(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109329
(43)【公開日】2022-07-27
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E05F 13/02 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
E05F13/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086011
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2018068737の分割
【原出願日】2018-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】安井 圭司
(72)【発明者】
【氏名】千野 哲玄
(57)【要約】
【課題】障子側の構造に関わらずに障子を開ける際の使用者の負担を軽減することができる。
【解決手段】一方の第1縦枠23には、障子3を他方の縦枠側に向けて押し出す押出し機構4が設けられ、押出し機構4は、第1縦枠23における障子3と対向する面に配置され、全閉状態の障子3の戸先框33を開方向に押し出す蹴出し部材40と、蹴出し部材40に連動可能に連結され、屋内外方向X1で障子3よりも屋内側に配置されたハンドル部材41と、を備えた建具を提供する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みして構成される枠体と、前記枠体内で左右方向にスライド可能に配置される障子と、を備えた建具であって、
少なくとも一方の縦枠には、前記障子を他方の縦枠側に向けて押し出す押出し機構が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記押出し機構は、
前記一方の縦枠における前記障子と対向する面に配置され、全閉状態の前記障子の戸先框を開方向に押し出す蹴出し部材と、
前記蹴出し部材に連動可能に連結され、屋内外方向で前記障子よりも屋内側に配置された操作部と、
を備えている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子には、錠が設けられ、
前記操作部には、前記障子の錠を解除したときに前記操作部のロックが解除されるロック機構が設けられている請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記蹴出し部材は、一端が屋内外方向を回転中心として回動し、
前記操作部は、一端が屋内外方向を回転中心とするハンドル部材であり、前記蹴出し部材と同じ方向に回動する請求項2又は3に記載の建具。
【請求項5】
前記一方の縦枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、
前記凹溝部において、前記一方の縦枠と前記ハンドル部材のハンドル先端との間には、隙間が形成されている請求項4に記載の建具。
【請求項6】
前記一方の縦枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、
前記凹溝部には、前記ハンドル部材を前記一方の縦枠の外方に押し出すためのプッシュボタンが設けられている請求項4に記載の建具。
【請求項7】
前記障子には、錠が設けられ、
前記プッシュボタンには、前記障子の錠を解除したときに前記プッシュボタンのロックが解除されるロック機構が設けられている請求項6に記載の建具。
【請求項8】
前記ハンドル部材における前記回転中心からハンドル先端までの長さは、前記蹴出し部材における前記回転中心から蹴出し先端までの長さよりも長い請求項4乃至7のいずれか1項に記載の建具。
【請求項9】
前記ハンドル部材には、該ハンドル部材の回動速度を減速する減速機が設けられている請求項4乃至8のいずれか1項に記載の建具。
【請求項10】
前記ハンドル部材には、前記障子を押し出す際に回動させた位置から元の収納位置に戻す復帰装置が設けられた請求項4乃至9のいずれか1項に記載の建具。
【請求項11】
収納位置に位置する前記蹴出し部材の蹴出し先端部は、全閉状態の前記障子の戸先框から離間した位置に配置されている請求項4乃至10のいずれか1項に記載の建具。
【請求項12】
全閉状態の前記障子における戸先框は、屋内側から見て隠れた状態となる隠し框構造である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引違サッシとして、例えば特許文献1に示されるような、開口部を閉鎖する屋外側のサッシ障子の戸先框の屋内側に配置され、戸先框と左右方向に重なる框隠し部を有するものが知られている。
このような引違サッシでは、戸先框には手掛け部が設けられ、框隠し部には凹部が形成されていて、凹部を介して使用者が手掛け部に手先を掛けることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなサッシは、大型のサッシであって重量が大きな場合には、戸先框に設けられる手掛け部では障子を開閉する際に重く、使用者の負担が大きくなっている。このような場合には、障子の開閉を補助するハンドルを障子に取り付けることが考えられるが、障子側にハンドルを取り付けるだけの十分なスペースが確保できないという問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、障子側の構造に関わらずに障子を開ける際の使用者の負担を軽減することができる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みして構成される枠体と、前記枠体内で左右方向にスライド可能に配置される障子と、を備えた建具であって、少なくとも一方の縦枠には、前記障子を他方の縦枠側に向けて押し出す押出し機構が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、押出し機構により全閉状態の障子を一方の縦枠側から他方の縦枠側に向けて押し出して開くことができる。この場合には、障子が開く方向と同じ方向に押出し機構で障子が押し出されることから、押出し力を小さくすることができ、手動により押出し機構が操作される場合に使用者の負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明に係る建具は、前記押出し機構は、前記一方の縦枠における前記障子と対向する面に配置され、全閉状態の前記障子の戸先框を開方向に押し出す蹴出し部材と、前記蹴出し部材に連動可能に連結され、屋内外方向で前記障子よりも屋内側に配置された操作部と、を備えていることと特徴としてもよい。
【0009】
本発明では、全閉状態の障子において、屋内側から操作部を操作することで、蹴出し部材が操作部に連動して障子の戸先框側に押し出され、障子を開く方向に押し出すことができる。この場合には、操作部が障子よりも屋内側に配置されているので、全閉状態の障子に対して屋内側から操作部を操作して蹴出し部材を押し出すことが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る建具は、前記障子には、錠が設けられ、前記操作部には、前記障子の錠を解除したときに前記操作部のロックが解除されるロック機構が設けられていることが好ましい。
【0011】
このような構成とすることで、障子が開錠してないときには、操作部も障子の錠と連動してロック機構によりロックされた状態となるので、操作部を操作して押出し機構を動かすことができない。そのため、障子の施錠中に、操作部を無理やりに操作することを防ぐことができ、操作部や押出し機構の破損を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る建具は、前記蹴出し部材は、一端が屋内外方向を回転中心として回動し、前記操作部は、一端が屋内外方向を回転中心とするハンドル部材であり、前記蹴出し部材と同じ方向に回動することが好ましい。
【0013】
この場合には、ハンドル部材と蹴出し部材とが前述の回転中心と同軸に配置され、双方の部材が同じ方向に回動するので、障子を開ける際のハンドル部材の回動操作力をより小さくすることができ、使用者の負担を軽減することができる。これにより、ハンドル部材と蹴出し部材とにかかる力の方向を変える伝達機構が不要となり、簡単な機構により押出し機構を構成することができる。
また、ハンドル部材と蹴出し部材の回動方向が左右方向を含む平面内であり、操作中のハンドル部材が屋内外方向で屋内側に向けて突出することがないことから、見栄えが良好となる。
【0014】
また、本発明に係る建具は、前記一方の縦枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、前記凹溝部において、前記一方の縦枠と前記ハンドル部材のハンドル先端との間には、隙間が形成されていることが好ましい。
【0015】
この場合には、凹溝部において一方の縦枠とハンドル部材のハンドル先端との間の隙間を使用して、ハンドル部材を一方の縦枠の障子側を向く面から引き出して操作することができる。そのため、ハンドル部材を一方の縦枠の前記面から枠体の内側の開口部に突出させることなく、その一方の縦枠内に収納することができ、外観が良好となり、意匠性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る建具は、前記一方の縦枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、前記凹溝部には、前記ハンドル部材を前記一方の縦枠の外方に押し出すためのプッシュボタンが設けられていることを特徴としてもよい。
【0017】
この場合には、プッシュボタンを押すことでハンドル部材を一方の縦枠の障子側を向く面から引き出すことができる。そのため、ハンドル部材を一方の縦枠の前記面から枠体の内側の開口部に突出させることなく、その一方の縦枠内に収納することができ、外観が良好となり、意匠性を向上させることができる。また、プッシュボタンを外観上、一方の縦枠の前記面と面一に配置することで、さらに意匠性の向上を図ることができる。
【0018】
また、本発明に係る建具は、前記障子には、錠が設けられ、前記プッシュボタンには、前記障子の錠を解除したときに前記プッシュボタンのロックが解除されるロック機構が設けられていることを特徴としてもよい。
【0019】
このような構成とすることで、障子が開錠してないときには、プッシュボタンも障子の錠と連動してロック機構によりロックされた状態となるので、プッシュボタンを操作して押出し機構を動かすことができない。そのため、障子の施錠中に、プッシュボタンを無理やりに操作することを防ぐことができ、プッシュボタンや押出し機構の破損を防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る建具は、前記ハンドル部材における前記回転中心からハンドル先端までの長さは、前記蹴出し部材における前記回転中心から蹴出し先端までの長さよりも長いことを特徴としてもよい。
【0021】
この場合には、ハンドル部材の回転中心からハンドル先端までの長さを長くすることで、ハンドル部材よりも短い蹴出し部材を小さな回動操作力により押し出すことができ、使用者の負担を軽減することができる。
【0022】
また、本発明に係る建具は、前記ハンドル部材には、該ハンドル部材の回動速度を減速する減速機が設けられていることが好ましい。
【0023】
この場合には、ハンドル部材を操作した後に収納位置に戻すときの回動速度を小さく抑えることができるため、収納時に発生する音を小さくでき、操作者の不快感を抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る建具は、前記ハンドル部材には、前記障子を押し出す際に回動させた位置から元の収納位置に戻す復帰装置が設けられた構成とすることが好ましい。
【0025】
この場合には、ハンドル部材を操作することにより回動させて蹴出し部材を押し出して障子を開けた後に、ハンドル部材から使用者が手を放すと、復帰装置によってハンドル部材が元の収納位置に戻り、一方の縦枠内に自動的に収納させることができる。
【0026】
また、本発明に係る建具は、収納位置に位置する前記蹴出し部材の蹴出し先端部は、全閉状態の前記障子の戸先框から離間した位置に配置されていることが好ましい。
【0027】
この場合には、全閉状態の障子の戸先框と蹴出し部材の蹴出し先端部との間に隙間が設けられた状態となる。このような隙間を設けることで、蹴出し部材が障子の戸先框に当接するまでの範囲で回動可能であり、蹴出し部材に連結されたハンドル部材を一方の縦枠の前記面から突出させた操作初期位置とすることができる。
【0028】
また、本発明に係る建具は、全閉状態の前記障子における戸先框は、屋内側から見て隠れた状態となる隠し框構造であることを特徴としてもよい。
【0029】
この場合には、全閉状態の障子の戸先框の屋内側に框隠し部が設けられていても、障子を開く際に押出し機構により障子を押し出して開くことができる。このように隠し框構造とすることで、屋内側から見て前述のように障子の戸先框が隠れた状態となるので、閉鎖した状態の障子の意匠性を向上することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の建具によれば、障子側の構造に関わらずに障子を開ける際の使用者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施形態による片引き戸を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す片引き戸を屋内側から見た正面図であって、全閉状態の障子を示す図である。
【
図3】
図1に示す片引き戸を屋内側から見た正面図であって、全開状態の障子を示す図である。
【
図4】建築物に外付けされた状態の片引き戸を屋内側から見た正面図であって、全閉状態の障子を示す図である。
【
図5】建築物に外付けされた状態の片引き戸を屋内側から見た正面図であって、全開状態の障子を示す図である。
【
図6】
図4に示すI-I線断面図であって、全閉状態の片引き戸の水平断面図である。
【
図7】
図5に示すII-II線断面図であって、全開状態の片引き戸の水平断面図である。
【
図8】
図4に示すIII-III線断面図であって、全閉状態の片引き戸の縦断面図である。
【
図9】押出し機構の構成を示す斜視図であって、ハンドル部材が収納位置にある図である。
【
図10】押出し機構の構成を示す斜視図であって、ハンドル部材が押出位置にある図である。
【
図11】
図14に示すIV-IV線矢視図であって、押出し機構を左右方向で第2縦枠側から見た図である。
【
図12】押出し機構を屋内側から見た側面図であって、ハンドル部材が収納位置にある図である。
【
図13】押出し機構を屋内側から見た側面図であって、ハンドル部材が押出位置、及び操作初期位置にある図である。
【
図14】押出し機構を屋外側から見た側面図であって、蹴出し部材が収納位置、及び操作初期位置にある図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態による建具の一例として、図面に基づいて説明する。
【0033】
図1から
図3に示す本実施形態による片引き戸1(建具)は、
図4及び
図5に示すような建築物の開口部2Aに設けられ、四方を枠組みして四角形枠状に構成された枠体2と、枠体2内で左右方向X2にスライド可能に設けられた障子3と、を備えている。片引き戸1は、アルミニウムと樹脂の複合のサッシである。また、枠体2の屋外側には、網戸5が左右方向X2に移動可能に設けられている。
【0034】
障子3は、全開状態P2において屋内側から見て戸袋側に上下左右の框31~34がすべて隠れる構成になっている。すなわち、枠体2には左右領域のうち一方(本実施形態では屋内側から見て右側)の第1領域R1の屋内側に躯体Kが設けられ、他方(屋内側から見て左側)の第2領域R2の屋内側に屋内外方向X1に連通する開口部2Aが形成された外付け構造となっている。
【0035】
以下の説明において、屋外側と屋内側とを結ぶ方向を屋内外方向X1とし、建築物の開口部2Aが躯体Kを貫通する方向から見た際の左側と右側を結ぶ水平方向を左右方向X2とする。また、片引き戸1を構成する各部材や部品などは、前記開口部2Aに設けられている姿勢であるものとして、その姿勢における屋内外方向X1および左右方向X2を用いて説明する。左右方向X2において、障子3を閉じる方向を閉方向といい、開く方向を開方向という。
【0036】
図1から
図3に示すように、枠体2は、全体が矩形状に形成され、建築物の屋外側に配置される外付け用となっている。枠体2は、左右方向X2に延在する上枠21及び下枠22と、上枠21の両端部と下枠22の両端部とをそれぞれ連結し上下方向X3に延在する縦枠23、24と、を有している。
左右の縦枠23、24同士の間の左右方向X2の中間部分には、
図6及び
図7に示すように方立25が設けられている。方立25は、上枠21と下枠22とのそれぞれの左右方向X2の中間部分に連結されている。
【0037】
開口部2Aを形成する開口枠20は、
図4及び
図5に示すように、上枠21(後述する上枠カバー21C)、下枠22(後述する下枠カバー22C)、一方の縦枠23(後述する縦枠カバー26)、及び方立25(後述する方立カバー25B)によって四辺を囲って構成されている。なお、開口枠20は、開口部2Aを形成する枠部材であって、上述した障子3を左右方向X2にスライド可能に支持する枠体2とは一致するものではない。すなわち、本実施形態のように、開口枠20の一辺に方立25が設けられるものが適用される。
【0038】
一対の縦枠23、24は、それぞれアルミ合金等の金属製である。一対の縦枠23、24のうち、障子3の戸先框33に対向する側を第1縦枠23とし、障子3の召合框34に対向する側を第2縦枠24として、以下説明する。
【0039】
第1縦枠23は、
図6及び
図7に示すように、屋外側に配置され障子3の戸先框33を開閉自在に係止する屋外側枠部23Aと、屋外側枠部23Aの屋内側に配置され開口部2Aを形成する縦枠カバー26が取り付けられる屋内側枠部23Bと、を有している。
第1縦枠23における第2縦枠24を向く面の内側には、全閉状態P1の障子3を開方向に向けて押し出す押出し機構4(
図1参照)が設けられている。
【0040】
屋外側枠部23Aには、開方向に向けて突出するとともに、上下方向X3に延びる第1フランジ231が設けられている。屋内側枠部23Bには、開方向に向けて突出するとともに、上下方向X3に延びる縦枠カバー26を固定するための第2フランジ232、233が設けられている。
第1フランジ231の屋外側の外面231aには、障子3の戸先框33のパッキン33c(後述する)が接触される。
【0041】
縦枠カバー26は、樹脂製の材料により形成され、ねじ固定や嵌め合わせ等により第1縦枠23の屋内側枠部23Cの第2フランジ232、233に固定されている。縦枠カバー26の第2縦枠24側を向く側面26aは、上述した開口枠20の一方の縦側面を構成し、建物の開口部2Aと面一となっている。
縦枠カバー26には、屋外側角部において屋外側に突出し、上下方向X3の全体にわたって延在する第1ヒレ部材261が設けられている。第1ヒレ部材261は、障子3の戸先框33の屋内側の面に接触可能に設けられている。
【0042】
縦枠カバー26の側面26aには、
図1に示すように、上下方向X3の中間部分に、上下方向X3に延びる縦長の凹溝部46が形成されている。凹溝部46には、後述する押出し機構4の一部(ハンドル部材41や駆動機構42)が配置される。
【0043】
第2縦枠24は、屋外側に配置され障子3の召合框34を開閉自在に係止する屋外側枠部24Aと、屋外側枠部24Aの屋内側に配置され躯体Kが取り付けられる屋内側枠部24Bと、を有している。
【0044】
上枠21は、
図8に示すように、屋外側に配置され障子3の上框31を開閉自在に支持する屋外側上枠部21Aと、屋外側上枠部21Aの屋内側に配置され開口部2Aを形成する上枠カバー21Cが取り付けられる屋内側上枠部21Bと、を有している。
【0045】
下枠22は、屋外側に配置され障子3の下框32を開閉自在に支持する屋外側下枠部22Aと、屋外側下枠部22Aの屋内側に配置され開口部2Aを形成する下枠カバー22Cが取り付けられる屋内側下枠部22Bと、を有している。
【0046】
方立25は、
図6及び
図7に示すように、第2縦枠24に支持される躯体Kの第1縦枠23側の端部を支持する方立形材25Aと、方立形材25Aの第1縦枠23側に係合される方立カバー25Bと、を有している。
【0047】
図4及び
図5に示すように、障子3は、左右方向X2に延在する上框31および下框32と、上下方向X3に延在する戸先框33と召合框34と、これらの框31~34の内側に配置されるガラス35と、を有している。
上下左右の各框31~34には、それぞれガラス35を支持するための断面略コの字状の溝(
図6及び
図8に示すガラス保持溝G)が形成されている。各框31~34を形成する形の先端部が、屋内側から見て開口部2Aの屋外側に隠れるように構成されている。
【0048】
障子3は、全開した状態(全開状態P2)において、戸先框33が屋内側から見て開口枠20の屋外側に隠れるように構成されている。第1領域R1において全開状態P2の障子3が引き込まれる際の引き込み代は、障子3の左右方向X2の寸法と同等以上に設定されている。
【0049】
ガラス35は、四辺の周縁部がガラス保持溝G内で框31~34に係止された押縁351で押さえられた状態で嵌め込まれている。
【0050】
戸先框33は、
図6及び
図7に示すように、障子3の全閉状態P1において、召合框34側の端部(溝を形成する形の溝先端部33a)が、屋内側から見て、開口部2Aの端面(縦枠カバー26の側面26a)と面一、もしくは第1縦枠23側に位置して配置されている。
戸先框33は、屋外側に設けられアルミニウムを材料として形成された屋外側形材33Aと、屋外側形材33Aの屋内側に設けられ樹脂を材料として形成された屋内側形材33Bと、を有している。屋外側形材33Aおよび屋内側形材33Bは、上下方向X3に延在しているとともに、互いに係合し、ガラス35を係止している。
【0051】
屋外側形材33Aは、板面が屋外側を向く外板部331と、外板部331と一体に形成され屋内側形材33Bと係合する第1係合部332と、外板部331の召合框34側の溝先端部33aに設けられる第1ガラス係止部333と、を有している。
屋外側形材33Aには、屋外側に突出した状態で上下方向X3に延在するパッキン33cが設けられている。パッキン33cは、ゴム製の弾性部材から形成され、障子3が全閉状態P1において、第1縦枠23の第1フランジ231の外面231aに対して気密に接触している。
【0052】
屋内側形材33Bは、板面が屋内側を向く内板部334と、内板部334と一体に形成され屋外側形材33Aと係合する第2係合部335と、内板部334の召合框34側の溝先端部33aに設けられる第2ガラス係止部336と、を有している。
屋外側形材33Aと屋内側形材33Bとの召合框34側には、ガラス35を支持するための上述したガラス保持溝Gが形成されている。
【0053】
屋外側形材33Aと屋内側形材33Bとの第1縦枠23側には、召合框34側に凹む凹部33bが形成されている。凹部33bには、屋内側形材33Bにおける第1縦枠23側の端面から屋外側に突出する手掛け部338が形成されている。手掛け部338は、少なくとも障子3の戸先框33が縦枠カバー26の側面26aよりも第2縦枠24側となるように開いた状態において、凹部33bの空間に使用者の手先が挿入可能に構成されている。また、手掛け部338は、全閉状態P1において、上述したように戸先框33とともに屋内側から見て開口枠20の屋外側に隠れているので、凹部33bの空間に使用者の手先が挿入できない構成になっている。
【0054】
召合框34は、
図6に示すように、障子3が開口部2Aを閉鎖している全閉状態P1において、戸先框33側の端部(溝を形成する形の溝先端部34a)が、屋内側から見て、開口部2Aの側面(方立カバー25Bの側面25c)と面一、もしくは第2縦枠24側(
図6の右側)に位置して配置されている。
召合框34は、アルミニウムを材料として形成された本体形材34Aを有している。本体形材34Aは、上下方向X3に延在してガラス35を係止している。
【0055】
本体形材34Aは、水平断面で矩形状をなしており、屋外側の板面における戸先框33側の溝先端部34aには第3ガラス係止部342を有している。
本体形材34Aにおける第2縦枠24側の屋内側角部には、屋内側に向けて突出するとともに上下方向の全体にわたって延びる気密パッキン343が設けられている。気密パッキン343は、ゴム製の弾性部材から形成され、障子3が全閉状態P1において、方立形材25Aの外面に対して気密に接触している。
本体形材34Aの戸先框33側には、ガラス35を支持するための上述したガラス保持溝Gが形成されている。
【0056】
上框31は、
図8に示すように、障子3の全閉状態P1において、下框32側の端部(溝を形成する形の溝先端部31a)が、屋内側から見て、開口部2Aの側面(上枠カバー21Cの下面21a)と面一、もしくは上側に位置して配置されている。
【0057】
上框31は、屋外側に設けられアルミニウムを材料として形成された屋外側形材31Aと、屋内側に設けられ樹脂を材料として形成された屋内側形材31Bと、を有している。
屋外側形材31Aおよび屋内側形材31Bは、上下方向X3に延在しているとともに、互いに係合し、押縁351を介してガラス35を係止している。
【0058】
屋外側形材31Aは、板面が屋外側を向く外板部311と、外板部311と一体に形成され屋内側形材31Bと係合する第1係合部312と、外板部311の下框32側の端部から下側に向かって突出する第1ガラス係止部313と、を有している。
また、屋外側形材31Aの上部には、上枠21の第1突起レール部212に左右方向X2にスライド可能なスライド係止部317が設けられている。
【0059】
屋内側形材31Bは、板面が屋内側を向く内板部314と、内板部314と一体に形成され屋外側形材31Aと係合する第2係合部315と、内板部314の下端部から下側に向かって突出する第2ガラス係止部316と、を有している。
屋内側形材31Bは、ダンパー装置6のダンパー6Aの下方に位置し、上面31cにはダンパー6Aに対して左右方向X2に摺動自在なラッチ6Bが設けられている。
屋外側形材31Aと屋内側形材31Bとの下框32側には、ガラス35を支持するための上述したガラス保持溝Gが形成されている。
【0060】
下框32は、
図8に示すように、障子3が開口部2Aを閉鎖している全閉状態P1において、上框31側の端部(溝を形成する形の溝先端部32a)が、屋内側から見て、開口部2Aの側面(下枠カバー22Cの上面22a)と面一、もしくは下側に位置して配置されている。
【0061】
下框32は、屋外側に設けられアルミニウムを材料として形成された屋外側形材32Aと、屋内側に設けられ樹脂を材料として形成された屋内側形材32Bと、を有している。
屋外側形材32Aおよび屋内側形材32Bは、上下方向X3に延在しているとともに、互いに係合し、押縁351を介してガラス35を係止している。
【0062】
屋外側形材32Aは、板面が屋外側を向く外板部321と、外板部321と一体に形成され屋内側形材32Bと係合する第1係合部322と、外板部321から上側に向かって突出する第1ガラス係止部323と、を有している。
また、屋外側形材32Aの下部には、下枠22の第2突起レール部222に沿って左右方向X2に走行可能な戸車36が設けられている。
【0063】
屋内側形材32Bは、板面が屋内側を向く内板部324と、内板部324と一体に形成され屋外側形材32Aと係合する第2係合部325と、内板部324から上側に向かって突出する第2ガラス係止部326と、を有している。
屋外側形材32Aと屋内側形材32Bとの上框31側には、ガラス35を支持するための上述したガラス保持溝Gが形成されている。
【0064】
次に、枠体の第1縦枠23に設けられる押出し機構4について、図面に基づいて詳細に説明する。
押出し機構4は、
図9及び
図10に示すように、左右方向X2で第1縦枠23に対して離間する方向(開方向)に障子3を押し出す蹴出し部材40と、蹴出し部材40を連動させるとともに回動可能なハンドル部材41(操作部)と、ハンドル部材41を回転可能に駆動する駆動機構42と、蹴出し部材40とハンドル部材41とを連結して互いに連動させる連結部43(
図11参照)と、を有している。
押出し機構4は、第1縦枠23の上下方向X3で障子3を開閉する使用者が手でハンドル部材41の把持部41Aを把持して操作し易い適宜な位置に配置されている。
【0065】
第1縦枠23において、屋内側枠部23Bにハンドル部材41と駆動機構42とが設けられ、屋外側枠部23Aに蹴出し部材40が設けられている。押出し機構4は、ハンドル部材41と駆動機構42とが縦枠カバー26(
図6及び
図12参照)内に収容され、ハンドル部材41が手前に回動されたときのみ縦枠カバー26から突出するように配置されている。ここで、
図9及び
図10は、見やすくするために縦枠カバー26が省略されている。
【0066】
ハンドル部材41は、
図12に示すような縦枠カバー26内に収納された収納位置Q1と、
図13に示すような障子3を蹴出し部材40によって蹴り出すときの押出位置Q2と、の間で、ハンドル部材41の基端部41Bに位置する回転中心41aを中心にして回動可能に設けられている。
ハンドル部材41は、
図12~
図14に示すように、全閉状態P1の障子3を開く際に、収納位置Q1から一旦、操作初期位置Q0に移動される。ハンドル部材41における操作初期位置Q0は、ハンドル部材41の把持部41Aが第1縦枠23(縦枠カバー26)の側面26aから開口部2Aに突出した位置であって、使用者が把持部41Aを掴むことが可能な姿勢となるように収納位置Q1から回動された位置である。
【0067】
ハンドル部材41は、収納位置Q1において、ハンドル軸を上下方向X3に向けた状態で、基端部41Bを下方に向け、把持部41Aの先端を上方に向けた状態で配置され、ハンドル部材41の外面41bが縦枠カバー26の側面26aと面一となるように縦枠カバー26から露出した状態で、縦枠カバー26の内側に収納されている。
【0068】
ハンドル部材41は、操作初期位置Q0において回転中心41aを中心にして把持部41Aを下向きに回動させることで手動により押し出し位置Q2となるように操作可能に設けられている。
把持部41Aの内面41cには、後述する押出し片48が当接される被当接面41dが形成されている。
【0069】
ハンドル部材41の基端部41Bには、縦枠カバー26に設けられる凹溝部46に対して回転中心41aを中心にして回転可能に支持される減速機(図示省略)付きの回転支持部44が設けられている。
【0070】
凹溝部46には、ハンドル部材41の回転支持部44よりも先端側の位置に接続されるばね部材45が設けられている。ばね部材45は、伸縮させない状態でハンドル部材41が収納位置Q1となるように設けられ、ハンドル部材41を収納位置Q1から操作初期位置Q0及び押出位置Q2に回動させたときにばねの付勢に抗して伸長する。
ハンドル部材41は、ばね部材45が伸長した状態でハンドル部材41の把持部41Aから手を放す、あるいは持ち手を緩めることで、ばね部材45の付勢により操作方向と反対側に向けて回動して収納位置Q1に戻る。ハンドル部材41の回転支持部44には減速機が内蔵されているので、ばね部材45による付勢によって戻されるハンドル部材41の回動速度が減速され、緩やかな速度によってハンドル部材41が収納位置Q1に戻される。
【0071】
凹溝部46は、収納位置Q1に位置するハンドル部材41の上端41eとの間に隙間46Aが形成されている。この隙間46Aには、凹溝部46の開口側から凹底側に向けて押圧可能なプッシュボタン47がばね471を介して設けられている。プッシュボタン47は、ばね471によって元の位置に復帰可能に設けられている。プッシュボタン47は、ハンドル部材41を押し込むための押出し片48を回転移動させることで、押出し片48の一端(押出し部48a)がハンドル部材41の内面41cに位置する被当接面41dを押圧してハンドル部材41を収納位置Q1から操作初期位置Q0に向けて押し出す。
【0072】
押出し片48は、収納位置Q1に位置するハンドル部材41の被当接面41dに対向する位置に配置されている。押出し片48は、押出し部48aと反対側の他端に基端部48bを有し、基端部48bを上側として押出し部48aを下側に向けた状態で、押出し部48aと基端部48bとの間の中間部分(回転軸48c)で屋内外方向X1を中心として回転可能に支持されている。
【0073】
プッシュボタン47には、押出し片48側(下側)に向けて突出する押込み片472が設けられている。押込み片472は、プッシュボタン47が押されたときに、押出し片48の基端部48bを凹溝部46の奥行き方向に向けて押し込む。基端部48bが押し込まれた押出し片48は、回転軸48cを中心にして回動し、押出し部48aが凹溝部46の開口側(すなわち、ハンドル部材41の被当接面41dに近接する方向)に押し出される。押出し片48の回動停止位置は、ハンドル部材41における操作初期位置Q0となる。
つまり、使用者がプッシュボタン47を押すことで、押出し片48が回動してハンドル部材41が収納位置Q1から操作初期位置Q0に移動することになる。なお、プッシュボタン47は、指を放すことでばね471の復元によって元の位置に復帰する。
【0074】
蹴出し部材40は、
図11に示すように、連結部43を介してハンドル部材41の屋外側に一体的に、かつハンドル部材41の回転中心41aと同軸に設けられている。すなわち、蹴出し部材40は、ハンドル部材41の回動とともに同じ回転方向に回動する。そのため、蹴出し部材40においても、ハンドル部材41と同様に、
図13及び
図14に示すように、収納位置Q1、操作初期位置Q0、及び押し出し位置Q2に位置することが可能となっている。蹴出し部材40の回転中心41aから蹴出し先端までの長さは、ハンドル部材41の回転中心41aからハンドル先端(上端41e)までの長さよりも短い形状をなしている。蹴出し部材40の先端部には、屋内外方向X1を回転中心として回転するローラー401が設けられている。
【0075】
蹴出し部材40は、
図14に示すように、収納位置Q1に位置した姿勢において、全閉状態P1の障子3の戸先框33の端部(戸先端3a)に対して閉方向に離間した位置に配置されている。蹴出し部材40は、ハンドル部材41が操作初期位置Q0に位置しているときに、ハンドル部材41とともに回動し、ローラー401が全閉状態P1の障子3の戸先框33に接触する位置となる。すなわち、ハンドル部材41が収納位置Q1のときに、蹴出し部材40は戸先框33に接触しない位置となる。このときの戸先端3aと蹴出し部材40のローラー401との間には、左右方向X2の隙間S1が設けられることになる。
さらに、蹴出し部材40は、操作初期位置Q0からハンドル部材41を回動操作することで、戸先框33の戸先端3aを押圧して開方向に押し出すようにハンドル部材41とともに回動するように構成されている。
【0076】
なお、駆動機構42は、押出し位置Q2で障子3が押し出された後のハンドル部材41を元の位置(収納位置Q1)に戻るように構成されている。
【0077】
なお、本実施形態では、蹴出し部材40は、操作初期位置Q0において回転当接部401が接する状態としているが、この操作初期位置Q0で離れていてもよい。要は、押出位置Q2のときに。蹴出し部材40によって障子3を開方向に押し出して、少なくとも障子3の戸先端3aが第1縦枠23の開口部2A側の端面(本実施形態では縦枠カバー26の側面26a)よりも開方向に離間するように位置して、障子3と第1縦枠23との間に人の指や手が入る適宜な隙間が設けられればよい。そのため、蹴出し部材40の長さ寸法も適宜設定すればよい。
【0078】
次に、本実施形態による片引き戸1において障子3を開けるときの動作と、片引き戸1の作用について説明する。
全閉状態P1の障子3を開く際には、
図12~
図14に示すように、先ず、押出し機構4のプッシュボタン47を押すと、押出し片48の基端部48bが凹溝部46の奥行き方向に向けて押し込まれ、押出し片48が回転軸48cを中心にして回動する。そして、ハンドル部材41は、押出し片48がその押出し部48aがハンドル部材41の被当接面41dを押圧することで、収納位置Q1から操作初期位置Q0となる。
そして、蹴出し部材40も、ハンドル部材41に連動するため、収納位置Q1からハンドル部材41の回動とともに同じ回転方向に回動して、操作初期位置Q0に移動する。このとき、操作初期位置Q0の蹴出し部材40は、ローラー401が全閉状態P1の障子3の戸先框33に接触する。
【0079】
次に、操作初期位置Q0のハンドル部材41の把持部41Aをもって、回転中心41aを中心にして把持部41Aを下向きに回動させることで押出位置Q2に移動させる。そして、蹴出し部材40は、ハンドル部材41の回動とともに、操作初期位置Q0から押し出し位置Q2に位置するように回動する。これにより、蹴出し部材40は、
図10に示すように、ローラー401が戸先框33の戸先端3aを押圧して障子3が開方向に押し出される。このように押し出された障子3は、戸先框33が開口部2Aに位置するので、さらに障子3を開けるときには、戸先框33と第1縦枠23との間に手を入れて障子3を移動させることができる。
【0080】
こうように構成された本実施形態の片引き戸1では、押出し機構4により
図9に示す全閉状態P1の障子3を
図10に示すように第1縦枠23側から第2縦枠24側に向けて押し出して開くことができる。この場合には、障子3が開く方向と同じ方向に押出し機構4で障子3が押し出されることから、押出し力を小さくすることができ、本実施形態のように手動によりハンドル部材41が操作される場合に使用者の負担を軽減することができる。
そのため、従来のように障子の戸先框等にハンドルを設ける必要がなく、ハンドルが戸先框に露出した状態で設けられることもないことから、障子3の見栄えが良好となり、意匠性が向上する。
しかも、本実施形態では、ハンドルがサッシの枠体に干渉することもないので、障子3の全開時において引き残しのない構成とすることができる。すなわち本実施形態のように建具が片引き戸1の場合には、障子3を全開にしたときにおいても、戸先框33が開口枠20の屋外側に隠れて框が見えない状態となることから、意匠性の向上を図ることができる。
【0081】
また、本実施形態では、全閉状態P1の障子3において、屋内側からハンドル部材41を操作することで、蹴出し部材40がハンドル部材41に連動して障子3の戸先框33側に押し出され、障子3を開く方向に押し出すことができる。この場合には、ハンドル部材41が障子3よりも屋内側に配置されているので、全閉状態P1の障子3に対して屋内側からハンドル部材41を操作して蹴出し部材40を押し出すことが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、ハンドル部材41と蹴出し部材40とが前述の回転中心41aと同軸に配置され、双方の部材40、41が同じ方向に回動するので、障子3を開ける際のハンドル部材の回動操作力をより小さくすることができ、使用者の負担を軽減することができる。これにより、ハンドル部材41と蹴出し部材40とにかかる力の方向を変える伝達機構が不要となり、簡単な機構により押出し機構4を構成することができる。
また、ハンドル部材41と蹴出し部材40の回動方向が左右方向X2を含む平面内であり、操作中のハンドル部材41が屋内外方向X1で屋内側に向けて突出することがないことから、見栄えが良好となる。
【0083】
また、本実施形態では、凹溝部46におけるハンドル部材41の上端41e(ハンドル先端)との間の隙間46Aを使用して、ハンドル部材41を縦枠カバー26の側面26a(第1縦枠23の障子3側を向く面)から引き出して操作することができる。そのため、ハンドル部材41を前記側面26aから枠体2の内側の開口部2Aに突出させることなく、その縦枠カバー26内に収納することができ、外観が良好となり、意匠性を向上させることができる。
また、本実施形態では、前記隙間46Aにはハンドル部材41を縦枠カバー26の側面26aから押し出す機構を備えたプッシュボタン47を配置することが可能であり、このプッシュボタン47を外観上、前記側面26aと面一に配置することができる。
【0084】
また、本実施形態では、ハンドル部材41の回転中心41aからの上端41eまでの長さを長くすることで、ハンドル部材41よりも短い蹴出し部材40を小さな回動操作力により押し出すことができ、使用者の負担を軽減することができる。
【0085】
また、本実施形態では、ハンドル部材41を回転可能に支持する回転支持部44にハンドル部材41の回動速度を減速する減速機が設けられているので、ハンドル部材41を操作した後に収納位置Q1に戻すときの回動速度を小さく抑えることができるため、収納時に発生する音を小さくでき、操作者の不快感を抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態では、
図14に示すように、全閉状態P1の障子3の戸先框33と蹴出し部材40のローラー401との間に隙間S1が設けられた状態となる。このような隙間S1を設けることで、蹴出し部材40が障子3の戸先框33に当接するまでの範囲で回動可能であり、蹴出し部材40に連結されたハンドル部材41を縦枠カバー26の側面26aから突出させた操作初期位置Q0とすることができる。
【0087】
また、
図12に示すように、本実施形態のように全閉状態P1の障子3の戸先框33の屋内側に開口枠20による框隠し部が設けられていても、障子3を開く際に押出し機構4により障子3を押し出して開くことができる。このように框隠し部を設けることで、屋内側から見て前述のように障子3の戸先框33が隠れた状態となるので、閉鎖した状態の障子3の意匠性を向上することができる。
【0088】
このように本実施形態の片引き戸1によれば、障子3側の構造に関わらずに障子3を開ける際の使用者の負担を軽減することができる。
【0089】
以上、本発明による建具の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0090】
例えば、本実施形態では、押出し機構として蹴出し部材40とハンドル部材41とを備えた構成としているが、これに限定されることはなく、他の構成とすることも可能である。要は、枠体2の一方の縦枠において、障子3を他方の縦枠側に向けて押し出す機構であればよいのである。
また、操作部も本実施形態のようなハンドル部材41であることに限らず、例えば回転式等、他の形状の構成の操作部であってもかまわないし、または手動操作のものであることに限らず、電動式、或いは手動/電動の切り替え式の操作部であってもよい。
【0091】
また、本実施形態では、建具として片引き戸1を適用した例を示しているが、片引き戸1に限定されることはなく、例えば引違窓などに適用することも可能である。なお、引違窓の場合には、一方の縦枠のみに押出し機構が設けられることに限らず、左右両側の縦枠のそれぞれに押出し機構を設ける構成であってもかまわない。
【0092】
さらに、本実施形態では、蹴出し部材40の回転中心がハンドル部材41の回転中心41aと同軸となるように連結され、双方が同じ方向に回動する構成としているが、これに限定されることはない。要は、蹴出し部材40のローラー401(蹴出し先端部)がハンドル部材41に連結されていて、障子3の戸先框33側に押し出される構成あればよいのである。
【0093】
さらにまた、本実施形態では、凹溝部46において、ハンドル部材41の上端41e(ハンドル先端)との間の隙間46Aにハンドル部材を操作するためのプッシュボタン47が配置された構成としているが、このプッシュボタン47を省略することも可能である。
例えば、隙間46Aのみを設けておき、この隙間46Aに指を掛けて収納位置Q1のハンドル部材41を操作初期位置Q0まで手前に引き出せる構成であってもかまわない。
【0094】
また、本実施形態では、ハンドル部材41が回転中心からの長さで、蹴出し部材40よりも長い構成としているが、同じ長さであってもよいし、短く設定されていてもよい。
さらに、本実施形態では、ハンドル部材41を回転可能に支持する回転支持部44にハンドル部材41の回動速度を減速する減速機が設けられた構成としているが、減速機付きであることに限定されることはない。
【0095】
また、本実施形態では、収納位置Q1に位置する蹴出し部材40のローラー401が全閉状態P1の障子3の戸先框33から離間した位置に配置されているが、このような隙間が設けられることに限定されることはない。
【0096】
さらに、本実施形態では、全閉状態P1の障子3における戸先框33が開口枠20の屋外側に位置して、屋内側から見て隠れた状態となる隠し框構造に適用されているが、このような隠し框構造でない建具に適用することも勿論可能である。
【0097】
また、上述した押出し機構4において、障子3には、錠が設けられ、操作部(ハンドル部材41)には、障子3の錠を解除したときに操作部のロックが解除されるロック機構が設けられた構成としてもよい。
このような構成とすることで、障子3が開錠してないときには、操作部も障子3の錠と連動してロック機構によりロックされた状態となるので、操作部を操作して押出し機構4を動かすことができない。そのため、障子3の施錠中に、操作部を無理やりに操作することを防ぐことができ、操作部や押出し機構4の破損を防止することができる。
【0098】
さらに、上述した実施形態では、復帰装置としてばね部材45を使用してハンドル部材41を元の収納位置Q1に戻るように構成されているが、ばね部材45であることに限定されることはなく、例えば、ばね部材45に代えて、ハンドル部材41にワイヤ巻取り装置のワイヤの先端が連結された構成の復帰装置を採用することも可能である。
【0099】
具体的には、ハンドル部材41の回転支持部44と同軸に減速機付きのワイヤ巻取り装置が設けられ、このワイヤ巻取り装置にはワイヤが巻き取られる方向に張力がかかった状態で巻き付けられている。このワイヤの先端がハンドル部材41の一部に固定されている。ハンドル部材41を操作して回動させるとワイヤが張力に抗して引き出される。ハンドル部材41を操作して蹴出し部材40を押し出して障子3を開けた後に、回動操作中のハンドル部材41の回動を止めて、ハンドル部材41から手を放す、あるいは持ち手を緩めると、ハンドル部材41はワイヤ441の張力により巻き取られ、ハンドル部材41が収納位置Q1に向けて移動し、ハンドル部材41を第1縦枠23内に自動的に収納させることができる。このとき、ワイヤ巻取り装置には減速機が内蔵されているので、巻き取り速度を遅くすることができる。
【0100】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 片引き戸(建具)
2 枠体
2A 開口部
3 障子
3a 戸先端
4 押出し機構
20 開口枠
21 上枠
22 下枠
23 第1縦枠
24 第2縦枠
31 上框
32 下框
33 戸先框
34 召合框
40 蹴出し部材
41 ハンドル部材
41a 回転中心
41A 把持部
41B 基端部
42 駆動機構
43 連結部
45 ばね部材(復帰装置)
46 凹溝部
46A 隙間
47 プッシュボタン
48 押出し片
401 ローラー(蹴出し先端部)
P1 全閉状態
P2 全開状態
Q0 操作初期位置
Q1 収納位置
Q2 押出位置
S1 隙間
X1 屋内外方向
X2 左右方向
X3 上下方向
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みして構成される枠体と、前記枠体内で開閉可能に配置される障子と、を備えた建具であって、
前記枠体を構成する少なくとも一つの枠には、前記障子を前記一つの枠から離反する方向に押し出す押出し機構が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記押出し機構は、
前記一つの枠における前記障子と対向する面に配置され、全閉状態の前記障子の戸先框を開方向に押し出す蹴出し部材と、
前記蹴出し部材に連動可能に連結され、屋内外方向で前記障子よりも屋内側に配置された操作部と、
を備えている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記障子には、錠が設けられ、
前記操作部には、前記障子の錠を解除したときに前記操作部のロックが解除されるロック機構が設けられている請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記蹴出し部材は、一端が屋内外方向を回転中心として回動し、
前記操作部は、一端が屋内外方向を回転中心とするハンドル部材であり、前記蹴出し部材と同じ方向に回動する請求項2又は3に記載の建具。
【請求項5】
前記一つの枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、
前記凹溝部において、前記一つの枠と前記ハンドル部材のハンドル先端との間には、隙間が形成されている請求項4に記載の建具。
【請求項6】
前記一つの枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、
前記凹溝部には、前記ハンドル部材を前記一つの枠の外方に押し出すためのプッシュボタンが設けられている請求項4に記載の建具。
【請求項7】
前記障子には、錠が設けられ、
前記プッシュボタンには、前記障子の錠を解除したときに前記プッシュボタンのロックが解除されるロック機構が設けられている請求項6に記載の建具。
【請求項8】
前記ハンドル部材における前記回転中心からハンドル先端までの長さは、前記蹴出し部材における前記回転中心から蹴出し先端までの長さよりも長い請求項4乃至7のいずれか1項に記載の建具。
【請求項9】
前記ハンドル部材には、該ハンドル部材の回動速度を減速する減速機が設けられている請求項4乃至8のいずれか1項に記載の建具。
【請求項10】
前記ハンドル部材には、前記障子を押し出す際に回動させた位置から元の収納位置に戻す復帰装置が設けられた請求項4乃至9のいずれか1項に記載の建具。
【請求項11】
収納位置に位置する前記蹴出し部材の蹴出し先端部は、全閉状態の前記障子の戸先框から離間した位置に配置されている請求項4乃至10のいずれか1項に記載の建具。
【請求項12】
全閉状態の前記障子における戸先框は、屋内側から見て隠れた状態となる隠し框構造である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の建具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、上枠、下枠および左右の縦枠を枠組みして構成される枠体と、前記枠体内で開閉可能に配置される障子と、を備えた建具であって、
前記枠体を構成する少なくとも一つの枠には、前記障子を前記一つの枠から離反する方向に押し出す押出し機構が設けられていることを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明によれば、押出し機構により全閉状態の障子を一つの枠側から離反する方向に向けて押し出して開くことができる。この場合には、障子が開く方向と同じ方向に押出し機構で障子が押し出されることから、押出し力を小さくすることができ、手動により押出し機構が操作される場合に使用者の負担を軽減することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本発明に係る建具は、前記押出し機構は、前記一つの枠における前記障子と対向する面に配置され、全閉状態の前記障子の戸先框を開方向に押し出す蹴出し部材と、前記蹴出し部材に連動可能に連結され、屋内外方向で前記障子よりも屋内側に配置された操作部と、を備えていることと特徴としてもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明に係る建具は、前記一つの枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、前記凹溝部において、前記一つの枠と前記ハンドル部材のハンドル先端との間には、隙間が形成されていることが好ましい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
この場合には、凹溝部において一つの枠とハンドル部材のハンドル先端との間の隙間を使用して、ハンドル部材を一つの枠の障子側を向く面から引き出して操作することができる。そのため、ハンドル部材を一つの枠の前記面から一つの枠の内側の開口部に突出させることなく、その一つの枠内に収納することができ、外観が良好となり、意匠性を向上させることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、本発明に係る建具は、前記一つの枠の前記障子側を向く面に開口し、前記ハンドル部材が配置される凹溝部が形成され、前記凹溝部には、前記ハンドル部材を前記一つの枠の外方に押し出すためのプッシュボタンが設けられていることを特徴としてもよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
この場合には、プッシュボタンを押すことでハンドル部材を一つの枠の障子側を向く面から引き出すことができる。そのため、ハンドル部材を一つの枠の前記面から枠体の内側の開口部に突出させることなく、その一つの枠内に収納することができ、外観が良好となり、意匠性を向上させることができる。また、プッシュボタンを外観上、一つの枠の前記面と面一に配置することで、さらに意匠性の向上を図ることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
この場合には、ハンドル部材を操作することにより回動させて蹴出し部材を押し出して障子を開けた後に、ハンドル部材から使用者が手を放すと、復帰装置によってハンドル部材が元の収納位置に戻り、一つの枠内に自動的に収納させることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
この場合には、全閉状態の障子の戸先框と蹴出し部材の蹴出し先端部との間に隙間が設けられた状態となる。このような隙間を設けることで、蹴出し部材が障子の戸先框に当接するまでの範囲で回動可能であり、蹴出し部材に連結されたハンドル部材を一つの枠の前記面から突出させた操作初期位置とすることができる。