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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010955
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】酸性土壌中への地下構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
E02D29/045 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020111776
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】593225161
【氏名又は名称】米倉 亜州夫
(71)【出願人】
【識別番号】000190596
【氏名又は名称】新居 敏春
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】米倉 亜州夫
(72)【発明者】
【氏名】新居 敏春
(72)【発明者】
【氏名】廣中 哲也
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147AA00
2D147FB00
(57)【要約】
【課題】酸性土壌の地盤中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物を構築することが可能であると共に、優れた施工性で当該地下構造物を構築することが可能な酸性土壌中への地下構造物の施工方法を提供する。
【解決手段】酸性土壌の地盤2を掘削し、地盤中に鉄筋コンクリート製の地下構造物を構築する際に、酸性土壌の地盤に面する地下構造物の部位を形成するための地下構造物構築用の外回り型枠9の内面9aに、耐酸性モルタルの吹き付けによる連続的な継ぎ目のない耐酸性層8を形成するようにした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性土壌の地盤を掘削し、該地盤中に鉄筋コンクリート製の地下構造物を構築する際に、
酸性土壌の上記地盤に面する上記地下構造物の部位に、耐酸性モルタルの吹き付けによる連続的な継ぎ目のない耐酸性層を形成するようにしたことを特徴とする酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【請求項2】
酸性土壌の前記地盤を掘削して、構築予定の前記地下構造物を取り囲む大きさの施工空間を形成する掘削工程と、
上記施工空間に、酸性土壌の上記地盤に面して、地下構造物構築用の外回り型枠を設置する型枠工程と、
酸性土壌から遮蔽される上記外回り型枠の内面を吹き付け面として、前記耐酸性モルタルを吹き付けて継ぎ目のない連続的な前記耐酸性層を形成する吹き付け工程と、
上記外回り型枠の内面側で、鉄筋の配筋と、追加の地下構造物構築用の型枠の設置とを行い、上記耐酸性層に付着させてコンクリートを打設して上記地下構造物を構築する構築工程と、
上記外回り型枠を上記地下構造物から脱型する脱型工程と、
上記耐酸性層を有する上記地下構造物の周囲の埋め戻しを行う埋め戻し工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【請求項3】
酸性土壌の前記地盤を掘削して、構築予定の前記地下構造物を取り囲む大きさの施工空間を形成する掘削工程と、
上記施工空間で、鉄筋の配筋と、外回り型枠を含む地下構造物構築用の型枠の設置とを行う型枠工程と、
上記施工空間で、コンクリートを打設して上記地下構造物を構築する構築工程と、
上記地下構造物構築用の型枠のうち、少なくとも上記外回り型枠を脱型する脱型工程と、
酸性土壌の上記地盤に面する上記地下構造物の部位を吹き付け面として、前記耐酸性モルタルを吹き付けて継ぎ目のない連続的な前記耐酸性層を形成する吹き付け工程と、
上記耐酸性層を有する上記地下構造物の周囲の埋め戻しを行う埋め戻し工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【請求項4】
酸性土壌の前記地盤を掘削して、構築予定の前記地下構造物を取り囲む大きさの施工空間を形成する掘削工程と、
上記施工空間に、酸性土壌の上記地盤に面して、地下構造物構築用の外回り捨て型枠を設置する型枠工程と、
酸性土壌から遮蔽される上記外回り捨て型枠の内面を吹き付け面として、前記耐酸性モルタルを吹き付けて継ぎ目のない連続的な前記耐酸性層を形成する吹き付け工程と、
上記外回り捨て型枠の内面側で、鉄筋の配筋と、追加の地下構造物構築用の型枠の設置とを行い、上記耐酸性層に付着させてコンクリートを打設して上記地下構造物を構築する構築工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載の酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【請求項5】
前記掘削工程の後であって前記型枠工程の前に、前記施工空間の前記地盤上に、前記地下構造物の捨てコンクリートを耐酸性コンクリートで構築し、該捨てコンクリート上に前記外回り型枠または前記外回り捨て型枠を設置することを特徴とする請求項2~4いずれかの項に記載の酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【請求項6】
前記耐酸性モルタルは、ポルトランドセメント又は高炉セメント40超~50質量%と、ポゾラン反応性を有して初期強度を発現する混和材であるシリカフューム10~30質量%と、潜在水硬性を有して中長期強度を発現する混和材である高炉スラグ微粉末20~25質量%とからなり、前記ポルトランドセメント又は高炉セメントと、前記初期強度発現性を有するシリカフュームと、前記中長期強度発現性を有する高炉スラグ微粉末とで100質量%となる耐酸性セメント組成物で調製されることを特徴とする請求項1~5いずれかの項に記載の酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【請求項7】
前記耐酸性モルタルは、ポルトランドセメント又は高炉セメント40超~50質量%と、ポゾラン反応性を有して初期強度を発現する混和材であるシリカフューム10~30質量%と、潜在水硬性を有して中長期強度を発現する混和材である高炉スラグ微粉末20~25質量%と、前記ポルトランドセメント又は高炉セメントの質量に対して0.1~2質量%添加する、高性能減水剤や流動化剤などの混和剤とからなり、前記ポルトランドセメント又は高炉セメントと、前記初期強度発現性を有するシリカフュームと、前記中長期強度発現性を有する高炉スラグ微粉末と、前記混和剤とで100質量%となる耐酸性セメント組成物で調製されることを特徴とする請求項1~5いずれかの項に記載の酸性土壌中への地下構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性土壌の地盤中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物を構築することが可能であると共に、優れた施工性で当該地下構造物を構築することが可能な酸性土壌中への地下構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の地盤では、生活排水等から硫酸イオンが地下水に流入し、硫酸塩還元細菌や硫黄酸化細菌などによる生物化学的な代謝によって硫化水素が生成され、生成された硫化水素から硫酸が生じて、強酸性を示す場合がある。
【0003】
雨は、空気中の二酸化硫黄や窒素酸化物、炭化水素、メタン、一酸化炭素等を吸収して、薄い酸性の水となって地上に降り注ぐ。雨水自体は弱酸性であるが、これに含まれる水素イオンが地中に蓄積され、地盤は酸性化する。
【0004】
黄鉄鉱等を多く含む地盤を掘削すると、地下水が酸性化することがある。これは、硫化物を含む岩石が酸素と接触することで酸化し、地下水に溶出した結果生じるもので、温泉地や酸性岩盤地帯などでは、かなりpHの低い強酸性を示す。
【0005】
一般的なセメント系材料は、硫酸等の酸性によって劣化し易く、短時間で腐食が進行する。例えば、鉄筋コンクリート製の地下構造物を強酸性土中に構築すると、強酸性に晒されるコンクリート表層部のセメント硬化体が酸と反応することで脆弱化し、結合力を喪失して骨材とともに欠落していく。これが繰り返されることにより、コンクリートはやせ細り、耐力が低下する。
【0006】
このような酸性土壌の地盤では、地下構造物を、耐酸性コンクリートで構築することが望ましい。しかし、耐酸性コンクリートは、耐酸性を奏する混和材料(シリカフュームや高炉スラグ粉末等)のほか、ワーカビリティを確保できるように各種の混和材料を使用する必要があり、普通コンクリートよりも高価である。
【0007】
酸性土壌を考慮した構造物の施工に関し、特許文献1及び2が知られている。特許文献1の「耐酸性砂防ダムの構築方法及び基礎ブロック」は、構築するダムの表面側となる部分に、レジンコンクリート製の基礎ブロックを横方向に連結するとともに、該基礎ブロックを裏面側で支持部材により支持して型枠とし、該型枠内に前記基礎ブロックの上端縁又はその下位迄現場打ちコンクリートを打設して一段目のダムを形成し、その後前記と同様の手段により、二段目、三段目のダムを順次形成して構築するようにしている。
【0008】
特許文献2の「防食埋設型枠」は、型枠本体がメタクリル樹脂系レジンコンクリート、ウレタン樹脂系レジンコンクリート、エポキシ樹脂系レジンコンクリート、ビニルエステル樹脂系レジンコンクリート、エポキシ樹脂系レジンコンクリート又はビニルエステル樹脂系レジンコンクリートのいずれかで成形され、この型枠本体の内面にコンクリートを定着させる定着手段が設けられ、型枠本体に、内部のコンクリートを貫通する透明部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-338014号公報
【特許文献2】特開2000-17636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2ではいずれも、酸性土壌対策として、レジンコンクリート製の型枠を用い、現場打ちコンクリートやコンクリートを打設する型枠を、特許文献1では、ブロックをつなぐこととし、特許文献2では、いわゆるプレキャスト製の型枠本体をつなぐこととしている。
【0011】
このようにブロックやプレキャスト製の型枠本体をつないで型枠を形成する場合、ブロック同士の間や型枠本体同士の間には継ぎ目となる隙間が生じてしまい、この隙間を通じて酸性土壌から酸性の地下水が型枠の内側へ浸透することを防ぐことはできない。このため、型枠に打設されたコンクリートが酸性分に晒されて劣化してしまうという課題があった。
【0012】
また、レジンコンクリート製のブロックやプレキャスト製の型枠本体は、一般に用いられる板状の型枠に比して相当の重量物であり、構築予定の構造物全体を包囲して酸性土壌から遮蔽するように多数個を配列したり積み上げることは、多大な労力と時間を要し、施工性が良くなかった。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、酸性土壌の地盤中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物を構築することが可能であると共に、優れた施工性で当該地下構造物を構築することが可能な酸性土壌中への地下構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法は、酸性土壌の地盤を掘削し、該地盤中に鉄筋コンクリート製の地下構造物を構築する際に、酸性土壌の上記地盤に面する上記地下構造物の部位に、耐酸性モルタルの吹き付けによる連続的な継ぎ目のない耐酸性層を形成するようにしたことを特徴とする。
【0015】
酸性土壌の前記地盤を掘削して、構築予定の前記地下構造物を取り囲む大きさの施工空間を形成する掘削工程と、上記施工空間に、酸性土壌の上記地盤に面して、地下構造物構築用の外回り型枠を設置する型枠工程と、酸性土壌から遮蔽される上記外回り型枠の内面を吹き付け面として、前記耐酸性モルタルを吹き付けて継ぎ目のない連続的な前記耐酸性層を形成する吹き付け工程と、上記外回り型枠の内面側で、鉄筋の配筋と、追加の地下構造物構築用の型枠の設置とを行い、上記耐酸性層に付着させてコンクリートを打設して上記地下構造物を構築する構築工程と、上記外回り型枠を上記地下構造物から脱型する脱型工程と、上記耐酸性層を有する上記地下構造物の周囲の埋め戻しを行う埋め戻し工程とを含むことを特徴とする(第1実施形態)。
【0016】
酸性土壌の前記地盤を掘削して、構築予定の前記地下構造物を取り囲む大きさの施工空間を形成する掘削工程と、上記施工空間で、鉄筋の配筋と、外回り型枠を含む地下構造物構築用の型枠の設置とを行う型枠工程と、上記施工空間で、コンクリートを打設して上記地下構造物を構築する構築工程と、上記地下構造物構築用の型枠のうち、少なくとも上記外回り型枠を脱型する脱型工程と、酸性土壌の上記地盤に面する上記地下構造物の部位を吹き付け面として、前記耐酸性モルタルを吹き付けて継ぎ目のない連続的な前記耐酸性層を形成する吹き付け工程と、上記耐酸性層を有する上記地下構造物の周囲の埋め戻しを行う埋め戻し工程とを含むことを特徴とする(第2実施形態)。
【0017】
酸性土壌の前記地盤を掘削して、構築予定の前記地下構造物を取り囲む大きさの施工空間を形成する掘削工程と、上記施工空間に、酸性土壌の上記地盤に面して、地下構造物構築用の外回り捨て型枠を設置する型枠工程と、酸性土壌から遮蔽される上記外回り捨て型枠の内面を吹き付け面として、前記耐酸性モルタルを吹き付けて継ぎ目のない連続的な前記耐酸性層を形成する吹き付け工程と、上記外回り捨て型枠の内面側で、鉄筋の配筋と、追加の地下構造物構築用の型枠の設置とを行い、上記耐酸性層に付着させてコンクリートを打設して上記地下構造物を構築する構築工程とを含むことを特徴とする(第3実施形態)。
【0018】
前記掘削工程の後であって前記型枠工程の前に、前記施工空間の前記地盤上に、前記地下構造物の捨てコンクリートを耐酸性コンクリートで構築し、該捨てコンクリート上に前記外回り型枠または前記外回り捨て型枠を設置することを特徴とする。
【0019】
前記耐酸性モルタルは、ポルトランドセメント又は高炉セメント40超~50質量%と、ポゾラン反応性を有して初期強度を発現する混和材であるシリカフューム10~30質量%と、潜在水硬性を有して中長期強度を発現する混和材である高炉スラグ微粉末20~25質量%とからなり、前記ポルトランドセメント又は高炉セメントと、前記初期強度発現性を有するシリカフュームと、前記中長期強度発現性を有する高炉スラグ微粉末とで100質量%となる耐酸性セメント組成物で調製されることを特徴とする。
【0020】
前記耐酸性モルタルは、ポルトランドセメント又は高炉セメント40超~50質量%と、ポゾラン反応性を有して初期強度を発現する混和材であるシリカフューム10~30質量%と、潜在水硬性を有して中長期強度を発現する混和材である高炉スラグ微粉末20~25質量%と、前記ポルトランドセメント又は高炉セメントの質量に対して0.1~2質量%添加する、高性能減水剤や流動化剤などの混和剤とからなり、前記ポルトランドセメント又は高炉セメントと、前記初期強度発現性を有するシリカフュームと、前記中長期強度発現性を有する高炉スラグ微粉末と、前記混和剤とで100質量%となる耐酸性セメント組成物で調製されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法にあっては、酸性土壌の地盤中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物を構築することができると共に、耐酸性モルタルの吹き付けによる優れた施工性で当該地下構造物を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法によって、酸性土壌の地盤中に構築された鉄筋コンクリート製の地下構造物を説明する説明図である。
図2】本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の第1実施形態の掘削工程を示す説明図である。
図3図2に示した掘削工程に続き、捨てコンクリートを構築した様子を示す説明図である。
図4図3に示した捨てコンクリートの施工に続く、型枠工程を示す説明図である。
図5図4に示した型枠工程に続く、吹き付け工程を示す説明図である。
図6図5に示した吹き付け工程に続く、構築工程を示す説明図である。
図7図6に示した吹き付け工程に続く、脱型工程と埋め戻し工程を示す説明図である。
図8】本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の第2実施形態の掘削工程~脱型工程の完了後を示す説明図である。
図9図8に示した脱型工程の完了後に続く、吹き付け工程の完了と埋め戻し工程を示す説明図である。
図10】本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の第3実施形態の掘削工程~吹き付け工程の完了後を示す説明図である。
図11図10に示した吹き付け工程の完了後に続く、構築工程の完了を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には、本発明にかかる施工方法によって、酸性土壌の地盤中に構築された鉄筋コンクリート製の地下構造物が示されていて、図1(A)は、側断面図、図1(B)は、図1(A)中、A-A線矢視断面図である。
【0024】
地下構造物1は、酸性土壌の地盤2を掘削して形成された施工空間3内に構築される。地下構造物1は、施工空間3下の掘削作業で形成された地盤上に設けられる捨てコンクリート4と、捨てコンクリート4上に重ねて構築される耐圧版5と、捨てコンクリート4の上に、耐圧版5周りに配列して設けられる複数の柱(図示せず)及び柱間に設けられる外壁6と、向かい合う柱同士の間に架設される複数の梁(図示せず)及び梁上に設けられて外壁6で取り囲んだ内方を封鎖する地上床7とから構成される。地下構造物1は、普通コンクリートを現場打ちすることで構築される。
【0025】
酸性土壌の地盤2に面する外壁6外面及び柱外面を、以下、地下構造物1の外回りと称する。地下構造物1の外回り以外の酸性土壌に面しない外壁6内面及び柱内面を、以下、地下構造物1の内方と称する。
【0026】
地下構造物1の外回りには、当該地下構造物1を隙間なく取り囲んで、周囲の酸性土壌から遮蔽する耐酸性層8が連続的に継ぎ目なく形成される。耐酸性層8は、耐酸性モルタルの吹き付けにより、地下構造物1の外回りに連続的に継ぎ目なく形成される。
【0027】
捨てコンクリート4は、耐酸性コンクリートを現場打ちして構築される。酸性土壌の層が浅く、捨てコンクリート4に酸性土壌の影響がない場合には、捨てコンクリート4は、普通コンクリートで構築しても良い。
【0028】
耐酸性モルタル及び耐酸性コンクリートは、
(1)ポルトランドセメント又は高炉セメント40超~50質量%と、ポゾラン反応性を有して初期強度を発現する混和材であるシリカフューム10~30質量%と、潜在水硬性を有して中長期強度を発現する混和材である高炉スラグ微粉末20~25質量%とからなり、ポルトランドセメント又は高炉セメントと、初期強度発現性を有するシリカフュームと、中長期強度発現性を有する高炉スラグ微粉末とで100質量%となる耐酸性セメント組成物に砂及び/又は骨材を加えて調製すること、または、
(2)ポルトランドセメント又は高炉セメント40超~50質量%と、ポゾラン反応性を有して初期強度を発現する混和材であるシリカフューム10~30質量%と、潜在水硬性を有して中長期強度を発現する混和材である高炉スラグ微粉末20~25質量%と、ポルトランドセメント又は高炉セメントの質量に対して0.1~2質量%添加する、高性能減水剤や流動化剤などの混和剤とからなり、ポルトランドセメント又は高炉セメントと、初期強度発現性を有するシリカフュームと、中長期強度発現性を有する高炉スラグ微粉末と、混和剤とで100質量%となる耐酸性セメント組成物に砂及び/又は骨材を加えて調製することが望ましい。
【0029】
これら(1)や(2)の耐酸性セメント組成物は、安価であると共に、リバウンドや粉塵の発生が少なく、吹き付け施工に好適である。
【0030】
これら耐酸性セメント組成物では、シリカフュームや高炉スラグ微粉末が、ポゾラン反応や潜在水硬性の反応により、水とセメントの水和反応で生成される水酸化カルシウムを消費し、これにより、硫酸との反応で生じる二水石膏の量を減少させて、耐酸性を構築する。
【0031】
しかしながら、耐酸性モルタル及び耐酸性コンクリートは、これらセメント組成物に限らず、その他のセメント組成物で調製しても良いことはもちろんである。
【0032】
(第1実施形態)図2図7には、第1実施形態にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の手順が順次に示されている。これら図では、施工部分の一部のみを示している。
【0033】
酸性土壌の地盤2中に鉄筋コンクリート製の地下構造物1を構築するに際しては、図2に示すように、まず掘削工程を実施する。
【0034】
酸性土壌の地盤2を掘削し、構築予定の地下構造物1を取り囲む大きさの施工空間3を形成する。掘削工程では、後述する型枠工程を効率よく行うための作業スペースを、最小限の掘削土量で確保するために、下方から上方へ広がりを持つ法面2aを形成するようにする。
【0035】
次に、図3に示すように、掘削工程の後であって、その後に続く型枠工程の前に、施工空間3下の掘削作業で形成された地盤上に、地下構造物1の捨てコンクリート4を耐酸性コンクリートで構築する。
【0036】
次に、図4に示すように、捨てコンクリート4の構築後、型枠工程を実施する。施工空間3で、酸性土壌の地盤2に面して、捨てコンクリート4上に、地下構造物構築用の外回り型枠9を設置する。
【0037】
地下構造物構築用の外回り型枠9とは、酸性土壌の地盤2に面する外壁6外面及び柱外面を成形する壁外型枠及び柱外型枠を言う。外壁6及び柱は、これら壁外型枠及び柱外型枠に、壁内型枠及び柱内型枠(以下、地下構造物構築用の内回り型枠10と称する。図6参照)を組み合わせることで、コンクリート打設用の型枠が構成される。これら型枠としてはすべて、一般に用いられる木製や鋼製の板状型枠が用いられる。
【0038】
外回り型枠9は、捨てコンクリート4上の位置決め材15で位置決めされた位置に、周囲の地盤2の適宜位置に仮設された支持材11を介して、捨てコンクリート4上に立てた状態で支持される。第1実施形態では後述するように、地下構造物構築用の外回り型枠9を含め、すべての型枠が仮設材として、追って脱型される。
【0039】
次に、図5に示すように、耐酸性モルタルの吹き付け工程を実施する。耐酸性モルタルは、酸性土壌の地盤2に面する地下構造物1の部位、すなわち地下構造物1の外回り(外壁外面及び柱外面)を吹き付け面として、この吹き付け面に吹き付けられて地下構造物1の外回りに継ぎ目のない連続的な耐酸性層8を形成するために施される。
【0040】
第1実施形態では、構築予定の地下構造物1が未完成であるため、当該地下構造物1の外回りに代えて、地下構造物1の外回りを成形する地下構造物構築用の外回り型枠9の内面9aであって、かつ酸性土壌から遮蔽される当該外回り型枠9の内面9aを吹き付け面として、当該吹き付け面に耐酸性モルタルを吹き付け、継ぎ目のない連続的な耐酸性層8を形成する。吹き付け施工自体は、一般周知の方法によって行えばよい。
【0041】
吹き付けられた耐酸性モルタルで形成された耐酸性層8の表面には不陸があり、そのままでも後打ちされる普通コンクリートとの密着性が良いが、さらに両者の密着性を高めるために、後打ちされる普通コンクリートに、従ってまた地下構造物1に強固に定着させるアンカ12を配設しておくことが好ましい。
【0042】
例えば、アンカ12としては鉄筋等を用い、吹き付けられた耐酸性モルタルがある程度硬化した後に、アンカ12を差し込むようにする。
【0043】
このとき、差し込むアンカ12の先端と外回り型枠9の内面9a(吹き付け面)との間に、必要な耐酸性作用が得られるだけの耐酸性モルタルの厚みが確保されるようにすることが望ましい。
【0044】
耐酸性モルタルについては、急結剤を用いて施工しても良いことはもちろんである。急結剤を用いないときには、温度応力や乾燥収縮によるひび割れを防止するため、吹き付けの数時間後の凝結が始まる頃合いを目安に、水撒きを施して、湿潤養生を5日以上行うことが好ましい。急結剤を用いた場合でも、ひび割れの防止や強度発現の促進のため、同様の養生を行うことが望ましい。
【0045】
耐酸性層が硬化した後、図6に示すように、地下構造物1の構築工程を実施する。地下構造物1は、外回り型枠9の内面9a側に、地下構造物1の鉄筋を配筋し、この鉄筋を間に挟むようにして、地下構造物1の内方を成形する追加の地下構造物構築用である内回り型枠10を設置し、外回り型枠9と内回り型枠10の間に、地下構造物1を構成する普通コンクリートを打設する。鉄筋の配筋作業は、耐酸性モルタルの養生中に行ってもよい。
【0046】
普通コンクリートは、外回り型枠9の内面9aの耐酸性層8に付着し、耐酸性層8は地下構造物1の普通コンクリートと一体化される。アンカ12を用いれば、耐酸性層8と地下構造物1の一体化が増強されるので望ましい。
【0047】
普通コンクリートの打設により、耐酸性層8の耐酸性モルタルの湿潤養生も促進される。
【0048】
地下構造物1の普通コンクリートの養生・硬化が完了した後、図7に示すように、脱型工程を実施する。
【0049】
この脱型工程では、外回り型枠9を含め、不要となった型枠を地下構造物1から脱型する。脱型することで、耐酸性層8が、酸性土壌の地盤2に面して露出される。
【0050】
引き続き、耐酸性層8を有する地下構造物1の周囲の埋め戻し(図中、矢印Bで示す)を行う埋め戻し工程を実施する。
【0051】
捨てコンクリート4上の、型枠工程の作業スペースとした耐酸性層8と法面2aとの間のスペースに埋め戻しする埋め戻し土は、酸性土ではないことが望ましい。
【0052】
第1実施形態にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法では、酸性土壌の地盤2に面する地下構造物1の外回りを成形する外回り型枠9の内面9aをモルタルの吹き付け面とし、吹き付け面に耐酸性モルタルを吹き付けて地下構造物1に継ぎ目のない連続的な耐酸性層8を形成するようにしたので、酸性土壌の地盤2中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物1を構築することができると共に、ブロックや型枠本体を並べて施工する背景技術に比して、耐酸性モルタルの吹き付けによって優れた施工性で当該地下構造物1を構築することができる。
【0053】
また、外回り型枠9には、耐酸性層8を地下構造物1に定着させるアンカ12が設けられるので、吹き付け形成した耐酸性層8と地下構造物1とを強固に一体化することができる。
【0054】
(第2実施形態)図8及び図9には、第2実施形態にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の手順が順次に示されている。これら図でも、施工部分の一部のみが示されている。
【0055】
第2実施形態は、地下構造物1を先行して構築し、耐酸性層8をあと施工する点で、第1実施形態と異なる。
【0056】
上記掘削工程及び上記捨てコンクリート4の構築を完了した後、型枠工程を実施する。
【0057】
第2実施形態では、型枠工程は、地下構造物1の構築を予め完了できるように、施工空間3で、捨てコンクリート4上に、地下構造物1の鉄筋を配筋し、この鉄筋を間に挟むようにして、地下構造物構築用の外回り型枠9と内回り型枠10の双方を設置する。
【0058】
第2実施形態では、内回り・外回り型枠9,10の双方が同時に使用されるので、地盤2からの支持材11は使用しなくても良い。第2実施形態でも、内回り・外回り型枠9,10を含め、すべての型枠が仮設材として、追って脱型される。
【0059】
次に、地下構造物の構築工程を実施する。第2実施形態では、組み立てた内回り・外回り型枠9,10の間に普通コンクリートを打設して、施工空間3に地下構造物1を先行して構築する。
【0060】
次に、地下構造物構築用の型枠のうち、少なくとも外回り型枠9を脱型する脱型工程を実施する。これにより、図8に示すように、地下構造物1の外回りが、酸性土壌の地盤2に面して露出される。内回り型枠10も、相前後して適宜に脱型される。
【0061】
次に、図9に示すように、耐酸性モルタルの吹き付け工程を実施する。耐酸性モルタルは、第1実施形態と同様にして、酸性土壌の地盤2に面する地下構造物1の部位、すなわち地下構造物1の外回り(外壁外面及び柱外面)を吹き付け面として、この吹き付け面に吹き付けられて地下構造物1の外回りに連続的な継ぎ目のない耐酸性層8を形成する。吹き付けられる耐酸性モルタルは、地下構造物1の外回りで普通コンクリートに付着し、耐酸性層8は当該地下構造物1と一体化される。
【0062】
地下構造物1の外回りには、吹き付けられた耐酸性モルタルで形成された耐酸性層8を普通コンクリートに、従ってまた地下構造物1に強固に定着させるアンカ12を配設しておくことが好ましい。アンカ12を用いれば、耐酸性層8と地下構造物1の一体化が増強されるので望ましい。
【0063】
地下構造物1の普通コンクリートの養生・硬化、並びに耐酸性層8の養生・硬化が完了した後、第1実施形態と同様に、耐酸性層8を有する地下構造物1の周囲の埋め戻しBを行う埋め戻し工程を実施する。
【0064】
第2実施形態は、地下構造物1の構築を先行して完了し、その後に吹き付け工程を実施するため、地下構造物1周りに確保すべき施工空間3が第1実施形態の場合よりも大きくなり、掘削土量が増加し、また埋め戻し土の量が増えるけれども、第1実施形態とは異なり、吹き付け工程を外壁処理程度で済ませることができて、通常の施工手順に従って容易かつ効率よく施工することができる。
【0065】
第2実施形態にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法では、酸性土壌の地盤2に面する地下構造物1の外回りをモルタルの吹き付け面とし、吹き付け面に耐酸性モルタルを吹き付けて地下構造物1に連続的な継ぎ目のない耐酸性層8を形成するようにしたので、酸性土壌の地盤2中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物1を構築することができると共に、ブロックや型枠本体を並べて施工する背景技術に比して、耐酸性モルタルの吹き付けによって優れた施工性で当該地下構造物1を構築することができる。
【0066】
第2実施形態についても、急結剤を用いて施工しても良いことはもちろんである。
【0067】
(第3実施形態)図10及び図11には、第3実施形態にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法の手順が順次に示されている。これら図でも、施工部分の一部のみが示されている。
【0068】
第3実施形態は、地下構造物構築用の外回り型枠が捨て型枠13である点で、第1実施形態と異なる。
【0069】
図10に示すように、外回り捨て型枠13を用いる場合、構築予定の地下構造物1と周囲の地盤2との間に脱型工程を見越した作業スペースを確保する必要がない。従って、施工空間3を形成する掘削工程では、酸性土壌の地盤2は、外回り捨て型枠13を設置する位置でほぼ垂直に掘削され、これにより構築予定の地下構造物1を取り囲む大きさの施工空間3が形成される。
【0070】
掘削深度が深い場合には、地盤2の崩落を防ぐように、所定の傾斜のある法面となるように掘削することが好ましい。
【0071】
次に、図10に示すように、捨てコンクリート4の構築後、外回り捨て型枠13を設置する型枠工程を実施する。
【0072】
外回り捨て型枠13は、施工空間3で、酸性土壌の地盤2に面して、好ましくは地盤2に当て付けるようにして、捨てコンクリート4上に設置される。
【0073】
外回り捨て型枠13は、捨てコンクリート4上の位置決め材15で位置決めされた位置に、周囲の地盤2の適宜位置に埋設した型枠転倒防止材14を介して、捨てコンクリート4上に立てた状態で支持される。
【0074】
次に、図10に示すように、第1実施形態と同様にして、耐酸性モルタルの吹き付け工程を実施する。
【0075】
耐酸性モルタルは、酸性土壌の地盤2に面する地下構造物1の部位、すなわち地下構造物1の外回り(外壁外面及び柱外面)を吹き付け面として、この吹き付け面に吹き付けられて地下構造物1の外回りに継ぎ目のない連続的な耐酸性層8を形成するために施される。
【0076】
第3実施形態でも、第1実施形態と同様に、構築予定の地下構造物1が未完成であるため、当該地下構造物1の外回りに代えて、地下構造物1の外回りを成形する地下構造物構築用の外回り捨て型枠13の内面13aであって、かつ酸性土壌から遮蔽される当該外回り型枠13の内面13aを吹き付け面として、当該吹き付け面に耐酸性モルタルを吹き付け、継ぎ目のない連続的な耐酸性層8を形成する。
【0077】
吹き付けられた耐酸性モルタルで形成された耐酸性層8の表面には不陸があり、そのままでも後打ちされる普通コンクリートとの密着性が良いが、さらに両者の密着性を高めるために、後打ちされる普通コンクリートに、従ってまた地下構造物1に強固に定着させるアンカ12を配設しておくことが好ましい。
【0078】
この場合も、吹き付けられた耐酸性モルタルがある程度硬化した後に、アンカ12を差し込むようにし、その際、差し込むアンカ12の先端と外回り捨て型枠13の内面13a(吹き付け面)との間に、必要な耐酸性作用が得られるだけの耐酸性モルタルの厚みが確保されるようにすることが望ましい。
【0079】
外回り捨て型枠13には、吹き付けられた耐酸性モルタルで形成された耐酸性層8を、後打ちされる普通コンクリートに、従ってまた地下構造物1に強固に定着させるアンカ12を配設しておくことが好ましい。
【0080】
その後は、耐酸性層8が硬化した後、図11に示すように、第1実施形態と同様に、地下構造物1の構築工程を実施する。
【0081】
地下構造物1は、外回り捨て型枠13の内面13a側に、地下構造物1の内方を成形する追加の地下構造物構築用である内回り型枠10を設置し、これら型枠10,13間に地下構造物1の鉄筋を配筋し、外回り捨て型枠13と内回り型枠10の間に、地下構造物1を構成する普通コンクリートを打設する。
【0082】
普通コンクリートは、外回り捨て型枠13の内面13aの耐酸性層8に付着し、耐酸性層8は地下構造物1の普通コンクリートと一体化される。アンカ12を用いれば、耐酸性層8と地下構造物1の一体化が増強されるので望ましい。
【0083】
以上により、地下構造物1の施工が完了する。第3実施形態では、外回り捨て型枠13を用いているので、当該外回り捨て型枠13の脱型が不要であると共に、埋め戻し工程も不要である。
【0084】
このため、脱型に要する作業を省くことができると共に、外回り捨て型枠13が地盤2に当て付けて設けられるので、掘削土量の削減と埋め戻し作業をなくすことができ、施工性を向上することができる。
【0085】
第3実施形態にかかる酸性土壌中への地下構造物の施工方法では、酸性土壌の地盤2に面する地下構造物1の外回りを成形する外回り捨て型枠13の内面13aをモルタルの吹き付け面とし、吹き付け面に耐酸性モルタルを吹き付けて地下構造物1に継ぎ目のない連続的な耐酸性層8を形成するようにしたので、酸性土壌の地盤2中に、酸性土壌から完全に遮蔽した地下構造物1を構築することができると共に、ブロックや型枠本体を並べて施工する背景技術に比して、耐酸性モルタルの吹き付けによって優れた施工性で当該地下構造物1を構築することができる。
【0086】
また、耐酸性層8を地下構造物1に定着させるアンカ12を設けることで、吹き付け形成した耐酸性層8と地下構造物1を強固に一体化することができる。
【0087】
なお、内回り型枠10は、地下構造物1の普通コンクリートの養生・硬化が完了した後、脱型・撤去される。
【0088】
第3実施形態についても、急結剤を用いて施工しても良いことはもちろんである。
【0089】
上記第3実施形態の説明では、外回り捨て型枠13を用いることとしたが、酸性土壌を遮蔽できかつ耐酸性モルタルの吹き付けを行うことができる部材であれば、防水シートなどを用いても良いことはもちろんである。
【0090】
以上説明した各実施形態の耐酸性モルタルに、耐酸性コンクリートが含まれることはもちろんである。この場合の耐酸性コンクリートは、粗骨材の粒径が小さいことが望ましく、その配合はリバウンドを抑えられるものであることが好ましい。
【0091】
第1実施形態のように、外回り型枠9の内面9aを吹き付け面にする場合には、外回り型枠9を耐酸性層8から容易に脱型できるように、当該内面9aに剥離剤等を適用してもよい。
【0092】
上記の実施形態では、地下構造物1として、耐圧版5を備えるべた基礎構造の場合について説明したが、地下スラブを備える杭基礎構造であってもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0093】
1 鉄筋コンクリート製の地下構造物
2 酸性土壌の地盤
3 施工空間
4 捨てコンクリート
8 耐酸性層
9 地下構造物構築用の外回り型枠
9a 外回り型枠の内面
10 地下構造物構築用の内型枠
12 アンカ
13 地下構造物構築用の外回り捨て型枠
13a 外回り捨て型枠の内面
B 埋め戻し
図1
図2
図3
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図5
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図11