(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109413
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】車両用ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20220721BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20220721BHJP
B60T 13/12 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T7/12 B
B60T13/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004700
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島崎 美鈴
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄介
(72)【発明者】
【氏名】▲葛▼谷 賢
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB05
3D048CC08
3D048CC54
3D048GG05
3D048HH15
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3D048RR06
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3D246LA09A
3D246LA16Z
3D246LA72Z
3D246MA03
3D246MA21
(57)【要約】
【課題】第1液圧制御機構の異常検出精度の低下を抑制しつつ、第1液圧制御機構についての異常検出までのブレーキ力不足を抑制することである。
【解決手段】本車両用ブレーキシステムにおいては、第1液圧制御機構が異常状態である第1異常状態に達する前の状態である第2異常状態であると検出された場合には、温度に基づいて決まる時間であるアシスト待ち時間が経過した後に、第2ブレーキ力制御機構が作動させられる。それにより、第1液圧制御機構が第1異常状態であるか否かの検出精度の低下を抑制しつつ、ブレーキ力不足を抑制することができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に設けられた液圧ブレーキの液圧を制御することにより前記車両に加えられるブレーキ力を制御可能な第1液圧制御機構と、
前記第1液圧制御機構とは別の、前記ブレーキ力を制御可能な第2ブレーキ力制御機構と、
前記第1液圧制御機構が異常状態である第1異常状態であるか否かを検出する第1異常状態検出装置を含み、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態であると検出されない場合に、前記第1液圧制御機構を制御することにより前記ブレーキ力を制御し、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態にあると検出された場合には、前記第1液圧制御機構を制御することなく、前記第2ブレーキ力制御機構を制御することにより前記ブレーキ力を制御する制御装置と
を含む車両用ブレーキシステムであって、
当該車両用ブレーキシステムが、当該車両用ブレーキシステムの作動液の温度を取得する温度取得装置を含み、
前記制御装置が、
前記第1液圧制御機構が、前記第1異常状態に達する前の状態である第2異常状態であることを検出する第2異常状態検出装置と、
前記第2異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第2異常状態にあると検出された時から、前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度に基づいて決まるアシスト待ち時間が経過した後に、前記第2ブレーキ力制御機構を制御して、前記ブレーキ力を制御するアシスト制御部とを含む車両用ブレーキシステム。
【請求項2】
当該車両用ブレーキシステムが、前記第1液圧制御機構の作動により発生させられた前記液圧ブレーキの実際の液圧である第1実液圧を、予め定められたサイクルタイム毎に取得する第1実液圧取得部を含み、
前記第1異常状態検出装置が、前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が設定温度である第1設定温度以上である場合には、第1設定時間の間、前記第1実液圧取得部によって取得された前記第1実液圧についてのモニタリングを行って、前記第1実液圧と第1目標液圧との差である偏差が異常判定しきい値より大きいと検出した場合に、前記第1液圧制御機構が第1異常状態であると検出し、前記作動液の温度が前記第1設定温度より低い場合には、前記第1設定時間より長い第2設定時間の間、前記第1実液圧取得部によって取得された前記第1実液圧についてのモニタリングを行って、前記偏差が前記異常判定しきい値より大きいと検出した場合に、前記第1液圧制御機構が第1異常状態であると検出するものであり、
前記第2異常状態検出装置が、前記第1設定時間より短い第3設定時間の間、前記第1実液圧取得部によって取得された前記第1実液圧についてのモニタリングを行い、前記偏差が前記異常判定しきい値より大きいと検出された場合に、前記第1液圧制御機構が前記第2異常状態であると検出するものである請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記アシスト待ち時間を、前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が設定温度である第2設定温度より低い場合は前記第2設定温度より高い場合より、長い時間に決定するアシスト待ち時間決定部を含む請求項1または2に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項4】
前記制御装置が、前記第1液圧制御機構と前記第2ブレーキ力制御機構との少なくとも一方の作動タイミングを前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が低い場合は高い場合より早くするものである請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態であると検出された場合に、前記第2ブレーキ力制御機構の制御により、前記ブレーキ力を予め定められた異常時目標ブレーキ力以上に制御する異常時制御部を含む請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記車両の走行状態に基づいて制御指令値を作成する制御指令値作成部と、
前記制御指令値作成部において作成された前記制御指令値に基づいて、前記第1液圧制御機構と前記第2ブレーキ力制御機構との少なくとも一方を制御して、前記ブレーキ力を制御するブレーキ制御部と
を含み、
前記制御指令値作成部が、前記制御指令値として目標減速度を作成するものであり、
前記ブレーキ制御部が、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態にあると検出されない場合には、前記第1液圧制御機構を前記目標減速度に基づいて制御し、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態にあると検出された場合には、前記第1液圧制御機構の作動を停止させて、前記第2ブレーキ力制御機構を前記目標減速度より大きい異常時目標減速度に基づいて制御するものである請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両にブレーキ力を付与する車両用ブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の目標データと第2の目標データとのいずれか一方に基づいて液圧ブレーキの液圧が制御される車両用液圧ブレーキシステムにおいて、第1の目標データが、判定時間である第1基準判定時間の間入力されない場合には、第2の目標データについての判定時間が短くされる。その結果、目標データが入力されない異常であることを早期に検出することができる。早期にバックアップ制御を開始することが可能となり、異常に起因するブレーキ力不足を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両用ブレーキシステムにおいて、第1液圧制御機構の異常検出精度の低下を抑制しつつ、第1液圧制御機構についての異常検出までのブレーキ力不足を抑制することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
車両用ブレーキシステムにおいて、温度が低い場合には第1液圧制御機構の作動遅れにより、モニタリング時間が短い場合には、第1液圧制御機構が正常であっても異常状態であると誤って検出されるおそれがある。この誤検出を防止するために、第1液圧制御機構が異常状態であるか否かの検出においてモニタリング時間が長くされる場合がある。しかし、モニタリング時間が長くされると、異常状態であるか否か検出されるまでの間のブレーキ力が不足する時間が長くなり、望ましくない。
【0006】
そこで、本車両用ブレーキシステムにおいては、第1液圧制御機構が異常状態である第1異常状態に達する前の状態である第2異常状態であると検出された場合には、温度に基づいて決まる時間であるアシスト待ち時間が経過した後に、第2ブレーキ力制御機構が作動させられる。それにより、第1液圧制御機構が第1異常状態であるか否かの検出精度の低下を抑制しつつ、ブレーキ力不足を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキシステムの制御装置の周辺を概念的に示す図である。
【
図2】上記車両用ブレーキシステムの回路図である。
【
図3】上記車両用ブレーキシステムの制御装置の記憶部に記憶されたアシスト待ち時間決定マップを概念的に示す図である。
【
図4】上記記憶部に記憶されたブレーキ作動タイミング決定マップを概念的に示す図である。
【
図5】上記記憶部に記憶された制御指令値作成プログラムを表すフローチャートである。
【
図6】上記記憶部に記憶されたブレーキ力制御プログラムを表すフローチャートである。
【
図7】上記記憶部に記憶された第1異常状態検出プログラムを表すフローチャートである。
【
図8】上記車両用ブレーキシステムの上流側液圧制機構が正常である場合のブレーキ力制御の状態を示す図である。
【
図9】上記車両用ブレーキシステムにおいてアシスト制御が行われた後に、上流側液圧制機構が第1異常状態であると検出された場合のブレーキ力制御の状態を示す図である。
【
図10】上記車両用ブレーキシステムにおいて温度が低い場合に、アシスト制御が行われた場合のブレーキ力制御の状態を示す図である。
【
図11】従来の車両用ブレーキシステムにおいて、上流側液圧制御機構が第1異常状態である場合のブレーキ力制御の状態を示す図である。
【
図12】上記制御装置の構造の一例を詳細に示す概念図である。
【発明の実施形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0009】
本実施例に係る車両用ブレーキシステムは、
図2に示すように、左右前輪8FL,8FRの各々に設けられた液圧ブレーキ12FL,12FR、左右後輪10RL,10RRの各々に設けられた液圧ブレーキ14RL,14RRを含む液圧ブレーキシステムであり、第1ブレーキ力制御機構,第1液圧制御機構としての上流側液圧制御機構16と、第2ブレーキ力制御機構,第2液圧制御機構としての下流側液圧制御機構18と、コンピュータを主体とする制御装置20(
図1参照)とを含む。
以下、本明細書において、液圧ブレーキ等につき、車輪位置を区別する必要がない場合等には、車輪位置を表すFL,FR,RL,RR、F,R等を省略する場合がある。
【0010】
図2に示すように、上流側液圧制御機構16は、(a)運転者によって操作されるブレーキ操作部材であるブレーキペダル39に連携させられた入力ピストン40および2つの加圧ピストン41,42を備えたマスタシリンダ43と、(b)マスタシリンダ43の加圧ピストン41の後方に設けられた背面室44に接続されたレギュレータ45等を備えた背面液圧制御装置48とを含み、背面液圧制御装置48により背面室44の液圧を制御して、加圧ピストン41,42の前方の加圧室46,47の液圧を制御する。
【0011】
マスタシリンダ43において、ハウジング50に、加圧ピストン41,42、入力ピストン40が互いに直列に、液密かつ摺動可能に嵌合され、加圧室46,47には、それぞれ、液通路54,56を介して左右前輪8の液圧ブレーキ12のホイールシリンダ36、左右後輪10の液圧ブレーキ14のホイールシリンダ38等が接続される。また、加圧ピストン41,42はリターンスプリングにより後退方向に付勢されるが、加圧ピストン41,42の後退端位置において、加圧室46,47はマスタリザーバ60に連通させられる。
【0012】
マスタシリンダ43において、加圧ピストン41は、概して段付き形状を成し、(a)前部の前ピストン部62と、(b)中間部の、半径方向に突出した中間ピストン部64と、(c)後部の、中間ピストン部64より小径の後小径部66とを含む。前ピストン部62、中間ピストン部64および後小径部66は、ハウジング50にそれぞれ液密かつ摺動可能に嵌合され、前ピストン部62の前方が加圧室46とされ、中間ピストン部64の前方が環状室70とされる。また、ハウジング50,後小径部66および中間ピストン部64によって形成された中間ピストン部64の後方の室が背面室44とされる。
【0013】
また、加圧ピストン41の後方に入力ピストン40が位置し、後小径部66と入力ピストン40との間が離間室72とされる。入力ピストン40の後部にはブレーキペダル39がオペレイティングロッド(以下、単にロッドと称する場合がある)等を介して連携させられる。
【0014】
環状室70と離間室72とは連結通路74によって接続され、連結通路74に連通制御弁76が設けられる。連通制御弁76は常閉の電磁開閉弁である。連結通路74の連通制御弁76より環状室70側の部分はストロークシミュレータ78に接続されるとともに、リザーバ通路80を介してマスタリザーバ60に接続される。リザーバ通路80には常開の電磁開閉弁であるリザーバ遮断弁82が設けられる。
【0015】
また、連結通路74の連通制御弁76より環状室側の部分に液圧センサ84が設けられる。液圧センサ84は、環状室70,離間室72が互いに連通させられ、かつ、マスタリザーバ60から遮断された状態において、環状室70,離間室72の液圧を検出する。環状室70、離間室72の液圧は、ブレーキペダル39の操作力に応じた高さとなるため、液圧センサ84を操作液圧センサと称することができる。
【0016】
背面液圧制御装置48は、レギュレータ45に加えて、高圧源93、液圧制御弁装置等を含む。高圧源93は、ポンプ86及びポンプモータ88を備えたポンプ装置90、アキュムレータ92等を含み、液圧制御弁装置は、後述する制御室112の液圧を制御するものであり、増圧制御弁94および減圧制御弁96等を含む。
アキュムレータ92には、ポンプ装置90から吐出された作動液が加圧された状態で蓄えられる。アキュムレータ92に収容された作動液の液圧であるアキュムレータ圧はアキュムレータ圧センサ98によって検出され、アキュムレータ圧センサ98によって検出されるアキュムレータ圧が、設定範囲内に保たれるようにポンプモータ88が制御される。
【0017】
レギュレータ45は、(d)ハウジング110と、(e)ハウジング110に、軸線hと平行な方向に、互いに直列に並んで設けられたパイロットピストン112および制御ピストン114とを含む。ハウジング110の制御ピストン114の前方には高圧室116が形成され、高圧源93に接続される。パイロットピストン112とハウジング110との間がパイロット圧室120とされ、制御ピストン114の後方が制御室122とされ、制御ピストン114の前方が出力室としてのサーボ室124とされる。また、サーボ室124と高圧室116との間に高圧供給弁126が設けられる。高圧供給弁126は常閉弁であり、レギュレータ45の非作動状態において、サーボ室124と高圧室116とを遮断する。なお、制御ピストン114はリターンスプリング130により後退方向に付勢される。
【0018】
制御ピストン114の内部には、低圧通路128が通り、常時、マスタリザーバ60に連通させられる。また、低圧通路128は、制御ピストン114の前端部に開口し、その開口が高圧供給弁126に対向する。そのため、制御ピストン114が後退端にある場合には、サーボ室124は高圧室116から遮断され、低圧通路128を介してマスタリザーバ60に連通させられる。制御ピストン114が前進させられ、開口が塞がると、サーボ室124がマスタリザーバ60から遮断され、高圧供給弁126が開かれて高圧室116に連通させられる。
【0019】
なお、パイロット圧室120には加圧室46が接続され、これらパイロット圧室120と加圧室46とは、常時、連通状態にある。そのため、パイロットピストン112には、常時、加圧室46の液圧が作用する。
また、サーボ室124には背面室44が接続され、これらサーボ室124と背面室44とは常時連通状態にある。そのため、サーボ室124の液圧であるサーボ圧Psと背面室44の液圧とは原則として同じ高さになる。サーボ室124の液圧であるサーボ圧Psはサーボ圧センサ132によって検出される。
【0020】
増圧制御弁(SLA)94と減圧制御弁(SLR)96とは、制御室112に接続される。増圧制御弁94は、制御室122と高圧源93との間に設けられ、減圧制御弁96は、制御室122とマスタリザーバ60との間に設けられる。これら増圧制御弁94のコイル,減圧制御弁96のコイルへの供給電流(以下、コイルへの供給電流を単に供給電流と称する場合がある。他の電磁弁についても同様とする)の制御により、制御室122の液圧が制御される。また、制御室122にはダンパ134が接続され、制御室122とダンパ134との間で作動液の授受が行われる。
【0021】
本実施例においては、レギュレータ45における制御室122の液圧とサーボ室124のサーボ圧Psとの関係、マスタシリンダ43における背面室44の液圧と加圧室46,47の液圧との関係は、レギュレータ45、マスタシリンダ43の構造で決まる。そのため、加圧室46,47の液圧が目標液圧に近づくように、制御室122の液圧が制御される。
【0022】
下流側液圧制御機構18は、(a)スリップ制御弁装置150、(b)減圧用リザーバ152F,152Rの作動液を汲み上げて、スリップ制御弁装置150の上流側に吐出するポンプ154F,154Rおよびポンプモータ156を備えたポンプ装置158、(c)ポンプ154F,154Rとマスタシリンダ43の加圧室46,47との間に設けられた常開の液圧制御弁160F,160R等を含む。液圧制御弁160F,160Rは、マスタシリンダ43の加圧室46,47の液圧に対する液圧ブレーキ12FR,12FL,14RR,14RLのホイールシリンダ36FR,36FL,38RR,38RLの液圧を制御するものである。
【0023】
下流側液圧制御機構18は前後2系統式とされている。前輪側の系統において、液通路54に、左右前輪8FL,8FRのホイールシリンダ36FL,36FRの各々に接続された個別通路146FL,146FRが接続される。個別通路146FR,146FLの各々には保持弁170FL,170FRが設けられる。また、ホイールシリンダ36FL,36FRの各々と減圧用リザーバ152Fの液室178Fとが減圧通路によって接続され、減圧通路の各々に減圧弁172FL,172FRが設けられる。
【0024】
後輪側の系統において、液通路56に、ホイールシリンダ38RL,38RRの各々に接続された個別通路148RL,148RRが接続され、個別通路148RL,148RRの各々には保持弁170RL,170RRが設けられる。また、ホイールシリンダ38RL,38RRの各々と減圧用リザーバ152Rの液室178Rとの間には、それぞれ、減圧弁172RL,172RRが設けられる。これら保持弁170、減圧弁172、減圧用リザーバ152等により、スリップ制御弁装置150が構成される。
【0025】
以下、前輪側の系統について説明し、後輪側の系統についての説明を省略する。
減圧用リザーバ152Fは、ハウジングと、ハウジングに摺動可能に嵌合された仕切り部材174Fと、ハウジングの仕切り部材174Fの一方に設けられた弾性部材176Fとを含む。ハウジングの仕切り部材174Fの弾性部材176Fが設けられた側との反対側が液室178Fとされ、作動液が収容される。
【0026】
液室178Fには、それぞれ、補給弁179Fが設けられる。補給弁179Fは、弁座および弁子と、弁子を弁座に押し付ける向きに弾性力を加えるスプリングと、仕切り部材174Fに設けられた開弁部材175Fとを含む。減圧用リザーバ152Fにおいて、液室178Fに収容された作動液の液量が設定量以上である場合には、弁子が弁座に着座させられ、補給弁179Fは閉状態にある。液室178Fに収容された作動液の液量が設定量より少なくなると、仕切り部材174Fがスプリング176Fの弾性力により移動させられ、開弁部材175Fにより弁子が弁座から離間させられ、補給弁179Fが開状態に切り換えられる。
【0027】
減圧用リザーバ152Fの液室178Fと、液通路54の個別通路146FL,146FRの接続部より上流側の部分(保持弁170FL,170FRより上流側の部分)とは、ポンプ通路180Fによって接続される。ポンプ通路180Fには、ポンプ154Fが設けられる。また、ポンプ通路180Fの、ポンプ154Fの吐出側の部分には、それぞれ、ダンパ、絞り等が設けられ、ポンプ154Fから吐出された作動液の脈動が抑制される。また、ポンプ154Fの吸引側は、吸入弁を介して減圧用リザーバ152Fの液室178Fに接続される。
【0028】
また、液通路54のポンプ通路180Fの接続部より上流側の部分には液圧制御弁160Fが設けられ、液通路54の液圧制御弁160Fより上流側の部分と減圧用リザーバ152Fとは、それぞれ、補給弁179Fを介して補給通路182Fによって接続される。
【0029】
液圧制御弁160Fは、液圧制御弁160Fの上流側の部分の液圧と下流側の部分の液圧との差圧dPを、液圧制御弁160Fへの供給電流に応じた大きさに制御するものである。液圧制御弁160Fへの供給電流が大きくなると差圧dPが大きくなり、マスタシリンダ43の加圧室46の液圧に対するホイールシリンダ36の液圧が高くなる。
【0030】
また、左右後輪10には、それぞれ、電動パーキングブレーキ186が設けられ、アクチュエータ188(
図1においてEPBACT188と記載した)により作動させられる。
【0031】
本実施例においては、主通路54にマスタシリンダ圧センサ190が設けられ、個別通路146FL,148RRにホイールシリンダ圧センサ192F,192Rが設けられる。マスタシリンダ圧センサ190は、液通路54に設けられ、加圧室46の液圧を検出するものである。加圧室46,47の液圧はほぼ同じであると推測されるため、マスタシリンダ圧センサ190の検出値に基づけば、加圧室47の液圧を推定することができる。ホイールシリンダ圧センサ192F,192Rは、ホイールシリンダ36FL,38RRの液圧を検出するものである。前輪側、後輪側の各々において、ホイールシリンダ36FR,36FLの液圧がほぼ同じである場合、ホイールシリンダ38RL,38RRの液圧がほぼ同じである場合には、いずれか一方の液圧を検出すれば、他方の液圧を推定することができる。
【0032】
また、左右前輪8、左右後輪10の各々には、それぞれ、車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ194が設けられる。車輪速度センサ194の各々の検出値に基づいて車両の走行速度が取得される。
【0033】
制御装置20は、
図1に示すように、コンピュータを主体とするものであり、制御指令値作成部198、ブレーキ制御部200等を含む。また、制御装置20は、実行部、記憶部、入出力部等を含み、入出力部には、操作液圧センサ84、アキュムレータ圧センサ98、サーボ圧センサ132、マスタシリンダ圧センサ190、ホイールシリンダ圧センサ192、車輪速センサ194、デジタルカメラ212、ソナー214、温度センサ216等が接続されるとともに、上流側液圧制御機構16に含まれるアクチュエータ(ポンプモータ88、増圧制御弁94、減圧制御弁96、連通制御弁76、リザーバ遮断弁82等)、下流側液圧制御機構18に含まれるアクチュエータ(ポンプモータ156、液圧制御弁160、保持弁170、減圧弁172)、電動パーキングブレーキ186のアクチュエータ188等が図示しない駆動回路を介して接続される。
【0034】
デジタルカメラ212、ソナー214は、車両の複数の部分に設けられる。温度センサ216は、外気温度を検出するものであっても、車両用ブレーキシステムの内部の温度を検出するものであってもよいが、本実施例においては、温度センサ216によって検出された温度に基づいて車両用ブレーキシステムの作動液の温度が取得される。外気温度や車両用ブレーキシステムの内部の温度が、作動液の温度であるとしたり、温度センサ216の検出値と液圧ブレーキ12,14の作動時間等とに基づいて作動液の温度を取得したりすること等ができる。
【0035】
制御装置20には、照合ECU(electric control unit)218が接続される。照合ECU218は、車外に存在する情報通信端末220との間で情報の通信を行うものであり、例えば、情報通信端末220のIDの照合を行ったり、情報通信端末220から供給された情報であるリモート情報を取得したりする。リモート情報は、照合ECU200を経て制御装置20に供給される。また、リモート情報に基づいて行われる自動駐車制御をリモート駐車制御と称する。リモート駐車制御は、車両に運転者等が乗車していない場合に行われる。
【0036】
リモート駐車制御において、制御指令値作成部198は、車両に設けられた複数のデジタルカメラ212により取得された撮像画像、複数のソナー214から供給された情報等に基づいて、画像認識を行い、車両を目標駐車位置へ移動させる場合の、車両の経路を作成し、走行計画を作成する。また、作成した走行計画に基づいて、液圧ブレーキ12,14の作動要求(作動開始要求等を含む)、目標減速度等の制御指令値を作成して、ブレーキ制御部200に供給する。制御指令値作成部198は、認識した画像に基づいて、当該車両用ブレーキシステムが搭載された車両である自車両の周辺に存在する立体物、人(以下、立体物、人等を物体と総称する場合がある)と自車両との間の距離Dを取得する。そして、取得した距離D、自車両と物体との間の接近速度、温度センサ216の検出値に基づいて取得された作動液の温度等に基づいて、液圧ブレーキ12,14の作動タイミングを取得して、走行計画を作成または修正する。
【0037】
ブレーキ制御部200は、制御指令値作成部198から供給された制御指令値(例えば、液圧ブレーキ12,14の作動要求、目標減速度等)に基づいて、上流側液圧制御機構16、下流側液圧制御機構18、EPBACT188等を制御する。例えば、ブレーキ制御部200において、目標減速度に対応する液圧ブレーキ12,14の液圧の目標値である総目標液圧が取得され、液圧ブレーキ12,14の実際の液圧である実液圧が総目標液圧に近づくように、増圧制御弁94、減圧制御弁96、液圧制御弁160等への供給電流が制御される。また、自車両が目標駐車位置に到達した場合には、EPBACT188を制御してパーキングブレーキを作動させる。
【0038】
なお、制御装置20は、ブレーキ制御部200だけでなく、HV/EFI(hybrid vehicle/electronic fuel injection)制御部、EPS(electronic controlled power steer)制御部、SBW(shift by wire)制御部等を含み、HV/EFIアクチュエータ、EPSアクチュエータ、SBWアクチュエータ等も制御するものであるが、これらHV/EFIアクチュエータ、EPSアクチュエータ、SBWアクチュエータ等の制御については、本発明とは関係がないため、説明を省略する。
【0039】
以上のように構成された車両ブレーキシステムにおいて、リモート駐車制御が行われる場合の作動について説明する。
【0040】
リモート駐車制御において、ブレーキ制御部200は、制御指令値作成部198において作成された制御指令値である目標減速度に対応する総目標液圧を取得し、液圧ブレーキ12,14の実際の液圧が総目標液圧に近づくように、上流側液圧制御機構16を制御する。すなわち、上流側液圧制御機構16が異常状態でない場合には、上流側液圧制御機構16の作動により液圧ブレーキ12,14に液圧が発生させられ、自車両が減速させられる。
【0041】
上流側液圧制御機構16において、レギュレータ45が作動させられ、背面室44の液圧が制御され、加圧室46,47の液圧が制御される。
背面液圧制御装置48において、増圧制御弁94、減圧制御弁96の制御により、制御室122の液圧が制御される。制御ピストン114が前進させられ、サーボ室124にサーボ圧が発生し、背面室44に供給される。背面室44の液圧により加圧ピストン41が前進させられ、加圧ピストン42が前進させられる。それにより、加圧室46,47に液圧が発生させられる。また、加圧室46,47とホイールシリンダ36,38とが連通状態にある場合には、加圧室46,47の液圧がホイールシリンダ36,38に供給され、液圧ブレーキ12,14が作動させられる。ホイールシリンダ36,38の液圧は加圧室46,47の液圧はほぼ同じになる。
【0042】
本実施例においては、
図8に示すように、マスタシリンダ圧センサ190によって検出された加圧室46の液圧である実液圧(第1実液圧、上流側実液圧と称することができる)が、総目標液圧である上流側目標液圧に近づくように、増圧制御弁94、減圧制御弁96が制御される。
【0043】
また、ブレーキ制御部200において、上流側液圧制御機構16が異常状態であるか否かが検出される。本実施例においては、ブレーキ制御部200において、マスタシリンダ圧センサ190の検出値がサイクルタイム毎に取得され、上流側実液圧が取得される。サイクルタイム毎に、上流側実液圧と上流側目標液圧との差である偏差が取得され、異常判定しきい値より大きいか否かが判定されるのであるが、上流側液圧制御機構16が異常状態である第1異常状態にあるか否かを精度よく検出するために、モニタリング時間が長くされる。特に、リモート駐車制御のように無人走行が行われる場合には、車両用ブレーキシステムの異常の有無を高い精度で検出する必要性が高いのである。
【0044】
一方、作動液の温度が低く、粘性が高い場合には背面液圧制御機構48における作動遅れ等に起因して、上流側液圧制御機構16が正常であっても、加圧室46,47の液圧の増加が遅れ、第1異常状態であると誤って検出される場合がある。この誤検出を防止するために、作動液の温度が設定温度である第1設定温度より低い場合には、作動液の温度が第1設定温度以上である場合(常温を含む)より、モニタリング時間が長くされる。第1設定温度は、作動液の粘性が高くなり、作動遅れが生じると推測される温度とすることができる。
【0045】
本実施例においては、作動液の温度が第1設定温度以上である場合にはモニタリング時間が第1設定時間とされ、第1設定温度より低い場合にはモニタリング時間が第1設定時間より長い第2設定時間とされる。
例えば、作動液の温度が第1設定温度以上である場合には、第1設定時間の間、サイクルタイム毎にマスタシリンダ圧センサ190の検出値が取得され、偏差が異常判定しきい値より大きいか否かが判定されるが、偏差が異常判定しきい値より大きいと判定された回数が第1異常判定回数以上になった場合、第1設定時間の間に、サイクルタイム毎に取得された複数の偏差を統計的に処理した値が異常判定しきい値δsより大きいと検出された場合、第1設定時間が経過した場合に、偏差が異常判定しきい値δsより大きい場合等のうちの1つ以上が成立した場合に、上流側液圧制御機構16が第1異常状態であると検出されるようにすることができる。異常判定しきい値δsは、上流側液圧制御機構16が正常である場合には生じ難い偏差の大きさに基づいて決まる値とすることができる。
【0046】
また、作動液の温度が第1設定温度より低い場合には、第2設定時間の間、サイクルタイム毎にマスタシリンダ圧センサ190の検出値が取得され、例えば、偏差が異常判定しきい値δsより大きいか否かが判定され、異常判定しきい値δsより大きいと判定された回数が第1異常判定回数より多い第2異常判定回数以上になった場合、第2設定時間の間に、サイクルタイム毎に取得された複数の偏差を統計的に処理した値が異常判定しきい値δsより大きいと検出された場合、第2設定時間が経過した場合に、偏差が異常判定しきい値δsより大きい場合等のうちの1つ以上が成立した場合に、上流側液圧制御機構16が第1異常状態であると検出されるようにすること等ができる。
【0047】
図7の第1異常検出プログラムは、制御装置20(ブレーキ制御部200)において、予め定められたサイクルタイム毎に実行される。
ステップ101(以下、単にS101と略称する。他のステップについても同様とする)において、マスタシリンダ圧センサ190の検出値である上流側実液圧が取得され、S102において、総目標液圧である上流側目標液圧が取得される。S103において、温度センサ216の検出値に基づいて作動液の温度が取得され、S104において、作動液の温度が第1設定温度Temth1より低いか否かが判定される。そして、作動液の温度が、第1設定温度以上である場合には、S105において第1設定時間の間モニタリングが行われ、第1設定温度より低い場合には、S106において第2設定時間の間モニタリングが行われる。S107において、上流側液圧制御機構16が第1異常状態であると検出されたか否かが判定される。判定がYESである場合には、S108において、異常フラグがONとされる。
【0048】
異常フラグがONになった場合には、
図11に示すように、リモート駐車制御が中断されて、上流側液圧制御機構16が停止させられ、下流側液圧制御機構18が作動させられる。
【0049】
下流側液圧制御機構18において、ポンプ装置158が作動させられ、ホイールシリンダ36,38の液圧が液圧制御弁160の制御により制御される。
液圧制御弁160の下流側の液圧はホイールシリンダ36,38の液圧に対応し、上流側の液圧は加圧室46,47の液圧に対応する。液圧制御弁160への供給電流の制御により、これら上流側の液圧と下流側の液圧との差圧が制御されるのであり、ホイールシリンダ36,38の液圧が加圧室46,47の液圧に対して大きくされる。
【0050】
ホイールシリンダ圧センサ192の検出値からマスタシリンダ圧センサ190の検出値を引いた差圧が下流側実液圧とされ、下流側実液圧が総目標液圧に基づいて取得された下流側目標液圧に近づくように、ポンプ装置158の作動状態において、液圧制御弁160への供給電流が制御される。上流側液圧制御機構16が停止した状態において、差圧である下流側実液圧はホイールシリンダ36,38の液圧とほぼ同じとなり、総目標液圧が下流側目標液圧とされる。
【0051】
しかし、上流側液圧制御機構16が、第1異常状態であるか否かの検出には長時間を要するため、第1異常状態であると検出されるまでの間、ブレーキ力が不足する場合がある。
それに対して、上流側液圧制御機構16が第1異常状態であるか否かが検出される前に、むやみに下流側液圧制御機構18を作動させると、ポンプ装置158から吐出された作動液が液通路54に供給され、マスタシリンダ圧センサ190の検出値が変化する場合があり、上流側液圧制御機構16が異常であるか否かを精度よく検出することが困難となる場合がある。
【0052】
そこで、上流側液圧制御機構16が第1異常状態にあるか否かが検出される前において、下流側液圧制御機構18を、作動液の温度が低い場合は高い場合より遅れて作動させて、ブレーキ力のアシストが行われるようにした。換言すると、上流側液圧制御機構16が、第1異常状態に達する前の第2異常状態にあると検出された時点からアシスト待ち時間が経過した後に、下流側液圧制御機構18が作動させられるようにするとともに、アシスト待ち時間が、作動液の温度が低い場合は高い場合より長くしたのである。
【0053】
本実施例においては、制御装置20の記憶部には、アシスト待ち時間決定マップが記憶されている。
図3に示すように、アシスト待ち時間は、作動液の温度が高い場合は低い場合より短くされる(作動液の温度が設定温度である第2設定温度以上の場合は第2設定温度より低い場合より短くされる)。例えば、アシスト待ち時間は、温度が高くなるにつれて連続的または段階的に短くなるようにすること等ができる。アシスト待ち時間決定マップは、予め、シミュレーション、実験等により取得したり、理論的に取得したりしておくこと等ができる。
なお、
図3において、第2設定温度は、常温より低い値として記載したが、第2設定温度は常温以上の温度とすることもできる。
【0054】
上流側液圧制御機構16の第2異常状態は、第1異常状態であると検出される前の状態である。例えば、第2異常状態であるか否かを検出する場合のモニタリング時間を、第1設定時間より短い第3設定時間として、第3設定時間の間のモニタリングにより偏差が異常判定しきい値δsより大きいと検出された場合に、第2異常状態であると検出されるようにすることができる。第3設定時間は、第1設定時間に比較して非常に短い時間とすることができる。
【0055】
一方で、上流側液圧制御機構16が第2異常状態であると検出されても、直ちに、下流側液圧制御機構18が作動させられないため、リモート駐車制御において、ブレーキ力が不足する場合がある。そこで、リモート駐車制御中おいて、自車両の周辺の物体(壁の場合がある)等と自車両との間の距離Dと自車両の走行速度Vとの関係が、ブレーキ作動タイミングを表すマップより距離Dが短いまたは走行速度Vが大きい場合に、液圧ブレーキ12,14の作動要求が出される場合において、そのブレーキ作動タイミングを表すマップが、作動液の温度が低い場合は高い場合より、距離Dが長く、走行速度Vが小さい関係に設定されるようにした。
【0056】
本実施例においては、
図4に示すブレーキ作動タイミング決定マップが記憶されている。ブレーキ作動タイミング決定マップは、作動液の温度が第3設定温度Temth3より低い場合は第3設定温度Temth3以上である場合より、作動タイミングが早くなるように設定される。作動液の温度が第3設定温度以上である場合には、ブレーキ作動タイミング決定マップが一点鎖線に示す常温時マップが選択され、走行速度(物体が人または立体物である場合には自車両と物体との接近速度は自車両の走行速度とほぼ同じであると考えることができる)Vと距離Dとが、ドットを付した領域に位置する場合に液圧ブレーキ12,14の作動要求が出される。作動液の温度が第3設定温度より低い場合には、ブレーキ作動タイミング決定マップが実線で示す低温時マップが選択され、走行速度Vと距離Dとがグレーに付した領域に位置する場合に、液圧ブレーキ12,14の作動要求が出される。
【0057】
このように、実線で示す低温時マップと一点鎖線で示す常温時マップとから明らかなように、作動液の温度が低い場合には高い場合に比較して、液圧ブレーキ12,14の作動要求が出されるタイミングが早くされるのであり、走行速度Vが小さくても、距離Dが長くても液圧ブレーキ12,14の作動要求が出される。
第3設定温度は、第1設定温度または第2設定温度とほぼ同じ温度としても、異なる温度としてもよい。また、第1設定温度と第2設定温度とは、ほぼ同じ温度としても異なる温度としてもよい。
【0058】
制御装置20においては、
図5のフローチャートで表される制御指令値作成プログラムが予め定められたサイクルタイム毎に実行される。
S1において、異常フラグがONであるか否かが判定される。S1の判定がNOである場合には、S2において、温度センサ216の検出値に基づいて作動液の温度が取得される。S3において、作動液の温度Temが第3設定温度Temth3より低いか否かが判定される。
【0059】
S3の判定がNOである場合には、S4において、
図4の一点鎖線で示す常温マップが選択され、判定がYESである場合には、S5において、実線で示す低温マップが選択される。
S6において、自車両と物体等との間の距離Dが取得され、S7において、車輪速センサ194の検出値等に基づいて自車両の走行速度Vが取得される。
【0060】
そして、S8において、距離D,走行速度Vが選択されたブレーキ作動タイミングマップより距離Dが短い、または、走行速度Vが大きい側の領域に位置するか否か、すなわち、液圧ブレーキ12,14の作動要求があるか否かが判定される。判定がYESである場合には、S9において、制御指令値である目標減速度が作成される。S8の判定がNOである場合には、S9が実行されることはない。
【0061】
S1の判定がYESの場合には、S2以降が実行されることはない。リモート駐車制御は行われないからである。
【0062】
制御装置20のブレーキ制御部200において、
図6のフローチャートで表されるブレーキ力制御プログラムが実行される。
S21において、異常フラグがONであるか否かが判定される。判定がNOである場合には、S22において、目標減速度が設定減速度Gsより大きいか否かが判定される。設定減速度Gsは、ブレーキ力不足が生じるおそれがあると考えられる大きさであり、上流側液圧制御機構16によるブレーキ力が小さい場合にアシスト制御を行った方がよいと考えられる大きさとすることができる。また、設定減速度Gsは、液圧ブレーキ12,14を作動させる要求があるということを確実に認識し得る大きさとすることもできる。S23において、目標減速度に基づいて上流側目標液圧が取得され、S24において、マスタシリンダ圧センサ190の検出値である上流側実液圧が取得される。S25において、偏差が異常判定しきい値δsより大きいか否かが判定される。
【0063】
S22またはS25の判定がNOである場合には、S26において、通常制御が行われる。上流側液圧制御機構16が第1異常状態、第2異常状態であると検出されていない場合、または、目標減速度が設定減速度Gsより小さい場合には、リモート駐車制御における目標減速度が実現されるように上流側液圧制御機構16が制御される。
【0064】
S25の判定がYESである場合には、上流側液圧制御機構16が第2異常状態であると検出される。本実施例においては、異常フラグがOFFであり、かつ、偏差が異常判定しきい値δs以上であると1回以上判定された場合に、第2異常状態であると判定される。換言すると、偏差が取得され、異常判定しきい値δs以上であると1回以上判定し得る時間が第3設定時間であると考えることができる。
【0065】
S27において、温度センサ216の検出値に基づいて作動液の温度が取得され、S28において、
図3のマップに従って、アシスト待ち時間TWが決定される。例えば、作動液の温度が常温以上の温度Tem1である場合にはアシスト待ち時間TW1に決定され、作動液の温度が低い温度Tem2である場合にはアシスト待ち時間TW2に決定される。そして、S29において、S25の判定が最初にYESになってからの経過時間tがアシスト待ち時間TWに達したか否かが判定される。判定がYESである場合には、S30において、アシスト制御が行われ、判定がNOである場合には、S26において通常制御が行われる。なお、S21の判定がYESの場合にはS31において異常時制御が行われる。
【0066】
なお、S28において、アシスト待ち時間TWを決定する際に、上流側目標液圧が考慮されるようにすることもできる。例えば、作動液の温度が同じである場合において、上流側目標液圧が高い場合は低い場合よりアシスト待ち時間TWが短くなるように決定されるようにすることもできる。
【0067】
S26の通常制御の一例を
図8に示す。通常制御においては、マスタシリンダ圧センサ190の検出値である上流側実液圧が上流側目標液圧(総目標液圧に対応)に近づくように、増圧制御弁94、減圧制御弁96が制御される。上流側液圧制御機構16が第2異常状態であると検出された場合であってアシスト待ち時間が経過する前においては通常制御が行われるが、液圧ブレーキ12,14の作動タイミングが、
図4に示す温度で決まるブレーキ作動タイミング決定マップに基づいて取得されるため、リモート駐車制御におけるブレーキ力不足は抑制される。
【0068】
S30のアシスト制御においては、上流側液圧制御機構16と下流側液圧制御機構18とで協調制御が行われる。総目標液圧から上流側実液圧を引いた値に基づいて下流側目標液圧が取得される。そして、ホイールシリンダ圧センサ192によって検出されたホイールシリンダ圧とマスタシリンダ圧センサ190によって検出されたマスタシリンダ圧との差圧(下流側実液圧)が下流側目標液圧に近づくように、ポンプモータ156が作動させられるとともに、液圧制御弁160が制御される。
【0069】
例えば、
図9に示すように、作動液の温度が第1設定温度以上の温度Tem1である場合には、第2異常状態であると検出された時点からアシスト待ち時間TW1が経過した後に、S29の判定がYESとなり、S30においてアシスト制御が行われる。また、第1設定時間の経過後に、上流側液圧制御機構16が第1異常状態であるか否かが判定されるが、第1異常状態であると検出された場合には、S21の判定がYESとなり、S31において異常時制御が行われる。異常時制御においては、制御指令値作成部198において決定されたリモート駐車制御用の目標減速度とは関係なく、総目標液圧である下流側目標液圧が異常時目標液圧に決定されて、下流側液圧制御機構18が制御される。下流側実液圧が下流側目標液圧である異常時目標液圧に近づくように、液圧制御弁160が制御される。上流側液圧制御機構18の作動は停止されているため、マスタシリンダ圧センサ190の検出値は小さく、下流側実液圧は、ほぼホイールシリンダ36,38の液圧と同じであると考えられる。
【0070】
なお、異常時目標液圧は、異常時目標ブレーキ力、異常時目標減速度が実現される大きさである。換言すれば、下流側実液圧が異常時目標液圧に近づくように制御されることにより、原則として、車両に異常時目標ブレーキ力が加えられ、車両の減速度が異常時目標減速度に近づけられる。
【0071】
また、
図10に示すように、作動液の温度が第1設定温度より低い温度Tem2である場合には、アシスト待ち時間がTW2に決定される。第2異常状態であると検出された時点からアシスト待ち時間TW2が経過した後に、S30においてアシスト制御が行われる。また、第2設定時間が経過する前であっても、上流側実液圧が大きくなり、偏差が異常判定しきい値δsより小さくなった場合には、通常制御が行われる。
【0072】
このように、本実施例においては、作動液の温度が低い場合は高い場合より、下流側液圧制御機構18のアシストタイミングが遅くされるため、作動液の温度が低く、上流側液圧制御機構16の作動遅れが生じても、上流側液圧制御機構16が第1異常状態であるか否の検出精度の低下を抑制することができる。また、リモート駐車制御において、温度が低い場合は高い場合より自車両と物体との間の距離Dが大きく、自車両の走行速度である接近速度Vが小さくても、液圧ブレーキ12,14が作動させられるようにされている。そのため、アシストタイミングが遅くなることに起因するリモート駐車制御における不都合を抑制することができ、リモート駐車制御の安全性を向上させることができる。
【0073】
以上のように、本実施例においては、第1異常状態検出装置は、制御装置20の異常検出プログラムを記憶する部分、実行する部分等を含み、第2異常状態検出装置は、制御装置20の液圧制御プログラムのS23~25を記憶する部分、実行する部分等を含む。また、第1実液圧取得部は、マスタシリンダ圧センサ190、制御装置20のS101,S24を記憶する部分、実行する部分等を含み、アシスト待ち時間決定部が、制御装置20の
図3のマップを記憶する部分、S27,28を記憶する部分、実行する部分等を含み、アシスト制御部が、制御装置のS30を記憶する部分、実行する部分等を含み、異常時制御部が、制御装置のS31を記憶する部分、実行する部分等を含む。制御指令値作成部が、制御装置の制御指令値作成プログラムを記憶する部分、実行する部分等を含み、ブレーキ制御部が、制御装置20のブレーキ制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等を含む。なお、第1実液圧が上流側実液圧に対応し、第1目標液圧が上流側目標液圧に対応する。
【0074】
なお、上記実施例においては、リモート駐車制御における液圧ブレーキ12,14の液圧の制御について説明したが、リモート駐車制御が行われる場合に限らず、広く自動ブレーキが行われる場合等に適用することができる。
【0075】
また、制御装置20の構造は問わない。制御装置20は複数のECUを含むものであっても、1つのECUを含むものであってもよい。制御装置20が複数のECUを含む場合の一例を
図12に示す。なお、
図12と
図1とで、同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、本実施例において、制御装置20は、コンピュータを主体とする複数のECU230,232,236,238等を含む。これら複数のECU230~238等は、CGW(Central gate way)246、バス248~252等を介して互いに通信可能に接続されている。また、バス248には、デジタルカメラ212、ソナー214、温度センサ216等が接続され、デジタルカメラ212によって得られた画像情報、ソナー214によって得られた情報、温度センサ216によって検出された温度等の情報は、複数のECU230,232,236,238等に供給可能とされている。
【0077】
ECU230は、PVM(panoramic view monitor)ECU230である。PVMECU230は、車両の周辺の立体物、人、区画線等を認識する画像認識部を備えたものであり、例えば、複数のデジタルカメラ212の撮像画像等に基づいて、パノラマ画像を作成する。
【0078】
ECU232はCSR(clearance sonar)ECU232である。CSREUC232は、経路生成走行計画部、車両制御部等を含む。経路生成走行計画部は、PVMECU230から供給されたパノラマ画像を表す情報、複数のソナー214からの情報等に基づいて画像認識を行い、俯瞰画像を作成し、車両を目標駐車位置へ移動させる場合の、車両の経路、走行計画を作成するものである。車両制御部は、経路生成走行計画部において作成された経路、走行計画等に基づいて、車両用ブレーキシステム等に対する制御指令値を作成して、運転マネジャ242に出力するものである。また、経路作成走行計画部は、俯瞰画像に基づいて、車両の周辺に存在する立体物、人等の物体と、車両である自車両との間の距離Dを取得する。そして、取得された距離D,温度センサ216の検出値に基づいて取得された作動液の温度等に基づいて、液圧ブレーキ12,14の作動タイミングを取得して、走行計画を作成する場合もある。
【0079】
ECU236は上流側ブレーキECU236である。上流側ブレーキECU236には、上流側液圧制御機構16が接続される。上流側液圧制御機構16から上流側ブレーキECU236には、上流側液圧制御機構16に含まれるサーボ圧センサ132等の複数のセンサの検出値が供給され、上流側ブレーキECU236から上流側液圧制御機構16には、ポンプモータ88、増圧制御弁94、減圧制御弁96等の電磁弁のソレノイドへ制御指令値が出力される。
【0080】
ECU238は下流側ブレーキECU238である。下流側ブレーキECU238には、下流側液圧制御機構18が接続される。下流側液圧制御機構18から下流側ブレーキECU238には、下流側液圧制御機構18に含まれるマスタシリンダ圧センサ190等の複数のセンサの検出値が供給されるとともに、下流側ブレーキECU238からポンプモータ156、液圧制御弁160、保持弁170等の電磁弁のソレノイド、パーキングブレーキアクチュエータ188へ制御指令値が出力される。また、運転マネジャ242は下流側ブレーキECU238に含まれるが、運転マネジャ242は、CSREUC232の車両制御部から供給された制御指令値に基づいて下流側液圧制御機構18を制御するとともに、制御指令値を上流側ブレーキECU236に供給する。制御指令値は、HV/EFI制御部、EPS制御部等にも供給される。上流側ブレーキECU236は、制御指令値に基づいて上流側液圧制御機構16を制御する。
【0081】
また、上述のプログラムは、制御装置20の複数のECUのうちのいずれにおいて行われてもよい。例えば、
図7の異常検出プログラム、
図6のブレーキ制御プログラムは、上流側ブレーキECU236と下流側ブレーキECU238との少なくとも一方において実行され、
図5の制御指令値作成プログラムは、CSRECU232と下流側ブレーキECU202との少なくとも一方において実行されるようにすることができる。
【0082】
さらに、温度センサ216は、CSRECU232において用いられる温度センサと、下流側ブレーキECU238において用いられる温度センサとを、それぞれ、別々に設けることもできる。
【0083】
また、本発明は、ハイブリッド車両、電気自動車、エンジン駆動車両等に適用することもできる。
さらに、ブレーキ回路の構造は問わない等本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
12,14:液圧ブレーキ 16:上流側液圧制御機構 18:下流側液圧制御機構 20:制御装置 44:背面室 45:レギュレータ 94:増圧制御弁 96:減圧制御弁 158:ポンプ装置 160:液圧制御弁 190:マスタシリンダ圧センサ 192:ホイールシリンダ圧センサ 198:制御指令値作成部 200:ブレーキ制御部 212:デジタルカメラ 216:温度センサ 220:情報通信端末
第1液圧制御機構、第2ブレーキ力制御機構は、それぞれ、ブレーキ力を0以上の大きさに制御可能なものである。換言すると、第1液圧制御機構、第2ブレーキ力制御機構は、それぞれ、ブレーキ力を発生させるとともに、そのブレーキ力を制御可能なものである。
第1液圧制御機構の第1異常状態とは、第1液圧制御機構において、液圧ブレーキの液圧を制御することが困難である状態をいう。第1液圧制御機構の第1異常状態は、例えば、第1液圧制御機構に含まれる駆動源の異常、制御系要素の異常、第1液圧制御機構の駆動源等の構成要素に充分な電力が供給されない異常等に起因して生じる場合が多い。
第1液圧制御機構の第2異常状態とは、第1異常状態にあると検出される前の状態をいう。例えば、第1異常状態であると検出される可能性が高い状態をいうことができる。
温度取得装置は、車両用ブレーキシステムの作動液の温度を取得するものであり、外気温度を作動液の温度として取得するものとしたり、外気温度と車両用ブレーキシステムの作動時間等とに基づいて作動液の温度を推定するものとしたりすること等ができる。
第2ブレーキ力制御機構は、液圧ブレーキの液圧を制御可能な第2液圧制御機構であっても、車輪に設けられた電動ブレーキのブレーキ力を制御可能な電動ブレーキ力制御機構であっても、車両に加えられる回生ブレーキ力を制御可能な回生ブレーキ力制御機構であってもよい。
制御装置は、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態であると検出されない場合に、前記第2ブレーキ力制御機構を制御することなく、前記第1液圧制御機構を制御することにより前記ブレーキ力を制御し、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態にあると検出された場合には、前記第1液圧制御機構を制御することなく、前記第2ブレーキ力制御機構を制御することにより前記ブレーキ力を制御するものである。
アシスト制御部は、前記アシスト待ち時間が経過した後に、前記第1液圧制御機構の制御を停止することなく、前記第2ブレーキ力制御機構を制御して、前記ブレーキ力を制御するものとすることができる。
(2)当該車両用ブレーキシステムが、前記第1液圧制御機構の作動により発生させられた前記液圧ブレーキの実際の液圧である第1実液圧を、予め定められたサイクルタイム毎に取得する第1実液圧取得部を含み、
前記第1異常状態検出装置が、前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が設定温度である第1設定温度以上である場合には、第1設定時間の間、前記第1実液圧取得部によって取得された前記第1実液圧についてのモニタリングを行って、前記第1実液圧と第1目標液圧との差である偏差が異常判定しきい値より大きいと検出した場合に、前記第1液圧制御機構が第1異常状態であると検出し、前記作動液の温度が前記第1設定温度より低い場合には、前記第1設定時間より長い第2設定時間の間、前記第1実液圧取得部によって取得された前記第1実液圧についてのモニタリングを行って、前記偏差が前記異常判定しきい値より大きいと検出した場合に、前記第1液圧制御機構が第1異常状態であると検出するものであり、
前記第2異常状態検出装置が、前記第1設定時間より短い第3設定時間の間、前記第1実液圧取得部によって取得された前記第1実液圧についてのモニタリングを行い、前記偏差が前記異常判定しきい値より大きいと検出された場合に、前記第1液圧制御機構が前記第2異常状態であると検出するものである(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
(3)前記制御装置が、前記アシスト待ち時間を、前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が設定温度である第2設定温度より低い場合は前記第2設定温度より高い場合より、長い時間に決定するアシスト待ち時間決定部を含む(1)項または(2)項に記載の車両用ブレーキシステム。
第2設定温度は第1設定温度と同じ温度であっても異なる温度であってもよい。アシスト待ち時間は、例えば、温度が高くなるにつれて連続または不連続に短くなる時間とすることができる。
(4)前記制御装置が、前記第1液圧制御機構と前記第2ブレーキ力制御機構との少なくとも一方の作動タイミングを前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が低い場合は高い場合より早くするものである(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
自動ブレーキ制御部は、例えば、当該車両用ブレーキシステムが搭載された車両である自車両と周辺の物体等との間の相対位置関係に基づいて自動で自車両にブレーキ力を付与する制御とすることができる。例えば、自車両の通常走行中に行われる制御としたり、駐車のための走行中に行われる制御としたりすること等ができる。また、運転者が乗車している場合に行われる制御としたり、運転者が乗車していない場合に行われる制御(無人制御)としたりすること等ができる。
(5)前記制御装置が、前記温度取得装置によって取得された前記作動液の温度が設定温度である第3設定温度以上である場合に、前記車両の周辺の物体と前記車両との相対位置関係が第1設定関係にある場合に、前記第1液圧制御機構と前記第2ブレーキ力制御機構との少なくとも一方を作動させ、前記作動液の温度が前記第3設定温度より低い場合には、前記物体と前記車両との相対位置関係が前記第1設定関係より前記物体と前記車両とが接近し難い第2設定関係にある場合であっても、前記第1液圧制御機構と前記第2ブレーキ力制御機構との少なくとも一方を作動させるものである(4)項に記載の車両用ブレーキシステム。
(6)前記制御装置が、前記第1異常状態検出装置によって前記第1液圧制御機構が前記第1異常状態であると検出された場合に、前記第2ブレーキ力制御機構の制御により、前記ブレーキ力を予め定められた異常時目標ブレーキ力以上に制御する異常時制御部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
制御指令値作成部は、車両の走行状態に基づいて制御指令値を作成するものである。車両の走行状態は、例えば、車両の走行経路、車両の走行速度等で表すことができる。例えば、車両の走行経路に基づいて車両の走行方向を変更する場合には、車両を停止させる必要がある場合があり、その場合には、車両を停止させるための制御指令値が作成される。また、車両の周辺に立体物、人等の物体が存在する場合には、その物体との衝突を回避するために車両を停止させる必要があるが、その場合には、車両と物体との接近速度(接近速度は、車両の走行速度に基づいて取得される)、車両と物体との間の距離等に基づいて制御指令値が作成される。
(9)前記第1液圧制御機構が、加圧ピストンを備えたマスタシリンダと、加圧ピストンの後方に設けられた背面室の液圧を制御する背面液圧制御装置とを含み、前記背面液圧制御装置により、前記背面室に液圧を制御することにより前記加圧ピストンを前進させて、前記加圧ピストンの前方の加圧室の液圧を制御するものである(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
(10)前記第2ブレーキ力制御機構が、前記第1液圧制御機構と前記液圧ブレーキのホイールシリンダとの間に設けられ、作動液を汲み上げて加圧して前記ホイールシリンダに供給可能なポンプ装置と、前記ポンプ装置から吐出された作動液の液圧を利用して前記ホイールシリンダの液圧を制御可能な液圧制御弁とを含む第2液圧制御機構である(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
(11)前記制御装置が、前記アシスト待ち時間を、前記第1液圧制御機構についての目標液圧が高い場合は低い場合より短い時間に決定するものである(3)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。