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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010934
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】回転電機のロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20220107BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H02K1/27 501H
H02K1/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111737
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】浅井 満季
(72)【発明者】
【氏名】上辻 清
(72)【発明者】
【氏名】門脇 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智則
(72)【発明者】
【氏名】清水 謙太
(72)【発明者】
【氏名】宮重 敬太
(72)【発明者】
【氏名】菊池 駿介
(72)【発明者】
【氏名】野口 敏彦
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA01
5H601AA29
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD42
5H601DD47
5H601EE18
5H601JJ10
5H601KK17
5H622AA03
5H622CA01
5H622CA07
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】強度の低下を抑制しつつ筒部材の渦電流を抑制できる回転電機のロータを提供すること。
【解決手段】ロータ15は、金属製の筒部材16と、筒部材16の内周面16aに固定された永久磁石17と、筒部材16及び永久磁石17と一体回転可能とした第1軸部材18及び第2軸部材19と、を備えている。筒部材16の内周面16aにおいて、永久磁石17が固定されている領域R1には、筒部材16の周方向に延びる第1溝31が形成されている。筒部材16の外周面16bには、筒部材16の径方向において第1溝31と重なる位置に延びる第2溝32が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筒部材と、
前記筒部材の内周面に固定された磁性体と、
前記筒部材及び前記磁性体と一体回転可能とした回転軸と、を備え、
前記筒部材の内周面において、少なくとも前記磁性体が固定されている領域には、前記筒部材の周方向に延びる第1溝が形成され、
前記筒部材の外周面には、前記筒部材の軸線方向に直交する方向において、前記第1溝と重なる位置に延びる第2溝が形成されていることを特徴とする回転電機のロータ。
【請求項2】
前記回転軸は、前記筒部材の両端部の内側に固定され、且つ前記磁性体を挟み込むように配置される第1軸部材及び第2軸部材を有することを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【請求項3】
第1溝及び前記第2溝は、前記筒部材の軸線を回転中心とする前記周方向に環状をなすように延びることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転電機のロータ。
【請求項4】
金属製の筒部材と、
前記筒部材の内周面に固定された磁性体と、
前記筒部材及び前記磁性体と一体回転可能とした回転軸と、を備え、
前記筒部材の内周面において、少なくとも前記磁性体が固定される領域には、前記筒部材の周方向に延びる溝が形成され、
前記筒部材の外周面は、円筒面をなしていることを特徴とする回転電機のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のロータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される回転電機のロータが知られている。
上記のロータは、金属製の筒部材と、筒部材の内周面に固定された磁性体と、筒部材及び磁性体と一体回転可能な回転軸と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-70786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、磁性体から発生する磁束が筒部材を通過すると、筒部材に渦電流が流れる。筒部材に渦電流が流れると、渦電流損が発生する。筒部材の渦電流損を少なくするために、筒部材を軸線方向に分割することが考えられるが、筒部材を分割すると筒部材の強度が低下する。
【0005】
本発明の目的は、強度の低下を抑制しつつ筒部材の渦電流を抑制できる回転電機のロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する回転電機のロータは、金属製の筒部材と、前記筒部材の内周面に固定された磁性体と、前記筒部材及び前記磁性体と一体回転可能とした回転軸と、を備え、前記筒部材の内周面において、少なくとも前記磁性体が固定されている領域には、前記筒部材の周方向に延びる第1溝が形成され、前記筒部材の外周面には、前記筒部材の軸線方向に直交する方向において、前記第1溝と重なる位置に延びる第2溝が形成されている。
【0007】
これによれば、筒部材には、第1溝及び第2溝が形成されることにより厚さが薄くなる部分が形成される。すなわち、筒部材を軸線方向に直交する方向で切断したときの断面積が小さくなる部分が形成される。筒部材は、断面積が小さくなる部分において電気抵抗が大きくなるため、断面積が小さくなる部分において渦電流が流れ難くなる。また、筒部材を軸線方向に分割する場合と比較すると、筒部材の強度の低下を抑制できる。したがって、筒部材の強度の低下を抑制しつつ筒部材に発生する渦電流を抑制できる。
【0008】
上記の回転電機のロータにおいて、前記回転軸は、前記筒部材の両端部の内側に固定され、且つ前記磁性体を挟み込むように配置される第1軸部材及び第2軸部材を有するとよい。
【0009】
これによれば、磁性体は第1軸部材と第2軸部材とに挟み込まれている。そのため、回転軸が磁性体を貫通している場合と比較して、磁性体に応力が作用し難くなる。
上記の回転電機のロータにおいて、第1溝及び前記第2溝は、前記筒部材の軸線を回転中心とする前記周方向に環状をなすように延びるとよい。
【0010】
これによれば、筒部材の軸線方向において渦電流がより流れ難くなる。したがって、筒部材に発生する渦電流をより抑制できる。
上記課題を解決する回転電機ロータは、金属製の筒部材と、前記筒部材の内周面に固定された磁性体と、前記筒部材及び前記磁性体と一体回転可能とした回転軸と、を備え、前記筒部材の内周面において、少なくとも前記磁性体が固定される領域には、前記筒部材の周方向に延びる溝が形成され、前記筒部材の外周面は、円筒面をなしている。
【0011】
これによれば、筒部材には、溝が形成されることにより厚さが薄くなる部分が形成される。すなわち、筒部材を軸線方向に直交する方向で切断したときの断面積が小さくなる部分が形成される。筒部材は、断面積が小さくなる部分において電気抵抗が大きくなるため、断面積が小さくなる部分において渦電流が流れ難くなる。また、筒部材を軸線方向に分割する場合と比較すると、筒部材の強度の低下を抑制できる。したがって、筒部材の強度の低下を抑制しつつ筒部材に発生する渦電流を抑制できる。
【0012】
また、筒部材の軸線方向に直交する方向で筒部材を切断したときの断面積を小さくする手法として、筒部材の外周面にのみ溝を形成することが挙げられる。しかし、溝が深いほど、ロータが回転したときの空気抵抗による風損が大きくなる。
【0013】
その点、これによれば、筒部材の外周面は、円筒面をなしている。そのため、筒部材の軸線方向に直交する方向で筒部材を切断したときの断面積を小さくしつつ、ロータの風損が抑えられる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、強度の低下を抑制しつつ筒部材の渦電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】回転電機の概略断面図。
図2】筒部材の斜視図。
図3】本実施形態のロータの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、回転電機のロータを具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。なお、説明の便宜上、回転電機について説明し、その後、回転電機のロータについて説明する。
【0017】
図1に示すように、回転電機10は、筒状のハウジング11に収容されている。ハウジング11は、第1ハウジング構成体12と、第1ハウジング構成体12に連結される板状の第2ハウジング構成体13と、を有している。第1ハウジング構成体12及び第2ハウジング構成体13は、金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。
【0018】
第1ハウジング構成体12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外縁から第2ハウジング構成体13に向けて筒状に延びる周壁12bと、を有している。第2ハウジング構成体13は、周壁12bにおける底壁12aとは反対側に位置する開口を閉塞した状態で第1ハウジング構成体12に連結されている。
【0019】
第1ハウジング構成体12の底壁12aの内面には、円筒状のボス部12cが突設されている。ボス部12cの軸線は、第1ハウジング構成体12の軸線と一致している。また、第2ハウジング構成体13の内面には、円筒状のボス部13cが突設されている。ボス部13cは、第1ハウジング構成体12の軸線と一致している。よって、両ボス部12c,13cの軸線は互いに一致している。
【0020】
回転電機10は、ステータ14と、ロータ15と、を備えている。ステータ14は、第1ハウジング構成体12の周壁12bの内周面に固定されている円筒状のステータコア14aと、ステータコア14aに巻回されるコイル14bと、を有している。
【0021】
ロータ15は、金属製の筒部材16と、磁性体である永久磁石17と、回転軸としての第1軸部材18及び回転軸としての第2軸部材19と、を備えている。筒部材16は、軸線が直線状に延びる円筒状である。筒部材16は、チタン、ニッケル合金、及びステンレス鋼といった非磁性の金属により構成されている。
【0022】
永久磁石17は、中実円柱状である。永久磁石17は、径方向に着磁されている。永久磁石17は、筒部材16の内側に圧入されることにより筒部材16の内周面16aに固定されている。永久磁石17の外周面17aは、筒部材16の内周面16aに押し付けられている。永久磁石17の軸線は、筒部材16の軸線と一致している。永久磁石17の軸線方向の長さは、筒部材16の軸線方向の長さよりも短い。
【0023】
第1軸部材18及び第2軸部材19は、筒部材16の軸線方向の両端部の内側に設けられている。
第1軸部材18は、第1圧入部18a、第1フランジ部18b、及び第1軸部18cを有している。第1圧入部18aは、円柱状をなしている。第1圧入部18aは、筒部材16の軸線方向の第1端部16cの内側に圧入されている。よって、第1軸部材18は、筒部材16と永久磁石17と一体回転可能である。第1圧入部18aは、第1端部16cの内部において、永久磁石17の軸線方向の第1端面に接触している。
【0024】
第1フランジ部18bは、第1圧入部18aに連続するとともに第1圧入部18aよりも外径が大きい円環状をなしている。第1フランジ部18bの軸線は、第1圧入部18aの軸線と一致している。第1フランジ部18bは、筒部材16の軸線方向の第1端部16cに接触している。第1軸部18cは、円柱状をなしている。第1軸部18cの軸線は、第1圧入部18aの軸線及び第1フランジ部18bの軸線と一致している。第1軸部18cは、第1フランジ部18bにおける第1圧入部18aとは反対側に位置する端部に連続している。第1軸部18cの外径は、第1圧入部18aの外径と同じである。
【0025】
第2軸部材19は、第2圧入部19a、第2フランジ部19b、及び第2軸部19cを有している。第2圧入部19aは、円柱状をなしている。第2圧入部19aは、筒部材16の軸線方向の第2端部16dの内側に圧入されている。よって、第2軸部材19は、筒部材16及び永久磁石17と一体回転可能である。第2圧入部19aは、第2端部16dの内部において、永久磁石17の軸線方向の第2端面に接触している。
【0026】
第2フランジ部19bは、第2圧入部19aに連続するとともに第2圧入部19aよりも外径が大きい円環状をなしている。第2フランジ部19bの軸線は、第2圧入部19aの軸線と一致している。第2フランジ部19bは、筒部材16の軸線方向の第2端部16dに接触している。第2軸部19cは、円柱状をなしている。第2軸部19cの軸線は、第2圧入部19aの軸線及び第2フランジ部19bの軸線と一致している。第2軸部19cは、第2フランジ部19bにおける第2圧入部19aとは反対側に位置する端部に連続している。第2軸部19cの外径は、第2圧入部19aの外径と同じである。
【0027】
第1軸部材18及び第2軸部材19は、第1軸部材18の軸線及び第2軸部材19の軸線が筒部材16の軸線に一致した状態で、筒部材16の軸線方向の両端部の内側に設けられている。したがって、筒部材16は、永久磁石17、第1軸部材18、及び第2軸部材19の同軸状態を担保する。また、永久磁石17の軸線方向の両端に第1圧入部18a及び第2圧入部19aそれぞれが接触しており、且つ筒部材16の軸線方向の両端部に第1フランジ部18b及び第2フランジ部19bが接触している。そのため、永久磁石17は、筒部材16の内周面16aにおいて、筒部材16の軸線方向への移動が規制されている。なお、筒部材16は、第1軸部材18と第2軸部材19とを直接的に保持しているため、第1軸部材18及び第2軸部材19が筒部材16の軸線に対して傾斜しないように保持できるだけの強度を有している。
【0028】
第1軸部18cは、ボス部13cの内側を通過するとともに第2ハウジング構成体13を貫通してハウジング11の外部に突出している。ボス部13cの内周面と第1軸部18cの外周面との間には、第1軸受21が設けられている。そして、第1軸部材18は、第1軸部18cが第1軸受21を介してボス部13cに支持されることによりハウジング11に回転可能に支持されている。
【0029】
第2軸部19cは、ボス部12cの内側に挿入されている。ボス部12cの内周面と第2軸部19cの外周面との間には、第2軸受22が設けられている。そして、第2軸部材19は、第2軸部19cが第2軸受22を介してボス部12cに支持されていることによりハウジング11に回転可能に支持されている。
【0030】
ロータ15は、図示しない駆動回路によって制御された電力がコイル14bに供給されると、永久磁石17が回転しようとする。そのため、永久磁石17が圧入されている筒部材16が永久磁石17と一体回転する。そして、筒部材16と第1軸部材18との圧入部分においてトルクが筒部材16から第1軸部材18に伝達されるとともに、筒部材16と第2軸部材19との圧入部分においてトルクが筒部材16から第2軸部材19に伝達され、ロータ15が回転する。筒部材16は、ロータ15の回転により遠心力を受ける永久磁石17の変形を抑制する。
【0031】
筒部材16の構成について詳細に説明する。
図2に示すように、筒部材16の内周面16aにおいて、永久磁石17の外周面17aが押し付けられている円弧面状の領域R1には、3つの第1溝31が形成されている。領域R1は、筒部材16の内周面16aにおいて、永久磁石17が固定されている領域である。各第1溝31は、筒部材16の軸線方向において、所定間隔で配置されている。なお、所定間隔は、筒部材16の内周面16aに永久磁石17を圧入したときに筒部材16に対して局所的な応力集中を生じさせないために設定された間隔であり、実験等により予め確認した上で設定されている。
【0032】
図3に示すように、筒部材16の外周面16bには、3つの第2溝32が形成されている。各第2溝32は、筒部材16の軸線方向において、所定間隔で配置されている。各第2溝32は、筒部材16の径方向において、永久磁石17の外周面17aが筒部材16の外周面16bに写し出される円弧面状の領域R2(図3の斜線で示す領域)に形成されている。各第2溝32は、筒部材16の軸線を回転中心とする周方向に環状をなすように連続的に延びている。各第2溝32は、平行に延びている。
【0033】
図2に示すように、筒部材16の内周面16aにおける領域R1と、筒部材16の外周面16bにおける領域R2とは、筒部材16の軸線方向において同じ位置に存在する。領域R2は、筒部材16の径方向において、領域R1と重なる領域である。
【0034】
各第1溝31は、筒部材16の径方向において、第2溝32と重なる位置に形成されている。各第1溝31は、筒部材16の軸線方向において、第2溝32と同じ位置に形成されている。各第1溝31は、第2溝32と同じ方向に延びている。すなわち、各第1溝31は、筒部材16の軸線を回転中心とする周方向に環状をなすように連続的に延びている。各第1溝31は、筒部材16の周方向の全周に延びている。各第1溝31は、平行に延びている。
【0035】
第1溝31は、筒部材16の軸線方向で切断したときの断面が、三角形状となるように形成されている。各第1溝31は、筒部材16の軸線方向において筒部材16の第1端部16cに向かうほど拡径される環状の第1斜面31aと、筒部材16の軸線方向において筒部材16の第2端部16dに向かうほど拡径される環状の第2斜面31bと、を有している。第1斜面31a及び第2斜面31bは、平面状をなしている。第1溝31の底部31cは、筒部材16の周方向の全周に延びる線状をなすように形成されている。
【0036】
第2溝32は、筒部材16の軸線方向で切断したときの断面が、三角形状となるように形成されている。各第2溝32は、筒部材16の軸線方向において筒部材16の第1端部16cに向かうほど縮径される環状の第3斜面32aと、筒部材16の軸線方向において筒部材16の第2端部16dに向かうほど縮径される環状の第4斜面32bと、を有している。第3斜面32a及び第4斜面32bは、平面状をなしている。第2溝32の底部32cは、筒部材16の周方向の全周に延びる線状をなすように形成されている。
【0037】
第1溝31の底部31cと第2溝32の底部32cとは、筒部材16の軸線方向において同じ位置に配置されている。第1斜面31aにおける筒部材16の第2端部16d寄りの縁部と、第3斜面32aにおける筒部材16の第2端部16d寄りの縁部とは、筒部材16の軸線方向において同じ位置に配置されている。第2斜面31bにおける筒部材16の第1端部16c寄りの縁部と、第4斜面32bにおける筒部材16の第1端部16c寄りの縁部とは、筒部材16の軸線方向において同じ位置に配置されている。すなわち、第1溝31における筒部材16の軸線方向での幅S1と、第2溝32における筒部材16の軸線方向での幅S2とが筒部材16の径方向において一致している。
【0038】
筒部材16には、第1溝31と第2溝32とが形成されることにより筒部材16の厚さが薄くなる括れ部40が形成されている。括れ部40は、筒部材16の周方向の全周に形成されている。
【0039】
括れ部40は、筒部材16の軸線方向において筒部材16の第1端部16cから筒部材16の第2端部16dに向かうほど徐々に厚さが薄くなり、第1溝31の底部31c及び第2溝32の底部32cの位置で最も厚さが薄くなる。括れ部40は、筒部材16の軸線方向において筒部材16の第2端部16dから筒部材16の第1端部16cに向かうほど徐々に厚さが薄くなり、第1溝31の底部31c及び第2溝32の底部32cの位置で最も厚さが薄くなる。筒部材16の径方向における断面積は、括れ部40の底部31c,32cの部分で最も小さくなっている。
【0040】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
(1)筒部材16には、第1溝31及び第2溝32が形成されることにより厚さが薄くなる括れ部40が形成される。すなわち、筒部材16を径方向で切断したときの断面積が小さくなる部分が形成される。筒部材16は、括れ部40において電気抵抗が大きくなるため、括れ部40において渦電流が流れ難くなる。また、筒部材16を軸線方向に分割する場合と比較すると、筒部材16の強度の低下を抑制できる。したがって、筒部材16の強度の低下を抑制しつつ筒部材16に発生する渦電流を抑制できる。
【0041】
(2)永久磁石17は、第1軸部材18と第2軸部材19とに挟み込まれている。そのため、回転軸が永久磁石17を貫通している場合と比較して、永久磁石17に応力が作用し難くなる。
【0042】
(3)第1溝31及び第2溝32は、筒部材16の軸線を回転中心とする周方向に環状をなすように延びている。そのため、筒部材16の軸線方向において渦電流がより流れ難くなる。したがって、筒部材16に発生する渦電流をより抑制できる。
【0043】
(4)筒部材16の径方向で筒部材16を切断したときの断面積を小さくする手法として、筒部材16に第2溝32のみを形成することが挙げられる。しかし、第2溝32が深いほど、ロータ15が回転したときの空気抵抗による風損が大きくなる。そのため、ロータ15を回転させるために回転電機10が使用する電力が多くなるため、消費電力が多くなる。
【0044】
その点、本実施形態では、第2溝32だけでなく、第2溝32と筒部材16の径方向で並ぶように第1溝31が形成されている。そのため、筒部材16の径方向で筒部材16を切断したときの断面積を小さくしつつ、筒部材16に第2溝32のみを形成する場合と比較すると、第2溝32を浅くすることができる。したがって、ロータ15が回転したときの風損が抑えられる。よって、回転電機10の消費電力を抑制できる。
【0045】
(5)括れ部40を形成することにより筒部材16に発生する渦電流を抑制できるため、筒部材16が発熱し難くなる。よって、筒部材16の熱に起因する永久磁石17の熱減磁を抑制できる。
【0046】
(6)第1溝31及び第2溝32は、筒部材16の軸線方向で切断したときの断面が、三角形状となるように形成されているため、筒部材16の厚さが薄くなる部分を極力減らすことができる。したがって、筒部材16の強度を維持し易くなる。
【0047】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 各第1溝31及び各第2溝32は、筒部材16の軸線を回転中心とする周方向に環状をなすように延びていたが、これに限らず、筒部材16の軸線に対して若干傾いていてもよい。また、筒部材16の軸線に対する第1溝31の傾きが、3つの第1溝31それぞれで異なっていてもよい。ただし、3つの第1溝31それぞれと筒部材16の径方向において並ぶ第2溝32は、3つの第1溝31それぞれと同じ方向に延びるように配置を変更する。
【0048】
○ 第1溝31及び第2溝32の数は、3つ未満であってもよいし、4つ以上であってもよい。第1溝31及び第2溝32の数は、適宜変更してもよく、筒部材16の強度を低下させない程度の数であればよい。また、筒部材16に流れる渦電流の抑制効果を大きくするためには、筒部材16の強度を維持できる程度に第1溝31及び第2溝32の数を多くするとよい。さらに、筒部材16の軸線方向において、複数の第1溝31の間隔、及び複数の第2溝32の間隔を狭くすることにより筒部材16を流れる渦電流のループを小さくすることができるため、筒部材16に流れる渦電流をより抑制できる。
【0049】
○ 第1溝31は、筒部材16の周方向に連続的に延びる螺旋状をなしていてもよい。そのため、第2溝32も同様に筒部材16の周方向に連続的に延びる螺旋状をなしていてもよい。第1溝31及び第2溝32は、筒部材16の周方向に延びており、且つ筒部材16の径方向において重なる位置に形成されていれば、形状は適宜変更してもよい。
【0050】
○ 本実施形態及び上記の変更例において、第1溝31及び第2溝32は、筒部材16の周方向に連続的に延びていなくてもよい。例えば、第1溝31及び第2溝32は、筒部材16の周方向に断続的に延びていてもよい。
【0051】
○ 本実施形態では、第1溝31の幅S1と第2溝32の幅S2とが筒部材16の径方向において一致していたが、第1溝31の幅S1と第2溝32の幅S2とが筒部材16の軸線方向において一部オーバーラップするように第1溝31及び第2溝32の位置を変更してもよい。すなわち、本変更例と本実施形態によれば、第1溝31と第2溝32とが筒部材16の軸線方向において同じ位置に配置されていることは、第1溝31の幅S1と第2溝32の幅S2との少なくとも一部が筒部材16の軸線方向においてオーバーラップすることである。このように変更しても、筒部材16の軸線方向において第1溝31と第2溝32とがオーバーラップしている部分において、筒部材16の断面積を小さくすることができる。よって、筒部材16の強度の低下を抑制しつつ筒部材16に発生する渦電流を抑制できる。
【0052】
○ 第1溝31は、筒部材16の軸線方向において、筒部材16の内周面16aの全域に形成されてもよい。同様に、第2溝32は、筒部材16の軸線方向において、筒部材16の外周面16bの全域に形成されていてもよい。すなわち、第1溝31は、少なくとも領域R1に形成されていればよく、第2溝32は、筒部材16の軸線方向において第1溝31と同じ位置に形成されていればよい。
【0053】
○ 第1溝31及び第2溝32を筒部材16の軸線方向で切断したときの断面は、三角形状に限らず、矩形状や円弧状をなしていてもよい。第1溝31及び第2溝32を筒部材16の軸線方向で切断したときの断面の形状は、適宜変更してもよい。
【0054】
○ 筒部材16は、第1溝31と第2溝32とを有していたが、これに限らない。例えば、筒部材16の外周面16bを円筒面に変更し、筒部材16の内周面において、少なくとも永久磁石17が固定される領域R1に溝としての第2溝32のみを形成してもよい。
【0055】
このように変更しても、筒部材16には、第2溝32が形成されることにより厚さが薄くなる部分が形成される。すなわち、筒部材16を軸線方向に直交する方向で切断したときの断面積が小さくなる部分が形成される。筒部材16は、断面積が小さくなる部分において電気抵抗が大きくなるため、断面積が小さくなる部分において渦電流が流れ難くなる。また、筒部材16を軸線方向に分割する場合と比較すると、筒部材16の強度の低下を抑制できる。したがって、筒部材16の強度の低下を抑制しつつ筒部材16に発生する渦電流を抑制できる。
【0056】
また、筒部材16の軸線方向に直交する方向で筒部材16を切断したときの断面積を小さくする手法として、筒部材16の外周面16bにのみ第1溝31を形成することが挙げられる。しかし、第1溝31が深いほど、ロータ15が回転したときの空気抵抗による風損が大きくなる。
【0057】
その点、本変更例では、筒部材16の外周面16bは、円筒面をなしている。そのため、筒部材16の軸線方向に直交する方向で筒部材16を切断したときの断面積を小さくしつつ、ロータ15の風損が抑えられる。
【0058】
○ 上記の変更例において、筒部材16の内周面16aに第2溝32が形成され、外周面16bが円筒面である場合においても、第2溝32は、筒部材16の周方向に連続的に延びる螺旋状であってもよいし、筒部材16の周方向において断続的に延びていてもよい。
【0059】
○ 永久磁石17は、筒部材16の内側に圧入されることで筒部材16の内周面16aに固定されていたが、例えば筒部材16の内周面16aに永久磁石17を隙間嵌めし、筒部材16の内周面16aと永久磁石17の外周面との間を接着剤等で埋めて固定してもよい。このように変更される場合、3つの第1溝31及び3つの第2溝32の配置の間隔は、所定間隔に限らず、適宜変更してもよい。
【0060】
○ 筒部材16は、磁性を有する金属で構成されていてもよい。
○ 磁性体として永久磁石17が採用されていたが、磁性体として電磁鋼板を積層した積層コアを採用してもよい。
【0061】
○ 回転軸として第1軸部材18及び第2軸部材19が採用されていたが、これに限らない。例えば、永久磁石17を貫通する1本の回転軸を採用してもよい。この場合においても筒部材16は、ロータ15の回転によって遠心力を受ける永久磁石17の変形を抑制するために使用される。
【0062】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下追記する。
(1)前記第1溝における前記筒部材の軸線方向の幅と、前記第2溝における前記筒部材の軸線方向の幅とが前記筒部材の軸線方向に直交する方向で一致していることを特徴とする請求項1に記載の回転電機のロータ。
【符号の説明】
【0063】
10…回転電機、15…ロータ、16…筒部材、16a…内周面、16b…外周面、17…永久磁石、18…第1軸部材、19…第2軸部材、31…第1溝、32…第2溝、R1…領域、S1…第1溝の幅、S2…第2溝の幅。
図1
図2
図3