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  • 特開-硫酸銅水溶液の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109497
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】硫酸銅水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 3/10 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
C01G3/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004847
(22)【出願日】2021-01-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】515158799
【氏名又は名称】日本リサイクルセンター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 綾香
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄高
(72)【発明者】
【氏名】辻 寛之
(72)【発明者】
【氏名】西浦 崇人
(72)【発明者】
【氏名】村上 義樹
(57)【要約】
【課題】空気雰囲気下で硫酸を用いて、簡便で経済的に銅材から未反応硫酸の少ない硫酸銅水溶液を製造する方法を提供する。
【解決手段】容器に投入された銅材と硫酸を、所定の雰囲気温度に制御加熱し、酸素を含む雰囲気下で銅材と硫酸を反応させ、略完全に乾燥し、生成させた硫酸銅を、水を加えて溶解させ、残留銅材と固液分離することを特徴とする、硫酸銅水溶液の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に投入された銅材と硫酸を、酸素を含む雰囲気下で加熱して、銅材のモル数(MCu)と硫酸のモル数(Ms)とのモル比(MCu)/(Ms)が1を超えるよう反応させ、略完全に乾燥させたのち、生成された硫酸銅を、水を加えて溶解させ、残留銅材と固液分離することを特徴とする、硫酸銅水溶液の製造方法。
【請求項2】
前記銅材のモル数(MCu)と前記硫酸のモル数(MS)とのモル比(MCu)/(MS)が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
【請求項3】
前記硫酸の濃度が10~70重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
【請求項4】
酸素を含む雰囲気下での加熱が温度40~280℃の範囲で行われることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
【請求項5】
前記銅材は、片状、粒状、粉状、チップ状のうちの少なくともいずれかの形態の多数の分割体によって構成されている請求項1~4のいずれかに記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
【請求項6】
得られる硫酸銅水溶液の銅のモル数(MCuP)と硫酸のモル数(MSP)とのモル比(MCuP)/(MSP) が0.93~1.00の範囲にあり、前記硫酸銅の濃度が1~50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を含む雰囲気下で硫酸を用いて、簡便で経済的に銅箔等の銅材から未反応硫酸の少ない硫酸銅水溶液を製造する硫酸銅水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅材である例えば銅箔はリチウムイオン電池、フレキシブルプリント配線板、PDP電磁波シールド・フィルム部材、抵抗内蔵基板など幅広く利用されており、それに伴い発生する銅箔スクラップのリサイクルが望まれている。
【0003】
硫酸銅水溶液は、銅めっき液、顔料、殺菌剤の原料、防腐剤として使用されており、また酸化銅や水酸化銅の合成原料にも使用できる。
【0004】
従来、硫酸銅の製造には、熱濃硫酸で直接金属銅を溶解する方法が知られているが、材質、安全性の観点で特別仕様の溶解槽が必要であり、さらに発生する亜硫酸ガスの処理設備も要するため、設備費用が掛かりすぎるという欠点があった。
【0005】
また、金属銅を焼成して酸化銅として硫酸に溶解する方法も知られているが、酸化反応が進行しにくい、ランニングコストが大きくなるといった問題点があった。
【0006】
金属銅を硫酸に溶解させるために、酸化剤として過酸化水素を添加する方法も知られている。この方法によれば効率的に酸化反応が進むため、加熱操作を必要としないが、過酸化水素は、高価であり、経済的に難があった。また、自己分解しやすいため管理が難しく、投入時の気体発生や発熱といった点で安全性にも難があった。さらに、過酸化水素は生成した硫酸銅水溶液に残留しやすく、除去する工程を設ける必要があった。
【0007】
硫酸と酸化剤として空気を用いた方法として、特許文献1には、液温を65~85℃に維持した40~120メッシュの金属銅粉懸濁液に微細な空気泡を多量に導入しながら硫酸を添加し、金属銅粉を酸化溶解する硫酸銅水溶液の製造方法が開示されている。(特許文献1:特開平5-262523号公報)
さらに、特許文献2には、金属溶解塔に金属銅塊を充填し、金属溶解塔上部から加熱した硫酸を供給し、金属溶解塔の上部または下部から酸化剤を供給する硫酸銅水溶液の製造方法が開示されている。(特許文献2:特開2011-32126号公報)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-262523号公報
【特許文献2】特開2011-32126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2共に加熱設備と液温の制御を有する溶液槽が必要であるため大掛かりな設備となり、設備コストが多大であるという課題を有する。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、大掛かりな設備が不要であり、簡便で経済的に銅材から未反応硫酸の少ない硫酸銅水溶液を製造できる硫酸銅水溶液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)容器に投入された銅材と硫酸を、酸素を含む雰囲気下で加熱して、銅材のモル数(MCu)と硫酸のモル数(Ms)とのモル比(MCu)/(Ms)が1を超えるよう反応させ、略完全に乾燥させたのち、生成された硫酸銅を、水を加えて溶解させ、残留銅材と固液分離することを特徴とする、硫酸銅水溶液の製造方法。
(2)前記銅材のモル数(MCu)と前記硫酸のモル数(MS)とのモル比(MCu)/(MS)が2以上であることを特徴とする前項1に記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
(3)前記硫酸の濃度が10~70重量%の範囲にあることを特徴とする前項1または2に記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
(4)酸素を含む雰囲気下での加熱が温度40~280℃の範囲で行われることを特徴とする前項1~3のいずれかに記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
(5)前記銅材は、片状、粒状、粉状、チップ状のうちの少なくともいずれかの形態の多数の分割体によって構成されている前項1~4のいずれかに記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
(6)得られる硫酸銅水溶液の銅のモル数(MCuP)と硫酸のモル数(MSP)とのモル比(MCuP)/(MSP) が0.93~1.00の範囲にあり、前記硫酸銅の濃度が1~50重量%の範囲にあることを特徴とする前項1~5のいずれかに記載の硫酸銅水溶液の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、大掛かりな設備も必要とせず、容器と銅材、硫酸、汎用性の加熱乾燥設備があれば、簡単にフリーの硫酸が少ない硫酸銅溶液を製造できる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、銅材が過剰となるので、雰囲気中の酸素との接触効率が良くなり、反応が進行しやすくなり、反応後の硫酸銅溶液中にフリーの硫酸が少なくなる。
【0014】
前項(3)に記載の発明によれば、硫酸濃度が10重量%未満では硫酸の濃度が薄く、溶解速度が遅くなる場合があり、また70重量%を超えると硫酸の濃度が高く安全性が不利となってしまう恐れがあるため、10~70重量%の範囲で効率良く安全に反応させることができる。
【0015】
前項(4)に記載の発明によれば、酸素を含む雰囲気下での加熱が温度40~280℃の範囲で行われるから、効率良く安全に反応させることができる。
【0016】
前項(5)に記載の発明によれば、銅材は片状、粒状、粉状、チップ状のうちの少なくともいずれかの形態の多数の分割体によって構成されているから、銅材の単位重量当たりの表面積が大きくなる。このため、雰囲気中の酸素との接触効率が高まり反応が進行する。
【0017】
前項(6)に記載の発明によれば、モル比(MCuP)/(MSP) が0.93~1.00の範囲にあるフリーの硫酸が少ない硫酸銅溶液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる硫酸銅水溶液の製造方法の概略手順を示すフローチャートである。
図2】容器に投入された銅材と硫酸の状態を模式的に示す断面図である。
図3】実施例1の反応前の銅箔と硫酸の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、本発明による硫酸銅溶液の製造方法の実施の形態では、原料として、銅材の一例としての銅箔と硫酸を用意し、銅箔を粉砕して小片状の多数の分割体を生成し(ステップS1)、粉砕した銅箔と硫酸とを容器に投入し、酸素を含む雰囲気下で加熱乾燥して反応させ(ステップS2)、硫酸銅を生成する。次に、生成した硫酸銅に水を加えて撹拌溶解し(ステップS3)、固液分離(ステップS4)により未反応の残留銅箔を除去して、硫酸銅水溶液を得る。
【0020】
図2に示すように、銅材2と硫酸3が投入される容器1の材質は、硫酸に耐性があり耐熱性のものであれば良く、ガラス製、磁製、プラスチック、繊維強化プラスチック(FRP)、フッ素樹脂などが使用される。ガラスもしくはフッ素樹脂をコーティングした金属容器でも良い。また容器1の形状は、底の浅いトレー状のものが望ましい。底の浅い容器1は開口面積が大きいため、雰囲気中の酸素との接触効率が高くなり、反応が速やかに進行しやすい。底の深い容器も使用できるが、反応に時間がかかる。
【0021】
容器1に投入された銅材2と硫酸3を加熱し乾燥するための加熱乾燥設備の種類は特に制限されず、酸素を含む雰囲気下で使用できるものであれば良い。酸素を含む雰囲気としては限定はされないが空気雰囲気(空気中)を挙げることができる。具体的な加熱乾燥設備として、空気雰囲気下で使用できる定温恒温器や定温乾燥器、電気炉などが使用され、銅材の溶解促進の為に空気と積極的に接触させる送風機能を有するものが望ましい。
【0022】
銅材2の量は硫酸3のモル数に対して1を超えれば良く、望ましくは2倍量以上である。過剰分は残留銅箔として回収され、再び原料として使用できる。
【0023】
短時間で、未反応硫酸の少ない硫酸銅溶液を得るためには、より過剰量の銅材2を使用すれば良いが、容器1が大きくなる。銅材2をなるべく小さく粉砕することで嵩を減らすことができる。
銅材
本実施形態に用いる銅材2は例えば銅箔であるが、上述の通り、銅箔は多数の片状の分割体に粉砕して用いるのが望ましい。反物や一枚のシート状のものは、銅箔の単位重量当たりの表面積が小さいので硫酸3や空気との接触効率が低下し、未反応硫酸が残りやすくなる。銅箔は表面処理された箔、あるいはカーボン等が付着した箔も適切な前処理を施すことで使用できる。
【0024】
また銅材2として、粒状、粉状の形態の多数の分割体を用いても良い。さらに、銅箔以外にも、銅線、コイル等を前処理として片状あるいはチップ状に削ることで使用できる。なお、チップ状とは、片状、粒状、粉状以外の、厚さが片状よりも厚い全ての小塊をいい、銅切子、銅切削屑等も含まれる。また、銅材2を構成する分割体の形態の種類は1種類のみであっても良いし、2種類以上の形態の銅材を混合して用いても良い。また、銅粉や銅ダライ粉、銅切子、銅切削屑などは硫酸のモル数に対して2倍量よりさらに大過剰に入れることで、より反応性良く硫酸銅とすることができる。要は、銅材2として、片状、粉状、粒状、チップ状等の小サイズの分割体に分割し、これらの分割体の集合により銅材が構成されるのが望ましい。
【0025】
分割体の大きさは特に制限はないが、例えば片状の銅箔を使用する場合、20mm四方以下のサイズに粉砕するのが好ましい。一片の大きさが大きすぎると硫酸3や雰囲気中の酸素との接触効率が低くなるので処理に長時間を要する。銅箔を片状に粉砕する方法は、特に限定はなく、せん断式粉砕、摩砕式粉砕、衝撃式粉砕など、いずれの方法でも良く、もしくは2つ以上の方法を組み合わせても良い。
硫酸
本実施形態で用いる硫酸3は、濃度が10~70重量%であることが好ましく、さらには30重量%以上であることが好ましい。
【0026】
硫酸3の濃度が10重量%未満であると、溶解速度が遅くなる場合があり、容器も大きなものが必要となる。また生成する硫酸銅の量も少なくなるので生産性が不利となる恐れがある。
【0027】
硫酸3の濃度が70重量%を超えて高すぎると、銅材2と反応する前に水が蒸発して濃硫酸となってしまう可能性が有り、安全性が不利となる恐れがある。
反応のメカニズム
銅材2と硫酸3の反応式は下記の通りである。
反応式:Cu + H2SO4 + 1/2O2→ CuSO4 + H2O
銅材2が硫酸3より過剰に存在しているため、図2の特に下側の一部拡大図に示すように、銅材2は液面31から露出している部分と液に浸かっている部分とがある。液面31から露出している銅材2は空気等の酸素を含む雰囲気に接触しているため酸素濃度が高い状態であるが、液中の銅材2は酸素濃度が低くなるため、銅材2間で酸素濃度を一定にしようとする働きが起こり、酸素濃淡電池の原理により銅材の酸化が進む。
【0028】
以上の原理より、硫酸3中の水分が蒸発するにつれて、銅材2が液面から露出し、その露出している部分から銅材2の酸化が起こり、硫酸3と反応して硫酸銅が生成される。
【0029】
銅材2と硫酸3の酸素を含む雰囲気下での加熱温度、換言すれば銅材2と硫酸3の反応温度は40~280℃の範囲にあることが好ましい。この範囲にあると、反応が早く終了し、またプラスチック製の容器1が使用できるので経済的に有利となる。特に75~100℃の範囲にあることが好ましい。反応速度を優先する場合は、100~200℃の高温域で反応させると良い。
【0030】
生成した硫酸銅を溶出させる水の量は、求める硫酸銅水溶液の濃度に依る。加えた硫酸のモル数と同量の硫酸銅ができるので、そこから計算して添加する水の量を決定する。この時、硫酸銅水溶液の濃度が溶解度以上となると溶け残りができる。
【0031】
生成した硫酸銅は残留銅材と固着して塊となるので、水中で撹拌して溶出させる。反応後の容器に少量水を加えて静置しておくと、軟化して水に投入しやすくなる。
【0032】
残留銅材は固液分離して除去する。分離方法は制限されず、残留銅材の粒径に合ったものを用いれば良い。固液分離方法に、特に制限はなく、通常、真空ろ過、加圧式ろ過や遠心分離が用いられる。
【0033】
得られた硫酸銅水溶液は、銅のモル数(MCuP)と硫酸のモル数(MSP)とのモル比(MCuP)/(MSP) が0.93~1.00の範囲にあり、硫酸銅の濃度が1~50重量%の範囲にあるのが、0.93~1.00の範囲にあるフリーの硫酸が少ない硫酸銅溶液が得られることから望ましい。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明は実施例に限定されない。
(実施例1)
硫酸銅水溶液(1)の製造
PP製の容器1(形状:角形、サイズ:195mm×133mm×40mm)に最大片2mm以下に粉砕した銅箔120gと濃度65重量%の硫酸100mLを投入した。この時、硫酸3の液量は少ないので容器底には溜まらず、銅箔に付着している状態である。図3に、容器1に投入された反応前の銅材(銅箔)2と硫酸3の写真画像を示す。
【0035】
次に、容器1を75℃に設定した乾燥機で7時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水1000mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(1)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は2.12であった。
【0036】
得られた硫酸銅水溶液(1)は硫酸銅の濃度が25.2重量%、pHが2.59、モル比(MCuP)/(MSP)が0.990であり、ほとんどフリー硫酸のない硫酸銅溶液であった。
(実施例2)
硫酸銅水溶液(2)の製造
容器1としての磁性蒸発皿(形状:平皿、サイズ:φ15mm×41mm)に、最大片2mm以下に粉砕した銅箔30gと濃度65重量%の硫酸25mLを投入した。この時、硫酸3の液量は少ないので容器底には溜まらず、銅箔に付着している状態である。
【0037】
次に、容器1を50℃に設定した電気炉で4時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水250mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(2)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は2.12であった。
【0038】
得られた硫酸銅水溶液(2)は硫酸銅の濃度が23.3重量%、pHが1.42、モル比(MCuP)/(MSP)が0.987であり、ほとんどフリー硫酸のない硫酸銅溶液であった。
(実施例3)
硫酸銅水溶液(3)の製造
PP製の容器1(形状:角形、サイズ:167mm×117mm×36mm)に最大片が2mm以下に粉砕した銅箔65gと濃度65重量%の硫酸50mLを投入した。この時、硫酸3の液量は少ないので容器底には溜まらず、銅箔に付着している状態である。
【0039】
次に、容器1を100℃に設定した電気炉で4時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水500mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(3)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は2.09であった。
【0040】
得られた硫酸銅水溶液(3)は硫酸銅の濃度が22.9重量%、pHが1.94、モル比(MCuP)/(MSP)が0.972であり、ほとんどフリー硫酸のない硫酸銅溶液であった。
(実施例4)
硫酸銅水溶液(4)の製造
容器1としての磁性蒸発皿(形状:平皿、サイズ:φ15mm×41mm)に最大片2mm以下に粉砕した銅箔30gと濃度65重量%の硫酸25mLを投入した。この時、硫酸3の液量は少ないので容器底には溜まらず、銅箔に付着している状態である。
【0041】
次に、容器1を40℃に設定した電気炉で8時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水250mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(4)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は2.12であった。
【0042】
得られた硫酸銅水溶液(4)は硫酸銅の濃度が23.0重量%、pHが1.43、モル比(MCuP)/(MSP)が0.989であり、ほとんどフリー硫酸のない硫酸銅溶液であった。
(実施例5)
硫酸銅水溶液(5)の製造
PP製の容器1(形状:角形、サイズ:195mm×133mm×40mm)に最大片2mm以下に粉砕した銅箔40gと濃度10重量%の硫酸200mLを投入した。この時、銅箔は液に完全に浸かっている状態である。
【0043】
次に、容器1を100℃に設定した乾燥機で16時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水160mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(5)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は3.23であった。
【0044】
得られた硫酸銅水溶液(5)は硫酸銅の濃度が28.7重量%、pHが2.50、モル比(MCuP)/(MSP)が0.991であり、ほとんどフリー硫酸のない硫酸銅溶液であった。
(実施例6)
硫酸銅水溶液(6)の製造
容器1としてのガラス製の500mLビーカー(PYREX社製、外径×高さ:90×124mm)に最大片2mm以下に粉砕した銅箔30gと濃度65重量%の硫酸25mLを投入した。この時、硫酸3の液量は少ないので容器底には溜まらず、銅箔に付着している状態である。
【0045】
次に、容器1を100℃に設定した乾燥機で16時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水200mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(6)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は2.12であった。
【0046】
得られた硫酸銅水溶液(6)は硫酸銅の濃度が26.0重量%、pHが1.41、モル比(MCuP)/(MSP)が0.974であり、フリー硫酸の少ない硫酸銅溶液を得ることができた。
(実施例7)
硫酸銅水溶液(7)の製造
PP製の容器1(形状:角形、サイズ:195mm×133mm×40mm)に最大片2mm以下に粉砕した銅箔22gと濃度10重量%の硫酸200mLを投入した。この時、銅箔は液に完全に浸かっている状態である。
【0047】
次に、容器1を100℃に設定した乾燥機で16時間静置して、略完全に乾燥させた。残留銅箔の表面に硫酸銅が析出しているので、水160mLを入れたビーカー中で10分間撹拌しながら溶かし、Advantec社製5種Cのろ紙でろ過をして硫酸銅水溶液(7)を製造した。この時、反応に用いた銅材(銅箔)2と硫酸3のモル比(MCu/Ms)は1.78であった。
【0048】
得られた硫酸銅水溶液(7)は硫酸銅の濃度が26重量%、pHが0.92、モル比(MCuP)/(MSP)が0.897であり、少しフリー硫酸が残っていたが、硫酸銅溶液を得ることができた。
【符号の説明】
【0049】
1 容器
2 銅材
3 硫酸
図1
図2
図3