(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109455
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】トルク発生装置及びオイルパルス工具
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
B25B21/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004770
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】318001706
【氏名又は名称】京セラインダストリアルツールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(74)【代理人】
【識別番号】100130166
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】西 拓弥
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シャフトに発生するトルクを大きくすることが可能な技術を提供する。
【解決手段】ケースが有するオイル空間580の内周面610は、第1移動部材100がシャフト50が有する第1開口541aからオイル空間に出入りしながら摺接するカム面と、シャフトが有する少なくとも一つの第2開口531aからのオイル空間に対するオイルの流出入を規制する規制面とを有する。規制面によってオイル空間に対するオイルの流出入が規制された規制状態では、オイル空間に対する第1移動部材の出入りが規制される。ケースが回転駆動されてシャフトに対して相対的に回転する状態の場合に、規制状態で第1移動部材がカム面の第1領域に摺接するとき、カム面が第1移動部材をオイル空間側に押す力が大きくなってトルクがシャフトに発生する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルで満たされたオイル室を有し、回転駆動されるケースと、
少なくとも一部が前記オイル室内に支持され、前記ケースに対して相対的に回転可能なシャフトと、
前記シャフトに出入りすることが可能な第1移動部材と
を備え、
前記シャフトは、
前記シャフトの内部に位置し、前記オイルで満たされ、前記第1移動部材が出入りするオイル空間と、
前記オイル室の内周面に向かって開口し、前記第1移動部材が前記オイル空間に出入りするための第1開口と、
前記内周面に向かって開口し、前記オイルが前記オイル空間に流出入するための少なくとも一つの第2開口と
を有し、
前記内周面は、
前記シャフトに対する前記ケースの相対的な回転に伴い、前記第1移動部材が前記第1開口から前記オイル空間に出入りしながら摺接するカム面と、
前記ケースの回転方向において前記ケースと前記シャフトが所定の位置関係にあるとき、前記少なくとも一つの第2開口からの前記オイル空間に対する前記オイルの流出入を規制する規制面と
を有し、
前記規制面によって前記オイル空間に対する前記オイルの流出入が規制された規制状態では、前記オイル空間に対する前記第1移動部材の出入りが規制され、
前記カム面は第1領域を有し、
前記ケースが第1回転方向に回転駆動されて前記シャフトに対して相対的に回転する第1回転状態の場合に、前記規制状態で前記第1移動部材が前記第1領域に摺接するとき、前記カム面が前記第1移動部材を前記オイル空間側に押す力が大きくなって前記第1回転方向のトルクが前記シャフトに発生する、トルク発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク発生装置であって、
前記カム面は、前記第1回転状態の場合に前記第1領域よりも先に前記第1移動部材が摺接する、前記第1領域と接する第2領域を有し、
前記第1領域は、前記ケースの回転軸に垂直な第1断面視において第1凹曲線を構成し、
前記第2領域は、前記第1断面視において第2凹曲線を構成し、
前記第1凹曲線は前記第2凹曲線と接線連続、あるいは前記第1凹曲線と前記第2凹曲線とは一つの円弧を構成する、トルク発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載のトルク発生装置であって、
前記カム面は、前記第1回転状態の場合に前記第1領域よりも先に前記第1移動部材が摺接する、前記第1領域と接する第2領域を有し、
前記第1領域は、前記ケースの回転軸に垂直な第1断面視において第1凹曲線を構成し、
前記第2領域は、前記第1断面視において第2凹曲線を構成し、
前記第2凹曲線の曲率半径は、前記第1凹曲線の曲率半径よりも大きい、トルク発生装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のトルク発生装置であって、
前記第1移動部材のうち前記シャフトから突出する突出部分の少なくとも一部の表面は、部分球面を構成し、
前記第1凹曲線の曲率半径は、前記部分球面の曲率半径よりも大きい、トルク発生装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載のトルク発生装置であって、
前記第1移動部材のうち前記シャフトから突出する突出部分の少なくとも一部の表面は、部分球面を構成し、
前記第1凹曲線の曲率半径は、前記部分球面の曲率半径よりも小さい、トルク発生装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記第1移動部材のうち前記シャフトから突出する突出部分の少なくとも一部の表面は、部分球面を構成し、
前記第1領域は、前記ケースの回転軸に沿った第2断面視において第3凹曲線を構成し、
前記第3凹曲線は、前記部分球面に沿って湾曲している、トルク発生装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記第1移動部材のうち前記シャフトから突出する突出部分の少なくとも一部の表面は、部分球面を構成し、
前記第2領域は、前記ケースの回転軸に沿った第2断面視において第4凹曲線を構成し、
前記第4凹曲線は、前記部分球面に沿って湾曲している、トルク発生装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記第1移動部材は球体であって、
前記シャフトに対する前記ケースの相対的な回転に伴って、前記球体は回転しながら前記カム面に摺接する、トルク発生装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記シャフトに出入りすることが可能な第2移動部材をさらに備え、
前記シャフトは、前記内周面に向かって開口し、前記第2移動部材が前記オイル空間に出入りするための第3開口を有し、
前記第2移動部材は、前記シャフトに対する前記ケースの相対的な回転に伴い、前記第3開口から前記オイル空間に出入りしながら前記カム面に摺接し、
前記規制状態では、前記オイル空間に対する前記第1移動部材及び前記第2移動部材の出入りが規制され、
前記カム面は第3領域を有し、
前記第1回転状態の場合に前記規制状態で前記第1移動部材及び前記第2移動部材が前記第1領域及び前記第3領域に同じタイミングでそれぞれ摺接するときに前記カム面が前記第1移動部材及び前記第2移動部材を前記オイル空間側に押す力が大きくなって前記第1回転方向のトルクが前記シャフトに発生する、トルク発生装置。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記カム面は第3領域を有し、
前記第1回転状態の場合に前記規制状態で前記第1移動部材が前記第3領域に摺接するときに前記カム面が前記第1移動部材を前記オイル空間側に押す力が大きくなって前記第1回転方向のトルクが前記シャフトに発生する、トルク発生装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記カム面は第4領域を有し、
前記ケースが前記第1回転方向と逆の第2回転方向に回転駆動されて前記シャフトに対して相対的に回転する第2回転状態の場合に前記規制状態で前記第1移動部材が前記第4領域に摺接するときに前記カム面が前記第1移動部材を前記オイル空間側に押す力が大きくなって前記第2回転方向のトルクが前記シャフトに発生する、トルク発生装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一つに記載のトルク発生装置であって、
前記オイル室における前記シャフトの外側での前記オイルの量は、前記シャフトの前記オイル空間内の前記オイルの量よりも多い、トルク発生装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一つに記載のトルク発生装置と、
前記トルク発生装置が備える前記シャフトに取り付けられた先端工具と、
前記トルク発生装置の前記ケースを回転駆動するモータと
を備える、オイルパルス工具。
【請求項14】
請求項13に記載のオイルパルス工具であって、
前記モータを冷却するための第1冷却ファンと、
前記トルク発生装置を冷却するための第2冷却ファンと
をさらに備える、オイルパルス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャフトにトルクを発生させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、オイルを利用してシャフトにトルクを発生させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルを利用してシャフトにトルクを発生させる場合、大きなトルクがシャフトに発生することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
トルク発生装置及びオイルパルス工具が開示される。一の実施の形態では、トルク発生装置は、オイルで満たされたオイル室を有し、回転駆動されるケースと、少なくとも一部がオイル室内に支持され、ケースに対して相対的に回転可能なシャフトと、シャフトに出入りすることが可能な第1移動部材とを備える。シャフトは、シャフトの内部に位置し、オイルで満たされ、第1移動部材が出入りするオイル空間と、オイル室の内周面に向かって開口し、第1移動部材がオイル空間に出入りするための第1開口と、オイル室の内周面に向かって開口し、オイルがオイル空間に流出入するための少なくとも一つの第2開口とを有する。オイル室の内周面はカム面及び規制面を有する。シャフトに対するケースの相対的な回転に伴い、第1移動部材が第1開口からオイル空間に出入りしながらカム面に摺接する。規制面は、ケースの回転方向においてケースとシャフトが所定の位置関係にあるとき、少なくとも一つの第2開口からのオイル空間に対するオイルの流出入を規制する。規制面によってオイル空間に対するオイルの流出入が規制された規制状態では、オイル空間に対する第1移動部材の出入りが規制される。カム面は第1領域を有する。ケースが第1回転方向に回転駆動されてシャフトに対して相対的に回転する第1回転状態の場合に、規制状態で第1移動部材が第1領域に摺接するとき、カム面が第1移動部材をオイル空間側に押す力が大きくなって第1回転方向のトルクがシャフトに発生する。
【0006】
また、一の実施の形態では、オイルパルス工具は、上記のトルク発生装置と、トルク発生装置が備えるシャフトに取り付けられた先端工具と、トルク発生装置のケースを回転駆動するモータとを備える。
【発明の効果】
【0007】
シャフトに発生するトルクを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】オイルパルス工具の外観の一例を示す概略図である。
【
図2】オイルパルス工具の外観の一例を示す概略図である。
【
図3】オイルパルス工具の内部の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】オイルパルス工具の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図5】ユニットの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図6】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図7】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図8】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図10】シャフトの外観の一例を示す概略図である。
【
図11】シャフトの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図12】シャフトの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図13】ライナーの外観の一例を示す概略図である。
【
図14】ライナーの外観の一例を示す概略図である。
【
図15】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図16】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図17】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図18】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図19】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図20】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図21】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図22】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図23】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図24】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図25】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図26】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図27】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図28】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図29】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図30】シャフトの外観の一例を示す概略図である。
【
図31】シャフトの外観の一例を示す概略図である。
【
図32】シャフトの外観の一例を示す概略図である。
【
図33】シャフトの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図34】シャフトの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図35】ライナーの外観の一例を示す概略図である。
【
図36】ライナーの外観の一例を示す概略図である。
【
図37】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図38】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図39】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図40】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図41】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図42】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図43】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図44】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図45】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図46】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図47】トルク発生装置の動作の一例を説明するための概略図である。
【
図48】ユニットの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図49】ユニットの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図50】ライナーの断面構造の一例を示す概略図である。
【
図51】トルク発生装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【
図52】移動部材の断面構造の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び2はオイルパルス工具1の外観の一例を示す概略斜視図である。オイルパルス工具1は、電動工具の一種であって、モータを用いて先端工具2を回転させることができる。先端工具2は、一方向に長いシャフト50に取り付けられており、シャフト50が回転することによって先端工具2が回転する。オイルパルス工具1は回転工具とも呼ばれる。先端工具2は、例えば、ネジあるいはボルト等を締めたり緩めたりするためのドライバービットであってもよい。また、先端工具2は、木材等の部材に穴をあけるためのドリルビットであってもよい。また、先端工具2は、ボルトあるいはナット等を締めたり緩めたりするためのソケットビットであってもよいし、他の先端工具であってもよい。
【0010】
オイルパルス工具1は、例えば、先端工具2と、ハウジング(外装ケースともいう)3と、トリガ4とを備える。ハウジング3は、例えば、モータ及びシャフト50等を収容する収容部30と、ユーザの手によって把持される把持部31と、バッテリが装着されるバッテリ装着部32とを備える。収容部30は、例えば、シャフト50の長手方向に沿って延びる、一端が閉塞した略円筒状を成している。シャフト50は、例えば、収容部30の長手方向の一端の開口から収容部30の外側に延びている。先端工具2は、例えば、シャフト50の先端側からシャフト50内に挿入される。シャフト50は、スピンドルあるいは出力軸とも呼ばれる。収容部30の外径及び内径は、概ね、先端工具2側に向かうほど小さくなっている。
【0011】
把持部31は、例えば、シャフト50の長手方向に垂直な方向に沿って延びる筒状を成している。収容部30は把持部31の長手方向の一端に繋がり、バッテリ装着部32は把持部31の長手方向の他端に繋がっている。バッテリは、バッテリ装着部32に対して例えば着脱可能である。オイルパルス工具1は、バッテリ装着部32に装着されたバッテリが出力する直流電圧を電源電圧として動作する。トリガ4は例えば把持部31から露出している。トリガ4が押されることでモータが回転して先端工具2が回転する。なお、オイルパルス工具1は、バッテリが出力する直流電圧に基づいて動作するのではなく、商用電源から供給される交流電圧を電源電圧として動作してもよい。
【0012】
図3は、収容部30の内部の様子の一例を示す概略図である。
図4は、
図3に示される構造の断面の一例を示す概略図である。以後、収容部30内の構成を説明する場合、先端工具2側を前側と呼び、その逆側を後ろ側と呼ぶことがある。シャフト50は前後方向に沿って延びていると言える。
【0013】
図3及び4に示されるように、収容部30には、例えば、モータ5と、冷却ファン6(単にファン6ともいう)と、冷却ファン7(単にファン7ともいう)と、遊星歯車減速機8(単に減速機8ともいう)の太陽歯車9と、ユニット10(アッセンブリ10ともいう)の一部とが収容されている。ユニット10は、例えば、先端工具2をシャフト50内に固定するためのスリーブ11及び2個の球体13と、ケース12(ユニットケース12ともいう)とを備える。ユニット10は、さらに、減速機8の複数の遊星歯車14及び環状の内歯車15と、環状のベアリング16及びベアリング17と、トルク発生装置40とを備える。シャフト50はトルク発生装置40に含まれる。
【0014】
ユニットケース12は、例えば筒状であって、収容部30に固定されている。ユニットケース12は、収容部30に対して相対的に回転不能となっている。ユニットケース12の外径及び内径は、概ね、前側に向かうほど小さくなっている。ユニットケース12内には、トルク発生装置40の一部と、複数の遊星歯車14と、内歯車15と、ベアリング16及びベアリング17とが収容されている。ベアリング16及び17はユニットケース12に固定されている。トルク発生装置40は、複数の部品で構成されていることから、トルク発生ユニット40とも呼ばれる。トルク発生装置40は、後述するように、オイルを利用してシャフト50にパルス状のトルクを発生させることができる。トルク発生装置40は、パルス装置40、あるいはパルスユニット40とも呼ばれる。
【0015】
モータ5は、例えばブラシレスDCモータである。モータ5は、ブラシレスDCモータ以外であってもよい。モータ5のモータ軸(回転軸ともいえる)5aは前後方向に沿って延びている。冷却ファン6、冷却ファン7及び太陽歯車9はモータ軸5aに固定されている。オイルパルス工具1は、モータ5を制御するモータ制御回路を備える。モータ制御回路は、トリガ4が押されているとき、バッテリから供給される電力に基づいてモータ5を回転させる。これにより、トリガ4が押されているときには、モータ軸5aが回転し、モータ軸5aの回転に応じて、冷却ファン6、冷却ファン7及び太陽歯車9が回転する。
【0016】
ファン6は、例えば、モータ5を冷却することが可能である。ファン6は、例えば、遠心ファンであって、略円筒状の収容部30の径方向に沿って放射状に延びる複数の羽根6aを備える。ファン6は、モータ5におけるモータ軸5a以外の部分よりも前側に位置する。
【0017】
ファン7は、例えば、ユニット10を冷却することが可能である。ファン7は、ユニット10が備えるトルク発生装置40を冷却することが可能であるとも言える。ファン7は、例えば、遠心ファンであって、略円筒状の収容部30の径方向に沿って放射状に延びる複数の羽根7aを備える。複数の羽根7aは、複数の羽根6aよりも前側に位置する。
【0018】
収容部30は、その内周面に立設された隔壁部300を有する。隔壁部300は、ファン6の複数の羽根6aと、ファン7の複数の羽根7aとの間に位置する。隔壁部300は、例えば環状かつ板状を成している。隔壁部300の中央の開口部にはモータ軸5aが挿通されている。隔壁部300は、各羽根6aの前側端面と、各羽根7aの後ろ側端面とを覆っている。隔壁部300がファン6の各羽根6aの前側端面を覆うことによって、ファン6は、それよりも後ろ側から取り込んだ空気を遠心方向(言い換えれば、収容部30の径方向あるいはモータ軸5aに垂直な方向)に排出することが可能となる。また、隔壁部300がファン7の各羽根7aの後ろ側端面を覆うことによって、ファン7は、それよりも前側から取り込んだ空気を遠心方向に排出することが可能となる。
【0019】
図1及び2に示されるように、収容部30には、モータ5を冷却するための冷却風を収容部30内に取り込む複数の吸気口310と、モータ5を冷却した冷却風を収容部30外に排出する複数の排気口311とが設けられている。複数の吸気口310は、例えば、収容部30の後ろ側端部に設けられている。複数の排気口311は、例えば、ファン6の複数の羽根6aの並びに沿うように、収容部30の周方向に沿って並んでいる。ファン6が回転しているとき、複数の吸気口310から収容部30内に取り込まれた空気がモータ5を冷却した後に、複数の排気口311から収容部30外に排出される。これにより、モータ5が適切に冷却される。
【0020】
また、収容部30には、ユニット10を冷却するための冷却風を収容部30内に取り込む複数の吸気口320と、ユニット10を冷却した冷却風を収容部30外に排出する複数の排気口321とが設けられている。複数の吸気口320は、収容部30の前側端部(言い換えれば、収容部30の先端工具2側の端部)に設けられている。複数の排気口321は、ファン7の複数の羽根7aの並びに沿うように、収容部30の周方向に沿って並んでいる。ファン7が回転しているとき、複数の吸気口320から収容部30内に取り込まれた空気がユニット10を冷却した後に、複数の排気口321から収容部30外に排出される。これにより、ユニット10が適切に冷却される。
【0021】
図5はユニット10の断面構造の一例を示す概略図である。
図6は、ユニット10が有するトルク発生装置40の断面構造の一例を示す概略図である。
図7は、
図6の矢視A-Aの断面構造の一例を示す概略図である。
図8は、
図6の矢視B-Bの断面構造の一例を示す概略図である。
【0022】
図5等に示されるように、シャフト50は、ユニットケース12の前側の開口120からユニットケース12の外側に延びている。モータ軸5a及び太陽歯車9は、ユニットケース12の後ろ側の開口121からユニットケース12内に進入している。
【0023】
トルク発生装置40は、例えば、シャフト50及びケース60(内側ケース60ともいう)を備える。シャフト50の一部は内側ケース60内で支持されている。シャフト50は、内側ケース60に対して相対的に回転可能となっている。内側ケース60には、シャフト50の一部と他の複数の部材とが収容されている。
【0024】
本例では、減速機8の遊星キャリア80が内側ケース60の一部を構成している。内側ケース60は、例えば、ライナー70と、遊星キャリア80と、ライナー70及び遊星キャリア80を連結する環状の連結部材90とを備える。内側ケース60では、ライナー70が前側に位置し、遊星キャリア80が後ろ側に位置する。ライナー70は例えば筒状を成している。ライナー70の外形及び内径は、概ね、前側に向かうほど小さくなっている。
【0025】
シャフト50は、ライナー70の前側の開口700から内側ケース60の外側に延び、さらにユニットケース12の前側の開口120からユニットケース12の外側に延びている。ライナー70の後ろ側の開口701は遊星キャリア80で塞がれている。ライナー70と遊星キャリア80とはOリング95を介して連結されている。
【0026】
内側ケース60は、ユニットケース12内において回転可能に支持されている。内側ケース60の後ろ側部分(具体的には遊星キャリア80)は、ユニットケース12内の後ろ側のベアリング16で支持されている。シャフト50のうち内側ケース60よりも前側に位置する部分は、ユニットケース12内の前側のベアリング17で支持されている。内側ケース60及びシャフト50は、ユニットケース12及び収容部30に対して相対的に回転可能である。内側ケース60内には、シャフト50の中心軸(回転軸ともいう)の位置合わせを行うための環状のセンタリング部材96が収容されている。センタリング部材96は内側ケース60に固定されている。センタリング部材96の中央開口部にシャフト50の後ろ側端部が嵌合することによって、シャフト50の中心軸の位置合わせが行われる。
【0027】
内側ケース60はモータ5によって回転させられる。モータ5の回転(詳細にはモータ軸5aの回転)は、遊星歯車減速機8で減速されてライナー70に伝達する。内側ケース60がモータ5によって回転駆動されている場合、シャフト50は、それに負荷がかかっていないとき、あるいはそれにかかる負荷が小さいとき、内側ケース60と一緒に回転する。一方で、シャフト50にかかる負荷が大きいときには、シャフト50の回転が制限されて、内側ケース60はシャフト50に対して相対的に回転する。内側ケース60とシャフト50の回転については後で詳細に説明する。
【0028】
前側から見て時計回りにモータ軸5aが回転すると、前側から見て時計回りに内側ケース60も回転する。前側から見て反時計回りにモータ軸5aが回転すると、前側から見て反時計回りに内側ケース60も回転する。モータ軸5aの回転方向は、ハウジング3から露出する切替レバーが操作されることによって切り替えられる。以後、単に時計回周りと言えば、前側から見た場合の時計回りを意味する。また、単に反時計回周りと言えば、前側から見た場合の反時計回りを意味する。
【0029】
内側ケース60は、オイルで満たされたオイル室600を備える。ライナー70と遊星キャリア80とで囲まれた空間が、オイルで満たされており、オイル室600を構成している。シャフト50の一部は、オイル室600内に支持されている。オイルは内側ケース60とシャフト50との間にも存在する。
【0030】
図9はシャフト50の外観を示す概略斜視図である。
図10は、シャフト50を
図9の矢印Xから見た様子の一例を示す概略図である。
図11は、
図10の矢視C-Cの断面構造の一例を示す概略図である。
図12は、
図10の矢視D-Dの断面構造の一例を示す概略図である。
【0031】
図5,6,9~12等に示されるように、シャフト50は、その長さ方向に沿って径が変化する棒状を成している。シャフト50は、例えば、第1部分510、第2部分520、第3部分530、第4部分540及び第5部分550を備える。
【0032】
第1部分510は、例えば、細長い略円筒状であって、先端工具2が挿入される挿入孔511を有する。第1部分510の外形の前後方向(言い換えればシャフト50の長手方向)に垂直な断面形状は、例えば円形となっている。第1部分510は、先端工具2が挿入される挿入部510あるいは先端工具2が取り付けられる取付部510とも言える。挿入孔511は、第1部分510の前側端から後ろ側に延びており、当該前側端に開口511aを有している。先端工具2は、開口511aから挿入孔511に挿入される。
【0033】
また、第1部分510の周壁部には、互いに対向する一対の貫通孔512が設けられている。
図5に示されるように、一対の貫通孔512内には、上述の2個の球体13がそれぞれ配置される。各球体13は、挿入孔511内へ出没可能となっている。各球体13は、環状のスリーブ11の内側に配置されている。各球体13は、挿入孔511内に突出した状態では、第1部分510に挿入された先端工具2と係合する。そして、各球体13はスリーブ11の内側の面で先端工具2に押し付けられて、先端工具2は2個の球体13で狭持される。これより、先端工具2がシャフト50内に固定される。一方で、スリーブ11が前側にスライドされた状態では、スリーブ11による各球体13の押圧が解除される。これにより、シャフト50から先端工具2の抜き取りが可能となる。
【0034】
第2部分520は、第1部分510の後ろ側において第1部分510と繋がっている。第2部分520の外形は、例えば円盤状を成している。言い換えれば、第2部分520は、高さが非常に低い円柱状を成している。第2部分520の外形の前後方向に垂直な断面形状は、例えば円形となっている。第2部分520の外径は、例えば第1部分510の外径より大きい。
【0035】
第3部分530は、第2部分520の後ろ側において第2部分520と繋がっている。第3部分530の外形は、例えば高さが低い円柱状を成している。第3部分530の外形の前後方向に垂直な断面形状は、例えば略円形となっている。第3部分530の外径は、例えば第2部分520の外径より大きい。第3部分530には孔531が設けられている。孔531は、例えば、シャフト50の長手方向に垂直な方向に沿って第3部分530を貫通する細長い貫通孔531である。貫通孔531は、例えば円筒状を成しており、その長手方向の両端のそれぞれに開口531aを有する。
図5及び6に示されるように、各開口531aは、オイル室600の内周面610に向かって開口している。具体的には、
図5,6,8に示されるように、各開口531aは、オイル室600を構成するライナー70の内周面710に向かって開口している。各開口531aは、オイル室600におけるシャフト50外の領域と繋がっている。
【0036】
第4部分540は、第3部分530の後ろ側において第3部分530と繋がっている。第4部分540の外形は、例えば円柱状を成している。第4部分540の外形の前後方向に垂直な断面形状は、例えば略円形となっている。第4部分540の外径は、例えば第3部分530の外径より大きい。第4部分540には孔541が設けられている。孔541は、例えば、シャフト50の長手方向に垂直な方向に沿って第4部分540を貫通する貫通孔541である。貫通孔541は、例えば円柱状を成しており、その長手方向の両端のそれぞれに開口541aを有する。貫通孔541は、例えば、貫通孔531の後ろ側において、貫通孔531と平行に配置されている。
図5及び6に示されるように、各開口541aは、オイル室600の内周面610に向かって開口している。具体的には、
図5,6,7に示されるように、各開口541aは、ライナー70の内周面710に向かって開口している。
【0037】
シャフト50は、挿入孔511、貫通孔531及び貫通孔541を互いに接続する接続孔560を有する。接続孔560は例えば円柱状を成している。接続孔560は、第2部分520から第4部分540にかけて設けられており、挿入孔511の後ろ側の端から後ろ側に延びて貫通孔541まで達している。接続孔560は、挿入孔511と貫通孔531と接続する前側部分と、貫通孔531と貫通孔541とを接続する後ろ側部分とを有する。
【0038】
本例では、貫通孔531と、貫通孔541と、接続孔560のうち貫通孔531と貫通孔541とを接続する後ろ側部分とが、オイル室600内のオイルで満たされる。貫通孔531と、貫通孔541と、接続孔560の後ろ側部分とは、オイルで満たされたオイル空間580(シャフトオイル空間580ともいう)を構成する。
【0039】
図5及び6に示されるように、接続孔560の前側部分と、それに繋がる挿入孔511には、シャフトオイル空間580内のオイルが挿入孔511からシャフト50の外側に漏れることを防止するシールネジ98が設けられている。シールネジ98が、挿入孔511側から接続孔560の前側部分に螺合することによって、オイル空間580内のオイルが挿入孔511側に漏れることが防止される。
【0040】
また、
図5及び6に示されるように、ライナー70の内周面710とシャフト50の外周面との間には、オイル室600内のオイルが前側から漏れることを防止するためのOリング97が設けられている。Oリング97は、例えば、シャフト50の第1部分510の後ろ側端部の外周面を取り囲むように、当該外周面とライナー70の内周面710との間に位置している。本例では、内側ケース60で囲まれた空間のうちOリング97よりも後ろ側の部分がオイル室600となっている。
【0041】
トルク発生装置40は、シャフト50に出入りすることが可能な複数の移動部材100を備える。各移動部材100は、シャフトオイル空間580に出入りすることが可能である。ここで、移動部材100がシャフト50等に出入りすることには、移動部材100がシャフト50等から完全に出たり入ったりすることだけではなく、移動部材100が部分的にシャフト50等から出たり入ったりすることも含まれる。移動部材100がシャフト50等に出入りすることは、移動部材100におけるシャフト50等からの突出量(言い換えれば突出距離)が変化することとも言える。また、移動部材100がシャフト50等に入ることは、移動部材100におけるシャフト50等からの突出量が小さくなることとも言え、移動部材100がシャフト50等から出ることは、移動部材100におけるシャフト50等からの突出量が大きくなることとも言える。移動部材100がシャフト50等に入ると、移動部材100のシャフト50等への進入量(言い換えれば進入距離)が大きくなり、移動部材100がシャフト50等から出ると、移動部材100のシャフト50等への進入量が小さくなる。
【0042】
本例のトルク発生装置40は、例えば2個の移動部材100を備える。一方の移動部材100は、例えば、貫通孔541の一方の開口541aからシャフトオイル空間580に出入りすることが可能である。他方の移動部材100は、例えば、貫通孔541の他方の開口541aからシャフトオイル空間580に出入りすることが可能である。開口541aは、移動部材100がシャフトオイル空間580に出入りするための開口であると言える。各移動部材100は例えば球体である。移動部材100が球体である場合、移動部材100のうちシャフト50から突出する突出部分の表面のすべては、部分球面(つまり球面の一部)を構成している。以後、球体である移動部材100を球体100と呼ぶことがある。
【0043】
貫通孔541には、2個の球体100がそれぞれ載置される2個の載置部材101と、1個のばね103とが配置されている。載置部材101は載置台あるいは台座とも呼ばれる。一方の載置部材101は貫通孔541の一方の開口541aよりに位置し、他方の載置部材101は貫通孔541の他方の開口541aよりに位置する。載置部材101における球体100が載置される載置面は、球体100の表面形状に応じて部分球面となっている。貫通孔541の内周面(言い換えば内壁)と、一方の開口541a側の載置部材101の外周面との間にはOリング102が位置する。同様に、貫通孔541の内周面と、他方の開口541a側の載置部材101の外周面との間にはOリング102が位置する。Oリング102は、載置部材101の外周面に設けられた環状溝に嵌められている。Oリング102は、貫通孔541の内周面と載置部材101の外周面とに接している。
【0044】
ばね103は、例えば圧縮コイルばねである。2つの載置部材101は、ばね103で接続されている。ばね103の一端は一方の載置部材101に係合され、ばね103の他端は他方の載置部材101に係合されている。
【0045】
各球体100、各載置部材101及び各Oリング102は、ばね103の伸張に応じて貫通孔541内を移動する。球体100、載置部材101及びOリング102は、例えば、貫通孔541を摺動する。つまり、球体100、載置部材101及びOリング102は、貫通孔541の内周面に擦れながら貫通孔541内を移動する。貫通孔541は内側ケース60の回転軸に垂直な方向に沿って延びていることから、球体100、載置部材101及びOリング102は、内側ケース60の回転軸に垂直な方向に沿って移動する。
【0046】
なお、上記の例では、ばね103等が配置される径の大きい孔541は、径の小さい孔531よりも後ろ側に位置するが、孔531よりも前側に位置してもよい。また、孔541は孔531と平行に配置されなくてもよい。また、孔541のうち、ばね103が配置されている部分の径を、球体100及び載置部材101が配置されている部分の径よりも小さくしてもよい。この場合、ばね103が、シャフト50の軸方向に垂直な方向に沿って安定して伸縮しやすくなる。
【0047】
シャフトオイル空間580は、その内部のオイルの圧力が変化する部分空間581(部分オイル空間581ともいう)を備える。部分オイル空間581は、例えば、貫通孔541における2個の載置部材101の間の空間と、当該空間に繋がる接続孔560の後ろ側部分と、それに繋がる貫通孔531とで構成されている。言い換えれば、部分オイル空間581は、貫通孔541における、ばね103が存在する空間と、当該空間に繋がる接続孔560の後ろ側部分と、貫通孔531とで構成されている。本例では、貫通孔541の内周面と載置部材101の外周面との間にOリング102が位置することから、部分オイル空間581内のオイルが貫通孔541の開口541aからシャフト50外に漏れにくくなっている。
【0048】
オイル室600内のオイルは、貫通孔531の各開口531aからシャフトオイル空間580に対して流出入することが可能である。開口531aは、オイルがシャフトオイル空間580に流出入するための開口であると言える。部分オイル空間581内のオイルの圧力は、例えば、貫通孔531の各開口531aからのオイル空間580に対するオイルの流出入が規制されている状態で球体100がシャフトオイル空間580側に押されたりそれが解除されたりすることによって変化する。この点については後で詳細に説明する。
【0049】
オイル室600の内周面610は、シャフト50に対する内側ケース60の相対的な回転に伴い、球体100が貫通孔541の開口541aからシャフトオイル空間580に出入りしながら摺接するカム面720(
図7参照)を有する。また、オイル室600の内周面610は、内側ケース60の回転方向において内側ケース60とシャフト50が所定の位置関係にあるとき、貫通孔531の各開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入を規制する規制面780(
図8参照)を有する。本例では、例えば、オイル室600を構成する内側ケース60が有するライナー70の内周面710が、カム面720及び規制面780を構成する。以後、特に断らない限り、回転方向と言えば、内側ケース60の回転方向を意味する。
【0050】
ばね103は圧縮された状態で貫通孔5341内に位置する。各球体100は、ばね103によってカム面720に付勢しており、カム面720と当接している。内側ケース60が回転駆動されてシャフト50に対して相対的に内側ケース60が回転しているとき、各球体100は、シャフト50の開口541aからシャフトオイル空間580に出入りしながらカム面720に摺接する。内側ケース60が回転駆動されているとき、各球体100は、カム面720の形状に応じてシャフトオイル空間580に出入りしてカム面720に摺接する。シャフト50に対する内側ケース60の相対的な回転に伴って、球体100は回転しながらカム面720に摺接する。
【0051】
球体100がシャフトオイル空間580内に入って、球体100のシャフトオイル空間580への進入量が大きくなると、シャフト50の第3部分530の各開口531aからシャフトオイル空間580(言い換えれば部分オイル空間581)外にオイルが流出する。一方で、球体100がシャフトオイル空間580から出て、球体100のシャフトオイル空間580への進入量が小さくなると、シャフト50の各開口531aからシャフトオイル空間580(言い換えれば部分オイル空間581)内にオイルが流入する。
【0052】
図13はライナー70の外観を示す概略斜視図である。
図14は、ライナー70を開口701側から見た様子の一例を示す概略図である。
図15は、
図14の矢視E-Eの断面構造の一例を示す概略図である。
図16は、
図15の矢視F-Fの断面構造の一例を示す概略図である。
図17は、
図15の矢視G-Gの断面構造の一例を示す概略図である。
図15では、球体100の外形が二点鎖線で示されている。
図16では、シャフト50の第3部分530の外形が二点鎖線で示されている。
図17では、シャフト50の第4部分540の外形が二点鎖線で示されている。
【0053】
図7,8,13~17に示されるように、筒状のライナー70の内周面710は、カム面720及び規制面780を有する。カム面720は、回転方向においてシャフト50の第4部分540を取り囲んでいる。規制面780は、回転方向においてシャフト50の第3部分530を取り囲んでいる。カム面720及び規制面780は環状曲面であると言える。
【0054】
図8,16等に示されるように、規制面780は、例えば、互いに同じ形状を有する複数の凹曲面781(第1凹曲面781ともいう)と、互いに同じ形状を有する複数の凹曲面782(第2凹曲面782ともいう)とを有する。本例では、規制面780は、例えば、2つの凹曲面781と2つの凹曲面782とを有する。
【0055】
一方の第1凹曲面781、一方の第2凹曲面782、他方の第1凹曲面781及び他方の第2凹曲面782は、回転方向においてこの順で並んでいる。一方の第1凹曲面781は、その両隣の2つの第2凹曲面782に繋がっている。他方の第1凹曲面781は、その両隣の2つの第2凹曲面782に繋がっている。回転方向において、一方の第1凹曲面781は他方の第1凹曲面781と180°離れた位置にあり、一方の第2凹曲面782は他方の第2凹曲面782と180°離れた位置にある。2つの第1凹曲面781は互いに対向しており、2つの第2凹曲面782は互いに対向している。
【0056】
各第1凹曲面781は、シャフト50の第3部分530の外周面に応じて湾曲しており、当該外周面と対向する。本願の図においては、第1凹曲面781と第3部分530の外周面とが互いに接触しているように見えるが、第1凹曲面781と第3部分530の外周面との間にはわずかな隙間が存在する。回転方向において、内側ケース60(言い換えればライナー70)とシャフト50とが、シャフト50の2つの開口531aが2つの第1凹曲面781にそれぞれ対向するような位置関係にあるとき、2つの開口531aが2つの第1凹曲面781でそれぞれほぼ塞がれる。これにより、各開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入が規制面780で規制される。部分オイル空間581は、概ね、開口531aを通じてのみ、オイル室600におけるシャフト50外の空間と繋がっていることから、各開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入が規制されると、部分オイル空間581に対するオイルの流入出が規制される。以後、各開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入が規制されている状態(言い換えれば、部分オイル空間581に対するオイルの流入出が規制されている状態)を規制状態と呼ぶことがある。
【0057】
各第2凹曲面782は、シャフト50の第3部分530の外周面に応じて湾曲しており、当該外周面と対向している。第2凹曲面782と第3部分530の外周面との間には比較的大きさ隙間が存在する。
図8に示されるように、回転方向において内側ケース60とシャフト50とが、シャフト50の2つの開口531aが2つの第2凹曲面782にそれぞれ対向するような位置関係にあるとき、各開口531aはライナー70の内周面710から大きく離れることになる。これにより、オイル室600内のオイルは、各開口531aからシャフトオイル空間580に対して比較的自由に流出入することができる。つまり、各開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入が規制されない。言い換えれば、部分オイル空間581に対するオイルの流出入が規制されない。以後、各開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入が規制されていない状態(言い換えれば、部分オイル空間581に対するオイルの流出入が規制されていない状態)を非規制状態と呼ぶことがある。
【0058】
規制状態では、シャフトオイル空間580に対する各球体100の出入りが規制される。規制状態では、シャフトオイル空間580に含まれる部分オイル空間581に対するオイルの流出入が規制されていることから、各球体100が移動しにくくなる。その結果、シャフトオイル空間580に対する各球体100の出入りが規制される。一方で、非規制状態では、シャフトオイル空間580に対する各球体100の出入りは規制されない。
【0059】
カム面720は、
図7,17等に示されるように、例えば、内側ケース60が回転駆動されてシャフト50に対して相対的に内側ケース60が回転しているときにシャフト50にトルクを発生させるための複数の凹曲面730を有する。複数の凹曲面730は例えば互いに同じ形状を有する。本例では、カム面720は例えば2つの凹曲面730を有する。回転方向において、一方の凹曲面730は、他方の凹曲面730と180°離れた位置にある。2つの凹曲面730は互いに対向している。
【0060】
カム面720は、さらに、2つの凹曲面730を接続する2つの接続面740を有する。一方の接続面740は、回転方向において、一方の凹曲面730の一端と他方の凹曲面730の一端とを接続する。他方の接続面740は、回転方向において、一方の凹曲面730の他端と他方の凹曲面730の他端とを接続する。
【0061】
各凹曲面730は、部分領域731(第1部分領域731ともいう)と、部分領域732(第2部分領域732ともいう)と、部分領域733(第3部分領域733ともいう)とを備える。部分領域731,732,733のそれぞれは例えば凹曲面である。部分領域732及び733は例えば互いに同じ形状を有する。時計回りの回転方向において、第2部分領域732、第1部分領域731及び第3部分領域733がこの順で並んでいる。言い換えれば、反時計回りの回転方向において、第3部分領域733、第1部分領域731及び第2部分領域732がこの順で並んでいる。部分領域731は部分領域732,733に繋がっている。
【0062】
回転方向において、一方の凹曲面730の第1部分領域731は、他方の凹曲面730の第1部分領域731と180°離れた位置にある。回転方向において、一方の凹曲面730の第2部分領域732は、他方の凹曲面730の第2部分領域732と180°離れた位置にある。回転方向において、一方の凹曲面730の第3部分領域733は、他方の凹曲面730の第3部分領域733と180°離れた位置にある。
【0063】
第1部分領域731は、
図17に示されるように、内側ケース60の回転軸CAに垂直な断面視(垂直断面視ともいう)において凹曲線731a(第1凹曲線731aともいう)を構成する。内側ケース60の回転軸CAは、シャフト50の中心軸(言い換えれば回転軸)と一致する。第2部分領域732は、垂直断面視において凹曲線732a(第2凹曲線732aともいう)を構成する。第3部分領域733は、垂直断面視において凹曲線733a(第3凹曲線733aともいう)を構成する。凹曲線731aは凹曲線732a,733aと繋がっている。
【0064】
第1凹曲線731aと第2凹曲線732aは、例えば接線連続している。第1凹曲線731aと第3凹曲線733aは、例えば接線連続している。2つの曲線が接続されている場合、一方の曲線における他方の曲線との接続点での接線と、他方の曲線における一方の曲線との接続点での接線が一致する場合、当該2つの曲線は接線連続していると言われる。言い換えれば、2つの曲線が接続されている場合、一方の曲線における他方の曲線側の端点での接線と、他方の曲線における一方の曲線側の端点での接線が一致する場合、当該2つの曲線接線連続していると言われる。接線連続はG1連続とも呼ばれる。
【0065】
凹曲線731a,732a,733aのそれぞれは、例えば正円の円弧である。第1凹曲線731aの曲率半径は、例えば、第2凹曲線732a及び第3凹曲線733aの曲率半径よりも大きい。第2凹曲線732a及び第3凹曲線733aの曲率半径は例えば同じである。第1凹曲線731aの曲率中心は、例えば内側ケース60の回転軸CA上に位置する。第1凹曲線731aの曲率中心は、シャフト50の回転軸上に位置するとも言える。
【0066】
本例では、第1凹曲線731aの曲率中心は回転軸CA上に位置することから、垂直断面視において、第1凹曲線731a上の各点と回転軸CAとの間の距離d1は一定となる。距離d1は、垂直断面視における、第1部分領域731上のある点と回転軸CAとの間の距離であるとも言える。第1凹曲線731aは、シャフト50の回転方向に沿って湾曲している。
【0067】
一方で、第2凹曲線732a及び第3凹曲線733aの曲率中心は回転軸CA上に位置しない。垂直断面視において、第2凹曲線732a上のある点と回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1凹曲線731aに近いほど大きい。言い換えれば、垂直断面視において、第2凹曲線732a上のある点と回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1凹曲線731aから遠いほど小さい。さらに言い換えれば、垂直断面視における、第2部分領域732上のある点と回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1部分領域731から遠いほど小さい。同様に、垂直断面視において、第3凹曲線733a上のある点と回転軸CAとの間の距離d3は、当該ある点が第1凹曲線731aから遠いほど小さい。言い換えれば、垂直断面視における、第3部分領域733上のある点と回転軸CAとの間の距離d3は、当該ある点が第1部分領域731から遠いほど小さい。
【0068】
また、第2凹曲線732aと第1凹曲線731aとは接線連続していることから、第2凹曲線732aの第1凹曲線731a側の端点と回転軸CAとの間の距離d2は、第1凹曲線7321の第2凹曲線732a側の端点と回転軸CAとの間の距離d1と一致する。したがって、垂直断面視における、第2部分領域732上のある点と回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1部分領域731から離れるにつれて、距離d1よりも徐々に小さくなっていく。
【0069】
同様に、第3凹曲線733aと第1凹曲線731aとは接線連続していることから、第3凹曲線733aの第1凹曲線731a側の端点と回転軸CAとの間の距離d2は、第1凹曲線7321の第3凹曲線733a側の端点と回転軸CAとの間の距離d1と一致する。したがって、垂直断面視における、第3部分領域733上のある点と回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1部分領域731から離れるにつれて、距離d1よりも徐々に小さくなっていく。
【0070】
第1部分領域731は、内側ケース60の回転軸CAに沿った断面視(軸断面視ともいう)において凹曲線731b(
図15参照)を構成する。凹曲線731b(第4凹曲線731bともいう)は例えば正円の円弧である。第4凹曲線731bは、例えば、球体100の表面を構成する球面に沿って湾曲している。具体的には、第4凹曲線731bは、球体100のうちシャフト50から突出する球欠状の突出部分の表面が構成する部分球面に沿って湾曲している。第4凹曲線731bの曲率半径は、例えば、球体100の半径と一致している。言い換えれば、第4凹曲線731bの曲率半径は、球体100の表面を構成する球面の半径と一致している。さらに言い換えれば、第4凹曲線731bの曲率半径は、球体100のうちシャフト50から突出する球欠状の突出部分の表面が構成する部分球面の曲率半径と一致している。第4凹曲線731bは、例えば全体的に球体100と接する。
【0071】
同様に、第2部分領域732は、軸断面視において凹曲線(第5凹曲線ともいう)を構成する。第5凹曲線は例えば正円の円弧である。第5凹曲線は、第4凹曲線731bと同様に、例えば、球体100の表面を構成する球面に沿って湾曲している。第5凹曲線の曲率半径は、例えば、球体100の半径と一致している。第5凹曲線は、例えば全体的に球体100と接する。
【0072】
同様に、第3部分領域733は、軸断面視において凹曲線(第6凹曲線ともいう)を構成する。第6凹曲線は例えば正円の円弧である。第6凹曲線は、例えば、第4凹曲線731bと同様に、球体100の表面を構成する球面に沿って湾曲している。第6凹曲線の曲率半径は、例えば、球体100の半径と一致している。第6凹曲線は、例えば全体的に球体100と接する。
【0073】
以上のような構成を備えるトルク発生装置40では、内側ケース60がモータ5によって回転駆動されている場合であって、シャフト50に負荷がかかっていない場合、あるいはシャフト50にかかる負荷が小さい場合には、内側ケース60とシャフト50が一緒に回転する。一方で、内側ケース60がモータ5によって回転駆動されている場合であって、シャフト50にかかる負荷が大きい場合には、シャフト50の回転が制限されて、内側ケース60はシャフト50に対して相対的に回転する。そして、トルク発生装置40は、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転する状態の場合に、シャフト50に大きなトルクを発生させることができる。これにより、先端工具2に大きなトルクが発生し、オイルパルス工具1のトルク性能が向上する。
【0074】
以後、内側ケース60が時計回りに回転駆動されてシャフト50に対して相対的に回転する状態を時計回りの回転状態と呼ぶことがある。また、内側ケース60がモータ5によって反時計回りに回転駆動されてシャフト50に対して相対的に回転する状態を反時計回りの回転状態と呼ぶことがある。
【0075】
内側ケース60が時計回りの回転状態である場合、球体100は、一方の接続面740、一方の凹曲面730の第3部分領域733、第1部分領域731、第2部分領域732、他方の接続面740、他方の凹曲面730の第3部分領域733、第1部分領域731、第2部分領域732の順でカム面720に摺接して、一方の接続面740に戻る。
【0076】
これに対して、内側ケース60が反時計回りの回転状態である場合、球体100は、一方の接続面740、一方の凹曲面730の第2部分領域732、第1部分領域731、第3部分領域733、他方の接続面740、他方の凹曲面730の第2部分領域732、第1部分領域731、第3部分領域733の順でカム面720に摺接して、一方の接続面740に戻る。
【0077】
図18~25は、内側ケース60が時計回りに回転駆動されてシャフト50に対して相対的に回転する様子の一例を示す概略図である。
図18~25では、左側に
図6の矢視A-Aの断面図の一例が示されており、右側に
図6の矢視B-Bの断面図の一例が示されている。
図18~25の例では、内側ケース60の回転の様子が理解しやすいように、一方の球体100を球体100aとし、他方の球体100を球体100bとしている。同様に、
図18~25の例では、2つの凹曲面730をそれぞれ凹曲面730a,730bとし、2つの接続面740をそれぞれ接続面740a,740bとしている。
【0078】
図18の状態では、球体100a及び100bは、カム面720の凹曲面730a及び730bの第1部分領域731にそれぞれ摺接している。また、シャフト50の第3部分530の2つの開口531aは、規制面780の2つの第2凹曲面782にそれぞれ対向している。
図18の状態では、トルク発生装置40は、オイルの流出入が規制されていない非規制状態となっている。
【0079】
上述のように、垂直断面視における、第1部分領域731上の各点と内側ケース60の回転軸CAとの間の距離d1は一定である。このため、球体100が第1部分領域731に摺接している場合、球体100のシャフトオイル空間580から突出量(言い換えれば、球体100のシャフト50からの突出量)は一定である。よって、球体100が第1部分領域731に摺接している場合、球体100とカム面720との接触抵抗は一定である。シャフト50に対する内側ケース60の相対的な回転に伴って、球体100は回転しながらカム面720に摺接する。
【0080】
内側ケース60が
図18の状態から時計回りに回転すると、
図19に示されるように、シャフト50の2つの開口531aは、規制面780の2つの第1凹曲面781にそれぞれ対向するようになり、トルク発生装置40はオイルの流出入が規制された規制状態となる。
図19の状態では、球体100a及び100bは、2つの凹曲面730a及び730bの第1部分領域731にそれぞれ接している。本例では、例えば、球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に移る直前に、トルク発生装置40は非規制状態から規制状態に変化する。トルク発生装置40が非規制状態から規制状態に変化するタイミングはこの例に限られない。例えば、球体100が第1部分領域731に摺接しているときに、トルク発生装置40が非規制状態から規制状態に変化してもよい。この場合、球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に変化する直前に、トルク発生装置40が非規制状態から規制状態に変化してもよい。
【0081】
内側ケース60が
図19の状態から時計回りに回転すると、
図20に示されるように、各球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に変化する。球体100が第2部分領域732に接しているとき、トルク発生装置40は規制状態となっている。よって、球体100が第2部分領域732に接しているとき、球体100のシャフトオイル空間580に対する出入りが規制されている。つまり、球体100が第2部分領域732に接しているとき、球体100の移動が制限されている。
【0082】
上述のように、垂直断面視における、第2部分領域732上のある点と回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1部分領域731から離れるにつれて距離d1より徐々に小さくなっていく。一方で、球体100が第2部分領域732に接しているときには、球体100のシャフトオイル空間580に対する出入りが規制されている。したがって、球体100の摺接先が第2部分領域732であるとき、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなって、カム面720と球体100との接触抵抗が大きくなる。この場合、シャフト50にかかる負荷が小さいとき、球体100が第2部分領域732に接した状態でシャフト50と内側ケース60が一緒に時計回りに回転する。一方で、シャフト50にかかる負荷が大きいとき、シャフト50の時計回りの回転が制限されて、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転して球体100が第2部分領域732に摺接する。
【0083】
規制状態において、シャフト50の開口531aとライナー70の第1凹曲面781との間にはわずかな隙間が存在する。したがって、規制状態においても、シャフトオイル空間580内のオイルは開口531aからシャフト50に対して多少流出入することが可能である。つまり、規制状態においても球体100は多少移動することができる。これにより、球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に変化した後、内側ケース60がさらに時計回りに回転しようとすると、球体100はカム面720の第2部分領域732の形状に応じてシャフト50内に移動して第2部分領域732に摺接することができる。つまり、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転して球体100が第2部分領域732に摺接することができる。球体100が第2部分領域732に接するときには球体100の移動が制限されていることから、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転して球体100が第2部分領域732に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力は大きくなる。これにより、カム面720と球体100との接触抵抗が大きくなる。2つの球体100は2つの凹曲面730の第2部分領域732に対して同じタイミングで摺接する。球体100が第2部分領域732に摺接している場合、球体100の摺接箇所が第1部分領域731から離れるほど、球体100のシャフトオイル空間580から突出量は小さくなる。
【0084】
規制状態においてカム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなると、部分オイル空間581内のオイルの圧力が増加する。よって、球体100が第2部分領域732に摺接しているとき、部分オイル空間581内のオイルは高圧となる。
【0085】
このように、球体100が第2部分領域732に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなって、カム面720と球体100との接触抵抗が大きくなる。そのため、内側ケース60の回転エネルギーがシャフト50に伝わって、シャフト50に時計回りのトルクが発生する。球体100が第2部分領域732に摺接しているとき、シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。
【0086】
内側ケース60がシャフト50に対して相対的にさらに回転すると、
図21に示されるように、球体100aの摺接先が凹曲面730aの第2部分領域732から接続面740aに変化し、球体100bの摺接先が凹曲面730bの第2部分領域732から接続面740bに変化する。
図21の状態では、トルク発生装置40は規制状態である。
【0087】
内側ケース60がさらに回転すると、球体100aの摺接先が接続面740aから凹曲面730bの第3部分領域733に変化し、球体100bの摺接先が接続面740bから凹曲面730aの第3部分領域733に変化する。内側ケース60がさらに回転すると、
図22に示されるように、各球体100の摺接先が第3部分領域733から第1部分領域731に変化する。
図22の状態では、シャフト50の2つの開口531aは、規制面780の2つの第2凹曲面782にそれぞれ対向している。本例では、例えば、球体100の摺接先が第3部分領域733から第1部分領域731に変化した直後に、トルク発生装置40は規制状態から非規制状態に変化する。トルク発生装置40が規制状態から非規制状態に変化すると、高圧となっていた部分オイル空間581内のオイルの圧力が低下する。
【0088】
なお、トルク発生装置40が規制状態から非規制状態に変化するタイミングは上記の例に限られない。例えば、球体100が接続面740に摺接しているときに、トルク発生装置40が規制状態から非規制状態に変化してもよい。また、球体100が凹曲面730の第3部分領域733に摺接しているときに、トルク発生装置40が規制状態から非規制状態に変化してもよい。
【0089】
上述のように、垂直断面視における、第3部分領域733上のある点と回転軸CAとの間の距離d3は、当該ある点が第1部分領域731から離れるにつれて徐々に小さくなっている。したがって、球体100が第3部分領域733に摺接している場合、球体100の摺接箇所が第1部分領域731に近づくほど、球体100のシャフトオイル空間580からの突出量(言い換えればシャフト50からの突出量)が大きくなる。
【0090】
内側ケース60がさらに回転すると、
図23に示されるように、各球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に変化する。
図23の状態では、トルク発生装置40は規制状態となっている。規制状態で球体100が第2部分領域732に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側の押す力が大きくなってシャフト50に時計回りのトルクが発生する。シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。
【0091】
内側ケース60がさらに回転すると、
図24に示されるように、球体100aの摺接先が凹曲面730bの第2部分領域732から接続面740bに変化し、球体100bの摺接先が凹曲面730aの第2部分領域732から接続面740aに変化する。
図24の状態では、トルク発生装置40は規制状態である。
【0092】
内側ケース60がさらに回転すると、球体100aの摺接先が接続面740bから凹曲面730aの第3部分領域733に変化し、球体100bの摺接先が接続面740aから凹曲面730bの第3部分領域733に変化する。内側ケース60がさらに回転すると、
図25に示されるように、各球体100の摺接先が第3部分領域733から第1部分領域731に変化し、その後、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する。以後、トルク発生装置40は同様に動作する。
【0093】
以上の説明から理解できるように、トルク発生装置40は、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50にパルス状のトルクが2回発生する。内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転しているときには、部分オイル空間581内のオイルの圧力が変化する。
【0094】
内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合には、規制状態で球体100が第3部分領域733に摺接してカム面720と球体100との接触抵抗が大きくなってシャフト50に反時計回りのトルクが発生する。
図26は、内側ケース60が
図18の状態から反時計回りに回転して、球体100が第3部分領域733に接する様子の一例を示す概略図である。内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合であっても、トルク発生装置40では、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50にパルス状のトルクが2回発生する。
【0095】
以上のように、本例では、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合に規制状態で移動部材100がカム面720の第2部分領域732に摺接するときにカム面720が移動部材100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなる。これにより、カム面720と移動部材100との接触抵抗が大きくなって、内側ケース60の回転エネルギーを十分にシャフト50に伝えることができる。その結果、シャフト50に発生する時計回りのトルクを大きくすることができる。
【0096】
また、本例では、内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合に規制状態で移動部材100がカム面720の第3部分領域733に摺接するときにカム面720が移動部材100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなる。これにより、カム面720と移動部材100との接触抵抗が大きくなって、内側ケース60の回転エネルギーを十分にシャフト50に伝えることができる。その結果、シャフト50に発生する反時計回りのトルクを大きくすることができる。
【0097】
また、本例では、内側ケース60が時計回りの回転状態である場合であっても、反時計回りの回転状態である場合であっても、シャフト50に大きなトルクを発生することができる。
【0098】
また、本例では、移動部材100がカム面720を摺接することでシャフト50にトルクが発生することから、ハンマーがアンビルを打撃してシャフトにトルクを発生させるインパクト工具と比較して、静音性を向上させることができる。
【0099】
また、本例のカム面720には、時計回りのトルクをシャフト50に発生させるための第2部分領域732が複数設けられている。したがって、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50に対してパルス状の時計回りのトルクを複数回発生させることができる。これにより、例えば、木ネジの締付作業などの作業性を向上させることができる。
【0100】
また、本例のカム面720には、反時計回りのトルクをシャフト50に発生させるための第3部分領域733が複数設けられている。したがって、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50に対してパルス状の反時計回りのトルクを複数回発生させることができる。これにより、例えば、木ネジの締付作業などの作業性を向上させることができる。
【0101】
また、本例では、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合に規制状態で2つの移動部材100が2つの第2部分領域732に同じタイミングでそれぞれ摺接するときにカム面720が2つの移動部材100材をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなって時計回りのトルクがシャフト50に発生する。これにより、シャフト50に時計回りのトルクが発生するときの負荷を2つの移動部材100に分散することができる。このため、移動部材100の摩耗を低減することができる。
【0102】
また、本例では、内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合に規制状態で2つの移動部材100が2つの第3部分領域733に同じタイミングでそれぞれ摺接するときにカム面720が2つの移動部材100材をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなって反時計回りのトルクがシャフト50に発生する。これにより、シャフト50に反時計回りのトルクが発生するときの負荷を2つの移動部材100に分散することができる。このため、移動部材100の摩耗を低減することができる。
【0103】
また、本例では、球体100が回転しながらカム面720に摺接することから、球体100の摩耗を低減することができる。
【0104】
また、本例では、第1部分領域731が垂直断面視で構成する第1凹曲線731aと、第2部分領域732が垂直断面視で構成する第2凹曲線732aとが接線連続している。これにより、第1部分領域731と第2部分領域732とが滑らかに接続されることから、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合に移動部材100は第1部分領域731から第2部分領域732にかけて滑らかにカム面720に摺接することができる。よって、移動部材100が第2部分領域732との摺接を開始するときに音が発生しにくくなる。その結果、静音性が向上する。
【0105】
また、本例では、第1部分領域731が垂直断面視で構成する第1凹曲線731aと、第3部分領域733が垂直断面視で構成する第3凹曲線733aとが接線連続している。これにより、第1部分領域731と第3部分領域733とが滑らかに接続されることから、内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合に移動部材100は第1部分領域731から第3部分領域733にかけて滑らかにカム面720に摺接することができる。よって、移動部材100が第3部分領域733との摺接を開始するときに音が発生しにくくなる。その結果、静音性が向上する。
【0106】
また、本例では、第1部分領域731が垂直断面視で構成する第1凹曲線731aの曲率半径が、第2部分領域732が垂直断面視で構成する第2凹曲線732aの曲率半径よりも大きくなっている。つまり、回転方向で見た場合、第1部分領域731は第2部分領域732よりも緩やかに曲がっている。これにより、本例のように、回転方向での第1部分領域731の長さを、回転方向での第2部分領域732の長さよりも大きくすることができる。
【0107】
ここで、回転方向での第1部分領域731の長さが小さい場合を考える。この場合、内側ケース60が時計回りの回転状態であって、内側ケース60の回転速度が大きいとき、移動部材100が、第1部分領域731と摺接せずに、シャフト50の開口541aからあまり突出していない状態で第2部分領域732との摺接を開始する可能性がある。
【0108】
これに対して、本例のように、回転方向での第2部分領域732の長さが大きい場合には、内側ケース60の回転速度にかかわらず、移動部材100を第1部分領域731に対して確実に摺接させることができる。このため、移動部材100が第2部分領域732との摺接を開始するまでに、移動部材100をシャフト50の開口541aから十分に突出させることができる。これにより、移動部材100がシャフト50から十分に出た状態で移動部材100を第2部分領域732に摺接させることができる。よって、移動部材100を第2部分領域732に摺接するときに、カム面720と移動部材100との接触抵抗をより確実に大きくすることできる。その結果、シャフト50に発生する時計回りのトルクをより確実に大きくすることができる。
【0109】
また、本例では、第1部分領域731が垂直断面視で構成する第1凹曲線731aの曲率半径が、第3部分領域733が垂直断面視で構成する第3凹曲線733aの曲率半径よりも大きくなっている。これにより、本例のように、回転方向での第1部分領域731の長さを、回転方向での第3部分領域733の長さよりも大きくすることができる。よって、内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合に、移動部材100が第3部分領域733との摺接を開始するまでに、移動部材100をシャフト50の開口541aから十分に突出させることができる。その結果、シャフト50に発生する反時計回りのトルクをより確実に大きくすることができる。
【0110】
第2部分領域732が垂直断面視で構成する第2凹曲線732aの曲率半径は、球体100の曲率半径よりも大きくてもよい。言い換えれば、第2凹曲線732aの曲率半径は、球体100の表面を構成する球面の半径よりも大きくてもよい。さらに言い換えれば、第2凹曲線732aの曲率半径は、球体100におけるシャフト50から突出する球欠状の突出部分の表面が構成する部分球面の曲率半径よりも大きくてもよい。このように、第2凹曲線732aの曲率半径が大きい場合には、つまり、回転方向での第2部分領域732の曲がりが緩やかである場合には、内側ケース60が時計回りに回転して移動部材100が第2部分領域732に摺接するときに音が発生しにくくなる。よって、静音性がさらに向上する。
【0111】
同様に、第3部分領域733が垂直断面視で構成する第3凹曲線733aの曲率半径は、球体100の曲率半径よりも大きくてもよい。この場合、内側ケース60が反時計回りに回転して移動部材100が第3部分領域733に摺接するときに音が発生しにくくなる。よって、静音性がさらに向上する。
【0112】
第2部分領域732が垂直断面視で構成する第2凹曲線732aの曲率半径は、球体100の曲率半径よりも小さくてもよい。このように、第2凹曲線732aの曲率半径が小さい場合には、つまり、回転方向での第2部分領域732の曲がりが急である場合には、内側ケース60が時計回りに回転して球体100が第2部分領域732に摺接するときにカム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力をより大きくすることができる。その結果、シャフト50に発生する時計回りのトルクをさらに大きくすることができる。
【0113】
同様に、第3部分領域733が垂直断面視で構成する第3凹曲線733aの曲率半径は、球体100の曲率半径よりも小さくてもよい。このように、第3凹曲線733aの曲率半径が小さい場合には、内側ケース60が反時計回りに回転して球体100が第3部分領域733に摺接するときにカム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力をより大きくすることができる。その結果、シャフト50に発生する反時計回りのトルクをさらに大きくすることができる。
【0114】
第2凹曲線732aの曲率半径は、球体100の曲率半径と同じであってもよい。また、第3凹曲線733aの曲率半径は、球体100の曲率半径と同じであってもよい。
【0115】
上記の例では、
図15に示されるように、第1部分領域731が軸断面視において構成する第4凹曲線731bは、球体100の表面を構成する球面に沿って湾曲している。これにより、球体100と第1部分領域731との接触面積を大きくすることができる。よって、球体100の摩耗を低減することができる。同様に、第2部分領域732が軸断面視において構成する第5凹曲線は、球体100の表面を構成する球面に沿って湾曲している。これにより、球体100と第2部分領域732との接触面積を大きくすることができる。よって、球体100の摩耗を低減することができる。同様に、第3部分領域733が軸断面視において構成する第6凹曲線は、球体100の表面を構成する球面に沿って湾曲している。これにより、球体100と第3部分領域733との接触面積を大きくすることができる。よって、球体100の摩耗を低減することができる。
【0116】
本例では、上述のように、オイル空間580内のオイルが高圧になることがある。具体的には、部分オイル空間581内のオイルが高圧になることがある。オイルが高圧になると、オイルの温度が上昇して、オイルの粘度が低下することがある。部分オイル空間581内のオイルの粘度が低下すると、シャフト50の第3部分530の開口531a以外の場所から、シャフト50外にオイルが漏れる可能性がある。例えば、シャフト50の第4部分540の開口541aからシャフト50外にオイルが漏れる可能性がある。これにより、シャフト50に発生するトルクが低下する可能性がある。
【0117】
そこで、オイル室600におけるシャフト50の外側でのオイルの量を、シャフトオイル空間580内のオイルの量よりも多くしてもよい。これにより、シャフト50にトルクが発生するときに高圧となる部分オイル空間581内のオイルの温度が上昇しにくくなる。よって、部分オイル空間581内のオイルの粘度が低下しにくくなり、シャフト50外に意図せずオイルが漏れる量が低減する。その結果、シャフト50に発生するトルクをより大きくすることができる。
【0118】
オイルパルス工具1の構成は上記の例に限られない。ユニット10の構成は上記の例に限られない。トルク発生装置40の構成は上記の例に限られない。例えば、トルク発生装置40は、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50に対してパルス状のトルクを3回以上発生させてもよい。以下に、パルス状のトルクを3回発生させることが可能なトルク発生装置40(トルク発生装置40Aともいう)の一例について説明する。
【0119】
図27はトルク発生装置40Aの断面構造の一例を示す概略図である。
図28は
図27の矢視H-Hの断面構造の一例を示す概略図である。
図29は
図27の矢視I-Iの断面構造の一例を示す概略図である。トルク発生装置40Aは、
図6に示されるトルク発生装置40において、シャフト50及びライナー70の構造を変更し、移動部材100、載置部材101及びOリング102を1組だけ備えるものである。換言すれば、トルク発生装置40Aは、移動部材100、載置部材101及びOリング102をそれぞれ1つだけ備える。
【0120】
図30及び31はトルク発生装置40Aが備えるシャフト50(シャフト50Aともいう)の外観を示す概略斜視図である。
図32は、シャフト50Aを
図30の矢印Yから見た様子の一例を示す概略図である。
図33は、
図32の矢視J-Jの断面構造の一例を示す概略図である。
図34は、
図32の矢視K-Kの断面構造の一例を示す概略図である。
図35はトルク発生装置40Aが備えるライナー70(ライナー70Aともいう)の外観を示す概略斜視図である。
図36は、ライナー70Aを開口701側から見た様子の一例を示す概略図である。
図37は、
図36の矢視L-Lの断面構造の一例を示す概略図である。
図38は、
図37の矢視M-Mの断面構造の一例を示す概略図である。
図39は、
図37の矢視N-Nの断面構造の一例を示す概略図である。
【0121】
図27,28,30~34等に示されるように、トルク発生装置40Aでは、例えば、シャフト50Aの孔531(孔531Aともいう)の一端は閉塞している。したがって、孔531Aは1つの開口531aを有する。また、シャフト50Aの孔541(孔541Aともいう)の一端も閉塞している。したがって、孔541Aは1つの開口541aを有する。シャフト50Aの回転方向において、孔541Aの開口541aは、孔531Aの開口531aと180°離れた位置にある。トルク発生装置40Aでは、ばね103の一端は載置部材101に係合し、ばね103の他端は、一端が閉塞した孔541の底壁541bに当接している。球体100は、孔541Aの開口541aからシャフトオイル空間580に出入りすることが可能である。
【0122】
オイル室600内のオイルは、第3部分530の孔531Aの開口531aからシャフトオイル空間580Aに対して流出入することが可能である。ライナー70の規制面780は、内側ケース60の回転方向において内側ケース60とシャフト50Aが所定の位置関係にあるとき、孔531Aの開口531aからのシャフトオイル空間580Aに対するオイルの流出入を規制する。
【0123】
図27,29,35~38等に示されるように、ライナー70Aの規制面780は、例えば、3つの第1凹曲面781と、3つの第2凹曲面782とを備える。回転方向において、第1凹曲面781と第2凹曲面782とは交互に配置されている。回転方向において、第1凹曲面781は、その両隣の第2凹曲面782と繋がっている。言い換えれば、回転方向において、第2凹曲面782は、その両隣の第1凹曲面781と繋がっている。回転方向において、3つの第1凹曲面781は、例えば120°間隔で配置されている。回転方向において、3つの第2凹曲面782は、例えば120°間隔で配置されている。
【0124】
トルク発生装置40Aでは、回転方向において、内側ケース60(言い換えればライナー70)とシャフト50とが、シャフト50の開口531aが3つの第1凹曲面781の少なくとも一つと対向するような位置関係にあるとき、開口531aが第1凹曲面781でほぼ塞がれることになる。これにより、開口531aからのシャフトオイル空間580に対するオイルの流出入が規制面780で規制される。部分オイル空間581は、概ね、開口531aを通じてのみ、オイル室600におけるシャフト50外の空間と繋がっていることから、開口531aからのシャフトオイル空間580Aに対するオイルの流出入が規制されると、部分オイル空間581に対するオイルの流入出が規制される。トルク発生装置40Aでは、開口531aが第1凹曲面781と対向するときに規制状態となる。
【0125】
トルク発生装置40Aでは、回転方向において内側ケース60とシャフト50とが、シャフト50の開口531aが3つの第2凹曲面782のいずれか一つに対向するような位置関係にあるとき、開口531aはライナー70の内周面710から大きく離れることになる。これにより、オイル室600内のオイルは、開口531aからシャフトオイル空間580に対して比較的自由に流出入することができる。つまり、オイルの流出入が規制されない。トルク発生装置40Aでは、開口531aが第2凹曲面782と対向するときに非規制状態となる。
【0126】
ライナー70Aのカム面720は、
図28,39等に示されるように、例えば、3つの凹曲面730と3つの接続面740とを有する。回転方向において、凹曲面730と接続面740とは交互に配置されている。各接続面740は、その両隣の2つの凹曲面730と繋がっている。回転方向において、3つの凹曲面730は120°間隔で配置されており、3つの接続面740は120°間隔で配置されている。
【0127】
回転方向において、3つの凹曲面730の第1部分領域731は、120°間隔で配置されている。回転方向において、3つの凹曲面730の第2部分領域732は、120°間隔で配置されている。回転方向において、3つの凹曲面730の第3部分領域733は、120°間隔で配置されている。
【0128】
図40~47は、内側ケース60が時計回りに回転駆動されてシャフト50Aに対して相対的に回転する様子の一例を示す概略図である。
図40~47では、左側に
図27の矢視H-Hの断面図の一例が示されており、右側に
図27の矢視I-Iの断面図の一例が示されている。
図40~47の例では、シャフト50Aの回転の様子が理解しやすいように、3つの凹曲面730の一つを凹曲面730aとし、反時計回りでの凹曲面730aの次の凹曲面730を凹曲面730bとし、その次の凹曲面730を凹曲面730cとしている。そして、回転方向において、凹曲面730a,730cの間の接続面740を接続面740aとし、凹曲面730a,730bの間の接続面740を接続面740bとし、凹曲面730b,730cの間の接続面740を接続面740cとしている。
【0129】
トルク発生装置40Aでは、内側ケース60が時計回りの回転状態である場合、球体100は、接続面740a、凹曲面730aの第3部分領域733、第1部分領域731、第2部分領域732、接続面740b、凹曲面730bの第3部分領域733、第1部分領域731、第2部分領域732、接続面740c、凹曲面730cの第3部分領域733、第1部分領域731、第2部分領域732の順でカム面720に摺接して、接続面740aに戻る。
【0130】
これに対して、内側ケース60が反時計回りの回転状態である場合、球体100は、接続面740a、凹曲面730cの第2部分領域732、第1部分領域731、第3部分領域733、接続面740c、凹曲面730bの第2部分領域732、第1部分領域731、第3部分領域733、接続面740b、凹曲面730aの第2部分領域732、第1部分領域731、第3部分領域733の順でカム面720に摺接して、接続面740aに戻る。
【0131】
図40の状態では、球体100は、カム面720の凹曲面730aの第1部分領域731に摺接している。また、シャフト50の開口531aは、規制面780の第2凹曲面782に対向している。
図40の状態では、トルク発生装置40Aは非規制状態となっている。
【0132】
内側ケース60が
図40の状態から時計回りに回転すると、
図41に示されるように、シャフト50の開口531aは、規制面780の第1凹曲面781に対向するようになり、トルク発生装置40Aは規制状態となる。
図41の状態では、球体100は凹曲面730aの第1部分領域731に接している。本例では、例えば、球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に移る直前に、トルク発生装置40Aは非規制状態から規制状態に変化する。上述のように、トルク発生装置40Aが非規制状態から規制状態に変化するタイミングはこの限りではない。
【0133】
内側ケース60が
図41の状態から時計回りに回転すると、
図42に示されるように、球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に変化する。球体100が第2部分領域732に接しているときには、トルク発生装置40Aは規制状態となっている。上述のように、規制状態で球体100が第2部分領域732に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側の押す力が大きくなってシャフト50に時計回りのトルクが発生する。このとき、シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。
【0134】
内側ケース60がさらに回転すると、
図43に示されるように、球体100の摺接先が凹曲面730aの第2部分領域732から接続面740bに変化する。
図43の状態では、トルク発生装置40Aは規制状態である。
【0135】
内側ケース60がさらに回転すると、球体100の摺接先が接続面740bから凹曲面730bの第3部分領域733に変化する。内側ケース60がさらに回転すると、
図44に示されるように、球体100の摺接先が第3部分領域733から第1部分領域731に変化する。
図44の状態では、シャフト50の開口535aは、規制面780の第2凹曲面782に対向しており、トルク発生装置40Aは非規制状態となっている。本例では、例えば、球体100の摺接先が第3部分領域733から第1部分領域731に変化した直後に、トルク発生装置40Aは規制状態から非規制状態に変化する。上述のように、トルク発生装置40Aが規制状態から非規制状態に変化するタイミングはこの限りではない。
【0136】
内側ケース60がさらに回転すると、
図45に示されるように、球体100の摺接先が第1部分領域731から第2部分領域732に変化する。
図45の状態では、トルク発生装置40Aは規制状態となっている。規制状態で球体100が凹曲面730bの第2部分領域732に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側の押す力が大きくなってシャフト50に時計回りのトルクが発生する。このとき、シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。
【0137】
内側ケース60がさらに回転すると、球体100の摺接先が凹曲面730bの第2部分領域732から接続面740cに変化する。内側ケース60がさらに回転すると、球体100の摺接先が接続面740から凹曲面730cの第3部分領域733に変化する。内側ケース60がさらに回転すると、
図46に示されるように、球体100の摺接先が凹曲面730cの第3部分領域733から第1部分領域731に変化する。内側ケース60がさらに回転すると、
図47に示されるように、球体100の摺接先が凹曲面730cの第1部分領域731から第2部分領域732に変化する。
図47の状態では、トルク発生装置40Aは規制状態となっている。規制状態で球体100が凹曲面730cの第2部分領域732に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側の押す力が大きくなってシャフト50に時計回りのトルクが発生する。このとき、シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。
【0138】
内側ケース60がさらに回転すると、球体100の摺接先が凹曲面730cの第2部分領域732から接続面740aに変化する。内側ケース60がさらに回転すると、球体100の摺接先が接続面740aから凹曲面730aの第3部分領域733に変化する。内側ケース60がさらに回転すると、球体100の摺接先が凹曲面730aの第3部分領域733から第1部分領域731に変化する。これにより、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する。以後、トルク発生装置40Aは同様に動作する。
【0139】
以上の説明から理解できるように、トルク発生装置40Aでは、球体100が3つの凹曲面730の第2部分領域732に摺接するときにシャフト50に時計回りのトルクが発生する。トルク発生装置40Aは、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合、内側ケース60がシャフト50Aに対して相対的に360°回転する間に、シャフト50Aにパルス状のトルクを3回発生させる。
【0140】
内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合には、規制状態で球体100が第3部分領域733に摺接してカム面720と球体100との接触抵抗が大きくなってシャフト50Aに反時計回りのトルクが発生する。トルク発生装置40Aでは、球体100が3つの凹曲面730の第3部分領域733に摺接するときにシャフト50Aに反時計回りのトルクが発生する。内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合であっても、トルク発生装置40Aは、内側ケース60がシャフト50Aに対して相対的に360°回転する間に、シャフト50Aにパルス状のトルクを3回発生させる。
【0141】
なお、トルク発生装置40Aと同様に、
図6に示されるトルク発生装置40においても、孔541の一端を閉塞させて、移動部材100、載置部材101及びOリング102を1組だけ設けてもよい。
【0142】
トルク発生装置40は、Oリング102を備えなくてもよい。この場合、移動部材100及び載置部材101が孔541の内周面に接することで、部分オイル空間581内のオイルが開口541aからシャフト50外に漏れにくくなる。また、トルク発生装置40には、載置部材101が設けられずに、はね103の端が移動部材100に接していてもよい。この場合、移動部材100が孔541の内周面に接することで、部分オイル空間581内のオイルが開口541aからシャフト50外に漏れにくくなる。
【0143】
上述のように、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転しているとき、部分オイル空間581内のオイルの圧力が増加して、当該オイルの温度が高くなることがある。部分オイル空間581内の高温オイルは、細い孔531からシャフト50外に流出しにくくなり、部分オイル空間581内のオイルの圧力が必要以上に高くなる可能性がある。このため、移動部材100が必要以上に移動しにくくなり、球体100がカム面720に対して適切に摺接できない可能性がある。
【0144】
そこで、トルク発生装置40には、部分オイル空間581内の圧力が必要以上に高くなった場合に、部分オイル空間581内のオイルを自動的にシャフト50外に流出させて、当該オイルの圧力を減少させる油圧リリーフ機構99が設けられてもよい。
【0145】
図48は、油圧リリーフ機構99を有するトルク発生装置40(トルク発生装置40Bともいう)を備えるユニット10の断面構造の一例を示す概略図である。
図48では、
図6に示されるトルク発生装置40に油圧リリーフ機構99が設けられた様子が示されている。油圧リリーフ機構99は、
図27に示されるトルク発生装置40に設けられてもよい。
【0146】
油圧リリーフ機構99は、例えば、移動ピン990と、移動ピン990が固定された固定部材991と、固定部材991を前側に付勢するばね992とを備える。移動ピン990、固定部材991及びばね992はオイル室600内に設けられている。移動ピン990は、例えば略円柱状を成しており、前後方向に延在している。移動ピン990の一端は固定部材991に固定されている。
【0147】
ばね992は、例えば圧縮コイルばねであって、圧縮された状態でオイル室600内に設けられている。ばね992は前後方向に伸縮することができる。ばね992の一端は固定部材991に当接しており、ばね992の他端は遊星キャリア80の内側の面に当接している。部分オイル空間581内のオイルの圧力が小さいときには、
図48に示されるように、ばね992によって前側に付勢されている固定部材991の前側の面は、シャフト50の第5部分550の後ろ側の面と、センタリング部材96の後ろ側の面とに当接している。
【0148】
油圧リリーフ機構99は、シャフト50に設けられた孔993,994,995を有する。孔993はシャフト50の長手方向に沿って延びている。孔993の一端は第4部分540の孔541に繋がっており、孔993の他端は後ろ側に向けて開口している。孔993は部分オイル空間581に繋がっている。移動ピン990は、孔993の後ろ側の開口から挿入され、孔993を摺動する。孔993の一部は移動ピン990で塞がれている。孔993は、第4部分540から第5部分550にかけてシャフト50に設けられている。
【0149】
孔994及び995は、孔993に繋がっており、シャフト50の第5部分550に設けられている。孔994及び995は、シャフト50の長手方向に垂直な方向に沿って延びている。孔994及び995の一端は孔993に繋がっている。孔994及び995の他端は、開口しており、オイル室600のシャフト50外の部分に繋がっている。シャフト50の回転方向において、孔994は、孔995と180°離れた位置にある。孔994及び995はオイルで満たされている。また、孔993のうち移動ピン990で塞がれていない部分はオイルで満たされている。
【0150】
部分オイル空間581内のオイルの圧力が小さいときには、
図48に示されるように、孔994及び995の孔993側の開口は移動ピン990で塞がれている。したがって、部分オイル空間581内のオイルの圧力が小さいときには、部分オイル空間581内のオイルは、孔994及び995からシャフト50外に流出することが防止されている。
【0151】
一方で、部分オイル空間581内のオイルの圧力が大きくなると、移動ピン990がオイルの圧力で後ろ側に押される。このとき、ばね992が縮んで移動ピン990及び固定部材991は後ろ側に移動する。そして、部分オイル空間581内のオイルの圧力が所定値以上になると、
図49に示されるように、孔994,995の孔993側の開口が移動ピン990で塞がれなくなる。これにより、部分オイル空間581内のオイルが孔993,994,995を流れて、シャフト50外に流出する。その結果、部分オイル空間581内のオイルの圧力が低下する。部分オイル空間581内のオイルの圧力が低下すると、ばね992の付勢力により移動ピン990及び固定部材991が前側に移動する。そして、部分オイル空間581内のオイルの圧力が所定値未満になると、
図48に示されるように、孔994,995の孔993側の開口が移動ピン990で塞がれるようになる。これにより、部分オイル空間581内のオイルは、孔994,995からシャフト50外に流出することが防止される。
【0152】
このような油圧リリーフ機構99がトルク発生装置40に設けられる場合には、部分オイル空間581内のオイルの圧力が必要以上に高くなる可能性が低減する。これにより、移動部材100が必要以上に移動しにくくなって、球体100がカム面720に対して適切に摺接できない可能性が低減する。
【0153】
上記の例では、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50にパルス状のトルクが複数回発生しているが、パルス状のトルクは1回だけ発生してもよい。また、上記の例では、内側ケース60が時計回りに回転する場合であっても反時計回りに回転する場合であってもシャフト50にパルス状のトルクが発生しているが、内側ケース60が時計回りに回転する場合にシャフト50にパルス状のトルクが発生しなくてもよい。また、内側ケース60が反時計回りに回転する場合にシャフト50にパルス状のトルクが発生しなくてもよい。
【0154】
また、シャフト50にパルス状のトルクを発生させるための凹曲面730の形状は上記の例に限られない。例えば、凹曲面730の第2部分領域732が垂直断面視において構成する第2凹曲線732aは楕円の円弧(楕円弧ともいう)であってもよい。また、凹曲面730の第3部分領域733が垂直断面視において構成する第3凹曲線733aは楕円弧であってもよい。
【0155】
図50は、楕円弧である第2凹曲線732a(第2凹曲線732aaともいう)と楕円弧である第3凹曲線733a(第3凹曲線733aaともいう)とを有するカム面720の一例を模式的に示す概略図である。
【0156】
図50の例においても、第2凹曲線732aa及び第3凹曲線733aaのそれぞれは、例えば第1凹曲線731aと接線連続している。また、垂直断面視において、第2凹曲線732aa上のある点と内側ケース60の回転軸CAとの間の距離d2は、当該ある点が第1凹曲線731aに遠いほど小さい。同様に、垂直断面視において、第3凹曲線733aa上のある点と回転軸CAとの間の距離d3は、当該ある点が第1凹曲線731aから遠いほど小さい。
【0157】
第2凹曲線732aaの曲率半径は、例えば、第1凹曲線731aの曲率半径よりも小さい。また、第3凹曲線733aaの曲率半径は、例えば、第1凹曲線731aの曲率半径よりも小さい。第2凹曲線732aaの曲率半径は、球体100の半径よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、球体100の半径と同じであってもよい。また、第3凹曲線733aaの曲率半径は、球体100の半径よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、球体100の半径と同じであってもよい。
【0158】
ここで、第2凹曲線732aaは楕円弧であることから、第2凹曲線732aaの曲率半径は一定とはならない。同様に、第3凹曲線733aaの曲率半径は一定とはならない。このように、凹曲線の曲率半径が一定でない場合、当該凹曲線の曲率半径が、ある値よりも小さいことは、当該凹曲線上の各点での曲率半径の値がすべて当該ある値よりも小さいことを意味する。つまり、凹曲線の曲率半径が一定でない場合、当該凹曲線の曲率半径が、ある値よりも小さいことは、当該凹曲線上の各点での曲率半径のうちの最大値が当該ある値よりも小さいことを意味する。また、凹曲線の曲率半径が一定でない場合、当該凹曲線の曲率半径が、ある値よりも大きいことは、当該凹曲線上の各点での曲率半径の値がすべて当該ある値よりも大きいことを意味する。つまり、凹曲線の曲率半径が一定でない場合、当該凹曲線の曲率半径が、ある値よりも大きいことは、当該凹曲線の曲率半径の最小値が当該ある値よりも大きいことを意味する。
【0159】
図50の例では、第2凹曲線732aa上のある点の曲率半径は、第1凹曲線731aに近いほど大きくなっている。つまり、第2凹曲線732aaにおける第1凹曲線731a側の端点での曲率半径が最大となっている。よって、
図50の例では、第2凹曲線732aaの曲率半径が第1凹曲線731aの曲率半径よりも小さいことは、第2凹曲線732aaにおける第1凹曲線731a側の端点での曲率半径が第1凹曲線731aの曲率半径よりも小さいことを意味する。
【0160】
また、
図50の例では、第3凹曲線733aa上のある点の曲率半径は、第1凹曲線731aに近いほど大きくなっている。つまり、第3凹曲線733aaにおける第1凹曲線731a側の端点での曲率半径が最大となっている。よって、
図50の例では、第3凹曲線733aaの曲率半径が第1凹曲線731aの曲率半径よりも小さいことは、第3凹曲線733aaにおける第1凹曲線731a側の端点での曲率半径が第1凹曲線731aの曲率半径よりも小さいことを意味する。
【0161】
カム面720の凹曲面730は垂直断面視において一つの円弧を構成してもよい。
図51は、垂直断面視において一つの円弧を構成する凹曲面730(凹曲面730Xともいう)を有するカム面720の一例を模式的に示す概略図である。
【0162】
図51に示されるように、凹曲面730Xは、部分領域735(第1部分領域735ともいう)及び部分領域736(第2部分領域736ともいう)を有する。第1部分領域735及び第2部分領域736のそれぞれは凹曲面である。第1部分領域735及び第2部分領域736は、例えば互いに同じ形状を有する。時計回りの回転方向において、第1部分領域735及び第2部分領域736はこの順で並んでいる。第1部分領域735は第2部分領域736に繋がっている。回転方向において、一方の凹曲面730Xの第1部分領域735は、他方の凹曲面730Xの第1部分領域735と180°離れた位置にある。回転方向において、一方の凹曲面730Xの第2部分領域736は、他方の凹曲面730Xの第2部分領域736と180°離れた位置にある。
【0163】
第1部分領域735は垂直断面視において凹曲線735aを構成する。第2部分領域736は垂直断面視において凹曲線736aを構成する。凹曲線735a(第1凹曲線735aともいう)は凹曲線736a(第2凹曲線736aともいう)に繋がっている。凹曲線735a及び736aのそれぞれは、例えば、正円の円弧である。凹曲線735a及び736aの曲率半径は、球体100の半径よりも大きい。垂直断面視において、第1凹曲線735a上のある点と内側ケース60の回転軸との間の距離は、当該ある点が第1凹曲線731aに遠いほど小さい。同様に、垂直断面視において、第2凹曲線736a上のある点と内側ケース60の回転軸との間の距離は、当該ある点が第1凹曲線731aから遠いほど小さい。凹曲線735a及び736aは、例えば、正円の一つの円弧を構成する。
【0164】
内側ケース60が時計回りの回転状態の場合、球体100が第1部分領域735に接するとき、トルク発生装置40は規制状態となっている。例えば、球体100の摺接先が第2部分領域736から第1部分領域735に変化する直前に非規制状態から規制状態に変化する。そして、例えば、球体100の摺接先が接続面740から第2部分領域736に変化した直後に規制状態から非規制状態に変化する。内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転して球体100が第1部分領域735に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなって、カム面720と球体100との接触抵抗が大きくなる。これにより、内側ケース60の回転エネルギーがシャフト50に伝わって、シャフト50に時計回りのトルクが発生する。球体100が第1部分領域735に摺接しているときには、シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。
図51の例では、カム面720は2つの凹曲面750Xを有することから、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50にはパルス状のトルクが2回発生する。
【0165】
内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合、球体100が第2部分領域736に接するとき、トルク発生装置40は規制状態となっている。例えば、球体100の摺接先が第1部分領域735から第2部分領域736に変化する直前に非規制状態から規制状態に変化する。そして、例えば、球体100の摺接先が接続面740から第1部分領域735に変化した直後に規制状態から非規制状態に変化する。内側ケース60がシャフト50に対して相対的に回転して球体100が第2部分領域736に摺接するときには、カム面720が球体100をシャフトオイル空間580側に押す力が大きくなって、カム面720と球体100との接触抵抗が大きくなる。これにより、内側ケース60の回転エネルギーがシャフト50に伝わって、シャフト50に反時計回りのトルクが発生する。球体100が第2部分領域736に摺接しているときには、シャフト50は内側ケース60に遅れて回転する。内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合、内側ケース60がシャフト50に対して相対的に360°回転する間に、シャフト50にはパルス状のトルクが2回発生する。
【0166】
なお、凹曲線735a及び736aは、楕円の一つの円弧を構成してもよい。この場合、凹曲線735a及び736aのそれぞれは楕円弧となる。
【0167】
このように、第1部分領域735が垂直断面視で構成する第1凹曲線735aと、第2部分領域736が垂直断面視で構成する第2凹曲線736aとが一つの円弧を構成する場合、第1部分領域735と第2部分領域736とが滑らかに接続される。これにより、内側ケース60が時計回りの回転状態の場合に移動部材100は第2部分領域736から第1部分領域735にかけて滑らかにカム面720に摺接することができる。よって、移動部材100が第1部分領域735との摺接を開始するときに音が発生しにくくなる。その結果、静音性が向上する。同様に、内側ケース60が反時計回りの回転状態の場合に移動部材100は第1部分領域735から第2部分領域736にかけて滑らかにカム面720に摺接することができる。よって、移動部材100が第2部分領域736との摺接を開始するときに音が発生しにくくなる。その結果、静音性が向上する。
【0168】
上記の例では、移動部材100は球体であるが、移動部材100は、球体以外の形状を有してもよい。この場合、例えば、
図52に示されるように、移動部材100のうちシャフト50から突出する突出部分110の少なくとも一部の表面は、部分球面を構成してもよい。
図52の例では、移動部材100の先端の表面が部分球面110aを構成している。部分球面110aは例えば半球面である。部分球面110aがカム面720に摺接する。
図52の例では、突出部分110の表面は、カム面720と摺接する箇所を有する部分球面110aを有していると言える。
【0169】
カム面720が有する凹曲面730の第2部分領域732が垂直断面視で構成する第2凹曲線732aの曲率半径は、部分球面110aの曲率半径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、第2凹曲線732aの曲率半径は、部分球面110aの曲率半径と同じであってもよい。
【0170】
カム面720が有する凹曲面730の第3部分領域733が垂直断面視で構成する第3凹曲線733aの曲率半径は、部分球面110aの曲率半径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。また、第3凹曲線733aの曲率半径は、部分球面110aの曲率半径と同じであってもよい。
【0171】
第1部分領域731が軸断面視において構成する第4凹曲線731bは、部分球面110aの曲率半径と一致してもよいし、異なっていてもよい。また、第2部分領域732が軸断面視において構成する第5凹曲線は、部分球面110aの曲率半径と一致してもよいし、異なっていてもよい。また、第3部分領域733が軸断面視において構成する第6凹曲線は、部分球面110aの曲率半径と一致してもよいし、異なっていてもよい。
【0172】
以上のように、オイルパルス工具1、ユニット10及びトルク発生装置40は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0173】
1 オイルパルス工具
5 モータ
6,7 冷却ファン
40,40A,40B トルク発生装置
50,50A シャフト
60 ケース
100 移動部材
110 突出部分
110a 部分球面
531,531A,541,541A 孔
531a,541a 開口
580 オイル空間
600 オイル室
610 内周面
720 カム面
730,730a,730b,730c,730X 凹曲面
731,732,733,735,736 部分領域
731a,731b,732a,733a,735a,736a 凹曲線
780 規制面