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  • 特開-マウススイッチの取付構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109478
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】マウススイッチの取付構造
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/20 20160101AFI20220721BHJP
【FI】
A61B90/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004808
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝重
(57)【要約】
【課題】1つの操作部の操作でマウススイッチの上下位置と前後位置と角度を調整することができるマウススイッチの取付構造を提供する。
【解決手段】第1アーム4及び第2アーム5が第1~第3回転軸R1~R3で回転自在なため、マウススイッチ6の上下位置及び前後位置を調整可能であると共に角度も任意に変更することができる。そしてハンドル17を操作して第3回転軸R3のテーパー面15が第1軸圧伝達部G1及び第2軸圧伝達部G2をそれぞれ押圧して、第1軸圧伝達部G1が手術顕微鏡1の固定バー3に圧接し、第2軸圧伝達部G2がマウススイッチ6の凸部10に圧接するため、第1~第3回転軸R1~R3の回転がロックされ、その位置及び角度を固定することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術顕微鏡の前側に設けられた左右の接眼部の間に上端部が固定され、下端に左右方向に沿う第1回転軸を中心とした円弧面が形成されている固定バーと、
マウススイッチの上部に形成され、上側に左右方向に沿う第2回転軸を中心とした円弧面が形成されている凸部と、
上端部が固定バーの下端部に対して第1回転軸を中心に回転自在に取付けられ、内部に第1軸圧伝達部が収納された第1アームと、
下端部がマウススイッチの凸部に対して第2回転軸を中心に回転自在に取付けられ、内部に第2軸圧伝達部が収納された第2アームと、
第1アームの下端部と第2アームの上端部がそれぞれ回動自在且つ左右方向でスライド自在に取付けられ、左右方向で径が漸次拡大する円錐側面状のテーパー面を有する第3回転軸と、
第3回転軸の一端に係合した状態で第1アーム又は第2アームに取付けられ、第3回転軸を左右方向へスライドさせる操作部と、を備え、
前記操作部の操作により第3回転軸のテーパー面が第1軸圧伝達部及び第2軸圧伝達部に向かう方向へスライドした際に、該テーパー面が第1軸圧伝達部の下端及び第2軸圧伝達部の上端を押圧して、第1軸圧伝達部の上端が固定バーの円弧面に圧接し、第2軸圧伝達部の下端が凸部の円弧面に圧接することを特徴とするマウススイッチの取付構造。
【請求項2】
操作部が第3回転軸の一端に形成されたねじ部に螺合した状態で第1アームの下端部又は第2アームの上端部に対して回転自在に取付けられたハンドルで、ハンドルを回転させることで第3回転軸が左右にスライドすることを特徴とする請求項1記載のマウススイッチの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマウススイッチの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
脳外科手術等の分野では、手術顕微鏡で術部を観察しながら拡大された視野の中で手術を行っている。この種の手術顕微鏡にはフォーカス調整やズーム調整等の複数の機能がある。術者は手術顕微鏡の接眼部に眼をつけたままの状態であり、更に両手は手術に使われているため、機能の切り換えは、口で操作できるマウススイッチが使用される。
【0003】
手術顕微鏡には上下動自在な垂直バーが設けられ、その垂直バーには前後動自在な水平バーが設けられ、水平バーの一端にマウススイッチが支持されている。垂直バーを手術顕微鏡に対して水平バーごと上下動させることによりマウススイッチの上下位置を調整することができ、垂直バーに設けられたクランプによりその上下位置を固定することができる。
【0004】
また水平バーを垂直バーに対して前後動させることによりマウススイッチの前後位置を調整することができ、水平バーに設けられたクランプによりその前後位置を固定することができる。このようにしてマウススイッチの上下位置及び前後位置を調整して、術者の口の位置に合わせることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4458907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の関連技術にあっては、マウススイッチの上下位置と前後位置を調整するために2つのクランプを操作する必要があるため、操作が面倒であった。またマウススイッチを上下及び前後に移動させるだけで、マウススイッチの角度を変更することができなかった。
【0007】
本発明は、このような従来の関連技術に着目してなされたものであり、1つの操作部の操作でマウススイッチの上下位置と前後位置と角度を調整することができるマウススイッチの取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の技術的側面によれば、手術顕微鏡の前側に設けられた左右の接眼部の間に上端部が固定され、下端に左右方向に沿う第1回転軸を中心とした円弧面が形成されている固定バーと、マウススイッチの上部に形成され、上側に左右方向に沿う第2回転軸を中心とした円弧面が形成されている凸部と、上端部が固定バーの下端部に対して第1回転軸を中心に回転自在に取付けられ、内部に第1軸圧伝達部が収納された第1アームと、下端部がマウススイッチの凸部に対して第2回転軸を中心に回転自在に取付けられ、内部に第2軸圧伝達部が収納された第2アームと、第1アームの下端部と第2アームの上端部がそれぞれ回動自在且つ左右方向でスライド自在に取付けられ、左右方向で径が漸次拡大する円錐側面状のテーパー面を有する第3回転軸と、第3回転軸の一端に係合した状態で第1アーム又は第2アームに取付けられ、第3回転軸を左右方向へスライドさせる操作部と、を備え、前記操作部の操作により第3回転軸のテーパー面が第1軸圧伝達部及び第2軸圧伝達部に向かう方向へスライドした際に、該テーパー面が第1軸圧伝達部の下端及び第2軸圧伝達部の上端を押圧して、第1軸圧伝達部の上端が固定バーの円弧面に圧接し、第2軸圧伝達部の下端が凸部の円弧面に圧接することを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の技術的側面によれば、操作部が第3回転軸の一端に形成されたねじ部に螺合した状態で第1アームの下端部又は第2アームの上端部に対して回転自在に取付けられたハンドルで、ハンドルを回転させることで第3回転軸が左右にスライドすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の技術的側面によれば、第1アーム及び第2アームが第1~第3回転軸で回転自在なため、マウススイッチの上下位置及び前後位置を調整可能であると共に角度も任意に変更することができる。そして操作部を操作して第3回転軸のテーパー面が第1軸圧伝達部及び第2軸圧伝達部に向かう方向へスライドすると、テーパー面が第1軸圧伝達部及び第2軸圧伝達部をそれぞれ押圧して、第1軸圧伝達部が手術顕微鏡の固定バーに圧接し、第2軸圧伝達部がマウススイッチの凸部に圧接するため、第1~第3回転軸の回転がロックされ、その位置及び角度を固定することができる。そして再び操作部を操作して第3回転軸を逆側へスライドさせると第1アーム及び第2アームは第1~第3回転軸でフリーとなり、マウススイッチの位置及び角度を再び変更することができる。1つの操作部を操作するだけなので操作性に優れる。
【0011】
本発明の第2の技術的側面によれば、操作部が第3回転軸の一端に形成したねじ部に螺合するハンドルのため、ハンドルの回転によりねじ部との螺合状態を微調整することにより、第1~第3回転軸の完全なロック状態とフリー状態の間に、位置と角度は維持されているが手で容易に動かすことができる半ロック状態を得ることができる。従って完全にロックする前に半ロック状態で最適なマウススイッチの位置と角度を調整することができ、調整がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】手術顕微鏡とマウススイッチを示す斜視図。
図2】マウススイッチの使用状態を示す側面図。
図3】マウススイッチの収納状態を示す側面図。
図4】第1アーム及び第2アームとマウススイッチを示す斜視図。
図5】第1アーム及び第2アームとマウススイッチを示す分解斜視図。
図6】第1アーム及び第2アームとマウススイッチを示す断面図。
図7】第1アーム及び第2アームとマウススイッチを示す分解断面図。
図8図6中矢示SA-SA線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図8は本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0014】
以上及び以下において前後左右の方向性は図1に示された通りである。また以下で説明する部品は実際は複数の小部品で組み立てられたものであっても一体的に機能する部分は一体物として図示している。
【0015】
手術顕微鏡1は図示せぬスタンド装置により支持されている。手術顕微鏡1は前側に左右一対の接眼部2を有する立体顕微鏡で、術部の光学像を立体的に拡大観察することができる。
【0016】
左右の接眼部2の間には下側に延びる固定バー3の上端部が固定されている。固定バー3の下側に第1アーム4と第2アーム5が設けられ、第2アーム5の下端部5bにマウススイッチ6が支持されている。マウススイッチ6は前端に操作レバー7を有し、術者Dがここを口でくわえて手術顕微鏡1のフォーカスやズームの調整を行うことができる。
【0017】
第1アーム4の上端部4aは固定バー3の下端部に対して左右方向に貫通する第1回転軸R1により回転自在に取付けられている。第1回転軸R1が貫通する固定バー3の下端にはその第1回転軸R1を中心とした円弧面3bが形成されている。
【0018】
第1アーム4は主要部が角筒状で、上端部4aと下端部4bはその側面だけを延長したリング形状をしている。上端部4aには第1回転軸R1が貫通する円孔8が形成され、下端部4bには後述する第3回転軸R3が貫通する大きめの円孔9が形成されている。第1アーム4の内部には第1軸圧伝達部G1が長手方向に沿って収納されている。
【0019】
一方、マウススイッチ6の上部には凸部10が形成され、そこに第2アーム5の下端部5bが左右方向に貫通する第2回転軸R2により回転自在に取付けられている。第2回転軸R2が貫通する凸部10の上側には第2回転軸R2を中心とした円弧面10aが形成されている。
【0020】
第2アーム5も主要部が角筒状で、下端部5bはその側面だけを延長したリング形状で、その中心に第2回転軸R2が貫通する円孔11が形成されている。上端部5aはリング形状部分の周縁にフランジ12を形成した立体形状をしており、その中心に後述する第3回転軸R3のねじ部13を貫通させるための円孔14が形成されている。第2アーム5の内部には第2軸圧伝達部G2が長手方向に沿って収納されている。
【0021】
このような第1アーム4の下端部4bと第2アーム5の上端部5aが第3回転軸R3を介して回転自在に接続されている。第3回転軸R3は基本的に左右方向に沿う円柱形状で、その中央部に径が漸次拡大する円錐側面状のテーパー面15が形成されている。そして第3回転軸R3の左端面にはねじ部13が突出形成されている。
【0022】
第1アーム4の下端部4bに形成された円孔9は第3回転軸R3のテーパー面15以外の円柱部分の側面に接しており、第3回転軸R3は円孔9に対して相対的に回転自在だが、左右方向ではスライドすることができる。
【0023】
第2アーム5の上端部5aはねじ部13を円孔14から外側へ突出させた状態で第3回転軸R3の左右両端面を隙間Sを介して包み込んでいる。フランジ12は第3回転軸R3のテーパー面15以外の円柱部分の側面に接しているため、第1アーム4同様に第3回転軸R3はフランジ12に対して相対的に回転自在であると共に、両側に隙間Sが形成されているため、左右方向でスライドすることもできる。
【0024】
第3回転軸R3のねじ部13にはベアリング16を介して操作部としての蝶形のハンドル17が螺合されている。ベアリング16の一方は第2アーム5の上端部5aに固着され、他方はハンドル17に固着されている。従ってこのハンドル17を回すことにより第3回転軸R3は左右にスライドすることができる。
【0025】
第1アーム4内に収納されている第1軸圧伝達部G1は上端が固定バー3の下端の円弧面3bに対応する反円弧面3aとなっており、下端が第3回転軸R3のテーパー面15に対応する反テーパー面15bとなっている。第2アーム5内に収納されている第2軸圧伝達部G2も同様に下端が凸部10の円弧面10aに対応する反円弧面10bとなっており、上端が第3回転軸R3のテーパー面15に対応する反テーパー面15aとなっている。
【0026】
次に作用を説明する。
【0027】
ハンドル17を手で回すことにより第3回転軸R3を右側にスライドさせると、第1軸圧伝達部G1と第2軸圧伝達部G2の各反テーパー面15a、15bがテーパー面15から離れ、テーパー面15が第1軸圧伝達部G1と第2軸圧伝達部G2を押圧しない。そのため第1軸圧伝達部G1の両端部が固定バー3や第3回転軸R3に圧接せず、第2軸圧伝達部G2の両端部もマウススイッチ6の凸部10や第3回転軸R3に圧接せずにフリー状態となる。従って第1アーム4と第2アーム5が第1~第3回転軸R1~R3を中心に回転し、マウススイッチ6の上下位置及び前後位置を自由に変更することができると共に、マウススイッチ6の角度も自由に変更することができる。従ってマウススイッチ6は図2に示すような使用状態だけでなく、図3のような収納状態にすることもできる。
【0028】
マウススイッチ6を希望する位置及び角度にした後に、ハンドル17を回して第3回転軸R3を左側にスライドさせると、テーパー面15が第1軸圧伝達部G1と第2軸圧伝達部G2側に向かい、第1軸圧伝達部G1と第2軸圧伝達部G2をそれぞれ押圧する。そのため第1軸圧伝達部G1の両端部が固定バー3や第3回転軸R3に圧接し、第2軸圧伝達部G2の両端部もマウススイッチ6の凸部10や第3回転軸R3に圧接してロック状態となり、マウススイッチ6の位置及び角度が固定される。
【0029】
またフリー状態からロック状態にする前に、ハンドル17の回転によりねじ部13との螺合状態を微調整することにより、半ロック状態を得ることができる。すなわちハンドル17を締め切るのではなく、ロック状態の手前で回転を停止し、第1軸圧伝達部G1や第2軸圧伝達部G2の両端部が相手方に対して完全に圧接するのでなく、回転方向に力を加えれば摺動可能な程度にしておく。そうすれば術者Dはいったんマウススイッチ6から手を離すことができ、その状態で希望する位置及び角度に調整でき、調整後にハンドル17を操作してロック状態にすることができるため、調整がしやすい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば1つのハンドル17を操作するだけで、マウススイッチ6のフリー状態、ロック状態、半ロック状態が得られるため、操作性に優れる。
【符号の説明】
【0031】
1 手術顕微鏡
2 接眼部
3 固定バー
3b 円弧面
3a 反円弧面(第1軸圧伝達部)
4 第1アーム
4a 上端部(第1アーム)
4b 下端部(第1アーム)
5 第2アーム
5a 上端部(第2アーム)
5b 下端部(第2アーム)
6 マウススイッチ
10 凸部
10a 円弧面(凸部)
10b 反円弧面(第2軸圧伝達部)
13 ねじ部
15 テーパー面
15b 反テーパー面(第1軸圧伝達部)
15a 反テーパー面(第2軸圧伝達部)
17 ハンドル(操作部)
D 術者
S 隙間
R1 第1回転軸
R2 第2回転軸
R3 第3回転軸
G1 第1軸圧伝達部
G2 第2軸圧伝達部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8