(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109393
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】電動アシスト駆動ユニットおよび自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 6/55 20100101AFI20220721BHJP
B62J 45/411 20200101ALI20220721BHJP
B62M 6/45 20100101ALI20220721BHJP
【FI】
B62M6/55
B62J45/411
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004669
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】日本電産シンポ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】岡村 暉久夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 仁
(57)【要約】 (修正有)
【課題】製造時の部品の組み付けが容易であり、かつ、小型・軽量化しやすい電動アシスト駆動ユニットを提供することである。
【解決手段】電動アシスト駆動ユニット1は、クランクシャフト10、ケーシング20、モータ40、および減速機50を備える。ケーシングは、クランクシャフトに第1軸受81を径方向に介して支持される。モータおよび減速機は、クランクシャフトとケーシングとの間の空間に配置される。モータは、ステータ41とロータ43とを有する。ステータは、ケーシングに固定される。ロータは、クランクシャフトに第2軸受82を径方向に介して支持される。ロータは、クランクシャフトにかかる負荷に応じて回転する。減速機は、ロータの回転を減速させてクランクシャフトへ出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力による回転をモータの駆動力でアシストする電動アシスト駆動ユニットであって、
人力により中心軸を中心として回転するクランクシャフトと、
前記クランクシャフトに第1軸受を径方向に介して支持されるケーシングと、
前記クランクシャフトと前記ケーシングとの間の空間に配置されるモータおよび減速機と、
を備え、
前記モータは、
前記ケーシングに固定されるステータと、
前記クランクシャフトにかかる負荷に応じて前記ステータに駆動電流を供給する回路基板と、
前記駆動電流により前記ステータから生じる回転磁界により、前記中心軸を中心として回転するロータと、
を有し、
前記減速機は、前記ロータの回転を減速させて前記クランクシャフトへ出力し、
前記ロータは、前記クランクシャフトに第2軸受を径方向に介して支持される、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記減速機は、
前記ロータに固定された中間回転体と、
前記ケーシングに固定された固定部材と、
前記中心軸を中心として減速後の回転数で回転する出力回転体と、
を有し、
前記中間回転体の回転に伴い、前記固定部材に対して前記出力回転体が、前記中間回転体よりも低い回転数で回転する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記固定部材は、前記中心軸を中心とする円環状の固定内歯歯車であり、
前記減速機は、前記中心軸を中心とする円環状であり、前記出力回転体とともに回転する可動内歯歯車を有し、
前記固定内歯歯車の歯数と、前記可動内歯歯車の歯数とが、異なり、
前記減速機は、
前記固定内歯歯車および前記可動内歯歯車に噛み合い、前記中間回転体の回転に伴い、前記中心軸の周りを公転する遊星歯車
をさらに有する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項4】
請求項2に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記固定部材は、前記中心軸を中心とする円環状の非回転リングであり、
前記減速機は、前記中心軸を中心とする円環状であり、前記出力回転体とともに回転する可回転リングを有し、
前記可回転リングの内径と、前記非回転リングの内径とが異なり、
前記減速機は、
前記非回転リングおよび前記可回転リングに接触し、前記中間回転体の回転に伴い、前記中心軸の周りを公転する遊星ローラ
をさらに有する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記非回転リングと前記遊星ローラの当接部において、前記非回転リングおよび前記遊星ローラの少なくともいずれか一方の面が、前記可回転リングから遠ざかるにつれて縮径する傾斜面となっており、
前記可回転リングと前記遊星ローラの当接部において、前記可回転リングおよび前記遊星ローラの少なくともいずれか一方の面が、前記非回転リングから遠ざかるにつれて縮径する傾斜面となっている、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記減速機は、
前記非回転リングを前記可回転リング側へ向けて軸方向に押圧する押圧機構
をさらに有する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項7】
請求項2に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記固定部材は、前記中心軸を中心とする円環状の固定内歯歯車であり、
前記減速機は、前記中心軸を中心とする円環状であり、前記出力回転体とともに回転する可動内歯歯車を有し、
前記固定内歯歯車の歯数と、前記可動内歯歯車の歯数とが、異なり、
前記中間回転体は、周方向の位置により外径が異なる非円形のカムを含み、
前記減速機は、
前記カムの外周面に押圧されて撓み変形し、周方向の一部分において、前記固定内歯歯車および前記可動内歯歯車と噛み合う環状の外歯歯車
をさらに有する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項8】
請求項1に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記減速機は、
前記ロータに固定され、周方向の位置により外径が異なる非円形のカムを含む中間回転体と、
前記中心軸を中心とする円環状の内歯歯車と、
前記カムの外周面に押圧されて撓み変形し、周方向の一部分において、前記内歯歯車と噛み合う外歯歯車と、
前記中心軸を中心として減速後の回転数で回転する出力回転体と、
を有し、
前記内歯歯車および前記外歯歯車のいずれか一方が、前記ケーシングに固定され、
前記内歯歯車および前記外歯歯車の他方が、前記出力回転体とともに、前記中間回転体よりも低い回転数で前記中心軸を中心として回転する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記内歯歯車は、前記ケーシングに固定され、
前記外歯歯車は、
複数の外歯を有する円筒部と、
前記円筒部の軸方向の端部から径方向内側へ向けて拡がる円板部と、
を有し、
前記出力回転体は、前記外歯歯車とともに回転する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項10】
請求項8に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記外歯歯車は、
複数の外歯を有する円筒部と、
前記円筒部の軸方向の端部から径方向外側へ向けて拡がる円板部と、
を有し、
前記円板部は、前記ケーシングに固定され、
前記出力回転体は、前記内歯歯車とともに回転する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記内歯歯車は、前記ケーシングにクロスローラベアリングを介して支持される、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項12】
請求項2から請求項13までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記出力回転体と前記クランクシャフトとの間に、前記中心軸を中心とする一方向の回転のみを伝達する一方向クラッチ
をさらに備える、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項13】
請求項12に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記出力回転体は、前記モータへ向けて軸方向に突出する円筒状のスリーブを有し、
前記一方向クラッチは、径方向において前記スリーブと前記クランクシャフトとの間に位置する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記モータは、前記ステータと前記ロータのマグネットとが軸方向に対向する、アキシャルギャップ型モータである、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項15】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記モータは、前記ステータの径方向外側に前記ロータのマグネットが位置する、アウタロータ型モータである、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項16】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記モータは、前記ステータの径方向内側に前記ロータのマグネットが位置する、インナロータ型モータである、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記クランクシャフトは、フレームに対して回転可能に支持され、
前記ケーシングは、前記フレームに接触する回り止め部を有し、
前記回り止め部が前記フレームに接触することにより、前記中心軸を中心とする前記ケーシングの回転が停止する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項18】
請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記ケーシングは、フレームに支持され、
前記ケーシングが前記フレームに固定された、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項19】
請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記ケーシングが樹脂製である、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項20】
請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記クランクシャフトのトルクを検出し、検出信号を前記回路基板へ入力するトルクセンサ
をさらに備え、
前記回路基板は、前記検出信号が示す前記トルクが予め設定された閾値以上の場合に、前記ステータへ前記駆動電流を供給する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項21】
請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
ペダルを有する自転車に搭載され、
前記ペダルからの踏力により、前記クランクシャフトが回転する、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項22】
請求項21に記載の電動アシスト駆動ユニットであって、
前記自転車のチェーンに係合されるスプロケット
をさらに備え、
前記スプロケットは、前記クランクシャフトに固定されている、電動アシスト駆動ユニット。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載の電動アシスト駆動ユニットを備えた自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト駆動ユニットおよび自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータおよび減速機を有する電動アシスト駆動ユニットを備えた自転車が知られている。電動アシスト駆動ユニットは、自転車が発進する時や上り坂を走行する時などのように、ユーザの負荷が大きいときに、モータを駆動させて、ペダルの回転を補助する。従来の電動アシスト駆動ユニットについては、例えば、特許第6637997号明細書に記載されている。
【特許文献1】特許第6637997号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電動アシスト駆動ユニットは、自転車のペダルに接続されるクランクシャフトと、電動アシスト駆動ユニットのケーシングとの間の空間に、モータおよび減速機が収容された構造を有する。しかしながら、従来の電動アシスト駆動ユニットの構造では、モータのロータが、ケーシングに対して支持されていた。これにより、クランクシャフトおよびケーシングに対するモータおよび減速機の組み付け構造が複雑となっていた。また、ケーシングに対してロータを支持する軸受の径が大きいため、電動アシスト駆動ユニットを小型・軽量化することが、困難であった。
【0004】
本発明の目的は、製造時の部品の組み付けが容易であり、かつ、小型・軽量化しやすい電動アシスト駆動ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明は、人力による回転をモータの駆動力でアシストする電動アシスト駆動ユニットであって、人力により中心軸を中心として回転するクランクシャフトと、前記クランクシャフトに第1軸受を径方向に介して支持されるケーシングと、前記クランクシャフトと前記ケーシングとの間の空間に配置されるモータおよび減速機と、を備え、前記モータは、前記ケーシングに固定されるステータと、前記クランクシャフトにかかる負荷に応じて前記ステータに駆動電流を供給する回路基板と、前記駆動電流により前記ステータから生じる回転磁界により、前記中心軸を中心として回転するロータと、を有し、前記減速機は、前記ロータの回転を減速させて前記クランクシャフトへ出力し、前記ロータは、前記クランクシャフトに第2軸受を径方向に介して支持される。
【発明の効果】
【0006】
本願発明によれば、人力によるクランクシャフトの回転を、モータから発生する駆動力でアシストできる。ケーシングは、クランクシャフトに対して第1軸受を介して支持される。また、モータのロータも、クランクシャフトに対して第2軸受を介して支持される。このため、クランクシャフトを中心として部品を組み付けることができる。したがって、電動アシスト駆動ユニットを容易に製造できる。また、ロータがケーシングに支持される場合と比べて、第2軸受を小型化できる。これにより、電動アシスト駆動ユニットを小型・軽量化することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、電動アシスト駆動ユニットを備えた自転車の概要図である。
【
図2】
図2は、電動アシスト駆動ユニットの側面図である。
【
図3】
図3は、電動アシスト駆動ユニットの縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図3中のA-A位置から見た電動アシスト駆動ユニットの横断面図である。
【
図5】
図5は、第1変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの縦断面図である。
【
図7】
図7は、第3変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図7中のB-B位置から見た電動アシスト駆動ユニットの横断面図である。
【
図9】
図9は、第4変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの縦断面図である。
【
図10】
図10は、第5変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの縦断面図である。
【
図11】
図11は、第6変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの横断面図である。
【
図12】
図12は、第7変形例に係る電動アシスト駆動ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
<1.自転車について>
図1は、本発明の一実施形態に係る電動アシスト駆動ユニット1を備えた自転車100の概要図である。
図1に示すように、この自転車100は、前輪110、後輪120、ペダル130、およびローラチェーン140を備える。ペダル130は、自転車100の両側面のそれぞれに、配置される。以下では、ペダル130が回転する方向のうちの一方を「順方向」とする。ユーザが、ペダル130を順方向にこぐと、ペダル130の回転運動が、ローラチェーン140を介して後輪120へ伝達される。これにより後輪120が回転し、後輪120と前輪110の回転により、自転車100が前方へ進行する。
【0010】
また、この自転車100は、電動アシスト駆動ユニット1を備える。電動アシスト駆動ユニット1は、自転車100の両側面に配置されたペダル130の間に配置される。また、電動アシスト駆動ユニット1は、ローラチェーン140を覆うチェーンカバー141の内部に配置される。発進時や上り坂を走行するときなど、ペダル130の負荷が大きい場合には、電動アシスト駆動ユニット1が、ペダル130に順方向の回転駆動力を供給する。これにより、ユーザがペダル130をこぐ力が軽減される。その結果、ユーザは、自転車100を楽に運転することができる。
【0011】
<2.電動アシスト駆動ユニットについて>
続いて、電動アシスト駆動ユニット1の構造について説明する。
【0012】
図2は、電動アシスト駆動ユニット1の側面図である。
図3は、電動アシスト駆動ユニット1の縦断面図である。この電動アシスト駆動ユニット1は、人力によるペダル130の回転運動を、モータ40の駆動力でアシストする装置である。
図2および
図3に示すように、電動アシスト駆動ユニット1は、クランクシャフト10、ケーシング20、トルクセンサ30、モータ40、減速機50、一方向クラッチ60、およびスプロケット70を備えている。
【0013】
なお、以下では、クランクシャフト10の中心軸と平行な方向を「軸方向」、中心軸に直交する方向を「径方向」、中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0014】
クランクシャフト10は、中心軸9に沿って延びる円柱状の部材である。クランクシャフト10の軸方向の両端は、ケーシング20の外側へ突出する。
図2に示すように、クランクシャフト10は、自転車100のフレーム150に、一対の軸受80を介して、回転可能に支持される。また、クランクシャフト10の軸方向の両端には、それぞれ、ペダル130が固定される。自転車100のユーザがペダル130をこぐと、その踏力(人力)により、ペダル130およびクランクシャフト10が、中心軸9を中心として回転する。
【0015】
ケーシング20は、モータ40および減速機50を内部に収容する筐体である。
図2および
図3に示すように、ケーシング20は、モータケーシング21、減速機ケーシング22、および端部カバー23を有する。端部カバー23は、モータケーシング21よりも軸方向一方側に位置する。減速機ケーシング22は、モータケーシング21よりも軸方向他方側に位置する。モータケーシング21、減速機ケーシング22、および端部カバー23は、ボルト24により、互いに固定されている。
【0016】
また、本実施形態のケーシング20は、仕切板部27を有する。仕切板部27は、ケーシング20の内周面から、径方向内側へ向けて広がる。仕切板部27は、板状かつ円環状である。モータ40は、仕切板部27の軸方向一方側に位置する。減速機50は、仕切板部27の軸方向他方側に位置する。
【0017】
クランクシャフト10とケーシング20との間には、一対の第1軸受81が径方向に介在する。ケーシング20は、この第1軸受81を介して、クランクシャフト10に支持される。したがって、ケーシング20とクランクシャフト10とは、互いに相対回転可能である。また、
図2に示すように、ケーシング20は、回り止め部25を有する。回り止め部25は、ケーシング20の外周面から、径方向外側へ向けて突出する。自転車100の走行時には、回り止め部25が、フレーム150に対して周方向に接触する。これにより、中心軸9を中心とするケーシング20の回転が停止する。
【0018】
このように、本実施形態の構造では、クランクシャフト10が、ケーシング20を介することなく、フレーム150に直接支持されている。このため、ケーシング20は、クランクシャフト10を支持するための強度を有する必要がない。したがって、ケーシング20に、強度の低い材料を使用できる。例えば、ケーシング20を樹脂製として、ケーシング20を軽量化してもよい。ただし、ケーシング20の材料は、アルミニウム等の金属であってもよい。
【0019】
トルクセンサ30は、クランクシャフト10にかかる負荷を検出するセンサである。トルクセンサ30は、モータケーシング21の径方向内側の端部に設けられる。トルクセンサ30は、クランクシャフト10の歪みを非接触で検出し、その歪み量をトルク値に換算する。トルクセンサ30は、クランクシャフト10のトルク値を示す検出信号を、後述する回路基板42へ入力する。
【0020】
モータ40は、人力をアシストするための駆動力を発生させる動力源である。モータ40は、クランクシャフト10とケーシング20との間の空間に配置される。モータ40は、減速機50の軸方向一方側に位置する。
図3に示すように、モータ40は、ステータ41、回路基板42、およびロータ43を有する。
【0021】
ステータ41は、モータ40の固定子である。ステータ41は、モータケーシング21に固定される。ステータ41は、ステータコア411と、複数のコイル412とを有する。ステータコア411は、積層鋼板等の磁性体により形成される。ステータコア411は、径方向外側へ向けて突出する複数のティースを有する。複数のティースは、周方向に等間隔に配列されている。コイル412は、ティースに巻かれた導線により構成される。
【0022】
回路基板42は、ステータ41のコイル412に駆動電流を供給するための電気回路が実装された基板である。回路基板42は、コイル412、トルクセンサ30、および図示を省略したバッテリーと、電気的に接続されている。回路基板42は、トルクセンサ30から、クランクシャフト10のトルクを示す検出信号を取得する。また、回路基板42に搭載されたメモリには、予め設定されたトルクの閾値が記憶されている。
【0023】
回路基板42は、トルクセンサ30から取得した検出信号が示すトルク値が、上記の閾値未満の場合には、コイル412に駆動電流を供給しない。回路基板42は、トルクセンサ30から取得した検出信号が示すトルク値が、上記の閾値以上になると、バッテリーから供給される電力により、トルク値に応じた駆動電流を生成して、コイル412へ供給する。
【0024】
ロータ43は、モータ40の回転子である。クランクシャフト10とロータ43との間には、第2軸受82が径方向に介在する。ロータ43は、この第2軸受82を介して、クランクシャフト10に支持される。したがって、ロータ43は、中心軸9を中心として、クランクシャフト10とは異なる回転数で、回転可能である。
【0025】
ロータ43は、ロータヨーク431と、ロータヨーク431に固定された複数のマグネット432とを有する。ロータヨーク431は、鉄などの磁性体により形成される。複数のマグネット432は、永久磁石である。複数のマグネット432は、ステータ41の径方向外側に位置する。すなわち、本実施形態のモータ40は、アウタロータ型モータである。複数のマグネット432は、N極とS極とが周方向に交互に並ぶように、円環状に配列される。ティースの径方向外側の端面と、マグネット432の径方向内側の面とは、径方向に僅かな隙間を介して対向する。
【0026】
モータ40の駆動時には、回路基板42からステータ41のコイル412に駆動電流が供給される。これにより、ステータコア411に回転磁界が生じる。そして、ステータコア411と複数のマグネット432との間の磁気的吸引力および磁気的反発力により、ステータ41とロータ43との間に、周方向のトルクが発生する。その結果、ロータ43が、中心軸9を中心として回転する。
【0027】
減速機50は、ロータ43の回転運動を減速させてクランクシャフト10へ出力する機構である。
図4は、
図3中のA-A位置から見た電動アシスト駆動ユニット1の横断面図である。図の煩雑化を避けるため、
図4では、断面を示すハッチングと、各歯車の歯の図示が省略されている。減速機50は、クランクシャフト10とケーシング20との間の空間に配置される。
図3および
図4に示すように、減速機50は、中間回転体51、複数の遊星歯車52、固定内歯歯車53、可動内歯歯車54、および出力回転体55を有する。
【0028】
中間回転体51は、中心軸9を中心とする円環状の部材である。中間回転体51は、ロータ43の軸方向他方側に位置する。クランクシャフト10と中間回転体51との間には、第3軸受83が径方向に介在する。中間回転体51は、この第3軸受83を介して、クランクシャフト10に支持される。したがって、中間回転体51は、中心軸9を中心として、クランクシャフト10とは異なる回転数で、回転可能である。
【0029】
また、本実施形態のモータ付き減速機1は、オイルシール28を有する。オイルシール28は、仕切板部27の径方向内側の端部と、中間回転体51の外周面との間に位置する。このようにすれば、減速機50に使用される潤滑油が、モータ40側へ侵入することを防止できる。
【0030】
また、ロータ43と中間回転体51とは、ボルト56により互いに固定される。したがって、モータ40の駆動時には、ロータ43とともに中間回転体51が、中心軸9を中心として回転する。上述した第2軸受82と第3軸受83とは、軸方向に間隔をあけて配置されている。これにより、ロータ43および中間回転体51の、クランクシャフト10に対する回転姿勢が、安定する。
【0031】
複数の遊星歯車52は、クランクシャフト10の径方向外側において、周方向に等間隔に配列されている。
図4に示すように、本実施形態の減速機50は、クランクシャフト10の周囲に、8つの遊星歯車52が配置されている。ただし、減速機50が有する遊星歯車52の数は、8つには限られない。各遊星歯車52は、中間回転体51に固定された遊星軸511に支持されている。遊星軸511は、軸方向に延びる。また、遊星軸511と遊星歯車52との間には、第4軸受84が介在する。したがって、遊星歯車52は、遊星軸511を中心として自転することが可能である。また、遊星歯車52は、中間回転体51の回転に伴い、中心軸9の周りを公転する。
【0032】
遊星歯車52は、外周面に、複数の第1外歯521と、複数の第2外歯522とを有する。複数の第1外歯521は、複数の第2外歯522よりも、軸方向一方側に位置する。第1外歯521の径は、第2外歯522の径よりも大きい。遊星歯車52が有する第1外歯521の数と、遊星歯車52が有する第2外歯522の数とは、異なる。
【0033】
固定内歯歯車53は、中心軸9を中心とする円環状の歯車である。固定内歯歯車53は、「固定部材」の一例である。固定内歯歯車53は、ケーシング20の内周面に、キー532を介して固定されている。このため、固定内歯歯車53は、ケーシング20に対して相対回転不能である。固定内歯歯車53は、内周面に複数の第1内歯531を有する。遊星歯車52の第1外歯521は、固定内歯歯車53の第1内歯531と噛み合う。
【0034】
可動内歯歯車54は、中心軸9を中心とする円環状の歯車である。可動内歯歯車54は、固定内歯歯車53の軸方向他方側に位置する。また、可動内歯歯車54の内径は、固定内歯歯車53の内径よりも小さい。可動内歯歯車54は、内周面に複数の第2内歯541を有する。遊星歯車52の第2外歯522は、可動内歯歯車54の第2内歯541と噛み合う。固定内歯歯車53が有する第1内歯531の数(歯数)と、可動内歯歯車54が有する第2内歯541の数(歯数)とは、異なる。
【0035】
モータ40が駆動すると、ロータ43および中間回転体51が、中心軸9を中心として、減速前の第1回転数で回転する。それに伴い、複数の遊星歯車52は、中心軸9を中心として周方向に公転する。このとき、各遊星歯車52の第1外歯521と、固定内歯歯車53の第1内歯531とが噛み合うことにより、遊星歯車52は、遊星軸511を中心として自転する。また、各遊星歯車52の第2外歯522と可動内歯歯車54の第2内歯541とが噛み合うため、第1外歯521および第1内歯531の歯数と、第2外歯522および第2内歯541の歯数との差によって、固定内歯歯車53に対して可動内歯歯車54が、中心軸9を中心として回転する。この可動内歯歯車54の回転数は、上述した第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0036】
出力回転体55は、中心軸9を中心とする円環状の部材である。出力回転体55は、フランジ551とスリーブ552とを有する。フランジ551は、複数の遊星歯車52の軸方向他方側において、円板状に広がる。スリーブ552は、フランジ551の径方向内側の端部から、モータ40側へ向けて、軸方向に突出する。スリーブ552は、中心軸9を中心とする円筒状である。スリーブ552は、複数の遊星歯車52の径方向内側に位置する。フランジ551の径方向外側の端部と可動内歯歯車54とは、ボルト57により互いに固定される。したがって、出力回転体55は、可動内歯歯車54とともに、中心軸9を中心として、減速後の第2回転数で回転する。なお、可動内歯歯車54および出力回転体55は、単一の部材であってもよい。
【0037】
一方向クラッチ60は、クランクシャフト10に対する出力回転体55の相対回転を、一方向にのみ許容する機構である。一方向クラッチ60は、径方向において、出力回転体55のスリーブ552と、クランクシャフト10との間に位置する。すなわち、本実施形態の構造では、出力回転体55の、モータ40側へ折り返されたスリーブ552の径方向内側に、一方向クラッチ60が設けられている。これにより、電動アシスト駆動ユニット1を、軸方向に小型化できる。
【0038】
クランクシャフト10の順方向の回転速度が、出力回転体55の順方向の回転速度よりも大きい場合には、一方向クラッチ60は、当該回転を許容する。したがって、自転車100のユーザは、モータ40が駆動していないときには、モータ40の抵抗を受けることなく、ペダル130を介してクランクシャフト10を回転させることができる。
【0039】
ただし、一方向クラッチ60は、出力回転体55の順方向の回転速度が、クランクシャフト10の順方向の回転速度よりも大きくなることを禁止する。したがって、モータ40が駆動して、出力回転体55の順方向の回転速度が、クランクシャフト10の順方向の回転速度に追いつくと、クランクシャフト10は、出力回転体55と同じ回転速度で、順方向に回転する。このように、一方向クラッチ60は、出力回転体55からクランクシャフト10に対して、中心軸9を中心とする一方向の回転運動のみを伝達する。
【0040】
スプロケット70は、クランクシャフト10の回転をローラチェーン140へ伝達するための部品である。スプロケット70は、中心軸9を中心とする円板状である。スプロケット70は、ケーシング20の外側に位置する。また、スプロケット70は、クランクシャフト10に固定されている。スプロケット70は、外周部に複数の外歯71を有する。スプロケット70は、これらの外歯71により、自転車100のローラチェーン140と係合する。ペダル130からの踏力またはモータ40からの駆動力によりクランクシャフト10が回転すると、スプロケット70も、中心軸9を中心として回転する。これにより、スプロケット70と後輪120との間で、ローラチェーン140が回動する。
【0041】
以上のように、この電動アシスト駆動ユニット1は、クランクシャフト10の負荷が大きいときに、モータ40を駆動させて、クランクシャフト10へ駆動力を供給する。その際、減速機50は、モータ40から出力される回転運動を減速させることにより、トルクを増大させて、クランクシャフト10へ伝達する。これにより、人力によるクランクシャフト10の回転をアシストできる。
【0042】
特に、本実施形態の構造では、ケーシング20が、クランクシャフト10に対して、第1軸受81を介して支持される。また、モータ40のロータ43も、クランクシャフト10に対して、第2軸受82を介して支持される。このため、クランクシャフト10を中心として各部品を組み立てることができる。したがって、電動アシスト駆動ユニット1を容易に製造できる。
【0043】
また、本実施形態の構造では、ロータ43が、ケーシング20ではなく、クランクシャフト10に、第2軸受82を介して支持される。このようにすれば、ケーシング20に軸受を介してロータ43を支持する場合と比べて、小径の第2軸受82を使用できる。したがって、電動アシスト駆動ユニット1を小型・軽量化しやすい。
【0044】
また、本実施形態の構造では、中間回転体51も、ケーシング20ではなく、クランクシャフト10に、第3軸受83を介して支持される。このようにすれば、ケーシング20に軸受を介して中間回転体51を支持する場合と比べて、小径の第3軸受83を使用できる。したがって、電動アシスト駆動ユニット1を小型・軽量化しやすい。
【0045】
また、本実施形態の電動アシスト駆動ユニット1は、出力回転体55とクランクシャフト10との間に、一方向クラッチ60を有する。このため、クランクシャフト10の負荷が閾値未満のときには、モータ40の抵抗を受けることなく、人力のみでクランクシャフト10を回転させることができる。また、回路基板42は、クランクシャフト10の負荷が閾値以上となった場合にのみ、モータ40を駆動させる。このため、アシストが不要なときにはモータ40を停止させて、バッテリーの消費を抑えることができる。
【0046】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について説明する。なお、以下では、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。上記の実施形態と同等の部分については、重複説明を省略する。
【0047】
<3-1.第1変形例>
図5は、第1変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の縦断面図である。
図5の電動アシスト駆動ユニット1は、モータ40の構造が上記の実施形態と相違する。
【0048】
図5の構造では、モータ40のステータコア411が、径方向内側へ向けて突出する複数のティースを有する。複数のティースは、周方向に等間隔に配列されている。コイル412は、ティースに巻かれた導線により構成される。複数のマグネット432は、ロータヨーク431の外周面に固定される。複数のマグネット432は、ステータ41の径方向内側に位置する。複数のマグネット432は、N極とS極とが周方向に交互に並ぶように、円環状に配列される。ティースの径方向内側の端面と、マグネット432の径方向外側の面とは、径方向に僅かな隙間を介して対向する。
【0049】
このように、電動アシスト駆動ユニット1のモータ40は、ステータ41の径方向内側にロータ43のマグネット432が位置する、インナロータ型モータであってもよい。
【0050】
<3-2.第2変形例>
図6は、第2変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の縦断面図である。
図6の電動アシスト駆動ユニット1は、モータ40および減速機50の構造が、上記の実施形態と相違する。
【0051】
図6の構造では、モータ40のステータ41が、中心軸9を中心とする略円板状である。ステータ41は、周方向に配列された複数のコイル(図示省略)を有する。各コイルの磁心は軸方向を向いている。ロータ43は、第1ロータヨーク431aと第2ロータヨーク431bと、第1マグネット432aと、第2マグネット432bとを有する。第1ロータヨーク431aは、ステータ41の軸方向一方側において、中心軸9を中心として円板状に広がる。第2ロータヨーク431bは、ステータ41の軸方向他方側において、中心軸9を中心として円板状に広がる。
【0052】
第1マグネット432aは、第1ロータヨーク431aの軸方向他方側の面に固定されている。第2マグネット432bは、第2ロータヨーク431bの軸方向一方側の面に固定されている。第1マグネット432aおよび第2マグネット432bは、それぞれ、中心軸9を中心とする円環状である。第1マグネット432aの表面は、ステータ41の軸方向一方側の面と、僅かな隙間を介して軸方向に対向する。第2マグネット432bの表面は、ステータ41の軸方向他方側の面と、僅かな隙間を介して軸方向に対向する。第1マグネット432aおよび第2マグネット432bの表面には、N極とS極とが、周方向に交互に着磁されている。
【0053】
このように、電動アシスト駆動ユニット1のモータ40は、ステータ41とロータ43のマグネット432a,432bとが軸方向に対向する、アキシャルギャップ型モータであってもよい。モータ40をアキシャルギャップ型にすることで、同等の性能を有するアウタロータ型またはインナロータ型のモータを使用する場合と比べて、モータ40の軸方向の寸法を抑えることができる。
【0054】
特に、本実施形態のモータ40は、ステータ41を挟んで配置される2つのマグネット432a,432bを有する。これにより、ステータ41の片側のみにマグネットが配置される場合と比べて、モータ40から出力されるトルクを増大させることができる。
【0055】
図6の電動アシスト駆動ユニット1の減速機50は、中間回転体51、複数の遊星ローラ52、非回転リング53、可回転リング54、および出力回転体55を有する。
【0056】
複数の遊星ローラ52は、クランクシャフト10の径方向外側において、周方向に等間隔に配列されている。各遊星ローラ52は、中間回転体51に固定された遊星軸511に支持されている。遊星軸511は、軸方向に延びる。各遊星ローラ52は、遊星軸511を中心として自転することが可能である。また、遊星ローラ52は、中間回転体51の回転に伴い、中心軸9の周りを公転する。
【0057】
遊星ローラ52は、外周面に、第1傾斜面521と第2傾斜面522とを有する。第1傾斜面521は、第2傾斜面522よりも、軸方向一方側に位置する。第1傾斜面521は、軸方向一方側へ向かうにつれて縮径する傾斜面である。第2傾斜面522は、軸方向他方側へ向かうにつれて縮径する傾斜面である。
【0058】
非回転リング53は、中心軸9を中心とする円環状の部材である。非回転リング53は、「固定部材」の一例である。非回転リング53は、ケーシング20の内周面に沿って配置されている。非回転リング53は、ケーシング20に対して相対回転不能である。非回転リング53の内周面は、第3傾斜面531を含む。第3傾斜面531は、軸方向一方側へ向かうにつれて縮径する傾斜面である。
【0059】
減速機50は、非回転リング53の軸方向一方側に、押圧機構58を有する。押圧機構58は、非回転リング53を、可回転リング54側へ向けて、軸方向に押圧する。
図6の構造では、押圧機構58は、軸方向に伸縮可能なばねと、負荷トルクに比例した押圧力を付加する調圧カムとにより構成されている。ただし、ばねおよび調圧カムのいずれか一方が、省略されていてもよい。また、押圧機構58として、ばね以外の弾性部材が使用されていてもよい。押圧機構58の押圧力により、非回転リング53の第3傾斜面531は、遊星ローラ52の第1傾斜面521と接触する。
【0060】
出力回転体55のフランジ551と減速機ケーシング22との軸方向の間隙には、スラスト軸受59が配置される。スラスト軸受59は、押圧機構58の軸方向の押圧力および反力をケーシング20で支持する。このため、押圧機構58の押圧力が、上述した傾斜面以外の部品に及ぶことがない。
【0061】
可回転リング54は、中心軸9を中心とする円環状の部材である。可回転リング54は、非回転リング53の軸方向他方側に位置する。可回転リング54の内周面は、第4傾斜面541を含む。第4傾斜面541は、軸方向他方側へ向かうにつれて縮径する傾斜面である。遊星ローラ52の第2傾斜面522は、可回転リング54の第4傾斜面541と接触する。非回転リング53の内径と、可回転リング54の内径とは、僅かに異なる。
【0062】
モータ40が駆動すると、ロータ43および中間回転体51が、中心軸9を中心として、減速前の第1回転数で回転する。それに伴い、複数の遊星ローラ52は、中心軸9を中心として周方向に公転する。このとき、各遊星ローラ52の第1傾斜面521と、非回転リング53の第3傾斜面5とが接触することにより、遊星ローラ52は、遊星軸511を中心として自転する。また、各遊星ローラ52の第2傾斜面522と可回転リング54の第4傾斜面541とが接触するため、第1傾斜面521と第3傾斜面531の当接部と、第2傾斜面522と第4傾斜面541の当接部との径差によって、非回転リング53に対して可回転リング54が、中心軸9を中心として回転する。この可回転リング54の回転数は、上述した第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0063】
また、可回転リング54と出力回転体55とは、互いに固定される。したがって、出力回転体55は、可回転リング54とともに、中心軸9を中心として、減速後の第2回転数で回転する。なお、可回転リング54および出力回転体55は、単一の部材であってもよい。
【0064】
なお、
図6の例では、遊星ローラ52の第1傾斜面521と、非回転リング53の第3傾斜面531とを、接触させていた。しかしながら、このような傾斜面同士を接触させる構造に限らず、傾斜面と突起を接触させる構造であってもよい。すなわち、遊星ローラ52と非回転リング53の当接部において、遊星ローラ52および非回転リング53の少なくともいずれか一方の面が、可回転リング54から遠ざかるにつれて縮径する傾斜面となっていればよい。
【0065】
また、
図6の例では、遊星ローラ52の第2傾斜面522と、可回転リング54の第4傾斜面541とを、接触させていた。しかしながら、このような傾斜面同士を接触させる構造に限らず、傾斜面と突起を接触させる構造であってもよい。すなわち、遊星ローラ52と可回転リング54の当接部において、遊星ローラ52および可回転リング54の少なくともいずれか一方の面が、非回転リング53から遠ざかるにつれて縮径する傾斜面となっていればよい。
【0066】
<3-3.第3変形例>
図7は、第3変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の縦断面図である。
図8は、
図7中のB-B位置から見た電動アシスト駆動ユニット1の横断面図である。図の煩雑化を避けるため、
図8では、断面を示すハッチングが省略されている。
図7および
図8の電動アシスト駆動ユニット1は、モータ40および減速機50の構造が、上記の実施形態と相違する。ただし、モータ40の構造は、第2変形例と同等であるため、重複説明を省略する。
【0067】
図7および
図8の電動アシスト駆動ユニット1の減速機50は、中間回転体51、可撓性外歯歯車52、固定内歯歯車53、可動内歯歯車54、および出力回転体55を有する。
【0068】
本変形例の中間回転体51は、カム512を含む。
図8では、軸方向に視たときのカム512の外周面の形状が、楕円形である。しかしながら、カム512の外周面の形状は、必ずしも楕円形に限るものではない。カム512は、周方向の位置により外径(中心軸9からの距離)が異なる、非円形の外周面を有していればよい。
【0069】
可撓性外歯歯車52は、柔軟に撓み変形可能な薄肉状の歯車である。可撓性外歯歯車52は、環状であり、カム512の径方向外側に位置する。可撓性外歯歯車52は、外周面に複数の外歯523を有する。また、カム512の外周面と、可撓性外歯歯車52との間には、可撓性軸受85が介在する。可撓性軸受85は、柔軟に撓み変形可能な軸受である。したがって、カム512の回転により、可撓性軸受85を介して可撓性外歯歯車52が、径方向に撓む。
【0070】
固定内歯歯車53は、中心軸9を中心とする円環状の歯車である。固定内歯歯車53は、「固定部材」の一例である。固定内歯歯車53は、ケーシング20の内周面に固定されている。このため、固定内歯歯車53は、ケーシング20に対して相対回転不能である。固定内歯歯車53は、内周面に複数の第1内歯531を有する。
【0071】
可動内歯歯車54は、中心軸9を中心とする円環状の歯車である。可動内歯歯車54は、固定内歯歯車53の軸方向他方側に位置する。可動内歯歯車54は、内周面に複数の第2内歯541を有する。固定内歯歯車53が有する第1内歯531の数(歯数)と、可動内歯歯車54が有する第2内歯541の数(歯数)とは、異なる。
【0072】
上述した可撓性軸受85の内輪は、カム512の外周面に接触する。可撓性軸受85の外輪は、可撓性外歯歯車52の内周面に接触する。可撓性軸受85は、カム512の外周面に沿った楕円形状に変形する。したがって、可撓性外歯歯車52も、カム512の外周面に沿った楕円形状に変形する。その結果、当該楕円の長軸の両端に相当する2箇所において、可撓性外歯歯車52の一部の外歯523が、可撓性軸受85を介してカム512の外周面に押圧されることによって、固定内歯歯車53の第1内歯531および可動内歯歯車54の第2内歯541と噛み合う。周方向の他の位置においては、外歯523は、第1内歯531および第2内歯541と噛み合わない。
【0073】
モータ40が駆動すると、ロータ43および中間回転体51が、中心軸9を中心として、減速前の第1回転数で回転する。それに伴い、カム512も、中心軸9を中心として、第1回転数で回転する。そうすると、可撓性外歯歯車52の上述した楕円の長軸も、第1回転数で回転する。したがって、可撓性外歯歯車52の外歯523と、固定内歯歯車53の第1内歯531との噛み合い位置も、周方向に第1回転数で移動する。また、可撓性外歯歯車52の外歯523は、可動内歯歯車54の第2内歯541とも噛み合うため、第1内歯531と第2内歯541の歯数差によって、固定内歯歯車53に対して可動内歯歯車54が、中心軸9を中心として回転する。この可動内歯歯車54の回転数は、上述した第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0074】
可動内歯歯車54と出力回転体55とは、ボルト57により互いに固定される。したがって、出力回転体55は、可動内歯歯車54とともに、中心軸9を中心として、減速後の第2回転数で回転する。なお、可動内歯歯車54および出力回転体55は、単一の部材であってもよい。
【0075】
<3-4.第4変形例>
図9は、第4変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の縦断面図である。
図9の電動アシスト駆動ユニット1は、モータ40および減速機50の構造が、上記の実施形態と相違する。ただし、モータ40の構造は、第1変形例と同等であるため、重複説明を省略する。
【0076】
図9の電動アシスト駆動ユニット1の減速機50は、中間回転体51、可撓性外歯歯車52、内歯歯車53、および出力回転体55を有する。
【0077】
本変形例の中間回転体51は、カム512を含む。軸方向に視たときのカム512の外周面の形状は、楕円形である。しかしながら、カム512の外周面の形状は、必ずしも楕円形に限るものではない。カム512は、周方向の位置により外径(中心軸9からの距離)が異なる、非円形の外周面を有していればよい。
【0078】
可撓性外歯歯車52は、柔軟に撓み変形可能な薄肉状の歯車である。可撓性外歯歯車52は、略カップ状の外形を有する。すなわち、可撓性外歯歯車52は、円筒部524と円板部525とを有する。円筒部524は、カム512の径方向外側に位置する。円板部525は、円筒部524の軸方向他方側の端部から、径方向内側へ向けて拡がる。
【0079】
円筒部524は、外周面に複数の外歯523を有する。また、カム512の外周面と、円筒部524の内周面との間には、可撓性軸受85が介在する。可撓性軸受85は、柔軟に撓み変形可能な軸受である。したがって、カム512の回転により、可撓性軸受85を介して可撓性外歯歯車52の円筒部524が、径方向に撓む。
【0080】
内歯歯車53は、中心軸9を中心とする円環状の歯車である。内歯歯車53は、ケーシング20の内周面に固定されている。このため、内歯歯車53は、ケーシング20に対して相対回転不能である。内歯歯車53は、内周面に複数の内歯531を有する。可撓性外歯歯車52が有する外歯523の数(歯数)と、内歯歯車53が有する内歯531の数(歯数)とは、異なる。
【0081】
上述した可撓性軸受85の内輪は、カム512の外周面に接触する。可撓性軸受85の外輪は、可撓性外歯歯車52の円筒部524の内周面に接触する。可撓性軸受85は、カム512の外周面に沿った楕円形状に変形する。したがって、可撓性外歯歯車52の円筒部524も、カム512の外周面に沿った楕円形状に変形する。その結果、当該楕円の長軸の両端に相当する2箇所において、可撓性外歯歯車52の一部の外歯523が、可撓性軸受85を介してカム512の外周面に押圧されることによって、内歯歯車53の内歯531と噛み合う。周方向の他の位置においては、外歯523は、内歯531と噛み合わない。
【0082】
モータ40が駆動すると、ロータ43および中間回転体51が、中心軸9を中心として、減速前の第1回転数で回転する。それに伴い、カム512も、中心軸9を中心として、第1回転数で回転する。そうすると、可撓性外歯歯車52の円筒部524の上述した楕円の長軸も、第1回転数で回転する。したがって、可撓性外歯歯車52の外歯523と、内歯歯車53の内歯531との噛み合い位置も、周方向に第1回転数で移動する。また、可撓性外歯歯車52が有する外歯523の数と、内歯歯車53が有する内歯531の数とは、異なる。したがって、当該歯数差によって、内歯歯車53に対して可撓性外歯歯車52が、中心軸9を中心として回転する。この可撓性外歯歯車52の回転数は、上述した第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0083】
可撓性外歯歯車52と出力回転体55とは、ボルト57により互いに固定される。したがって、出力回転体55は、可撓性外歯歯車52とともに、中心軸9を中心として、減速後の第2回転数で回転する。なお、可撓性外歯歯車52および出力回転体55は、単一の部材であってもよい。
【0084】
<3-5.第5変形例>
図10は、第5変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の縦断面図である。
図10の電動アシスト駆動ユニット1は、減速機50の構造が、上記の実施形態と相違する。
【0085】
図10の電動アシスト駆動ユニット1の減速機50は、中間回転体51、可撓性外歯歯車52、内歯歯車53、および出力回転体55を有する。
【0086】
本変形例の中間回転体51は、カム512を含む。軸方向に視たときのカム512の外周面の形状は、楕円形である。しかしながら、カム512の外周面の形状は、必ずしも楕円形に限るものではない。カム512は、周方向の位置により外径(中心軸9からの距離)が異なる、非円形の外周面を有していればよい。
【0087】
可撓性外歯歯車52は、柔軟に撓み変形可能な薄肉状の歯車である。可撓性外歯歯車52は、略シルクハット状の外形を有する。すなわち、可撓性外歯歯車52は、円筒部524と円板部525とを有する。円筒部524は、カム512の径方向外側に位置する。円板部525は、円筒部524の軸方向一方側の端部から、径方向外側へ向けて拡がる。円板部525の径方向外側の端部は、ケーシング20に固定される。
【0088】
円筒部524は、外周面に複数の外歯523を有する。また、カム512の外周面と、円筒部524の内周面との間には、可撓性軸受85が介在する。可撓性軸受85は、柔軟に撓み変形可能な軸受である。したがって、カム512の回転により、可撓性軸受85を介して可撓性外歯歯車52の円筒部524が、径方向に撓む。
【0089】
内歯歯車53は、中心軸9を中心とする円環状の歯車である。ケーシング20と内歯歯車53との間には、クロスローラベアリング86が径方向に介在する。内歯歯車53は、このクロスローラベアリング86を介して、ケーシング20に支持される。したがって、内歯歯車53は、中心軸9を中心として回転可能である。内歯歯車53は、内周面に複数の内歯531を有する。可撓性外歯歯車52が有する外歯523の数(歯数)と、内歯歯車53が有する内歯531の数(歯数)とは、異なる。
【0090】
上述した可撓性軸受85の内輪は、カム512の外周面に接触する。可撓性軸受85の外輪は、可撓性外歯歯車52の円筒部524の内周面に接触する。可撓性軸受85は、カム512の外周面に沿った楕円形状に変形する。したがって、可撓性外歯歯車52の円筒部524も、カム512の外周面に沿った楕円形状に変形する。その結果、当該楕円の長軸の両端に相当する2箇所において、可撓性外歯歯車52の一部の外歯523が、可撓性軸受85を介してカム512の外周面に押圧されることによって、内歯歯車53の内歯531と噛み合う。周方向の他の位置においては、外歯523は、内歯531と噛み合わない。
【0091】
モータ40が駆動すると、ロータ43および中間回転体51が、中心軸9を中心として、減速前の第1回転数で回転する。それに伴い、カム512も、中心軸9を中心として、第1回転数で回転する。そうすると、可撓性外歯歯車52の円筒部524の上述した楕円の長軸も、第1回転数で回転する。したがって、可撓性外歯歯車52の外歯523と、内歯歯車53の内歯531との噛み合い位置も、周方向に第1回転数で移動する。また、可撓性外歯歯車52が有する外歯523の数と、内歯歯車53が有する内歯531の数とは、異なる。したがって、当該歯数差によって、可撓性外歯歯車52に対して内歯歯車53が、中心軸9を中心として回転する。この内歯歯車53の回転数は、上述した第1回転数よりも低い第2回転数となる。
【0092】
内歯歯車53と出力回転体55とは、ボルト57により互いに固定される。したがって、出力回転体55は、内歯歯車53とともに、中心軸9を中心として、減速後の第2回転数で回転する。なお、可撓性外歯歯車52および出力回転体55は、単一の部材であってもよい。
【0093】
上述した第4変形例では、内歯歯車53をケーシング20に固定し、その内歯歯車53に対して、可撓性外歯歯車52を、減速後の第2回転数で回転させた。これに対し、第5変形例では、可撓性外歯歯車52をケーシング20に固定し、その可撓性外歯歯車52に対して、内歯歯車53を、減速後の第2回転数で回転させた。このように、減速機50に可撓性外歯歯車52を利用する場合、可撓性外歯歯車52および内歯歯車53のいずれか一方が、ケーシング20に固定されていればよい。そして、可撓性外歯歯車52および内歯歯車53の他方が、出力回転体55とともに、第2回転数で回転すればよい。
【0094】
<3-6.第6変形例>
図11は、第6変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の横断面図である。
図11の電動アシスト駆動ユニット1は、モータ40および減速機50の構造が、上記の実施形態と相違する。ただし、モータ40の構造は、上述した第2変形例と同等である。また、減速機50の構造は、上述した第5変形例と同等である。このように、モータ40の種類と、減速機50の種類とは、任意に組み合わせることができる。
【0095】
<3-7.第7変形例>
図12は、第7変形例に係る電動アシスト駆動ユニット1の側面図である。
図12の電動アシスト駆動ユニット1は、自転車100のフレーム150に対する支持構造が、上記の実施形態と相違する。
【0096】
図12の例では、ケーシング20が、自転車100のフレーム150に、ボルト26で固定されている。これにより、ケーシング20が、フレーム150に支持されている。クランクシャフト10とケーシング20との間には、上記の実施形態と同様に、第1軸受81(
図3参照)が径方向に介在する。クランクシャフト10は、この第1軸受81を介して、ケーシング20に支持される。本変形例の構造では、ケーシング20がクランクシャフト10を支持するため、上記の実施形態よりも、ケーシング20に強度が必要である。しかしながら、本変形例の構造を採れば、上記の実施形態の軸受80を省略できる。したがって、電動アシスト駆動ユニット1の構造を簡略化できる。
【0097】
<3-8.他の変形例>
上記の実施形態および変形例では、自転車100に搭載される電動アシスト駆動ユニット1について説明した。しかしながら、本発明の電動アシスト駆動ユニット1は、自転車以外の機器に搭載されるものであってもよい。例えば、アシストスーツや、釣り竿のリールなどにおいて、人力をアシストするために、本発明の電動アシスト駆動ユニットを搭載してもよい。
【0098】
その他、電動アシスト駆動ユニットの細部の形状については、本願の各図に示された形状と異なっていてもよい。また、上記の実施形態または変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、電動アシスト駆動ユニットおよび自転車に利用できる。
【符号の説明】
【0100】
1 電動アシスト駆動ユニット
9 中心軸
10 クランクシャフト
20 ケーシング
25 回り止め部
30 トルクセンサ
40 モータ
41 ステータ
42 回路基板
43 ロータ
50 減速機
51 中間回転体
52 遊星歯車,遊星ローラ,可撓性外歯歯車
53 内歯歯車,非回転リング,固定内歯歯車
54 可回転リング,可動内歯歯車
55 出力回転体
58 押圧機構
60 一方向クラッチ
70 スプロケット
81 第1軸受
82 第2軸受
83 第3軸受
84 第4軸受
85 可撓性軸受
86 クロスローラベアリング
100 自転車
130 ペダル
150 フレーム
551 フランジ
552 スリーブ