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  • 特開-切削タップ 図1
  • 特開-切削タップ 図2
  • 特開-切削タップ 図3
  • 特開-切削タップ 図4
  • 特開-切削タップ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109372
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】切削タップ
(51)【国際特許分類】
   B23G 5/06 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
B23G5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004629
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】521022749
【氏名又は名称】近畿丸製ナット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】須増 智浩
(57)【要約】      (修正有)
【課題】確実な食付きが確保できるようにした切削タップを提供する。
【解決手段】切削により雌ねじを加工する切削タップ10において、シャンク前方に連続され、外径が一定の完全形状の複数のねじ山が軸方向に沿って形成され、複数のねじ山の有効径が軸方向に沿って一定となっている完全ねじ山部11と、完全ねじ山部の前方に連続され、頂部が所定の食付き角でもって傾斜された不完全ねじ山形状をなし、不完全ねじ山はねじ山の有効径が完全ねじ山部のねじ山の有効径と等しく、先端部の外径がナットブランクの下穴内径より小さく、不完全ねじ山先端部の頂部の軸方向の寸法がピッチの40%ないし60%の範囲内の寸法に設定された食付き部13と、軸部に上記食付き部及び完全ねじ山部にわたって凹設され、食付き部及び完全ねじ山部の回転方向側に切れ刃を形成する複数条の溝14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削により雌ねじを加工する切削タップにおいて、
シャンク前方に連続され、外径が一定の完全形状の複数のねじ山が軸方向に沿って形成され、上記複数のねじ山の有効径が軸方向に沿って一定となっている完全ねじ山部と、
該完全ねじ山部の前方に連続され、頂部が所定の食付き角でもって傾斜された不完全ねじ山形状をなし、該不完全ねじ山はねじ山の有効径が上記完全ねじ山部のねじ山の有効径と等しく、先端部の外径がナットブランクの下穴内径より小さく、不完全ねじ山先端部の頂部の軸方向の寸法がピッチの40%ないし60%に設定された食付き部と、
軸部に上記食付き部及び完全ねじ山部にわたって凹設され、上記食付き部及び完全ねじ山部の回転方向側に切れ刃を形成する複数条の溝と、
を備えたことを特徴とする切削タップ。
【請求項2】
上記食付き部の不完全ねじ山先端部の頂部の軸方向の寸法がピッチの45%ないし55%に設定された請求項1記載の切削タップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は切削タップに関し、特に確実な食付きが確保できるようにした切削タップに関する。
【背景技術】
【0002】
切削タップはシャンク前方に連続する完全ねじ山部及びその前方に連続する食付き部から構成された形態をなすことが多い(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-217577号公報
【特許文献2】特開2018-187720号公報
【特許文献3】実開昭63-44721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1、2記載の切削タップでは食付き部先端側の不完全ねじ山の頂部の軸方向の長さが長いので、ナットブランク下穴内面に食いつき難く、すべって下穴が拡大してしまうことがあった。
【0005】
他方、特許文献3記載の切削タップでは食付き部の不完全ねじ山の頂部の両側部分がアール状又はカットされているので、食付きが得られるものの、磨耗しやすかった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み、確実な食付きが確保できるようにした切削タップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明に係る切削タップは、切削により雌ねじを加工する切削タップにおいて、シャンク前方に連続され、外径が一定の完全形状の複数のねじ山が軸方向に沿って形成され、上記複数のねじ山の有効径が軸方向に沿って一定となっている完全ねじ山部と、該完全ねじ山部の前方に連続され、頂部が所定の食付き角でもって傾斜された不完全ねじ山形状をなし、該不完全ねじ山はねじ山の有効径が上記完全ねじ山部のねじ山の有効径と等しく、先端部の外径がナットブランクの下穴内径より小さく、不完全ねじ山先端部の頂部の軸方向の寸法がピッチの40%ないし60%の範囲内の寸法に設定された食付き部と、軸部に上記食付き部及び完全ねじ山部にわたって凹設され、上記食付き部及び完全ねじ山部の回転方向側に切れ刃を形成する複数条の溝と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の特徴の1つは切削タップを完全ねじ山部、食付き部及び溝から構成し、食付き部の先端部外径をナットブランクの下穴内径より小さく形成し、しかも食付き部の不完全ねじ山の頂部の軸方向の寸法をねじ山ピッチの40%ないし60%、好ましくは45%ないし55%の範囲内の寸法に設定するようにした点にある。
【0009】
これにより、食付き部の先端部をナットブランクの下穴に押し込みながら回転させると、不完全ねじ山が確実にナットブランク下穴内面に食い付き、滑ってナットブランク下穴が拡がることもなく、雌ねじを確実に切削できる。
【0010】
食付き部先端部の不完全ねじ山の頂部の軸方向寸法をねじ山ピッチの40%ないし60%の範囲内の寸法としたのは、40%未満の寸法では不完全ねじ山の頂部の磨耗が多くなり、60%を越える寸法では食い付きが悪くなり、食付き部の先端部をナットブランクの下穴に押し込みながら回転させたときに不完全ねじ山が滑ってナットブランク下穴が拡がってしまうおそれがあるからである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る切削タップの好ましい実施形態を示す全体図である。
図2】上記実施形態における食付き部の不完全ねじ山形状(a)及び比較例の不完全ねじ山形状(b)を示す図である。
図3】上記実施形態における正面図である。
図4】上記実施形態における完全ねじ山部及び食付き部の関係を示す図である。
図5】上記実施形態におけるタッピング時のタップとナットブランクの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図5は本発明に係る切削タップの好ましい実施形態を示す。図において、切削タップ10のシャンク前方の軸部には完全ねじ山部11及び食付き部13が形成されるとともに、複数条、例えば3条の凹状の溝14が形成され、完全ねじ山部11及び食付き部13は溝14によって3つに分割されている。
【0013】
完全ねじ山部11の軸部には外径が一定の完全形状の複数のねじ山が軸方向に沿って形成され、複数のねじ山の有効径は軸方向に沿って一定に形成されている。
【0014】
食付き部13は頂部13Aが傾斜された不完全ねじ山形状をなし、不完全ねじ山の外径は完全ねじ山部11の先端ねじ山の頂部に向けて所定の食付き角、例えば2°でもって次第に高く、不完全ねじ山はねじ山の有効径が完全ねじ山部11のねじ山の有効径と等しくなっている。
【0015】
また、食付き部13の不完全ねじ山先端部の外径がナットブランク30の下穴内径より小さく、不完全ねじ山先端部の頂部の軸方向の寸t1はピッチPの40%ないし60%、の範囲内の寸法、好ましくは45%ないし55%の範囲内の寸法、より好ましくは50%の寸法に設定されており、一般的な食付き部先端部の不完全ねじ山の頂部の軸方向の寸t0(図2(b)参照)に比較して小さくなっている。
【0016】
また、溝14は食付き部13及び完全ねじ山部14のタップ回転方向前側の縁にナットブランクの内周に雌ねじを加工する切れ刃13Aが形成されている。
【0017】
以上のように、切削タップ10を完全ねじ山部11、食付き部13及び溝14から構成し、食付き部13の不完全ねじ山先端部の外径をナットブランク30の下穴内径より小さく形成し、しかも食付き部13の不完全ねじ山先端部の頂部の軸方向の寸法をねじ山ピッチの40%ないし60%の範囲内の寸法、好ましくは45%ないし55%の範囲内の寸法、より好ましくは50%の寸法に設定するようにしたので、食付き部13の先端部をナットブランク30の下穴に押し込みながら回転させると、不完全ねじ山が確実にナットブランク30下穴内面に食い付き、滑ってナットブランク下穴が拡がることもなく、雌ねじを確実に切削できる。
【符号の説明】
【0018】
10 切削タップ
11 完全ねじ山部
12 嵌入ガイド部
13 食付き部
13A 頂部
13B 切れ刃
14 溝
30 ナットブランク
図1
図2
図3
図4
図5