IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立GEニュークリア・エナジー株式会社の特許一覧

特開2022-109356放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法
<>
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図1
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図2
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図3
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図4
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図5
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図6
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図7
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図8
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図9
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図10
  • 特開-放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109356
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/12 20060101AFI20220721BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G21F9/12 501J
G21F9/12 501A
G21F9/12 501K
C02F1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004610
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陽太
(72)【発明者】
【氏名】菅野 真貴
(72)【発明者】
【氏名】住谷 貴子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 利正
【テーマコード(参考)】
4D624
【Fターム(参考)】
4D624AA04
4D624AB10
4D624BC01
4D624CA01
4D624DA01
4D624DA02
(57)【要約】
【課題】放射性廃棄物量を削減可能な放射性廃液の処理方法を提供する。
【解決手段】放射性核種を吸着する吸着材を筐体に収容した吸着塔への放射性廃液の通水により、前記放射性核種を除去する第1除去工程S1と、前記放射性廃液の通水停止後、通水後の前記吸着塔である使用済み吸着塔に残存する使用済み吸着材の少なくとも一部と、新たな吸着材とを使用して、吸着材を収容した吸着塔を製造する吸着塔製造工程S2と、吸着塔製造工程S2で製造した前記吸着塔への前記放射性廃液の通水により、前記放射性核種を除去する第2除去工程S3と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性核種を吸着する吸着材を筐体に収容した吸着塔への放射性廃液の通水により、前記放射性核種を除去する第1除去工程と、
前記放射性廃液の通水停止後、通水後の前記吸着塔である使用済み吸着塔に残存する使用済み吸着材の少なくとも一部と、新たな吸着材とを使用して、吸着材を収容した吸着塔を製造する吸着塔製造工程と、
前記吸着塔製造工程で製造した前記吸着塔への前記放射性廃液の通水により、前記放射性核種を除去する第2除去工程と、を含む
ことを特徴とする放射性廃液の処理方法。
【請求項2】
前記吸着塔製造工程では、筒状の筐体の一方の側に前記使用済み吸着材を収容し、前記筐体の他方の側に前記新たな吸着材を収容することで、前記吸着塔が製造され、
前記第2除去工程では、前記一方の側から前記他方の側に前記放射性廃液が流れる
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項3】
前記吸着塔は、直列に接続された複数の単位吸着塔を含み、
前記吸着塔製造工程では、前記複数の単位吸着塔のうちの少なくとも1つの前記単位吸着塔に収容された前記使用済み吸着材を使用して、前記少なくとも1つの単位吸着塔よりも下流側の単位吸着塔が製造される
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの単位吸着塔は、最上流の前記単位吸着塔を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの単位吸着塔よりも下流側の前記単位吸着塔は、前記吸着塔に含まれる前記単位吸着塔の更に下流側に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項6】
前記吸着材は、前記筐体に出し入れ可能な、前記吸着塔での通水方向に複数配置されたカートリッジに収容される
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項7】
前記吸着塔製造工程では、前記使用済み吸着材のうちの前記放射性廃液の流入部よりも下流側の使用済み吸着材を少なくとも使用して、前記吸着塔が製造される
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項8】
前記吸着材は粒状であり、
前記吸着塔製造工程では、前記筐体の通水方向上流の開口を通じて前記使用済み吸着材内部の所望位置まで筒部材を入れ、前記筒部材の内部を流して前記所望位置の前記使用済み吸着材を前記開口側に移送することで、前記放射性廃液の流入部よりも下流側の前記使用済み吸着材が取り出される
ことを特徴とする請求項7に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項9】
前記吸着材は粒状であり、
前記吸着塔は、通水方向に垂直な方向に沿って前記筐体に形成された開口を通じて前記吸着材を取り出し可能な取り出し機構を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項10】
前記吸着塔製造工程では、前記使用済み吸着材のうち最も下流側に配置され、前記使用済み吸着材からの流出部に存在する前記使用済み吸着材を少なくとも使用して、前記吸着塔が製造される
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項11】
前記吸着塔製造工程では、前記使用済み吸着塔での運転条件に基づいて決定した通水方向位置の前記使用済み吸着材を使用して、前記吸着塔が製造される
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項12】
前記運転条件は、吸着材への前記放射性廃液の通水流量、前記放射性廃液に含まれる放射性核種、又は、前記放射性廃液中の前記放射性核種の濃度、のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項11に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項13】
前記吸着塔製造工程では、前記放射性廃液の通水試験によって得られた結果に基づいて決定した通水方向位置の前記使用済み吸着材を使用して、前記吸着塔が製造される
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
【請求項14】
放射性核種を吸着する吸着材を筐体に収容した吸着塔への放射性廃液の通水により生じた使用済み吸着材の少なくとも一部と、新たな吸着材とを使用して、吸着材を収容した吸着塔が製造される
ことを特徴とする放射性核種の吸着塔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着材を使用して放射性廃液を処理する設備では、その処理量が多い場合、頻繁に吸着材を収容した吸着塔が交換される。吸着塔の交換技術について、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1の要約書には「n個の吸着塔10-1~10-5を上流側から順に1~n番目まで直列に配置して、放射性セシウムを含有する放射性セシウム含有水を1~n番目の吸着塔10-1~10-5に順に通水する工程と、1番目の吸着塔10-1における放射性セシウム含有水の入口側及び出口側の表面の放射線量率を測定し、それぞれの放射線量率の経時変化が一定となった時に、1番目の吸着塔10-1を新しい吸着塔に交換して、k番目の吸着塔を(k-1)番目とし、かつ新しい吸着塔をn番目となるように直列に配置して、放射性セシウム含有水を1~n番目の吸着塔に順に通水する工程とを備え、吸着塔の表面の放射線量率の測定では、γ線検出部をγ線減衰用材料で覆った状態で、γ線を測定する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-186034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、吸着塔全体が交換される。このため、吸着塔に収容された全ての吸着材が放射性廃棄物として廃棄され、放射性廃棄物が大量に発生する。
本開示が解決しようとする課題は、放射性廃棄物量を削減可能な放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る放射性廃液の処理方法は、放射性核種を吸着する吸着材を筐体に収容した吸着塔への放射性廃液の通水により、前記放射性核種を除去する第1除去工程と、前記放射性廃液の通水停止後、通水後の前記吸着塔である使用済み吸着塔に残存する使用済み吸着材の少なくとも一部と、新たな前記吸着材とを使用して、放射性核種を吸着する吸着材を収容した吸着塔を製造する吸着塔製造工程と、前記吸着塔製造工程で製造した前記吸着塔への前記放射性廃液の通水により、前記放射性核種を除去する第2除去工程と、を含むことを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、放射性廃棄物量を削減可能な放射性廃液の処理方法及び放射性核種の吸着塔の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の放射性廃液の処理方法を示すフローチャートである。
図2】第1除去工程を説明する図である。
図3】吸着塔製造工程を説明する図である。
図4】使用済み吸着材の通水方向位置に対するストロンチウム吸着量分布を示すグラフである。
図5】別の実施形態の吸着塔製造工程を説明する図である。
図6】更に別の実施形態の吸着塔製造工程を説明する図である。
図7】使用済み吸着塔から使用済み吸着材を取り出す方法を説明する図である。
図8】更に別の実施形態において使用済み吸着塔から使用済み吸着材を取り出す方法を説明する図である。
図9】更に別の実施形態の吸着塔製造工程を説明する図である。
図10】第2除去工程を説明する図である。
図11】第2実施形態の放射性廃液の処理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本発明は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本発明の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
【0009】
図1は、第1実施形態の放射性廃液の処理方法(以下単に処理方法ということがある)を示すフローチャートである。処理方法は、第1除去工程S1と、吸着塔製造工程S2と、第2除去工程S3とを含む。
【0010】
図2は、第1除去工程を説明する図である。放射性核種を吸着する吸着材22を筐体20に収容した吸着塔35への放射性廃液L1の通水により、放射性核種を除去する工程である。放射性核種の吸着により、被処理液L2が得られる。放射性廃液L1は、例えば筒状の筐体20の一方側(通水方向上流側)の端部に形成された開口24を通じて供給される。被処理液L2は、筐体20の他方側(通水方向下流側)の端部に形成された開口25を通じて排出される。放射性廃液L1の通水停止により、使用済み吸着材21を収容した使用済み吸着塔30が得られる。使用済み吸着材21は、放射性核種の吸着の有無に関わらず、放射性廃液L1に接触した吸着材22のことであり、通常はスラリー状になったものである。ただし、通常は、使用済み吸着材21は放射性核種を含む。
【0011】
放射性核種は、例えばSr-90であるが、これに限定されず、セシウム、アンチモン、コバルト等の放射性核種でもよい。吸着材22は、所望の放射性核種を吸着できるものであれば任意であり、例えば層状無機化合物を使用できる。吸着材の形状も任意であるが、例えば粒状であり、放射性廃液との接触によりスラリーに変化するものを使用できる。なお、図示の例では、吸着塔35は、新たな吸着材22である未使用の吸着材22のみを収容するが、詳細は後記するが、例えば使用済み吸着材21を新たな吸着材22と併用した吸着塔35を用いて、第1除去工程S1(図1)が行われてもよい。
【0012】
筐体20に流入した放射性廃液L1は、吸着材22の最も上流側である流入部23に最初に接触し、吸着材22の内部を流れる。これにより、放射性核種が吸着材22に吸着される。被処理液L2は、吸着材22(使用済み吸着材21)の最も下流側であり最後に接触する流出部26を通じて吸着材22から排出されることで、吸着材22との接触が完了する。
【0013】
図3は、吸着塔製造工程S2を説明する図である。吸着塔製造工程S2は、通水後の吸着塔35(図2)である使用済み吸着塔30に残存する使用済み吸着材21の少なくとも一部と、新たな吸着材22とを使用して、吸着材27を収容した吸着塔31を製造(再利用)する工程である。吸着材27は、使用済み吸着材21及び新たな吸着材22を含む。
【0014】
吸着塔製造工程S2は、本開示を別の視点でとらえれば、放射性核種の吸着塔31の製造方法(以下適宜単に製造方法という)に含まれる工程である。製造方法は、放射性核種を吸着する吸着材22(図2)を筐体20に収容した吸着塔35(図2)への放射性廃液の通水により生じた使用済み吸着材21の少なくとも一部と、新たな吸着材22とを使用して、吸着材27を収容した吸着塔31が製造される方法である。従って、本明細書で説明する処理方法への適用事項は、製造方法に対しても同様に適用できる。
【0015】
吸着塔製造工程S2では、例えば、使用済み吸着材21のうちの放射性廃液の流入部23よりも下流側の使用済み吸着材21を少なくとも使用して、吸着塔31が製造される。流入部23よりも下流側の使用済み吸着材21とは、放射性廃液L1(図2)に最初に接触する使用済み吸着材21は含まないという意味である。流入部23から下流方向に放射性核種の吸着量が減少するため、下流側の使用済み吸着材21を使用することで、再利用によって放射性廃棄物量を削減できるとともに、再利用した吸着塔31での吸着能力を高くできる。
【0016】
吸着塔製造工程S2では、使用済み吸着材21のうち最も下流側に配置され、使用済み吸着材21からの流出部26に存在する使用済み吸着材21を少なくとも使用して、吸着塔31が製造される。これにより、使用済み吸着材21のうち、残存吸着能力が最も大きな流出部26の使用済み吸着材21を再利用することで、放射性廃棄物量を削減できるとともに、再利用した吸着塔31での吸着能力を高くできる。図示の例では、使用済み吸着材21を通水方向(高さ方向)に二分割し、流入部23よりも下流側、かつ、流出部26を含む下流側(下側)の使用済み吸着材21が使用される。
【0017】
図4は、使用済み吸着材21(図2)の通水方向位置に対するストロンチウム吸着量分布を示すグラフである。横軸は、ストロンチウムの脱着が平衡状態のストロンチウムの吸着量であり、最大量を100としたときの相対比で示す。縦軸は、上記図2に示すように上下方向に配置された使用済み吸着塔30において、使用済み吸着材21の最下端位置(図2の流出部26に相当)を0とし最上端位置(図2の流入部23に相当)を100とした場合の相対的な高さ方向位置(通水方向位置)を示す。
【0018】
グラフGに示すように、縦軸の値が最上端位置である100から半分の50程度まで、横軸の吸着量は90~100%である。しかし、縦軸の値が50程度から下方に向かって吸着量は指数関数的に減り、最下端位置での吸着量は40~50%程度である。グラフGよりも左側の領域Aではストロンチウムは吸着しているが、右側の領域Bでは、ストロンチウムの吸着能力が残存している。そこで、上記の図3に示す例では、通水方向(高さ方向)に例えば2分割し、残存する吸着能力が多い下側の使用済み吸着材21が再利用される。
【0019】
なお、詳細は後記するが、吸着中の運転条件によってグラフGの形状等は異なるため、使用済み吸着材21の最上端位置(図2の流入部23)よりもわずかにでも下方であれば、吸着能力が残っている可能性がある。この場合には、図2の形態に限定されず、上記のように、流入部23よりも下流側の任意の位置における使用済み吸着材21が使用されればよい。
【0020】
図4及び上記の図3に示すように、吸着塔製造工程S2では、放射性廃液の通水試験によって得られた結果(例えば図4に示すグラフ)に基づいて決定した通水方向位置(例えば図3のように下半分)の使用済み吸着材21を使用して、吸着塔31が製造される。このようにすることで、通水試験を実際に行うため、通水方向における残存吸着能力の評価精度を向上できる。
【0021】
製造する吸着塔31に使用される使用済み吸着材21は、使用済み吸着塔30で吸着能力が残っている使用済み吸着材21であり、具体的には、図4に示す例では、例えば通水方向位置が0~62.5の使用済み吸着材21の少なくとも一部である。吸着能力が残っている使用済み吸着材21の中でも、残存吸着能力が少ない使用済み吸着材21を使用することで、使用済み吸着材21の使用効率を向上できる。一方で、残存吸着能力が多い使用済み吸着材21を使用することで、新たに製造される吸着塔31での吸着能力を増加できる。
【0022】
別の実施形態では、実際に通水試験を行わなくても、又は、実際に通水試験を行うとともに、吸着塔製造工程S2では、使用済み吸着塔30での運転条件に基づいて決定した通水方向位置の使用済み吸着材21を使用して、吸着塔31が製造される。運転条件によっては、上記のように、通水方向位置の残存吸着能力、即ち、図4でいえばグラフGの形状及び領域A,Bの大きさ、形状等が変わりうる、そこで、運転条件に基づいて使用済み吸着材21の通水方向位置における残存吸着能力を推測することで、残存吸着能力に応じて適切な位置の使用済み吸着材21を再利用できる。
【0023】
運転条件は、吸着材22(図2)への放射性廃液の通水流量、放射性廃液L1(図2)に含まれる放射性核種、又は、放射性廃液L1中の放射性核種の濃度、のうちの少なくとも1つを含む。これらの少なくとも1つの運転条件を含むことで、使用済み吸着材21の通水方向位置における残存吸着能力を決定できる。
【0024】
図5は、別の実施形態の吸着塔製造工程S2を説明する図である。使用済み吸着材21のうち、通水方向への50:50の2分割(図3)に代えて75:25に2分割して小さい側を使用した(即ち4分割した)こと以外は、図3の例と同じである。上記の図4に示すように、通水方向下流側(即ち図示の例では下方)に向かうほど残存吸着能力が大きいため、通水方向への分割数を多くし、最も下方側の使用済み吸着材21を使用することで、放射性廃棄物量の削減とともに、吸着塔31での吸着能力を増大できる。
【0025】
図6は、更に別の実施形態の吸着塔製造工程S2を説明する図である。使用済み吸着材21のうち、通水方向への50:50の2分割(図3)に代えて87.5:12.5に2分割して小さい側を使用した(即ち8分割した)こと以外は、図3の例と同じである。分割数を図3及び図5よりも多くしても、放射性廃棄物量の削減とともに、吸着塔31での吸着能力を増大できる。
【0026】
図7は、使用済み吸着塔30から使用済み吸着材21を取り出す方法を説明する図である。一例として、使用済み吸着材21を通水方向に4分割し、最も下側の使用済み吸着材21が使用される。吸着材27(使用済み吸着材21及び吸着材22を含む)は、筐体20に出し入れ可能な、吸着塔31、及び使用済み吸着塔30(使用済みの吸着塔、吸着塔の一例)での通水方向に複数配置されたカートリッジ28に収容される。カートリッジ28に収容されることで、使用済み吸着材21の取り出し、及び、吸着材27の吸着塔31への配置を容易に行うことができる。
【0027】
使用済み吸着塔30及び吸着塔31は、それぞれ、通水方向に例えば4つのカートリッジ28を備える。使用済み吸着塔30及び吸着塔31を構成する各筐体20には、例えばカートリッジ28を差し込むための段(不図示)を備え、対応する高さ位置の段にカートリッジ28が差し込まれる。このような段が備えられない場合、例えば、新たな吸着材22を収容した3つのカートリッジ28を筐体20に収容後、使用済み吸着材21を収容したカートリッジ28をそれらの上に載置できる。
【0028】
図示の例では、最も下側のカートリッジ28が使用済み吸着塔30から抜き出され、吸着塔31に配置される。カートリッジ28は、取り出した後、適宜洗浄により異物(クラッド等)及び使用済み吸着材21の粉砕物を除去した後に配置される。また、使用しなかった使用済み吸着材21を含む残り3つのカートリッジ28は、例えば放射性廃棄物として処分されたり、接触された放射性廃液よりも放射性核種が高濃度の放射性廃液(不図示)の処理のために使用されたりする。
【0029】
図8は、更に別の実施形態において使用済み吸着塔30から使用済み吸着材21を取り出す方法を説明する図である。使用済み吸着材21(使用済みの吸着材、吸着材の一例)、及び吸着材22,27は粒状であり、吸着塔製造工程S2(図1)では、筐体20の通水方向上流の開口24を通じて使用済み吸着材21内部の所望位置まで筒部材41を入れ、筒部材41の内部を流して所望位置の使用済み吸着材21を開口24側に移送することで、放射性廃液L1(図2)の流入部23よりも下流側の使用済み吸着材21が取り出される。このようにすることで、流入部23よりも下流側に配置された使用済み吸着材21のうち、所望位置に配置された使用済み吸着材21を取り出すことができる。取り出した使用済み吸着材21は、回収容器50に入れられる。
【0030】
開口24は、図示の例では、放射性廃L1(図2)液の使用済み吸着塔30への流入口を兼ねるが、使用済み吸着塔30は内部に筒部材41に入れるための開口(不図示)を別途備えてもよい。また、筒部材41を用いた移送の具体的形態は、特に制限されないが、例えばスラリー移送方式、吸引方式、圧縮空気移送方式、エダクタ(Eductor)方式等を適用できる。
【0031】
図9は、更に別の実施形態の吸着塔製造工程S2(図1)を説明する図である。上記の各実施形態では、使用済み吸着材21は、取り出した筐体20とは異なる筐体20に収容することで、吸着塔31が製造された。しかし、図9の実施形態では、取り出した筐体20と同じ筐体20に収容することで、吸着塔31が製造される。
【0032】
使用済み吸着材21、及び吸着材22,27はいずれも粒状であり、使用済み吸着塔30、及び吸着塔31は、それぞれ、例えば弁(不図示)を備えたノズル等により構成された取り出し機構29を備える。取り出し機構29は、通水方向に垂直な方向(図示の例では左右方向。筐体20の側方)に沿って筐体20に形成された開口201を通じて使用済み吸着材21を取り出し可能なものである。取り出し機構29の操作によって開口201を通じて使用済み吸着材21を取り出すことができるため、使用済み吸着材21を容易に取り出すことができる。
【0033】
取り出し機構29は、図示の例では、流出部26の使用済み吸着材21を取り出し可能に筐体20の下側に1つのみ配置される。ただし、取り出し機構29の配置場所はこの場所に限られず、通水方向の任意の場所に配置できる。また、取り出し機構29は、通水方向に複数配置でき、これにより、配置場所に存在する使用済み吸着材21を取り出すことができる。
【0034】
取り出し機構29により取り出した使用済み吸着材21は、図8の例と同様に、回収容器50に入れられる。一方で、図示の例では、使用する使用済み吸着材21を取り出した後の残りの使用済み吸着材21は、例えば図7の例と同様に処分、使用等される。残りの使用済み吸着材21の取り出しにより空いた筐体20は、適宜洗浄等される。そして、空いた筐体20に、例えば回収容器50に入れた使用済み吸着材21、及び、例えば収納容器51に入れた吸着材22を収容することで、吸着塔31が製造される。
【0035】
図2に戻って、吸着塔製造工程S2では、筒状の筐体20の一方の側に使用済み吸着材21を収容し、筐体20の他方の側に新たな吸着材22を収容することで、吸着塔31が製造される。図示の例では、筐体20は上下方向に配置され、使用済み吸着材21は上方に、新しい吸着材22は下方に配置される。筐体20の所望位置への吸着材22の収容方法は特に制限されず、例えば回収容器50(図8)内の使用済み吸着材21を用いて、例えばスラリー移送方式、吸引方式、圧縮空気移送方式、エダクタ方式等を使用できる。
【0036】
新たに収容する吸着材22の使用量は、何れも乾燥質量基準で、取り出した一部の使用済み吸着材21を除いた残部の使用済み吸着材21と等量であることが好ましい。図示の例では、使用済み吸着塔30に収容されていた使用済み吸着材21のうちの1/2を取り出したことから、吸着材22の使用量は、残りの使用済み吸着材21の質量と等しくすることが好ましい。
【0037】
図10は、第2除去工程S3(図1)を説明する図である。第2除去工程S3は、吸着塔製造工程S2(図1)で製造した吸着塔31への放射性廃液L1の通水により、放射性核種を除去する工程である。通水により再度使用済み吸着塔30が得られるため、使用済み吸着塔30に収容した使用済み吸着材21を使用して、上記の吸着塔製造工程S2(図1)を再度実行できる。
【0038】
第2除去工程S3では、使用済み吸着材21を配置した一方の側(図示の例では上側)から、新たな吸着材22を配置した他方の側(図示の例では下側)に放射性廃液L1が流れる。このように流すことで、放射性廃液L1を最初に使用済み吸着材21に接触でき、使用済み吸着材21の残存吸着能力を十分に利用でき、放射性廃棄物量を削減できる。
【0039】
下記表1は、新たな吸着材22のみを収容した従来の吸着塔35(図2。参考例)の寿命に対する、新たな吸着材22及び使用済み吸着材21を収容した吸着塔31(図3。実施例)の寿命比を示した表である。ここでいう寿命とは、使用済み吸着塔30(図2)から排出される放射性核種濃度が、劣化に伴って増加し、使用済み吸着塔30に供給する放射性核種濃度の1/2となるまでの通水量である。使用済み吸着材21の使用量を、通水方向で1/2(図3。実施例1)、1/4(図5。実施例2)、1/8(図6。実施例3)の3つに替えたこと以外は同条件で、図2に示す吸着塔31を製造して行った。
【0040】
【表1】
【0041】
表1において、寿命比が大きいほど、新たな吸着材22のみを使用して吸着した場合に近いといえる。使用量を1/2にした実施例1では、実施例2及び3(1/4及び1/8)よりも使用量が多いため、放射性廃棄物量を大きく削減できる。そして、放射性廃棄物量を大きく削減しながら、寿命比は、新品の吸着材22のみを用いた場合の寿命の6割程度を有していた。
【0042】
一方で、使用量を1/4及び1/8にした実施例2及び3では、放射性廃棄物量の削減量は少なくなるものの、再利用しない従来よりは放射性廃棄物量を削減できる。そして、使用量を1/4及び1/8にした場合、寿命比は、新品の吸着材22のみを用いた場合の寿命の8割を超えており、従来の吸着塔35と遜色ない吸着性能を有するといえる。これらの結果から、放射性廃棄物の削減量及び製造する吸着塔31での吸着性能をそれぞれ考慮して、使用済み吸着材21の使用量を決定すればよいことがわかる。
【0043】
下記表2は、放射性核種としてストロンチウムを用い、上記表1の試験と同様にして算出した寿命比を示す表である。表2は、新たな吸着材22のみを用いた場合(参考例)の寿命を1とし、乾燥質量比で1/2の吸着材22のみを使用した場合の寿命(比較例1)、及び、何れも乾燥質量比で比較例1と等量の吸着材22及び比較例1と等量の使用済み吸着材21を図3のように併用した場合の寿命(実施例4)を示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2においても、寿命比が大きいほど、新たな吸着材22のみを使用して吸着した場合に近いといえる。新たな吸着材22のみを使用した比較例1と比べて、比較例1と等量の吸着材22及び比較例1と等量の使用済み吸着材21を併用(実施例4)することで、寿命比が0.488から0.575に上昇した。従って、使用済み吸着材21を一部に使用して吸着塔31を製造することで寿命比を20%程度伸ばすことができ、放射性廃棄物量の削減に加えて、寿命比の向上効果も奏されることがわかった。これは、使用済み吸着材21を併用することで吸着材27(図3)の量を増やし、吸着材27への負荷を軽減できるためと考えられる。
【0046】
以上説明した処理方法及び製造方法によれば、使用済み吸着材21を使用して吸着塔31を製造するため、使用済み吸着材21の使用効率を高め、放射性廃棄物量を削減できる。このため、放射性廃棄物の保管コスト及び保管空間を削減できる。また、表2を参照して説明したように、寿命比も向上できる。このため、新たに使用される吸着材22の使用量を削減でき、放射性廃液L1(図2)の処理コストを削減できる。
【0047】
図11は、第2実施形態の放射性廃液L1の処理方法を説明する図である。第2実施形態では、メリーゴーラウンド方式で単位吸着塔331,341が交換される。第1除去工程S1(図1)での使用により使用済みになった吸着塔である使用済み吸着塔33は、直列に接続された複数の単位吸着塔331を含む。また、第2除去工程S3で使用される吸着塔34も、直列に接続された複数の単位吸着塔341を含む。
【0048】
単位吸着塔331,341を直列に接続することで、1つのみの単位吸着塔331,341(即ち、吸着塔31)を使用する場合と比べて、それぞれの単位吸着塔331,341の負荷を低減でき、吸着材22の使用効率を向上できる。例えば、1つの単位吸着塔331,341のみが備えられる場合、被処理液L2中の放射性核種濃度が放射性廃液L1中の放射性核種濃度の例えば1/2になった時点で吸着性能が低下したと判断され、使用済み吸着塔33及び吸着塔34の使用が停止される。しかし、複数の単位吸着塔331が備えられ、1つの場合と同様の時点で使用が停止される場合、それぞれの単位吸着塔331,341で放射性核種が吸着されるため、使用済み吸着塔33及び吸着塔34全体での吸着量を増やすことができる。これにより、使用済み吸着塔33及び吸着塔34での通水時間を長くでき、より多くの放射性廃液L1を処理できる。
【0049】
図示の例では、点線枠で囲った3つの単位吸着塔331を用いて、上記の第1除去工程S1(図1)が行われる。第1除去工程S1の時点では、点線枠外に配置された1つの単位吸着塔341は備えられていない。従って、放射性廃液L1は、3つの単位吸着塔331で順番に処理され、最終的に被処理液L2が得られる。
【0050】
通水停止後、吸着塔製造工程S2(図1)では、複数の単位吸着塔331のうちの少なくとも1つの単位吸着塔331に収容された使用済み吸着材21を使用して、少なくとも1つの単位吸着塔331よりも下流側の単位吸着塔341が製造される。このようにすることで、上流側の使用済み吸着材21の残存吸着能力を利用して下流側で放射性核種を吸着できるとともに、放射性廃棄物量を削減できる。
【0051】
使用済み吸着材21が取り出される少なくとも1つの単位吸着塔331は、破線で示す最上流の単位吸着塔331を含む。このようにすることで、残存吸着能力を有する使用済み吸着材21のうち、最上流の単位吸着塔331に収容された最も残存吸着能力が少ない使用済み吸着材21を使用できるため、使用済み吸着材21の使用効率を向上でき、放射性廃棄物量を削減できる。図示の例では、使用済み吸着材21が取り出される単位吸着塔331は、最上流の単位吸着塔331である。単位吸着塔341の製造後、破線で示すように、最上流の単位吸着塔331は除去される。
【0052】
使用済み吸着材21を使用する、少なくとも1つの単位吸着塔331よりも下流側の単位吸着塔341は、使用済み吸着塔33に含まれる単位吸着塔331の更に後段に配置される。このようにすることで、上流側の単位吸着塔331である程度除去されることで放射性核種濃度が低い被処理液を供給でき、使用済み吸着材21への負荷を小さくできる。図示の例では、単位吸着塔341は、使用済み吸着塔33のすぐ下流側であり、かつ、吸着塔34の最下流に配置される。
【0053】
第2除去工程S3(図1)では、使用済み吸着塔33を構成する2段目及び3段目の単位吸着塔331及び新たに製造された単位吸着塔341を含む吸着塔34を用いて、放射性廃液L1の処理が行われる。即ち、2段目の単位吸着塔331は、1段目の単位吸着塔341として機能し、3段目の単位吸着塔331は、2段目の単位吸着塔341として機能する。従って、第2除去工程S3では、第1除去工程S1(図1)で使用した単位吸着塔331の段数を1ずつ繰り上げて、放射性廃液L1が処理される。
【0054】
なお、例えば使用済みの単位吸着塔331,341は名称が異なること以外は使用済み吸着塔30(図2)及び吸着塔31(図2)と同じ構成を有し、使用済み吸着塔33及び吸着塔34は、更に別の単位吸着塔(不図示)を備えてもよく、単位吸着塔331のうちの何れか少なくとも1つを省略してもよい。
【符号の説明】
【0055】
20 筐体
201 開口
21 使用済み吸着材(吸着材、使用済みの吸着材)
22 吸着材
23 流入部
24,25 開口
26 流出部
27 吸着材
28 カートリッジ
29 取り出し機構
30 使用済み吸着塔(吸着塔、使用済みの吸着塔)
31,32,34,35 吸着塔
33 使用済み吸着塔(吸着塔、使用済みの吸着塔)
331,341 単位吸着塔
41 筒部材
50 回収容器
51 収納容器
A,B 領域
G グラフ
L1 放射性廃液
L2 被処理液
S1 第1除去工程
S2 吸着塔製造工程
S3 第2除去工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11