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特開2022-109456分布型光ファイバ歪み測定装置及び分布型光ファイバ歪み測定方法
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  • 特開-分布型光ファイバ歪み測定装置及び分布型光ファイバ歪み測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109456
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】分布型光ファイバ歪み測定装置及び分布型光ファイバ歪み測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20220721BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G01B11/16 G
G01D5/353 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004771
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【弁理士】
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】村井 仁
【テーマコード(参考)】
2F065
2F103
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065CC23
2F065FF52
2F065GG04
2F065LL02
2F065PP22
2F065QQ28
2F103BA37
2F103CA01
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB12
2F103EB16
2F103EB32
2F103EC08
2F103EC09
2F103EC10
2F103ED02
2F103ED27
2F103FA02
(57)【要約】
【課題】受動部品の調整により空間分解能を向上させる。
【解決手段】分岐部は、光ファイバで発生する自然BS光を、第1光路及び第2光路に2分岐する。光周波数シフタ部は、第1光路に設けられており、第1光路を伝搬する光周波数シフトを与える。可変遅延部は、第2光路に設けられており、第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与え、遅延時間τが可変である。合波部は、第1光路及び第2光路を伝播する光を合波して合波光を生成する。コヒーレント検波部は、合波光をヘテロダイン検波して差周波をビート信号として出力する。ミキサーは、ビート信号と局発電気信号とをホモダイン検波して、ホモダイン信号として出力する。信号処理装置は、ホモダイン信号に含まれる位相差信号に対して所定の処理を行い、ビート信号の強度変化に基づいて、自然BS光の周波数変化を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ光を生成する光源部と、
前記プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する分岐部と、
前記第1光路に設けられ、前記第1光路を伝搬する光にビート周波数の周波数シフトを与える光周波数シフタ部と、
前記第2光路に設けられ、前記第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与え、前記遅延時間τが可変である可変遅延部と、
前記第1光路及び前記第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する合波部と、
前記合波光をヘテロダイン検波して差周波をビート信号として出力するコヒーレント検波部と、
前記ビート信号と同じ周波数を持つ局発電気信号を生成する局発電気信号生成部と、
前記ビート信号と前記局発電気信号とをホモダイン検波して、ホモダイン信号として出力するミキサーと、
前記ホモダイン信号に含まれる位相差信号に対して所定の処理を行い、前記ビート信号の強度変化に基づいて、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する信号処理装置と
を備えることを特徴とする分布型光ファイバ歪み測定装置。
【請求項2】
プローブ光を生成する光源部と、
前記プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する分岐部と、
前記第2光路に設けられ、前記第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与え、前記遅延時間τが可変である可変遅延部と、
前記第1光路及び前記第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する合波部と、
前記合波光をホモダイン検波して差周波を位相差信号として出力するコヒーレント検波部と、
前記位相差信号に対して所定の処理を行い、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する信号処理装置と
を備えることを特徴とする分布型光ファイバ歪み測定装置。
【請求項3】
プローブ光を生成する過程と、
前記プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する過程と、
前記第1光路を伝搬する光にビート周波数の周波数シフトを与える過程と、
前記第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与える過程と、
前記第1光路及び前記第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する過程と、
前記合波光をヘテロダイン検波して差周波をビート信号として出力する過程と、
前記ビート信号と同じ周波数を持つ局発電気信号を生成する過程と、
前記ビート信号と前記局発電気信号とをホモダイン検波して、ホモダイン信号として出力する過程と、
前記ホモダイン信号に含まれる位相差信号に対して所定の処理を行い、前記ビート信号の強度変化に基づいて、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する過程と
を備え、
前記遅延時間τが、異なる2つの値に設定可能であり、
短い遅延時間に設定して前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得した後、長い遅延時間に設定して前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する
ことを特徴とする分布型光ファイバ歪み測定方法。
【請求項4】
プローブ光を生成する過程と、
前記プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する過程と、
前記第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与える過程と、
前記第1光路及び前記第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する過程と、
前記合波光をホモダイン検波して差周波を位相差信号として出力する過程と、
前記位相差信号に対して所定の処理を行い、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、前記自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する過程と
を備え、
前記遅延時間τが、異なる2つの値に設定可能であり、
短い遅延時間に設定して前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得した後、長い遅延時間に設定して前記光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する
ことを特徴とする分布型光ファイバ歪み測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブリルアン散乱光を用いた時間領域リフレクトメトリ(BOTDR:Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)技術を利用する、分布型光ファイバ歪み測定装置及び分布型光ファイバ歪み測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ自体をセンシング媒体として用いる分布型光ファイバ歪み測定装置では、構造物に貼り付けた光ファイバが構造物の歪みに応じて伸び縮みすることを利用して、構造物の歪み分布を算出する。光ファイバの伸び縮みは、光ファイバを伝搬する光波に対する屈折率を変化させ、これにより光波の伝搬特性が変化する。構造物の歪みによる光波の伝搬特性の変化は、BOTDRと呼ばれる技術により検出できる。
【0003】
BOTDR技術を用いた分布型光ファイバ歪み測定装置では、光パルスを適切な時間幅と繰り返し周期に設定して、光ファイバに入力し、その光ファイバの各点において生じる自然ブリルアン後方散乱光(自然BS光)の中心周波数を計測する(例えば、特許文献1参照)。自然BS光の中心周波数は光ファイバの歪み(伸び又は縮み)量に比例して変化することが知られている。自然BS光の中心周波数の変化量を計測することにより、光ファイバの歪み量、ひいては構造物の歪み量を知ることができる。また、温度変化によっても、光ファイバの歪みが生じるので、光ファイバの歪み量から光ファイバの温度、ひいては光ファイバの周囲の温度を知ることができる。
【0004】
また、自然BS光は,光ファイバの入力端から入力される光パルス(入力光パルス)の進行方向と逆向きの方向に散乱される光波である。自然BS光は、入力光パルスに対する反射光としてみることができる。従って、光パルスを入力した時刻を基準に、反射光として自然BS光が入力端に戻ってくる時刻を計測することにより、反射点(散乱点)を特定できる。すなわち、自然BS光の中心周波数変化とその戻り時間を同時に計測することにより、光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を知ることができる。
【0005】
従来、BOTDR技術を用いた分布型光ファイバ歪み測定装置では、スペクトル解析器を用いて周波数を直接計測するのが一般的である。
【0006】
これに対し、特許文献1に開示されている分布型光ファイバ歪み測定装置では、光ファイバから戻ってくる自然BS光を自己遅延干渉計に入力し、自己遅延干渉計からの出力信号の強度変化をもとに自然BS光の位相変化を抽出する。このようにして得られた自然BS光の位相変化は、自己遅延干渉計の遅延時間と自然BS光の周波数変化との積で表される。従って、自己遅延干渉計の既知の遅延時間から周波数変化を算出することができる。
【0007】
このように、特許文献1に開示されている分布型光ファイバ歪み測定装置では、自己遅延干渉計を用いた自己遅延検波を行う。このため、スペクトル解析器を用いて周波数を直接計測する、一般的な分布型光ファイバ歪み測定装置で不可欠である周波数掃引を行う必要がない。この結果、特許文献1に開示されている分布型光ファイバ歪み測定装置は、従来の一般的な分布型光ファイバ歪み測定装置に比べて、高速な測定ができるというメリットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-191659号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R. W. Boyd, “Nonlinear Optics” , Academic Press
【非特許文献2】K. Nishiguchi et al.,” Synthetic Spectrum Approach for Brillouin Optical Time-Domain Reflectometry,” Sensors 2014, 14, 4731-4754
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の通り、特許文献1に開示されている分布型光ファイバ歪み測定装置は、一般的な分布型光ファイバ歪み測定装置に比べて、高速な測定ができるというメリットを有するが、空間分解能を向上させるためには、一般的な分布型光ファイバ歪み測定装置と同様に、入力光パルスの時間幅をより短くする必要がある。
【0011】
この空間分解能は、測定対象物の歪みや温度を、空間的にどの程度細かく分割して計測できるかを表すものであり、歪み計測や温度計測における重要な性能指標である。
【0012】
一般的な、BOTDR技術を用いた分布型光ファイバ歪み測定装置の空間分解能は1m程度である場合が多く、1mの空間分解能を実現するために必要な、入力光パルスの時間幅は10nsである。一般に空間分解能は,入力光パルスの時間幅に比例する。例えば、入力光パルスの時間幅を10nsから、半分の5nsにすれば、空間分解能は、1mから50cmに向上する。
【0013】
このように、空間分可能を向上させて、より細かく歪みや温度の分布を計測するためには、入力光パルスの時間幅を狭窄化する必要がある。時間幅が狭窄化された光パルスの生成には、より周波数応答特性の優れた、光変調器や変調器ドライバーなどの能動部品が必須であり、装置コストを押し上げる要因となっている。
【0014】
この発明は、上述の状況に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、能動部品の高性能化が必要な入力光パルスの狭窄化を実施することなく、受動部品の調整により空間分解能を向上させる、分布型光ファイバ歪み測定装置及び分布型光ファイバ歪み測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するために、この発明の分布型光ファイバ歪み測定装置は、光源部と、分岐部と、光周波数シフタ部と、可変遅延部と、合波部と、コヒーレント検波部と、局発電気信号生成部と、ミキサーと、信号処理装置とを備えて構成される。
【0016】
光源部は、プローブ光を生成する。分岐部は、プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する。光周波数シフタ部は、第1光路に設けられており、第1光路を伝搬する光にビート周波数の周波数シフトを与える。可変遅延部は、第2光路に設けられており、第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与え、遅延時間τが可変である。合波部は、第1光路及び第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する。コヒーレント検波部は、合波光をヘテロダイン検波して差周波をビート信号として出力する。局発電気信号生成部は、ビート信号と同じ周波数を持つ局発電気信号を生成する。ミキサーは、ビート信号と局発電気信号とをホモダイン検波して、ホモダイン信号として出力する。信号処理装置は、ホモダイン信号に含まれる位相差信号に対して所定の処理を行い、ビート信号の強度変化に基づいて、自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する。
【0017】
また、この発明の分布型光ファイバ歪み測定装置の他の好適実施形態によれば、光源部と、分岐部と、可変遅延部と、合波部と、コヒーレント検波部と、信号処理装置とを備えて構成される。
【0018】
光源部は、プローブ光を生成する。分岐部は、プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する。可変遅延部は、第2光路に設けられており、第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与え、遅延時間τが可変である。合波部は、第1光路及び第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する。コヒーレント検波部は、合波光をホモダイン検波して差周波を位相差信号として出力する。信号処理装置は、位相差信号に対して所定の処理を行い、自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する。
【0019】
また、この発明の分布型光ファイバ歪み測定方法は、以下の過程を備える。先ず、プローブ光を生成する。次に、プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する。次に、第1光路を伝搬する光にビート周波数の周波数シフトを与える。また、第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与える。次に、第1光路及び第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する。次に、合波光をヘテロダイン検波して差周波をビート信号として出力する。また、ビート信号と同じ周波数を持つ局発電気信号を生成する。次に、ビート信号と局発電気信号とをホモダイン検波して、ホモダイン信号として出力する。次に、ホモダイン信号に含まれる位相差信号に対して所定の処理を行い、ビート信号の強度変化に基づいて、自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する。ここで、遅延時間τが、異なる2つの値に設定可能であり、短い遅延時間に設定して光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得した後、長い遅延時間に設定して光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する。
【0020】
また、この発明の分布型光ファイバ歪み測定方法の他の好適実施形態によれば、以下の過程を備えて構成される。先ず、プローブ光を生成する。次に、プローブ光により光ファイバで発生する自然ブリルアン散乱光を、第1光路及び第2光路に2分岐する。次に、第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与える。次に、第1光路及び第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する。次に、合波光をホモダイン検波して差周波を位相差信号として出力する。次に、位相差信号に対して所定の処理を行い、自然ブリルアン散乱光の周波数変化を算出し、自然ブリルアン散乱光の周波数変化から、光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する。ここで、遅延時間τが、異なる2つの値に設定可能であり、短い遅延時間に設定して光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得した後、長い遅延時間に設定して光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得する。
【発明の効果】
【0021】
この発明の分布型光ファイバ歪み測定装置及び分布型光ファイバ歪み測定方法によれば、自己遅延ヘテロダイン干渉計又は自己遅延ホモダイン干渉計における遅延時間τを、受動部品の調整により可変にし、それにより空間分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】測定装置の模式的なブロック図である。
図2】遅延時間τと空間分解能の関係を説明するための図である。
図3】遅延時間τを大きくした場合の、f(t-τ)f(t)の時間幅を説明するための図である。
図4】遅延時間τを大きくした場合の、BFS変化を説明するための図である。
図5】BFS計測値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各図は、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0024】
図1を参照して、この発明の一実施形態に係る光ファイバ歪み測定装置(以下、単に測定装置とも称する。)について説明する。図1は、測定装置の模式的なブロック図である。
【0025】
測定装置は、光源部10、サーキュレータ20、光バンドパスフィルタ30、光増幅器32、自己遅延ヘテロダイン干渉計40、コヒーレント検波部60、ミキサー70、電気フィルタ72、信号処理装置74、及び、局発電気信号源80を備えて構成される。なお、自己遅延ヘテロダイン干渉計40が備える可変遅延部48を除いては、特許文献1などに開示されている任意好適な従来公知の構成にすることができるので、従来公知の構成については、説明を省略することもある。
【0026】
光源部10は、プローブ光を生成する。光源部10は、連続光を生成する光源12と、連続光から光パルスを生成する光パルス発生器14を備えて構成される。
【0027】
ここで、測定装置は、周波数変化に応じた位相差を測定する。このため、光源12の周波数揺らぎは、自然BS光の中心周波数変化よりも十分に小さくなければならない。そこで、光源12として周波数安定化レーザが用いられる。例えば、測定対象となる光ファイバ(以下、被測定光ファイバとも称する。)100の歪みを0.008%としたとき、自然BS光の中心周波数変化は4MHzに相当する。このため、0.008%程度の歪みを測定するには、光源12の周波数揺らぎは4MHzより十分に小さいことが望ましい。
【0028】
光パルス発生器14は、任意好適な従来周知の、音響光学(AO:Acoust Optical)変調器又は電気光学(EO:Electric Optical)変調器を用いて構成される。光パルス発生器14は、例えば外部で生成された電気パルスに応じて、連続光から光パルスを生成する。この光パルスの繰り返し周期は、被測定光ファイバ100を光パルスが往復するのに要する時間よりも長く設定される。この光パルスが、プローブ光として、光源部10から出力される。
【0029】
この光源部10から出力されたプローブ光は、サーキュレータ20を経て、光ファイバ100の入力端から入力光パルスとして、光ファイバ100に入射される。光ファイバ100は、例えば、測定対象となる構造物に取り付けられている。なお、サーキュレータ20に換えて、光カプラを用いても良い。
【0030】
入力光パルスが光ファイバ100を伝搬する間に生じる自然BS光は、光ファイバ100の入力端から出力される。光ファイバ100から出力された自然BS光は、サーキュレータ20を経て、光バンドパスフィルタ30に送られる。光バンドパスフィルタ30は、10GHz程度の透過帯域を有しており、自然BS光のみを透過する。光バンドパスフィルタ30を透過した自然BS光は、光増幅器32に送られる。光増幅器32は自然BS光を増幅して自己遅延干渉計である自己遅延ヘテロダイン干渉計40に送る。
【0031】
自己遅延ヘテロダイン干渉計40は、分岐部42、光周波数シフタ部44、偏波制御部46、可変遅延部48、及び、合波部50を備えて構成される。
【0032】
分岐部42は、光バンドパスフィルタ30及び光増幅器32を経て送られた自然BS光を、第1光路及び第2光路に2分岐する。
【0033】
光周波数シフタ部44は、第1光路に設けられている。光周波数シフタ部44は、局発電気信号源80で生成された局発電気信号を用いて、第1光路を伝搬する光に対して、所定の周波数シフトを与える。局発電気信号源80は、上述の局発電気信号を生成し、光周波数シフタ部44及びミキサー70に送る。なお、局発電気信号の周波数をビート周波数と称することもある。
【0034】
偏波制御部46及び可変遅延部48は、第2光路に設けられている。偏波制御部46は、第2光路を伝搬する光の偏波を制御する。
【0035】
可変遅延部48は、第2光路を伝搬する光に遅延時間τの遅延を与える。この可変遅延部48では、遅延時間τが可変である。この遅延時間τが可変である可変遅延部48は、受動部品である、任意好適な従来公知の可変遅延線で構成することができる。なお、可変遅延部48は異なる2つの遅延時間に設定可能であればよく、遅延時間τを連続的に変化可能にする必要はない。
【0036】
そこで、図1に示すように、可変遅延部48を、互いに遅延時間が異なる、第1遅延光路49a及び第2遅延光路49bを用意しておき、任意好適な従来公知の光スイッチで、第1遅延光路49a及び第2遅延光路49bを切り換える、単純な構成にすることができる。第1遅延光路49a及び第2遅延光路49bにおける遅延時間τについては任意好適に設定できる。例えば、第1遅延光路49aの遅延時間τを1nsとし、第2遅延光路49bの遅延時間τを8nsとする。この場合、第1遅延光路49aは、約20cmの長さの光ファイバで構成され、第2遅延光路49bは、約160cmの長さの光ファイバで構成される。
【0037】
合波部50は、第1光路及び第2光路を伝搬する光を合波して合波光を生成する。合波部50で生成された合波光は、自己遅延ヘテロダイン干渉計40から出力されてコヒーレント検波部60に送られる。
【0038】
コヒーレント検波部60は、合波光をヘテロダイン検波してビート信号を生成する。コヒーレント検波部60は、例えば、バランス型フォトダイオード(PD)62とFET増幅器64を備えて構成される。
【0039】
コヒーレント検波部60で生成されたビート信号はミキサー70に送られる。
【0040】
ミキサー70は、ビート信号と局発電気信号とをホモダイン検波して、ホモダイン信号を生成する。ここで、ビート信号と局発電気信号の周波数は、いずれも局発電気信号源80の発振周波数(ビート周波数)である。従って、ビート信号と局発電気信号とをホモダイン検波することにより、自然BS光の周波数変化が位相差として出力される。ホモダイン信号は、電気フィルタ72に送られる。電気フィルタ72は、この例では、ローパスフィルタ(LPF)である。
【0041】
電気フィルタ72は、ホモダイン信号から和周波成分をカットして位相差に対応する電圧値を示す位相差信号を生成する。この位相差信号は信号処理装置74に送られ、所定の処理が行われる。
【0042】
信号処理装置74は、特許文献1に開示されている光ファイバ歪み測定装置と同様に、ビート信号の強度変化に基づいて、自然BS光の位相変化を抽出し、さらに、自然BS光の周波数変化を算出する。その後、自然BS光の周波数変化から、光ファイバの長手方向に沿った歪みの分布を取得し、測定対象の歪みや温度変化を得る。
【0043】
この発明の測定装置は、自己遅延ヘテロダイン干渉計40が備える可変遅延部48における遅延時間τが可変であることを特徴としている。以下、遅延時間τを可変にすることによる効果を説明する。
【0044】
光ファイバを伝搬する励起光パルス、自然BS光を誘発する音響波(圧力波)、及び、自然BS光の電界振幅(包絡関数)を,それぞれ、E(z,t)、ρ(z,t)、及び、E(z、t)とすると、光ファイバにおけるこれらの発展方程式は、以下の式(1a)~(1c)で与えられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0045】
【数1】
【0046】
ここで、v、α、及び、γは、それぞれ、光ファイバ中の、群速度、光損失係数、及び、非線形定数である。また、κは、音響波と励起光パルスの結合定数であり、κ=γω/4cnρである。ここで、ω、c、及び、nは、それぞれ、励起光パルスの角周波数、真空中の光速、及び、光ファイバの屈折率である。なお、励起光パルスの角周波数ωは、搬送波周波数fに対して、ω=2πfで与えられる。また、γ、及び、ρは、それぞれ、音響波(圧力波)が存在しているときの、光ファイバの平均密度、及び、電気歪み係数である。
【0047】
ここで扱う励起光パルスはnsオーダーである。従って、使用する光ファイバとして標準的な光ファイバ(ITU-T G652、SMF)を想定すると、2次分散により光パルスが広がる相互作用長である分散長は数万kmに及ぶ。このため、高々数10kmの距離スケールでは,時間的な光パルスの形状は変化しないと考えることができる。そこで、包絡関数の2回微分として現れる2次分散の項は無視している。
【0048】
また、Γ=Γ/2であり、Γは、音響波すなわちフォノンの減数定数(=スペクトル線幅)である。ω(=2πf)は、ブリルアン角周波数シフトであり、fは、ブリルアン周波数シフト(BFS)を表す。
【0049】
R(z,t)は、Langevin noise(ランジュバン力によるランダム雑音)を表している。一般的には、Langevin noiseを白色ガウス雑音と考えてよいので、期待値を<・>で表すと、以下の式(2a)~(2c)に示される統計的性質を有する。
【0050】
【数2】
【0051】
ここで、k及びTは、それぞれ、ボルツマン定数及び温度である。また、v、及び、Aeffは、それぞれ、光ファイバ中の音速、及び、光ファイバの有効断面積である。上記式(2a)~(2c)を用いて、上記式(1a)~(1c)の微分方程式を解く(例えば、非特許文献2参照)。上記式(1a)で、初期条件E(0,t)=P 1/2f(t)を用い、t’=t-z/vとすると、以下の式(3)が得られる。
【0052】
【数3】
【0053】
また、上記式(1c)から以下の式(4)が得られる。
【0054】
【数4】
【0055】
ここで、ρ(z,t)ρ(z’,t’)の期待値は、上記式(2b)を用いると、以下の式(5)のように計算できる。
【0056】
【数5】
【0057】
従って、入力端(z=0)で観測される自然BS光は、初期条件E(L,L/v)=0を用いると、以下の式(6)となる。ここで、E(0,t)=E(t)としている。
【0058】
【数6】
【0059】
自己遅延ヘテロダイン干渉計を用いたBOTDR(SDH-BOTDR)では、光ファイバの入力端側から出力される自然BS光に対して,自己遅延ヘテロダイン検波を行う。自己遅延ヘテロダイン干渉計の出力信号をバランス検波した後の信号は、Re{E (t-τ)E(t)exp(-iωt)}となる。ここで、ω=2πfであり、fは、光周波数シフタ部44における周波数シフト量、すなわち、局発電気信号源80の発振周波数である。
【0060】
このバランス検波した後の信号の位相変化からBFSを見積もるが、E(t)は、ランダムな雑音因子Rを含んでいるために散乱光波形は激しく揺いでしまい、BFSを算出することはできない。そこで、実際の計測では平均化処理を施している。ここでは、Re{E (t-τ)E(t)exp(-iωt)}の期待値を求めることにより揺らぎを除去して、BFSを見積もる。これは、極限まで平均化した場合に相当すると考えることができる。上記式(5)を用いて、期待値Re{E (t-τ)E(t)exp(-iωt)}を計算すると、以下の式(7)~(11)が得られる。
【0061】
【数7】
【0062】
BFSは、上記式(10)で与えられる位相から、以下の式(12)のように算出される。
【0063】
【数8】
【0064】
簡単のため、光ファイバにおける自己位相変調(SPM)などの非線形光学効果と損失を無視すると、上記式(12)は、以下の式(13)のように表すことができる。
【0065】
【数9】
【0066】
上記式(13)は、BFSを決める積分における入力光パルスの寄与が、自己遅延ヘテロダイン干渉計40における遅延時間τの遅延を受けた光パルスと、遅延を受けていない光パルスとの、電界包絡関数の積f(t-2z/v-τ)f(t-2z/v)になっており、これが、空間分解能に影響する窓幅に相当することを示している。
【0067】
図2を参照して、遅延時間τと空間分解能の関係を説明する。図2は、遅延時間τと空間分解能の関係を説明するための図である。図2では、例えば、遅延時間τを1nsに設定し、空間分解能1mに相当する10nsの時間幅を持つ光パルスを用いて分布計測を行う場合を示している。
【0068】
図2(A)は、上記式(13)の積分に寄与するf(t-τ)f(t)、f(t)及びf(t-τ)の計算結果を、それぞれ、実線、点線、及び、破線で示している。図2(A)では、横軸に時間(単位:ns)を取って示し、縦軸に、規格化された振幅を取って示している。網掛け部分は、f(t-τ)f(t)に囲まれる領域を表している。f(t-τ)f(t)で囲まれる領域の時間幅は9nsである。ここでは、入力する光パルスの一例として、8次スーパーガウシアン形状を仮定した。
【0069】
図2(B)は、500mの長さの光ファイバに図2(A)に示す光パルスを入力した場合の、400m地点に生じた歪み又は温度変化によるBFS変化を示している。図2(B)では、BFS変化の真値(BFS真値)を点線で示し、BFS変化の計測値(BFS計測値)を実線で示している。ここで、BFS変化区間を1mとし、BFS変化量としては、約600μεの歪み(又は、約30℃の温度変化)に相当する、30MHzを仮定している。この場合、空間分解能がf(t-τ)f(t)の時間幅9nsで決まると考えると、0.9m相当の空間分解能となる。従って、1m区間のBFS変化に対しては空間分解能が足りず、図2(B)に示されるように実際のBFS変化を忠実に表すことはできない。一方で,空間分解能がf(t-τ)f(t)の時間幅に依存すると考えると、f(t-τ)f(t)の時間幅を短くすれば、空間分解能が改善されることになる。すなわち,自己遅延ヘテロダイン干渉計40が備える可変遅延部48における遅延時間τを大きくすれば良いということが類推できる。
【0070】
そこで、入力光パルスの時間幅を10nsに固定して、遅延時間を5ns、8nsと大
きくした場合を考える。
【0071】
図3は、遅延時間τを大きくした場合の、f(t-τ)f(t)の時間幅を説明するための図である。図3(A)は、遅延時間τが5nsの場合を示し、図3(B)は、遅延時間τが8nsの場合を示している。図3(A)及び(B)では、f(t-τ)f(t)、f(t)及びf(t-τ)の計算結果を、それぞれ、実線、点線、及び、破線で示している。また、図3(A)及び(B)では、横軸に時間(単位:ns)を取って示し、縦軸に、規格化された振幅を取って示している。網掛け部分は、f(t-τ)f(t)に囲まれる領域を表している。入力する光パルスの形状は、図2の場合と同じく、8次スーパーガウシアン形状を仮定している。
【0072】
図2(A)、図3(A)及び(B)に示されるように、遅延時間τが長くなると、f(t-τ)f(t)の時間幅が短くなる。遅延時間τが5nsの場合、時間幅が約5nsとなり(図3(A)参照)、遅延時間τが8nsの場合、時間幅が約3nsとなる(図3(B)参照)。なお、図3(B)に示すように、遅延時間τが8nsの場合、光パルスの立ち上がり及び立ち下がりの傾きが影響して、時間幅が、元のパルス幅と遅延時間の差になっていない。
【0073】
図4(A)及び(B)は、図2と同様の、500mの長さの光ファイバーの400m地点で30MHzのBFS変化が生じた場合の、BFS変化を示している。図4(A)及び(B)では、BFS変化の真値(BFS真値)を点線で示し、BFS変化の計測値(BFS計測値)を実線で示している。ここで、BFS変化区間を1mとし、BFS変化量としては、30MHzを仮定している。図4(A)は、遅延時間τが5nsの場合を示し、図4(B)は、遅延時間τが8nsの場合を示している。
【0074】
図2(B)、図4(A)及び(B)に示されるように、遅延時間τを大きくしていくと、BFS計測値がBFS真値の変化形状に近づくことが分かる。なお、遅延時間τを大きくすると、f(t-τ)f(t)の窓が、入力光パルスに対して遅れていく。このため、計測されるBFS変化位置が正しいBFS変化位置からずれて見える。しかし、BFS変化位置のずれについては、遅延時間τに相当する距離分の補正により回避できる。
【0075】
遅延時間τの増大による空間分解能の改善効果を、さらに明確にみるために、30MHzのBFS変化が生じた区間として、50cm区間が50cm離れて2区間存在する状況を想定し、BFS計測値を計算した。
【0076】
図5は、BFS計測値を示す図である。図5(A)~(C)は、横軸に光ファイバの入力端からの長さ(単位:km)を取って示し、縦軸にBFS(単位:MHz)を取って示している。図5(A)~(C)では、BFS変化の真値(BFS真値)を点線で示し、BFS変化の計測値(BFS計測値)を実線で示している。
【0077】
図5(A)は、入力光パルスの時間幅を10ns、遅延時間τを8nsとしたときのBFSを示している。図5(A)に示されるように、BFS変化のある2つの50cm区間が良く分離できており、50cmの変化を十分に捉えられる空間分解能が得られている。
【0078】
図5(B)は、入力光パルスの時間幅を10ns、遅延時間τを1nsとしたときのBFSを示している。図2を参照して説明したように、この条件では、空間分解能は約90cmあると考えられる。従って、50cmの2つのBFS変化区間を分離できていないことが分かる。また、BFS変化量も真値よりも小さくなっており、遅延時間8nsの場合と比較すると正確に計測できていないことは明らかである。
【0079】
図5(C)は、参考として、入力光パルスの時間幅を3ns、遅延時間τを0.3nsとしたときのBFSを示している。
【0080】
図5(A)と図5(C)を比較すると、位置ずれを除けば、図5(A)と図5(C)とは、概ね同等となっている。このことから、入力光パルスの時間幅10ns、遅延時間τが8nsの条件では、入力光パルスの時間幅3nsの場合と同等の、30cm程度の空間分解能が得られることが示唆される。すなわち、自己遅延ヘテロダイン干渉計40が備える可変遅延部48における遅延時間τを大きくすることにより、入力光パルスの時間幅で決まる空間分解能よりも高い空間分解能を実現することができる。
【0081】
一般に、入力光パルスの時間幅を短くして、空間分解能を上げていくと、光ファイバで生じる自然BS光の実効的な光量が低下し、信号対雑音比(S/N)が劣化するので、所望の計測精度を維持するためにより多くの平均化処理が必要となり、その結果、計測時間が長くなるというデメリットがある。
【0082】
上述した、自己遅延干渉計における遅延時間を大きくして空間分解能を上げる手法も同様にS/Nが劣化すると考えられる。そのため、例えば、リアルタイム性が重視されるアプリケーションでの運用においては、計測時間のかかる高い空間分解能で恒常的に計測することは現実的とは言えない。そこで、例えば、以下のように運用される。
【0083】
先ず、第1のステップとして、1m程度の空間分解能、すなわち、入力光パルスの時間幅が10nsである場合に、遅延時間τを短い遅延時間、例えば、1nsとして計測する。第1のステップでの計測の結果、歪みや温度の分布に異常な変化の兆候があった場合に、第2のステップを行う。第2のステップでは、自己遅延ヘテロダイン干渉計内に設けられた可変遅延部にて遅延時間τを長い遅延時間、例えば8nsとして計測する。このように空間分解能を下げて恒常的に計測し、その後、空間分解能を上げて詳細に異常個所を調べるのが良い。
【0084】
従来の測定装置で、入力光パルスの時間幅を変えて空間分解能を上げる場合、光パルス発生部の能動部品の動作条件を変更する煩雑な機構が必要となる。これに対して、この発明の測定装置では、受動部品である可変遅延線の設定変更だけで空間分解能を向上できる。
【0085】
また、可変遅延部48での遅延時間τを、連続的に変化させる必要はない。従って、図1を参照して説明したように、自己遅延ヘテロダイン干渉計の可変遅延部において、遅延時間が短い、例えば遅延時間が1nsの光路と、遅延時間が長い、例えば遅延時間τが8nsの光路を、一般的な光スイッチで切り換える単純な構成でも実現可能である。
【0086】
ここでは、測定装置が自己遅延ヘテロダイン干渉計を備える例を説明したが、これに限定されない。自己遅延干渉計を、自己遅延ホモダイン干渉計としてもよい。自己遅延ホモダイン干渉計は、光周波数シフタ部を備えない点が、自己遅延ヘテロダイン干渉計と異なる。この場合、コヒーレント検波部60で生成されるホモダイン信号がそのまま位相差信号に対応するため、局発電気信号生成部、ミキサー、及び、電気フィルタが不要となる。この自己遅延ホモダイン干渉計を備える測定装置は、光周波数シフタ部や局発電気信号源を備えないため、自己遅延ヘテロダイン干渉計を備える測定装置に比べて、製造コストの面で有利である。
【符号の説明】
【0087】
10 光源部
12 光源
14 光パルス発生器
20 サーキュレータ
30 光バンドパスフィルタ
32 光増幅器
40 自己遅延ヘテロダイン干渉計
42 分岐部
44 光周波数シフタ部
46 偏波制御部
48 可変遅延部
50 合波部
60 コヒーレント検波部
62 バランス型PD
64 FET増幅器
70 ミキサー
72 電気フィルタ(LPF)
74 信号処理装置
80 局発電気信号源
100 光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5