝導度とCl-TMOSに対するイオン液体のモル比との関係を示すグラフである。
図16図16は、サンプル1eの固体電解質と参照サンプル2の電解質とを低湿度環境に保管した後のイオン伝導度の経時変化を示すグラフである。
図17図17は、サンプル1eの固体電解質及び参照サンプル1の電解質のイオン伝導度の温度依存性を示すグラフである。
図18図18は、1000cm-1から1400cm-1の波数範囲でのサンプル1eの固体電解質及び参照サンプル1の電解質のFT-IR測定の結果を示すグラフである。
図19A図19Aは、-80ppmから-140ppmの化学シフト範囲での参照サンプル2の固体電解質の固体NMR測定の結果を示すグラフである。
図19B図19Bは、-60ppmから-100ppmの化学シフト範囲でのサンプル1eの固体電解質の固体NMR測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
特許文献1に記載された固体電解質は、メソポーラス構造を持つSiO2の支持骨格を有する。ポア孔の内表面にイオン液体の分子が配向することによってリチウムイオン伝導度が向上する。
【0010】
上記の構成では、SiO2の表面のOH基の存在によってイオン液体の分子がSiO2の表面に吸着及び配向し、イオンの分極が誘起される。その結果、Li+のイオン伝導が促進される。しかし、OH基の密度が低いため、イオン液体の分子のSiO2の表面への吸着及び配向は弱い。そのため、イオン伝導の促進効果も低い。
【0011】
上記の知見に基づき、本発明者らは、本開示の固体電解質を想到するに至った。
【0012】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様に係る固体電解質は、
相互接続された複数の孔を有する多孔質誘電体と、
イオン性化合物及び双極性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つと、金属塩とを含有し、前記複数の孔の内部を少なくとも部分的に満たしている電解質と、
を備え、
前記多孔質誘電体の前記複数の孔の内表面は、少なくとも部分的に、ハロゲン原子を含む官能基によって修飾されている。
【0013】
第1態様によれば、ハロゲン原子の電気陰性度は高いため、電解質を構成するイオンの多孔質誘電体への吸着及び配向が強化される。その結果、固体電解質が高いイオン伝導度を示す。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る固体電解質では、前記ハロゲン原子が前記官能基の末端に存在していてもよい。ハロゲン原子が官能基の末端に存在するとき、ハロゲン原子が多孔質誘電体の複数の孔の内表面に露出しやすいので、上記した効果が得られやすい。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様に係る固体電解質では、前記ハロゲン原子が塩素原子であってもよい。第3態様によれば、固体電解質は、より高いイオン伝導度を示す。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つに係る固体電解質は、前記複数の孔の前記内表面に吸着して分極を誘起する表面吸着層をさらに備えていてもよい。表面吸着層は、イオン伝導性を向上させる。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つに係る固体電解質では、前記電解質は、前記多孔質誘電体の前記孔の前記内表面又は前記表面吸着層の内表面に吸着した分極層を含んでいてもよく、前記分極層は、第1イオン層、第2イオン層及び第3イオン層を含んでいてもよく、前記第1イオン層は、前記多孔質誘電体又は前記表面吸着層に結合した複数の第1イオンを含む層であってもよく、前記複数の第1イオンのそれぞれは、第1の極性を有していてもよく、前記第2イオン層は、前記複数の第1イオンに結合した複数の第2イオンを含む層であってもよく、前記複数の第2イオンのそれぞれは、前記第1の極性とは反対の極性である第2の極性を有していてもよく、前記第3イオン層は、前記複数の第2イオンに結合した複数の第3イオンを含む層であってもよく、前記複数の第3イオンのそれぞれは、前記第1の極性を有していてもよい。分極層は、イオン伝導性を向上させる。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第5態様に係る固体電解質では、前記複数の第1イオンのそれぞれは、前記イオン性化合物又は前記金属塩に由来するアニオンであってもよく、前記複数の第2イオンのそれぞれは、前記イオン性化合物に由来するカチオンであってもよく、前記複数の第3イオンのそれぞれは、前記イオン性化合物又は前記金属塩に由来するアニオンであってもよい。イオン性化合物又は金属塩に由来するカチオン及びアニオンによって分極層が構成されうる。
【0019】
本開示の第7態様において、例えば、第5又は第6態様に係る固体電解質では、前記電解質は、前記分極層が存在する位置よりも前記複数の孔の前記内表面から離れた位置に存在するバルク層をさらに含んでいてもよい。バルク層もイオンの伝導に寄与する。
【0020】
本開示の第8態様において、例えば、第4態様に係る固体電解質では、前記表面吸着層が、前記複数の孔の前記内表面に吸着した水を含有していてもよい。水は、分極層の分極を誘起する能力を表面吸着層に効果的に付与しうる。
【0021】
本開示の第9態様において、例えば、第8態様に係る固体電解質では、前記水が、1以上、4以下の単分子層を構成していてもよい。これにより、多孔質誘電体の孔の内表面に水が安定して存在できる。
【0022】
本開示の第10態様において、例えば、第4態様に係る固体電解質では、前記表面吸着層が、前記複数の孔の前記内表面に吸着したポリエーテルを含有していてもよい。ポリエーテルは、分極層の分極を誘起する能力を表面吸着層に効果的に付与しうる。
【0023】
本開示の第11態様において、例えば、第10態様に係る固体電解質では、前記ポリエーテルが、ポリエチレングリコールを含んでいてもよい。ポリエチレングリコールは、表面吸着層を効果的に形成しうる。
【0024】
本開示の第12態様において、例えば、第1から第11態様のいずれか1つに係る固体電解質では、前記金属塩がリチウム塩であってもよい。電解質がリチウム塩を含む場合、本開示の固体電解質をリチウムイオン二次電池に適用できる。
【0025】
本開示の第13態様において、例えば、第12態様に係る固体電解質では、前記リチウム塩が、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含んでいてもよい。Li-TFSIを用いると、高いイオン伝導度を有する固体電解質が得られる。
【0026】
本開示の第14態様において、例えば、第1から第13態様のいずれか1つに係る固体電解質では、前記イオン性化合物がイオン液体であってもよい。イオン液体は、難燃性、難揮発性、高いイオン伝導性などの特性を有するので、固体電解質の材料として適している。
【0027】
本開示の第15態様において、例えば、第14態様に係る固体電解質では、前記イオン液体が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを含んでいてもよい。イオン液体を構成するアニオンの中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンは、本開示の固体電解質に適している。
【0028】
本開示の第16態様において、例えば、第15態様に係る固体電解質では、前記イオン液体が、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含んでいてもよい。このイオン液体は、本開示の固体電解質に適している。
【0029】
本開示の第17態様において、例えば、第1から第16態様のいずれか1つに係る固体電解質では、前記多孔質誘電体が多孔質シリカであってもよい。多孔質シリカは、化学的に安定であるため、固体電解質の母材として適している。
【0030】
本開示の第18態様において、例えば、第1から第17態様のいずれか1つに係る固体電解質では、前記多孔質誘電体は、単一の層をなしていてもよく、前記固体電解質の外形が前記多孔質誘電体によって画定されていてもよい。このような構成によれば、固体電解質のハンドリングが容易であるとともに、固体電解質を蓄電素子などに応用しやすい。
【0031】
本開示の第19態様に係る電極は、
第1から第18態様のいずれか1つに係る固体電解質と、
電極活物質と、
を備えている。
【0032】
第19態様によれば、優れた電気特性を有する電極が得られる。
【0033】
本開示の第20態様において、例えば、第19態様に係る電極は、導電助剤及びバインダーから選ばれる少なくとも1つをさらに備えていてもよい。導電助剤は、電極の内部抵抗を十分に低減することに寄与する。バインダーは、電極活物質の粒子を互いに固定する役割を担う。電極活物質の粒子が互いに固定されていると、電極活物質の粒子の膨張及び収縮に起因する隙間の発生が抑制される。これにより、電池の放電容量の減少が抑制される。
【0034】
本開示の第21態様に係る蓄電素子は、
正極と、
負極と、
第1から第18態様のいずれか1つに係る固体電解質と、
を備えている。
【0035】
第21態様によれば、優れた電気特性を有する蓄電素子が得られる。
【0036】
本開示の第22態様に係る蓄電素子は、
正極と、
負極と、
を備え、
前記正極及び前記負極から選ばれる少なくとも1つは、第19又は第20態様に係る電極である。
【0037】
第22態様によれば、優れた電気特性を有する蓄電素子が得られる。
【0038】
本開示の第23態様に係る固体電解質の製造方法は、
多孔質誘電体の前駆体と、イオン性化合物及び双極性化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つと、金属塩と、水と、有機溶媒とを混合して、混合液を調製することと、
前記混合液をゲル化させることによって混合ゲルを形成することと、
前記混合ゲルを乾燥させることによって固体電解質を形成することと、
を含み、
前記前駆体がハロゲン原子を含む官能基を有する。
【0039】
第23態様によれば、本開示の固体電解質を効率的に製造できる。
【0040】
本開示の第24態様において、例えば、第23態様に係る製造方法では、前記前駆体は、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドを含んでいてもよい。第24態様によれば、本開示の固体電解質を効率的に製造できる。
【0041】
本開示の第25態様において、例えば、第24態様に係る製造方法では、前記金属アルコキシドがシリコンアルコキシドであってもよい。シリコンアルコキシドを使用すれば、多孔質誘電体が効率的に形成されうる。
【0042】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0043】
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る固体電解質10の断面構造の一例を模式的に示している。固体電解質10は、多孔質誘電体11及び電解質13を備えている。多孔質誘電体11は、相互接続された複数の孔12を有する。複数の孔12は、いわゆる連続孔である。ただし、複数の孔12は、独立孔を含んでいてもよい。電解質13は、それらの孔12の内表面を覆っている。電解質13は、複数の孔12の内部を少なくとも部分的に満たしていてもよいし、複数の孔12の内部の全体を満たしていてもよい。
【0044】
図1Bは、多孔質誘電体11の孔12の断面を模式的に示している。電解質13は、分極層130を有する。分極層130は、表面吸着層15の内表面に吸着した層である。分極層130は、孔12が延びる方向に沿って連続的に形成された連続膜であってもよい。分極層130では、電解質13を構成するイオンが秩序的に配向している。複数の孔12の内部のそれぞれに設けられた分極層130が相互に接続されて三次元的なネットワークが形成されていてもよい。図1Aの破線Lに示すように、多孔質誘電体11の内表面付近に金属イオンが移動するための伝導パスが形成されている。より具体的には、分極層130の内表面上に金属イオンが移動するための伝導パスが形成されている。
【0045】
図1Bに示すように、電解質13は、バルク層140を含んでいてもよい。バルク層140は、分極層130の内表面に接している。バルク層140は、分極層130が存在する位置よりも孔12の内表面から離れた位置に存在している。言い換えれば、バルク層140は、孔12の中心部分に位置している。分極層130によってバルク層140が囲まれている。バルク層140は、イオン性化合物及び金属塩に由来するイオンが無秩序に配向している層である。バルク層140においてイオンが流動性を有していてもよい。バルク層140も金属イオンの伝導に寄与する。
【0046】
図1Bに示すように、固体電解質10は、表面吸着層15をさらに備えていてもよい。表面吸着層15は、孔12の内表面と電解質13との間に位置している。表面吸着層15は、複数の孔12の内表面に吸着して分極を誘起する層である。表面吸着層15の存在により、電解質13におけるイオン伝導性が向上し、固体電解質10のイオン伝導度が高まる。ただし、表面吸着層15は必須ではない。
【0047】
図1Cは、多孔質誘電体11の複数の孔12の内表面の状態を模式的に示している。本実施形態において、多孔質誘電体11の複数の孔12の内表面は、少なくとも部分的に、ハロゲン原子を含む官能基によって修飾されている。言い換えれば、複数の孔12の内表面にハロゲン原子を含む官能基が存在している。多孔質誘電体11の骨格は、少なくとも部分的に、ハロゲン原子で終端されている。ハロゲン原子の電気陰性度は高いため、電解質13を構成するイオンの多孔質誘電体11への吸着及び配向が強化される。その結果、固体電解質10が高いイオン伝導度を示す。
【0048】
本実施形態では、ハロゲン原子を含む官能基の群に表面吸着層15が吸着している。
【0049】
図1Dは、多孔質誘電体11の複数の孔12の内表面の他の状態を模式的に示している。表面吸着層15が存在しないとき、ハロゲン原子を含む官能基の群に電解質13が吸着している。
【0050】
ハロゲン原子が官能基の末端に存在するとき、ハロゲン原子が多孔質誘電体11の複数の孔12の内表面に露出しやすいので、上記した効果が得られやすい。ハロゲン原子を含む官能基は、ハロゲン原子そのものであってもよく、水素原子の一部がハロゲン原子に置換されたアルキル基であってもよい。
【0051】
ハロゲン原子は、例えば、塩素原子である。電気陰性度の高い塩素原子の存在によって、電解質13を構成するイオンの多孔質誘電体11への吸着及び配向が一層強化される。その結果、固体電解質10は、より高いイオン伝導度を示す。ハロゲン原子は、フッ素原子、臭素原子又はヨウ素原子であってもよい。
【0052】
ハロゲン原子を含む官能基が複数の孔12の内表面の全体に存在することは必須ではない。複数の孔12の内表面は、ハロゲン原子を含む官能基が存在しない領域を含んでいてもよい。
【0053】
本明細書において、「固体」とは、室温において系全体として固形状であることを意味し、部分的に液体を含有するものを排除するものではない。「固体」の例としては、ゲルが挙げられる。
【0054】
多孔質誘電体11は、例えば、多孔質シリカである。多孔質シリカは、例えば、メソポーラスシリカである。多孔質シリカは、化学的に安定であるため、固体電解質10の母材として適している。多孔質シリカの表面は親水性であるため、例えば、表面吸着層15が水を含有する場合には、多孔質シリカの上に水分子が安定して吸着されうる。多孔質誘電体11の他の例としては、ポーラスアルミナ(Al23)、ポーラスチタニア(TiO2)、ポーラスジルコニア(ZrO2)、及び、これらの混合物が挙げられる。
【0055】
多孔質誘電体11は、25%以上95%以下の範囲の空隙率を有していてもよい。多孔質誘電体11の孔12のそれぞれの直径は、例えば、2nm以上300nm以下の範囲にある。孔12の直径は、例えば、次の方法で測定されうる。固体電解質10を有機溶媒に浸して電解質13を有機溶媒に溶解させた後、超臨界乾燥により電解質13を取り除き、BET法によって多孔質誘電体11の比表面積を測定する。測定結果から空隙率及び孔12のそれぞれの直径(細孔分布)を算出することができる。あるいは、集束イオンビーム法(FIB)で固体電解質10の薄片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)で固体電解質10の薄片を観察し、空隙率及び孔12の直径を求めることもできる。
【0056】
本実施形態において、多孔質誘電体11は、単一の層をなしている。多孔質誘電体11の層は、自立性を有していてもよい。固体電解質10の外形は、多孔質誘電体11によって画定されている。このような構成によれば、固体電解質10のハンドリングが容易であるとともに、固体電解質10を蓄電素子などに応用しやすい。
【0057】
電解質13は、例えば、イオン性化合物を含有している。イオン性化合物は、イオン液体でありうる。イオン液体は、難燃性、難揮発性、高いイオン伝導性などの特性を有するので、固体電解質10の材料として適している。イオン液体中のイオンは比較的自由に動くことができるため、例えば、電解質13が分極層130を含む場合には、分極層130内のイオンが効率的に配向しうる。
【0058】
イオン液体を構成するカチオンの例としては、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオン(BMP+)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン(BMI+)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+)、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン(DMPI+)、1,2-ジエチル-3,5-ジメチルイミダゾリウムカチオン(DEDMI+)、トリメチル-n-ヘキサルアンモニウムカチオン(TMHA+)、n-ブチル-n-メチルピロリジニウムカチオン(PYR14+)、n-メチル-n-ペンチルピロリジニウムカチオン(PYR15+)、n-メチル-n-プロピルピペリジニウムカチオン(PIP+)、及びトリエチルスルフォニウムカチオン(TES+)が挙げられる。
【0059】
イオン液体を構成するカチオンの中でも、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオン(BMP+)、及びトリエチルスルフォニウムカチオン(TES+)は、本開示の固体電解質10に適している。例えば、BMP+が後述のカチオン層を構成する場合には、BMP+は、BMP+の長手方向(すなわち、BMP+を構成するn-ブチル基が延びる方向)が孔12の内表面に沿うように配向しうる。そのため、分極層130を構成するイオン層の数に対する分極層130の厚さを低減することができ、分極層130の分極を効率的に誘起することができる。
【0060】
イオン液体を構成するアニオンの例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(TFSI-)、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(FSI-)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン(BETI-),トリフラートアニオン(OTf-)、ジシアナミドアニオン(DCA-)、ジメチルフォスフェートアニオン(DMP-)、ジエチルフォスフェートアニオン(DEP-)、ジブチルフォスフェートアニオン(DBP-)、2,2,2-トリフルオロ-n-(トリフルオロメタンスルホニル)アセトイミドアニオン(TSAC-)、パーコレートアニオン(ClO4 -)、パーフルオロアルキルフルオロリン酸アニオン(FAP-)、テトラフルオロホウ酸アニオンアニオン(BF4 -)、及びヘキサフルオロリン酸アニオン(PF6 -)が挙げられる。
【0061】
イオン液体を構成するアニオンの中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(TFSI-)は、本開示の固体電解質10に適している。例えば、TFSI-が後述のアニオン層を構成する場合には、TFSI-は、回転対称性を有しているため、秩序的に配向しやすい。
【0062】
イオン液体は、上記のカチオンとアニオンとの任意の組み合わせで構成されうる。イオン液体として、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及び、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群より選ばれる少なくとも1つを使用することができる。これらのイオン液体は、本開示の固体電解質10に適している。
【0063】
電解質13は、金属塩をさらに含有している。金属塩は、イオン性化合物に溶解し、イオン性化合物とともに電解質13を構成する。例えば、金属塩を構成するイオンがキャリアとして機能しうる。金属塩のカチオンの例としては、Li+、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Al3+、Co2+、及びNi2+が挙げられる。
【0064】
金属塩は、リチウム塩であってもよい。電解質13がリチウム塩を含む場合、リチウムイオンがキャリアとして機能しうるため、本開示の固体電解質10をリチウムイオン二次電池に適用できる。
【0065】
リチウム塩の例としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li-FSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-BETI)、及びトリフルオロメタンスルホナート(Li-OTf)が挙げられる。これらのリチウム塩から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。リチウム塩として、Li-TFSIを用いると、高いイオン伝導度を有する固体電解質10が得られる。例えば、TFSI-が後述のアニオン層を構成する場合には、TFSI-は、回転対称性を有しているため、秩序的に配向しやすい。
【0066】
多孔質誘電体11に対するイオン性化合物のモル比は、例えば、0.25より大きく、かつ、3.5未満である。これにより、固体電解質10を固形状に維持しながら、イオン伝導度を向上させることができる。イオン伝導度が最大に達するモル比は、多孔質誘電体11及びイオン性化合物のそれぞれの組成に依存する。多孔質誘電体11及びイオン性化合物のそれぞれの組成に応じて最適なモル比は異なる。最適なモル比は、互いに異なるモル比を有する複数の固体電解質を作製し、それらのイオン伝導度を評価することで確かめられる。
【0067】
固体電解質10は、低湿度環境下においても高いイオン伝導度を示す。例えば、室温かつ0.0005%RHの低湿度環境に十分な期間かけて保管した後において、固体電解質10は、1.0mS/cm以上のイオン伝導度を示す。十分な期間は、例えば、8日間である。
【0068】
表面吸着層15は、例えば、複数の孔12の内表面に吸着した水、及び、複数の孔12の内表面に吸着したポリエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。水は、分極層130の分極を誘起する能力を表面吸着層15に効果的に付与しうる。ポリエーテルも、分極層130の分極を誘起する能力を表面吸着層15に効果的に付与しうる。
【0069】
水は、1以上、4以下の単分子層を構成していてもよい。この単分子層は、固体状(Ice-like)の構造を有し、不動性(immobility)を有する。そのため、表面吸着層15は、例えば固体電解質に高電圧が印加された場合であっても、安定してその構造を維持しうる。
【0070】
表面吸着層15に水及びポリエーテルの両方が含まれている場合、表面吸着層15は、水の層とポリエーテルの層との積層構造を有していてもよく、水とポリエーテルとが混在した構造を有していてもよい。
【0071】
ポリエーテルの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールが挙げられる。ポリエーテルの中でも、ポリエチレングリコールは、本開示の固体電解質10に適している。ポリエチレングリコールは、表面吸着層15を効果的に形成しうる。本明細書では、エチレングリコールが重合した構造を有するポリエーテルを、その分子量に依らず、「ポリエチレングリコール」と称する。本明細書における「ポリエチレングリコール」は、ポリエチレンオキシドと称される高分子量のポリエチレングリコールをも包含する。
【0072】
表面吸着層15が孔12の内表面の全部を覆っていることは必須ではない。孔12の内表面は、表面吸着層15に被覆されていない領域を含んでいてもよい。分極層130が表面吸着層15の内表面の全部を覆っていることは必須ではない。表面吸着層15の内表面は、分極層130に被覆されていない領域を含んでいてもよい。
【0073】
図2は、多孔質誘電体11の孔12の内表面付近における分極層130の構造の一例を模式的に示している。本明細書では、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンを「TFSI-イオン」と表記することがある。1-ブチル-1-メチルピロリジニウムカチオンを「BMP+イオン」と表記することがある。
【0074】
図2に示す例では、表面吸着層15が孔12の内表面上に形成されている。表面吸着層15は、多孔質誘電体11に結合している。表面吸着層15の内表面上に分極層130が形成されている。分極層130は、第1イオン層131a、第2イオン層131b及び第3イオン層132aを含む。第1イオン層131a、第2イオン層131b及び第3イオン層132aは、表面吸着層15の上にこの順で形成されている。分極層130の上に金属イオン132Lが存在している。分極層130は、金属イオン132Lの伝導性を向上させる。
【0075】
第1イオン層131aは、表面吸着層15に結合した複数の第1イオンを含む層である。複数の第1イオンのそれぞれは、第1の極性を有する。図2に示す例では、第1イオン層131aは、複数のTFSI-イオンで構成されている。それらのTFSI-イオンは、表面吸着層15に結合している。TFSI-イオンが第1イオンであり、負の極性が第1の極性である。
【0076】
第2イオン層131bは、複数の第1イオンに結合した複数の第2イオンを含む層である。複数の第2イオンのそれぞれは、第1の極性とは反対の極性である第2の極性を有する。図2に示す例では、第2イオン層131bは、複数のBMP+イオンで構成されている。それらのBMP+イオンは、第1イオン層131aを構成する複数のTFSI-イオンとそれぞれ結合している。BMP+イオンが第2イオンであり、正の極性が第2の極性である。
【0077】
第3イオン層132aは、複数の第2イオンに結合した複数の第3イオンを含む層である。複数の第3イオンのそれぞれは、第1の極性を有する。図2に示す例では、第3イオン層132aは、金属塩に由来するアニオン(例えば、TFSI-イオン)で構成されている。それらのアニオンは、第2イオン層131bを構成する複数のBMP+イオンとそれぞれ結合している。TFSI-イオンが第3イオンであり、負の極性が第1の極性である。
【0078】
第1イオン層131aを構成する複数の第1イオンのそれぞれは、イオン性化合物又は金属塩に由来するアニオンでありうる。第2イオン層131bを構成する複数の第2イオンのそれぞれは、イオン性化合物に由来するカチオンでありうる。第3イオン層132aを構成する複数の第3イオンのそれぞれは、イオン性化合物又は金属塩に由来するアニオンでありうる。アニオンとカチオンとの結合の形式は、詳細には、イオン結合である。イオン性化合物に由来するカチオンと、イオン性化合物又は金属塩に由来するアニオンとによって分極層130が構成されうる。
【0079】
固体電解質10において、リチウムイオンなどの金属イオン132Lは、以下のメカニズムによって、分極層130の上(詳細には、第3イオン層132aの上)を容易に移動することができると推察される。
【0080】
表面吸着層15が吸着水層である場合、第1イオン層131aに含まれた第1イオンの原子(例えば、酸素原子)が、吸着水層に含まれた水分子の水素原子と結合する。
【0081】
ここで、表面吸着層15に含まれたOH基の水素原子が、電気的に弱い正の電荷によって、第1イオン層131aに含まれたイオンの電荷を引き付ける。例えば、第1イオン層131aに含まれたイオンがTFSI-イオンである場合、TFSI-イオンのS=O結合のπ電子は、大きな非局在性を有するため、誘起電場によって表面吸着層15に引き付けられる。その結果、TFSI-イオンにおいて、表面吸着層15に近い側に負の分極電荷が生じ、表面吸着層15から遠い側に正の分極電荷が生じる。
【0082】
次に、第2イオン層131bに含まれたイオンがBMP+イオンである場合、BMP+イオンは五員環を有する。五員環のσ電子が大きな局在性を有する。BMP+イオンが第1イオン層131aに含まれたTFSI-イオンに結合すると、TFSI-イオンの電荷の偏りに誘起されて、BMP+イオンのσ電子が第1イオン層131a側に引き付けられる。その結果、BMP+イオンにも電荷の偏りが生じる。具体的には、BMP+イオンにおいて、表面吸着層15に近い側に負の分極電荷が生じ、表面吸着層15から遠い側に正の分極電荷が生じる。
【0083】
第2イオン層131bに含まれたBMP+イオンの電荷の偏りは、第3イオン層132aにおける電荷の偏りも誘起する。第3イオン層132aに含まれたイオンがTFSI-イオンである場合、TFSI-イオンにおいて、表面吸着層15に近い側に負の分極電荷が生じ、表面吸着層15から遠い側に正の分極電荷が生じる。
【0084】
第3イオン層132aの表面の正の分極電荷は、第3イオン層132aが金属イオン132Lを引き付ける力を弱めることができる。言い換えれば、第3イオン層132aのTFSI-イオンと金属イオン132Lとのクーロン相互作用が弱まる。これにより、金属イオン132Lは、第3イオン層132aの上を動きやすくなると推察される。
【0085】
第3イオン層132aが第1イオン層131aと同じイオンを含有している場合、第3イオン層132aにおける電荷の偏りが強まり、第3イオン層132aが金属イオン132Lを引き付ける力が効果的に低減されうる。
【0086】
図3は、分極層の構造の他の例を模式的に示している。図3に示すように、分極層130aの各層を構成するイオンは、1対1対応で結合していない。分極層130aの各層を構成するイオンは、イオン性化合物と金属塩とのモル比に応じて互いに結合していてもよい。
【0087】
図4は、分極層の構造のさらに他の例を模式的に示している。図4に示すように、分極層130bは、図2を参照して説明した構造に加え、第4イオン層132b及び第5イオン層133aをさらに含む。第4イオン層132b及び第5イオン層133aは、第3イオン層132aの上にこの順で形成されている。第5イオン層133aの上に金属イオン132Lが存在している。
【0088】
図2及び図4から理解できるように、分極層を構成する層の数は特に限定されない。分極層が複数のアニオン層を含んでいてもよい。各アニオン層におけるアニオンの種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。分極層が複数のカチオン層を含んでいてもよい。各カチオン層におけるカチオンの種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0089】
図2図3及び図4に示す例では、第1イオン層131aがアニオン層であり、第2イオン層131bがカチオン層であり、第3イオン層132aがアニオン層である。しかし、アニオン層とカチオン層とが相互に入れ替わってもよい。
【0090】
図5に示す例では、第1イオン層131aがカチオン層であり、第2イオン層131bがアニオン層であり、第3イオン層132aがカチオン層である。分極層130の表面上を移動するイオンは、アニオン132Fである。アニオン132Fの例としては、フッ化物イオン(F-イオン)及び水素化物イオン(H-イオン)が挙げられる。図5に示す例では、金属塩として、金属フッ化物又は金属水素化物が用いられる。金属フッ化物の例としては、NaF、及びKFが挙げられる。金属水素化物の例としては、NaH、KH、及びCaH2が挙げられる。
【0091】
次に、図6を参照しつつ、固体電解質10の製造方法の一例を説明する。
【0092】
図6に示す製造方法は、混合液を調製する工程S1、混合液から混合ゲルを形成する工程S2、及び、混合ゲルを乾燥させる工程S3を含む。ゾルゲル法によれば、図1Aを参照して説明した固体電解質10を効率的に製造できる。
【0093】
工程S1では、金属アルコキシド、イオン性化合物、金属塩、水、及び、有機溶媒を混合する。例えば、金属アルコキシド、イオン性化合物、金属塩、リチウム塩、水、及び、有機溶媒のそれぞれを容器に入れ、これらを混合する。これにより、混合液が得られる。金属アルコキシドは、多孔質誘電体11の前駆体である。イオン性化合物に代えて、あるいは、イオン性化合物に加えて、双極性化合物を用いてもよい。
【0094】
ハロゲン原子を含む官能基を有する前駆体を原料として使用することによって、図1C及び図1Dを参照して説明した構造を効率的に製造することができる。ハロゲン原子を含む官能基を有する前駆体は、典型的には、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドである。例えば、金属アルコキシドを構成する金属原子にハロゲン原子を含む官能基が結合している場合、金属アルコキシドの加水分解反応及び縮合反応によって得られる多孔質誘電体11にハロゲン原子を含む官能基が残存しうる。
【0095】
本実施形態では、金属アルコキシドとして、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドのみを用いてもよく、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドとハロゲン原子を含む官能基を有さない金属アルコキシドとを組み合わせて用いてもよい。
【0096】
ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドとしては、典型的には、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシランなどのシリコンアルコキシドが挙げられる。シリコンアルコキシドを使用すれば、多孔質誘電体11が効率的に形成されうる。なお、本明細書では、シリコンも金属として取り扱う。
【0097】
ハロゲン原子を含む官能基を有さないシリコンアルコキシドの例としては、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、フェニルトリメトキシシラン(PTMOS)、フェニルトリエトキシシラン(PTEOS)、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GOTMS)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、及び、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMOS)が挙げられる。これらのシリコンアルコキシドから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。TEOSの沸点は、TMOSの沸点よりも高い。TEOSは混合液を調製する際に揮発しにくいので、TEOSを原料として使用すると、最終的に得られるシリカの量を正確に制御しやすい。
【0098】
ハロゲン原子を含む官能基を有するシリコンアルコキシドとしては、上記したシリコンアルコキシドの置換体が挙げられる。
【0099】
「置換体」とは、上記したシリコンアルコキシドのシリコン原子に結合した官能基をハロゲン原子を含む官能基に置き換えることによって表されるシリコンアルコキシド、又は、上記したシリコンアルコキシドのシリコン原子に結合した官能基における水素原子をハロゲン原子に置き換えることによって表されるシリコンアルコキシドを意味する。シリコン原子に結合した官能基としては、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェニル基、3-グリシジルオキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基、3-アミノプロピルなどが挙げられる。例えば、メチルトリメトキシシランのシリコン原子に結合したメチル基がクロロメチル基に置き換わったとき、相当するシリコンアルコキシドは、クロロメチルトリメトキシシランである。あるいは、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)の1つのメトキシ基がクロロメチル基に置き換わったとき、相当するシリコンアルコキシドは、クロロメチルトリメトキシシランである。この考え方は、シリコンアルコキシド以外の金属アルコキシドにも当てはまる。
【0100】
多孔質誘電体11の前駆体は、シリコンアルコキシドに限定されない。アルミニウムトリセクブトキシド(ATB)、オルトチタン酸テトラブチル(TBOT)、ジルコニウム(IV)テトラブトキシド(ZTB)などの他の金属アルコキシドも使用可能である。金属アルコキシドとして、互いに異なる金属種を有する複数の金属アルコキシドの混合物を用いてもよい。
【0101】
金属塩の例としては、上述の種々の材料が挙げられる。
【0102】
イオン性化合物の例としては、上述の種々の材料が挙げられる。
【0103】
水は、金属アルコキシドを加水分解させるものであればよく、例えば、脱イオン水である。
【0104】
有機溶媒は、金属アルコキシド、イオン性化合物、金属塩、及び、水を均一に混合できるものであればよく、例えば、アルコールである。アルコールの例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)が挙げられる。これらのアルコールから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0105】
混合液は、必要に応じて、ポリエーテルを含んでいてもよい。混合液は、他の材料を含んでいてもよい。
【0106】
工程S2では、混合液をゲル化させることによって混合ゲルを形成する。例えば、容器を密閉して混合液を室温(例えば25℃)で保管すると、3日から23日程度で混合液が湿潤状態の混合ゲルに変化する。ゲル化に要する時間は、水の量、有機溶媒の量、及び、保管温度によって制御可能である。
【0107】
金属アルコキシドとしてシリコンアルコキシドを使用した場合、具体的には、以下の反応が進む。まず、シリコンアルコキシドが加水分解してシラノールが形成される。次に、2つのシラノールが脱水縮重合することによってシロキサンモノマーが形成される。そして、複数のシロキサンが脱水縮重合することによってシロキサンポリマーが形成される。このようにして、シロキサンポリマーが3次元の網目状にネットワークを形成することにより、混合液がゲル化する。
【0108】
工程S3では、混合ゲルを乾燥させる。これにより、固体電解質10が得られる。例えば、真空乾燥機を用いて、圧力0.1Pa以上200Pa以下、温度15℃以上150℃以下(周囲温度)の条件のもとで、48時間から96時間かけて混合ゲルを乾燥させる。真空乾燥時の突沸及び気泡の発生を抑えるために、真空乾燥工程の前に予備乾燥処理を行ってもよい。予備乾燥処理では、例えば、局所排気装置に設置したホットプレートを用いて、大気圧、温度15℃以上90℃以下(ホットプレートの表面温度)の条件のもとで、24時間から96時間かけて混合ゲルを加熱する。予備乾燥処理によって、混合ゲルに含まれる水と有機溶媒の大半を蒸発させることができる。予備乾燥処理は、混合ゲルを大気中に24時間から96時間放置することによって行われてもよい。
【0109】
なお、固体電解質10は、イオン性化合物に代えて、あるいは、イオン性化合物に加えて、双極性化合物を含有していてもよい。双極性化合物とは、分子内の離間した複数の原子に非局在の電荷が分布した化合物である。分極層130が双極性化合物を含有する場合、図2において、符号131aで示された要素が、双極性化合物のうち負の電荷を有する原子を含む部分に相当し、符号131bで示された要素が、双極性化合物のうち正の電荷を有する原子を含む部分に相当する。
【0110】
双極性化合物の例としては、1,2-双極子、1,3-双極子、1,4-双極子、及び1,5-双極子が挙げられる。双極性化合物は、例えば、ジアゾメタン、ホスホニウムイリド、及びカルボニルオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。図6に示す工程S1において、これらの双極性化合物を用いて混合液を調製することができる。
【0111】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る電極20の断面構造の一例を模式的に示している。図7において、電極20は、集電体21の上に配置されている。電極20は、電極活物質、導電助剤及び固体電解質を含む。具体的には、電極20は、活物質粒子22、導電助剤粒子23及び固体電解質24を含む。活物質粒子22は、固体電解質24のマトリクスに埋め込まれて固定されている。導電助剤粒子23も固体電解質24のマトリクスに埋め込まれて固定されている。粒子22及び23の形状は特に限定されない。
【0112】
集電体21は、導電材料で構成されている。導電材料の例としては、金属、導電性酸化物、導電性窒化物、導電性炭化物、導電性硼化物、及び導電性樹脂が挙げられる。
【0113】
固体電解質24として、第1実施形態で説明した固体電解質10を用いることができる。本開示の固体電解質10は高いイオン伝導度を有するので、固体電解質10を用いることによって、優れた電気特性を有する電極20が得られる。
【0114】
本実施形態によれば、固体電解質24のマトリクス中に活物質粒子22(第1粒子)及び導電助剤粒子23(第2粒子)が固定されている。このような構造によれば、電極20において、固体電解質24の高いイオン伝導度に基づく優れた電気特性が確実に発揮されうる。
【0115】
電極20に用いられた電極活物質が正極活物質である場合、正極活物質の例としては、リチウム含有遷移金属酸化物、バナジウム酸化物、クロム酸化物、及びリチウム含有遷移金属硫化物が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物の例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、LiNiCoMnO2、LiNiCoO2、LiCoMnO2、LiNiMnO2、LiNiCoMnO4、LiMnNiO4、LiMnCoO4、LiNiCoAlO2、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFePO4、Li2NiSiO4、Li2CoSiO4、Li2MnSiO4、Li2FeSiO4、LiNiBO3、LiCoBO3、LiMnBO3、及びLiFeBO3が挙げられる。リチウム含有遷移金属硫化物の例として、LiTiS2、Li2TiS3、及びLi3NbS4が挙げられる。これらの正極活物質からから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0116】
電極20に用いられた電極活物質が負極活物質である場合、負極活物質の例としては、金属、半金属、酸化物、窒化物、及び炭素が挙げられる。金属又は半金属の例としては、リチウム、シリコン、アモルファスシリコン、アルミニウム、銀、スズ、アンチモン、及びそれらの合金が挙げられる。酸化物の例としては、Li4Ti512、Li2SrTi614、TiO2、Nb25、SnO2、Ta25、WO2、WO3、Fe23、CoO、MoO2、SiO、SnBPO6、及びそれらの混合物が挙げられる。窒化物の例としては、LiCoN、Li3FeN2、Li7MnN4及びそれらの混合物が挙げられる。炭素の例としては、黒鉛、グラフェン、ハードカーボン、カーボンナノチューブ及びそれらの混合物が挙げられる。これらの負極活物質から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0117】
導電助剤は、例えば、導電性カーボンである。導電性カーボンの例としては、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛、ケッチェンブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。これらの導電助剤から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。導電助剤は、電極20の内部抵抗を十分に低減することに寄与する。
【0118】
電極20は、さらに、バインダーを含んでいてもよい。バインダーの例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。これらのバインダーから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。バインダーは、電極20の形状を維持する効果を発揮する。
【0119】
次に、図8を参照しつつ、電極20の製造方法の一例を説明する。
【0120】
工程S11では、活物質粒子を含有する混合液を調製する。工程S11は、サブ工程S111及びサブ工程S112を含んでいてもよい。サブ工程S111では、例えば、イオン性化合物、金属塩、水、有機溶媒及び活物質粒子を混合して前駆液を調製する。前駆液は、ポリエーテルをさらに含んでいてもよい。サブ工程S112では、前駆液に金属アルコキシドを混合する。これにより、活物質粒子を含有する混合液が得られる。サブ工程S112では、例えば、前駆液が入れられた容器に金属アルコキシドを滴下する。工程S11は、混合液に活物質粒子が加えられることを除き、第1実施形態における工程S1と同じ工程である。
【0121】
第1実施形態で説明したように、金属アルコキシドとして、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドのみを用いてもよく、ハロゲン原子を含む官能基を有する金属アルコキシドと他の金属アルコキシドとを組み合わせて用いてもよい。
【0122】
工程S12では、固体電解質によって被覆された活物質粒子を形成する。工程S12では、例えば、第1実施形態における工程S2及び工程S3と同じ操作を行う。混合液が活物質粒子を含有するため、混合液をゲル化させると、混合ゲルが活物質粒子の表面の少なくとも一部を覆うように形成される。混合ゲルによって被覆された活物質粒子を乾燥させると、固体電解質によって被覆された活物質粒子が得られる。
【0123】
工程S13では、被覆された活物質粒子を含有するスラリーを調製する。被覆された活物質粒子及び導電助剤粒子に電解液又は溶媒を加えて混合する。これにより、電極形成用のスラリーが得られる。必要に応じて、スラリーにはバインダーが加えられてもよい。導電助剤は、工程S11において混合液に予め加えられてもよい。スラリーの調製に用いられる電解液の例としては、金属塩と炭酸エステルとを含む電解液が挙げられる。炭酸エステルとしては、鎖状炭酸エステル、環状炭酸エステル、及びそれらの混合物が挙げられる。例えば、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1の体積比で含む混合溶媒にLiPF6を1mol/リットルの濃度で溶解させることによって、電解液が得られる。スラリーの調製に用いられる溶媒の例としては、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の例としては、N-メチルピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0124】
工程S14では、集電体にスラリーを塗布して塗布膜を形成する。スラリーの塗布方法は特に限定されない。例えば、ブレードコート法によって集電体にスラリーを塗布する。
【0125】
工程S15では、集電体上に形成された塗布膜を乾燥させる。所定の体積充填率を有する電極20が得られるように、乾燥した塗布膜を圧延してもよい。これにより、電極20が得られる。塗布膜の乾燥は、例えば、真空乾燥機を用いて、圧力0.1Pa以上200Pa以下、温度80℃以上150℃以下(周囲温度)の条件のもとで、4時間から12時間かけて行われる。
【0126】
次に、図9を参照しつつ、電極20の製造方法の他の例を説明する。
【0127】
工程S21では、混合液を調製する。工程S21は、例えば、第1実施形態における工程S1と同じ工程である。
【0128】
工程S22では、集電体上に電極層を形成する。電極層は、活物質粒子及び導電助剤粒子を含むスラリーを集電体に塗布し、塗布膜を乾燥させることによって得られる。スラリーは、活物質粒子及び導電助剤粒子に電解液又は有機溶媒を加えて混合することによって調製されうる。工程S22では、図8を参照して説明した工程S14及び工程S15と同じ操作を行ってもよい。
【0129】
工程S21は、工程S22から独立した工程である。工程S21と工程S22の順序は特に限定されない。
【0130】
工程S23では、電極層に混合液を含浸させる。電極層に混合液を含浸させるために、電極層に混合液を滴下させてもよいし、電極層を混合液に浸漬させてもよい。電極層に含浸させる前において、混合液のゲル化が一部進行していてもよい。例えば、混合液を調製した後、混合液を室温で数日間保存すると、ゲル化が少し進行する。そのような混合液を電極層に含浸させてもよい。
【0131】
工程S24では、固体電解質によって被覆された活物質粒子を形成する。電極層に含浸した混合液をゲル化させ、混合ゲルを乾燥させる。工程S24では、例えば、第1実施形態における工程S2及び工程S3と同じ操作を行う。以上により、電極20が得られる。
【0132】
次に、図10を参照しつつ、電極20の製造方法のさらに他の例を説明する。
【0133】
工程S31では、活物質粒子を含有するスラリーを調製する。工程S31は、サブ工程S311及びサブ工程S312を含んでいてもよい。サブ工程S311では、例えば、イオン性化合物、金属塩、水、有機溶媒、活物質粒子、導電助剤粒子及びバインダーを混合して前駆液を調製する。前駆液は、ポリエーテルを含んでいてもよい。サブ工程S312では、前駆液に金属アルコキシドを混合する。これにより、電極形成用のスラリーが得られる。サブ工程S312では、例えば、前駆液が入れられた容器に金属アルコキシドを滴下する。
【0134】
工程S32では、集電体にスラリーを塗布して塗布膜を形成する。スラリーの塗布方法は特に限定されない。例えば、ブレードコート法によって集電体にスラリーを塗布する。
【0135】
工程S33では、集電体上に形成された塗布膜を乾燥させる。塗布膜を乾燥させると、先に説明した加水分解反応及び脱水縮重合反応が進行し、活物質粒子及び導電助剤粒子の周囲に固体電解質のマトリクスが形成される。塗布膜を所定期間(例えば、4日から23日)かけて室温で保存し、その後、所定条件にて塗布膜を乾燥させてもよい。塗布膜の乾燥は、例えば、真空乾燥機を用いて、圧力0.1Pa以上200Pa以下、温度15℃以上150℃以下(周囲温度)の条件のもとで、48時間から72時間かけて行われる。所定の体積充填率を有する電極20が得られるように、乾燥した塗布膜を圧延してもよい。これにより、電極20が得られる。
【0136】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態に係る蓄電素子30の断面構造の一例を模式的に示している。図11において、蓄電素子30は、集電体31、正極32、固体電解質33、負極34、及び集電体35を備えている。集電体31及び35として、第2実施形態で説明した集電体21を用いることができる。正極32は、例えば、第2実施形態で説明した正極活物質を含有する。負極34は、例えば、第2実施形態で説明した負極活物質を含有する。
【0137】
固体電解質33は、正極32と負極34との間に配置されている。固体電解質33として、第1実施形態で説明した固体電解質10を用いることができる。本開示の固体電解質10は高いイオン伝導度を有するので、固体電解質10を用いることによって、優れた電気特性を有する蓄電素子30が得られる。
【0138】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態に係る蓄電素子40の断面構造の一例を示している。図12において、蓄電素子40は、集電体41、正極42、固体電解質43、負極44、及び集電体45を備えている。集電体41及び45として、第2実施形態で説明した集電体21を用いることができる。正極42として、第2実施形態で説明した電極20を用いることができる。負極44は、例えば、第2実施形態で説明した負極活物質を含有する。
【0139】
固体電解質43は、正極42と負極44との間に配置されている。固体電解質43として、第1実施形態で説明した固体電解質10を用いることができる。あるいは、固体電解質43は、その他の固体電解質であってもよい。その他の固体電解質の例としては、無機固体電解質及びポリマー電解質が挙げられる。無機固体電解質の例としては、無機酸化物及び無機硫化物が挙げられる。無機酸化物の例としては、LiPON、LiAlTi(PO43、LiAlGeTi(PO43、LiLaTiO、LiLaZrO、Li3PO4、Li2SiO2、Li3SiO4、Li3VO4、Li4SiO4-Zn2SiO4、Li4GeO4-Li2GeZnO4、Li2GeZnO4-Zn2GeO4、及びLi4GeO4-Li3VO4が挙げられる。無機硫化物の例としては、Li2S-P25、Li2S-P25-LiI、Li2S-P25-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B23-LiI、Li2S-SiS2-P25-LiI、Li2S-B23、Li2S-P25-GeS、Li2S-P25-ZnS、Li2S-P25-GaS、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LiPO、Li2S-SiS2-LiSiO、Li2S-SiS2-LiGeO、Li2S-SiS2-LiBO、Li2S-SiS2-LiAlO、Li2S-SiS2-LiGaO、Li2S-SiS2-LiInO、Li4GeS4-Li3PS3、Li4SiS4-Li3PS4、及びLi3PS4-Li2Sが挙げられる。ポリマー電解質の例としては、フッ素樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリレート、これらの誘導体、及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0140】
蓄電素子40の内部で十分な電子絶縁性が確保できる場合、固体電解質43は省略されてもよい。例えば、図7を参照して説明した電極20を作製したのち、電極20の表面に混合液を塗布して塗布膜を形成する。塗布膜をゲル化及び乾燥させることによって、電極20の上に固体電解質の薄い層を形成することができる。この薄い層が正極と負極との短絡を防ぐのに十分である場合、セパレータの役割を果たす固体電解質が別途必要とされない。
【0141】
図12に示す蓄電素子40においては、正極42のみに本開示の固体電解質を含む電極が使用されている。
【0142】
(第5実施形態)
図13は、第5実施形態に係る蓄電素子50の断面構造の一例を示している。図13において、蓄電素子50は、集電体51、正極52、固体電解質53、負極54、及び集電体55を備えている。集電体51及び55として、第2実施形態で説明した集電体21を用いることができる。正極52及び負極54として、第2実施形態で説明した電極20を用いることができる。固体電解質53は、正極52と負極54との間に配置されている。固体電解質53として、第1実施形態で説明した固体電解質10を用いることができる。あるいは、固体電解質53は、その他の固体電解質であってもよい。本実施形態では、正極52と負極54の両方に本開示の固体電解質を含む電極が使用されている。ただし、負極54のみに本開示の固体電解質を含む電極が使用されてもよい。
【0143】
第4及び第5実施形態によれば、正極及び負極から選ばれる少なくとも1つに本開示の電極20が用いられている。電極20は、本開示の固体電解質10を含む。固体電解質10は高いイオン伝導度を有するので、固体電解質10を用いることによって、優れた電気特性を有する蓄電素子が得られる。
【実施例0144】
(サンプル1a)
1.02mlのBMP-TFSI、0.324gのLi-TFSI、所定量のシリコンアルコキシド、1.0mlのPGME及び0.5mlの水をガラス容器に入れて混合し、混合液を得た。シリコンアルコキシドとして、TEOSとクロロメチルトリメトキシシラン(Cl-TMOS)との混合物を使用した。シリコンアルコキシドの全量に対するクロロメチルトリメトキシシランの比率は、10mol%であった。シリコンアルコキシドとBMP-TFSIとの混合比は、モル比にて、シリコンアルコキシド:BMP-TFSI=1.0:1.5であった。
【0145】
次に、ガラス容器を密閉して混合液を25℃で保管した。混合液は、5日から17日で湿潤状態の混合ゲルに変化した。
【0146】
次に、デシケータ付きのホットプレートを用い、40℃、80kPaの条件で96時間かけて、混合ゲルを予備乾燥させた。その後、混合ゲルを真空オーブンに入れ、25℃、0.1Pa以下の条件で72時間かけて乾燥させた。これにより、サンプル1aの固体電解質を得た。
【0147】
(サンプル1bからサンプル1e)
シリコンアルコキシドの全量に対するクロロメチルトリメトキシシランの比率を25mol%、75mol%、90mol%及び100mol%に変更したことを除き、サンプル1aと同じ方法でサンプル1bからサンプル1eの固体電解質を作製した。
【0148】
サンプル1aからサンプル1eの固体電解質をグローブボックス(湿度<0.0005%RH)に移し、約23℃から24℃でのイオン伝導度を交流インピーダンス法によって測定した。
【0149】
(参照サンプル1)
参照サンプル1の電解質として、BMP-TFSI及びLi-TFSIのみを含む電解液を調製した。BMP-TFSIとLi-TFSIとの混合比は、モル比にて、BMP-TFSI:Li-TFSI=3.0:1.0であった。約23℃から24℃での参照サンプル1の電解質のイオン伝導度を交流インピーダンス法によって測定した。参照サンプル1の電解質のイオン伝導度は、0.6mS/cmであった。
【0150】
図14は、サンプル1aからサンプル1eの固体電解質のイオン伝導度とCl-TMOSの添加量との関係を示している。縦軸はイオン伝導度を示している。横軸は、シリコンアルコキシドの全量に対するクロロメチルトリメトキシシラン(Cl-TMOS)の比率を示している。Cl-TMOSの比率が増加するにつれて、イオン伝導度が上昇した。サンプル1aからサンプル1eの固体電解質の全てが参照サンプル1のイオン伝導度よりも高いイオン伝導度を示した。
【0151】
(サンプル2a)
BMP-TFSIとLi-TFSIとの混合比は、モル比にて、BMP-TFSI:Li-TFSI=3.0:1.0であった。シリコンアルコキシドとしてCl-TMOSのみを使用した。Cl-TMOSに対するBMP-TFSIの比率は、モル比にて、0.25であった。これらの変更を除き、サンプル1aと同じ方法でサンプル2aの固体電解質を作製した。
【0152】
(サンプル2bからサンプル2f)
Cl-TMOSに対するBMP-TFSIの比率をモル比にて0.5、0.75、1.0、1.5及び2.5に変更したことを除き、サンプル2aと同じ方法でサンプル2bからサンプル2fの固体電解質を作製した。
【0153】
図15は、サンプル2aからサンプル2fの固体電解質のイオン伝導度とCl-TMOSに対するBMP-TFSIのモル比との関係を示している。縦軸は、イオン伝導度を示している。横軸は、Cl-TMOSに対するBMP-TFSIのモル比を示している。Cl-TMOSに対するBMP-TFSIのモル比が増加するにつれて、イオン伝導度が上昇した。サンプル2d、サンプル2e及びサンプル2fのイオン伝導度は、参照サンプル1のイオン伝導度を上回った。つまり、BMP-TFSI/Cl-TMOS=1.0以上のとき、固体電解質のイオン伝導度が参照サンプル1の伝導度を上回った。BMP-TFSI/Cl-TMOSの値は、モル比にて、1.0以上に設定されうる。BMP-TFSI/Cl-TMOSの値の上限は特に限定されず、例えば、2.5である。
【0154】
(参照サンプル2)
シリコンアルコキシドとしてTEOSのみを使用し、各材料の混合比を、モル比にて、TEOS:BMP-TFSI:Li-TFSI=2.0:3.0:1.0に変更したことを除き、サンプル1aと同じ方法で参照サンプル2の固体電解質を作製した。
【0155】
図16は、サンプル1eの固体電解質と参照サンプル2の固体電解質とを低湿度環境に保管した後のイオン伝導度の経時変化を示している。縦軸は、イオン伝導度を示している。横軸は、作製直後からの経過時間(日)の1/2乗を示している。破線は、参照サンプル1の電解質のイオン伝導度(0.6mS/cm)を示している。作製直後において、参照サンプル2の固体電解質のイオン伝導度は、参照サンプル1の電解質のイオン伝導度よりも高かった。参照サンプル2の固体電解質を低湿度環境(<0.0005%RH)で保管すると、イオン伝導度は徐々に減少した。30日以上保管して平衡状態に達したとき、参照サンプル2の固体電解質は、参照サンプル1の電解質よりも低いイオン伝導度を示した。
【0156】
一方、サンプル1eの固体電解質のイオン伝導度は、作製直後、参照サンプル1及び参照サンプル2の電解質のイオン伝導度よりも高かった。サンプル1eの固体電解質を低湿度環境(<0.0005%RH)で保管すると、サンプル1eの固体電解質のイオン伝導度は徐々に減少した。ただし、30日以上保管して平衡状態に達した後も、サンプル1eの固体電解質は、参照サンプル1及び参照サンプル2の電解質のイオン伝導度よりも高いイオン伝導度を示した。
【0157】
イオン伝導度の経時変化は、以下に説明するメカニズムによるものと推定される。
【0158】
参照サンプル2の固体電解質は、表面吸着層として、吸着水層を有する。作製直後において、参照サンプル2の固体電解質の吸着水層は、厚く、密度も高い。そのため、分極層におけるイオンの分極が強く誘起され、Li+イオンが直下のTFSI-イオンに引き付けられる力が弱まり、Li+イオンが動きやすくなる。その結果、参照サンプル2の固体電解質は、高いイオン伝導度を示す。
【0159】
しかし、参照サンプル2の固体電解質を低湿度環境(<0.0005%RH)に保管すると、吸着水層の厚さ及び密度が低下する。Li+イオンの動きやすさは、表面吸着層を有さない参照サンプル1の電解質と同等まで低下する。その結果、参照サンプル2の固体電解質の全体の伝導度は、参照サンプル1の電解質のイオン伝導度(0.6mS/cm)よりも低くなる。
【0160】
一方、サンプル1eの固体電解質を低湿度環境(<0.0005%RH)に保管すると、参照サンプル2と同様、吸着水層の厚さ及び密度が低下する。しかし、SiO2の表面がClで修飾されているため、Clの極性がイオン液体分子を強く引き付ける。その結果、分極層におけるイオンの分極が強く誘起された状態を維持できるため、Li+イオンが直下のTFSI-イオンに引き付けられる力が弱まり、Li+イオンが動きやすくなる。その結果、サンプル1eの固体電解質は、低湿度環境下においても、高いイオン伝導度を維持している。
【0161】
図17は、サンプル1eの固体電解質及び参照サンプル1の電解質のイオン伝導度の温度依存性を示している。縦軸は、イオン伝導度の自然対数を示している。横軸は、1000/Tの値(Tは、温度(K))を示している。283Kから293K付近の測定温度、すなわち、横軸が3.5付近において、参照サンプル1の電解質は、イオン液体の液化又は凝固によるイオン伝導度の顕著な変化を示した。一方、サンプル1eの固体電解質では、イオン伝導度の急激な変化は観測されなかった。これは、イオン液体の分子がClで修飾されたSiO2に吸着し、純粋な液体及び純粋な固体とは異なる相を形成していることが理由であると推測される。
【0162】
(FT-IR測定)
イオン液体の分子が吸着されていることを確かめるために、サンプル1eの固体電解質を低湿度環境(<0.0005%RH)で284日間保管したのち、FT-IR測定を行った。併せて、参照サンプル1の電解質のFT-IR測定も行った。
【0163】
図18は、1000cm-1から1400cm-1の波数範囲でのサンプル1eの固体電解質及び参照サンプル1の電解質のFT-IR測定の結果を示している。実線の縦線は、サンプル1eのピークの位置を示している。破線の縦線は、参照サンプル1のピークの位置を示している。矢印は、ピーク位置のシフトを示している。各ピークは、イオン液体を構成するTFSIアニオン分子内のO=S=O結合の伸縮振動モードに帰属される。参照サンプル1において、1050cm-1、1178cm-1及び1353cm-1の位置にピークが観測された。サンプル1eにおいて、各ピークは低エネルギー側にシフトした。この理由としては、相対的に正の極性を有するS原子と、SiO2の表面のCl原子とが結合を形成したためであると推測される。すなわち、ピークのシフトは、TFSIアニオン分子がSiO2の表面に吸着していることを示唆している。
【0164】
(固体NMR測定)
多孔質誘電体の孔の内表面の状態を評価するため、参照サンプル2とサンプル1eの固体29Si-NMR測定を行った。図19Aは、-80ppmから-140ppmの化学シフト範囲での参照サンプル2の固体電解質の固体NMR測定の結果を示している。図19Bは、-60ppmから-100ppmの化学シフト範囲でのサンプル1eの固体電解質の固体NMR測定の結果を示している。
【0165】
図19Aに示すように、参照サンプル2のスペクトルは、Q3及びQ4の2つのピークを有していた。Q3のピークは、完全なSi-O結合を形成できず、表面末端基として残存したOH結合又はアルキル基を反映している。Q4のピークは、完全なSi-O結合に由来するピークである。フィッテイング結果から面積比を算出した結果、Q3:Q4=40%:60%となった。この結果は、Siに対する表面末端基のモル比が最大で40%に達することを示している。
【0166】
図19Bに示すように、サンプル1eのスペクトルは、T2及びT3の2つのピークを有していた。ただし、Q3、Q4などの他のピークは検出されなかった。T2のピーク及びT3のピークは、いずれも、塩素原子に由来するピークである、図19Bのスペクトルは、サンプル作製後にも、-CH2Cl基が100%残っていることを示している。すなわち、表面末端基であるCl終端基のモル比が、Siに対して、最大で100%に達することを示している。
【0167】
図19A及び図19Bの測定結果は、サンプル1eにおける表面末端基の密度が参照サンプル2における表面末端基の密度よりも高い可能性を示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本開示の技術は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子に有用である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B