(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109566
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】フォトマスク修正装置およびフォトマスクの修正方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/74 20120101AFI20220721BHJP
G03F 1/00 20120101ALI20220721BHJP
G03F 1/32 20120101ALI20220721BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G03F1/74
G03F1/00 Z
G03F1/32
H01J37/317 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004959
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
2H195
5C034
【Fターム(参考)】
2H195BB03
2H195BD32
2H195BD33
2H195BD35
2H195BD40
5C034DD09
(57)【要約】
【課題】適正な光透過率を実現するための膜加工を円滑に行うことができるフォトマスク修正装置を提供すること。
【解決手段】フォトマスクを載せる透明ステージと、前記透明ステージに前記マスク基板を重ねた状態で、前記集束イオンビーム装置により前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う修正領域への前記集束イオンビームの照射と同時に、前記透明ステージの表裏面のうちの一方側から照明光の照射を行う測定用照明部と、前記透明ステージの表裏面のうちの他方側に配置され、前記照明光が前記修正領域を透過した透過光を受光して受光量を測定する測定用受光部と、前記測定用受光部で測定した受光量に基づいて、前記集束イオンビーム装置による前記修正領域における前記マスクパターン膜の成膜または削減を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクにおけるマスク基板への集束イオンビームの照射に基づいて、マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う集束イオンビーム装置を備えるフォトマスク修正装置であって、
前記フォトマスクを載せる透明ステージと、
前記透明ステージに前記マスク基板を重ねた状態で、前記集束イオンビーム装置により前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う修正領域へ、前記透明ステージの表裏面のうちの一方側から照明光の照射を行う測定用照明部と、
前記透明ステージの表裏面のうちの他方側に配置され、前記照明光が前記修正領域を透過した透過光を受光して受光量を測定する測定用受光部と、
前記測定用受光部で測定した受光量に基づいて、前記集束イオンビーム装置による前記修正領域における前記マスクパターン膜の成膜または削減を制御する制御部と、を備える、
ことを特徴とするフォトマスク修正装置。
【請求項2】
前記測定用受光部は、前記照明光が前記修正領域を透過した透過光を継続的に受光して受光量を測定し、前記制御部は、前記測定用受光部の測定に同期して前記集束イオンビーム装置の制御を行う、
請求項1に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項3】
前記集束イオンビーム装置および前記測定用照明部は、前記透明ステージの表裏面のうちの表面側に配置され、
前記測定用受光部は、前記透明ステージの表裏面のうちの裏面側に配置される、
請求項1または請求項2に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項4】
前記測定用受光部は、光学顕微鏡である、
請求項3に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項5】
前記測定用照明部は、光ファイバを備え、前記光ファイバの先端から前記照明光を出射させる、
請求項3または請求項4に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項6】
前記集束イオンビーム装置および前記測定用受光部は、前記透明ステージの表裏面のうちの表面側に配置され、
前記測定用照明部は、前記透明ステージの表裏面のうちの裏面側に配置される、
請求項1または請求項2に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項7】
前記測定用受光部は、透過光が入射するシンチレータと前記シンチレータに接続された光電子増倍管で構成される、
請求項6に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項8】
前記測定用照明部は、照明光源を備える光学顕微鏡である、
請求項6または請求項7に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項9】
前記光学顕微鏡は、複数のマイクロミラーを備えるデジタルマイクロミラーデバイスと、撮像素子と、を備え、
前記デジタルマイクロミラーデバイスは、前記複数のマイクロミラーのうちの一部で、前記照明光源から入射した照明光を、前記修正領域へ出射させると同時に、前記複数のマイクロミラーの他の一部で、当該照明光の前記フォトマスクからの反射光を受けて前記撮像素子へ入射させるように設定されている、
請求項8に記載のフォトマスク修正装置。
【請求項10】
フォトマスクにおけるマスク基板へ集束イオンビームの照射に基づいて、マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行うフォトマスク修正方法であって、
集束イオンビーム装置により前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う修正領域へ、前記集束イオンビームの照射と同時に前記フォトマスクの表裏面のうちの一方側から照明光の照射を行い、
前記フォトマスクの表裏面のうちの他方側から前記修正領域を通過して入射する透過光を受光して受光量を測定し、
測定した受光量に基づいて得られる前記修正領域の光透過率が適正な値になったときに、前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を停止させる、
ことを特徴とするフォトマスク修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク修正装置およびフォトマスクの修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハーフトーン(グレーレベル)マスクの欠陥を、荷電粒子ビームを用いて修正するマスク欠陥修正装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ハーフトーンマスクは、露光光の光透過率が中間量であるパターン膜が形成されたフォトマスクである。このマスク欠陥修正装置は、パターンを形成すべき領域にパターン膜が付いていないか、もしくは膜厚が不足している、所謂白欠陥の領域に、荷電粒子ビームを照射することによりデポジション膜を形成して修正を行う。このマスク欠陥修正装置は、筐体内にステージが設けられ、このステージ上にフォトマスクを載せて移動させるように設けられている。このマスク欠陥修正装置は、フォトマスクの欠陥領域に荷電粒子ビームを照射してデポジション膜を形成する手段が配置された成膜作業領域と、フォトマスクが退避する退避領域と、を備えている。退避領域には、デポジション膜の膜厚測定を行う膜厚測定部が設置されている。
【0003】
上記のマスク欠陥修正装置では、以下のような複数の工程の繰り返しを行っている。まず、成膜作業領域にフォトマスクを配置する。その後、フォトマスクの欠陥領域に荷電粒子ビームを照射して標準デポジション膜を形成する。次に、フォトマスクを退避領域へ移動させて当該箇所のデポジション膜の膜厚を測定する。次に、再度フォトマスクを元の位置(成膜作業領域)に戻して当該箇所のデポジション膜の膜厚の測定値に補正を加えて再度荷電粒子ビームによる加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、上記のマスク欠陥修正装置では、マスク欠陥の修正に多くの工程と時間を要するという課題がある。特に、上記のマスク欠陥修正装置では、当該箇所のデポジション膜の膜厚を適正な値に近似させることはできるが、膜厚を適正な値に一致させることが困難である。すなわち、上記のマスク欠陥修正装置では、フォトマスクのパターン膜であるデポジション膜が適正な光透過率となるように膜加工を円滑に行うことができないという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、適正な光透過率を実現するための膜加工を円滑に行うことができるフォトマスク修正装置およびフォトマスクの修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、フォトマスクにおけるマスク基板への集束イオンビームの照射に基づいて、マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う集束イオンビーム装置を備えるフォトマスク修正装置であって、前記フォトマスクを載せる透明ステージと、前記透明ステージに前記マスク基板を重ねた状態で、前記集束イオンビーム装置により前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う修正領域へ、前記透明ステージの表裏面のうちの一方側から照明光の照射を行う測定用照明部と、前記透明ステージの表裏面のうちの他方側に配置され、前記照明光が前記修正領域を透過した透過光を受光して受光量を測定する測定用受光部と、前記測定用受光部で測定した受光量に基づいて、前記集束イオンビーム装置による前記修正領域における前記マスクパターン膜の成膜または削減を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記態様としては、前記測定用受光部は、前記照明光が前記修正領域を透過した透過光を継続的に受光して受光量を測定し、前記制御部は、前記測定用受光部の測定に同期して前記集束イオンビーム装置の制御を行うことが好ましい。
【0009】
上記態様としては、前記集束イオンビーム装置および前記測定用照明部は、前記透明ステージの表裏面のうちの表面側に配置され、前記測定用受光部は、前記透明ステージの表裏面のうちの裏面側に配置されることが好ましい。
【0010】
上記態様としては、前記測定用受光部は、光学顕微鏡であることが好ましい。
【0011】
上記態様としては、前記測定用照明部は、光ファイバを備え、前記光ファイバの先端から照明光を出射させることが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記集束イオンビーム装置および前記測定用受光部は、前記透明ステージの表裏面のうちの表面側に配置され、前記測定用照明部は、前記透明ステージの表裏面のうちの裏面側に配置されることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記測定用受光部は、透過光が入射するシンチレータと前記シンチレータに接続された光電子増倍管で構成されることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記測定用照明部は、照明光源を備える光学顕微鏡であることが好ましい。
【0015】
上記態様としては、前記光学顕微鏡は、複数のマイクロミラーを備えるデジタルマイクロミラーデバイスと、撮像素子と、を備え、前記デジタルマイクロミラーデバイスは、前記複数のマイクロミラーのうちの一部で、前記照明光源から入射した照明光を、前記修正領域へ出射させると同時に、前記複数のマイクロミラーの他の一部で、当該照明光の前記フォトマスクからの反射光を受けて前記撮像素子へ入射させるように設定されていることが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様は、フォトマスクにおけるマスク基板へ集束イオンビームの照射に基づいて、マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行うフォトマスク修正方法であって、前記集束イオンビーム装置により前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を行う修正領域へ、前記集束イオンビームの照射と同時に前記フォトマスクの表裏面のうちの一方側から照明光の照射を行い、前記フォトマスクの表裏面のうちの他方側から前記修正領域を通過して入射する透過光を受光して受光量を測定し、測定した受光量に基づいて得られる前記修正領域の光透過率が適正な値になったときに、前記マスクパターン膜の成膜または膜厚の削減を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、適正な光透過率を実現するための膜加工を円滑に行うことができるフォトマスク修正装置およびフォトマスクの修正方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の要部を示す説明図である。
【
図3-1】
図3-1は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いたフォトマスク修正方法を適用するフォトマスクの修正領域(黒欠陥)を示す断面図である。
【
図3-2】
図3-2は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いたフォトマスク修正方法を適用するフォトマスクの修正領域において、集束イオンビームを用いてマスクパターン膜の膜厚の削減を行う工程を示す断面図である。
【
図3-3】
図3-3は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いたフォトマスク修正方法を適用するフォトマスクの修正領域において、集束イオンビームを用いてマスクパターン膜の膜厚の削減が終了した状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いた修正方法における光透過率と加工時間との関係を示す図である。
【
図5-1】
図5-1は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いたフォトマスク修正方法を適用するフォトマスクの修正領域(白欠陥)を示す断面図である。
【
図5-2】
図5-2は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いたフォトマスク修正方法を適用するフォトマスクの修正領域において、集束イオンビームを用いてマスクパターン膜の成膜を行う工程を示す断面図である。
【
図5-3】
図5-3は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置を用いたフォトマスク修正方法を適用するフォトマスクの修正領域において、集束イオンビームを用いてマスクパターン膜の成膜が終了した状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の要部を示す説明図である
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の概略構成図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の要部を示す説明図であり、黒欠陥領域を検出する工程を示す。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の要部を示す説明図であり、黒欠陥の光透過率を修正する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るフォトマスク修正装置およびフォトマスクの修正方法の詳細を図面に基づいて説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率や数、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0020】
[第1の実施の形態]
(フォトマスク修正装置の概略構成)
本実施の形態に係るフォトマスク修正装置は、フォトマスクとしてのグレーレベルマスクに適用して用いる。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置1の概略構成を示している。フォトマスク修正装置1は、集束イオンビーム装置2と、フォトマスク50を載せる透明ステージ3と、測定用照明部としての第1照明部4および第2照明部5と、測定用受光部としての第1受光部6および第2受光部7と、制御部30と、を備える。制御部30は、集束イオンビーム装置2と、後述する照明光源19と、第1受光部6と、第2受光部7と、に接続されている。
【0022】
図2に示すように、フォトマスク50は、透明なマスク基板51と、その表面に形成されたマスクパターン膜52と、で構成されている。
【0023】
本実施の形態では、集束イオンビーム装置2は、中空の円筒形状の集束イオンビームカラム(以下、FIBカラムという)8と、差動排気機構を有する局所排気チャンバ9と、を備える。FIBカラム8は、配管10を介して真空ポンプ11に接続されている。真空ポンプ11には、真空ポンプ制御電源12が接続されている。
【0024】
図1および
図2に示すように、FIBカラム8は、局所排気チャンバ9の上部に連通するように連結されている。FIBカラム8は、図示しない集束イオンビーム光学系などを備える。FIBカラム8の先端部からは、イオンビームIbをフォトマスク50の表面に向けて出射するようになっている。また、イオンビームIbは、集束イオンビーム光学系を制御することにより、スキャンされるようになっている。
【0025】
局所排気チャンバ9は、透明ステージ3上に配置されたフォトマスク50の上面との間の空間を高真空度に維持する機能を有する。また、局所排気チャンバ9は、イオンビームIbを照射する箇所にマスクパターン膜52を堆積させる成膜に必要なデポガスを供給可能に設定されている。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態に係るフォトマスク修正装置1は、透明ステージ3を載せて透明ステージ3をX-Y方向に移動させる図示しない機構を有するX-Yステージ13を備えている。このX-Yステージ13には、ステージ制御電源14が接続されている。
【0027】
上記集束イオンビーム装置2は、透明ステージ3がX-Yステージ13によって、X-Y方向に移動されることにより、フォトマスク50の上面の任意の領域に対向し得るようになっている。すなわち、本実施の形態では、集束イオンビーム装置2が位置固定され、フォトマスク50が集束イオンビーム装置2に対して移動するように設定されている。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態では、X-Yステージ13の上には、複数の支柱15,16が設けられ、これら支柱15,16に支持フレーム17が架設されている。支持フレーム17の中央部には、集束イオンビーム装置2が固定されている。
【0029】
図1および
図2に示すように、第1照明部(測定用照明部)4は、局所排気チャンバ9の側部から内部に貫通するように設けられている。この第1照明部4は、光ファイバで構成されている。
図1に示すように、この第1照明部4は、光ファイバケーブル18を介して照明光源19に接続されている。照明光源19は、制御部30に接続されている。
図2に示すように、この第1照明部4の先端からは、照明光A1が照射される。
【0030】
図2に示すように、第1照明部4から照射される照明光Aは、フォトマスク50の表面に入射するように設定されている。特に、この照明光A1のフォトマスク50における照射スポットは、FIBカラム8から出射されてフォトマスク50に入射するイオンビームIbのビームスポットと重なるように設定されている。
【0031】
本実施の形態において、第1受光部(測定用受光部)6は、光学顕微鏡で構成されている。
図1に示すように、この第1受光部6は、X-Yステージ13の中央に形成された上下に貫通する開口部13A内に配置されている。第1受光部6は、上部に対物レンズ6Aを備える。このため、第1受光部6は、フォトマスク50および透明ステージ3を通過する透過光B1(
図2参照)を対物レンズ6Aで受光することができる。
【0032】
図1に示すように、この第1受光部6には、第2照明部(測定用照明部)5が備えられている。この第2照明部5には、照明光源20が接続されている。第1受光部6は、この第2照明部5および対物レンズ6Aを介して透明ステージ3側へ向けて照明光A2(
図6参照)へ出射することも可能である。第1受光部6は、制御部30からの制御信号に基づいて第2照明部5および照明光源20を制御するように設定されている。
【0033】
図2に示すように、第2受光部(測定用受光部)7は、シンチレータ7Aと、先端部がシンチレータ7Aに接続された光電倍増管(フォトマル)7Bと、で構成されている。この第2受光部7は、後述するフォトマスク50の欠陥領域を通過した光を捕捉する機能と、イオンビームIbが照射された位置から発生する2次荷電粒子(2次電子、2次イオンなど)を捕捉して、その強度情報をもとにイオンビームIbをスキャンしながら画像データを取得する機能と、を有する。これらの機能の利用の仕方は後述する。
【0034】
(フォトマスク修正装置を用いた第1の修正方法、動作および作用)
本実施の形態では、フォトマスク50におけるマスク基板51へイオンビームIbの照射に基づいて、マスクパターン膜52の成膜または膜厚の削減を行う。
【0035】
まず、透明ステージ3の上に、フォトマスク50を重ねた状態にセットする。集束イオンビーム装置2によりフォトマスク50の表面にイオンビームIbを照射し、この照射に伴って発生する2次荷電粒子としての電子を第2受光部7で検出して画像データを得ることができる。この画像データを用いて、
図3-1に示すような黒欠陥領域Dbや
図5-1に示すような白欠陥領域Dwの位置を認識して位置決めを可能にする。
【0036】
次に、フォトマスク50における修正領域(黒欠陥領域Db、白欠陥領域Dw)におけるマスクパターン膜52の成膜または膜厚の削減を行う(
図3-2および
図5-2参照)。
【0037】
具体的には、
図5-2に示すような成膜は、イオンビームIbとともに局所排気チャンバ9内にデポガスを供給しながら行う。一方、
図3-2に示すようなマスクパターン膜52の膜厚の削減は、イオンビームIbあるいはエッチングガスを吹き付けながら行う。
【0038】
このとき、
図2に示すように、成膜または膜厚の削減と同時に、第1照明部4から照明光A1をこの修正領域に照射し、マスクパターン膜52、マスク基板51および透明ステージ3を通過した透過光B1の受光量を第1受光部6で継続的に測定する。
【0039】
この第1受光部6で測定した受光量に基づいて得られる光透過率が適正な値(目標値:例えば70%)になるまで、成膜または膜厚の削減を継続し、光透過率が適正な値になったときに、集束イオンビーム装置2による成膜または膜厚の削減を停止させる。すなわち、本実施の形態では、制御部30は、第2受光部(測定用受光部)7の測定に同期して集束イオンビーム装置2の制御を行う。
【0040】
この結果、
図3-3および
図5-3に示すように、修正領域(黒欠陥領域Dbおよび白欠陥領域Dw)は、フォトマスク50の適正な(設計された)膜厚となり、修正が終了する。
【0041】
ちなみに、
図4は黒欠陥領域Dbにおける光透過率Thと集束イオンビーム装置2による膜厚の削減により光透過率の目標値(例えば、70%)を得るための加工時間を示す参考図である。本実施の形態に係るフォトマスク修正装置1では、加工時間を管理する必要がなく、マスクパターン膜52の修正作業中に、その光透過率を同時に得ることができため、適正な光透過率を実現するための膜加工を円滑に行うことができる。
【0042】
なお、本実施の形態に係るフォトマスクの修正方法では、第2照明部5及び照明光源20は用いないため、これらを省略したフォトマスク修正装置1としてもよい。また、本実施の形態においては、第2受光部7は、フォトマスク50の欠陥領域を通過した光を捕捉する機能を有しなくてもよい。
【0043】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態に係るフォトマスクの修正方法は、上記した第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置1を用いて行う。
【0044】
図6に示すように、本実施の形態に係るフォトマスクの修正方法では、第1受光部6の対物レンズ6Aを介して照明光A2を修正領域へ向けて照射する。
【0045】
本実施の形態では、照明光A2は、透明ステージ3およびフォトマスク50を経た透過光B2の受光量を第2受光部7で測定する。本実施の形態では、フォトマスク50の画像データの取得も、第2受光部7で行うことができるため、
図6に示す第1照明部4は、省略することも可能である。
【0046】
本実施の形態に係るフォトマスクの修正方法では、上記第1の実施の形態と同様に、加工時間を管理する必要がなく、マスクパターン膜52の修正作業中に、その光透過率を同時に得ることができため、適正な光透過率を実現するための膜加工を円滑に行うことができる。また、本実施の形態では、部品点数を削減することが可能である。
【0047】
[第3の実施の形態]
図7から
図9は、本発明の第3の実施の形態に係るフォトマスク修正装置の要部を示している。本実施の形態では、上記した第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置1において、第1受光部6にデジタルマイクロミラーデバイス(以下、DMDという)21を備えた光学系が追加され、上記第1の実施の形態に係る第1照明部4が省略された構成であり、他の構成は第1の実施の形態に係るフォトマスク修正装置1と同様である。
【0048】
図7に示すように、本実施の形態における第1受光部6は、光学顕微鏡にDMD21を備える光学系が、後述するように、照明光源20から供給される照明光A3を上端の対物レンズ6Aに導き、対物レンズ6Aから透明ステージ3およびフォトマスク50へ向けて照明光A3を照射するように設定されている。透明ステージ3およびフォトマスク50を透過した透過光B3は、第2受光部7で受光量が測定されるようになっている。
【0049】
図7に示すように、DMD21を備える光学系は、照明光A3をDMD21へ導くミラー23a,23bの群と、後述する反射光R,Raを撮像素子22へ導くミラー24a,24bの群と、を備える。ミラー23aで反射されてDMD21の駆動面に入射する照明光A3は、
図8に示すように、DMD21の駆動面に対して+12度の角度傾けたマイクロミラー27,29,31で反射される。マイクロミラー27,29,31で反射された照明光A3は、
図7に示すように、対物レンズ6Aから透明ステージ3およびフォトマスク50へ向けて出射されるようになっている。
【0050】
図8は、フォトマスク50のマスク基板51に黒欠陥52Bが生じている黒欠陥領域Dbが存在する場合を示す。この場合、マイクロミラー29,31で反射された照明光A3は、黒欠陥52Bとマスク基板51との界面で殆ど反射する反射光Rとなる。なお、照明光A3の一部は黒欠陥52Bを透過して透過光B3となる。
【0051】
また、
図8に示すように、例えばマイクロミラー27で反射した照明光A3は、黒欠陥52Bが存在しない領域のマスク基板51に入射して殆どがマスク基板51を通過してマスク基板51の上面と空気との界面で反射する反射光Raとなる。
【0052】
また、
図7および
図8に示すように、照明光A3のうちフォトマスク50のマスク基板51の上面で反射した反射光R,Raは、DMD21の駆動面に入射するようになっている。そして、DMD21の駆動面に入射する反射光R,Raは、DMD21の駆動面に対して-12度の角度傾けたマイクロミラー26,28,30で反射され、ミラー24a,24bの群で導かれて撮像素子22へ入射するように設定されている。本実施の形態では、撮像素子22でフォトマスク50における画像データを取得することができ、フォトマスク50の画像情報、位置情報などの特定を行うことが可能となる。
【0053】
具体的には、得られた画像データから、撮像素子22には所定量以上の反射光Rを受光しないはずの画素から出力がある領域が、黒欠陥領域Dbであることが検出できる。
【0054】
このようにして、検出された黒欠陥領域Dbに対しては、
図9に示すように、黒欠陥領域Dbに選択的に対応するマイクロミラー28,29,30,31などをDMD21の駆動面に対して-12度の角度に傾けて照明光A3を入射させる。それと同時に、制御部30は、黒欠陥52Bを透過する透過光B3の透過光量(受光量)を第2受光部7で測定させつつ、第2受光部7で測定された受光量に基づいて得られる光透過率が適正な値になるまで集束イオンビーム装置2によりエッチングを行わせ、光透過率が適正な値になったとき集束イオンビーム装置2によるエッチングを停止させる。このとき、黒欠陥領域Dbに対応しないマイ例えばマイクロミラー26,27などの他のマイクロミラーは、+12度の角度に傾けておく。
【0055】
本実施の形態に係るフォトマスク修正装置およびフォトマスクの修正方法では、加工時間を管理する必要がなく、マスクパターン膜52の修正作業中に、その光透過率を同時に得ることができため、適正な光透過率を実現するための膜加工を円滑に行うことができる。なお、本実施の形態では、反射光R,Raに着目して白欠陥を検出し、その白欠陥領域に照明光A3を選択的に入射させた状態でこの白欠陥領域へ選択的にマスクパターン膜52を成膜してもよい。この場合も、光透過率の適正なマスクパターン膜52を円滑に形成できる。
【0056】
[その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0057】
上記の第1~3の実施の形態において、集束イオンビーム装置2を位置固定し、透明ステージ3およびフォトマスク50を移動させる構成としたが、透明ステージ3およびフォトマスク50を位置固定し、集束イオンビーム装置2、第2受光部6、および第2受光部7を同期して移動させる構成としてもよい。
【0058】
なお、第1照明部4および第1受光部(対物レンズ6A)6から出射される照明光A1,A2,A3は、フォトマスク50を用いて行う露光工程で用いる露光光と波長が同じ光が好ましいが、露光光の波長と異なる照明光A1,A2,A3を用いても適正な光透過率を得ることが可能である。
【0059】
上記の第1~3の実施の形態においては、集束イオンビーム装置2に局所排気チャンバ9を備える構成としたが、フォトマスク50全体を真空チャンバ内に配置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
A1,A2,A3 照明光
B1,B2,B3 透過光
Db 黒欠陥領域
Dw 白欠陥領域
R 反射光
Ib イオンビーム
1 フォトマスク修正装置
2 集束イオンビーム装置
3 透明ステージ
4 第1照明部(測定用照明部)
5 第2照明部(測定用照明部)
6 第1受光部(測定用受光部)
6A 対物レンズ
7 第2受光部(測定用受光部)
7A シンチレータ
7B 光電倍増管
8 集束イオンビームカラム(FIBカラム)
9 局所排気チャンバ
10 配管
11 真空ポンプ
12 真空ポンプ制御電源
13 X-Yステージ
13A 開口部
14 ステージ制御電源
15,16 支柱
17 支持フレーム
18 光ファイバケーブル
19 照明光源
20 照明光源
21 デジタルマイクロミラーデバイス
22 撮像素子
23a,23b ミラー
24a,24b ミラー
25 駆動基板
26~31 マイクロミラー
30 制御部
50 フォトマスク
51 マスク基板
52 マスクパターン膜
52B 黒欠陥