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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109625
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】電気接続部材、及び接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/51 20110101AFI20220721BHJP
   H01R 11/01 20060101ALN20220721BHJP
【FI】
H01R12/51
H01R11/01 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005028
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】313001332
【氏名又は名称】積水ポリマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】神谷 翼
(72)【発明者】
【氏名】今野 英明
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA21
5E223AB20
5E223BA27
5E223BA68
5E223BB06
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB09
5E223DB25
(57)【要約】
【課題】導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、高い導通接続性を確保する。
【解決手段】第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続する電気接続部材において、厚さ方向に圧縮させた際に第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続させる導電部112が設けられている導電部材110と、導電部材の外側に設けられ、導電部材を第1の接続対象物及び第2の接続対象物に接触させながら導電部材を導電部材の厚さ方向に圧縮させた状態に保持させる固着部材120と、固着部材の外側に設けられ、固着部材よりも厚さが大きい支点部材140と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続する電気接続部材において、
厚さ方向に圧縮させた際に前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とを導通接続させる導電部が設けられている導電部材と、
前記導電部材の外側に設けられ、前記導電部材を前記第1の接続対象物及び前記第2の接続対象物に接触させながら前記導電部材を前記導電部材の厚さ方向に圧縮させた状態に保持させる固着部材と、
前記固着部材の外側に設けられ、前記固着部材よりも厚さが大きい支点部材と、を備える
電気接続部材。
【請求項2】
前記支点部材は、少なくとも前記固着部材よりも硬質な材質で形成されている
請求項1に記載の電気接続部材。
【請求項3】
前記支点部材は、前記固着部材の外側に互いに対向するように1対設けられている
請求項1又は2に記載の電気接続部材。
【請求項4】
前記支点部材は、前記固着部材の外周を取り囲むように設けられている
請求項1又は2に記載の電気接続部材。
【請求項5】
前記導電部材が前記固着部材の内側に複数設けられている
請求項1~4の何れか1項に記載の電気接続部材。
【請求項6】
前記導電部材が前記固着部材の内側に複数行、複数列設けられている
請求項5に記載の電気接続部材。
【請求項7】
前記固着部材が更に前記導電部材の間にも設けられている
請求項5又は6に記載の電気接続部材
【請求項8】
前記導電部材は、導電部が複数設けられている
請求項1~7の何れか1項に記載の導電部材。
【請求項9】
少なくとも導電部材と固着部材が設けられている電気接続部材で第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続させて構成される接続構造において、
少なくとも前記固着部材よりも厚さが大きい支点部材が前記固着部材の外側に設けられており、
前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が前記固着部材により引き寄せられて内側に撓むことによって前記導電部材を押圧する
接続構造。
【請求項10】
前記支点部材は、前記電気接続部材に設けられており、
請求項1~8の何れか1項に記載の電気接続部材の導電部材が前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物との間に圧縮された状態で固着されることによって、前記電気接続部材が前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とを導通接続させる
請求項9に記載の接続構造。
【請求項11】
前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が撓み変形が可能であり、かつ、前記導電部材を押圧する状態を維持可能な剛性を有する
請求項9又は10に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続部材、及び接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用窓ガラスは、例えば、デフロスター、デフォッガー等が設けられるために、ガラス板上に導電層からなる給電部が形成され、その給電部と端子を電気接続する必要がある。給電部への端子の電気接続には、半田付けが広く使用されていた。しかしながら、鉛規制の広がりにより、鉛フリーハンダによる代替が求められているが、鉛フリーハンダは、鉛ハンダより融点が20~45℃高いことから、固着不十分で剥がれ易かった。
【0003】
デフロスター、デフォッガー等の車載電気設備で給電部と端子を電気接続する電気接続部材は、半田付けの代替で固着力を高めることが望ましい。半田フリーで接続対象物間の固着力を高める電気接続部材として、例えば、特許文献1~3では、ゴム状弾性体の内部にニッケル、コバルト、鉄等の磁性導電性フィラーを含有させて構成される導電部材を接続対象物に接触させながら、粘着剤を含む固着部材で厚さ方向に圧縮させた状態に保持させる電気接続部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/075810号
【特許文献2】国際公開第2020/203037号
【特許文献3】国際公開第2020/218520号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気接続部材を長期間使用することによって、固着部材の粘着力が弱まることがある。固着部材の粘着力が弱まると、導電部材の導電部が被着体となる被着体から離隔して、十分な導通性が図れなくなることがあった。このため、より高い導通接続性を確保するためには、導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持する必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、高い導通接続性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続する電気接続部材において、厚さ方向に圧縮させた際に前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とを導通接続させる導電部が設けられている導電部材と、前記導電部材の外側に設けられ、前記導電部材を前記第1の接続対象物及び前記第2の接続対象物に接触させながら前記導電部材を前記導電部材の厚さ方向に圧縮させた状態に保持させる固着部材と、前記固着部材の外側に設けられ、前記固着部材よりも厚さが大きい支点部材と、を備える。
【0008】
本発明の一態様によれば、固着部材の外側に固着部材よりも厚さが大きい支点部材を設けることによって、少なくとも一方の被着体が支点部材を支点として固着部材により引き寄せられて撓んで導電部材を加圧するようになるので、導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、高い導通接続性を確保できるようになる。
【0009】
本発明の一態様では、前記支点部材は、少なくとも前記固着部材よりも硬質な材質で形成されていることとしてもよい。
【0010】
このようにすれば、第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方の被着体を押圧した際に、支点部材が支点となって、当該被着体が内側に撓み変形し易くなる。
【0011】
本発明の一態様では、前記支点部材は、前記固着部材の外側に互いに対向するように1対設けられていることとしてもよい。
【0012】
このようにすれば、第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方の被着体を押圧した際に、支点部材を支点にして内側に撓み変形し易くなる。
【0013】
本発明の一態様では、前記支点部材は、前記固着部材の外周を取り囲むように設けられていることとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方の被着体を押圧した際に、固着部材の外周を取り囲むように設けられている支点部材が支点となって、当該被着体を内側に撓み変形させて導通接続できるようになる。
【0015】
本発明の一態様では、前記導電部材が前記固着部材の内側に複数設けられていることとしてもよい。
【0016】
このようにすれば、少なくとも一方の被着体が支点部材を支点として固着部材により引き寄せられて撓んで複数の導電部材を加圧するようになるので、それぞれの導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0017】
本発明の一態様では、前記導電部材が前記固着部材の内側に複数行、複数列設けられていることとしてもよい。
【0018】
このようにすれば、複数行、複数列を有する導電部材のそれぞれが被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0019】
本発明の一態様では、前記固着部材が更に前記導電部材の間にも設けられていることとしてもよい。
【0020】
このようにすれば、固着部材による粘着力を高めて、複数の導電部材を加圧するようになるので、それぞれの導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0021】
本発明の一態様では、導電部材は、複数の導電部が設けられていることとしてもよい。
【0022】
このようにすれば、複数の導電部が設けられている導電部材に対して、被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0023】
本発明の他の態様は、少なくとも導電部材と固着部材が設けられている電気接続部材で第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続させて構成される接続構造において、少なくとも前記固着部材よりも厚さが大きい支点部材が前記固着部材の外側に設けられており、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が前記固着部材により引き寄せられて内側に撓むことによって前記導電部材を押圧する。
【0024】
本発明の他の態様によれば、固着部材の外側に固着部材よりも厚さが大きい支点部材を設けることによって、少なくとも一方の被着体が支点部材を支点として固着部材により引き寄せられて撓んで導電部材を加圧するようになるので、導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、高い導通接続性を確保できるようになる。
【0025】
本発明の他の態様では、前記支点部材は、前記電気接続部材に設けられており、前述した何れかの電気接続部材の導電部材が前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物との間に圧縮された状態で固着されることによって、前記電気接続部材が前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物とを導通接続させることとしてもよい。
【0026】
このようにすれば、支点部材が設けられている電気接続部材を介して、第1の接続対象物と第2の接続対象物との間に圧縮された状態で固着することによって、少なくとも一方の被着体が支点部材を支点として固着部材により引き寄せられて撓んで導電部材を加圧するようになるので、導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、高い導通接続性を確保できるようになる。
【0027】
本発明の他の態様では、前記第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が撓み変形が可能であり、かつ、前記導電部材を押圧する状態を維持可能な剛性を有することとしてもよい。
【0028】
このようにすれば、第1の接続対象物と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方の被着体を押圧した際に、支点部材を支点にして内側に撓み変形した上で導電部を加圧した状態を維持し易くなるので、高い導通接続性を確保できるようになる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、導電部材の導電部が被着体に当接した状態を維持することによって、高い導通接続性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(A)は、本発明の一実施形態に係る電気接続部材の概略構成を示す平面図であり、(B)は、図1(A)のA-A線断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電気接続部材の一変形例の断面図である。
図3】(A)~(E)は、本発明の一実施形態に係る電気接続部材の他の変形例の平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る接続構造の概略構成を示す断面図である。
図5】(A)~(D)は、本発明の他の実施形態に係る電気接続部材の平面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る接続構造の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「第1」及び「第2」と記載する場合、それらは、異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣等を示すために用いるものではない。
【0033】
さらに、本出願にて開示する「導電部材」及び「電気接続部材」は、「第1の接続対象物」としての被着体と「第2の接続対象物」としての被着体とを導通接続するものである。「第1の接続対象物」の一態様としては、ケーブル端子やフレキシブル基板の端子等の各種端子が設けられている撓み変形が可能な被着体を例示できる。「第2の接続対象物」の一態様としては、フロントガラスやウィンドウガラス面のアンテナ配線端子やアース配線端子等のガラス面に設けられている各種端子が設けられている被着体を例示できる。
【0034】
まず、本発明の一実施形態に係る電気接続部材の構成の概略について、図面を使用しながら説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係る電気接続部材の概略構成を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)のA-A線断面図である。
【0035】
本実施形態の電気接続部材100は、鉛直方向(高さ方向)に対向配置された第1の接続対象物と第2の接続対象物とを導通接続可能に設けられている。具体的には、電気接続部材100は、例えば、第1の接続対象物となるケーブル端子やフレキシブル基板の端子等の各種端子が設けられている撓み変形が可能な被着体と、第2の接続対象物となるガラスアンテナやフィルムアンテナ等のアンテナ配線端子やアース配線端子等のガラス面に設けられている各種端子が設けられている被着体との間に圧縮された状態で、これらを導通接続するように構成されている。
【0036】
電気接続部材100は、図1に示すように、複数の導電部材110と、固着部材120と、導電部材110と固着部材120を連結するシート状の連結部材130と、支点部材140と、を備える。導電部材110と固着部材120と支点部材140は、連結部材130により一体化され、電気接続部材100を構成する。
【0037】
連結部材130は、平面状のシート状部材であり、例えば、樹脂シートからなる。連結部材130は、図1(B)に示すように、貫通孔130aが設けられており、導電部材110が貫通孔130a内に挿入されて連結部材130に固定される。連結部材130を構成する樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリカーボネートシート、ポリエーテルエーテルケトンシート、ポリイミドシート、ポリアミドシート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリウレタンシート等が使用される。これらの中では、耐久性、耐熱性などの観点から、PETシート、ポリイミドシートが好ましい。連結部材130の厚さは、特に限定されないが、例えば30~1000μm、好ましくは50~350μmである。
【0038】
なお、本実施形態の電気接続部材100は、樹脂シートからなる連結部材130を介して導電部材110と固着部材120と支点部材140とを連結して一体化されているが、連結部材130を使用しない構成としてもよい。例えば、樹脂性のフィルムやゴムフィルム、メッシュシート、網、紙、織布、不織布、発泡シート等のシート状部材に導電部材110と固着部材120と支点部材140とを張り付けて一体化してもよい。
【0039】
固着部材120は、電気接続部材100の両面を接続対象物となる他の部材に接着できるようにするための部材であり、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等から構成される。固着部材120は、図1(B)に示すように、導電部材110の外側に設けられ、連結部材130の表面側と裏面側の外縁寄りに設けられている。本実施形態において、固着部材120は、複数の導電部材110を取り囲むように形成されており、枠状に形成される。なお、図1では、連結部材130は、四角形に形成されるので、その形状に合わせて、固着部材120も四角枠形状に形成されるが、固着部材120の形状は、四角枠形状に限定されず、他の形状であってもよい。
【0040】
本実施形態の電気接続部材100は、このような固着部材120を連結部材130の表面側と裏面側の導電部材110の外側に設けることによって、導電部材110の導電部112を第1の接続対象物と第2の接続対象物に接触させながら、厚さ方向に圧縮させた状態に導電部材110を保持させる機能を有する。このため、電気接続部材100は、固着部材120を有することによって、第1の接続対象物と第2の接続対象物との間を電気的に接続させつつ、接続対象物が設けられる被取付部材(例えば、ガラス板)に端子を確実かつ容易に固定できるようになる。
【0041】
導電部材110は、導電性を有する導電性ゴム状弾性体から構成される導電部112と、非導電性を有するゴム状弾性体から構成される絶縁部114とを備える。導電部112を構成する導電性ゴム状弾性体は、より具体的には、図1(B)に示すように、ゴム状弾性体の内部に多数の導電性フィラーとなる導電性粒子112aが含有される。導電性粒子112aは、好ましくは電気接続部材100の厚さ方向に連続するように配列している。導電性粒子112aは、より好ましくは、磁性を有し、かつ磁場印加により厚さ方向に連鎖的に配列される。導電性粒子112aを厚さ方向に連続するように配列させることで、25%圧縮時の圧縮応力を低くしつつも、低電気抵抗を実現することが可能である。
【0042】
導電部112は、通常、柱状に形成される。柱状の断面形状は、特に限定されず、円形でもよいし、四角形などの多角形もよいが、円形が好ましい。柱状の導電部112には、その外周を取り巻くように筒状の絶縁部114が設けられ、絶縁部114と導電部112とは、一体となって導電部材110を構成する。なお、導電部112が被着体と接する表面形状は、図1(B)に示すような平坦面の他、ドーム状等の凸曲面、表面に点状や線状の微小凹凸を有する面形状等としてもよい。
【0043】
絶縁部114は、絶縁性のゴム状弾性体から構成される。すなわち、導電部材110は、ゴム状弾性体によって一体的に形成されると共に、図1(B)に示すように、その中央部分に厚さ方向に連続するように配列された導電性粒子112aを有する。なお、図1(B)に示すように、導電部材110は、厚さ方向に沿って外径が異なってもよい。導電部材110は、例えば、図1(B)に示すように、その両端面の外径がその間の部分の外径よりも小さくなる。このように、導電部材110は、両端面の外径が小さいと、両端面が厚さ方向に沿って圧縮しやすくなる。
【0044】
導電部112は、25%圧縮時の電気抵抗が100mΩ以下であることが好ましい。電気抵抗が100mΩ以下となると、大電流が流されても導電部112が発熱し難くなる。そのような観点から、当該電気抵抗は、20mΩ以下がより好ましい。また、上記電気抵抗は、材料などの制約から、通常は0.1mΩ以上となる。なお、25%圧縮時の電気抵抗は、導電部112を25%圧縮した状態で、定電流源から発生させた電流を導電部112に通して電圧を計測し、電気抵抗値を算出することにより得ることができる。
【0045】
導電性粒子112aは、前述したように、磁性導電性フィラーであることが好ましい。磁性導電性フィラーの材質としては、ニッケル、コバルト、鉄、フェライト、又はこれらの合金が挙げられ、形状としては粒子状、繊維状、細片状、細線状などである。さらに良電性の金属、樹脂、セラミックに磁性導電体を被覆したもの、磁性導電体に良電性の金属を被覆したものとしてもよい。良電性の金属には、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、パラジウム、クロム、ステンレスなどが挙げられる。
【0046】
導電性粒子112aの平均粒径は、磁場印加によって連鎖状態を形成し易く、効率よく導体を形成することができる点で、1~200μmとすることが好ましく、5~100μmとすることがより好ましい。特に、本実施形態では、電気信号の伝送損失を抑制するために、導電性粒子の平均粒径が10~300μmであることが好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた導電性フィラーの粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。導電性フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
導電部112における導電性粒子112aの充填率は、例えば、25~80体積%、好ましくは、30~75体積%である。導電性粒子112aの充填率をこれら範囲内とすることで、導電部112に一定の強度を付与しつつ導電性を確保できる。なお、充填率とは、導電部112の全体積に対する導電性粒子112aの体積割合を意味する。
【0048】
一方で、絶縁部114は、通常、導電性粒子112aを含有せず、絶縁部114における導電性粒子112aの充填率は、通常0体積%である。ただし、絶縁部114には、絶縁性を損なわない範囲内において、その製造過程などにおいて不可避的に混入される導電性粒子112aが少量含有されていてもよい。従って、例えば、絶縁部114における導電性粒子112aの充填率は、5体積%未満であってもよく、好ましくは1体積%未満である。
【0049】
また、導電部112を構成するゴム状弾性体としては、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー等が例示できる。熱硬化性ゴムは、加熱により硬化して、架橋されるゴムであり、具体的には、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、成形加工性、電気絶縁性、耐候性などが優れるシリコーンゴムが好ましい。
【0050】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ化系熱可塑性エラストマー、イオン架橋系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。ゴム状弾性体は、前述したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、絶縁部114を構成する高分子マトリクスとなるゴム状弾性体としても、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマー等も使用すればよく、その具体例、好ましい例は、前述で説明したとおりである。絶縁部114を構成するゴム状弾性体も、同様に1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前述のように、絶縁部114及び導電部112を構成するゴム状弾性体は、一体的に形成されることが好ましい。従って、絶縁部114及び導電部112を構成するゴム状弾性体は同じ種類のものを使用することが好ましく、絶縁部114及び導電部112を構成するゴム状弾性体は、何れもシリコーンゴムであることがより好ましい。
【0052】
ゴム状弾性体は、導電性フィラーを磁場印加等により厚さ方向に配列し易くする観点から、液状ゴムを硬化したもの、又は、加熱溶融可能なものであることが好ましい。なお、液状ゴムは、硬化前には常温(23℃)、常圧(1気圧)下で液体となるものであり、具体的なゴムは、熱硬化性ゴムとして列挙したものの液状ゴムを使用すればよく、中でも液状シリコーンゴムが好ましい。また、加熱溶融可能なものとしては、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0053】
導電部112の硬度は、30~87が好ましく、40~85がより好ましく、60~80がさらに好ましい。上記範囲内とすることで、導電部材の25%圧縮した際の圧縮応力を所望の範囲内に調整しやすくなる。同様の観点から、絶縁部114の硬度は、20~50が好ましく、25~40がより好ましい。なお、導電部112の硬度は、JIS K6253-3:2012に記載される「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に準拠して、タイプAデュロメータを用いて23℃で測定されたものである。
【0054】
導電部材110における導電部112の直径は、例えば、1.0~6.0mmである。導電部112の直径を前述の範囲内とすると、25%圧縮時の電気抵抗を所定の範囲内にし易くなる。その結果、圧縮時に導電部材110の上面と下面の間に、大電流を流しても、導電部材110の温度上昇を抑制できる。これら観点から、導電部112の直径は、好ましくは1.0~3.0mmであり、より好ましくは1.5~2.6mmである。なお、導電部112の直径は、厚さ方向において異なる場合には、上面における導電部112の直径と、下面における導電部112の直径の平均値を意味する。また、本明細書において直径とは、円以外の場合、その面積と等しい面積を有する円の直径として算出できる。
【0055】
導電部112の直径は、導電部材110の直径に対して、35~97%であることが好ましい。35%以上とすることで、電気抵抗を十分に低くすることができ、97%以下とすることで、導電部材110に適切な弾性を付与できる。これら観点から、導電部112の直径の導電部材110の直径に対する割合は、50%以上がより好ましく、55%以上がさらに好ましく、より好ましくは60%以上であり、また、95%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。このような比率とすることで、大電流を流すことが可能でありながらも、長期間にわたってゴム弾性が維持され易くなり、より一層安定した導通が可能になる。なお、導電部材110の直径は、厚さ方向において異なる場合には、上面における直径と、下面における直径の平均値を意味する。
【0056】
導電部材110の直径は、特に限定されないが、例えば、1.1~8.0mm、好ましくは1.1~6.0mm、さらに好ましくは1.8~5.0mmである。また、導電部材110の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.2~1.5mmであることが好ましく、0.3~1.2mmであることがより好ましい。導電部材110は、厚さを前述の範囲内とすることで、固着部材120によって、圧縮された状態に保持され易くなる。また、導電部材110は、厚さ方向に圧縮された状態に保持されて使用されるとき、その圧縮率は、特に限定されないが、例えば、5~40%、好ましくは10~35%、さらに好ましくは15~30%である。なお、圧縮率は、荷重が作用されない状態における導電部材110の厚さをH0、使用時の圧縮された導電部材110の厚さをH1とすると、(H0-H1)/H0の式にて算出でできる。
【0057】
支点部材140は、固着部材120の外側に設けられており、一方の被着体となる第1の接続対象物12に電気接続部材100を接着する際に、梃子の原理を使用して第1の接続対象物12を内側に撓ませて変形し易くするための支点として機能させる部材である。支点部材140は、固着部材120の固着力に負けずに潰れない硬さ・反発力がある硬質樹脂、硬質ゴム、金属等の少なくとも固着部材120よりも硬質な材質で形成されている。本実施形態では、第1の接続対象物12と第2の接続対象物14の少なくとも何れか一方の被着体を押圧した際に、支点部材140が支点となって、当該被着体が内側に撓み変形し易くするために、支点部材140は、固着部材120の外側に互いに対向するように1対設けられている。
【0058】
また、支点部材140は、梃子の原理を使用して第1の接続対象物12を内側に撓ませて変形し易くするための支点として機能するために、固着部材120よりも厚さが大きいことを特徴とする。本実施形態では、支点部材140は、図1(B)に示すように、撓み変形が可能な被着体に接着する側の固着部材120、すなわち、連結部材130の上面側の固着部材120よりも厚さが大きくなっており、支点部材140の底面は、固着部材120の底面と面一となるように、構成されている。
【0059】
このような構成の本実施形態の電気接続部材100を製造するには、まず、アルミニウムや銅等の非磁性体でなる上型と下型で構成される金型を準備する。金型の上型と下型には、それぞれ導電部112に対応する位置に、鉄や磁石等の強磁性体からなるピンが埋め込まれる。ピンの一端は、上型と下型のキャビティ面に露出している。
【0060】
次に、連結部材130を構成するための樹脂シート等を用意する。樹脂シートは、打ち抜き加工等をして、複数の貫通孔130aを形成したものを用意すればよい。樹脂シートは、ピンを埋設している前述の金型に挿入し、導電部材110の原料となる液状ゴムや、溶融した熱可塑性エラストマー等をキャビティ内に注入する。液状ゴムには、磁性を有する導電性粒子112aが予め混合されている。
【0061】
その後、磁石を用いて金型の上下から磁場をかける。キャビティ内には、ピンを繋ぐ平行磁場が形成され、液状ゴム等の中の導電性粒子112aが磁力線方向に連続的に配列する。この配列後に上下の金型を完全に締めて加熱処理を行い、液状ゴムを硬化させると、導電部材110と連結部材130を構成する樹脂シートとが一体となったシート状成形体が得られる。その後、シート状成形体に公知の手法によって固着部材120と支点部材140とを取り付けることによって、本実施形態の電気接続部材100が得られる。
【0062】
なお、電気接続部材101の上面側と下面側の何れの被着体が撓み変形が可能な被着体である場合には、図2に示すように、支点部材141は、連結部材131の上面側と下面側の双方でも固着部材121よりも厚さが大きい構成としている。このように、電気接続部材101の被着体が上下面の何れもケーブル端子やフレキシブル基板の端子等の各種端子が設けられている撓み変形が可能な被着体である場合には、支点部材141の厚さは、連結部材131の上下面側の何れとも固着部材121の厚さよりも大きくなっている。
【0063】
また、電気接続部材100を構成する支点部材140の構成や、導電部材110の個数、配置も本実施形態の電気接続部材100の態様に限定されない。
【0064】
例えば、図3(A)に示すように、電気接続部材102は、支点部材142が固着部材122の外周を取り囲むように設けられている構成としてもよい。このような構成の支点部材142を固着部材122の外周側に設けても、被着体を押圧した際に、支点部材142が支点となって、当該被着体を内側に撓み変形させて導通接続できるようになる。
【0065】
また、図3(B)に示すように、電気接続部材103は、導電部材110が固着部材123の内側に複数設けられている構成としてもよい。このように、導電部材110が複数設けられることで、被着体に有する端子が導電層等の接続対象部材に複数の導電部材110を介して電気的に接続されることになる。
【0066】
このため、端子と接続対象部材との間に大電流を流しても、各導電部材110の電気抵抗が低く抑えられ、それにより、導電部材110における温度上昇を抑制し易くなる。また、導電部材110を複数設けると、各導電部材110を小さくできるので、複数の導電部材110全体を圧縮する際の荷重が低くなるので、導電部材110の反発力によって端子が剥がれ難くなる。さらに、少なくとも一方の被着体が支点部材143を支点として固着部材123により引き寄せられて撓んで複数の導電部材110を加圧するようになるので、それぞれの導電部材110の導電部112(図1(B)参照)が被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0067】
さらに、図3(C)に示すように、電気接続部材104は、導電部材110が固着部材124の内側に複数設けた上に、導電部材110の間にも固着部材124が設けられている構成としてもよい。電気接続部材104をこのような構成とすることによって、上述した導電部材110が複数設けた場合の作用効果に加えて、固着部材124による粘着力を高めて、支点部材144を支点として複数の導電部材110を加圧するようになるので、それぞれの導電部材110の導電部112(図1(B)参照)が被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0068】
また、図3(D)に示すように、電気接続部材105は、固着部材125の内側に配置される導電部材115に複数の導電部116が設けられている構成としてもよい。このように、複数の導電部116が設けられている導電部材115に対して、支点部材145を支点として被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0069】
さらに、図3(E)に示すように、電気接続部材106は、複数の導電部116が設けられている導電部材115が固着部材126の内側に複数設けられている構成としてもよい。このような導電部材115が複数設けられることで、被着体に有する端子が導電層等の接続対象部材に複数の導電部材115を介して電気的に接続されることになる。このため、端子と接続対象部材との間に大電流を流しても、各導電部材115の電気抵抗が低く抑えられ、それにより、導電部材115における温度上昇を抑制し易くなる。
【0070】
また、導電部材115を複数設けると、各導電部材115を小さくできるので、複数の導電部材115全体を圧縮する際の荷重が低くなるので、導電部材115の反発力によって端子が剥がれ難くなる。さらに、少なくとも一方の被着体が支点部材146を支点として固着部材126により引き寄せられて撓んで複数の導電部材115を加圧するようになるので、それぞれの導電部材115の導電部116が被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0071】
次に、本発明の一実施形態に係る電気接続部材100を備える接続構造の構成について、図面を使用しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る接続構造の概略構成を示す断面図である。
【0072】
本実施形態の接続構造10は、鉛直方向(高さ方向、厚さ方向)に対向配置された第1の接続対象物12と第2の接続対象物14との間に電気接続部材100を設けることによって、第1の接続対象物12と第2の接続対象物14との間を導通接続されるようになっている。具体的には、接続構造10は、例えば、第1の接続対象物12となるケーブル(同軸ケーブル、撚線ケーブル、単線ケーブル等)端部に金属接続端子を付けたもの、またはフレキシブル基板の接続端子面と言った撓み変形が可能な被着体と、第2の接続対象物14となるガラスアンテナやフィルムアンテナ等のアンテナ配線が設けられる端子剛性があり、撓み変形しない被着体との間に設けられている電気接続部材100の導電部材110が圧縮された状態で固着されることによって、これらを導通接続するように構成されている。
【0073】
本実施形態の接続構造10において、電気接続部材100は、第1の接続対象物12と第2の接続対象物14との間に配置される。このとき、電気接続部材100の各導電部材110の導電部112の両端面がそれぞれ第1の接続対象物12と第2の接続対象物14のそれぞれに接触する。このため、第1の接続対象物12は、複数の導電部112を介して第2の接続対象物14に接続される。また、電気接続部材100は、図4に示すように、固着部材120の上面側が第1の接続対象物12に接着され、かつ、固着部材120の下面側が第2の接続対象物14に接着されることによって、第1の接続対象物12を第2の接続対象物14に固定させて導通接続が図られるようになっている。
【0074】
このとき、各導電部材110は、圧縮した状態で第1の接続対象物12と第2の接続対象物14に接触する。各導電部材110は、圧縮すると導電性が高まり、かつ、第1の接続対象物12と第2の接続対象物14に反発力により付勢されるので、第1の接続対象物12と第2の接続対象物14との接続をより確実に行うことが可能である。また、反発力により付勢されると、第1の接続対象物12は、第2の接続対象物14から剥がれ易くなるが、本実施形態の接続構造10では、第1の接続対象物12が固着部材120により、第2の接続対象物14に確実に固定されているので、剥がれが生じ難くなる。なお、各導電部材110は、例えば5~40%、好ましくは10~30%、より好ましくは15~30%圧縮した状態とされるとよい。また、第1の接続対象物12の複数の導電部材110に接触する面は、複数の導電部材110を均等に圧縮し易くするために、平面状であることが好ましい。
【0075】
さらに、本実施形態では、電気接続部材100は、固着部材120の外側に固着部材120よりも厚さが大きい支点部材140が設けられている。このため、被着体となる第1の接続対象物12と第2の接続対象物14との間に電気接続部材100を介在させて接着することによって、図4に示すように、支点部材140を支点とする梃子の原理で固着部材120が被着体となる第1の接続対象物12をV字状に引き寄せて撓ませることによって、導電部材110を加圧状態で固定維持することのできる接続構造10にすることができる。
【0076】
また、本実施形態の接続構造10は、撓み変形をする被着体となる第1の接続対象物12は、例えば、金属板、樹脂板等の導電部材110を押圧する状態を維持可能な剛性を有し、かつ、撓んで曲げ変形の可能な板材を用いることが好ましい。さらに、第1の接続対象物12は、構成される材質によるが、厚さが0.1mm~2mm程度のものが使用される。また、本実施形態では、第1の接続対象物12への加圧状態を維持できるようにするために、例えば、不図示の筐体ケースで上面側から押さえ込んだり、突出部分のある筐体等で導電部材110上にある被着体のみを押さえつけるような追加の補強部材でバックアップするようにしてもよい。
【0077】
なお、本実施形態の接続構造10は、被着体となる第1の接続対象物12と第2の接続対象物14とを導通接続する電気接続部材100として固着部材120の外側に支点部材140が設けられたものが使用されているが、支点部材140が電気接続部材100の構成要素でないものとしてもよい。すなわち、固着部材120の厚さよりも大きい支点部材140を電気接続部材100と別体部材として、固着部材120の外側に設けるように外付けのものとしてもよい。
【0078】
次に、本発明の電気接続部材の他の実施形態について、図面を使用しながら説明する。図5(A)~(D)は、本発明の他の実施形態に係る電気接続部材の平面図である。
【0079】
本実施形態の電気接続部材200は、図5(A)に示すように、導電部材210が固着部材220の内側に複数行、複数列ずつ設けられていることを特徴とする。すなわち、電気接続部材200は、導電部材110が複数行、複数列と複数設けられることで、端子が導電層等の接続対象部材に複数の導電部材110を介して電気的に接続されることになる。このため、端子と接続対象部材との間に大電流を流しても、各導電部材210の電気抵抗が低く抑えられ、それにより、導電部材210における温度上昇を抑制し易くなる。また、導電部材210を複数設けると、各導電部材210を小さくできる。このため、複数の導電部材210全体を圧縮する際の荷重が低くなるので、導電部材210の反発力によって端子が剥がれ難くなる。
【0080】
導電部材210は、例えば、図5(A)に示すように、一列に並べられた複数(図5(A)では2個)の導電部材210が複数列(図5(A)では2列)並べられる。複数の導電部材210同士の間隔は、好ましくは0.5mm以上200mm以下、より好ましくは1mm以上50mm以下である。導電部材210同士の間隔をこれら範囲内とすることで、電気接続部材200の大きさを必要以上に大きくすることなく、隣接する導電部材210間の絶縁性を確保できる。なお、導電部材210同士の間隔とは、各導電部材210の最も近接する導電部材210との間の最短距離を意味する。なお、本実施形態の電気接続部材200には、4つの導電部材210が設けられているが、導電部材210の個数は、4つに限定されない。
【0081】
本実施形態では、図5(A)に示すように、支点部材240が固着部材220の外側に互いに対向するように1対設けられていることを特徴とする。すなわち、電気接続部材200は、連結部材230を介して、複数の導電部材210、固着部材220、及び支点部材240が一体化したものとなっている。支点部材240は、梃子の原理を使用して第1の接続対象物を内側に撓ませて変形し易くするための支点として機能するために、固着部材220よりも厚さが大きいものとなっている。このように、固着部材220の外側に固着部材220よりも厚さが大きい支点部材240を設けることによって、複数行、複数列を有する導電部材のそれぞれが被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになっている。
【0082】
なお、電気接続部材201は、図5(B)に示すように、支点部材241が固着部材221の外周を取り囲むように設けられている構成としてもよい。このような構成の支点部材241を固着部材221の外周側に設けても、被着体を押圧した際に、支点部材241が支点となって、当該被着体を内側に撓み変形させて導通接続できるようになる。
【0083】
さらに、図5(C)に示すように、電気接続部材202は、導電部材210が固着部材222の内側に複数行、複数列と複数設けた上に、導電部材210の間にも固着部材222が設けられている構成としてもよい。電気接続部材202をこのような構成とすることによって、上述した導電部材210が複数設けた場合の作用効果に加えて、固着部材222による粘着力を高めて、支点部材242を支点として複数の導電部材210を加圧するようになるので、それぞれの導電部材210の導電部212(図6参照)が被着体に当接した状態を維持することによって、より高い導通接続性を確保できるようになる。
【0084】
また、図5(D)に示すように、電気接続部材203は、導電部材210が固着部材223の内側に複数行、複数列と複数設けた上に、導電部材210の間にも固着部材223が設けて、かつ、支点部材243が固着部材223の外周を取り囲むように設けられている構成としてもよい。このような構成の支点部材243を固着部材223の外周側に設けても、被着体を押圧した際に、固着部材223による粘着力を高めて、支点部材243が支点となって、当該被着体を内側に撓み変形させ易くして、導通接続性を高められるようになる。
【0085】
次に、本発明の他の実施形態に係る電気接続部材を備える接続構造の構成について、図面を使用しながら説明する。図6は、本発明の他の実施形態に係る接続構造の概略構成を示す断面図である。なお、図6では、本発明の他の実施形態に係る接続構造に設けられる電気接続部材として、前述した図5(C)に示した電気接続部材202を使用したものとなっているが、前述した他の実施形態に係る電気接続部材200、201、203にも本実施形態の接続構造に適用可能である。
【0086】
本実施形態の接続構造20は、鉛直方向(高さ方向、厚さ方向)に対向配置された第1の接続対象物22と第2の接続対象物24との間に電気接続部材202を設けることによって、第1の接続対象物22と第2の接続対象物24との間を導通接続されるようになっている。具体的には、接続構造20は、例えば、第1の接続対象物22となるケーブル(同軸ケーブル、撚線ケーブル、単線ケーブル等)端部に金属接続端子を付けたもの、またはフレキシブル基板の接続端子面と言った撓み変形が可能な被着体と、第2の接続対象物24となるガラスアンテナやフィルムアンテナ等のアンテナ配線が設けられる端子剛性があり、撓み変形しない被着体との間に設けられている電気接続部材202の導電部材210が圧縮された状態で固着されることによって、これらを導通接続するように構成されている。
【0087】
本実施形態の接続構造20において、電気接続部材202は、第1の接続対象物22と第2の接続対象物24との間に配置される。このとき、電気接続部材202の各導電部材210の導電性粒子212aを含む導電部212の両端面がそれぞれ第1の接続対象物22と第2の接続対象物24のそれぞれに接触する。このため、第1の接続対象物22は、複数の導電部212を介して第2の接続対象物24に接続される。また、電気接続部材202は、図6に示すように、固着部材222の上面側が第1の接続対象物22に接着され、かつ、固着部材222の下面側が第2の接続対象物24に接着されることによって、第1の接続対象物22を第2の接続対象物24に固定させて導通接続が図られるようになっている。
【0088】
このとき、各導電部材210は、圧縮した状態で第1の接続対象物22と第2の接続対象物24に接触する。各導電部材210は、圧縮すると導電性が高まり、かつ、第1の接続対象物22と第2の接続対象物24に反発力により付勢されるので、第1の接続対象物22と第2の接続対象物24との接続をより確実に行うことが可能である。また、反発力により付勢されると、第1の接続対象物22は、第2の接続対象物24から剥がれ易くなるが、本実施形態の接続構造20では、第1の接続対象物22が固着部材222により、第2の接続対象物24に確実に固定されているので、剥がれが生じ難くなる。なお、各導電部材210は、例えば5~40%、好ましくは10~30%、より好ましくは15~30%圧縮した状態とされるとよい。また、第1の接続対象物22の複数の導電部材210に接触する面は、複数の導電部材210を均等に圧縮し易くするために、平面状であることが好ましい。
【0089】
さらに、本実施形態では、電気接続部材202は、固着部材222の外側に固着部材222よりも厚さが大きい支点部材242が設けられている。このため、被着体となる第1の接続対象物22と第2の接続対象物24との間に電気接続部材202を介在させて接着することによって、図6に示すように、固着部材222が被着体となる第1の接続対象物22を引き寄せて撓ませることによって、導電部材210を加圧状態で固定維持することのできる接続構造20にすることができる。
【0090】
また、本実施形態の接続構造20は、撓み変形をする被着体となる第1の接続対象物22は、例えば、金属板、樹脂板等の導電部材210を押圧する状態を維持可能な剛性を有し、かつ、撓んで曲げ変形の可能な板材を用いることが好ましい。さらに、第1の接続対象物22は、構成される材質によるが、厚さが0.1mm~2mm程度のものが使用される。また、本実施形態では、第1の接続対象物12への加圧状態を維持できるようにするために、例えば、不図示の筐体ケースで上面側から押さえ込んだり、突出部分のある筐体等で導電部材110上にある被着体のみを押さえつけるような追加の補強部材でバックアップするようにしてもよい。
【0091】
このように、本実施形態では、接続構造20とすることによって、被着体となる第1の接続対象物22への圧着動作により、支点部材242を支点として、固着部材222が被着体となる第1の接続対象物22を引き寄せるようになる。このため、第1の接続対象物22が撓んで、導電部材210を加圧した状態を維持できるようになる。
【0092】
なお、前述した接続構造10の説明においては、第1の実施形態に係る電気接続部材100が使用される例について説明したが、他の態様の電気接続部材が使用される場合も同様であるので、その説明は省略する。また、他の実施形態の電気接続部材200~204は、ガラス板上に導電性の接続部を有するガラス板上のアンテナやカメラ部ヒーター、ワイパーヒーター、バックライト、レインセンサー等のセンサー類、さらには太陽電池等への電気接続にも利用できる。
【0093】
さらに、本実施形態の接続構造20は、被着体となる第1の接続対象物22と第2の接続対象物24とを導通接続する電気接続部材202として固着部材222の外側に支点部材242が設けられたものが使用されているが、支点部材242が電気接続部材202の構成要素でないものとしてもよい。すなわち、固着部材222の厚さよりも大きい支点部材242を電気接続部材202と別体部材として、固着部材222の外側に設けるように外付けのものとしてもよい。
【0094】
次に、本発明の各実施形態に係る電気接続部材100、200及び接続構造10、20の作用・効果について説明する。
【0095】
本実施形態では、固着部材120、220の外側に固着部材120、220よりも厚さが大きい支点部材140、240を設けることによって、少なくとも一方の被着体が支点部材140、240を支点として固着部材120、220により引き寄せられて撓んで導電部材110、210を加圧するようになる。このため、導電部材110、210の導電部112、212が被着体に当接した状態を維持することによって、継続的に高い導通接続性を確保できるようになる。
【0096】
特に、電気接続部材100、200の被着体となる第1の接続対象物12、22と第2の接続対象物14、24の少なくとも何れか一方が撓み変形が可能であり、かつ、導電部材110、210を押圧する状態を維持可能な剛性を有する場合には、支点部材140、240を利用して、固着部材120、220が被着体を引き寄せて撓ませることによって、導電部材110、210を加圧状態で固定維持できるようになる。このため、電気接続部材100、200を長期間使用することによって、固着部材120、220の粘着力が弱まるような場合でも、接続構造10、20は、支点部材140、240を支点とする梃子の原理により被着体が導電部材110、210に当接した状態を維持されるので、継続的に高い導通接続性を確保できるようになる。
【0097】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0098】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、電気接続部材、及び接続構造の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10、20 接続構造
12、22 第1の接続対象物
14、24 第2の接続対象物
100、101、102、103、104、105、106、
200、201、202、203 電気接続部材
110、115、210 導電部材
112、116、212 導電部
112a、212a 導電性粒子(導電媒体)
114、214 絶縁部(高分子マトリクス)
120、121、122、123、124、125、126、
220、221、222、223 固着部材
130、131、132、133、134、135、136、
230、231、232、233 連結部材
130a 貫通孔
140、141、142、143、144、145、146、
240、241、242、243 支点部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6