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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109559
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】外壁設置高さ調整金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
E04B2/56 642B
E04B2/56 622C
E04B2/56 622W
E04B2/56 622J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004949
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 克己
(72)【発明者】
【氏名】川元 將揮
(72)【発明者】
【氏名】豊島 一也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 知慈
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002JA02
2E002JB02
2E002JB14
2E002MA03
2E002MA05
(57)【要約】
【課題】 外壁パネルがバルコニー立上がりの上部に位置する場合であっても、外壁パネルの設置高さを容易に調整することができる外壁高さ調整金具を提供する。
【解決手段】外壁パネル固定金具2は、外壁パネルPの設置高さを調整する金具であって、鉛直方向へ延びる板状の鉛直板部21と、鉛直板部21の下端21aから水平方向へ突出し、外壁パネルPの下端面Paに係止する係止板部22と、鉛直板部21の上端21bから係止板部22と反対の方向へ突出するとともに、雌ねじ孔23eが形成された延出板部23と、を有する第1金板2と、外壁パネルPの下に位置する構造物Y2に載置され、第1金板2を鉛直方向へ移動可能に固定する第2金板3と、雌ねじ孔23eに挿通されるとともに軸部41の先端41aが第2金板3の上端面34aに当接するボルト4と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁パネルの設置高さを調整する外壁高さ調整金具であって、
鉛直方向へ延びる板状の鉛直板部と、当該鉛直板部の下端から水平方向へ突出し、前記外壁パネルの下端面に係止する係止板部と、前記鉛直板部の上端から前記係止板部と反対の方向へ突出するとともに、板厚方向へ貫通する雌ねじ孔が形成された延出板部と、を有する第1金板と、
前記外壁パネルの下に位置する構造物に載置され、且つ、前記鉛直板部の前記延出板部側の板面である第1板面に当接して前記第1金板を鉛直方向へ移動可能に固定する第2金板と、
上方から前記雌ねじ孔に挿通されるとともに軸部の先端が前記第2金板の上端面に当接するボルトと、を備えることを特徴とする外壁高さ調整金具。
【請求項2】
前記ボルトは、軸部の先端が頭部よりも前記鉛直板部側に位置することを特徴とする請求項1に記載の外壁高さ調整金具。
【請求項3】
前記延出板部は、前記鉛直板部の上端から水平方向へ延びる水平板部と、前記水平板部の先端部を鈍角に折り下げて形成した傾斜板部と、を具備しており、
前記雌ねじ孔は、前記傾斜板部に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外壁高さ調整金具。
【請求項4】
前記第2金板は、一方の板面を前記第1板面に当接して前記第1金板を鉛直方向へ移動可能に固定する板状の固定板部と、当該固定板部の上端部を前記鉛直板部と反対の方向へ折り曲げて形成した折曲板部と、当該折曲板部の先端部を前記鉛直板部の方向へ折り曲げて形成した屈曲板部と、を有しており、
前記屈曲板部は、上端面が前記傾斜板部の下端面に相対向するとともに前記傾斜板部の下端面に対し平行であり、
前記ボルトは、軸部の先端を前記屈曲板部の上端面に当接することを特徴とする請求項3に記載の外壁高さ調整金具。
【請求項5】
前記折曲板部は、前記固定板部の上端部を鈍角に折り曲げて形成されており、
前記屈曲板部は、前記折曲板部の先端部を直角に折り曲げて形成されることを特徴とする請求項4に記載の外壁高さ調整金具。
【請求項6】
前記第2金板は、前記固定板部の下端部を前記係止板部と同じ方向へ折り曲げて形成され、前記構造物の上端面に載置される載置板部を有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の外壁高さ調整金具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネルの設置高さを調整する外壁高さ調整金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、外壁パネルの設置高さは梁材を基準にして決定されるが、隣り合う外壁パネルの柄や目地幅とのバランスを考慮し、施工現場において数ミリ単位で微調整される。このように施工現場で外壁パネルの設置高さを微調整する場合は、屋外側から外壁パネルの下部にバールを差込んで持ち上げることが多い。しかしながら、この方法ではバールで外壁パネルの表面を傷つけてしまうという問題点があった。そこで、屋内側から外壁パネルの設置高さを調整可能とする発明が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1に記載の発明には、外壁パネルの下端部に固定される調整金具について記載されている。この調整金具は、外壁パネルの屋内側の面に固定されるとともに屋内側へ突出する水平板部を有したL字型状の固定板部と、水平板部に形成された雌ねじ孔を挿通するボルトと、を有しており、雌ねじ孔に螺着するボルトを屋内側から回転操作することによって、外壁パネルの表面を傷つけることなく容易に外壁パネルの設置高さを調整することができる。
【0004】
また特許文献2に記載の発明には、外壁パネルの下端に係止する受け金具について記載されており、特許文献1の調整金具と同様、屋内側へ突出するL字型状の金具にボルトを螺着させ、屋内側からボルトを回転操作することによって外壁パネルの設置高さを調整する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-44539号公報
【特許文献2】特開2001-27003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の金具は、いずれも奥行き幅の広い建物基礎や横桟などに載置されることが前提であるため、外壁パネルの下部にこれらの構造物が設置されていない場合、例えば、外壁パネルがバルコニー立上がりの上部や下屋の上部に設置されている場合などは用いることができない。
【0007】
そこで、本発明は上述した課題を鑑みてなされたものであって、外壁パネルがバルコニー立上がりの上部や下屋の上部に位置する場合であっても、外壁パネルの設置高さを容易に調整することができる外壁高さ調整金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の外壁高さ調整金具は、外壁パネルの設置高さを調整する外壁高さ調整金具であって、鉛直方向へ延びる板状の鉛直板部と、当該鉛直板部の下端から水平方向へ突出し、前記外壁パネルの下端面に係止する係止板部と、前記鉛直板部の上端から前記係止板部と反対の方向へ突出するとともに、板厚方向へ貫通する雌ねじ孔が形成された延出板部と、を有する第1金板と、前記外壁パネルの下に位置する構造物に載置され、且つ、前記鉛直板部の前記延出板部側の板面である第1板面に当接して前記第1金板を鉛直方向へ移動可能に固定する第2金板と、上方から前記雌ねじ孔に挿通されるとともに軸部の先端が前記第2金板の上端面に当接するボルトと、を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の第2の外壁高さ調整金具は、前記ボルトの軸部の先端が、頭部よりも前記鉛直板部側に位置していることを特徴としている。
【0010】
本発明の第3の外壁高さ調整金具は、前記延出板部が、前記鉛直板部の上端から水平方向へ延びる水平板部と、前記水平板部の先端部を鈍角に折り下げて形成した傾斜板部と、を具備しており、前記雌ねじ孔が、前記傾斜板部に形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の第4の外壁高さ調整金具は、前記第2金板が、一方の板面を前記第1板面に当接して前記第1金板を鉛直方向へ移動可能に固定する板状の固定板部と、当該固定板部の上端部を前記鉛直板部と反対の方向へ折り曲げて形成した折曲板部と、当該折曲板部の先端部を前記鉛直板部の方向へ折り曲げて形成した屈曲板部と、を有しており、前記屈曲板部の上端面が前記傾斜板部の下端面に相対向するとともに前記傾斜板部の下端面に対し平行であり、前記ボルトが、軸部の先端を前記屈曲板部の上端面に当接することを特徴としている。
【0012】
本発明の第5の外壁高さ調整金具は、前記折曲板部が、前記固定板部の上端部を鈍角に折り曲げて形成されており、前記屈曲板部が、前記折曲板部の先端部を直角に折り曲げて形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明の第6の外壁高さ調整金具は、前記第2金板が、前記固定板部の下端部を前記係止板部と同じ方向へ折り曲げて形成され、前記構造物の上端面に載置される載置板部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の外壁高さ調整金具によると、第1金板は、鉛直板部の第1板面に当接する第2金板によって鉛直方向へ移動可能に固定される。したがって、屋内側から外壁パネルの下端面に係止板部を係止させ、ボルトを回転操作すると、第1金板が鉛直方向へ移動して外壁パネルの設置高さを調整することができる。また雌ねじ孔に挿通されるボルトは、先端が第2金板の上端面に当接するので、従来の外壁高さ調整金具のようにボルトの先端を外壁パネル下に位置する建物基礎や横桟などの構造物に押し当てる必要がない。そのため、外壁パネルの下部に奥行き幅の広い構造物が設置されていない場合であっても、構造物に第2金板の下端さえ載置できればボルトを回転操作して外壁パネルの設置高さを調整することができる。
【0015】
本発明の第2の外壁高さ調整金具によると、ボルトは、軸部の先端が頭部よりも鉛直板部側に位置しているとされる。したがって、外壁高さ調整金具を外壁パネルに設置する際に、ボルト頭部が屋内側を向くためボルトを回転操作しやすく、施工性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第3の外壁高さ調整金具によると、延出板部は、鉛直板部の上端から水平方向へ延びる水平板部と、水平板部の先端部を鈍角に折り下げて形成した傾斜板部と、を具備しており、雌ねじ孔は傾斜板部に形成される。したがって、ボルトを上方から雌ねじ孔に挿入するとボルトが傾斜板部の角度に応じて傾くこととなり、ボルトを回転操作した際の第1金板の鉛直方向への移動速度が、ボルトの軸方向を鉛直方向へ向けた場合と比較して遅くなる。そのため、外壁パネルの設置高さをより細やかに微調整することができ、施工性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第4の外壁高さ調整金具によると、ボルトの先端を当接する屈曲板部は、上端面が傾斜板部の下端面に相対向するとともに傾斜板部の下端面に対し平行であるとされる。そのため、ボルトの先端を屈折板部に押し当てて回転操作する際に、ボルトをより安定した状態で回転させることができる。
【0018】
本発明の第5の外壁高さ調整金具によると、折曲板部は、固定板部の上端部を鈍角に折り曲げて形成され、屈曲板部は、折曲板部の先端部を直角に折り曲げて形成される。したがって、ボルトの先端を屈曲板部に押し付けた際に、折曲板部が屈曲板部を補強するため屈曲板部が変形し難くなり、第2金板の耐久性を向上させることができる。
【0019】
本発明の第6の外壁高さ調整金具によると、構造物の上端面に載置される載置板部は、固定板部の下端部を係止板部と同じ方向へ折り曲げて形成される。したがって、構造物の上端面が屋内側へ延出しないような奥行き幅の狭い部材であって、外壁高さ調整金具を安定的に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】外壁高さ調整金具を示す側面図。
図2】第1金具を示す側面図及び正面図。
図3】第2金具を示す側面図及び正面図。
図4】外壁パネルをバルコニー立上がり上部に設置する状況を示す斜視図。
図5】外壁高さ調整金具を立上げ合板に設置した状態を示す断面図。
図6】第1金板を鉛直方向へ移動させた状態を示す断面図。
図7】ボルトの軸方向を鉛直方向へ向けた外壁高さ調整金具を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の外壁高さ調整金具の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の外壁高さ調整金具は、外壁パネルの設置高さを調整するための金具であり、主に、外壁パネルがバルコニー立上がりの上部や下屋の上部に設置される場合に使用される。なお、本発明における「第2金板の上端面」、「構造物」、「構造物の上端面」は、本実施形態においては、「屈曲板部の上端面34b」、「第2立上げ合板Y2」、「第2立上げ合板の上端面Y2a」が相当する。
【0022】
図1に示すように、外壁高さ調整金具1は、略Z字型状に折曲された第1金板2と、当該第1金板2を鉛直方向へ移動可能に支持固定する第2金板3と、第1金板2の上端部を挿通するボルト4と、を備えている。図1から図3に示す第1金板2及び第2金板3は、それぞれ板厚4mm~5mm程度の1枚の金板を折曲加工して形成された部材であり、低頭ボルト5と低頭ナット6とによって連結される。図2に示すように、第1金板2は、鉛直方向へ延びる板状の鉛直板部21と、当該鉛直板部21の下端21aから水平方向へ突出し、後述する外壁パネルPの下端面Paに係止する係止板部22と、鉛直板部21の上端21bから係止板部22と反対の方向へ突出する延出板部23と、鉛直板部21の幅方向の両端縁21cから延出板部23と同じ方向へ延出する一対の羽片24と、を有している。
【0023】
図1及び図2に示すように、鉛直板部21は、水平方向の略中央、且つ、下端部に板厚方向へ貫通する貫通孔21dが形成されており、この貫通孔21dに低頭ボルト5を挿通することができる。また延出板部23は、鉛直板部22の上端21bから水平方向へ延びる水平板部23aと、水平板部23aの先端部23bを鈍角に折り曲げて形成された傾斜板部23cと、を具備している。水平板部23aと傾斜板部23cとの間の角度θ1は、130度~140度程度とすることが望ましく、本実施形態では135度となっている。また図示するように傾斜板部23cは、ボルト4を挿通可能な雌ねじ孔23dが形成されており、内周面の雌ねじにボルト4の軸部41を螺着させることができる。
【0024】
図1及び図3に示す第2金板3は、第1金板2の羽片24間に設置される部材で、一方の板面31aを鉛直板部21の延出板部23側の板面である第1板面21eに当接する固定板部31と、当該固定板部31の下端部31bを係止板部22と同一の方向へ折り曲げて形成される載置板部32と、固定板部31の上端部31cを鉛直板部21と反対の方向へ折り曲げて形成される折曲板部33と、折曲板部33の先端部33aを鉛直板部21の方向へ折り返して形成され、且つ、先端34aが鉛直板部21の第1板面21e当接する屈曲板部34と、を有している。固定板部31は、第1金板2を鉛直方向へ移動可能に固定する部分であり、図示するように、水平方向の略中央に鉛直方向へ延びる長孔31dが形成されている。この長孔31dは、固定板部31を鉛直板部21に重ね合わせた際に貫通孔21dと整合する位置に形成されており、低頭ボルト5を挿通することができる。なお長孔31dは、低頭ボルト5が鉛直方向へ10mm~20mm程度移動可能となるよう長さと位置を調整して形成される。
【0025】
折曲板部33は、固定板部31の上端部31cを鈍角に折り曲げて形成することが望ましい。また固定板部31と折曲板部33との間の角度θ2は、130度~140度程度とすることが望ましく、本実施形態では135度となっており、ボルト4の固定板部31に対する傾斜角度と同一となっている。一方、屈曲板部34は、雌ねじ孔23dを挿通したボルト4の先端41aを押し当てられる部分であり、上端面34bが傾斜板部23cの下端面23eと相対向するとともに下端面23eに対して平行となっている。また屈曲板部34は、図示例のように折曲板部33の先端部33aを直角に折り曲げて形成することが望ましく、このような折り曲げ角度とすることにより、ボルト4の先端41aを屈曲板部34に押し付けた際に、折曲板部33が屈曲板部34を補強するため屈曲板部34の変形を効果的に抑えることができる。
【0026】
第1金板2及び第2金板3は、図1に示すように、固定板部31と鉛直板部21とを重ね合わせるとともに低頭ボルト5で貫通孔21d及び長孔31dを連通し、低頭ナット6を締付けることによって互いに連結固定される。一方ボルト4は、上方から雌ねじ孔23dに挿入され、軸部41の先端41aが屈曲板部34の上端面34bに当接した状態となっている。外壁高さ調整金具1の各寸法は特に限定されないが、係止板部22を載置板部32に当接させた際の全体の高さH1を130mm~140mm程度、載置板部32の先端32aから延出板部23の先端23fまでの距離L1を60mm~70mm程度、また図2に示す鉛直板部21の幅W1及び図3に示す固定板部31の幅W2をそれぞれ40mm程度とすることが望ましい。さらに、図1に示す載置板部32の先端32aから固定板部31の他方の板面31eまでの距離L2は、23mm~25mm程度とすることが望ましく、このような寸法であれば、外壁高さ調整金具1をバルコニーの立上がり部分のような不安定な場所に設置する場合であっても場所をとらず安定した状態で設置することができる。
【0027】
このように形成される外壁高さ調整金具1を水平な面に設置し、ボルト4に回転を加えると、傾斜板部23cがボルト4の軸方向へ沿って斜め方向へ移動する。例えば、ボルト4を頭部42側から見て時計回りに回転させると、傾斜板部23cは頭部42側へ移動する。このとき、鉛直板部21は、低頭ボルト5及び低頭ナット6による拘束と、第1板面21eに当接する屈曲板部34の先端34aとによって、頭部42側への水平移動が抑制され、長孔31dに沿って上方向へのみ移動する。また反対に、ボルト4を頭部42側から見て反時計回りに回転させると、傾斜板部23cは軸部41の先端41a側へ移動する。この場合も、鉛直板部21は、固定板部31に連結固定されているため水平移動が抑制され、長孔31dに沿って下方向へのみ移動する。なお図示するように、ボルト4は、傾斜板部23cの傾きに応じて先端41aが頭部42よりも鉛直板部21側に位置することになるため、施工者は、斜め上方向から頭部42に回転操作を加えることになる。
【0028】
続いて、外壁高さ調整金具1によって高さを調整される外壁パネルPについて説明する。図4及び図5に示す外壁パネルPは、建物の外壁を構成する部材であり、本実施形態ではバルコニーBに面して設置される。外壁パネルPは、板状の外壁仕上材P1と、当該外壁仕上材P1の裏面P1a側、且つ、外壁仕上材P1の幅方向の両端部に固定される一対の縦レール材P2と、を有している。外壁仕上材P1は、プレキャストコンクリートを均一な厚さに成型した幅1000mm~1020mm程度の板材であり、表面P1bには化粧仕上げが施されている。また縦レール材P2は、屋内側に開口した状態で外壁仕上材P1に埋設されている。
【0029】
このように形成される外壁パネルPは、図4に示すように、鉄骨梁材Xの上に立設する立上げ合板Yの更に上部に設置され、且つ、立上げ合板Yよりも屋内側へ設置される軸組材Zに支持固定される。立上げ合板Yは、下地となる第1立上げ合板Y1と、第1立上げ合板Y1よりも屋外側に設置される第2立上げ合板Y2とからなり、第2立上げ合板Y2は、第1立上げ合板Y1よりも高さが高く、上端面Y2aには外壁パネルPの幅方向の両端部を受ける受け金具Y3が設置される。また軸組材Zは、鉄骨梁材Xに立設する複数の軸組柱材Z1と、鉄骨梁材Xの上端面に載置される軸組横架材Z2と、を有しており、軸組柱材Z1は外壁仕上材P1の幅方向の両端部が位置する部分にそれぞれ配置される。
【0030】
図5に示すように、外壁パネルPは、下端面Paを第2立上げ合板Y2の上端面Y2aから十数ミリ程度離した状態で不図示の専用金具により軸組柱材Z1にボルト固定される。また外壁パネルPの下部に位置する第2合板Y2は、厚さ18mm~20mm程度の板材であり、通常外壁パネルPの下部に位置する軸組横架材Z2と比較して奥行き幅が非常に狭い。そのため、軸組横架材Z2に載置されることが前提であった従来の調整金具では、外壁パネルPの設置高さを調整することができない。
【0031】
次に、外壁高さ調整金具1を用いて外壁パネルPの高さを調整する方法について説明する。まず予め、外壁パネルPを軸組柱材Z1に固定するボルトを緩めておき、外壁パネルPを若干鉛直方向へ動かせる状態で仮固定しておく。そして図5に示すように、外壁高さ調整金具1の係止板部22を屋内側から外壁パネルPと第2立上げ合板Y2との間に差し込み、載置板部32を第2立上げ合板Y2の上端面Y2aに載置する。このとき、載置板部32は、屋外側へ突出することになるため、奥行き幅の狭い第2立上げ合板Y2に問題なく載置することができる。
【0032】
次に、図6に示すように、ボルト4を専用工具で回転操作して係止板部22を外壁パネルPの下端面Paに当接させ、さらにボルト4に回転を加えて第1金板2を上方向へ移動させ、外壁パネルPの設置高さを微調整する。なおこのとき、第1金板2の傾斜板部23cは水平板部23aに対して傾斜しているため、延出板部23全体が水平方向へ延びている場合と比較して、第1金板2の鉛直方向への移動速度が1/√2倍となる。そのため、隣り合う外壁パネルPの柄や目地幅とのバランスを考慮しながらより細やかに外壁パネルPの設置高さを調整することができ、施工精度を向上させることができる。また、ボルト4は頭部42を屋内側へ向けられているため、施工者は容易にボルト4に回転操作を加えることができる。
【0033】
外壁パネルPを所望する高さへ調整した後、最後に外壁パネルPを軸組柱材Z1に固定するボルトを締付け、外壁パネルPの設置を完了する。このように、本願の外壁高さ調整金具1は、ボルト4の先端41aを屈曲板部34の上端面34bに押し当てるので、従来の外壁高さ調整金具のようにボルトの先端を外壁パネルPの下に位置する建物基礎や横桟などの構造物に押し当てる必要がない。そのため、外壁パネルPの下に奥行き幅の十分でない構造物が設置される場合であっても、安定した状態でボルト4を回転操作し、外壁パネルPの設置高さを調整することができる。
【0034】
なお、本実施形態ではボルト4の軸方向を傾斜させた場合について説明したが、図7に示すように、第1金板2の上端部及び第2金板3の上端部をそれぞれ水平方向へ延出し、ボルト4の軸方向を鉛直方向へ向けてもよい。その場合は、第1金板2の延出板部23全体を水平方向へ延ばし、且つ、第2金板3に屈曲板部34を形成せずに折曲板部33を水平方向へ延ばせばよい。そして、ボルト4の先端41aを折曲板部33に押し当て、ボルト4を回転操作すれば、外壁パネルPの設置高さを調整することができる。
【0035】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る外壁高さ調整金具は、外壁パネルが下屋の上部やバルコニー立上がりの上部に位置する場合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 外壁高さ調整金具
2 第1金板
21 鉛直板部
21a 鉛直板部の下端
21b 鉛直板部の上端
21e 第1板面
22 係止板部
23 延出板部
23a 水平板部
23c 傾斜板部
23d 雌ねじ孔
23e 傾斜板部の下端面
3 第2金板
31 固定板部
31a 固定板部の一方の板面
31b 固定板部の下端部
31c 固定板部の上端部
32 載置板部
33 折曲板部
33a 折曲板部の先端部
34 屈曲板部
34b 屈曲板部の上端面(第2金板の上端面)
4 ボルト
41 軸部
41a 軸部の先端
42 頭部
P 外壁パネル
Pa 外壁パネルの下端面
Y2 第2立上げ合板(構造物)
Y2a 第2立上げ合板の上端面(構造物の上端面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7