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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109626
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】回転電機の製造方法、及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20220721BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20220721BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H02K15/02 Z
H02K15/14 Z
H02K9/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005029
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健司
【テーマコード(参考)】
5H609
5H615
【Fターム(参考)】
5H609BB18
5H609PP10
5H609QQ02
5H609QQ08
5H609RR04
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP02
(57)【要約】
【課題】シャフトに対するファンの変更を容易に行うことができる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機の製造方法は、筐体と、筐体内に固定される固定子と、固定子に対して隙間を介して回転可能に設けられる回転子と、回転子を回転可能に支持し回転子の回転に伴って回転するシャフトと、シャフトの回転に伴って回転するファンと、ファンに取付けられ、シャフトの反負荷側の端部に設けられた被接続部に対応した形状に形成され被接続部に対して着脱可能に取付けられる接続部を有する連結部材と、を備える。回転電機の製造方法は、連結部材が取付けられた性能の異なる複数のファンの中から選択された一のファンを連結部材を介してシャフトの反負荷側の端部に取付けるファン取付け工程を含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に固定される固定子と、
前記固定子に対して隙間を介して回転可能に設けられる回転子と、
前記回転子を回転可能に支持し前記回転子の回転に伴って回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴って回転するファンと、
前記ファンに取付けられ、前記シャフトの反負荷側の前記端部に設けられた被接続部に対応した形状に形成され前記被接続部に対して着脱可能に取付けられる接続部を有する連結部材と、を備える回転電機の製造方法であって、
前記連結部材が取付けられた性能の異なる複数のファンの中から選択された一のファンを前記連結部材を介して前記シャフトの反負荷側の前記端部に取付けるファン取付け工程を含む、
回転電機の製造方法。
【請求項2】
前記ファン取付け工程の前に実行され、前記シャフトの負荷側に固定用治具を取付けて、前記シャフトの回転を規制する規制工程を更に含む、
請求項1に記載の回転電機の製造方法。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体内に固定される固定子と、
前記固定子に対して隙間を介して回転可能に設けられる回転子と、
前記回転子を回転可能に支持し前記回転子の回転に伴って回転するシャフトと、
前記シャフトの回転に伴って回転するファンと、
前記ファンに取付けられ、前記シャフトの反負荷側の前記端部に設けられた被接続部に対応した形状に形成され前記被接続部に対して着脱可能に取付けられる接続部を有する連結部材と、を備える、
回転電機。
【請求項4】
前記被接続部は、円筒状に構成され、内周面に雌ねじ部を有し、
前記接続部は、前記シャフトに前記連結部材を取付けた状態において前記連結部材の前記シャフトの反負荷側の前記端部に対向する面に設けられ、前記雌ねじ部に嵌合可能に形成された雄ねじ部を有し、
前記連結部材は、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部とが嵌合した状態において前記シャフトの反負荷側の前記端部に接触し前記シャフトの回転に対する前記雌ねじ部と前記雄ねじ部との固定の緩みを防止する緩み止め部材を更に有する、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記連結部材は、前記雄ねじ部の周囲を窪ませて形成された座ぐり部を更に有し、
前記緩み止め部材は、前記雄ねじ部に挿入可能に形成され、前記座ぐり部に一部が収容されている、
請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記連結部材は、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部とが嵌合した状態において前記シャフトの反負荷側の前記端部に対向する面の反対側の面に溝状に形成され前記連結部材を前記シャフトの回転中心軸まわりに回転させるための溝部を更に有する、
請求項4又は5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記連結部材は、前記雌ねじ部と前記雄ねじ部とが嵌合した状態において前記シャフトの反負荷側の前記端部に対向する面の反対側の面から外側へ突出して設けられ前記連結部材を前記シャフトの回転中心軸まわりに回転させるための凸部を更に有し、
前記凸部は、前記連結部材の軸方向に沿って延びる平行な一対の側面部を有する、
請求項4又は5に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の製造方法、及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全閉外扇形の回転電機において、回転電機のシャフトの反負荷側にファンを設け、シャフトが回転するとファンが共回りして外気を取り込むことによって回転電機の冷却を行う構造が採用されている。回転電機の冷却性能は、ファンの外径つまりファンサイズが影響し、ファンサイズが大きくなれば送風量が増加するため回転電機の冷却性能も向上する。
【0003】
このような回転電機において、例えば同じ筐体を用いて同一の形態で構成された回転電機であっても、極数が異なる場合は回転数が異なり、回転数に応じてファンに要求される冷却性能も異なってくる。ここで、回転数は極数に反比例し、例えば極数が1対の2極機と極数が2対の4極機とでは、4極機よりも2極機のほうが回転数は大きくなり高速回転となる。また、同等の冷却性能を得ようとする場合、回転数が大きいほどファンサイズは小さいファンが使用される。したがって、4極機よりも回転数の大きい2極機のほうがファンのファンサイズは小さいものが選定される。このように、極数が異なる場合つまり回転数が異なる場合は、ファンサイズを選定することで所望の冷却性能が得られるようにしている。
【0004】
ところで、従来の構成においてファンは、ファンサイズ毎に専用のシャフトがあり、そのため使用するファンサイズに応じてシャフトを変更する必要があった。したがって、同一のシャフトでは多種類のファンサイズに対応できず、シャフトの種類が増加していた。その結果、回転電機の製造において部品の共有化が十分に図られていなかった。さらに、回転子鉄心とシャフトとが焼き嵌め等によって固定されると、シャフトを交換するための作業負担は非常に大きくなってしまい、ファンサイズの変更を効率的に行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-054650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、シャフトに対するファンの変更を容易に行うことができる回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の回転電機の製造方法は、筐体と、前記筐体内に固定される固定子と、前記固定子に対して隙間を介して回転可能に設けられる回転子と、前記回転子を回転可能に支持し前記回転子の回転に伴って回転するシャフトと、前記シャフトの回転に伴って回転するファンと、前記ファンに取付けられ、前記シャフトの反負荷側の前記端部に設けられた被接続部に対応した形状に形成され前記被接続部に対して着脱可能に取付けられる接続部を有する連結部材と、を備える回転電機の製造方法であって、前記連結部材が取付けられた性能の異なる複数のファンの中から選択された一のファンを前記連結部材を介して前記シャフトの反負荷側の前記端部に取付けるファン取付け工程を含む。
【0008】
実施形態の回転電機は、筐体と、前記筐体内に固定される固定子と、前記固定子に対して隙間を介して回転可能に設けられる回転子と、前記回転子を回転可能に支持し前記回転子の回転に伴って回転するシャフトと、前記シャフトの回転に伴って回転するファンと、前記ファンに取付けられ、前記シャフトの反負荷側の前記端部に設けられた被接続部に対応した形状に形成され前記被接続部に対して着脱可能に取付けられる接続部を有する連結部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態による回転電機の一例を一部を破断して示す側面図
図2】第1実施形態による回転電機の一例についてファンがシャフトに取り付けられる前の状態を拡大して示す断面図(その1)
図3】第1実施形態による回転電機の一例についてファンがシャフトに取り付けられる前の状態を拡大して示す断面図(その2)
図4】第1実施形態による回転電機の一例について溝部の一例を拡大して示す図
図5】第1実施形態による回転電機の製造方法の一例について製造工程の一例を示すフローチャート
図6】第1実施形態による回転電機の製造方法の一例について固定用治具によってシャフトの回転が規制された状態を一部を破断して示す側面図
図7】第1実施形態による回転電機の一例についてシャフトが固定用治具に収容された状態を図6のX7-X7線に沿って示す断面図
図8】第2実施形態による回転電機の一例についてファンがシャフトに取り付けられる前の状態を拡大して示す断面図
図9】第2実施形態による回転電機の一例について凸部の一例を拡大して示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に示す実施形態の回転電機1は、全閉形の外被構造による保護方式で構成され、例えば全閉外扇形で構成されている。回転電機1は、例えばポンプや送風機等の図示しない負荷機械を回転駆動させるためのものである。回転電機1は、筐体10、固定子21、回転子22、及びシャフト23を備えている。なお、以下の説明において、回転子22の回転中心軸Оに対して平行な方向を軸方向と称する。回転中心軸Oを中心に回転子22を回転させたとき、回転子22の外周面が回転する方向を周方向と称する。回転中心軸Oに対して直交する方向を径方向と称する。また、図1の紙面における右側を回転電機1が負荷機械とつながる側つまり負荷側と称し、図1の紙面における左側を反負荷側と称する。
【0012】
筐体10は、回転電機1の外殻を構成している。筐体10は、フレーム11、ブラケット12、13、軸受14、15、及びファンカバー16を有している。フレーム11は、軸方向の両端部が開口した円筒形状に構成されている。フレーム11は、放熱用の図示しないフィンを多数有している。フィンは、フレーム11の径方向に突出し、軸方向に延びている。ブラケット12、13は、フレーム11の両端部の開口に取付けられている。つまり、ブラケット12、13は、回転電機1の軸方向の外周を覆っている。軸受14、15は、ブラケット12、13に設けられ、シャフト23を回転自在に支持する。
【0013】
ファンカバー16は、フレーム11の反負荷側の端部に設けられている。ファンカバー16は、ファン30の全体を覆っており、ファン30を保護している。ファンカバー16は、図示しない吸気口を有しており、吸気口から外部の空気が回転電機1内に取り込まれる。
【0014】
固定子21は、筐体10内に固定されている。固定子21は、固定子鉄心211と、固定子巻線212とを有している。固定子鉄心211は、円筒状に構成され、例えば円板形状の電磁鋼板を複数枚積層して形成されている。固定子巻線212は、固定子鉄心211に挿通されている。固定子巻線212は、図示しない電源ユニットと電気的に接続され、電源ユニットから駆動電流が供給される。
【0015】
回転子22は、固定子21の内側に配設され、固定子21に対して隙間を介して回転可能に設けられている。回転子22は、回転子鉄心221と、貫通孔222とを有している。回転子鉄心221は、例えば円板形状の電磁鋼板を複数枚積層して形成されている。また、回転子鉄心221には、図示しない永久磁石が埋設されている。貫通孔222は、回転子22の中心部に設けられており、シャフト23が挿通される。
【0016】
シャフト23は、円柱状に構成され、貫通孔222を貫通している。そして、シャフト23の軸方向の両端は、両ブラケット12、13から外方に突出している。シャフト23は、回転子鉄心221と焼き嵌めや圧入等により嵌め合わされることによって回転子鉄心221に強固に固定されている。このようにして、シャフト23は、回転子22の回転に伴って回転子22と一体的に回転する。
【0017】
また、シャフト23には、キー24が取付けられている。キー24は、シャフト23の負荷側の端部付近に設けられたキー溝232に嵌め込まれている。そして、キー24の一部は、シャフト23の外周面から径方向に突出している。キー24は、シャフト23と負荷機械とを連結し、シャフト23からの動力を負荷機械に伝達するためのものである。
【0018】
シャフト23は、被接続部25を有している。被接続部25は、シャフト23の反負荷側の端部231に設けられている。被接続部25は、例えば端部231の一部を円筒形状に窪ませて形成されている。この場合、被接続部25は、シャフト23の回転中心軸Oと少なくとも一部が重なる位置に設けられている。本実施形態では、被接続部25の中心は、シャフト23の回転中心軸Oと一致している。被接続部25は、雌ねじ部251を有している。雌ねじ部251は、被接続部25の内周面に形成された雌ねじである。この場合、雌ねじ部251は、被接続部25の内周面の全長にわたって形成されている。
【0019】
また、回転電機1は、ファン30と、連結部材40とを有している。ファン30は、シャフト23の反負荷側の端部231に設けられ、シャフト23の回転に伴って回転する。ファン30が回転することによって筐体10の外周へ向かって送風が行われ、放熱フィンとの熱交換によって回転電機1が冷却される。ファン30は、羽根31と、嵌合孔32と、を有している。羽根31は、ファン30の中心から外周へ向かって放射状に延びている。嵌合孔32は、ファン30の中心に設けられている。嵌合孔32は、例えば円筒形状に形成され、ファン30を軸方向に貫いている。
【0020】
連結部材40は、ファン30に取付けられ、ファン30とシャフト23とを一体にするためのものである。つまり、ファン30は、連結部材40を介してシャフト23に固定される。連結部材40は、先端部41、台座部42、接続部43、緩み止め部材44、座ぐり部45、及び溝部46を有している。先端部41及び台座部42は、例えば円柱状に形成されている。先端部41の一方の端部は、台座部42と溶接等により固定されている。この場合、先端部41の外径つまり断面積は、台座部42の外径つまり断面積よりも小さい。これにより、連結部材40は、断面視において全体として凸形状に形成される。
【0021】
また、先端部41の径方向の中心は、台座部42の径方向の中心と一致している。すなわち、先端部41は、台座部42の径方向の中心を軸に対称となる形状に形成されている。なお、先端部41と台座部42とは、別々に形成したものに限らず、一体形成されていても良い。
【0022】
本実施形態の場合、先端部41は、ファン30の嵌合孔32と嵌合可能に形成されている。つまり、嵌合孔32の孔径は、先端部41の外径よりもやや大きく設定されている。また、嵌合孔32の長さ寸法は、先端部41の長さ寸法よりも小さく設定されている。そして、先端部41と嵌合孔32とが嵌合することによって、ファン30が連結部材40に取付けられる。
【0023】
また、ファン30は、嵌合孔32に先端部41を嵌合させてファン30の台座部42に対向する部分が台座部42の端部に接触するまで押し込まれると、連結部材40に対する軸方向の移動が規制される。これにより、ファン30と連結部材40とを一体にした場合のファン30の軸方向の位置が確定する。すなわち、連結部材40に対してファン30が位置決めされる。そして、ファン30は、位置決めされた状態のまま連結部材40に対してねじ等の締結部材によって強固に固定される。
【0024】
接続部43は、シャフト23の反負荷側の端部231に設けられた被接続部25に対応した形状に形成され、被接続部25に対して着脱可能に取付けられる。本実施形態では、被接続部25に対する接続部43の着脱方向は、シャフト23の軸方向と一致している。
【0025】
接続部43は、例えば円柱の棒状部材で形成されている。接続部43は、一方の端部が台座部42の先端部41が設けられた端部と反対の端部に固定され、台座部42の端部の面に対して直交する方向に延びている。この場合、接続部43の径方向の中心は、連結部材40の径方向の中心と一致している。すなわち、接続部43は、台座部42の径方向の中心を軸に対称となる形状に形成されている。
【0026】
接続部43は、雄ねじ部431を有している。雄ねじ部431は、接続部43の外周面に形成された雄ねじであり、被接続部25の雌ねじ部251と噛み合う。この場合、雄ねじ部431は、接続部43の外周面の全長にわたって形成されている。そして、雄ねじ部431が雌ねじ部251に締め付けられることによって、連結部材40とシャフト23とが連結される。これにより、ファン30は、連結部材40に形成された接続部43を介してシャフト23に対して取付けることができる。つまり、ファン30は、連結部材40を介してシャフト23と一体的に固定される。
【0027】
この場合、被接続部25の中心は、上述したように、シャフト23の回転中心軸Oと一致しており、接続部43の中心は、連結部材40の径方向の中心と一致している。したがって、接続部43を被接続部25に取付けた場合、ファン30の中心は、シャフト23の回転中心軸Oと一致する。これにより、ファン30は、シャフト23が回転した際に、シャフト23の回転中心軸Oを中心に回転する。
【0028】
また、雄ねじ部431の雄ねじは、回転電機1の回転方向に対して雄ねじ部431をねじ込む方向が反対となる向きに形成されている。ここで、ファン30が連結部材40を介してシャフト23に取付けられた状態でシャフト23が回転すると、ファン30には、シャフト23の回転の開始や停止のタイミングでシャフト23の回転方向とは反対方向への慣性力が働く。そのため、シャフト23の回転方向と雄ねじ部431をねじ込む方向とが同一の向きの場合、ファン30に作用する慣性力の方向と雄ねじ部431を緩める方向とが一致してしまい、その結果、上述したタイミングにおいて雌ねじ部251と雄ねじ部431との締結が緩むおそれがある。
【0029】
そこで、雄ねじ部431の雄ねじは、回転電機1の回転方向によって右ねじ又は左ねじのいずれか一方で形成される。例えば、回転電機1の回転方向が右回転の場合、雄ねじ部431に対しては左回転の方向の力がかかるため、雄ねじ部431は左ねじで形成される。一方、回転電機1の回転方向が左回転の場合、雄ねじ部431に対しては右回転の方向の力がかかるため、雄ねじ部431は右ねじで形成される。
【0030】
これによれば、シャフト23が回転してファン30にシャフト23の回転方向とは逆向きの慣性力が作用した場合であっても、その慣性力は雌ねじ部251に対して雄ねじ部431が締まる方向に作用するため、雌ねじ部251と雄ねじ部431との締結が緩むことを抑制することができる。なお、回転電機1が両回転の場合、雄ねじ部431の雄ねじは右ねじ又は左ねじのいずれで形成されても良い。同様に、被接続部25の雌ねじ部251も、回転電機1の回転方向に応じて右ねじ又は左ねじのいずれか一方で形成される。
【0031】
緩み止め部材44は、シャフト23の回転に対する雌ねじ部251と雄ねじ部431との固定の緩みを防止するためのものである。緩み止め部材44は、雌ねじ部251と雄ねじ部431が嵌合した状態つまり連結部材40がシャフト23に固定された状態において、シャフト23の反負荷側の端部231に接触することで、シャフト23に対する摩擦力を増大させている。これにより、緩み止め部材44は、シャフト23に対する連結部材40の取付け、つまり雄ねじ部431と雌ねじ部251との締結が緩んでしまうことを抑制できる。緩み止め部材44の一部は、連結部材40に形成された座ぐり部45に収容されている。座ぐり部45は、雄ねじ部431の周囲を例えば円環状に窪ませて形成されている。
【0032】
緩み止め部材44は、例えば円環状の歯付き座金で構成され、径方向へ向かって延びる図示しない複数の歯が周方向の所定間隔ごとに形成されている。緩み止め部材44は、雄ねじ部431に挿入可能に形成され、座ぐり部45に一部が収容されている。すなわち、緩み止め部材44の外径は、座ぐり部45の外径よりも小さい寸法に設定されている。これにより、座ぐり部45の内側に緩み止め部材44を収容することが可能になっている。また、緩み止め部材44は、台座部42に対して溶接等によって固定されていない。このため、緩み止め部材44は、台座部42に対して着脱可能となっている。
【0033】
また、緩み止め部材44の厚さ寸法は、座ぐり部45の深さ寸法よりも若干大きい寸法に設定されている。つまり、緩み止め部材44は、座ぐり部45に収容された状態において、座ぐり部45に収容された側と反対側の一部が台座部42から外側に突出している。このため、緩み止め部材44は、雄ねじ部431を雌ねじ部251に締結した場合、台座部42のシャフト23の反負荷側の端部231に対向する面が端部231に接触する前に端部231と接触し、台座部42とシャフト23の端部231との間で挟み込まれる。そして、緩み止め部材44は、台座部42とシャフト23の端部231との間で付与される押圧力に対する弾性力や摩擦力等によって、雌ねじ部251と雄ねじ部431との緩み止めとして機能する。
【0034】
なお、緩み止め部材44は、歯付き座金の他に、ばね座金等によって構成されても良い。また、緩み止め部材44は、回転電機1が両回転の場合に緩み止めとしての優れた効果を発揮するものである。そのため、回転電機1が一方向にのみ回転する場合は、雌ねじ部251及び雄ねじ部431を回転電機1の回転方向に対応して右ねじ又は左ねじのいずれか一方にすることで緩み止め部材44を省略しても良い。
【0035】
溝部46は、雌ねじ部251と雄ねじ部431とが嵌合した状態において、連結部材40のシャフト23の反負荷側の端部231に対向する面の反対側の面に形成されている。つまり、溝部46は、先端部41の台座部42と固定される端部と反対側の端部に形成されている。溝部46は、図4に示すように、例えば十字溝に形成され、連結部材40をシャフト23の回転中心軸Оまわりに回転させるためのものである。
【0036】
この場合、溝部46は、例えば電動ドライバ等の工具の先端が挿入できる程度の大きさに形成されている。これにより、連結部材40は、溝部46に対して電動ドライバ等の工具を用いて回転するだけの容易な操作によって、シャフト23との組み付け又は取り外しを行うことができる。なお、溝部46の形状は、溝部46に挿入した工具が溝部46に係止してその工具と連結部材40との相対的な回転を規制することができる形状であれば、十字溝に限られず、例えば四角形や六角形等の多角形形状であっても良い
【0037】
ここで、本実施形態では、回転電機1は、性能の異なる複数種類のファン30この場合ファン30a、30bの中から選択されたいずれかのファン30を備えて構成される。ファン30a、30bは、図2及び図3に示すように、基本的な構造は同様であるが、外径つまりファンサイズが異なっている。この場合、ファン30aの外径は、ファン30bの外径よりも小さい。したがって、同じ回転数で回転した場合、ファン30aの方がファン30bよりも送風量は小さくなる。
【0038】
ファン30a、30bは、羽根31a、31bと、嵌合孔32a、32bと、を有している。この場合、羽根31aの外径は、31bの外径よりも小さい。また、嵌合孔32aの孔径は、嵌合孔32bの孔径よりも小さい。
【0039】
さらに、回転電機1は、ファン30a、30bに対応した連結部材40a、40bのいずれかの連結部材40を備えて構成される。すなわち、本実施形態では、各ファン30a、30bと各連結部材40a、40bとは、一対に構成されている。この場合、ファン30aは、連結部材40aに取付けられ、ファン30bは、連結部材40bに取付けられる。
【0040】
また、各連結部材40a、40bは、先端部41a、41bを有している。先端部41aの外径は、先端部41bの外径よりも小さい。本実施形態では、連結部材40aと連結部材40bとは、先端部41aと先端部41bとの構成以外に相違はない。換言すれば、各連結部材40a、40bにおいて、台座部42、接続部43、緩み止め部材44、座ぐり部45、及び溝部46は、共通の部材である。これら共通の部材は、連結部材40a、40bをシャフト23に接続するためのものである。すなわち、各連結部材40a、40bにおいて、シャフト23と接続するための構成は共通している。このように、ファンサイズの異なる各ファン30a、30bは、シャフト23と接続するための構成が共通しているため、同一のシャフト23に対してファンサイズの異なるファン30a、30bの変更が可能となる。
【0041】
次に、図5から図7も参照して、回転電機1の製造方法について説明する。本実施形態の回転電機1は、図5に示すように、前工程(ステップS11)、規制工程(ステップS12)、及びファン取付け工程(ステップS13)を順に行い組立てられる。前工程は、一体化された回転子22及びシャフト23をフレーム内に挿通し、シャフト23を軸受14、15に支持させて、回転子22を固定子21の内部に組み付ける工程である。規制工程は、シャフト23の負荷側に固定用治具50を取付けて、シャフト23の回転を規制する工程を含む。
【0042】
固定用治具50は、図6及び図7に示すように、シャフト23の負荷側に取付可能であって、シャフト23の回転を規制するためのものである。固定用治具50は、固定用孔部51を有している。固定用孔部51は、シャフト23の形状に対応した形状に形成され、固定用治具50を軸方向に貫いて形成されている。すなわち、固定用孔部51は、シャフト23を収容可能に形成されている。また、固定用孔部51は、窪み部512を有している。窪み部512は、シャフト23に設けられたキー24に対応した形状に形成され、シャフト23を固定用孔部51に収容した状態でキー24と嵌合する。
【0043】
そして、規制工程は、ファン取付け工程の前に実行される。これにより、規制工程によってシャフト23の回転を予め規制しておくことで、ファン30をシャフト23に取付ける際に、ファン30とシャフト23とが共回りすることがない。これにより、シャフト23に対してファン30を確実に固定することができる。
【0044】
ファン取付け工程は、各連結部材40a、40bが取付けられた性能の異なる複数のファン30a、30bの中から選択された一のファン30を連結部材40を介してシャフト23の端部231に取付ける工程を含む。この場合、連結部材40に設けられた溝部46に対して、例えば電動ドライバ等の工具を用いて回転する操作を行うことによって、ファン30をシャフト23に一体的に組み付けることができる。
【0045】
以上説明した実施形態によれば、回転電機1の製造方法は、筐体10、固定子21、回転子22、シャフト23、ファン30、及び連結部材40を備える回転電機1の製造方法である。固定子21は、筐体10内に固定される。回転子22は、固定子21に対して隙間を介して回転可能に設けられる。シャフト23は、回転子22を回転可能に支持し回転子22の回転に伴って回転する。ファン30は、シャフト23の回転に伴って回転する。
【0046】
連結部材40は、ファン30に取付けられる。また、連結部材40は、接続部43を有する。接続部43は、シャフト23の反負荷側の端部231に設けられた被接続部25に対応した形状に形成され被接続部25に対して着脱可能に取付けられる。そして、この回転電機1の製造方法は、連結部材40が取付けられた性能の異なる複数のファン30a、30bの中から選択された一のファン30を連結部材40を介してシャフト23の反負荷側の端部231に取付けるファン取付け工程を含む。
【0047】
ここで、従来構成において、ファンは、ファンサイズ毎に専用のシャフトがあり、使用するファンサイズに応じてシャフトを変更する必要があった。したがって、同一のシャフトでは多種類のファンサイズに対応できず、シャフトの種類が増加していた。その結果、回転電機の製造において部品の共有化が十分に図られていなかった。さらに、回転子鉄心とシャフトとが焼き嵌め等によって固定されると、シャフトを交換するための作業負担は非常に大きくなってしまい、ファンサイズの変更を効率的に行うことができなかった。
【0048】
そこで、本実施形態では、冷却性能の異なる複数種類のファン30a、30bは、それぞれ連結部材40a、40bが取付けられ、複数種類のファン30a、30bの中から選択されたいずれかのファン30は連結部材40を介してシャフト23に取付けられる。シャフト23には被接続部25が形成されており、各連結部材40a、40bは被接続部25に対応した共通の接続部43を有している。
【0049】
これによれば、各連結部材40a、40bの接続部43が共通している、換言すれば各ファン30a、30bは、共通形状の接続部43を有しているため、シャフト23に対して使用するファン30a、30bを容易に変更することができる。そして、シャフト23を変更することなく多様なファン30a、30bが変更できる結果、回転電機1は、使用態様に応じて冷却性能を容易に変更することができる。なお、ファン30は、上述したファン30a、30b以外にも、ファンサイズに応じた種類を適宜採用することができる。
【0050】
また、回転電機1の製造方法は、ファン取付け工程の前に実行され、シャフト23の負荷側に固定用治具50を取付けて、シャフト23の回転を規制する規制工程を更に含む。これによれば、ファン取付け工程の前に予め規制工程によってシャフト23の回転を規制しておくことで、ファン30をシャフト23に取付ける際に、ファン30とシャフト23とが共回りすることがない。これにより、シャフト23に対してファン30を確実に固定することができる。
【0051】
また、本実施形態の回転電機1は、筐体10、固定子21、回転子22、シャフト23、ファン30、及び連結部材40を備える。連結部材40は、ファン30に取付けられる。また、連結部材40は、接続部43を有する。接続部43は、シャフト23の反負荷側の端部231に設けられた被接続部25に対応した形状に形成され被接続部25に対して着脱可能に取付けられる。これによれば、ファン30は、連結部材40の接続部43をシャフト23の被接続部25に対して取付け又は取り外しすることによって、シャフト23に対して組み付け又は取り外しすることができる。
【0052】
そして、接続部43の形状は、被接続部25に対応した形状に形成されているため、例えば連結部材40にファンサイズが異なる複数のファン30a、30bを交換して取付けて使用する場合であっても、シャフト23に対するファン30a、30bの取付仕様は同一である。つまり、同一のシャフト23に対して複数種類のファン30a、30bを変更することができる。これにより、シャフト23を変更することなく多様なファン30a、30bが変更できる結果、回転電機1は、使用態様に応じて冷却性能を容易に変更することができる。
【0053】
また、被接続部25は、円筒状に構成され、内周面に雌ねじ部251を有する。接続部43は、雄ねじ部431を有する。雄ねじ部431は、シャフト23に連結部材40を取付けた状態において連結部材40のシャフト23の反負荷側の端部231に対向する面に設けられ、雌ねじ部251に嵌合可能に形成されている。また、連結部材40は、緩み止め部材44を更に有する。
【0054】
緩み止め部材44は、雌ねじ部251と雄ねじ部431とが嵌合した状態において、シャフト23の反負荷側の端部231に接触しシャフト23の回転に対する雌ねじ部251と雄ねじ部431との固定の緩みを防止する機能を有する。これによれば、シャフト23にファン30が組み付けられた状態において、シャフト23が回転した際、連結部材40とシャフト23との固定を維持することができる。その結果、ファン30による回転電機1の冷却性能を安定して得ることができる。
【0055】
また、連結部材40は、座ぐり部45を更に有する。座ぐり部45は、雄ねじ部431の周囲を窪ませて形成されている。緩み止め部材44は、雄ねじ部431に挿入可能に形成され、座ぐり部45に一部が収容されている。これによれば、雄ねじ部431を雌ねじ部251に締結した場合、台座部42のシャフト23の反負荷側の端部231に対向する面が端部231に接触する前に、緩み止め部材44が端部231と接触し、台座部42とシャフト23の端部231との間で挟み込まれる。
【0056】
これにより、緩み止め部材44は、台座部42とシャフト23の端部231との間で付与される押圧力に対して弾性力や摩擦力等を作用することによって、雌ねじ部251と雄ねじ部431との固定の緩みを抑制する。したがって、座ぐり部45に緩み止め部材44を収容することによる簡易な構造によって、連結部材40とシャフト23との固定を維持することができる。
【0057】
また、連結部材40は、溝部46を更に有する。溝部46は、雌ねじ部251と雄ねじ部431とが嵌合した状態において、連結部材40のシャフト23の反負荷側の端部231に対向する面の反対側の面に溝状に形成されている。具体的には、溝部46は、各連結部材40a、40bの先端部41a、41bの端部に形成されており、各連結部材40a、40bにおいて形状は同一である。溝部46は、連結部材40をシャフト23の回転中心軸まわりに回転させるためのものである。
【0058】
これによれば、溝部46に対して例えば電動ドライバ等の汎用的な工具を用いて連結部材を回転させることで、シャフト23に対して連結部材40を取付け又は取り外しが可能である。これにより、特殊な工具を用いることなく容易にシャフト23に対する連結部材40の着脱が可能となる。
【0059】
ここで、回転電機1は、ファン30を取付けた状態においていわゆる全閉外扇形の冷却方式にて使用することができ、ファン30を取り外した状態において例えば自然放熱によるいわゆる全閉自冷形又は外部からの一定の空気の流れによるファン30と等価な役割によって冷却を行う全閉他扇形の冷却方式にて使用することができる。本実施形態では、溝部46の操作によって容易にファン30とシャフト23との着脱を行うことができる。これにより、回転電機1の冷却方式の変更を容易に行うことができる。その結果、回転電機1を様々な使用態様において効率的に用いることができるため、回転電機1の利便性の向上を図ることができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図8及び図9を参照して説明する。この第2実施形態の構成は、連結部材40をシャフト23の回転中心軸まわりに回転させるための構成が上記第1実施形態と異なる。すなわち、本実施形態は、連結部材40をシャフト23の回転中心軸まわりに回転させるための構成以外は上記第1実施形態と同様とする。具体的には、上記第1実施形態において、連結部材40は、溝部46を操作することによって連結部材40をシャフト23に取付け又は取り外しすることができる。
【0061】
一方、本実施形態において、連結部材40は、凸部47を有している。凸部47は、連結部材40をシャフト23の回転中心軸まわりに回転させるためのものである。すなわち、連結部材40は、凸部47を操作することによって連結部材40をシャフト23に取付け又は取り外しすることができる。凸部47は、雌ねじ部251と雄ねじ部431とが嵌合した状態において、連結部材40のシャフト23の反負荷側の端部231に対向する面の反対側の面から外側へ突出して設けられている。そして、凸部47は、連結部材40の軸方向に沿って延びる平行な一対の側面部471を有する。
【0062】
具体的には、凸部47は、各連結部材40a、40bの先端部41a、41bの端部に設けられており、各連結部材40a、40bにおいて形状は同一である。なお、先端部41と凸部47とは、別々の部材で構成されても良く、一体形成されていても良い。先端部41と凸部47とが別々の部材で構成される場合、凸部47は先端部41に対して溶接等により固定される。
【0063】
これによれば、連結部材40は、凸部47の側面部471に対して例えばレンチ等の汎用的な工具を挟み、凸部47を回転させることでシャフト23に対して取付け又は取り外しが可能である。これにより、特殊な工具を用いることなく容易にシャフト23に対する連結部材40の着脱が可能となる。
【0064】
なお、上記した各実施形態において、規制工程の一例としてキー24が窪み部512に嵌合した状態で固定用治具50がシャフト23に固定される構成を開示したが、これに限られない。例えば、キー24が取り外された状態でシャフト23のキー溝232に対して固定用孔部51のキー溝232に対応した位置に設けられた突起部を嵌合されることによってシャフト23に対して固定用治具50を固定する構成であっても良い。
【0065】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
図面中1は回転電機、10は筐体、21は固定子、22は回転子、23はシャフト、231は端部、25は被接続部、251は雌ねじ部、30はファン、40は連結部材、43は接続部、431は雄ねじ部、44は緩み止め部材、45は座ぐり部、46は溝部、47は凸部、50は固定用治具、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9