(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109487
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】工作機械及び加工方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
B23Q11/00 Q
B23Q11/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004828
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】冨永 泰裕
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011BB21
3C011BB23
(57)【要約】
【課題】テーブル面から排出口までの高さが低い場合にも、効率的に切りくずを流す工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械は、加工室11を画定する側壁32と、加工室11内に配置される架台12と、工具を保持する主軸17と、加工室11の中心に前後方向に延びる排出樋30と、排出樋30の上方に配置され、前後方向に移動可能なテーブル23と、テーブル23の下方に配置され、下向きに洗浄流体を噴出する第1ノズル14と、第1ノズル14に接続され、洗浄流体を供給するポンプ38と、洗浄流体の噴出を制御する制御装置60と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工室を画定する側壁と、
前記加工室内に配置される架台と、
工具を保持する主軸と、
前記加工室の中心に前後方向に延びる排出樋と、
前記排出樋の上方に配置され、前後方向に移動可能なテーブルと、
前記テーブルの下方に配置され、下向きに洗浄流体を噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルに接続され、前記洗浄流体を供給するポンプと、
前記洗浄流体の噴出を制御する制御装置と、
を有する、工作機械。
【請求項2】
前記加工室の右側から中心側に向けて高さが低くなる右斜板と、
前記加工室の左側から中心側に向けて高さが低くなる左斜板と、
を更に有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記排出樋は、前記右斜板と前記左斜板との間であって、前記右斜板及び前記左斜板の下方に配置される、
請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記排出樋は、
前記加工室の右側から中心側に向けて高さが低くなる右斜面部と、
前記加工室の左側から中心側に向けて高さが低くなる左斜面部と、を有し、
前記右斜面部と前記左斜面部は、前記加工室の中心で接続される、
請求項1~3のいずれかに記載の工作機械。
【請求項5】
前記排出樋は、前記加工室の前方から後方に向けて低くなる、
請求項1~4のいずれかに記載の工作機械。
【請求項6】
前記右斜板は、
上方部分が固定された右側固定斜板と、
下方部分が前後方向に伸縮可能な右側伸縮斜板と、を有し、
前記左斜板は、
上方部分が固定された左側固定斜板と、
下方部分が前後方向に伸縮可能な左側伸縮斜板と、を有する、
請求項2~5のいずれかに記載の工作機械。
【請求項7】
前記排出樋の後方に配置され、前記排出樋から流れる洗浄流体及び切りくずを溜めるタンクを更に有する、
請求項1~6のいずれかに記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1ノズルは、前記洗浄流体を噴出する噴口を有し、
前記噴口の向きは、自在に変更可能である、
請求項1~7のいずれかに記載の工作機械。
【請求項9】
加工室内の上方に配置され、右側の前記側壁に向けて前記洗浄流体を噴出する右側第2ノズルと、
加工室内内の上方に配置され、左側の前記側壁に向けて前記洗浄流体を噴出する左側第2ノズルと、
を更に有する、請求項1~8のいずれかに記載の工作機械。
【請求項10】
右側の前記側壁に配置され、前記右斜板に向けて前記洗浄流体を噴出する右側第3ノズルと、
左側の前記側壁に配置され、前記左斜板に向けて前記洗浄流体を噴出する左側第3ノズルと、
を更に有する、請求項2~9のいずれかに記載の工作機械。
【請求項11】
前記制御装置は、
加工プログラムと、洗浄プログラムと、洗浄条件と、を記憶する記憶装置と、
演算装置であって、
運転時間又は加工回数である計数値を計数し、前記計数値が前記洗浄条件を満たす場合に洗浄開始信号を発する計数部と、
前記洗浄プログラムに従って前記テーブル及び前記ポンプを制御する数値制御部と、
前記洗浄開始信号を受信し、前記数値制御部に洗浄動作の実行を指令し、前記排出樋を洗浄させる洗浄制御部と、
を有する演算装置と、
を更に有する、請求項1~10のいずれかに記載の工作機械。
【請求項12】
テーブルに固定されたワークの主軸による加工を停止し、
前記テーブルの下方に配置された第1ノズルから洗浄流体の噴出を停止し、
前記テーブルが洗浄開始位置の方向に移動し、
前記テーブルが前記洗浄開始位置で停止し、
前記第1ノズルから排出樋に対して前記洗浄流体を噴出し、
前記洗浄流体を噴出しながら前記テーブルが洗浄停止位置の方向に移動して、前記排出樋に落下した切りくずをタンクへ流す、
加工方法。
【請求項13】
更に、
前記テーブルが前記洗浄停止位置に移動した後、前記第1ノズルから前記洗浄流体の噴出を停止し、
前記第1ノズルが前記洗浄流体を噴出せずに、前記テーブルが前記洗浄停止位置から前記洗浄開始位置に移動する、
請求項12に記載の加工方法。
【請求項14】
更に、
前記第1ノズルが前記洗浄流体を噴出しながら、前記テーブルが前記洗浄開始位置と前記洗浄停止位置方向とを往復して、前記洗浄停止位置に戻る、
請求項12に記載の加工方法。
【請求項15】
加工室を画定する側壁のうち右側の前記側壁に向けて前記洗浄流体を噴出する右側第2ノズルからの前記洗浄流体を噴出及び停止し、
左側の前記側壁に向けて前記洗浄流体を噴出する左側第2ノズルからの前記洗浄流体を噴出及び停止し、
右側の前記側壁に配置された右側第3ノズルから、前記加工室の右側から中心側に向けて高さが低くなる右斜板への前記洗浄流体を噴出及び停止し、
左側の前記側壁に配置された左側第3ノズルから、前記加工室の左側から中心側に向けて高さが低くなる左斜板への前記洗浄流体を噴出及び停止する、
請求項12~14のいずれかに記載の加工方法。
【請求項16】
前記記憶装置に、前記洗浄条件と前記加工プログラムとを入力し、
前記計数部は、前記計数値と前記洗浄条件とを比較し、
前記洗浄条件を満たす場合に、前記洗浄制御部が前記テーブル及び前記ポンプを作動させる、
請求項12~15のいずれかに記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には切りくずを排出するためにクーラントを噴出するノズルが利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、テーブル面から排出口までの高さが低い場合にも、効率的に切りくずを流す工作機械及び加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、
加工室を画定する側壁と、
前記加工室内に配置される架台と、
工具を保持する主軸と、
前記加工室の中心に前後方向に延びる排出樋と、
前記排出樋の上方に配置され、前後方向に移動可能なテーブルと、
前記テーブルの下方に配置され、下向きに洗浄流体を噴出する第1ノズルと、
前記第1ノズルに接続され、前記洗浄流体を供給するポンプと、
前記洗浄流体の噴出を制御する制御装置と、
を有する、工作機械である。
【0005】
本発明の第2の側面は、
テーブルに固定されたワークの主軸による加工を停止し、
前記テーブルの下方に配置された第1ノズルから洗浄流体の噴出を停止し、
前記テーブルが洗浄開始位置の方向に移動し、
前記テーブルが前記洗浄開始位置で停止し、
前記第1ノズルから排出樋に対して前記洗浄流体を噴出し、
前記洗浄流体を噴出しながら前記テーブルが洗浄停止位置の方向に移動して、前記排出樋に落下した切りくずをタンクへ流す、
加工方法である。
【0006】
工作機械は、切削加工を行う。工作機械は、例えば、マシニングセンタである。工作機械は、基台となる架台と、架台上に設けられた加工室と、架台に固定されるコラムと、コラムに配置されるX軸ガイド及びZ軸ガイドと、架台に配置されるY軸ガイドと、各ガイドに配置される駆動装置と、X軸ガイド及びZ軸ガイドに配置される主軸ヘッドと、Y軸ガイドに配置されるテーブルとを有する。切削加工は、主軸に装着された刃具によって行われる。主軸は、主軸ヘッドに配置される。
【0007】
主軸ヘッドは、X軸方向に往復移動させるX軸ガイド及びZ軸方向に往復移動させるZ軸ガイドを介して、コラムに配置される。Z軸ガイドは、工作機械の上下方向であるZ軸方向への主軸ヘッドの移動をガイドする。X軸ガイドは、Z軸方向に対して直交する一つの方向であって工作機械の左右方法であるX軸方向への主軸ヘッドの移動をガイドする。X軸ガイド及びZ軸ガイドには、それぞれ駆動装置が配置され、主軸ヘッドの移動を駆動する。
【0008】
右斜板及び左斜板は、例えば、加工室の左右両側に加工室の中心側に向かって傾斜し、クーラントや切りくずを排出樋に流すための板である。右斜板及び左斜板は、必要に応じて、上下左右に分割してよい。
例えば、右斜板及び左斜板の上部は架台に固定された固定斜板とし、スプラッシュカバーと接続し、加工室の中心側に傾斜する。クーラントが固定斜板に向かって噴出され、さらに下部のカバーに流れ、排出樋にクーラントともに切りくずを排出する。
右斜板及び左斜板の下部は、伸縮可能なカバーとして良い。例えば、右斜板及び左斜板の下部は、テレスコピックカバーやロールカバーである。テーブルの移動とともにカバーが伸縮し、クーラントや切りくずが装置内部に入ることを防止し、クーラントや切りくずを排出樋に流す。
【0009】
排出樋は、例えば、センタトラフ構造である。金属の板をプレス又は溶接加工して作成し、左右両側から中心側に向けて高さが低くなって良い。排出樋は、加工室内の前後方向に延び、前方又は後方に向かうにつれて高さが低くなるように傾斜して、クーラントや切りくずをタンクへ導きやすくなっている。タンクは、排出樋の傾斜する方向に合わせて、加工室の前方又は後方に配置して良い。
排出樋は、右斜板及び左斜板から流れてくるクーラント及び切りくずを受ける位置に配置する。例えば、排出樋の側壁が、右斜板及び左斜板の垂下部の外側に重なるか、又はほぼ接する位置に配置すれば良い。
【0010】
Y軸ガイドは、架台に配置される。Y軸ガイドは、Z軸方向及びX軸方向の両方に対して直交する方向であって工作機械の前後方向であるY軸方向に、テーブルの移動をガイドする。
テーブルは、加工されるワークを固定する台である。テーブルは、Y軸ガイド上に配置され、Y軸方向に移動する。好ましくは、テーブルは数値制御される。テーブルは、右斜板及び左斜板の間に配置され、ワークの加工時又はクーラントの噴出に合わせて移動する。
駆動装置は、右斜板及び左斜板の下方に設けられる。
【0011】
第1ノズルは、クーラントを噴出する。複数の第1ノズルがテーブルの下面に配置される。第1ノズルの向きは、クーラントを噴出させたい方向に合わせて固定しても調整可能としても良い。例えば、4個の第1ノズルが配置される場合、4個全ての向きを、左右両側から加工室の中心側後方に向けて良い。又は、外側2個の第1ノズルを外側後方若しくは外側前方に向け、内側2個の第1ノズルを加工室の中心側後方に向けて配置しても良い。タンクが加工室の前方に配置される場合は、ノズルを加工室の前方に向けて良い。また、ノズルの配管は、テーブルの中を通しても良いし、テーブルの側面及び下面に配管しても良い。ノズルの噴口は、クーラントをストレートに噴口する形状、シャワー状、又はスプレー状など、切りくずの大きさや量に合わせて変更可能として良い。
【0012】
洗浄流体は、例えば、水溶性又は油性の切削油剤(クーラント)である。切削に用いるクーラントをそのまま用いても良い。
配管は、第1ノズルとポンプを接続する。配管は、例えば、固定配管やホースである。配管は、例えば鋼管、ゴム素材、プラスチック、若しくはポリアセタールの配管である。
【0013】
制御装置は、例えば、数値制御装置である。制御装置は、洗浄流体の噴出量、噴出圧、噴出タイミング、噴出時間、噴出パターン及び噴出方向を制御する。
【0014】
切りくず排出のために、所望の箇所に複数の第2ノズルを設けてもよい。例えば、複数の第2ノズルが工作機械の固定斜板及び伸縮斜板の上方に配置され、側壁に向かって、斜め下方に向けて配置してよい。
【0015】
切りくず排出のために、所望の箇所に複数の第3ノズルを設けても良い。例えば、複数の第3ノズルが工作機械の左右の側方にそれぞれに配置され、斜板に向けて加工室の中心側斜め下方向にクーラントを噴出してよい。また、第3ノズルを工作機械の前方の架台に設置し、ノズルの噴口を排出樋に向けても良い。
【0016】
ポンプは、洗浄流体を噴出する。ポンプは、クーラントを噴出しても良い。高圧力のポンプと低圧力のポンプと分けて設置し、それぞれから第1ノズル、第2ノズル及び第3ノズルに接続しても良い。例えば、第1ノズルを高圧力(約3~7MPa)、第2ノズル及び第3ノズルを低圧力(0.1~1MPa)のポンプに接続する。第1ノズルのうち、外側に配置したノズルは低圧力、内側に配置したノズルは高圧力のポンプに接続しても良い。また、第1ノズルに高圧力のポンプと低圧力のポンプと両方を接続して、バルブで切り替えても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の工作機械及び加工方法によれば、テーブル面から排出口までの高さが低い場合にも、効率的に切りくずを流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図7】洗浄を開始及び停止する時のテーブルの位置を示す工作機械の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態の工作機械について説明する。
図1に示すように、工作機械10は、加工室11と、架台12と、コラム13と、主軸ヘッド15と、X軸駆動装置16と、主軸17と、Z軸駆動装置18と、X軸ガイド19と、Z軸ガイド21と、テーブル23と、Y軸ガイド25と、右斜板20と、左斜板22と、排出樋30と、タンク31と、を有する。
【0020】
コラム13は、架台12に対して垂直方向に立設される。X軸ガイド19は、左右方向に延び、コラム13に配置される。主軸ヘッド15は、X軸ガイド19上に配置され、X軸(左右)方向に移動する。Y軸ガイド25は、前後方向に延び、架台12上に配置される。Y軸ガイド25は、スライダ24とガイドレール26とを有する。
テーブル23は、Y軸ガイド25上に配置され、Y軸(前後)方向に移動する。Z軸ガイド21は、上下方向に延び、コラム13上に配置される。主軸ヘッド15は、Z軸ガイド21上に配置され、Z軸(上下)方向に移動する。
【0021】
右斜板20は、右側固定斜板201と、右側伸縮斜板202を有する。左斜板22は、左側固定斜板221と、左側伸縮斜板222を有する。左側伸縮斜板222は、伸縮斜板222a、222b、222cを有する。右側伸縮斜板202も同様の構造であり、説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、工作機械10は、第1ノズル14と、右側第2ノズル27と、左側第2ノズル33と、右側第3ノズル29と、左側第3ノズル35と、支持体40と、排出樋30と、側壁32と、配管34、37と、ポンプ36、ポンプ38とを有する。
【0023】
支持体40は、垂直方向に延びる。支持体40は、加工室11の架台12上の左右に設置される。支持体40は、右斜板20、左斜板22を支持する。
右側固定斜板201は、下垂部203を有する。右側固定斜板201は、支持体40の上方に固定される。右側固定斜板201は、加工室11の中心側に向かうにつれて高さが低くなる。右側固定斜板201は、加工室11の中心寄りの端部に、下垂部203が接続される。下垂部203は、鉛直下方向に延びる。左側固定斜板221も同様の構造であり、説明を省略する。
【0024】
右側伸縮斜板202は、上折り返し431と、下垂部432を有する。右側伸縮斜板202は、右側固定斜板201の下方に設置される。右側伸縮斜板202は、前後方向に伸縮可能である。右側伸縮斜板202の一方(固定端)の上端部は、支持体40に固定される。右側伸縮斜板202の他方(移動端)は、テーブル23に締結され、支持体40に配置されたガイド28に接続される。右側伸縮斜板202は、加工室11の中心側に向かうにつれて高さが低くなる。
【0025】
上折り返し431は、右側伸縮斜板202の外側の端部が鉛直上方に折り返される。下垂部432は、右側伸縮斜板202の加工室11の中心寄りの端部が鉛直下方向に延びて折り曲げられる。上折り返し431は、下垂部203よりも外側に配置される。これにより、右斜板20に向かって噴出されるクーラントが、右側固定斜板201と右側伸縮斜板202の隙間から装置内部に侵入することが抑制される。左側伸縮斜板222も同様の構造であり、説明を省略する。
【0026】
図2及び
図7で示されるように、排出樋30は、加工室内の前後方向に延びる。排出樋30は、センタトラフ構造で、正面から見てなだらかなV字状をなす。排出樋30は、加工室11の中心側に向かうにつれて高さが低くなる。排出樋30は、架台12に固定される。排出樋30の中心部302は、後方に向かうにつれて高さが低くなるように傾斜する。排出樋30は、最後端に排出口303を有する。排出口303は、タンク31に接続される。又は、排出口303は、タンク31の上方に位置する。これにより、クーラントが排出樋30を流れ、タンク31に切りくずを排出できる。
【0027】
排出樋30は、左右両端に上折り返し301を有する。上折り返し301は、排出樋30の外側端部が鉛直上方向に折り返される。上折り返し301は、右側伸縮斜板202、左側伸縮斜板222の下垂部432の外側に配置される。これにより、右側伸縮斜板202、左側伸縮斜板222から流れてくるクーラントや第1ノズル14から噴出されるクーラントが装置内部に侵入することが抑制される。
【0028】
テーブル23は、C字状をなし、Y軸ガイド25上に設置される。テーブル23は、テーブル駆動装置43によりY軸方向を往復移動する。ワーク100をテーブル23の上面に固定し、主軸17により加工する。
【0029】
図2及び
図3で示されるように、第1ノズル14は、テーブル23の下面に配置される。第1ノズル14は、噴口141を有する。噴口141は、排出樋30の中心部302の後方を向く。なお、第1ノズル14を回転可能とし、第1ノズル14の傾きを調整可能とすることにより、適宜切りくずがたまりやすい箇所や切りくずを流したい方向に噴口141を向け、クーラントを噴射しても良い。また、第1ノズル14にアクチュエータを設け、クーラントの噴流方向を制御装置142で制御してもよい。
【0030】
テーブル23内には、クーラントが流れる流路45が形成される。流路45は、主流部47と、分岐路49とを有する。主流部47は、左右の流路入り口51に接続され、テーブル23の内部を通る。分岐路49は、主流部47から分岐し、第1ノズル14に接続される。流路入り口51には、クーラントを流す配管37が接続される。配管37には、ポンプ38が接続され、クーラントが送出される。流路出口55には、第1ノズル14が配置される。流路45は、切削加工して形成しても良いし、鋳抜き穴でもよい。更に、流路45の中に金属又は樹脂のパイプを通しても良い。
【0031】
図4に示すように、テーブル23の下面に形成された全ての第1ノズル14の噴口141は、排出樋30の中心部302を向く。
【0032】
図5に示す変形例のように、第1ノズル14へのクーラントの流路は、パイプ57と、集約部59と、配管37と、ポンプ38とを有してもよい。本変形例では、テーブル23の内部に流路を形成せず、テーブル23の外周に沿って、パイプ57で配管する。パイプ57は、金属又は可撓性を有する素材(ゴム素材、プラスチック、若しくはポリアセタール樹脂)で形成される。パイプ57は、テーブル23下面に配置した集約部59に接続される。集約部59の下面には、第1ノズル14が配置される。パイプ57は、配管37に接続される。配管37は、クーラントを送出するポンプ38に接続される。
【0033】
図6に示すように、集約部59の下面に形成された第1ノズル14の内、両端の第1ノズル14の噴口141は、排出樋30の中心に対して外側を向き、その他の第1ノズル14の噴口141は、排出樋30の中心側を向く。両端の第1ノズル14の噴口141が排出樋30の中心に対して外側を向くことにより、排出樋30の端にたまった切りくずを流すことができる。
【0034】
右側第2ノズル27は、噴口271を有する。右側第2ノズル27は、右側固定斜板201及び右側伸縮斜板202の上方に配置される。噴口271は、右側の側壁32に向かって、斜め下方に向けられる。噴口271は、例えば充円錐状又は平板状にクーラントを噴出する。
噴口271から、右側の側壁32に噴出されたクーラントは、右側固定斜板201及び右側伸縮斜板202を経て、排出樋30を流れる。噴口271から噴出されるクーラントにより、側壁32、右側固定斜板201、右側伸縮斜板202及び排出樋30に付着した切りくずを流して排出する。左側第2ノズル33も同様の構造であり、説明を省略する。
【0035】
右側第3ノズル29は、噴口291を有する。右側第3ノズル29は、右側固定斜板201及び右側伸縮斜板202の上方に配置される。噴口291は、右側固定斜板201の傾斜に沿って、加工室11の中心側の斜め下方に向けられる。噴口291は、例えば充円錐状又は平板状にクーラントを噴出する。
噴口291から右側固定斜板201に沿って噴出されたクーラントは、右側固定斜板201及び右側伸縮斜板202を経て、排出樋30を流れる。噴口291から噴出されるクーラントにより、右側固定斜板201、右側伸縮斜板202及び排出樋30に付着した切りくずを流して排出する。左側第3ノズル35も同様の構造であり、説明を省略する。
右側第2ノズル27、右側第3ノズル29、左側第2ノズル33、左側第3ノズル35は、配管34によりポンプ36に接続される。
【0036】
図8に示すように、制御装置60は、記憶装置61と、演算装置63と、入出力装置65と、入出力ポート67とを有する。記憶装置61と、演算装置63と、入出力装置65と、入出力ポート67は、バス69で接続される。
入出力装置65は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、表示画面である。ポインティングデバイスは、例えば、マウス、タッチパネルである。
【0037】
記憶装置61は、例えば主記憶装置、外部記憶装置(不図示)である。記憶装置61は、加工プログラム72と、洗浄プログラムと80と、洗浄条件81を格納する。
例えば、洗浄プログラム80は、テーブル23の移動パターンとクーラントの噴出や停止のタイミング、第1ノズル14、右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35の噴射圧力を定める。洗浄条件81は、例えば、(1)ワーク100の加工時間が2時間を超えたときに、加工終了後に洗浄動作を行う、(2)午前8時、午後0時、午後5時、午後9時を経過し、加工が終了したときに洗浄動作を行う、(3)ワーク100の加工数量が10個を超えたときに、次の加工開始前に洗浄動作を行う、である。
【0038】
演算装置63は、計数部75と、数値制御部77と、洗浄制御部78とを有する。
数値制御部77は、入出力ポート67を介して、X軸駆動装置16、テーブル駆動装置43、Z軸駆動装置18、主軸17を制御する。
【0039】
洗浄制御部78は、数値制御部77に洗浄動作の実行を指令する。数値制御部77は、洗浄プログラム80に従って、テーブル駆動装置43を介してテーブル23の移動及び停止を制御する。また、数値制御部77は、ポンプ36、ポンプ38の弁の開閉を制御する。また、数値制御部77は、クーラントの噴出量や吐出圧力を調整する。また、数値制御部77は、第1ノズル14、右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35の噴射及び停止を制御する。
【0040】
計数部75は、例えば、カウンタ又はタイマである。計数部75は、計数値として、ワーク100の加工回数、工具(不図示)の交換回数、ワーク100の加工時間、工作機械10の運転準備時間を計数する。
【0041】
入出力ポート67は、例えば、USB接続口、信号線接続端子である。入出力ポート67は、X軸駆動装置16、テーブル駆動装置43、Z軸駆動装置18、主軸17、ポンプ36、ポンプ38と接続される。入出力ポート67は、X軸駆動装置16、テーブル駆動装置43、Z軸駆動装置18へ移動指令やドウェル指令を出力する。入出力ポート67は、ポンプ36、ポンプ38への回転開始指令や停止指令、第1ノズル14、右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35の噴射開始指令、停止指令を出力する。
【0042】
次に、工作機械10の動作について説明する。
入出力装置65により、作業者は、加工プログラム72や洗浄条件81を記憶装置61に入力する。
作業者又はロボットは、ワーク100をテーブル23に設置し、工作機械10を起動する。工作機械10は、加工プログラム72に基づいて、ワーク100を加工する。好ましくは、加工中は、ポンプ36、ポンプ38を運転し、第1ノズル14、右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35はクーラントを噴射する。ワーク100から発生した切りくずは、クーラントによって流されて、排出樋30を流れる。
【0043】
計数部75は、例えば、加工時間、加工回数、運転準備時間等を計数値としてカウントする。計数部75は、カウントした計数値と洗浄条件81を比較し、洗浄条件81が成立したときに、洗浄開始信号を発する。
【0044】
洗浄制御部78は、洗浄開始信号を受けて、数値制御部77に洗浄動作の実行を指令し、洗浄動作を開始させる。
図7は、テーブル23の中心を通るYZ平面における断面図を示す。実線のテーブル23は、前方の洗浄開始位置210に位置する。二点鎖線のテーブル23は、後方の洗浄停止位置220に位置する。
洗浄開始位置210は、Y軸ストロークの前方端で良い。また、洗浄停止位置220は、Y軸ストロークの後方端で良い。なお、加工室11の後方から前方に向かうにつれて排出樋30が低くなり、タンク31を加工室11の前方に配置する場合は、洗浄開始位置210をY軸ストロークの後方端とし、洗浄停止位置220をY軸ストローク前方端として入れ替えても良い。
【0045】
テーブル23に固定されたワーク100を主軸17が加工する間、ポンプ36、ポンプ38が作動し、第1ノズル14、右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35にクーラントが供給される。主軸17がワーク100の加工を停止し、ポンプ38が停止すると、第1ノズル14へのクーラントの供給が停止する。
【0046】
ポンプ38の停止後、テーブル23は加工位置から前方向に移動し、洗浄開始位置210で停止する。その後、ポンプ38はクーラントを第1ノズル14に供給し、第1ノズル14はクーラントを噴出する。そして、テーブル23は、後方の洗浄停止位置220へ移動する。好ましくは、テーブル23は、定速で移動してもよい。テーブル23の送り速度は、例えば、20mm/s~1,000mm/sである。第1ノズル14がクーラントを噴出しながら、テーブル23が後方に移動して、さらに右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35から噴出されるクーラントが合流し、排出樋30に滞留した切りくずがタンク31に向かって流される。テーブル23は、洗浄停止位置220で停止する。洗浄停止位置220での停止後、クーラントの噴出を停止する。
なお、ポンプ36、ポンプ38の2台に分けず、ポンプ36の1台のみとしても良い。この場合、第1ノズル14、右側第2ノズル27、左側第2ノズル33、右側第3ノズル29、左側第3ノズル35の噴出は連動する。
【0047】
切りくずの量により、洗浄回数が設定される。例えば、上記の洗浄動作を1回、又は複数回繰り返してよい。
また、洗浄開始位置210を、テーブル23のストロークの中間に設けても良い。例えば、テーブル23のストロークの中間から洗浄を開始して、後端で停止した後に、テーブル23のストローク前端から洗浄を開始して、ストローク後端で洗浄を停止しても良い。
【0048】
また、工作機械10は、ワーク100を加工している途中に排出樋30を洗浄しても良い。このとき、洗浄制御部78は、テーブル23の移動を監視し、テーブル23が前方向(Y+)に移動するときは、第1ノズル14の噴射を停止する。そして、テーブル23が後ろ方向(Y-)に移動するときに、第1ノズル14の噴射を開始する。例えば、洗浄制御部78は、Y-方向への移動量が閾値を超えた場合に、第1ノズル14からクーラントを噴射させても良い。この場合、記憶装置61は、閾値を格納する。例えば、閾値は100~200mmである。
工作機械10が、ワーク100を加工している途中に排出樋30を洗浄するときにおいても、工作機械10は、計数部75を介して、定期的に排出樋30を洗浄しても良い。
【0049】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 工作機械
11 加工室
12 架台
14 第1ノズル
17 主軸
23 テーブル
30 排出樋
32 側壁
38 ポンプ
60 制御装置
【手続補正書】
【提出日】2021-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工室を画定する側壁と、
前記加工室内に配置される架台と、
工具を保持する主軸と、
前記加工室の左右方向の中心において、前後方向に延びる排出樋と、
前記排出樋の上方に配置され、前後方向に移動可能なテーブルであって、流路入口と流路出口を有する流路を内部に有するテーブルと、
前記流路出口と接続されて前記テーブルの下方に配置され、下向きに洗浄流体を噴出する第1ノズルと、
前記流路入口に接続され、前記洗浄流体を供給するポンプと、
前記洗浄流体の噴出を制御する制御装置と、
を有する、工作機械。
【請求項2】
前記加工室の右側から中心側に向けて高さが低くなる右斜板と、
前記加工室の左側から中心側に向けて高さが低くなる左斜板と、
を更に有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記排出樋は、前記右斜板と前記左斜板との間であって、前記右斜板及び前記左斜板の下方に配置される、
請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記排出樋は、
前記加工室の右側から中心側に向けて高さが低くなる右斜面部と、
前記加工室の左側から中心側に向けて高さが低くなる左斜面部と、を有し、
前記右斜面部と前記左斜面部は、前記加工室の中心で接続される、
請求項1~3のいずれかに記載の工作機械。
【請求項5】
前記排出樋は、前記加工室の前方から後方に向けて低くなる、
請求項1~4のいずれかに記載の工作機械。
【請求項6】
前記右斜板は、
上方部分が固定された右側固定斜板と、
下方部分が前後方向に伸縮可能な右側伸縮斜板と、を有し、
前記左斜板は、
上方部分が固定された左側固定斜板と、
下方部分が前後方向に伸縮可能な左側伸縮斜板と、を有する、
請求項2~5のいずれかに記載の工作機械。
【請求項7】
前記排出樋の後方に配置され、前記排出樋から流れる洗浄流体及び切りくずを溜めるタンクを更に有する、
請求項1~6のいずれかに記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1ノズルは、前記洗浄流体を噴出する噴口を有し、
前記噴口の向きは、自在に変更可能である、
請求項1~7のいずれかに記載の工作機械。
【請求項9】
加工室内の上方に配置され、右側の前記側壁に向けて前記洗浄流体を噴出する右側第2ノズルと、
加工室内内の上方に配置され、左側の前記側壁に向けて前記洗浄流体を噴出する左側第2ノズルと、
を更に有する、請求項1~8のいずれかに記載の工作機械。
【請求項10】
右側の前記側壁に配置され、前記右斜板に向けて前記洗浄流体を噴出する右側第3ノズルと、
左側の前記側壁に配置され、前記左斜板に向けて前記洗浄流体を噴出する左側第3ノズルと、
を更に有する、請求項2~9のいずれかに記載の工作機械。
【請求項11】
前記制御装置は、
加工プログラムと、洗浄プログラムと、洗浄条件と、を記憶する記憶装置と、
演算装置であって、
運転時間又は加工回数である計数値を計数し、前記計数値が前記洗浄条件を満たす場合に洗浄開始信号を発する計数部と、
前記洗浄プログラムに従って前記テーブル及び前記ポンプを制御する数値制御部と、
前記洗浄開始信号を受信し、前記数値制御部に洗浄動作の実行を指令し、前記排出樋を洗浄させる洗浄制御部と、
を有する演算装置と、
を更に有する、請求項1~10のいずれかに記載の工作機械。