(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109490
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】駐輪ロッカー
(51)【国際特許分類】
E05B 65/02 20060101AFI20220721BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20220721BHJP
E05B 63/14 20060101ALI20220721BHJP
E05B 65/10 20060101ALI20220721BHJP
E05B 15/02 20060101ALI20220721BHJP
E05C 1/06 20060101ALI20220721BHJP
E05C 9/04 20060101ALI20220721BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
E05B65/02 B
E05B47/00 U
E05B63/14 C
E05B65/10 K
E05B15/02 J
E05C1/06 D
E05C9/04
E05C1/06 B
E05C1/06 A
E04H6/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004832
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】501331544
【氏名又は名称】東電タウンプランニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 基祐
(57)【要約】
【課題】商用電源がない場所でも設置可能で、防犯性能の高い駐輪ロッカーを提供する。
【解決手段】自転車を収納可能なロッカー本体2と、前記ロッカー本体2にヒンジ結合された前扉3と、を備える駐輪ロッカーで1あって、前記前扉3には、上下方向に動作可能な一対のロッド12,13と、前記一対のロッド12,13を動作させる平面ラッチ錠9と、前記平面ラッチ錠9の前面を覆う小扉5と、を備え、前記小扉5には、セキュリティ情報を入力することにより開錠可能な電子錠4を備え、前記電子錠4のロック棒16は、前記ロッカー本体2に取付けられた受座23に係合し、前記電子錠4を操作して前記ロック棒16を前記受座23から外した後でなければ、前記平面ラッチ錠9の操作ができないことを特徴とする駐輪ロッカー1により課題を解決する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車を収納可能なロッカー本体と、前記ロッカー本体にヒンジ結合された前扉と、を備える駐輪ロッカーであって、
前記前扉には、上下方向に動作可能な一対のロッドと、前記一対のロッドを動作させる平面ラッチ錠と、前記平面ラッチ錠の前面を覆う小扉と、を備え、
前記小扉には、セキュリティ情報を入力することにより開錠可能な電子錠を備え、
前記電子錠のロック棒は、前記ロッカー本体に取付けられた受座に係合し、
前記電子錠を操作して前記ロック棒を前記受座から外した後でなければ、前記平面ラッチ錠を操作できないことを特徴とする駐輪ロッカー。
【請求項2】
前記前扉の背面側に、前記前扉を開放操作可能な非常開錠手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の駐輪ロッカー。
【請求項3】
前記非常開錠手段は、前記ロッカー本体に取付けられた受座を上方向にスライドさせる摘みと、前記一対のロッドを上下方向に動作させる回動ハンドルと、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の駐輪ロッカー。
【請求項4】
前記非常開錠手段は、前記ロック棒を水平方向に移動させるとともに、前記一対のロッドを上下方向に動作させる引張りハンドルと、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の駐輪ロッカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源がない場所でも自転車を安全に保管できる駐輪ロッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自転車は、手軽な移動手段として広く普及している。自転車の用途は多様であり、例えば、鉄道を利用して通勤や通学をする際、自転車を使用して最寄りの駅まで行き、駅近くの無料または有料の駐輪場に駐輪している。また、買い物に行く際、自宅から自転車を使用して近隣のスーパーマーケットに行き、スーパーマーケットの無料駐輪場に駐輪している。これらの駐輪場では昼間のみ管理人により管理される場合もあるが、個々の自転車に錠を備えて施錠するだけという場合が多く、自転車の盗難は少なくない。
【0003】
このような事情から、自転車等を収納できる箱型ロッカーに扉施錠装置を備えるとともに、扉にタッチパネル、コンピュータ、制御ユニット等を備えて自転車の盗難防止を図った管理システム付駐輪装置がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、宅配ロッカーに併設したレンタル自転車用の駐輪場では、レンタルに関わるサービスを24時間年中無休で行うべく、レンタル管理センターとレンタル管理装置とをネットワークを介して接続し、ユーザーはインターネットを介してパソコン等の端末からレンタルサービスを受けることができるレンタルシステムがある(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、ロッカー内部に収納する自転車の盗難防止機能の向上、ロッカー利用時の利用者の負担低減、ロッカーの組付作業性向上による費用削減、安全性の確保を図った自転車用ロッカーがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-291867号公報
【特許文献2】特開2004-171147号公報
【特許文献3】実用新案登録第3180523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自転車の使用形態は、通勤や通学等といった日常的な使用が圧倒的に多いものの、休日にサイクリングを楽しむサイクリストのように非日常的な使用も少なくない。趣味性の強いサイクリスト用の自転車は高価なものが多く、通勤や通学等に使用される一般的な自転車に較べると、金額が1桁以上高価な自転車も少なくない。高価で愛着のある自転車が盗難に遭う、あるいは盗まれないにしても、いたずらされ傷付けられると、サイクリストの受ける精神的ダメージは大きい。例えば、観光地へサイクリングに行き、レストラン等で食事をする場合や、徒歩でしか入れない寺社の境内を見学する場合、高価な自転車を施錠しただけで駐輪せざるを得ない。その結果、自転車を傷付けられ、盗難に遭うリスクもある。このような事情から、高価な自転車を使用してサイクリングを楽しむサイクリストの間では、観光地等の屋外において、短時間でも自転車を安全に保管できる施設の設置が要望されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の駐輪装置や特許文献2に記載のレンタルシステムは、鉄道の駅や集合住宅の近くでの設置を想定しており、商用電源のない場所での設置は困難であった。また、これらの駐輪装置や駐輪ロッカーでは施錠装置を備えるが、暗証番号の入力だけで開錠できる電子式のものが多く、閂錠など機械式の強固な錠に較べると、盗難に対する防犯性は脆弱であった。さらに、特許文献1~3に記載の駐輪装置や駐輪ロッカーは、いずれも屋外での設置を想定したものではなく、防犯性に問題があった。
【0009】
そこで、本発明の駐輪ロッカーは、商用電源がない屋外でも設置可能であって、強固な機械式錠を備える防犯性能の高い駐輪ロッカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、自転車を収納可能なロッカー本体と、前記ロッカー本体にヒンジ結合された前扉と、を備える駐輪ロッカーであって、前記前扉には、上下方向に動作可能な一対のロッドと、前記一対のロッドを動作させる平面ラッチ錠と、前記平面ラッチ錠の前面を覆う小扉と、を備え、前記小扉には、セキュリティ情報を入力することにより開錠可能な電子錠を備え、前記電子錠のロック棒は、前記ロッカー本体に取付けられた受座に係合し、前記電子錠を操作して前記ロック棒を前記受座から外した後でなければ、前記平面ラッチ錠を操作できないことを特徴とする駐輪ロッカーである。
【0011】
さらに、本発明は、前記前扉の背面側に、前記前扉を開放操作可能な非常開錠手段を備えたことを特徴とする駐輪ロッカーである。
【0012】
また、前記非常開錠手段は、前記ロッカー本体に取付けられた受座を上方向にスライドさせる摘みと、前記一対のロッドを上下方向に動作させる回動ハンドルと、を備えたことを特徴とする駐輪ロッカーである。
【0013】
また、前記非常開錠手段は、前記ロック棒を水平方向に移動させるとともに、前記一対のロッドを上下方向に動作させる引張りハンドルと、を備えたことを特徴とする駐輪ロッカーである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の駐輪ロッカーは、商用電源がない屋外でも容易に設置できる。したがって、設置場所の制約が少なく設置に関する自由度が高い。また、屋外での設置を想定しており、強固な機械式の錠を備えることから高い防犯性能を有る。さらに、自転車1台当たりの駐輪スペースは乗用車に較べると少ないことから、数台程度の小規模な駐輪場であれば、有効活用が難しいわずかな余剰土地であっても駐輪スペースとして活用できる。したがって、土地の所有者にとっては、余剰土地を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例を示す駐輪ロッカーの斜視図である。
【
図2】ロッカー本体に自転車を収納した状態を示す模式図である。
【
図3】前扉の外観斜視図であり、(a)は小扉を閉じた状態、(b)は小扉を開いた状態を示す。
【
図4】前扉に取付けられた平面ラッチ錠の正面図である。
【
図6】前扉の背面斜視図であり、(a)は保護カバーを取り付けた状態、(b)は保護カバーを取り外した状態を示す。
【
図7】
図3のA-A矢視図であり、(a)は小扉が閉まっている状態、(b)は小扉の開閉準備状態、(c)は小扉が開いている状態を示す。
【
図8】平面ラッチ錠とロッド動作の遷移を示す図である。
【
図9】非常開錠手段の実施例1を示す斜視図であり、(a)は標準状態、(b)は非常開錠操作時を示す。
【
図10】非常開錠手段の実施例1を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は非常開錠時の正面図である。
【
図11】非常開錠手段の実施例2を示す図であり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は非常開錠時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施例を示す駐輪ロッカー1の外観斜視図であり、
図2は駐輪ロッカー1の内部に自転車を収納した状態を示す模式図である。ロッカー本体2の外形形状は、高さ方向の寸法が長い略直方体をしている。ロッカー本体2の前面開口部にはヒンジ結合された前扉3が備えられ、該前扉3には電子錠4を装着した小扉5が備えられている。
【0017】
駐輪ロッカー1内に自転車を収納する場合、自転車の後輪をロッカー本体2の床板6上に当接した状態で、自転車の前輪をロッカー本体2の内壁面7に設けられたフック8に係止して収納するようになっている。フック8の高さ位置は収納する自転車のサイズに応じて調整可能となっている。また、フック8は前輪のリムを傷付けることがないよう、ゴム等の軟質材料で表面が被覆されている。したがって、自転車を収納する際に自転車を分解する必要はなく、また折り畳む必要もないことから短時間で収納することができる。
【0018】
図3は、前扉3の外観斜視図であり、(a)は小扉5を閉じた状態、(b)は小扉5を開いた状態を示している。右端側でロッカー本体2にヒンジ結合された前扉3の左端寄りの適所には、平面ラッチ錠9が設けられている。平面ラッチ錠9には、市販されている汎用品を使用することができる。平面ラッチ錠9のラッチ11は、
図4に示すように前扉3の背面側に設けられた上下一対のロッド12,13に結合されている。
【0019】
平面ラッチ錠9の前面には、右端側が前扉にヒンジ結合された小扉5が設けられ、該小扉5には、
図5に示すような電子錠4が備えられている。電子錠4としては、集合住宅等の宅配ボックスのドアロック用として市販されている電子錠を使用することができる。この電子錠4は、ロック機構部14と操作部15とから構成されている。ロック機構部14は小扉5の背面側に取付けられ、操作部15は小扉5の表面側に取付けられている。ロック機構部14にはロック棒16が組み込まれており、操作部15での入力操作によりロック棒16が出入り動作をするようになっている。操作部15は、暗証番号等を入力するためのテンキー17と、管理サーバ(図示省略)との情報のやり取りに必要となるQRコード(登録商標)を表示するための表示装置18と、制御部(図示省略)とを有している。ロック機構部14および操作部15を駆動するのに必要な電力は、内蔵された二次電池から供給される。したがって、商用電源を必要とすることなく、電子錠4を操作してロック機構により施錠および開錠をすることができる。ただし、操作部15は管理サーバとの間で情報をやり取りする通信機能は有していない。
【0020】
本発明の駐輪ロッカーを用いて一般向けのレンタルシステムを構成する場合に必要となる電子錠と管理サーバとの間の通信は、スマートフォン等を用いて行うことができる。一般向けのレンタルシステムを構成して自転車を駐輪ロッカーに収納する場合、使用者が操作部15のスタートボタンを押すと表示装置18にQRコード(登録商標)が表示される。つぎに、表示されたQRコード(登録商標)をスマートフォンで読み取りインターネットを介して管理サーバに接続する。スマートフォンに表示される指示に沿って必要な操作を行い、開錠に必要な暗証番号を取得して開錠する。ロッカー本体2内に自転車を収納後、平面ラッチ錠9を操作して前扉3を閉じ、さらに小扉5を閉じた後、操作部15の完了ボタンを押すことによって施錠される。
【0021】
自転車を駐輪ロッカー1から取り出す場合も、収納する場合と同様の操作を行うことにより、開錠することができる。すなわち、操作部15のスタートボタンを押すと表示装置18にQRコード(登録商標)が表示される。次に表示されたQRコード(登録商標)をスマートフォンで読み取りインターネットを介して管理サーバに接続し、スマートフォンに表示される指示に沿って必要な操作を行い、開錠に必要な暗証番号を取得する。その後、テンキー17から暗証番号を入力することにより開錠し、ロッカー本体2内から自転車を取り出すことができる。なお、暗証番号は1回に限り有効な使い捨て方式が採用され、防犯性能の向上が図られている。
【0022】
図6は、前扉3の背面斜視図であり、(a)は保護カバー19を取り付けた状態、(b)は保護カバー19を取り外した状態を示している。保護カバー19は、平面ラッチ錠9や非常開錠手段21の可動部が露出するのを防止するために設けられている。
【0023】
前扉3の背面側には、上下方向に動作可能な一対のロッド12,13が取り付けられ、各ロッド12,13の一端は小扉5に取り付けられた平面ラッチ錠9のラッチ11と接続されている。また、一対のロッド12,13の上端部および下端部には、各ロッド12,13を上下端側に付勢する圧縮コイルスプリング22が備えられている。したがって、平面ラッチ錠9の取手を手前側に引き起こすと各ロッド12,13の先端部は上下方向に突出し、平面ラッチ錠9の取手を平面状態に戻すと各ロッド12,13の先端部は元の位置に戻るようになっている。このことにより、一対のロッド12,13は、いわゆる閂となり機械式の堅牢な錠とすることができる。
【0024】
図7は、
図3(a)のA-A矢視図であり、(a)は小扉5が閉まっている状態、(b)は小扉5の開閉準備状態、(c)は小扉5が開いている状態を示している。小扉5が閉まっている状態(a)では、ロッカー本体2に固定されている受座23に、電子錠4のロック機構部14から突出するロック棒16が引っ掛かり係止される。すなわち、小扉5はロッカー本体2にロックされる。また、ロッカー本体2に固定されている受座23には、鉄系材料の存否を検知するロック作動用マグネット24が備えられている。
【0025】
小扉5の開閉準備状態(b)では、電子錠4の操作部15を操作し、暗証番号が入力されると、ロック機構部14のロック棒16が引っ込み、小扉5は開閉可能状態になる。また、小扉5を閉める際には、図示の状態まで小扉5を閉めると、マグネット24の磁力によってリードスイッチ(図示省略)が作動し、ロック機構部14のロック棒16が突出する。
【0026】
小扉5が開いている状態(c)では、前扉3の平面ラッチ錠9にアクセス可能となる。なお、前扉3が開いている状態で小扉5を閉めようとしても、マグネット24の磁力の及ぶ範囲内にロック機構部14が存在しないことから、リードスイッチは作動しない。その結果、ロック機構部14による施錠はされない。
【0027】
図8は、平面ラッチ錠9とロッド12,13動作の遷移を示す図である。(a)は小扉5が閉まっている状態、(b)は小扉5の開閉途中状態、(c)は小扉5が開いている状態、(d)は小扉5を閉める際の途中状態を示している。
【0028】
小扉5が閉まっている状態(a)では、一対のロッド12,13のうち、上ロッド12の先端部はロッカー本体2の天板25に取付けられたロッド受座26の下端よりも上部に突出し、下ロッド13の先端部はロッカー本体2の床板6に設けられた孔27に挿入されている。したがって、一対のロッド12,13はロッカー本体2に対し閂として機能し、前扉3は閉じて施錠された状態となっている。
【0029】
小扉5の開閉途中状態(b)では、平面ラッチ錠9の取手を手前側に引くことで、一対のロッド12,13のうち、上ロッド12の先端部はロッカー本体2の天板25に取付けられたロッド受座26の下端より下がり、下ロッド13の先端部はロッカー本体2の床板6に設けられた孔27から引き抜かれる。したがって、一対のロッド12,13の先端部はロッカー本体2に係止されることなく、小扉5は開閉可能となる。
【0030】
小扉5が開いている状態(c)では、小扉5をいったん開いた後に平面ラッチ錠9の取手を離しても、圧縮コイルスプリング22の付勢力によって一対のロッド12,13は元の位置まで戻り、前扉3は開いた状態を維持できる。したがって、ロッカー本体2の内部へ自転車を出し入れすることが可能となる。
【0031】
小扉5を閉める際の途中状態(d)では、小扉5のみを無理やり押し込んでも、一対のロッド12,13の先端部がロッカー本体2の前面に引っ掛かり、閉めることができない。平面ラッチ錠9の取手を手前に引き、一対のロッド12,13を下げる(上げる)ことで、小扉5を無理なく閉めることが可能となる。
【0032】
以上説明したように、本発明の駐輪ロッカー1によれば、電子錠4を開錠して小扉5を開いた後でなければ、平面ラッチ錠9にアクセスすることができない構造になっている。したがって、二重の施錠を備えていることになり、防犯性の高い駐輪ロッカーを実現できる。また、市販されている電子錠は、集合住宅等の宅配ボックスのドアロック用として設計されていることから、コンパクトという利点はあるものの機械的強度は小さい。その点、本発明の一対のロッド12,13は強固な閂錠として機能することから、十分大きな機械的強度を有し、盗難等に対する抑止力の大きな駐輪ロッカー1を実現できる。
【0033】
図9は、前扉3の背面に取付けられた非常開錠手段21の実施例1を示す斜視図であり、(a)(b)はいずれも保護カバー19を取り外した状態を示している。ここで、前扉3の背面に非常開錠手段21を備えるのは、使用者の勘違いや誤操作によって駐輪ロッカー1の内部に人間が閉じ込められた場合であっても、閉じ込められた人間が内部から操作することにより自力で脱出できるようにするためである。
【0034】
小扉5および前扉3が施錠されている標準状態(a)では、一対のロッド12,13を動作させる回動ハンドル28は水平横向きとなっている。この標準状態では、一対のロッド12,13のうち、上ロッド12の先端部はロッカー本体2の天板25に取付けられたロッド受座26の下端よりも上方に突出し、下ロッド13の先端部はロッカー本体2の床板6に設けられた孔27に挿入されている。したがって、一対のロッド12,13はロッカー本体2に対し閂として機能し、前扉3を内部から外方へ押しても前扉3は閉じた状態が維持される。
【0035】
内部から開錠する非常開錠時(b)においては、ロッカー本体2に取付けられた受座23を上方にスライドさせる摘み29を上方へスライドさせるとともに、一対のロッド12,13を動作させる回動ハンドル28を水平横向きから反時計回転方向に回動して斜め下向き位置にする。この摘み29および回動ハンドル28の操作によって、一対のロッド12,13の先端部は下がり(上がり)、先端部はロッカー本体2の天板25に取付けられたロッド受座26の下端よりも下がり、また床板6に設けられた孔27から引き抜かれるため、ロッカーの内部から前扉3を開くことが可能となる。なお、摘み29を上方へスライドさせる操作と、回動ハンドル28を回動させる操作の順序は、いずれが先であっても構わない。
【0036】
図10は、非常開錠手段21の実施例1における作用をさらに説明するものであり、(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は非常開錠時の正面図である。一対のロッド12,13は上下対称であることから、上側のロッド12のみ示して簡略化している。ロッド12にはワイヤー取付金具31が取り付けられ、回動ハンドル28にはハンドル把持部の長手方向と略90度の角度となる上向きにレバー32が設けられている。また、軸受33を介して弛みのないワイヤー34によって、取付金具31とレバー32とが連結されており、ワイヤー34は(b)に示すように軸受33を介して略90度の角度を有して配設されている。
【0037】
内部から開錠する非常開錠時には、(c)に示すように回動ハンドル28を反時計回転方向に回動操作する。回動ハンドル28が反時計回転方向に操作されると、回動ハンドル28と同軸上に設けられたレバー32も反時計回転方向に回動し、レバー32の先端部に取り付けられたワイヤー34は、水平左方向に移動する。この水平方向のワイヤー34の移動は軸受33を介して下方向の移動に変換され、上ロッド12は下向きに移動することになる。この上ロッド12の下向きの移動により、上ロッド12の先端部はロッカー本体2の天板25に取付けられたロッド受座26の下端より下がり、ロッカーの内部から前扉3を開くことが可能となる。下ロッドについては記載を省略しているが、上ロッドと同様の動作となる。
【0038】
図11は、非常開錠手段21についての実施例2を示している。この実施例2では実施例1と異なり、回動ハンドルに替えて直線動作する引張りハンドル35を採用している。(a)は左側面図、(b)は正面図、(c)は非常開錠時の正面図である。一対のロッド12,13に、ワイヤー取付金具31を介してワイヤー34の一端が取り付けられていることは実施例1と同じである。ワイヤー34は水平方向にのみ移動可能で他方向の移動が規制される従動スライダー36に設けられた孔37を経由することにより垂直から水平に方向変換された後、引張りハンドル35に接続されている。従動スライダー36は、前扉3の背面に固定されたガイドレール38に対し、ローラー39を介して水平方向にのみ移動可能となっている。引張りハンドル35が設けられた部位の反対側となる従動スライダー36の端部には、連結軸41が取り付けられている。また、該連結軸41は電子錠を構成するロック機構部14のロック棒16に連結され、連結軸41の側面にはロック棒16を右向きに付勢する圧縮コイルスプリング42が装着されている。なお、この連結軸41に装着される圧縮コイルスプリング42の付勢力は、前扉3に設けられたロッド12,13を上下端側に付勢する圧縮コイルスプリング22の付勢力に較べて小さく設定されている。
【0039】
内部から開錠する非常開錠時には、(c)に示すように引張りハンドル35を左方向に引張る操作を行う。引張りハンドル35を左方向に引張ると、(b)に示す状態から(c)に示す状態に遷移する。すなわち、ワイヤー34が左方向へ移動することにより、従動スライダー36および連結軸42を介して、ロック機構部14のロック棒16が左方向へ移動する。また、ワイヤー34が左方向へ移動することにより、ワイヤー34の他端は上下方向に移動することから、上下ロッド12,13の先端部は下がり(上がり)、先端部はロッカー本体2の天板25に取付けられたロッド受座26の下端よりも下がり、また床板6に設けられた孔27から引き抜かれるため、ロッカーの内部から前扉3を開くことが可能となる。
【0040】
駐輪ロッカーの形態に関し、1台の自転車を収納するロッカーについて説明したが、複数台の自転車を収納するロッカーに適用することもできる。また、複数の駐輪ロッカーを相互に連結するとともに、駐輪ロッカーにアンカーを設けるなどしてロッカー全体として盗難され難い駐輪ロッカーとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る駐輪ロッカーは、商用電源がない屋外に設置可能であり、防犯性能の高い駐輪ロッカーとして利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 駐輪ロッカー
2 ロッカー本体
3 前扉
4 電子錠
5 小扉
9 平面ラッチ錠
12 上ロッド
13 下ロッド
16 ロック棒
21 非常開錠手段
23 受座
28 回動ハンドル
29 摘み
35 引張りハンドル