(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109480
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ロッカアームの支持機構
(51)【国際特許分類】
F01M 9/10 20060101AFI20220721BHJP
F01L 1/18 20060101ALI20220721BHJP
F01M 1/16 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F01M9/10 A
F01L1/18 B
F01L1/18 N
F01M1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004816
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴志 正輝
【テーマコード(参考)】
3G016
3G313
【Fターム(参考)】
3G016BA49
3G016BB09
3G016BB22
3G016CA36
3G016CA37
3G016DA12
3G016GA07
3G313AB02
3G313BC11
3G313BD61
3G313CA05
3G313FA08
(57)【要約】
【課題】摺接箇所の潤滑に要する時間のさらなる短縮を図る。
【解決手段】ロッカアーム40の支持機構は、筒状をなしていて第1貫通孔58が形成された基部52と、基部52の一端に配されて揺動支点部42を支持するとともに第2貫通孔59が形成された支持部56と、を有するピボット本体(支持機構本体)51と、基部52の内部に保持されるプラグ61であって、基部52の内周面との間に潤滑油の流路Fを空けて配される流量調整部64を有するプラグ61と、基部52の内部に配されていて、第1位置と、第1位置よりも第2貫通孔59に近い第2位置と、を移動可能とされる移動部材70であって、第1位置では流路Fを塞ぐのに対して第2位置では基部52及び流量調整部64の少なくとも一方との間に隙間Cが生じるよう配される移動部材70と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシリンダヘッドに組み付けられてロッカアームの揺動支点部を支持するロッカアームの支持機構であって、
筒状をなしていて第1貫通孔が形成された基部と、前記基部の一端に配されて前記揺動支点部を支持するとともに第2貫通孔が形成された支持部と、を有する支持機構本体と、
前記基部の内部に保持されるプラグであって、前記基部の内周面との間に潤滑油の流路を空けて配される流量調整部を有するプラグと、
前記基部の内部に配されていて、第1位置と、前記第1位置よりも前記第2貫通孔に近い第2位置と、を移動可能とされる移動部材であって、前記第1位置では前記流路を塞ぐのに対して前記第2位置では前記基部及び前記流量調整部の少なくとも一方との間に隙間が生じるよう配される移動部材と、を備えるロッカアームの支持機構。
【請求項2】
前記基部及び前記流量調整部の少なくとも一方は、前記第2位置の前記移動部材が前記第2貫通孔側に移動するのを規制する第2位置側移動規制部を有する請求項1記載のロッカアームの支持機構。
【請求項3】
前記基部は、前記第1貫通孔を有する第1基部と、前記第1基部に対して前記支持部側に配されていて前記第1基部よりも内寸が小さい第2基部と、前記第1基部と前記第2基部とに連なっていて前記第1基部から前記第2基部に近づくほど内寸が小さくなる第3基部と、を有しており、
前記第2位置側移動規制部は、前記第3基部の内面により構成される請求項2記載のロッカアームの支持機構。
【請求項4】
前記移動部材は、前記基部の内周面に沿って延在するよう環状をなしており、
前記流量調整部は、前記第2位置の前記移動部材に対して内嵌される内嵌部を有する請求項2または請求項3記載のロッカアームの支持機構。
【請求項5】
前記流量調整部は、前記内嵌部が、前記第2貫通孔に近づくほど外寸が小さくなるよう構成される請求項4記載のロッカアームの支持機構。
【請求項6】
前記基部及び前記流量調整部の少なくとも一方は、前記第1位置の前記移動部材が前記第2貫通孔側とは反対側に移動するのを規制する第1位置側移動規制部を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロッカアームの支持機構。
【請求項7】
前記プラグは、前記基部に固定される固定部を有しており、
前記流量調整部は、前記固定部に連なる第1流量調整部と、前記第1流量調整部に対して前記第2貫通孔側に配されていて前記第1流量調整部よりも外寸が小さい第2流量調整部と、前記第1流量調整部と前記第2流量調整部とに連なっていて前記第1流量調整部から前記第2流量調整部に近づくほど外寸が小さくなる第3流量調整部と、を有しており、
前記第1位置側移動規制部は、前記第3流量調整部の外面により構成される請求項6記載のロッカアームの支持機構。
【請求項8】
前記第1位置側移動規制部は、前記第1貫通孔よりも前記第2貫通孔側となる前記第1位置の前記移動部材の移動を規制する請求項6または請求項7記載のロッカアームの支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、ロッカアームの支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロッカアームの支持機構の一例として下記特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたロッカアームの支持機構に備わるピボットは、車両のシリンダヘッドに組み付けられてロッカアームの揺動支点部を支持する部材であって、筒状の基部と、基部の一端に配置され、揺動支点部を支持する支持部とを備えるピボット本体と、基部の内部に保持されるプラグとを備える。ピボット本体が、基部を貫通する第1貫通孔と、支持部を貫通する第2貫通孔とを備えるとともに、プラグが、基部の内部に固定される圧入部と、圧入部から連なり、基部の内部に、基部の内周面との間に潤滑油の流路となる隙間を空けて配置される流量調整部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載のロッカアームの支持機構によれば、内燃機関が始動されてから、潤滑油が支持部の第2貫通孔に達して摺接箇所が潤滑されるまでに要する時間を短縮することができる。しかしながら、特許文献1に記載のロッカアームの支持機構では、作動していた内燃機関が停止されると、流路内の潤滑油が第1貫通孔を通して流出する構成であるため、潤滑油が支持部の第2貫通孔に達するのに要する時間をさらに短縮するには限界があった。
【0005】
本願明細書に記載の技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、摺接箇所の潤滑に要する時間のさらなる短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本願明細書に記載の技術に関わるロッカアームの支持機構は、車両のシリンダヘッドに組み付けられてロッカアームの揺動支点部を支持するロッカアームの支持機構であって、筒状をなしていて第1貫通孔が形成された基部と、前記基部の一端に配されて前記揺動支点部を支持するとともに第2貫通孔が形成された支持部と、を有する支持機構本体と、前記基部の内部に保持されるプラグであって、前記基部の内周面との間に潤滑油の流路を空けて配される流量調整部を有するプラグと、前記基部の内部に配されていて、第1位置と、前記第1位置よりも前記第2貫通孔に近い第2位置と、を移動可能とされる移動部材であって、前記第1位置では前記流路を塞ぐのに対して前記第2位置では前記基部及び前記流量調整部の少なくとも一方との間に隙間が生じるよう配される移動部材と、を備える。
【0007】
このようにすれば、車両の内燃機関が作動するのに伴って第1貫通孔に流入した潤滑油が基部の内周面とプラグの流量調整部との間に空けられた流路内を第2貫通孔に向けて流動する。すると、流路を塞いでいる第1位置の移動部材が潤滑油によって押されることで第2貫通孔に近づくよう移動させられる。移動部材が第2位置に達すると、第2位置の移動部材と基部及び流量調整部の少なくとも一方との間に生じた隙間から潤滑油が流されるので、潤滑油を第2貫通孔に到達させることができる。ここで、流路は、流量調整部によって容積が制限されているので、潤滑油が第2貫通孔に到達するまでに要する時間の短縮が図られている。潤滑油は、第2貫通孔から支持部とロッカアームの揺動支点部との摺接箇所に供給されることで、当該摺接箇所の潤滑が図られる。一方、車両の内燃機関が停止されるのに伴って流路内の潤滑油が第1貫通孔から流出すると、流路内を第1貫通孔に向けて流動する潤滑油によって第2位置の移動部材が押されることで第2貫通孔から遠ざかるよう移動する。移動部材が第1位置に至ると、移動部材によって流路が塞がれるので、流路内において第1位置の移動部材よりも第2貫通孔側にある潤滑油が第1貫通孔側に流動するのが規制される。このように、第1位置の移動部材によって流路内の潤滑油を保持することができるので、車両の内燃機関が再び作動されてから、潤滑油が第2貫通孔に到達するまでに要する時間をさらに短縮することができる。
【0008】
(2)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(1)に加え、前記基部及び前記流量調整部の少なくとも一方は、前記第2位置の前記移動部材が前記第2貫通孔側に移動するのを規制する第2位置側移動規制部を有してもよい。このようにすれば、第1位置の移動部材が潤滑油によって押されて第2位置に至ると、第2位置側移動規制部によって第2位置の移動部材が第2貫通孔側に移動するのが規制されるから、移動部材を第2位置に保つことができる。
【0009】
(3)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(2)に加え、前記基部は、前記第1貫通孔を有する第1基部と、前記第1基部に対して前記支持部側に配されていて前記第1基部よりも内寸が小さい第2基部と、前記第1基部と前記第2基部とに連なっていて前記第1基部から前記第2基部に近づくほど内寸が小さくなる第3基部と、を有しており、前記第2位置側移動規制部は、前記第3基部の内面により構成されてもよい。このようにすれば、第1基部から第2基部に近づくほど内寸が小さくなる第3基部の内面が、第2位置側移動規制部を構成しているので、第2位置側移動規制部の設置に伴って基部を既存構造から設計変更せずに済む可能性がある。これにより、例えば支持機構本体として汎用品を用いることが可能となる。
【0010】
(4)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(2)または上記(3)に加え、前記移動部材は、前記基部の内周面に沿って延在するよう環状をなしており、前記流量調整部は、前記第2位置の前記移動部材に対して内嵌される内嵌部を有してもよい。このようにすれば、基部の内周面に沿って延在するよう環状をなす移動部材が第2位置にあるとき、移動部材に対して内嵌される流量調整部の内嵌部によって移動部材を支持することができる。これにより、第2位置の移動部材の姿勢を安定的に保つことができるので、移動部材と基部及び流量調整部の少なくとも一方との間に生じる隙間が確保される確実性が高くなる。
【0011】
(5)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(4)に加え、前記流量調整部は、前記内嵌部が、前記第2貫通孔に近づくほど外寸が小さくなるよう構成されてもよい。このようにすれば、第2位置の移動部材と、その移動部材に内嵌されていて第2貫通孔に近づくほど外寸が小さくなる内嵌部の外面と、の間には、潤滑油の流動を許容する隙間が生じるようになっている。このように、流量調整部の構成を工夫することで、潤滑油の流動を許容する隙間が確保されているので、支持機構本体の設計変更が不要となる。これにより、例えば支持機構本体として汎用品を用いることが可能となる。
【0012】
(6)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(1)から上記(5)のいずれかに加え、前記基部及び前記流量調整部の少なくとも一方は、前記第1位置の前記移動部材が前記第2貫通孔側とは反対側に移動するのを規制する第1位置側移動規制部を有してもよい。このようにすれば、第2位置の移動部材が潤滑油によって押されて第1位置に至ると、第1位置側移動規制部によって第1位置の移動部材が第2貫通孔側とは反対側に移動するのが規制されるから、移動部材を第1位置に保つことができる。
【0013】
(7)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(6)に加え、前記プラグは、前記基部に固定される固定部を有しており、前記流量調整部は、前記固定部に連なる第1流量調整部と、前記第1流量調整部に対して前記第2貫通孔側に配されていて前記第1流量調整部よりも外寸が小さい第2流量調整部と、前記第1流量調整部と前記第2流量調整部とに連なっていて前記第1流量調整部から前記第2流量調整部に近づくほど外寸が小さくなる第3流量調整部と、を有しており、前記第1位置側移動規制部は、前記第3流量調整部の外面により構成されてもよい。このようにすれば、第1流量調整部から第2流量調整部に近づくほど外寸が小さくなる第3流量調整部の外面が、第1位置側移動規制部を構成しているので、第1位置側移動規制部の設置に伴って流量調整部を既存構造から設計変更せずに済む可能性がある。これにより、例えばプラグとして汎用品を用いることが可能となる。
【0014】
(8)また、上記ロッカアームの支持機構は、上記(6)または上記(7)に加え、前記第1位置側移動規制部は、前記第1貫通孔よりも前記第2貫通孔側となる前記第1位置の前記移動部材の移動を規制してもよい。このようにすれば、第1貫通孔から流路に流入した潤滑油によって第1貫通孔よりも第2貫通孔側となる第1位置の移動部材が第2貫通側に向けて円滑に押されるようになっている。仮に第1位置の移動部材が第1貫通孔よりも第2貫通孔側とは反対側に位置する場合に比べると、第1位置と第2位置との間の距離(移動ストローク)を短くすることができる。また、第1位置と第2位置との間を移動する移動部材が第1貫通孔を通過するのが避けられるので、第1貫通孔の孔縁が移動部材に干渉してその移動を阻害する事態を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本願明細書に記載の技術によれば、摺接箇所の潤滑に要する時間のさらなる短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】移動部材が第1位置とされるピボットの断面図
【
図3】移動部材が第2位置とされるピボットの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
実施形態1を
図1から
図3によって説明する。本実施形態のロッカアームの支持機構は、車両のエンジン(内燃機関の一例)の動弁装置20に備えられるピボット50である。
【0018】
シリンダヘッド1は、
図1に示すように、吸気ポート3を開閉する吸気バルブ10と、排気ポートを開閉する排気バルブ(図示せず)とを備えている。以下、吸気バルブ10及びこの吸気バルブ10を開閉する吸気側の動弁装置20について、詳細に説明する。排気バルブ及び排気バルブ側の動弁装置は、吸気側と同様の構成を備えているため、説明を省略する。
【0019】
吸気バルブ10は、円板状の弁部材11と、この弁部材11の上面から上方に延びる丸棒状のバルブステム12とを備えている。弁部材11は、シリンダヘッド1に設けられているシリンダ(図示せず)の内部空間と連通する吸気通路2に配され、シリンダと吸気通路2とを連通する吸気ポート3の開閉を行う。
【0020】
バルブステム12は、吸気通路2の外壁を貫通しており、弁部材11側とは反対側の端部が外側(
図1の上側)に突出している。バルブステム12の上端よりもやや下方(弁部材11寄りの位置)には、円板状のばね押さえ部13が配置されている。シリンダヘッド1の外面とばね押さえ部13との間には、バルブスプリング14が圧縮状態で組み込まれている。このバルブスプリング14の弾性力によって、吸気バルブ10は、常にはバルブステム12に向かって(
図1の上方に向かって、すなわち、弁部材11が吸気ポート3を閉塞するように)付勢されている。
【0021】
動弁装置20は、シリンダヘッド1に組み付けられて、吸気バルブ10の開閉を行う機構である。動弁装置20は、カムシャフト30に組み付けられたカム31と、カム31の回転に従って揺動し、カム31の回転運動を上下運動に変換して吸気バルブ10に伝達するロッカアーム40と、ロッカアーム40の揺動支点を支持するピボット50と、を備えている。
【0022】
カムシャフト30は、中空の丸棒であって、バルブステム12の先端からやや離れた位置に、バルブステム12に対して垂直に配置され、支持部材(図示せず)によってシリンダヘッド1に固定されている。
【0023】
カム31は、略卵型の輪郭を有する板カムであって、カムシャフト30を挿通するためのシャフト孔32を有している。カム31は、シャフト孔32にカムシャフト30が挿通されることにより、カムシャフト30に固定され、カムシャフト30とともに回転される。カム31は、回転中心(シャフト孔32の中心)から外周面までの距離が一定である円形のベース円部33と、回転中心から外周面までの距離がベース円部33よりも大きなカムノーズ部34と、を有している。
【0024】
ロッカアーム40は、全体として細長い部材であり、カムシャフト30とバルブステム12との間に、カムシャフト30と垂直に配されている。ロッカアーム40は、ローラ47と、ローラ47を回転可能に保持するアーム本体41と、を備えている。アーム本体41の一端部は、ピボット50に揺動可能に支持される揺動支点部42であり、アーム本体41の他端部は、シム15を介して吸気バルブ10に当接するバルブ当接部44である。シム15は、略円板状であり、バルブステム12の上端とバルブ当接部44との間に配置されている。シム15は、バルブクリアランスを調整するためのものであり、厚さの異なる複数のシムのなかから適切なものを選び、取り付けることで、バルブクリアランスを調整することができる。
【0025】
揺動支点部42は、球状凹部43を有している。球状凹部43は、揺動支点部42の表面(
図1の下面)から半球状に凹む凹部である。
【0026】
アーム本体41は、揺動支点部42とバルブ当接部44とを繋ぐ2つの側壁部45を有している(
図1は断面図であるため、一方の側壁部45のみが図示されている)。各側壁部45は、カムシャフト30に対して垂直な向きで配される壁である。2つの側壁部45は、互いに間隔を空けて、平行に配置されている。2つの側壁部45の間には、支持軸46が渡されている。支持軸46には、ニードルベアリングなどの軸受(図示せず)を介してローラ47が回転自在に装着されている。ローラ47は、その一部が、側壁部45から上側に突出している。この突出部分の外周面は、カム31の外周面に当接している。
【0027】
ピボット50は、ピボット本体51(支持機構本体に該当)と、このピボット本体51に装着されるプラグ61と、を備えている。
【0028】
ピボット本体51は、金属製であって、例えばSCM415などのクロムモリブデン鋼や、S15Cなどの炭素鋼により構成されている。このピボット本体51は、全体として一端が閉塞され、他端が開口した円筒状をなしており、
図2に示すように、円筒状の基部52と、この基部52に連なる支持部56と、を備えている。基部52は、円筒状の大径部(第1基部に該当)53と、この大径部53の一端(支持部56側の端部)に連なっていて大径部53から離れるにつれて径(内寸及び外寸)が縮小する短い筒状の縮径部(第3基部に該当)54と、縮径部54から大径部53とは反対側(支持部56側)に延びていて大径部53よりも径(内寸及び外寸)が小さな短い円筒状の小径部(第2基部に該当)55と、を備えている。大径部53、縮径部54、及び小径部55は、同軸に配置されている。大径部53、縮径部54、及び小径部55の中で、大径部53は、内寸及び外寸が共に最大とされるのに対し、小径部55は、内寸及び外寸が共に最小とされる。支持部56は、小径部55において縮径部54とは反対側の開口を塞ぐように配され、球状凹部43の内部に嵌まり込んで揺動支点部42を支える半球状の部分である。なお、ピボット本体51の小径部55及び支持部56における各外寸は、球状凹部43の内寸に適合するよう設定されている。ピボット本体51の内部には、プラグ61を収容可能となっており、大径部53の他端(支持部56とは反対側の端部)は、プラグ61を挿入するためのプラグ挿入口57となっている。
【0029】
大径部53は、ピボット本体51の内部空間と外部空間とを連通する第1貫通孔58を有しており、支持部56は、同じくピボット本体51の内部空間と外部空間とを連通する第2貫通孔59を有している。
【0030】
プラグ61は、金属製であって、例えばアルミニウム、SUS(ステンレス鋼)やSPCC(冷間圧延鋼板)などの、ピボット本体51を構成する金属材料よりも線膨張係数の大きな金属材料により構成されている。このプラグ61は、
図2に示すように、全体として一端が閉塞され、他端が開口した円筒状をなしており、圧入部62(固定部に該当)と、この圧入部62に連なる段差部63と、この段差部63に連なる流量調整部64と、を備えている。圧入部62は、大径部53の内径とほぼ等しい外径を有する短い円筒状の部分である。段差部63は、圧入部62の一端(支持部56側の端部)に連なり、大径部53から離れるにつれて径が縮小する短い筒状の部分である。流量調整部64は、段差部63から圧入部62とは反対側(支持部56側)に延び、圧入部62の径よりも最大径(後述する大径流量調整部64Aの径)が小さな段付きの略円筒状の部分である。圧入部62、段差部63、及び流量調整部64は、同軸に配されている。
【0031】
流量調整部64は、円筒状の大径流量調整部(第1流量調整部に該当)64Aと、この大径流量調整部64Aの一端(支持部56側の端部)に連なっていて大径部53から離れるにつれて径(内寸及び外寸)が縮小する短い筒状の縮径流量調整部(第3流量調整部に該当)64Bと、縮径流量調整部64Bから大径流量調整部64Aとは反対側(支持部56側)に延びていて大径流量調整部64Aよりも径(内寸及び外寸)が小さな短い円筒状の小径流量調整部(第2流量調整部に該当)64Cと、を備えている。大径流量調整部64A、縮径流量調整部64B、及び小径流量調整部64Cは、同軸に配されている。大径流量調整部64A、縮径流量調整部64B、及び小径流量調整部64Cの中で、大径流量調整部64Aは、内寸及び外寸が共に最大とされるのに対し、小径流量調整部64Cは、内寸及び外寸が共に最小とされる。小径流量調整部64Cの一端(縮径流量調整部64Bとは反対側の端部)は、大径部53を超えて縮径部54に達するよう配されるとともに、略円板状の閉塞部65によって塞がれている。閉塞部65は、支持部56に対して間隔を空けて対向するよう配されている。小径流量調整部64Cの一端及び閉塞部65は、流量調整部64における圧入部62とは反対側の端部を構成しており、当該端部は、外周先端側の角部が丸められていて先細り状をなしている。つまり、流量調整部64における圧入部62とは反対側の端部は、第2貫通孔59に近づくほど外寸が小さくなるよう構成されている。
【0032】
プラグ61は、流量調整部64が支持部56の方を向くようにして、プラグ挿入口57からピボット本体51の内部に挿入される。圧入部62は、プラグ挿入口57から僅かに奥方の位置で、圧入により固定され、プラグ挿入口57を閉塞している。流量調整部64は、基部52の内周面との間に隙間を残して、基部52(特に大径部53)の内部空間の大部分を埋めるように配置されている。流量調整部64の外周面と基部52の内周面との隙間は、潤滑油の流路Fとなっている。この流路Fは、基部52の内周面及び流量調整部64の外周面の各形状に応じて幅(太さ)が変化するものとされる。具体的には、流路Fは、大径部53と大径流量調整部64Aとの間にあって最小幅とされる第1流路F1と、大径部53と小径流量調整部64Cとの間にあって第1流路F1よりも広い幅とされる第2流路F2と、大径部53と縮径流量調整部64Bとの間にあって第1流路F1側から第2流路F2側に近づくほど幅が拡張される第3流路F3と、縮径部54及び小径部55と閉塞部65との間にあって最大幅とされる第4流路F4と、からなる。第1流路F1、第2流路F2及び第3流路F3は、いずれも略円環状(略円筒状)の空洞により構成されているのに対し、第4流路F4は、略円柱状の空洞により構成されている。また、第1流路F1及び第2流路F2は、それぞれの幅がほぼ全高さ範囲(各端部を除く)にわたって一定とされる。
【0033】
シリンダヘッド1は、ピボット50を収容するピボット装着穴4を有している。ピボット50は、大径部53の大部分がピボット装着穴4の内部に収容され、残りの部分がピボット装着穴4の外に突出している。なお、ピボット本体51の基部52の大径部53における外寸は、ピボット装着穴4の内寸に適合するよう設定されている。また、シリンダヘッド1は、潤滑油が流れるオイル供給路(オイルギャラリ5)を有している。なお、基部52の大径部53に設けられた第1貫通孔58は、オイルギャラリ5に連通するような位置に配されている。
【0034】
内燃機関の作動時には、カム31の回転に従って、ロッカアーム40が、揺動支点部42を支点として揺動する。この揺動にともなってバルブステム12が往復運動することにより、吸気バルブ10が開閉される。
【0035】
このとき、内燃機関が備えるオイルポンプが作動し、オイルギャラリ5内に潤滑油が圧送される。オイルギャラリ5内を流れる潤滑油の一部は、第1貫通孔58を通ってピボット本体51の基部52の内部に流れ込み、基部52と流量調整部64との流路Fを流れて第2貫通孔59に達すると、第2貫通孔59から溢れ出て、支持部56の外周面(揺動支点部42との摺接面)に供給される。内燃機関の作動時には、オイルポンプの働きにより、オイルギャラリ5内の潤滑油に圧力が加えられているため、潤滑油が、ピボット50の内部に安定して供給され、支持部56における揺動支点部42との摺接面(摺接箇所)にも安定して供給される。
【0036】
しかし、内燃機関の停止時は、オイルポンプが停止し、ピボット50内に新たな潤滑油が供給されない状態となる。この状態では、第1貫通孔58などから潤滑油が流れ出してしまい、オイルギャラリ5やピボット50内の油量が低下することがある。また潤滑油の油温が下がり、オイル粘度が高くなる。このような状態で内燃機関を始動させた際には、充分な油圧がかかるまである程度の時間を要するため、支持部56における揺動支点部42との摺接面に潤滑油が到達するのに時間がかかり、焼き付き等の不具合が発生する虞があった。
【0037】
ここで、オイルギャラリ5から供給される潤滑油が、ピボット本体51の内部を通過して、支持部56における揺動支点部42との摺接面に到達するまでの時間hは、下記式(1)に示すように、ピボット内容積V(mm3)に比例し、流量Q(mm3/sec)に反比例する。
h=V/Q …(1)
したがって、ピボット50の内容積を減らせば、潤滑油の到達時間hを短くすることができる。
【0038】
本実施形態では、ピボット本体51の内部に装着されるプラグ61が、圧入部62と流量調整部64とを備える構成となっている。流量調整部64は、基部52の内周面との間に、潤滑油の流路Fとなる隙間を残して、基部52の内部空間の大部分を埋めるように配置されている。これにより、プラグ61が流量調整部64を備えない場合と比較して、ピボット50の内容積を減らすことができ、潤滑油の到達時間hを短くし、焼き付き等の不具合の発生を抑制することができる。特に、流量調整部64は、それぞれ異なる径とされる大径流量調整部64A、縮径流量調整部64B、及び小径流量調整部64Cからなるので、大径流量調整部64A、縮径流量調整部64B、及び小径流量調整部64Cの各径や各高さを設定することで、ピボット50の内容積を適宜に調整することができ、それにより潤滑油の到達時間hなどを調整することが可能となっている。
【0039】
その上で、本実施形態では、
図2に示すように、基部52の内部に配されていて潤滑油の液位に応じて潤滑油の流路Fを移動可能な移動部材70が備えられる。移動部材70は、基部52の内周面及び流量調整部64の外周面に沿って延在するよう円環状(環状)をなしており、基部52の内周面と流量調整部64の外周面との間に確保された潤滑油の流路Fに配されている。移動部材70は、流路Fにおいて、第2貫通孔59から遠くて第1貫通孔58に近い第1位置(
図2)と、第2貫通孔59に近くて第1貫通孔58から遠い第2位置(
図3)と、を移動可能とされる。そして、移動部材70は、第1位置では流路Fを塞ぐよう配されるのに対し、第2位置では流量調整部64との間に潤滑油の流動を許容する隙間Cが生じるよう配される。
【0040】
このような構成によれば、車両の内燃機関が作動するのに伴って第1貫通孔58に流入した潤滑油が流路F内を第2貫通孔59に向けて流動すると、流路Fを塞いでいる第1位置(
図2)の移動部材70が潤滑油によって押されることで第2位置(
図2の二点鎖線)に向けて第2貫通孔59に近づくよう移動させられる。移動部材70が
図3に示される第2位置に達すると、第2位置の移動部材70と流量調整部64との間に生じた隙間Cから潤滑油が流されるので、潤滑油を第2貫通孔59に到達させることができる。一方、車両の内燃機関が停止されるのに伴って流路F内の潤滑油が第1貫通孔58から流出し始めると、流路F内を第1貫通孔58に向けて流動する潤滑油によって第2位置の移動部材70が押されることで第1位置(
図3の二点鎖線)に向けて第2貫通孔59から遠ざかるよう移動する。移動部材70が
図2に示される第1位置に至ると、移動部材70によって流路Fが塞がれるので、流路F内において第1位置の移動部材70よりも第2貫通孔59側にある潤滑油が第1貫通孔58側に流動するのが規制される。このように、第1位置の移動部材70によって流路F内の潤滑油を保持することができるので、従来に比べると、車両の内燃機関が停止されるのに伴って第1貫通孔58から流出する潤滑油の量が減少し、流路Fに残留する潤滑油の量が増加する。これにより、車両の内燃機関が再び作動されてから、潤滑油が第2貫通孔59に到達するまでに要する時間、つまり摺接箇所の潤滑に要する時間をさらに短縮することができる。
【0041】
詳しくは、移動部材70は、
図2に示すように、その幅が第1流路F1の幅よりも大きく且つ第2流路F2の幅よりも僅かに小さい程度の大きさとされており、主に第2流路F2において高さ方向(
図2の上下方向)に沿って第1位置と第2位置との間を移動可能とされている。第1位置の移動部材70は、第2流路F2のうちの第3流路F3との境界位置付近に配されており、第1貫通孔58よりも高い位置であって第2貫通孔59に近い配置となっている。第1位置の移動部材70は、流量調整部64における小径流量調整部64Cの下端部(縮径流量調整部64B側の端部)を取り囲むとともに、縮径流量調整部64Bの外周面(外面)に対して接触している。第1位置の移動部材70は、縮径流量調整部64Bの外周面に接触することで、流路Fを閉塞することができるとともに、第1位置よりも下側、つまり第2貫通孔59とは反対側に移動するのが規制されるようになっている。従って、縮径流量調整部64Bの外周面は、第1位置の移動部材70の移動を規制する第1位置側移動規制部71を構成している、と言える。この第1位置側移動規制部71によって移動部材70を第1位置に保つことができるので、流路Fを閉塞状態に安定的に保つことができる。
【0042】
しかも、第1位置側移動規制部71が縮径流量調整部64Bの外周面により構成されているので、第1位置側移動規制部71の設置に伴って流量調整部64を既存構造から設計変更せずに済む可能性がある。これにより、例えばプラグ61として汎用品を用いることが可能となる。さらには、第1位置側移動規制部71により移動が規制される第1位置の移動部材70は、第1貫通孔58よりも第2貫通孔59側となる配置となっているから、仮に第1貫通孔58よりも第2貫通孔59とは反対側となる配置とされる場合に比べると、第1貫通孔58から流路Fに流入した潤滑油によって第1位置の移動部材70が第2貫通側に向けて円滑に押されるとともに、第1位置と第2位置との間の距離(移動ストローク)が短くなる。また、第1位置と第2位置との間を移動する移動部材70が第1貫通孔58を通過するのが避けられるので、第1貫通孔58の孔縁が移動部材70に干渉してその移動を阻害する事態を回避することができる。
【0043】
一方、第2位置の移動部材70は、
図3に示すように、第2流路F2のうちの第4流路F4との境界位置付近に配されており、第1位置よりも高い位置であって第2貫通孔59により近い配置となっている。第2位置の移動部材70は、流量調整部64における小径流量調整部64Cの一端及び閉塞部65(流量調整部64における圧入部62とは反対側の端部)を取り囲むとともに、縮径部54の内周面(内面)に対して接触している。ここで、第2位置の移動部材70により取り囲まれる小径流量調整部64Cの一端及び閉塞部65は、既述した通り、外周先端側の角部が丸められることで、第2貫通孔59に近づくほど外寸が小さくなるよう構成されているので、第2位置の移動部材70との間に隙間Cが生じるようになっている。この隙間Cは、幅が高さ方向の位置に応じて変化していて、小径流量調整部64Cの一端及び閉塞部65の外寸の変化とは逆相関の関係になっている。具体的には、隙間Cの幅は、第2貫通孔59に近づくほど拡張されるとともに第1貫通孔58に近づくほど縮小されるようになっている。第2位置の移動部材70は、縮径部54の内周面に接触することで、小径流量調整部64Cとの間に隙間Cを生じさせて流路Fを開放状態に保つことができるとともに、第2位置よりも上側、つまり第2貫通孔59側に移動するのが規制されるようになっている。従って、縮径部54の内周面は、第2位置の移動部材70の移動を規制する第2位置側移動規制部72を構成している、と言える。この第2位置側移動規制部72によって移動部材70を第2位置に保つことができるので、流路Fを開放状態に安定的に保つことができる。また、第2位置の移動部材70は、その上端位置が閉塞部65の上面とほぼ面一状をなすよう配されている。しかも、第2位置側移動規制部72が縮径部54の内周面により構成されているので、第2位置側移動規制部72の設置に伴って基部52を既存構造から設計変更せずに済む可能性がある。これにより、例えばピボット本体51として汎用品を用いることが可能となる。
【0044】
小径流量調整部64Cの一端及び閉塞部65は、第2位置の移動部材70に対して内嵌される内嵌部73を構成している。内嵌部73は、第2位置の移動部材70に対してほぼ全高さ範囲にわたって内嵌されている。このような構成によれば、第2位置の移動部材70は、内嵌される内嵌部73によって傾いたりすることがないように支持される。これにより、第2位置の移動部材70の姿勢を安定的に保つことができるので、移動部材70と小径流量調整部64Cとの間に生じる隙間Cが確保される確実性が高くなる。
【0045】
また、移動部材70は、金属材料からなり、仮に合成樹脂材料製とした場合に比べると、線膨張係数がピボット本体51やプラグ61に近似した値となっている。これにより、温度環境の変化に伴う移動部材70の伸縮量が、ピボット本体51やプラグ61の伸縮量に近似したものとなるので、温度環境の変化が生じても基部52の内周面や流量調整部64の外周面に干渉し難くなり、流路Fでの移動が阻害され難くなっている。
【0046】
以上説明したように本実施形態のロッカアーム40の支持機構は、車両のシリンダヘッド1に組み付けられてロッカアーム40の揺動支点部42を支持するロッカアーム40の支持機構であって、筒状をなしていて第1貫通孔58が形成された基部52と、基部52の一端に配されて揺動支点部42を支持するとともに第2貫通孔59が形成された支持部56と、を有するピボット本体(支持機構本体)51と、基部52の内部に保持されるプラグ61であって、基部52の内周面との間に潤滑油の流路Fを空けて配される流量調整部64を有するプラグ61と、基部52の内部に配されていて、第1位置と、第1位置よりも第2貫通孔59に近い第2位置と、を移動可能とされる移動部材70であって、第1位置では流路Fを塞ぐのに対して第2位置では基部52及び流量調整部64の少なくとも一方との間に隙間Cが生じるよう配される移動部材70と、を備える。
【0047】
このようにすれば、車両の内燃機関が作動するのに伴って第1貫通孔58に流入した潤滑油が基部52の内周面とプラグ61の流量調整部64との間に空けられた流路F内を第2貫通孔59に向けて流動する。すると、流路Fを塞いでいる第1位置の移動部材70が潤滑油によって押されることで第2貫通孔59に近づくよう移動させられる。移動部材70が第2位置に達すると、第2位置の移動部材70と基部52及び流量調整部64の少なくとも一方との間に生じた隙間Cから潤滑油が流されるので、潤滑油を第2貫通孔59に到達させることができる。ここで、流路Fは、流量調整部64によって容積が制限されているので、潤滑油が第2貫通孔59に到達するまでに要する時間の短縮が図られている。潤滑油は、第2貫通孔59から支持部56とロッカアーム40の揺動支点部42との摺接箇所に供給されることで、当該摺接箇所の潤滑が図られる。一方、車両の内燃機関が停止されるのに伴って流路F内の潤滑油が第1貫通孔58から流出すると、流路F内を第1貫通孔58に向けて流動する潤滑油によって第2位置の移動部材70が押されることで第2貫通孔59から遠ざかるよう移動する。移動部材70が第1位置に至ると、移動部材70によって流路Fが塞がれるので、流路F内において第1位置の移動部材70よりも第2貫通孔59側にある潤滑油が第1貫通孔58側に流動するのが規制される。このように、第1位置の移動部材70によって流路F内の潤滑油を保持することができるので、車両の内燃機関が再び作動されてから、潤滑油が第2貫通孔59に到達するまでに要する時間(摺接箇所の潤滑に要する時間)をさらに短縮することができる。
【0048】
また、基部52及び流量調整部64の少なくとも一方は、第2位置の移動部材70が第2貫通孔59側に移動するのを規制する第2位置側移動規制部72を有する。このようにすれば、第1位置の移動部材70が潤滑油によって押されて第2位置に至ると、第2位置側移動規制部72によって第2位置の移動部材70が第2貫通孔59側に移動するのが規制されるから、移動部材70を第2位置に保つことができる。
【0049】
また、基部52は、第1貫通孔58を有する大径部(第1基部)53と、大径部53に対して支持部56側に配されていて大径部53よりも内寸が小さい小径部(第2基部)55と、大径部53と小径部55とに連なっていて大径部53から小径部55に近づくほど内寸が小さくなる縮径部(第3基部)54と、を有しており、第2位置側移動規制部72は、縮径部54の内面により構成される。このようにすれば、大径部53から小径部55に近づくほど内寸が小さくなる縮径部54の内面が、第2位置側移動規制部72を構成しているので、第2位置側移動規制部72の設置に伴って基部52を既存構造から設計変更せずに済む可能性がある。これにより、例えばピボット本体51として汎用品を用いることが可能となる。
【0050】
また、移動部材70は、基部52の内周面に沿って延在するよう環状をなしており、流量調整部64は、第2位置の移動部材70に対して内嵌される内嵌部73を有する。このようにすれば、基部52の内周面に沿って延在するよう環状をなす移動部材70が第2位置にあるとき、移動部材70に対して内嵌される流量調整部64の内嵌部73によって移動部材70を支持することができる。これにより、第2位置の移動部材70の姿勢を安定的に保つことができるので、移動部材70と基部52及び流量調整部64の少なくとも一方との間に生じる隙間Cが確保される確実性が高くなる。
【0051】
また、流量調整部64は、内嵌部73が、第2貫通孔59に近づくほど外寸が小さくなるよう構成される。このようにすれば、第2位置の移動部材70と、その移動部材70に内嵌されていて第2貫通孔59に近づくほど外寸が小さくなる内嵌部73の外面と、の間には、潤滑油の流動を許容する隙間Cが生じるようになっている。このように、流量調整部64の構成を工夫することで、潤滑油の流動を許容する隙間Cが確保されているので、ピボット本体51の設計変更が不要となる。これにより、例えばピボット本体51として汎用品を用いることが可能となる。
【0052】
また、基部52及び流量調整部64の少なくとも一方は、第1位置の移動部材70が第2貫通孔59側とは反対側に移動するのを規制する第1位置側移動規制部71を有する。このようにすれば、第2位置の移動部材70が潤滑油によって押されて第1位置に至ると、第1位置側移動規制部71によって第1位置の移動部材70が第2貫通孔59側とは反対側に移動するのが規制されるから、移動部材70を第1位置に保つことができる。
【0053】
また、プラグ61は、基部52に固定される圧入部(固定部)62を有しており、流量調整部64は、圧入部62に連なる大径流量調整部(第1流量調整部)64Aと、大径流量調整部64Aに対して第2貫通孔59側に配されていて大径流量調整部64Aよりも外寸が小さい小径流量調整部(第2流量調整部)64Cと、大径流量調整部64Aと小径流量調整部64Cとに連なっていて大径流量調整部64Aから小径流量調整部64Cに近づくほど外寸が小さくなる縮径流量調整部(第3流量調整部)64Bと、を有しており、第1位置側移動規制部71は、縮径流量調整部64Bの外面により構成される。このようにすれば、大径流量調整部64Aから小径流量調整部64Cに近づくほど外寸が小さくなる縮径流量調整部64Bの外面が、第1位置側移動規制部71を構成しているので、第1位置側移動規制部71の設置に伴って流量調整部64を既存構造から設計変更せずに済む可能性がある。これにより、例えばプラグ61として汎用品を用いることが可能となる。
【0054】
また、第1位置側移動規制部71は、第1貫通孔58よりも第2貫通孔59側となる第1位置の移動部材70の移動を規制する。このようにすれば、第1貫通孔58から流路Fに流入した潤滑油によって第1貫通孔58よりも第2貫通孔59側となる第1位置の移動部材70が第2貫通側に向けて円滑に押されるようになっている。仮に第1位置の移動部材70が第1貫通孔58よりも第2貫通孔59側とは反対側に位置する場合に比べると、第1位置と第2位置との間の距離(移動ストローク)を短くすることができる。また、第1位置と第2位置との間を移動する移動部材70が第1貫通孔58を通過するのが避けられるので、第1貫通孔58の孔縁が移動部材70に干渉してその移動を阻害する事態を回避することができる。
【0055】
<他の実施形態>
本明細書が開示する技術は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0056】
(1)第2位置の移動部材70と、ピボット本体51の基部52の内面と、の間に隙間Cが生じるよう構成されていてもよい。その場合、第2位置側移動規制部72を流量調整部64に設けるようにしてもよい。
【0057】
(2)第1位置側移動規制部71は、ピボット本体51の基部52に設けられていてもよい。
【0058】
(3)第2位置の移動部材70と、流量調整部64と、の間に隙間Cが生じる構成において、第2位置側移動規制部72を流量調整部64に設けるようにしてもよい。
【0059】
(4)移動部材70に係る第1位置及び第2位置については、適宜に変更可能である。例えば、ピボット本体51を設計変更することなく、第1位置を変更するには、流量調整部64における縮径流量調整部64B(第1位置側移動規制部71)の高さ位置を変更すればよい。具体的には、第1位置の移動部材70は、第1貫通孔58よりも低い配置、つまり第2貫通孔59とは反対側の配置であってもよい。また、第1位置の移動部材70は、第1貫通孔58と同じ高さの配置であってもよく、それ以外にも移動部材70の第1位置を適宜に変更可能である。第2位置の移動部材70は、その全体が縮径部54に配されていてもよく、それ以外にも移動部材70の第2位置を適宜に変更可能である。このように、第1位置及び第2位置を変更することで、移動部材70の移動ストロークを変更することが可能となる。
【0060】
(5)内嵌部73は、その上端位置が第2位置の移動部材70の上端位置よりも高くなるよう配されていてもよい。
【0061】
(6)内嵌部73は、高さ方向について第2位置の移動部材70に対して部分的に内嵌するよう構成されていてもよい。その場合、内嵌部73の上端位置が、第2位置の移動部材70の上端位置よりも低い配置となる。
【0062】
(7)流量調整部64は、第2位置の移動部材70に対して内嵌しないよう構成されていてもよい。その場合、流量調整部64の上端位置が、第2位置の移動部材70の下端位置よりも低い配置となる。
【0063】
(8)内嵌部73の具体的な形状は、適宜に変更可能であり、例えば外周面が高さ方向に対して斜めの直線状(テーパ形状)であってもよい。
【0064】
(9)移動部材70は、プラグ61またはピボット本体51と同一の材料により構成することも可能である。また、移動部材70は、プラグ61及びピボット本体51のいずれとも異なる材料により構成することも可能である。
【0065】
(10)移動部材70は、合成樹脂材料によって構成されていてもよい。
【0066】
(11)プラグ61及び移動部材70を平面に視たときの各形状は、円形以外にも、例えば方形や楕円形などでもよい。
【0067】
(12)流量調整部64の長さ、太さ及び形状などは、各図面の記載以外にも、潤滑油の所望の流量等に応じて適宜に変更可能である。
【0068】
(13)プラグ61とピボット本体51とを同一の材料により構成することも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…シリンダヘッド、40…ロッカアーム、42…揺動支点部、51…ピボット本体(支持機構本体)、52…基部、53…大径部(第1基部)、54…縮径部(第3基部)、55…小径部(第2基部)、56…支持部、58…第1貫通孔、59…第2貫通孔、61…プラグ、62…圧入部(固定部)、64…流量調整部、64A…大径流量調整部(第1流量調整部)、64B…縮径流量調整部(第3流量調整部)、64C…小径流量調整部(第2流量調整部)、70…移動部材、71…第1位置側移動規制部、72…第2位置側移動規制部、73…内嵌部、C…隙間、F…流路