(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109608
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】赤外線量測定システム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/48 20220101AFI20220721BHJP
【FI】
G01J5/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005003
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】521023757
【氏名又は名称】株式会社SoiLook
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】西藤 翼
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA14
2G066BC11
2G066CA01
2G066CA02
(57)【要約】
【課題】測定対象から放出される赤外線量を精度よく測定できる赤外線量測定システムを提供する。
【解決手段】測定対象Mから放出される赤外線量を測定する赤外線量測定システム1であって、測定対象Mから放出される赤外線を検出する赤外線検出部2と、赤外線検出2部によって赤外線が検出される赤外線測定領域2a内に配置される、赤外線量を放出する基準領域3aを有する基準部3と、赤外線測定部2によって測定された基準部3の基準領域3aから放出される赤外線量に基づいて測定対象Mから放出される赤外線量を補正する算出部4と、を備えており、基準部3が、基準領域3aから放出される赤外線量を調整する調整機能を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象から放出される赤外線量を測定する赤外線量測定システムであって、
測定対象から放出される赤外線を検出する赤外線検出部と、
該赤外線検出部によって赤外線が検出される赤外線測定領域内に配置される、赤外線量を放出する基準領域を有する基準部と、
前記赤外線測定部によって測定された前記基準部の基準領域から放出される赤外線量に基づいて測定対象から放出される赤外線量を補正する算出部と、を備えており、
前記基準部が、
前記基準領域から放出される赤外線量を調整する調整機能を有している
ことを特徴とする赤外線量測定システム。
【請求項2】
前記基準部が、
該基準部に対して照射される光の照度を測定する第一照度測定部と、
該第一照度測定部が測定した照度に関するデータを前記算出部に送信する送信部と、を備えており、
前記算出部は、
前記基準部から送信された前記第一照度測定部が測定した照度に関するデータに基づいて、測定対象から放出される赤外線量を補正する機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の温度測定システム。
【請求項3】
前記赤外線検出部が、
該赤外線検出部に対して照射される光の照度を測定する第二照度測定部と、
該第二照度測定部が測定した照度に関するデータを前記算出部に送信する送信部と、を備えており、
前記算出部は、
前記赤外線検出部から送信された前記第二照度測定部が測定した照度に関するデータおよび/または前記算出部から送信された前記第一照度測定部が測定した照度に関するデータに基づいて、測定対象から放出される赤外線量を補正する機能を有している
ことを特徴とする請求項1または2記載の温度測定システム。
【請求項4】
前記赤外線検出部および/または前記基準部が屋外に設置されるものであり、
前記赤外線検出部および/または前記基準部が、
前記赤外線検出部および/または前記基準部と太陽との相対的な位置を検出する位置検出部を備えており、
前記赤外線検出部および/または前記基準部に設けられた位置検出部の検出結果に基づいて、赤外線量を測定する条件を判断する判断部を備えている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の温度測定システム。
【請求項5】
前記算出部は、
前記基準部における基準領域から放出される赤外線量と、前記基準部までの距離と、に基づいて測定対象から放出される赤外線量を補正する機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の温度測定システム。
【請求項6】
前記赤外線検出部の赤外線測定領域内の一定の領域内において、測定対象が存在するか否かを検出する測定対象検出部を備えており、
前記算出部は、
前記測定対象検出部が前記一定の領域内に測定対象が存在することを検出すると、該一定の領域内の赤外線量に基づいて測定対象から放出される赤外線量を算出する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の温度測定システム。
【請求項7】
前記算出部によって補正された赤外線量に基づいて測定対象の温度を算出する温度算出部を備えている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の温度測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線量測定システムに関する。さらに詳しくは、遠隔で温度を測定するために使用できる赤外線量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の体温等の物体の温度を測定する場合、測定対象に直接接触して温度を測定する方法(接触式)と、接触対象に非接触で測定する方法(非接触式)がある。接触式は、測定対象の温度を正確に測定できる一方、温度を測定するセンサ等を測定対象に接触させなければならないので、測定できる対象や測定状況が制限される。
【0003】
非接触式は、測定対象を赤外線カメラ等によって測定し測定された赤外線量に基づいて測定対象の温度を推定するものである。非接触式は、ある程度測定条件は制限されるが、接触式で測定できない条件であっても測定できるという特徴がある。一方、非接触式は、測定対象までの距離や太陽外乱等によって検出される赤外線量が変動するため、接触式に比べて測定精度が低くなる。
【0004】
かかる非接触式の問題を解消する方法として、温度が一定に保たれた基準対象(黒体など)を測定対象と同時に測定して測定温度を補正する方法(特許文献1~3参照)や、測定対象までの距離を測定して距離により測定温度(赤外線量)を補正する方法(特許文献4参照)が開発されている。
【0005】
また、赤外線カメラ等が撮影する赤外線には、測定対象から放出されるものだけでなく、測定対象の表面で反射された赤外線や測定対象以外から赤外線カメラ等に入射される赤外線(併せて誤差光という)も含まれる。すると、誤差光を含んで測定対象の温度が推定されることになり、測定精度が低下する。そこで、赤外線を検出する装置に照度計を設け、誤差光による影響を除去する技術も開発されている(特許文献5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5398784号公報
【特許文献2】特許第6677473号公報
【特許文献3】特開2001-349786号公報
【特許文献4】特開2013-200137号公報
【特許文献5】特公平4-012836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、上述した方法によって、非接触式で温度を測定する場合における測定精度を向上することができるが、まだ十分とはいえない。とくに、特許文献1~3の技術は、基準対象や温度を測定する装置を屋内に設置した状態で使用するものであり、これらの装置を屋外に設置した場合に十分な測定精度を得ることは難しく、屋外でも測定対象の温度を精度よく非接触で測定できる装置が求められている。
【0008】
また、測定対象等の状況を把握するために測定対象等から放出される光線等を利用した非接触式の測定方法がある。かかる方法でも上述した非接触式の温度測定と同様な問題があり、温度測定以外の非接触式の測定方法でも、測定精度を向上することが望まれている。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、測定対象から放出される赤外線量を精度よく測定できる赤外線量測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の赤外線量測定システムは、測定対象から放出される赤外線量を測定する赤外線量測定システムであって、測定対象から放出される赤外線を検出する赤外線検出部と、該赤外線検出部によって赤外線が検出される赤外線測定領域内に配置される、赤外線量を放出する基準領域を有する基準部と、前記赤外線測定部によって測定された前記基準部の基準領域から放出される赤外線量に基づいて測定対象から放出される赤外線量を補正する算出部と、を備えており、前記基準部が、前記基準領域から放出される赤外線量を調整する調整機能を有していることを特徴とする。
第2発明の赤外線量測定システムは、第1発明において、前記基準部が、該基準部に対して照射される光の照度を測定する第一照度測定部と、該第一照度測定部が測定した照度に関するデータを前記算出部に送信する送信部と、を備えており、前記算出部は、前記基準部から送信された前記第一照度測定部が測定した照度に関するデータに基づいて、測定対象から放出される赤外線量を補正する機能を有していることを特徴とする。
第3発明の赤外線量測定システムは、第1または第2発明において、前記赤外線検出部が、該赤外線検出部に対して照射される光の照度を測定する第二照度測定部と、該第二照度測定部が測定した照度に関するデータを前記算出部に送信する送信部と、を備えており、前記算出部は、前記赤外線検出部から送信された前記第二照度測定部が測定した照度に関するデータおよび/または前記算出部から送信された前記第一照度測定部が測定した照度に関するデータに基づいて、測定対象から放出される赤外線量を補正する機能を有していることを特徴とする。
第4発明の赤外線量測定システムは、第1、第2または第3発明において、前記赤外線検出部および/または前記基準部が屋外に設置されるものであり、前記赤外線検出部および/または前記基準部が、前記赤外線検出部および/または前記基準部と太陽との相対的な位置を検出する位置検出部を備えており、前記赤外線検出部および/または前記算出部の位置検出部の検出結果に基づいて、赤外線量の測定条件を判断する判断部を備えていることを特徴とする。
第5発明の赤外線量測定システムは、第1、第2、第3または第4発明において、前記算出部は、前記基準部における基準領域から放出される赤外線量と、前記基準部までの距離と、に基づいて測定対象から放出される赤外線量を補正する機能を有していることを特徴とする。
第6発明の赤外線量測定システムは、第1から第5発明のいずれかにおいて、前記赤外線検出部の赤外線測定領域内の一定の領域内において、測定対象が存在するか否かを検出する測定対象検出部を備えており、前記算出部は、前記測定対象検出部が前記一定の領域内に測定対象が存在することを検出すると、該一定の領域内の赤外線量に基づいて測定対象から放出される赤外線量を算出することを特徴とする。
第7発明の赤外線量測定システムは、第1から第6発明のいずれかにおいて、前記算出部によって補正された赤外線量に基づいて測定対象の温度を算出する温度算出部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、基準部の基準領域から放出される赤外線量によって赤外線検出部が検出した赤外線量を補正するので、測定対象が放出する赤外線量を精度よく推定することができる。また、調整機能によって基準領域から放出される赤外線量を調整すれば、測定する条件に応じて測定対象が放出する赤外線量を適切に補正できる。したがって、測定状況が変化しても、赤外線量を精度よく推定することができる。
第2発明によれば、赤外線検出部が検出した赤外線量に含まれる、測定対象に照射される光に起因する赤外線量を推定できる。したがって、測定対象に照射される光に起因する赤外線量を除去することができるので、測定対象から放出される赤外線を推定する精度を向上できる。
第3発明によれば、赤外線検出部が検出した赤外線量に含まれる、赤外線検出部に照射される光に起因する赤外線量を推定できる。したがって、測定対象に照射される光に起因する赤外線量だけでなく赤外線検出部に照射される光に起因する赤外線量を除去できるので、測定対象から放出される赤外線を推定する精度を向上できる。
第4発明によれば、判断部が判断した赤外線量を測定する条件に基づいて、赤外線検出部が検出した赤外線量に含まれる、太陽外乱に起因する赤外線量の変動を推定できる。したがって、太陽外乱の影響を除去することができるので、測定対象が放出する赤外線量を精度よく推定することができる。
第5発明によれば、赤外線検出部から基準部までの距離によって、赤外線検出部が検出した基準領域から放出される赤外線量を補正できるので、測定対象から放出される赤外線を推定する精度を向上できる。
第6発明によれば、赤外線検出部の赤外線測定領域内に測定対象が存在している状況になると測定対象から放出される赤外線量を測定するので、無駄な測定を行わなくてよくなり、システムを効率よく稼動させることができる。
第7発明によれば、測定対象の温度を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は本実施形態の赤外線量測定システム1の概略ブロック図であり、(B)は本実施形態の赤外線量測定システム1による温度測定の概略フロー図である。
【
図2】(A)は本実施形態の掃除ロボット1による測定対象Mの測定状況の概略説明図であり、(B)は赤外線測定領域2aの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態の赤外線量測定システムは、測定対象から放出される赤外線を非接触で測定する赤外線量測定システムであって、赤外線量の測定精度を向上させることができるようにしたことに特徴を有している。
【0014】
本実施形態の赤外線量測定システムによって赤外線量を測定する対象もとくに限定されない。測定対象として、例えば、人体や天然ガスや産業ガスなどの気体、建造物等を挙げることができる。
【0015】
また、本実施形態の赤外線量測定システムは、測定された赤外線量を利用して測定対象の状態や性質、温度、判断指標等を推定することができる。例えば、人体や物体であれば測定された赤外線量を利用して体温や温度を推定することができる。また、プラント設備ガスの供給ラインや都市ガスの供給ライン等におけるガス漏れを推定することも可能である。さらに、測定対象がガスであれば、ガスを構成する代表成分や危険度等を推定することも可能である。
【0016】
以下では、本実施形態の赤外線量測定システムによって、測定された赤外線量を利用して測定対象の温度を推定する場合を代表として説明する。
【0017】
<本実施形態の赤外線量測定システム1>
図1に示すように、本実施形態の赤外線量測定システム1は、赤外線検出部2と、基準部3と、算出部4と、記憶部5と、表示部6と、を有している。
【0018】
<赤外線検出部2>
赤外線検出部2は、測定対象Mから放出される赤外線を測定する検出部2bを有している。この検出部2bは、一定の領域の温度を複数のエリアに分けて測定できる機能を有している。例えば、赤外線カメラや非接触マイクロボロメータ、MCTカメラ、インジウムガリウム(InGaAs)砒素カメラ等を検出部2bとして使用することができる。以下では、検出部2bが赤外線を測定する領域を赤外線測定領域2aという。
【0019】
この赤外線検出部2は通信部2cを有している。この通信部2cは、検出部2bが測定した赤外線量や測定タイミング、赤外線検出部2の位置情報、検出部2bの向き(測定方向)等を後述する算出部4に無線または有線で送信する機能を有している。なお、通信部2cは、算出部4からの信号を検出部2bに供給するようになっていてもよい。この場合には、算出部4からの信号に基づいて検出部2bの作動(赤外線測定領域2aの設定や撮影するタイミング等)を制御することが可能になる。
【0020】
<基準部3>
基準部3は、一定の温度に維持できる基準領域3aと、この基準領域3aの温度を調整する調整機能を有する調整部3bと、を有している。言い換えれば、基準部3は、基準領域3aから所定の量の赤外線を放出でき、しかも、調整部3bによって放出する赤外線の量を調整できるようになっている。この基準部3は、赤外線検出部2が測定した赤外線量を補正するために設けられており、赤外線検出部2によって測定対象Mを測定する際に、基準領域3aが測定対象Mとともに赤外線測定領域2a内に位置するように配設される(
図2(B)参照)。または、赤外線検出部2によって測定対象Mを測定する際に、赤外線測定領域2a内に測定対象Mと基準部3の基準領域3aの両方が含まれるように、赤外線検出部2は赤外線測定領域2aを設定する。
【0021】
この基準部3は、基準領域3aを一定の温度に維持できる機能を有していればよく、その構成はとくに限定されない。例えば、基準部3は、基準領域3aとなる黒体板と、黒体板の温度を調整する調整部3bと、を有する構成とすることができる。例えば、ペルチェ素子をこの黒体板に密着するように取り付けて、調整部3bによってペルチェ素子に供給する電流量を調整すれば、黒体板の温度を調整することができる。黒体板としては、例えば、表面に黒体塗料が塗布されたアルミプレート等を採用することができる。
【0022】
また、基準部3は通信部3cを有していてもよい。通信部3cは、例えば、基準領域3aの温度や基準部3の位置情報、基準部3の向き(赤外線の放出方向)等の情報を後述する算出部4に無線または有線で送信する機能や、算出部4から送信される調整部3bの作動を制御する信号を受信する機能を有するものである。かかる通信部3cを有していれば、基準部3と遠隔で設置された算出部4に基準領域の温度などの情報を送信することができる。また、遠隔の算出部4から、調整部3bの作動を制御する信号を送信すれば、基準領域3aの温度などを調整することも可能になる。
【0023】
<算出部4>
算出部4は、赤外線検出部2が測定した赤外線量の測定データに基づいて測定対象Mを含む赤外線測定領域2a内の各部(以下、測定対象M等という場合がある)の温度を算出する機能を有している。この算出部4では、赤外線量の測定データのうち、測定対象M等から放射された赤外線量(測定赤外線量)と、基準部3の基準領域3aから放射された赤外線量(基準赤外線量)と、を比較して、測定対象M等の温度を補正する機能を有している。例えば、以下の方法で、測定対象M等の温度を補正することができる。
【0024】
例えば、赤外線検出部2における赤外線測定領域2aの各部分の測定赤外線量のうち、基準赤外線量と一致する測定赤外線量となる部分(基準部分)を特定する。すると、基準部分は、基準部3の基準領域3aと推定される。ついで、測定対象Mの測定赤外線量と、基準部分の測定赤外線量とを、比較すれば、測定対象Mの温度を推定することができる。
【0025】
算出部4が基準赤外線量を把握する方法はとくに限定されない。例えば、通常のCCDカメラ等のように赤外線検出部2の赤外線測定領域2aと同じ領域を撮影する機器を設けておく。そして、機器が撮影した画像に基づいて、基準部3の基準領域3aが占める領域を判断し、その領域の赤外線量を基準赤外線量とすることができる。この場合、基準部3の基準領域3aの位置は、機器が撮影した画像を人が確認して判断してもよいし、算出部4が画像解析などの方法で判断してもよい。また、赤外線検出部2の赤外線測定領域2aが撮影する領域や基準部3が固定されている場合であれば、赤外線検出部2を設置した際に、赤外線測定領域2a内において基準部3の基準領域3aが撮影される位置を予め算出部4に入力しておいてもよい。
【0026】
<記憶部5>
記憶部5は、赤外線検出部2の検出部2bが測定した赤外線量や、算出部4が算出した温度のデータ、基準部3から送信される基準領域3aの温度などの情報等を記憶する機能を有している。例えば、赤外線量のデータと、赤外線量が測定された赤外線測定領域2a内の領域の座標情報と、測定した日時等と、を関連付けて記憶する機能を有している。また、算出部4が算出した温度のデータと、算出した温度データのベースとなる赤外線量が測定された赤外線測定領域2a内の領域(つまり基準部3の基準領域3aの位置)の座標情報と、測定した日時等と、を関連付けて記憶する機能を有している。さらに、赤外線検出部2の設置位置や撮影方向の情報、また、基準部3の位置情報や基準部3の向きが供給される場合には、これらの情報も、上述した赤外線量のデータ等とともに、測定条件情報として記憶する機能を有していてもよい。
【0027】
また、記憶部5は、外部からの要求に応じて、記憶しているデータを供給する機能を有している。例えば、後述する表示部6からの要求に応じて、算出部4が算出した温度のデータと、算出した温度データのベースとなる赤外線量が測定された赤外線測定領域2a内の領域の座標情報と、を供給する機能を記憶部5は有している。
【0028】
なお、赤外線検出部2とともに通常のCCDカメラ等で赤外線検出部2の赤外線測定領域2aと同じ領域を撮影している場合には、記憶部5は、CCDカメラ等で撮影した画像を記憶する機能を有していてもよい。具体的には、CCDカメラ等で撮影した画像を、同じ時間に測定された赤外線量や、その赤外線量から算出された温度データ、測定した日時等と関連付けて記憶する機能を有していてもよい。もちろん、CCDカメラ等の設置位置や撮影方向の情報がCCDカメラ等から供給される場合には、これらの情報も、上述した赤外線量のデータ等とともに、測定条件情報として記憶する機能を有していてもよい。
【0029】
<表示部6>
表示部6は、算出部4からの指示に基づいて、算出部4が算出した赤外線測定領域2aの温度分布を二次元画像として表示する機能を有するものである。例えば、記憶部5から供給されたデータ、例えば、算出部4が算出した温度のデータと、算出した温度データのベースとなる赤外線量が測定された赤外線測定領域2a内の領域の座標情報と、に基づいて、算出部4が赤外線測定領域2aの温度分布の二次元画像を形成する。この情報が算出部4から送信されると、温度分布の二次元画像を表示できる機能を表示部6は有している。かかる表示部6としては、例えば、一般的なディスプレイ等を挙げることができる。
【0030】
なお、赤外線検出部2とともに通常のCCDカメラ等で赤外線検出部2の赤外線測定領域2aと同じ領域を撮影している場合には、表示部5は、温度分布を二次元画像とともにCCDカメラ等で撮影した画像を表示できるようになっていてもよい。すると、測定対象Mの位置と温度データとを関連付けて認識しやすくなる。
【0031】
<本実施形態の赤外線量測定システム1の作動>
本実施形態の赤外線量測定システム1が以上のごとき構成を有して入れば、以下のようにすれば、測定対象Mの温度を推定することができる。
【0032】
まず、
図1(B)に示すように、基準部3の基準領域3aの温度(言い換えれば、基準領域3aから放出する赤外線の量)が所定の温度(所定の赤外線の量)になるように調整する(S1)。例えば、基準部3の基準領域3aの温度が40℃になるように調整する。なお、基準領域3aの温度の情報は、通信部3cによって算出部4に送信される。
【0033】
なお、基準部3の基準領域3aの温度(基準領域3aから放出する赤外線の量)は、予め定めておいてもよいし、使用する環境に応じて変更してもよい。予め定めている場合には、その温度を算出部4に記憶させておいてもよい。また、使用する環境に応じて変更する場合には、設定した温度(赤外線の量)の情報は測定開始前に算出部4に入力される。この場合、設定した温度(赤外線の量)の情報は、人が算出部4に入力するようにしてもよいし、上述したように、基準部3から算出部4に送信するようにしてもよい。
【0034】
ついで、赤外線測定領域2a内に測定対象Mと基準部3の基準領域3aの両方が含まれるように、赤外線検出部2の検出部2bを調整する(
図2(B)参照)。例えば、検出部2bが赤外線カメラであれば、その向きやフォーカスを調整して、測定対象Mと基準部3の基準領域3aからの赤外線を受光できるように、検出部2bを調整する(S2)。
【0035】
検出部2bの調整が終了すると、赤外線検出部2の検出部2bによる赤外線量を測定する(S3)。なお、赤外線量の変動を測定する場合には、赤外線量の測定を連続して実施してもよいし、一定の期間ごと(例えば1秒間に60回)に赤外線量を測定してもよい。なお、ここでいう赤外線量の測定を連続して行うとは、0.1秒以下の間隔で測定を実施する場合を含んでいる。
【0036】
検出部2bで測定された赤外線量のデータは通信部2cによって算出部4に送信され、赤外線測定領域2内で測定された赤外線量に基づいて、赤外線測定領域2aの各部の温度が算出部4によって算出される。また、算出部4は、赤外線測定領域2aの各部の温度とその座標に基づいて、温度分布画像を形成する。
【0037】
算出される赤外線測定領域2aの各部の温度に関するデータや、算出部4が作成した温度分布画像のデータは、記憶部5に記憶される。また、温度分布画像のデータが表示部6に送信されると、表示部6に温度分布画像が表示される。すると、温度分布画像に基づいて、赤外線測定領域2内の測定対象Mの温度を把握することができる。
【0038】
ここで、赤外線測定領域2a内には基準部3の基準領域3aが位置しているので、算出部4は、基準領域3aの温度に基づいて、赤外線測定領域2a内各部の温度を補正することができる。
【0039】
例えば、算出された基準部3の基準領域3aの温度が、基準部3から送信された情報に含まれる基準領域3aの温度と同じであれば、算出部4は赤外線測定領域2a内各部の温度を補正せずに、算出された温度を各部の温度とする。
【0040】
一方、算出された基準部3の基準領域3aの温度が、基準部3から送信された情報に含まれる基準領域3aの温度からズレていれば、そのズレに基づいて、赤外線測定領域2a内各部の温度を補正する。
【0041】
このように、本実施形態の赤外線量測定システム1では、基準部3の基準領域3aの温度に基づいて赤外線測定領域2a内各部の温度を補正できる。したがって、赤外線検出部2から測定対象Mまでの距離が不明である場合や変動する場合でも、測定対象Mの温度を正確に推定することができる。
【0042】
<第一照度測定部11および第二照度測定部12>
本実施形態の赤外線量測定システム1では、基準部3の基準領域3aの温度に基づいて赤外線検出部2の赤外線測定領域2a内各部の温度を補正できる。しかし、屋外で測定対象M等の温度を測定する場合には、測定対象Mや基準部3の基準領域3a、赤外線検出部2の検出部2bに太陽光などが照射されると、照射光の影響で算出される測定対象M等の温度に誤差が生じる可能性がある。
【0043】
例えば、赤外線検出部2の検出部2bに太陽光などが照射されると、その照射光に含まれる赤外線の量の分だけ、測定対象M等の温度が上昇する。測定対象Mに照射された赤外線が赤外線検出部2の検出部2bに入光した場合も同様に、照射光に含まれる赤外線の量の分だけ、測定対象M等の温度が上昇する。また、基準部3の基準領域3aに照射された赤外線が赤外線検出部2の検出部2bに入光した場合には、基準領域3aに照射された照射光に含まれる赤外線の量の分だけ、基準領域3aの温度が上昇する。つまり、測定対象M等の温度を推定する基準となる温度が誤差を含むことになる。すると、基準領域3aの温度のが誤差に起因して、測定対象M等の温度に誤差が生じることになる。
【0044】
かかる照射光に起因する誤差を補正するうえでは、赤外線検出部2の検出部2bや基準部3に対して照射される光の照度を測定することが望ましい。つまり、赤外線検出部2の検出部2bや基準部3に照射された光の照度を測定し、赤外線検出部2の検出部2bが測定する赤外線量を補正すれば、照射光に起因する誤差を補正することが可能になる。
【0045】
図1(A)および
図2(A)に示すように、基準部3には、基準部3に照射される光の照度を測定する、例えば、照度センサモジュール等の一般的な照度センサからなる第一照度測定部11を設ける。この第一照度測定部11は、基準部3の通信部3cに測定した照度のデータを送信する機能を有している。
【0046】
また、
図1(B)に示すように、算出部4には、第一照度測定部11が測定した照度のデータに基づいて、赤外線検出部2の検出部2bが測定した赤外線量のデータを補正する機能を有する照射光補正部4cを設ける。具体的には、照度のデータに基づいて基準部3に照射された照射光に含まれる赤外線の量を推定し、その赤外線量を測定した基準領域3aの赤外線量から減算する機能を有する照射光補正部4cを設ける。
【0047】
かかる構成とすれば、基準部3に照射される照射光の影響による基準領域3aの温度のズレを補正できる。すると、補正された基準領域3aの温度に基づいて測定対象M等の温度を補正すれば、測定対象M等の温度を精度よく把握できる。
【0048】
また、
図1(A)および
図2(A)に示すように、第一照度測定部11だけでなく、赤外線検出部2にも第二照度測定部12を設けることが望ましい。具体的には、赤外線検出部2に、赤外線検出部2に照射される光の照度を測定する、例えば、照度センサモジュール等の一般的な照度センサからなる等の第二照度測定部12を設ける。そして、第二照度測定部12に、赤外線検出部2の通信部2cに測定した照度のデータを送信する機能を設ける。
【0049】
また、算出部4の照射光補正部4cに、第一照度測定部11が測定した照度のデータと、第二照度測定部12が測定した照度のデータとに基づいて、赤外線検出部2の検出部2bが測定した赤外線量のデータを補正する機能を設ける。具体的には、第一照度測定部11が測定した照度のデータに基づいて基準部3に照射された照射光に含まれる赤外線の量(基準部赤外線照射量)だけでなく、第二照度測定部12が測定した照度のデータに基づいて赤外線検出部2の検出部12bに照射された照射光に含まれる赤外線の量(検出部赤外線照射量)を算出する機能を設ける。そして、算出された基準部赤外線照射量および検出部赤外線照射量を測定した赤外線量から減算する機能を設ける。
【0050】
かかる構成とすれば、基準部3だけでなく赤外線検出部2の検出部12bに照射された照射光の影響に起因する算出部4が算出する温度のズレを補正できるので、測定対象Mの温度の測定精度を高くできる。
【0051】
<位置検出機能>
屋外において、赤外線検出部2や基準部3を設置して所定の場所や領域の温度等を測定する場合、周囲の状況、とくに太陽光が測定する温度などに影響を与える。そこで、測定に好ましい設置条件や測定時間等を把握する上では、以下の構成を有していることが望ましい。
【0052】
図1(A)および
図2(A)に示すように、赤外線検出部2と基準部3の両方またはいずれか一方に、太陽との相対的な位置を検出する位置検出部を設ける。具体的には、位置検出部は、GPS等の全地球測位システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)と利用したセンサ21,22を備えており、センサ21,22によって、赤外線検出部2と基準部3の位置を把握できる機能を有している。この位置検出部には、センサ21,22が検出した情報を、判断部25に送信する機能を設ける。
【0053】
また、判断部25には、位置検出部から送信されるセンサ21,22が検出した情報に基づいて、太陽光の位置を把握し、太陽光の位置と赤外線検出部2および基準部3との相対的な位置を判断する機能を設ける。しかも、判断部25には、太陽光の位置と赤外線検出部2および基準部3との相対的な位置から赤外線検出部2および基準部3に照射する照射光を推定する機能を設ける。
【0054】
かかる位置検出機能を設けておけば、赤外線検出部2および基準部3を、両者を設置する予定の位置に配置するだけで、その位置において、赤外線検出部2や基準部3に照射される太陽光の影響を推定することができる。すると、実際に測定実験を行わなくても、測定を実施する時間等において、赤外線検出部2および基準部3の設置場所が測定に適しているか否かを、判断することができる。したがって、赤外線量測定システム1の設置場所などを適切に選択することができる。
【0055】
また、実際に設置した後でも、上述した第一照度測定部11や第二照度測定部12のデータともに、赤外線検出部2や基準部3に照射される太陽光の影響を推定したデータを利用すれば、太陽光の影響による測定誤差を少なくすることができる。
【0056】
<算出部4について>
また、算出部4は、基準部3と赤外線検出部2との距離に基づいて、基準部3における基準領域3aから放出される赤外線量を補正する機能を有していてもよい。この場合、基準部3と赤外線検出部2との距離に起因する赤外線量の減少の影響を適切に判断できるので、基準領域3aから放出される赤外線量を適切に補正できる。すると、基準領域3aから放出される赤外線量に基づく測定温度の補正精度が向上するので、測定対象Mの温度の測定精度を高くできる。
【0057】
<測定制御部>
本実施形態の赤外線量測定システム1では、赤外線検出部2の赤外線測定領域2a内における所定の領域に位置する測定対象Mの温度を選択的に測定するようにしてもよい。
【0058】
例えば、測定対象Mが通過する領域にセンサを設けて、このセンサが測定対象Mを検出すると、赤外線測定領域2aにおいてセンサが設けられた位置と対応する領域の赤外線量から測定対象Mの温度を算出するようにしてもよい。
【0059】
かかる構成とすれば、赤外線測定領域2a内に複数の物体が存在する場合でも、選択的に測定対象Mの温度を算出することができ、測定対象Mの温度算出誤差を抑制することができる。
【0060】
なお、通常のCCDカメラ等のように赤外線検出部2の赤外線測定領域2aと同じ領域を撮影する機器を設けた場合には、その機器が撮影した画像を画像処理して、測定対象Mの有無や測定対象Mの位置を判断するようにしてもよい。
【0061】
上述した赤外線量測定システムは、温度測定に限らず、測定された赤外線量を利用して測定対象の状態や性質、温度、判断指標等を推定するための装置として使用できる。測定対象の状態や性質等の推定に使用する場合には、上述した算出部4は、赤外線検出部2が測定した赤外線量の測定データに基づいて、測定対象Mの性質などを推定するのはいうまでもない。また、この場合でも、基準部3の基準領域3aが放出する赤外線量を基準赤外線量として測定赤外線量を補正できるし、照度計により測定した各赤外線照射量に基づいて測定赤外線量を補正できるので、測定対象Mの性質などを推定する精度を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の赤外線量測定システムは、遠隔で温度を測定するシステムに適している。
【符号の説明】
【0063】
1 赤外線量測定システム
2 赤外線検出部
2a 赤外線測定領域
3 基準部
3a 基準領域
4 算出部
11 第一照度測定部
12 第二照度測定部
20 位置検出部
25 判断部
M 測定対象