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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109411
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20220721BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220721BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H04R1/00 321
H04R1/02 108
H04R1/34 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004698
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【弁理士】
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【弁理士】
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D017BC15
5D018BB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】防水性および撥水性の高いマイクロホンを提供する。
【解決手段】マイクロホンは、音孔を有する外郭部材12と、外郭部材の内側に配設される、畳織よりなる第1メッシュ13と、外郭部材の内径に対応する直径を有し、第1面が第1メッシュに当接するとともに、第1メッシュを外郭部材の内側に押圧するスペーサ14と、スペーサの第2面に当接する、撥水性を有する第2メッシュ15と、第2メッシュの下方に収容されるマイクロホンユニット11と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音孔を有する外郭部材と、
前記外郭部材の内側に配設される、畳織よりなる第1メッシュと、
前記外郭部材の内径に対応する直径を有し、第1面が前記第1メッシュに当接するとともに、前記第1メッシュを前記外郭部材の内側に押圧するスペーサと、
前記スペーサの第2面に当接する、撥水性を有する第2メッシュと、
前記第2メッシュの下方に収容されるマイクロホンユニットと、
を備える、
マイクロホン。
【請求項2】
前記スペーサは、前記第1面と前記第2面とを貫通する貫通孔を備え、
前記貫通孔の側壁、前記第1メッシュおよび前記第2メッシュにより区画される第1空隙をさらに備える、
請求項1記載のマイクロホン。
【請求項3】
前記スペーサは、外縁の全周に渡って、前記第2メッシュに向かって突出するリブを備え、
前記第2メッシュ、前記リブ、および前記外郭部材の内壁により区画される第2空隙をさらに備える、
請求項1又は2記載のマイクロホン。
【請求項4】
前記第2メッシュの下方において前記マイクロホンユニットを支持する音響調整部材をさらに備え、
前記音響調整部材は、
前記マイクロホンユニットの前面側に形成される前面側空気室と、前記マイクロホンユニットの後面側に形成される後面側空気室とを区画する音響調整部と、
前記音響調整部に形成され、前記前面の少なくとも一部を前記前面側空気室に開放する貫通孔と、
を有し、
前記後面側空気室の容積は、前記前面側空気室の容積より大きい、
請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項5】
前記前面側空気室および前記後面側空気室の容積比は、1対7から1対10の間である、
請求項4記載のマイクロホン。
【請求項6】
前記音響調整部は、凸状の第1湾曲面と、凹状の第2湾曲面と、を有し、前記マイクロホンユニットの前面は、前記第2湾曲面に当接する、
請求項4又は5記載のマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
水に晒される状況下で使用されるマイクロホンが知られている。このような状況として、例えば、屋外での使用や、飲料などがこぼれる可能性のある机上等に載置する状況、又は机に埋め込んで使用する状況等がある。
【0003】
これまでにも、例えば、通気性と撥水性が付与されているシート部材で筐体の第1開口部を覆うとともに、筐体の外側に排水性を備えるウィンドスクリーンを有するマイクロホンが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示されたマイクロホンは、ウィンドスクリーンが必要である分、小型化が困難であった。また、ウィンドスクリーンの保水性が高く、水を含んでしまいやすいため、一度濡れてしまうと元の性能に戻すことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-55228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、防水性および撥水性の高いマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるマイクロホンは、音孔を有する外郭部材と、前記外郭部材の内側に配設される、畳織よりなる第1メッシュと、前記外郭部材の内径に対応する直径を有し、第1面が前記第1メッシュに当接するとともに、前記第1メッシュを前記外郭部材の内側に押圧するスペーサと、前記スペーサの第2面に当接する、撥水性を有する第2メッシュと、前記第2メッシュの下方に収容されるマイクロホンユニットと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防水性および撥水性の高いマイクロホンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかるマイクロホンの第1実施形態を示す(a)側面図、(b)横断面図である。
図2】上記マイクロホンの縦断面図である。
図3】上記マイクロホンの分解斜視図である。
図4】本発明にかかるマイクロホンの第2実施形態を示す(a)側面図、(b)横断面図である。
図5】上記マイクロホンの縦断面図である。
図6】上記マイクロホンの分解斜視図である。
図7】上記マイクロホンが備える音響調整部材およびマイクロホンユニットの様子を示す、一部の部材が省略された部分拡大斜視図である。
図8】上記マイクロホンの音響等価回路図である。
図9】上記マイクロホンの周波数応答特性を示すグラフである。
図10】関連技術におけるマイクロホンの周波数応答特性を示すグラフであって、(a)前面側空気室と後面側空気室との容積比が1:2.5のマイクロホン、(b)上記容積比が1:3のマイクロホン、(c)容積比が1:3.5のマイクロホンの周波数応答特性である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明にかかるマイクロホンの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以降の説明において、マイクロホン1の軸方向をz方向、z方向に直交する方向をx方向およびy方向ともいう。また、+z方向に向く面を上面、-z方向に向く面を底面ともいう。なお、マイクロホンの配設方向はこの向きに限られない。
【0011】
●マイクロホン(1)●
図1および図2に示すように、マイクロホン1は、略円柱形状の部材である。マイクロホン1には、上端部にマイクロホンユニット11(図2参照)を収容するユニット部1aが配設される。また、マイクロホン1のユニット部1a下方において、筐体30の外周面には、ねじ部1bが螺刻されている。マイクロホン1は、このねじ部1bが机や天井等の設置面に設けられるねじ穴と螺合することで、当該設置面に固定される。筐体30の内部には、回路基板40が配設されている。回路基板40には、例えばインピーダンス変換器としてのFET(Field effect transistor)、増幅回路、ローカット回路などが実装されている。マイクロホン1の底面1cには出力コネクタ1d(図2参照)が配設されている。マイクロホンユニット11は、出力コネクタ1dを介して外部機器と電気的に接続される。
【0012】
図2および図3に示すように、ユニット部1aは、主として、マイクロホンユニット11、外郭部材12、第1メッシュ13、スペーサ14、第2メッシュ15、カバー16および固定部20を有する。
【0013】
マイクロホンユニット11は、振動板を備え、マイクロホン1の外部などからの音波を電気信号に変換する部材である。マイクロホンユニット11は、略円筒形状の部材である。なお、本実施形態においては、マイクロホンユニット11の底面は外部に連通していない。すなわち、マイクロホン1は無指向性である。なお、本発明の技術的範囲はこれに限られない。
【0014】
外郭部材12は、マイクロホン1の上面外郭を構成する部材であり、複数の音孔が設けられている有底円筒状の部材である。外郭部材12は、例えば小口径の孔を有するエッチング板又はパンチング板から成る。なお、外郭部材12は、この構成に代えて、金網内にエッチング板が設けられたものでもよい。また、外郭部材12は、複数の音孔に代えて、天面に大きな孔を一つ備えていてもよい。外郭部材12の内壁には、第1メッシュ13が圧接されている。
【0015】
第1メッシュ13は、金属製又は樹脂製のメッシュである。第1メッシュ13は、畳織により織られている。畳織は、例えば平畳織又は綾畳織である。平畳織金網は、縦線による網目を大きくし、横線を順次密着させて織りあげた金網である。綾畳織金網は、畳織金網の構成をさらに綾織にしたものである。綾畳織金網の横線は金属の表裏両面で密着しているため、綾畳織金網の密度は平畳織金網よりも高い。
【0016】
畳織は、横線が、隣接する縦線の表面から裏面に向かって、金網の平面に対して斜めに進行する織り方である。そのため、通気孔は直進しない。したがって、畳織で構成された第1メッシュ13によれば、平織等のように平面的な編み目の開きが生じず、液体は縦線と横線の交差部の隙間を通過することになる。すなわち、外部から第1メッシュ13に向かって進行する液体は、蛇行して内部に侵入する。したがって、第1メッシュ13によれば、外部からの液体の水圧を低減できる。
【0017】
さらに、畳織金網からなる第1メッシュ13によれば、ウレタン製のウィンドスクリーンを有するマイクロホンよりも小型にできる。さらにまた、畳織金網からなる第1メッシュ13によれば、ウレタン製のウィンドスクリーンに比べて、埃、砂および粉塵が網目に刺さりづらく、網目が詰まりにくいため、マイクロホン1の性能を担保できる。したがって、マイクロホン1は屋外でも使用可能である。
【0018】
第1メッシュ13は、表面張力により少量の液体や水圧の小さい液体を撥水できる。したがって、マイクロホン1は、コップからこぼれた水や小雨程度であれば、表面についた水滴をふき取ることで元の状態に容易に復旧できる。また、外側に位置する第1メッシュ13が金属製である構成によれば、このマイクロホン1は、ウレタン製のウィンドスクリーンに比べて保水性が低いため、液体が付着した際も乾燥が容易である。例えば、マイクロホン1は、机に埋め込まれ、上部のみが机の上面に露出される構成である場合に、机に液体をこぼしたりした場合にも容易に乾燥し、収音性能を維持できる。
【0019】
金属製の第1メッシュ13は、ウレタンに比べ耐久性が高い。したがって、このマイクロホン1は、メンテナンスの頻度が少なくて済むため、屋外や天井等の作業者の手が容易に届かない場所であっても、簡便に使用できる。
【0020】
スペーサ14は、略円環状の部材である。スペーサ14は、円環部14aと、小円環部14bと、複数のスポーク14cと、を有する。円環部14aはスペーサ14の外周を構成し、小円環部14bは円環部14aと略同心円であって円環部14a内に配設される。また、スポーク14cは円環部14aと小円環部14bとを接続する。言い換えれば、スペーサ14は、円環部14a、小円環部14b、および複数のスポーク14cに囲まれる、複数の貫通孔14dを有する。また、円環部14aには、外縁の全周に渡って厚さ方向に突出するリブ14eが配設されている。
【0021】
スペーサ14は、外郭部材12の内側に篏合する直径を有する。また、スペーサ14は、例えば樹脂等で形成される弾力性のある部材である。自然状態における円環部14aの外径は、外郭部材12の内径よりやや大きい。この構成によれば、外郭部材12の内部に第1メッシュ13がスペーサ14とともに圧入されると、スペーサ14は外郭部材12の内側で拡開する。すなわち、スペーサ14の第1面は、第1メッシュ13に当接するとともに、第1メッシュ13を外郭部材12の内部に押圧する。そして、第1メッシュ13およびスペーサ14は、外郭部材12の内側に固定される。
【0022】
スペーサ14の円環部14aは、互いに対面にある1対の凹部14fを有する。凹部14fは、組立状態においてカバー16の凸部16eと篏合する。
【0023】
カバー16は、マイクロホン1の底面側(-z側)に開口16aを有する有底円筒状の部材である。カバー16は、例えば樹脂製である。カバー16は、底部16bおよび外周面16cに第2メッシュ15が固定されている。すなわち、スペーサ14の第2面は、底部16bに固定された第2メッシュ15に当接している。
【0024】
第2メッシュ15は、撥水性を有する、例えば平織よりなるメッシュである。第2メッシュは、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。第2メッシュ15は、外部から侵入する液体を撥水し、カバー16内部への侵入を防止する。また、カバー16は、底部16bおよび外周面16cに複数の孔を有する。外部の音は、当該孔および第2メッシュ15を介してマイクロホンユニット11に到達する。
【0025】
このように、本発明にかかるマイクロホン1は、互いに織り方の異なる第1メッシュ13および第2メッシュ15により、高い防水性および撥水性を実現する。具体的には、マイクロホン1にかかった液体は、第1メッシュ13により分散された結果、重量が下がり、単位当たりの水圧が下がる。マイクロホン1は、この液体を、第2メッシュ15により撥水することで、内部への液体の侵入を確実に防止できる。また、外郭部材12は、音孔により液体の流入方向を第1メッシュ13に対して直交する向きに整える。すなわち、外郭部材12により、第1メッシュ13による水圧の低減効果は一層大きくなる。さらに、第1メッシュ13と第2メッシュ15との間の第1空隙K1は、水圧を一層低減し、第2メッシュ15による液体の侵入を確実に防止できる。
【0026】
ここで、第1メッシュ13は、液体のみならず気体も直進できないため、高い音響抵抗を有している。そこで、第1メッシュ13により生成される音響抵抗値を制御し、マイクロホン1の特性を担保する構成を以降に説明する。
【0027】
図2および図3を用いて上述したように、第1メッシュ13と第2メッシュ15との間には、スペーサ14が配設されている。すなわち、第1メッシュ13と第2メッシュ15との間であって、マイクロホン1の軸方向には、第1空隙K1が形成されている。第1空隙K1は、スペーサ14の円環部14a、小円環部14bおよびスポーク14cとにより区画される貫通孔の側壁により形成されている。第1空隙K1は、xy平面上に複数並設されている。また、スペーサ14の円環部14aのリブ14eは、第1メッシュ13を外郭部材12の湾曲部に沿って押圧する。その結果、リブ14eと、カバー16の外周面16cに固定される第2メッシュ15と、固定部20の第1円環部20aの内側の側壁とに区画される第2空隙K2が形成されている。
【0028】
スペーサ14が第1メッシュ13を外郭部材12の内壁に押圧する構成によれば、第1メッシュ13と第2メッシュ15との間に形成される第1空隙K1および第2空隙K2の容積を一定にできる。すなわち、第1メッシュ13により生成される音響抵抗値は、量産における個体ごとに略一定になり、かつ、長期間に渡って維持される。その結果、第1メッシュ13による音響抵抗を考慮したマイクロホン1の設計が可能となるため、音響抵抗の高い第1メッシュ13をマイクロホンユニット11の外側に配設しつつ、マイクロホン1の特性を担保できる。
【0029】
カバー16の外周面16cは、半径方向に突出する凸部16eを有する。凸部16eは、互いに向かい合う位置に対をなして形成され、スペーサ14の凹部14fと篏合する。なお、本実施形態においては、凹部14fおよび凸部16eはそれぞれ2個であったが、個数は一例である。また、カバー16は、開口16a端部に、全周に渡って半径方向に突出するリブ16dを有する。リブ16dは、固定部20に形成される段部20c(図2参照)の内壁に当接し、軸方向の位置が固定される。
【0030】
ユニット保持部材17は、マイクロホンユニット11を内側に保持する円筒状の部材である。ユニット保持部材17は、例えばエラストマー又はゴム等の弾性力を有する部材で形成されている。図2に示すように、ユニット保持部材17は、上端部にマイクロホンユニット11を保持し、筐体30の上端部に収容される。また、ユニット保持部材17は、上面側の外径が底面側の外径より大きくなっている。この外径の違いは、外周面全周に渡る段部17aを形成する。一方、筐体30の上端部の内径は、中央部の内径に比べて大きくなっている。筐体30の内壁には、この内径の違いにより、段部30aが形成される。ユニット保持部材17の段部17aは、段部30aと当接している。
【0031】
固定部20は、カバー16を保持する円環状の部材である。固定部20は、互いに径の異なる第1円環部20aおよび第2円環部20bが段部20cにより全周に渡って連結された形状である。第1円環部20aは、第2円環部20bより内径が大きい。第1円環部20aの内部には、外郭部材12が篏合する。第1円環部20aと外郭部材12は、第1メッシュ13、スペーサ14および第2メッシュ15を一体的に保持する。第2円環部20bには筐体30の上端部が挿通され、第2円環部20bと筐体30は互いに連結されている。連結の態様は適宜選択可能だが、第2円環部20bと筐体30は、例えば、第2円環部20bの小孔20dと筐体30の孔とに挿通されるねじによって連結されてもよい。
【0032】
このように、本発明に係るマイクロホン1によれば、高い防水性および撥水性を実現できる。
【0033】
●マイクロホン(2)●
本発明にかかるマイクロホンの第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。第2実施形態にかかるマイクロホンは、マイクロホンユニットの前面側および後面側を開放し、指向性マイクロホンとして構成する点で、第1実施形態と異なる。なお、以降の図において、第1実施形態と同じ構成には、同じ符号を付した。
【0034】
図5および図6に示すように、本実施形態においては、マイクロホンユニット11は、マイクロホン101の軸方向に略直交する向き(図中x方向)に保持されている。マイクロホンユニット11は、音響調整部材50により保持されている。マイクロホンユニット11の前面11aおよび後面11bは、それぞれ収音面になっている。
【0035】
音響調整部材50は、マイクロホンユニット11を保持するとともに、筐体30に連結される部材である。音響調整部材50は、弾性のある素材で形成されていてもよい。例えば、音響調整部材50は、エラストマー又はゴム成型品で形成されている。このような構成によれば、音響調整部材50が圧入されて筐体30の内部において拡開することで、音響調整部材50は筐体30と隙間なく連結される。
【0036】
音響調整部材50は、主として、基部51と、音響調整部52と、を有する。
基部51は、筐体の内周面に対応する外径を有する、略円柱状の部材である。基部51は、音響調整部材50の下部において、マイクロホンユニット11を保持するとともに、筐体30と連結される部材である。
【0037】
基部51は、上面に、略部分円筒状の収容部51aを有する。収容部51aは、マイクロホンユニット11の外周に対応する形状を有している。収容部51aは、x方向に渡って形成されている。この収容部51aは、組立状態においてマイクロホンユニット11を収容する。
【0038】
音響調整部52は、基部51の上部に配設される部材である。基部51および音響調整部52は一体に形成されていてよい。音響調整部52は、三日月状の部材である。すなわち、音響調整部52の外周面は、凸状に湾曲する第1湾曲面52aと、凹状に湾曲する第2湾曲面52bとが連結されている形状からなる。第1湾曲面52aおよび第2湾曲面52bは円筒面であり、第2湾曲面52bの曲率は第1湾曲面52aの曲率よりも大きい。第1湾曲面52aは、基部51の外周に沿って形成されていてもよい。音響調整部52の上面は、カバー16の内壁に当接している。
【0039】
音響調整部52と筐体30とが一体化されている構成によれば、小型のマイクロホン101においても長い音響端子間距離を備えることができる。したがって、本構成によれば、指向性の高いマイクロホンが実現できる。なお、音響端子とは、マイクロホンユニットに対して、実効的に音圧を与える空気の位置を指し、マイクロホンユニットが備える振動板と同時に動く空気の中心位置である。
【0040】
図6および図7に示すように、音響調整部52は、第1湾曲面52aおよび第2湾曲面52bをx方向に貫通する貫通孔53を有する。貫通孔53は、収容部51aの上方に配設されている。マイクロホンユニット11の外周面は収容部51aに当接し、前面11a側の一部が第2湾曲面52b側から貫通孔53の位置に配置されるように、マイクロホンユニット11は収容される。その結果、マイクロホンユニット11の前面11aの少なくとも一部は、貫通孔53を介して第1湾曲面52a側に開放されている。
【0041】
マイクロホンユニット11の前面11a側には、前面側空気室K111が形成されている。前面側空気室K111は、マイクロホンユニット11の前面11aと、貫通孔53の内壁と、カバー16と、カバー16外周に連結される第2メッシュ15と、に囲まれる領域である。マイクロホンユニット11の後面11b側には、後面側空気室K112が形成されている。後面側空気室K112は、マイクロホンユニット11の後面11bと、音響調整部52の第2湾曲面52bと、カバー16と、カバー16外周に連結される第2メッシュ15と、に囲まれる領域である。
【0042】
すなわち、音響調整部52は、マイクロホン101内部において、前面側空気室K111と、後面側空気室K112とを区画している。
【0043】
後面側空気室K112の容積は、前面側空気室K111の容積より十分大きい。ここで、音響抵抗の大きい第1メッシュ13が音源とマイクロホンユニット11との間に配設される場合、前側音響端子と後側音響端子の端子間距離が小さくなり、振動板の振動が小さくなってしまう。そこで、後面側空気室K112を前面側空気室K111より大きくすることで、背面側のインピーダンスが小さくなり、振動板の駆動力を確保できる。すなわち、この構成によれば、防水性および撥水性を有し、かつ、指向性の高いマイクロホンを実現できる。
【0044】
例えば、前面側空気室K111と後面側空気室K112の容積比は、1対7である。なお、前面側空気室K111と後面側空気室K112との容積比は、1対7から1対10程度までがこの防水構造において好適である。前面側空気室K111と後面側空気室K112との容積比が1対7から1対10程度であるマイクロホン101は、振動板の駆動力を十分確保できる。本実施例において容積比が1対7より小さい場合には、収音帯域における収音の性能が不十分である。容積比が1対10より大きい構成は、マイクロホン101の外形の制約上、好ましくない。
【0045】
なお、図6に示すように、本実施形態では、音響調整部材50とマイクロホンユニット11との間に、保持部材121が配設されている。保持部材121は、マイクロホンユニット11の前面11a側に位置する部分円筒状の部材である。また、保持部材121の直径は、略中央部から上方にいくに従い拡開している。保持部材121は、マイクロホンユニット11の前面11aに対応する位置に貫通孔121aを有する。保持部材121は、なくてもよく、マイクロホンユニット11は、例えば音響調整部52又は固定部120により保持されていてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、固定部20に代えて、外周面の一部が直線的に切り欠かれた固定部120が、外郭部材12および筐体30と連結している。この切り欠きの切欠面は、互いに略平行である。なお、固定部120に代えて、外周が略円筒形の固定部20が本実施形態においても外郭部材12および筐体30と連結されていてもよい。また、本実施形態は、切り欠きの数を2つとしているが、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0047】
●音響等価回路
ここで、マイクロホン101の構成を音響等価回路を用いて説明する。
図8に示すように、マイクロホンユニット11を挟んで前方側および後方側には、それぞれ音声信号源P1および音声信号源P2が配置されている。前方側に位置する音声信号源P1とマイクロホンユニット11は、直列に接続された第1メッシュ13による音響抵抗rf1、および、第2メッシュ15による音響抵抗rf2を介して等価的に接続される。また、音響抵抗rf1と音響抵抗rf2との間には、第1空隙K1により生じる音響スティフネスSf1が並列接続される。さらに、音響抵抗rf2とマイクロホンユニット11との間には、前面側空気室K111により生じる音響スティフネスSf2が並列接続される。
【0048】
後方側に位置する音声信号源P2とマイクロホンユニット11は、直列に接続された第1メッシュ13による音響抵抗rr1、および、第2メッシュ15による音響抵抗rr2を介して等価的に接続される。また、音声信号源P2とマイクロホンユニット11との間において、音響抵抗rr1と音響抵抗rr2との間には、第1空隙K1により生じる音響スティフネスSr1が並列接続される。ここで、音響抵抗rr1と音響抵抗rf1、音響抵抗rr2と音響抵抗rf2、音響スティフネスSr1と音響スティフネスSf1は、それぞれ略同等である。
【0049】
音響抵抗rr2とマイクロホンユニット11との間には、後面側空気室K112により生じる音響スティフネスSr2が並列接続される。ここで、音響スティフネスSf2と音響スティフネスSr2の差が小さい場合、前面側音波導入孔と後側音波導入孔の距離と音波の半端長が同一となる所定の周波数領域において、マイクロホンユニット11の前面側と後面側で共振が発生し、マイクロホンユニット11内部の振動板に負荷が生じる。すなわち、当該周波数領域において収音される音波のレベルが小さくなってしまう。
【0050】
音響スティフネスSf2と音響スティフネスSr2の差が十分大きい場合、前面側と後面側に位相差及び圧力差が生じ、振動板が十分に作動する。したがって、第2の実施形態のマイクロホンは、振動板が十分な駆動力を備えるため、音圧傾度型マイクロホンとして動作し、高い指向性を備える。また、前面側と後面側の共振周波数をずらすことで前述の所定の周波数における共振を抑制する。
【0051】
●周波数応答特性
図9および図10は、マイクロホンの周波数応答特性を示している。すなわち横軸は周波数を縦軸は出力レベル(dBV)を示している。そして、特性Aは収音軸に対して0度、すなわち正面から音波が到来する場合、特性Bは90度、すなわち真横から音波が到来する場合、特性Cは180度、すなわち後ろから音波が到来する場合の各特性を示している。なお、図9および図10の試験条件は、前面側空気室と後面側空気室との容積比を除いて同一である。
【0052】
図10(a)は、前面側空気室と後面側空気室との容積比が1:2.5のマイクロホンの周波数応答特性、図10(b)は、容積比が1:3のマイクロホンの周波数応答特性、図10(c)は、容積比が1:3.5のマイクロホンの周波数応答特性である。各図においては、高域限界周波数付近である周波数領域Fにおいて、各特性に下向きのピークが現れている。すなわち、この構成のマイクロホンは、収音帯域のうち、周波数領域Fの収音が十分行えない。これは、当該周波数領域Fにおいて、前面側と後面側に構成される音響等価回路が互いに共振し、振動板の振動が小さくなることによる。なお、各図によれば、容積比が大きくなるにつれ、下向きのピークが小さくなっている。
【0053】
図9は、前面側空気室K111と後面側空気室K112との容積比が1:7のマイクロホンの周波数応答特性である。同図においては、周波数領域Fにおいても、周波数応答特性が滑らかに下降している。すなわち、この構成のマイクロホンは、収音帯域に渡って十分に収音できる。
【0054】
このように、後面側空気室の容積が前面側空気室の容積よりも十分大きいマイクロホンによれば、収音帯域に渡って良好に収音できる。
【0055】
以上説明した実施の形態によれば、防水性および撥水性の高いマイクロホンを実現できる。
【符号の説明】
【0056】
1 マイクロホン
11 マイクロホンユニット
12 外郭部材
13 第1メッシュ
14 カバー
15 第2メッシュ
101 マイクロホン
50 音響調整部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10