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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109558
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】光偏向装置及び画像投射装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20220721BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20220721BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
H04N5/74 A
H04N5/74 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004947
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 司
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
5C058
【Fターム(参考)】
2H045AB01
2H045AB02
2H045AB81
2H045BA02
2H045BA12
2H045BA24
2H045DA02
2H045DA04
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD12
2H141MD13
2H141MD16
2H141MF16
2H141MG04
2H141MZ30
5C058BA25
5C058BA35
5C058EA05
5C058EA13
(57)【要約】
【課題】投射される画像に光透過板での反射光が含まれないようにすること。
【解決手段】本発明の一態様に係る光偏向装置は、揺動軸周りに反射面(121)を揺動させることで、前記反射面(121)に入射する光を偏向させる光偏向部(12)と、前記光偏向部(12)により偏向された前記光を透過させる光透過板(3)と、を有し、基準面(111)に対する前記光透過板(3)の傾き角度(θ)は、前記基準面(111)に対する前記反射面(121)の最大振れ角(α)の2倍以上である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動軸周りに反射面を揺動させることで、前記反射面に入射する光を偏向させる光偏向部と、
前記光偏向部により偏向された前記光を透過させる光透過板と、を有し、
基準面に対する前記光透過板の傾き角度は、前記基準面に対する前記反射面の最大振れ角の2倍以上である光偏向装置。
【請求項2】
前記光透過板は、前記基準面に平行な面に含まれる軸であって、前記揺動軸とは非平行な軸周りに傾いている請求項1に記載の光偏向装置。
【請求項3】
前記光偏向部は、第1軸及び前記第1軸に交差する第2軸の両方の軸周りに前記反射面を揺動させることで、前記反射面に入射する光を交差する2つの方向に偏向させ、
前記反射面の前記基準面に対する前記第1軸周りの第1最大振れ角は、前記反射面の前記基準面に対する前記第2軸周りの第2最大振れ角より大きく、
前記光透過板は、前記第2軸に沿う軸周りに傾いている請求項1又は2に記載の光偏向装置。
【請求項4】
前記光偏向部は、第1軸及び前記第1軸に交差する第2軸の両方の軸周りに前記反射面を揺動させることで、前記反射面に入射する光を交差する2つの方向に偏向させ、
前記反射面の前記基準面に対する前記第1軸周りの第1最大振れ角は、前記反射面の前記基準面に対する前記第2軸周りの第2最大振れ角より大きく、
前記光透過板は、前記第1軸に沿う軸周りに傾いている請求項1又は2に記載の光偏向装置。
【請求項5】
前記第1最大振れ角をαとし、前記第2最大振れ角をαとし、前記光透過板の前記第1軸周りの傾き角度をθとし、前記光透過板の前記第2軸周りの傾き角度をθとした場合に、以下の式で表される条件を満足する請求項3又は4に記載の光偏向装置。
|θ|=2×α+β
|θ|=2×α+β
0≦β≦90-2×α
0≦β≦90-2×α
(β及びβはそれぞれ選択角度を表し、||は絶対値を表し、α、α、θ、θ、β、βの単位は度である。)
【請求項6】
前記光は、前記光透過板を透過後に前記反射面に入射し、
前記反射面に入射する前記光が前記光透過板を透過する領域の前記基準面に対する高さは、前記光偏向部により偏向された前記光が前記光透過板を透過する領域の前記基準面に対する高さより高い請求項1乃至5の何れか1項に記載の光偏向装置。
【請求項7】
光を発する発光部と、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の光偏向装置と、を有し、
前記光を前記光偏向装置により走査させることで、被走査面上に画像を投射する画像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向装置及び画像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光部が発する光を反射面で偏向させる光偏向装置を用い、被走査面上に画像を投射する画像投射装置が知られている。
【0003】
また、被走査面に異常な像が発生することを防止するために、基準面に対する反射面の最大振れ角を基準面に対する光透過板の傾き角よりも小さくする構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6627994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、投射される画像に光透過板での反射光が含まれ、画像の品質が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、投射される画像に光透過板での反射光が含まれないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る光偏向装置は、揺動軸周りに反射面(121)を揺動させることで、前記反射面(121)に入射する光を偏向させる光偏向部(12)と、前記光偏向部(12)により偏向された前記光を透過させる光透過板(3)と、を有し、基準面(111)に対する前記光透過板(3)の傾き角度(θ)は、前記基準面(111)に対する前記反射面(121)の最大振れ角(α)の2倍以上である。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、投射される画像に光透過板での反射光が含まれないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る画像投射装置の全体構成例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る光偏向装置の構成例を示す図であり、図2(a)は上面図、図2(b)は左側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は右側面図である。
図3】実施形態に係る光偏向ユニットの構成例を示す斜視図である。
図4】実施形態に係る光偏向部の構成例を示す図である。
図5】駆動信号を説明する図であり、図5(a)は水平駆動信号例の図、図5(b)は垂直駆動信号例の図である。
図6】実施形態に係る光偏向装置のレーザ光の入射及び出射例の図である。
図7】実施形態に係る光透過板の傾きの作用を示す断面図である。
図8】比較例に係る光透過板の傾きの作用を示す断面図である。
図9】実施形態に係る光偏向部の他の第1例を示す斜視図である。
図10】実施形態に係る光偏向部の他の第2例を示す斜視図である。
図11】実施形態に係る光透過板の傾きの他の例を示す図である。
図12】入射レーザ光の高さと光透過板の傾きの組合せの第1例の図であり、図12(a)は斜視図、図12(b)は図12(a)のT-T切断線に沿う断面図である。
図13】入射レーザ光の高さと光透過板の傾きの組合せの第2例の図であり、図13(a)は斜視図、図13(b)は図13(a)のU-U切断線に沿う断面図である。
図14】入射レーザ光の高さと光透過板の傾きの組合せの第3例の図であり、図14(a)は斜視図、図14(b)は図14(a)のV-V切断線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための光偏向装置及び画像投射装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0013】
実施形態に係る光偏向装置は、揺動軸周りに反射面を揺動させることで、反射面に入射する光を偏向させる光偏向部と、該光偏向部により偏向された光を透過させる光透過板とを有するものである。
【0014】
このような光偏向装置は、例えば、被走査面上に画像を投射する画像投射装置等において、光を偏向させて被走査面上で走査させるために使用される。画像投射装置には、プロジェクタ、車両のウェルカムプロジェクタ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、車両のヘッドランプ、物体認識装置、測距装置又は眼底検査装置等が挙げられる。
【0015】
なお、車両のウェルカムプロジェクタとは、車両のドア等に設けられ、ドア開けた時にロゴ等を含む所望の画像を投射するプロジェクタをいう。また物体認識装置とは、投光した光の物体による反射光又は散乱光に基づき、物体の有無、形状又は物体までの距離を検出して認識する装置をいう。
【0016】
画像投射装置等で上記の光偏向装置を用いると、光偏向部により偏向された光のうちの一部が光透過板を透過せずに反射されて光偏向部に戻り、再び反射面で偏向される場合がある。また、再び偏向された光のうちの一部も光透過板を透過せずに反射されて光偏向部に戻り、再び反射面に偏向される場合がある。
【0017】
このような光透過板での反射光が投射画像に含まれることで、複数の画像が重なって視認される多重像やモアレ等が生じる場合がある。
【0018】
また、反射面に光を入射させる発光部を、光透過板を挟んで反射面の反対側に配置し、発光部からの光が光透過板を透過後に反射面に入射する構成にすると、入射光のうち、光透過板で反射された光が投射画像に含まれる場合がある。入射光の反射光が投射画像に含まれることで、点状の迷光等が生じる場合がある。
【0019】
光透過板は、第1面と、第1面とは反対側の第2面とを含むため、第1面及び第2面の各面での反射光により、多重像や点状の迷光が生じ得る。
【0020】
これに対し、実施形態では、基準面に対する光透過板の傾き角度を、基準面に対する反射面の最大振れ角の2倍以上にすることで、投射される画像に光透過板での2次反射光が含まれないようにする。そして、投射される画像の品質を高く確保可能にする。
【0021】
ここで、基準面とは、揺動による反射面の傾きの基準となる面をいい、且つ光透過板の傾きの基準となる面をいう。振れ角とは、揺動により反射面が基準面に対して傾く傾き角度をいう。最大振れ角とは、振れ角のうち、最大のものをいう。
【0022】
また、実施形態の用語における光の偏向とは、光の進行方向を変化させることをいう。実施形態では、反射面が光を反射することで光を偏向させる。
【0023】
以下、実施形態に係る光偏向装置を有する画像投射装置を一例として、実施形態を説明する。
【0024】
以下に示す図でX軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、実施形態に係る光偏向装置が備える光偏向部が光を偏向させて走査させる方向を示す。Y軸に沿うY方向は、実施形態に係る光偏向装置が備える光偏向部が光を偏向させて走査させる方向であって、X軸とは略直交する方向を示す。Z軸に沿うZ方向は、X軸及びY軸の両方に略直交する方向を示す。
【0025】
また、X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これらは光偏向装置及び画像投射装置の使用時における向きを制限するものではなく、光偏向装置及び画像投射装置は任意の向きで配置可能である。
【0026】
<画像投射装置100の構成例>
まず、図1及び図2を参照して、実施形態に係る画像投射装置100の全体構成、並びに画像投射装置100が有する光偏向装置20の構成について説明する。
【0027】
図1は、画像投射装置100の全体構成の一例を説明する斜視図である。また図2は、光偏向装置20の構成の一例を説明する図である。図2(a)は上面図、図2(b)は左側面図、図2(c)は正面図、図2(d)は右側面図である。
【0028】
図1に示すように、画像投射装置100は、発光部10と、光偏向装置20と、制御部30とを有する。これらは、画像投射装置100が備える筐体に設けられている。
【0029】
画像投射装置100は、制御部30の制御下で、発光部10が発するRed、Green、Bule及びIR(infrared)の各波長のレーザ光を光偏向装置20によりそれぞれX方向及びY方向に走査させ、被走査面200上にフルカラーの画像201を投射する。
【0030】
本実施形態では、一例として、Y方向は重力方向に対応し、X方向は重力方向に略直交する水平方向に対応する。光偏向装置20は、発光部10が発するRed、Green、Bule及びIRの各波長のレーザ光をそれぞれ偏向させ、被走査面200上でX方向及びY方向の2つの方向に走査させることができる。
【0031】
但し、画像投射装置100が投射する画像201は、フルカラーの画像に限定されるものではなく、単色の画像等であってもよい。単色の画像を投射する場合には、画像投射装置100は、単色のレーザ光を被走査面200上で走査させる。
【0032】
画像投射装置100がプロジェクタの場合には、被走査面200はスクリーン等に対応する。画像投射装置100がヘッドアップディスプレイの場合には、被走査面200は自動車のフロントウインドシールド等に対応する。
【0033】
また画像投射装置100がヘッドマウントディスプレイ又は眼底検査装置の場合には、被走査面200はホログラム光学素子や眼球の網膜等に対応する。画像投射装置100が車両のヘッドランプ、物体認識装置又は測距装置の場合には、空間内の仮想平面に対応する。
【0034】
発光部10は、Redのレーザ光を発するLD(Laser Diode)と、Greenのレーザ光を発するLDと、Blueのレーザ光を発するLDと、IRのレーザ光を発するLDとを有する。発光部10は、各色のLDが発するRed、Green、Blue及びIRの各波長のレーザ光を光偏向装置20に入射させる。各色のレーザ光はそれぞれ発光部が発する光の一例である。
【0035】
図1及び図2に示すように、光偏向装置20は、光偏向ユニット1と、リッド2と、光透過板3とを有する。光偏向ユニット1の+Z方向側にリッド2が設けられ、リッド2の+Z方向側に光透過板3が設けられている。
【0036】
光偏向ユニット1は、光偏向部と、パッケージ11とを含み、発光部10が発するレーザ光を偏向させる機能を有する。
【0037】
パッケージ11は、内部に光偏向部を保持する箱状部材である。パッケージ11は、アルミナセラミックスや、アルミニウム、アルミニウム合金又はステンレス等の金属材料、或いはプラスチック材料等を含んで構成されている。またパッケージ11は、FRP(Fiber Reinforced Plastics)又はFPC(Flexible printed circuits)等で構成された回路基板等を含んでいる。
【0038】
なお、光偏向部の構成及び機能については、図3及び図4を用いて別途説明する。
【0039】
リッド2は、アルミナセラミックス、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、又はプラスチック等の材料を含んで構成され、断面が四角形状の筒状部材である。リッド2は、-Z方向側の端部がパッケージ11の+Z方向側に設けられた載置面111上に接触した状態で、接着剤等により固定されている。この載置面111は、基準面の一例に対応する。
【0040】
リッド2の+Z方向側の端部は、載置面111に対して傾いた面で形成されている。リッド2は、光透過板3にこの傾いた面が接触した状態で、接着剤又は低融点ガラス溶着等により光透過板3を固定して保持している。
【0041】
光透過板3は、発光部10が発するレーザ光を透過させ、また光偏向ユニット1に含まれる光偏向部により偏向されたレーザ光を透過させる板状部材である。光透過板3は、光偏向装置20の外部から内部にレーザ光を入射させる入射窓の機能と、光偏向装置20の内部から外部にレーザ光を出射させる出射窓の機能とを併せ持っている。
【0042】
このような光透過板3は、発光部10が発する各色のレーザ光の波長に対して光透過性を有する光学ガラス、耐熱ガラス、硬質ガラス、光学プラスチック、硬質プラスチック等の材料を含んで構成されている。光透過板3の第1面と、第1面とは反対側の第2面には、入射するレーザ光の反射を防止するための反射防止膜がそれぞれ施されている。
【0043】
光透過板3が接触しているリッド2の+Z方向側の端部は、載置面111に対して傾いているため、光透過板3も載置面111に対して傾いた状態でリッド2に保持される。リッド2と光透過板3により密閉することで、光偏向ユニット1の光偏向部にゴミ又は埃等の付着や、水分や酸素の侵入等を防いでいる。
【0044】
制御部30は、発光部10に駆動電圧等の駆動信号を印加することで、発光部10が有する各色のLDの発光を制御する。また制御部30は、光偏向装置20に駆動電圧等の駆動信号を印加することで、光偏向装置20によるレーザ光の走査を制御する。
【0045】
制御部30の機能は電気回路で実現される他、機能の一部又は全部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することができる。
【0046】
<光偏向ユニット1の構成例>
次に図3及び図4を参照して、光偏向ユニット1の構成について説明する。まず、図3は光偏向ユニット1の構成の一例を説明する斜視図である。図3は、光偏向装置20におけるリッド2と、光透過板3とを取り除いた状態を表示している。
【0047】
図3に示すように、光偏向ユニット1は、パッケージ11と、光偏向部12とを有する。光偏向部12は、光偏向部12が備える反射面121がパッケージ11の中央付近に配置されるようにして、パッケージ11に保持されている。なお、光偏向ユニット1は、パッケージ11に回路を備えてもよいし、パッケージ11の下側に基板や制御回路等を備えてもよい。
【0048】
光偏向部12は、第1揺動軸A周り及び第2揺動軸B周りのそれぞれに反射面121を揺動させることで、反射面121に入射するレーザ光を偏向させる。光偏向部12は、例えば圧電素子により反射面121を揺動させるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等である。ここで、第1揺動軸Aは揺動軸の一例であり、また第1軸の一例である。第2揺動軸Bは第2軸の一例である。
【0049】
次に図4は、光偏向部12の構成の一例を説明する図である。図4に示すように、光偏向部12は、反射面121と、反射面121を外側から支持する可動枠122と、可動枠122を両側から支持する一対の第2駆動梁130a及び130bとを有する。
【0050】
可動枠接続部131aは、可動枠122と第2駆動梁130aとが接続される部分である。また固定枠接続部132aは、固定枠133と第2駆動梁130aとが接続される部分である。
【0051】
可動枠接続部131bは、可動枠122と第2駆動梁130bとが接続される部分である。また固定枠接続部132bは、固定枠133と第2駆動梁130bとが接続される部分である。
【0052】
光偏向部12は、反射面121と、可動枠122と、支持部123と、捻れ梁124a及び124bと、連結梁125a及び125bと、第1駆動梁126a及び126bと、第2駆動梁130a及び130bと、固定枠133とを有する。
【0053】
第1駆動梁126aは駆動源127aを有し、第1駆動梁126bは駆動源127bを有する。第2駆動梁130aは駆動源134aを有し、第2駆動梁130bは駆動源134bを有する。
【0054】
第1駆動梁126a及び126bは、反射面121を第1揺動軸A周りに揺動させてレーザ光を偏向させるアクチュエータとして機能する。また第2駆動梁130a及び130bは、反射面121を第2揺動軸B周りに揺動させてレーザ光を偏向させるアクチュエータとして機能する。
【0055】
支持部123には、反射面121の円周に沿うようにスリット128が形成されている。スリット128により、捻れ梁24a及び24bの捻れ動作によって発生する応力集中を分散させて第1反射面22の破損を防止しつつ捻れ梁124a及び124bによる捻れを反射面121へ伝達することができる。
【0056】
光偏向部12において、支持部123の上面に反射面121が支持され、支持部123は、両側にある捻れ梁124a及び124bの端部に連結されている。捻れ梁124a及び124bは、第1揺動軸Aを構成し、第1揺動軸A方向に延在して支持部123を第1揺動軸A方向の両側から支持している。
【0057】
捻れ梁124a及び124bが捻れることにより、支持部123に支持された反射面121が揺動し、反射面121に入射するレーザ光の反射光を偏向させ、走査させる動作を行う。捻れ梁124a及び124bは、それぞれが連結梁125a及び125bに連結支持され、第1駆動梁126a及び126bに連結されている。
【0058】
第1駆動梁126a及び126b、連結梁125a及び125b、捻れ梁124a及び124b、支持部123及び反射面121は、可動枠122によって外側から支持されている。
【0059】
第1駆動梁126a及び126bは、可動枠122にそれぞれの一方の側が支持されている。第1駆動梁126aの他方の側は内周側に延びて連結梁125a及び125bと連結している。第1駆動梁126bの他方の側も同様に、内周側に延びて連結梁125a及び125bと連結している。
【0060】
第1駆動梁126a及び126bBは、捻れ梁124a及び124bと直交する方向に、反射面121及び支持部123を挟むように、対をなして設けられている。第1駆動梁126aの上面には駆動源127aが形成され、第1駆動梁126bの上面には、駆動源127bが形成されている。
【0061】
駆動源127a及び127bは、第1駆動梁126a及び126bの上面の圧電素子の薄膜(以下「圧電薄膜」ともいう。)の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。駆動源127a及び127bは、上部電極と下部電極に印加する駆動電圧の極性に応じて縮小する。
【0062】
このため、第1駆動梁126aと第1駆動梁126bとで異なる位相の駆動電圧を交互に印加すれば、反射面121の左側と右側で第1駆動梁126aと第1駆動梁126bとが上下反対側に交互に振動する。
【0063】
これにより、捻れ梁124a及び124bを第1揺動軸Aとして、反射面121を第1揺動軸A周りに揺動させることができる。例えば第1駆動梁126a及び126bによる第1揺動軸A周りの揺動駆動には、共振振動が用いられ、高速に反射面121を揺動させることができる。
【0064】
ここで、図5は駆動信号を説明する図であり、図5(a)は水平駆動信号の一例を示す図、図5(b)は垂直駆動信号の一例を示す図である。
【0065】
図5に示すように、水平駆動信号AHp及び水平駆動信号AHnは、共に同一の周期及び振幅を有する正弦波で、水平駆動信号AHnは、水平駆動信号AHpに対して位相が半周期ずれている。すなわち、水平駆動信号AHp、AHnとは、中間電位に対して電位が反転した関係にある。第1反射面22は、水平駆動信号AHpと水平駆動信号AHnとの電位差に応じて駆動され、その振れ角は、水平駆動信号AHp及び水平駆動信号AHnの振幅に対応する。
【0066】
図4に戻り、可動枠122の外部には、第2駆動梁130a及び130bの一端が、可動枠接続部131a及び131bを介して連結されている。第2駆動梁130a及び130bは、可動枠122を両側から挟むように対をなして設けられている。そして、第2駆動梁130a及び130bは、可動枠122を両側から支持すると共に、第2揺動軸B周りに揺動させる。
【0067】
第2駆動梁130aの他端は、固定枠接続部132aを介して固定枠133の内側に連結されている。また第2駆動梁130bの他端は、固定枠接続部132bを介して固定枠133の内側に連結されている。
【0068】
図4に示すように、第2駆動梁130aは、第1揺動軸Aに沿う方向に延在する複数の矩形状の垂直梁、及び隣接する垂直梁の端部同士を連結する折り返し部を備え、全体としてジグザグ状の形状である。
【0069】
例えば、第1駆動梁126a側から数えて1番目の垂直梁の端部と2番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また2番目の垂直梁の端部と3番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また3番目の垂直梁の端部と4番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また4番目の垂直梁の端部と5番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また5番目の垂直梁の端部と6番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。
【0070】
第2駆動梁130bも同様に、第1揺動軸Aに沿う方向に延在する複数の矩形状の垂直梁、及び隣接する垂直梁の端部同士を連結する折り返し部を備え、全体としてジグザグ状の形状である。
【0071】
例えば、第1駆動梁126b側から数えて1番目の垂直梁の端部と2番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また2番目の垂直梁の端部と3番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また3番目の垂直梁の端部と4番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また4番目の垂直梁の端部と5番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。また5番目の垂直梁の端部と6番目の垂直梁の端部とが折り返し部により連結されている。
【0072】
第2駆動梁130aの上面には、それぞれ曲線部を含まない矩形単位である垂直梁ごとに駆動源134aが形成されている。第2駆動梁130bの上面には、それぞれ曲線部を含まない矩形単位である垂直梁ごとに駆動源134bが形成されている。
【0073】
駆動源134aは、第2駆動梁130aの上面の圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。駆動源134bは、第2駆動梁130bの上面の圧電薄膜の上に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを含む。
【0074】
第2駆動梁130a及び130bは、垂直梁ごとに隣接している駆動源134a及び134b同士で、駆動電圧を印加することにより、全ての垂直梁を上方向に反らせ、各垂直梁の上下動の蓄積を可動枠122に伝達する。
【0075】
第2駆動梁130a及び130bは、この動作により、第2揺動軸B周りに反射面121を揺動させる。例えば第2駆動梁130a及び130bによる揺動には、非共振振動を用いることができる。
【0076】
例えば、駆動源134aを、可動枠122側から右側に向かって並ぶ駆動源134a1、134a2、134a3、134a4、134a5及び134a6を含むものとする。また駆動源134bを、可動枠122側から左側に向かって並ぶ駆動源134b1、134b2、134b3、134b4、134b5及び134b6を含むものとする。この場合、駆動源134a1、134b1、134a3、134b3、134a5、134b5を同波形、駆動源134a2、134b2、134a4、134b4、134a6及び134b6を、前者を時系列で反転させた同形状波形で駆動することで、反射面121を第2揺動軸B周りに遥動させることができる。
【0077】
駆動源127aの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠133に設けられた端子群135aに含まれる所定の端子と接続されている。また駆動源127bの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠133に設けられた端子群135bに含まれる所定の端子と接続されている。
【0078】
また駆動源134aの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠133に設けられた端子群135aに含まれる所定の端子と接続されている。また駆動源134bの上部電極及び下部電極に駆動電圧を印加する駆動配線は、固定枠133に設けられた端子群135bに含まれる所定の端子と接続されている。
【0079】
また、光偏向部12は、反射面121が水平方向に揺動している状態における水平方向の傾き具合(水平方向の振角)を検出する水平振角センサで、かつレーザ光の打ち出しタイミングを検出する振動センサである水平圧電センサ137a及び137bを有する。水平圧電センサ137a及び137bは連結梁125a及び125bに設けられている。
【0080】
さらに光偏向部12は、反射面121が垂直方向に遥動している状態における垂直方向の傾き具合(垂直方向の振角)を検出する垂直振角センサで、かつ駆動信号から不要振動成分を除去するため垂直梁の不要振動を検出する振動センサである垂直圧電センサ136a及び136bを有する。垂直圧電センサ136a及び136bは第2駆動梁130a及び130bを構成する垂直梁の一つに設けられている。
【0081】
このような光偏向部12は、例えば支持層、埋め込み(BOX:Buried Oxide)層及び活性層を有するSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて、半導体プロセスにより製作することができる。
【0082】
また本実施形態では、第1揺動軸A周りの第1最大振れ角αは、第2揺動軸B周りの第2最大振れ角αより大きくなるように構成されている。例えば、第1最大振れ角αは±12.0[度]であり、第2最大振れ角αは±7.0[度]である。なお、第1最大振れ角αは最大振れ角αに該当する。
【0083】
<光透過板3の傾きの作用>
ここで、上述したように、光透過板を備える光偏向装置では、光偏向部により偏向された光のうちの一部が光透過板を透過せずに反射されて光偏向部に戻り、再び光偏向部により偏向されて、投射される画像に含まれる場合がある。また光偏向装置に入射する光のうちの一部が光透過板で反射されて投射される画像に含まれる場合がある。以下、このような光透過板3での反射光に対する光透過板3の傾きの作用について説明する。
【0084】
図6は、光偏向装置20へのレーザ光の入射、及び光偏向装置20からのレーザ光の出射の一例を説明する図である。入射レーザ光は、光透過板3を透過して光偏向装置20に入射する。また出射レーザ光は、光透過板3を透過して光偏向装置20から出射する。
【0085】
図6に示す例では、Y軸に沿う第1揺動軸Aを含む平面に沿って、入射レーザ光は光偏向装置20に入射し、出射レーザ光は光偏向装置20から出射する。
【0086】
次に図7は、光偏向装置20が有する光透過板3の傾きの作用の一例を説明する図である。図7は、図6のS-S切断線に沿う光偏向装置20の断面図である。
【0087】
図7において、入射レーザ光L1は、光透過板3を透過して光偏向部12の反射面121に入射する。出射レーザ光L2は、入射レーザ光L1が反射面121で反射後、光透過板3を透過して出射する。
【0088】
光偏向部12の反射面121に入射する入射レーザ光L1が光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さhは、光偏向部12により偏向された出射レーザ光L2が光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さhより高くなっている。
【0089】
1次反射レーザ光R1は、入射レーザ光L1が光透過板3の+Z方向側の第1面31で反射されたレーザ光を示している。2次反射レーザ光R2は入射レーザ光L1が光透過板3の-Z方向側の第2面32で反射されたレーザ光を示している。
【0090】
3次反射レーザ光R3は、出射レーザ光L2が光透過板3の第2面32で反射され、反射面121で再び反射された後、光透過板3を透過して出射されるレーザ光を示している。4次反射レーザ光R4は、出射レーザ光L2が光透過板3の第1面31で反射され、反射面121で再び反射された後、光透過板3を透過して出射されるレーザ光を示している。
【0091】
ここで、画像投射装置100における光透過板3での反射光を含む反射光の影響について詳述する。
【0092】
光偏向装置20に入射する入射レーザ光L1の光強度を100[%]とし、光透過板3の第1面31及び第2面32のそれぞれに施された反射防止膜の透過率を98[%]とする。
【0093】
この場合、入射レーザ光L1が第1面31及び第2面32を透過し、出射レーザ光L2が第1面31及び第2面32を透過すると、0.98=0.92となり、出射レーザ光L2の光強度は92[%]になる。
【0094】
例えば、出射レーザ光L2を被走査面200上で走査させて、解像度が720P(1280×720[pixel])で被走査面200上に画像201を描画する場合には、1フレームにおける1[pixel]を描画する出射レーザ光L2の光強度は92/(1280×720)により0.0001[%]となる。つまり、入射レーザ光L1の光強度の0.0001[%]の光強度で1[pixel]が描画される。
【0095】
一方、画像投射装置100において、1次反射レーザ光R1が被走査面200上の画像201に含まれる状態になっていると、入射レーザ光L1の光強度の2[%]の1次反射レーザ光R1が画像201に含まれる。この1次反射レーザ光R1は、画像201を描画する出射レーザ光L2の20000倍の光強度を有し、画像201内の所定箇所を動かずに照射する。
【0096】
また、2次反射レーザ光R2が被走査面200上の画像201に含まれる状態になっていると、0.98×0.02により入射レーザ光L1の光強度の0.019[%]の2次反射レーザ光R2が画像201に含まれる。この2次反射レーザ光R2は、画像201を描画する出射レーザ光L2の190倍の光強度を有し、画像201内の所定箇所を動かずに照射する。
【0097】
また、3次反射レーザ光R3が被走査面200上の画像201に含まれる状態になっていると、0.98×0.02により入射レーザ光L1の光強度の0.018[%]の3次反射レーザ光R3が画像201に含まれる。この3次反射レーザ光R3は、画像201を描画する出射レーザ光L2の180倍の光強度を有し、被走査面200上で画像201からずれた位置に、画像201と同じ画像を描画する。
【0098】
また、4次反射レーザ光R4が被走査面200上の画像201に含まれる状態になっていると、0.98×0.02により入射レーザ光L1の光強度の0.018[%]の4次反射レーザ光R4が画像201に含まれる。この4次反射レーザ光R4は、画像201を描画する出射レーザ光L2の180倍の光強度を有し、被走査面200上で画像201からずれた位置に、画像201と同じ画像を描画する。
【0099】
本実施形態では、1次反射レーザ光R1乃至4次反射レーザ光R4等の光透過板3で反射されたレーザ光が画像201に含まれないようにするために、載置面111に対して光透過板3を傾けて設けている。
【0100】
ここで、図7の傾き角度θは、光透過板3の載置面111に対する傾き角度を示している。光透過板3は、第2揺動軸Bに沿う軸周りに載置面111に対して傾き角度θで傾いている。また第2最大振れ角αは、X軸に沿う軸に対応する第2揺動軸B周りの最大振れ角を示している。
【0101】
本実施形態では、以下の式で表される条件を満足するように、傾き角度θを定めている。
|θ|=2×α+β
0<β≦90-2×α
但し、β及びβのそれぞれは、適宜選択可能な角度を意味する選択角度を表す。||は絶対値を表す。第2最大振れ角αと傾き角度θと選択角度β及びβの単位は[度]である。
【0102】
傾き角度θを第2最大振れ角αより大きくすると、1次反射光R1と2次反射光R2は被走査面200に到達しなくなり、画像201に含まれなくなる。また傾き角度θを第2最大振れ角αの2倍以上にすると、3次反射光R3と4次反射光R4は被走査面200に到達しなくなり、画像201に含まれなくなる。
【0103】
従って、上記の式を満足するように傾き角度θを定めることで、1次反射レーザ光R1乃至4次反射レーザ光R4のそれぞれが画像201に含まれない状態にすることができる。 図7に示す例では、第2最大振れ角αは7.0[度]であり、選択角度βは4.0[度]である。傾き角度θは、上記の式に従って18.0[度]に定められている。
【0104】
次に図8は、比較例に係る光偏向装置20aが有する光透過板3aの傾きの作用を説明する図である。図8に示す光偏向装置20aは、実施形態に係る光偏向装置20との比較の便宜のため、光偏向装置20と同様の構成を有するものとし、載置面111(基準面)に対する光透過板3aの傾き角度のみが光偏向装置20とは異なるものする。
【0105】
図8は、図6のS-S切断線に対応する切断線に沿って光偏向装置20aを切断した断面図である。図8では光偏向装置20aが有する各構成部に対し、光偏向装置20と同じ部品番号を付している。
【0106】
図8の傾き角度θ'は、載置面111に対する光透過板3aの傾き角度を示している。また第2最大振れ角α'は、第2揺動軸B周りの最大振れ角を示している。
【0107】
傾き角度θ'は11.0[度]であり、最大振れ角は7.0[度]である。傾き角度θ'は第2最大振れ角αより大きいため、1次反射光R1と2次反射光R2は画像201に含まれなくなる。
【0108】
しかしながら、傾き角度θ'は第2最大振れ角αの2倍である14[度]より小さいため、3次反射光R3と4次反射光R4は、出射レーザ光L2に近い方向に出射され、画像201に含まれる。その結果、被走査面200上で画像201と同じ画像が画像201から少しずれた位置に投射され、複数の画像が重なって視認される多重像やモアレ等が生じる。
【0109】
<光偏向装置20の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る光偏向装置20は、第1揺動軸A(第1軸)周り及び第2揺動軸B(第2軸)周りに反射面121を揺動させることで、反射面121に入射するレーザ光を偏向させる光偏向部12と、該光偏向部12により偏向されたレーザ光を透過させる光透過板3とを有する。
【0110】
また本実施形態では、載置面111(基準面)に対する光透過板3の傾き角度を、載置面111に対する反射面121の第2最大振れ角αの2倍以上にする。これにより、光透過板3での反射に伴う1次反射光R1、2次反射光R2、3次反射光R3及び4次反射光R4のそれぞれは、被走査面200に到達しなくなる。その結果、投射される画像に光透過板3での反射光が含まれないようにすることができる。そして、被走査面200上に投射される画像の品質を高く確保することができる。
【0111】
なお、上述した実施形態では、発光部10が光透過板3の外側から光偏向装置20の内部にレーザ光を入射させる構成を例示したが、これに限定されるものではない。光偏向装置20の内部に発光部10が設けられ、光透過板3を透過せずに反射面121にレーザ光が入射する構成であっても、本実施形態を適用可能である。
【0112】
また本実施形態では、光偏向部12は、第1揺動軸A及び第1揺動軸Aに交差する第2揺動軸Bの両方の軸周りに反射面121を揺動させることで、反射面121に入射するレーザ光を交差する2つの方向に偏向させる。そして、反射面121の載置面111に対する第1揺動軸A周りの第1最大振れ角αは、反射面121の載置面111に対する第2揺動軸B周りの第2最大振れ角αより大きく、光透過板3は、第2揺動軸Bに沿う軸周りに傾いている。
【0113】
例えば、第1揺動軸A周りに光透過板3を傾けると、第1最大振れ角αは12.0度であるため、光透過板3を28.0[度](βが4.0[度]の場合)傾ける必要がある。これに対し、第2揺動軸B周りに傾ける場合には、光透過板3の傾き角度の18.0[度]でよい。光透過板3の傾き角度が小さい分、パッケージ11又はリッド2の少なくとも一方を小型化できる。そして光偏向装置20を小型化することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、第1揺動軸AがY方向に沿う構成を例示したが、これに限定されるものではなく、反射面121の最大振れ角が小さい方の軸周りに光透過板3が傾いた構成であればよい。換言すると、第1揺動軸Aはどの方向を向いていてもよい。例えば、第1揺動軸AがX方向に沿う構成であってもよい。この構成でも、光透過板3の傾き角度が小さい分、パッケージ11又はリッド2の少なくとも一方を小型化でき、光偏向装置20を小型化可能となる。
【0115】
但し、反射面121の載置面111に対する第1揺動軸A周りの第1最大振れ角αが反射面121の載置面111に対する第2揺動軸B周りの第2最大振れ角αより大きい場合に、光透過板3が第2揺動軸Bに沿う軸周りに傾いた構成に限定されるものではない。例えば、光透過板3が第1揺動軸Aに沿う軸周りに傾いた構成にしてもよい。
【0116】
また本実施形態では、反射面121に入射するレーザ光が光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さhは、光偏向部12により偏向されたレーザ光が光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さhより高い。この構成により、パッケージ11又はリッド2の少なくとも一方を小型化し、光偏向装置20を小型化することができる。
【0117】
<光偏向装置20の変形例>
ここで、光偏向装置20は各種の変形が可能であるため、以下、変形例について説明する。
【0118】
(光偏向部の変形例)
まず、光偏向部の変形例について説明する。上述した実施形態では、交差する2つの方向にレーザ光を偏向させる光偏向部12の構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、光偏向装置20は、1つの揺動軸周りに反射面を揺動させることで、反射面に入射する光を1つの方向に偏向させる光偏向部を備えてもよい。
【0119】
ここで、図9は、光偏向部の他の第1例を説明する斜視図である。光偏向部12aは、反射面121aを含み、第2揺動軸B周りに反射面121aを揺動させることで、反射面121aで反射されたレーザ光を第2揺動軸B周りに偏向させる。光偏向部12aは、例えば圧電素子により反射面121aを駆動させるMEMSミラー等である。
【0120】
図9に示すように、光偏向部12aは、反射面121aと、支持部123aと、接続部131aa及び131baと、第2駆動梁130aa及び130baと、駆動源134aa及び134baと、固定枠接続部132aa及び132baと、固定枠133aとを有する。
【0121】
光偏向部12aは、光偏向部12の可動枠122に代えて、反射面121aを含む支持部123aを設けたものであり、各構成部の機能は光偏向部12における対応する構成部の機能と同様である。そのため、ここでは重複する説明を省略する。
【0122】
次に図10は、光偏向部の他の第2例を説明する斜視図である。光偏向部12bは、反射面121bを含み、第1揺動軸A周りに反射面121bを揺動させることで、反射面121bに入射するレーザ光を第1揺動軸A周りに偏向させる。光偏向部12bは、例えば圧電素子により反射面121bを駆動させるMEMSミラー等である。
【0123】
図10に示すように、光偏向部12bは、反射面121bと、可動枠122bと、支持部123bと、捻れ梁124ab及び124bbと、連結梁125ab及び125bbと、第1駆動梁126ab及び126bbと、駆動源127ab及び127bbとを有する。
【0124】
光偏向部12bは、光偏向部12の可動枠122に連結する第2駆動梁130a及び130b等の構成部を取り除いたものであり、各構成部の機能は光偏向部12における対応する構成部の機能と同様である。そのため、ここでは重複する説明を省略する。
【0125】
光偏向装置20は、図9及び図10に示したような1つの揺動軸周りに反射面を揺動させる光偏向部を備えることもできる。この場合にも、載置面111に対する光透過板3の傾き角度を、載置面111に対する反射面121の最大振れ角の2倍以上にすることで、上述した光偏向装置20と同様の作用効果を得ることができる。
【0126】
(光透過板3を傾ける方向の変形例)
次に、光透過板3を傾ける方向の変形例について説明する。上述した実施形態では、第2揺動軸Bに沿う軸周りに光透過板3を傾けた構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、反射面121の第1揺動軸A周りの第1最大振れ角αの2倍以上の傾き角度で、第1揺動軸Aに沿う軸周りに、光透過板3を傾けてもよい。
【0127】
また、第1揺動軸A及び第2揺動軸Bのそれぞれに沿う軸以外の軸周りに光透過板3を傾けてもよい。換言すると、載置面111に平行な面に含まれる軸であって、第1揺動軸A及び第2揺動軸Bとは非平行な軸周りに光透過板3を傾けることもできる。
【0128】
ここで、図11は、光透過板3の傾きの他の例を模式的に説明する図である。図11において、平面111Aは、第1揺動軸A及び第2揺動軸Bを含む平面を表し、平面111Bは、基準面としての載置面111に対応する平面を表している。平面111Cは、載置面111に平行な面を表している。
【0129】
傾き軸35は、平面111C(基準面に平行な面)に含まれる軸であって、第1揺動軸A及び第2揺動軸Bとは非平行な軸である。この傾き軸35周りに光透過板3を傾けてもよい。
【0130】
なお、傾き軸35は、平面111A、平面111B及び平面111Cのそれぞれに直交する直交軸D周りの360度方向のうち、何れの方向に向く軸であってもよい。また傾き軸35は、必ずしも直交軸Dを通る軸でなくてもよい。
【0131】
傾き軸35周りに光透過板3を傾ける場合には、光透過板3の第1揺動軸A周りの傾き角度をθとし、光透過板3の第2揺動軸B周りの傾き角度をθとした場合に、以下の式で表される条件を満足すると好適である。
|θ|=2×α+β
|θ|=2×α+β
0<β≦90-2×α
0<β≦90-2×α
なお、β及びβはそれぞれ選択角度を表し、α、α、θ、θ、β、βの単位は[度]である。この条件を満足することで、上述した光偏向装置20と同様の作用効果を得ることができる。
【0132】
また、光偏向装置20が1つの揺動軸周りに反射面121を揺動させる光偏向部12を有する場合には、光透過板3を、載置面111に平行な平面111Cに含まれる傾き軸であって、揺動軸とは非平行な軸である傾き軸35周りに傾けることが好ましい。これにより、パッケージ11又はリッド2の少なくとも一方を小型化できる。
【0133】
(光透過板3への入射レーザ光L1の入射高さの変形例)
上述した実施形態では、入射レーザ光L1が光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さhが、出射レーザ光L2が光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さhより高い構成を例示したが、これに限定されるものではない。
【0134】
例えば、光透過板3を透過する領域の載置面111に対する高さが、入射レーザ光L1より出射レーザ光L2の方が高くてもよいし、入射レーザ光L1と出射レーザ光L2で等しくてもよい。
【0135】
(光透過板3における入射レーザ光L1の入射高さと傾きの組合せ例)
次に図12乃至図14を参照して、光透過板3への入射レーザ光L1の入射高さと光透過板3の傾きの各種組合せを説明する。
【0136】
まず図12は、第1例を示す図であり、図12(a)は光偏向装置20の斜視図、図12(b)は図12(a)のT-T切断線に沿う断面図である。図12では、X軸に沿う第2揺動軸Bを含む平面に沿って、入射レーザ光L1は光偏向装置20に入射し、出射レーザ光は光偏向装置20から出射している。また光透過板3は、X軸に沿う第2揺動軸B周りに傾いている。
【0137】
この場合には、光透過板3の傾き角度θは、反射面121の第2最大振れ角αの2倍以上であることが好ましい。また光透過板3の傾き角度θは、反射面121の第2最大振れ角αの2倍に選択角度βとしての2.0[度]を付加した値に等しいことが特に好ましい。
【0138】
次に図13は、第2例を示す図であり、図13(a)は光偏向装置20の斜視図、図13(b)は図13(a)のU-U切断線に沿う断面図である。図13では、X軸に沿う第1揺動軸Aを含む平面に沿って、入射レーザ光L1は光偏向装置20に入射し、出射レーザ光は光偏向装置20から出射している。また光透過板3は、Y軸に沿う第1揺動軸A周りに傾いている。
【0139】
この場合には、光透過板3の傾き角度θは、反射面121の第1最大振れ角αの2倍以上であることが好ましい。また光透過板3の傾き角度θは、反射面121の第1最大振れ角αの2倍に選択角度βとしての2.0[度]を付加した値に等しいことが特に好ましい。
【0140】
次に図14は、第3例を示す図であり、図14(a)は光偏向装置20の斜視図、図14(b)は図14(a)のV-V切断線に沿う断面図である。図14では、Y軸に沿う第1揺動軸Aを含む平面に沿って、入射レーザ光L1は光偏向装置20に入射し、出射レーザ光は光偏向装置20から出射している。また光透過板3は、Y軸に沿う第1揺動軸A周りに傾いている。
【0141】
この場合には、光透過板3の傾き角度θは、反射面121の第1最大振れ角αの2倍以上であることが好ましい。また光透過板3の傾き角度θは、反射面121の第1最大振れ角αの2倍に選択角度βとしての2.0[度]を付加した値に等しいことが特に好ましい。
【0142】
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0143】
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【符号の説明】
【0144】
1・・・光偏向ユニット、11・・・パッケージ、111・・・載置面(基準面の一例)、111A、111B、111C・・・平面、12・・・光偏向部、121・・・反射面、122・・・可動枠、123・・・支持部、124a、124b・・・捻れ梁、125a、125b・・・連結梁、126a、126b・・・第1駆動梁、127a、127b・・・駆動源、128・・・スリット、130a、130b・・・第2駆動梁、131a、131b・・・可動枠接続部、132a、132b・・・固定枠接続部、133・・・固定枠、134a、134b・・・駆動源、135a、135b・・・端子群、136a、136b・・・垂直圧電センサ、137a、137b・・・水平圧電センサ、2・・・リッド、3・・・光透過板、31・・・第1面、32・・・第2面、35・・・傾き軸、10・・・発光部、20・・・光偏向装置、30・・・制御部、200・・・被走査面、201・・・画像、A・・・第1揺動軸(揺動軸の一例、第1軸の一例)、B・・・第2揺動軸(第2軸の一例)、L1・・・入射レーザ光、L2・・・出射レーザ光、R3・・・3次反射レーザ光、R4・・・4次反射レーザ光、h、h・・・高さ、α・・・最大振れ角、α・・・第1最大振れ角、α・・・第2最大振れ角、β、β・・・選択角度、θ、θ・・・傾き角度
図1
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