(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109394
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】光触媒スプレー
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220721BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20220721BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20220721BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220721BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220721BHJP
A01N 25/06 20060101ALI20220721BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20220721BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220721BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220721BHJP
【FI】
C09D201/00
B01J35/02 J
B01J37/00 F
A01P1/00
A01P3/00
A01N25/06
A01N59/16 Z
C09D7/20
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004670
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】520100114
【氏名又は名称】株式会社ポッシブル
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】道地 広一郎
【テーマコード(参考)】
4G169
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA48A
4G169DA02
4G169FB24
4G169FB63
4G169FC08
4G169FC10
4G169HA01
4G169HE12
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC01
4H011BC03
4H011DA21
4J038HA216
4J038JA19
4J038JA26
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA24
4J038PA06
(57)【要約】
【課題】大掛かりな設備や専門業者による施工を必要とすることなく光触媒被膜を対象物の表面に簡単に形成することのできる光触媒スプレーを提供する。
【解決手段】光触媒スプレー1は、光触媒及びアルコールを含有するコーティング剤とエアゾール噴射剤との混合液10が充填されて当該混合液10を噴出口51から噴射するスプレー缶2を備えたエアゾール式スプレーであり、コーティング剤は水を含有しない非水系の液剤であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒及びアルコールを含有するコーティング剤と、
前記コーティング剤が充填されて前記コーティング剤を噴射するスプレー容器とを備え、
前記コーティング剤は、水を含有しない非水系の液剤であることを特徴とする光触媒スプレー。
【請求項2】
前記アルコールは、無水エタノールであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項3】
前記スプレー容器には、前記コーティング剤とともにエアゾール噴射剤が充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光触媒スプレー。
【請求項4】
前記コーティング剤中における前記光触媒の含有率は、10質量%以上15質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光触媒スプレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に光触媒被膜を形成する光触媒スプレーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス感染症が社会問題となっており、その感染リスクの低減を目的として、公共施設、商業施設、職場、家庭などの様々な場所において人の手指が触れる可能性のある物に対して消毒、殺菌するなどの感染対策を講じることが求められている。このような社会的背景を受けて光触媒を利用した抗ウイルス技術がいま注目を集めている。この光触媒は、光の照射を受けて活性化し、有機物(有害物質)を分解、無害化するものであり、抗ウイルス作用、抗菌作用、消臭・防臭作用などの多様な効果を奏することが知られている。特に酸化チタンを用いた光触媒は、比較的安価でありながら、化学的安定性に優れており、人体に無害であるという利点を有している。ここで、この光触媒の性質を利用した塗装技術としては、人の手指などが触れる対象物に対して光触媒のコーティング剤を塗布して、その対象物の表面に光触媒被膜を形成する技術が広く利用されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-096015号公報
【特許文献2】特開2010-247054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光触媒の塗装には、大掛かりな設備や熟練した専門業者による施工が必要となり、施工期間が長時間になるともにコストが増大するという課題があった。
【0005】
本発明は上記のような課題に鑑みてなされたものであり、大掛かりな設備や専門業者による施工を必要とすることなく光触媒被膜を対象物の表面に簡単に形成することのできる光触媒スプレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る光触媒スプレーは、光触媒及びアルコールを含有するコーティング剤と、前記コーティング剤が充填されて前記コーティング剤を噴射するスプレー容器とを備え、前記コーティング剤は、水を含有しない非水系の液剤であることを特徴とする。
【0007】
なお、本発明に係る光触媒スプレーにおいて、前記アルコールは、無水エタノールであることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る光触媒スプレーにおいて、前記スプレー容器には、前記コーティング剤とともにエアゾール噴射剤が充填されていることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係る光触媒スプレーにおいて、前記コーティング剤中における前記光触媒の含有率は、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る光触媒スプレーによれば、大掛かりな設備や専門業者による施工を必要と
することなく光触媒被膜を対象物の表面に簡単に形成することができるため、コストの低減及び施工期間の短縮を図ることが可能となる。また、コーティング剤には水が含有されておらず(つまり非水系の溶媒であり)、速乾性に優れており、電気製品や電子機器、医療機器、木製家具などの水に弱い物に対しても好適に使用することができ、非常に高い汎用性を有している。さらに、安全性に優れているため、公共施設、商業施設、職場、家庭などのあらゆる場所に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の光触媒スプレーを示す図(一部断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[光触媒スプレー]
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る光触媒スプレー1を
図1に示しており、この図を参照して光触媒スプレー1の構成について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、
図1に示す光触媒スプレー1の姿勢を基準として上下方向を規定する。
【0013】
光触媒スプレー1は、スプレー缶2と、このスプレー缶2に充填される混合液(コーティング剤と噴射剤との混合液)10とを備えたエアゾール式スプレーとして構成される。また、この光触媒スプレー1は、水を含有しない非水系スプレーである。
【0014】
<スプレー缶>
スプレー缶2は、例えばアルミニウムやスチール等からなる金属製の耐圧容器3と、耐圧容器3の上端部に取り付けられたバルブ4と、バルブ4の上端部に取り付けられたアクチュエータ5と、バルブ4の下端部に取り付けられたディップチューブ6とを備えて構成される。なお、光触媒スプレー1の非使用時(未使用時)には、スプレー缶2の頭部にキャップ(図示省略)が装着される。
【0015】
耐圧容器3は、中空の円筒状に形成されている。この耐圧容器3内には、コーティング剤と噴射剤(エアゾール噴射剤)との混合液10が充填されており、その上部には液相の噴射剤から蒸発(気化)した気相(蒸気層)11が形成されている。なお、この耐圧容器3の形状は限定されるものではなく、例えば内側底部に窪みや傾斜などが形成されていてもよい。
【0016】
バルブ4は、耐圧容器3の上端部に固定されるバルブハウジング41と、バルブハウジング41内において上下方向に移動自在に設けられたステム42と、バルブハウジング41内において軸方向に圧縮された状態で設けられたコイルバネ43とを備えて構成されている。バルブハウジング41は、中空の円筒状に形成されており、その中空部にステム42とコイルバネ43とが収容されている。バルブハウジング41の中心部には、混合液10が通過する通路部(図示せず)が形成されている。この通路部は、バルブハウジング41の軸方向(上下方向)に沿って延びており、その上端側の開口部分はアクチュエータ5の内空間に連通し、その下端側の開口部分はディップチューブ6の内空間に連通する。ステム42は、通路部の開口部分を閉鎖する閉位置(上動位置)と、通路部の開口部分を開放する開位置(下動位置)との間で移動自在である。このステム42は、コイルバネ43の弾性力を受けて上方(閉位置)に向けて常時付勢されている。
【0017】
アクチュエータ5は、バルブ4を開閉するための操作部材であり、ステム42の上端部に着脱可能に取り付けられている。このアクチュエータ5には、バルブハウジング41の通路部(上側の開口部分)に連通する噴出口(ノズル)51が形成されている。
【0018】
ディップチューブ6は、可撓性を有する軟質材料(例えばポリ塩化ビニル)により形成されている。ディップチューブ6は、バルブハウジング41の下端部に固定されており、バルブハウジング41の通路部(下側の開口部分)と連通している。このディップチューブ6は、耐圧容器3内の底部近傍までに至る長さを有しており、耐圧容器3内に充填された混合液10をバルブ4に送出する。なお、このディップチューブ6の下端部には、スプレー缶2の内容物(混合液10)を撹拌するための撹拌玉が取り付けられていてもよい。
【0019】
<混合液(スプレー缶の内容物)>
混合液10は、コーティング剤(原液)と噴射剤とを含有するエアゾール剤として構成されている。
【0020】
コーティング剤は、光触媒粒子とアルコールとを含有する非水系の液体である。つまり、このコーティング剤は、水を含有しておらず、揮発し易い速乾性を有している。
【0021】
光触媒粒子は、例えば酸化チタンなどの光触媒作用を有する金属酸化物である。この光触媒作用とは、光触媒に光が照射されることで生じた電子及び正孔の酸化還元作用により水酸ラジカルと活性酸素が生成され、この活性酸素が有機物を分解する作用である。この光触媒粒子は、コーティング剤中(原液中)に、12.5重量%含有されている。なお、コーティング剤(原液)における光触媒粒子の含有量は、特に限定されないが、十分な抗ウイルス効果、抗菌効果、安定性、分散性などを得るという観点からは、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。なお、本実施形態では、光触媒として酸化チタンを用いているが、これに限定されるものではなく、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの他の金属酸化物を適用してもよい。また、コーティング剤は、1種の光触媒粒子のみを含有してもよいし、2種以上の光触媒粒子を含有してもよい。さらに、光触媒は、波長380nm未満の紫外光のみではなく、波長380nm~780nmの可視光でも光触媒作用(光触媒活性)を示す可視光反応性の良い光触媒であることが好適である。この光触媒粒子は、アルコールと混合、撹拌等されることで、アルコール中においてほぼ均一に分散されている。
【0022】
アルコールは、光触媒粒子の分散液として使用される溶媒(有機溶媒)であり、例えばエタノール(エチルアルコール)やメタノール(メチルアルコール)などの低級アルコールである。本実施形態では、100%に近い高純度の無水エタノールを用いている。アルコール(エタノール)は、水と比べて揮発し易い特性を有するため、溶媒として使用することで、コーティング剤の乾燥時間を短縮でき、また、その消毒効果によって抗ウイルス、抗菌効果を高めることができる。
【0023】
噴射剤は、コーティング剤(スプレー缶2の内容物)をガス圧によりアクチュエータ5の噴出口51から外部に噴射させるものである。この噴射剤としては、ジメチルエーテル(DME)が適用される。このジメチルエーテルは、コーティング剤とのなじみ性(相性)が良好である。なお、本実施形態では、ジメチルエーテルを噴射剤として使用しているが、液化石油ガス(LPG)や不活性ガスなどを適用してもよい。
【0024】
[使用方法]
次に、本実施形態の光触媒スプレー1の使用方法について説明する。なお、本実施形態の光触媒スプレー1は、正立状態、倒立状態、傾けた状態のいずれの姿勢状態であっても好適に使用することができる。
【0025】
まず、光触媒スプレー1を手に持ち、光触媒スプレー1の噴出口51を対象物に指向させた状態で当該対象物から所定の距離(例えば1m程度)だけ離間させる。続いて、アクチュエータ5を指で押し下げ操作することにより、ステム42をコイルバネ43の付勢力
に抗して下方に移動させて、バルブハウジング41の通路部の開口部分を開放させる。それにより、スプレー缶2に充填された混合液10が気相(噴射剤の気化ガス)11の圧力によってディップチューブ6から吸い上げられる。この混合液10は、ディップチューブ6、バルブ4の通路部、アクチュエータ5の内空間を順番に経由して、そのアクチュエータ5の噴出口51から霧状になって外部へ噴射され、対象物の表面に塗布される。そして、そのコーティング剤を所定の時間(例えば3時間程度)乾燥させると、対象物の表面に無色透明な光触媒被膜(光触媒のコーティング層)が形成され、この対象物の表面に抗ウイルス作用、抗菌作用、消臭作用などが付与される。なお、コーティング剤の乾燥時間は、季節、気温、湿度等により適宜に設定することができる。
【0026】
なお、アクチュエータ5から指を離して押し下げ操作を解除すると、ステム42はコイルバネ43の弾性力によって上方に付勢されて元の閉位置に復帰することで、バルブ4の通路部の開口部分はステム42によって閉鎖された状態となり、混合液10の噴射が遮断される。
【0027】
以上、本実施形態の光触媒スプレー1によれば、大掛かりな設備や専門業者による施工を必要とすることなく光触媒被膜を対象物の表面に簡単に形成することができるため、コストの低減及び施工期間の短縮を図ることが可能となる。また、コーティング剤には水が含有されておらず(つまり非水系の溶媒であり)、速乾性に優れており、電気製品や電子機器、医療機器、木製家具などの水に弱い物に対しても好適に使用することができ、非常に高い汎用性を有している。さらに、安全性に優れているため、公共施設、商業施設、職場、家庭などのあらゆる場所に使用することが可能である。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 光触媒スプレー
2 スプレー缶(スプレー容器)
3 耐圧容器
4 バルブ
5 アクチュエータ
6 ディップチューブ
10 混合液
11 気相
41 バルブハウジング
42 ステム
43 コイルバネ
51 噴出口