(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109662
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】基板モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20220721BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H01L23/40 C
H01L23/40 E
H05K7/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005085
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】川島 達也
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 曜一
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB01
5E322AB04
5E322AB07
5E322AB08
5E322FA04
5F136BA03
5F136BB18
5F136BC07
5F136DA09
5F136DA21
5F136EA35
5F136EA40
(57)【要約】
【課題】作業効率および放熱効率を向上させ得る、放熱器を介して発熱部品から発生する熱を放熱させる基板モジュールを提供する。
【解決手段】基板モジュール100は、半導体素子30の放熱面を露出させて保持する位置決め用ホルダー40と、位置決め用ホルダー40を前記基板の裏面20B側に位置決めする突起部41と、位置決め用ホルダー40に収容され半導体素子30を放熱器200側に押圧する押さえ金具70と、前記基板20の表裏面を貫通する貫通孔25と、位置決め用ホルダー40に設けられ、貫通孔25に連通する貫通孔45と、貫通孔25および貫通孔45を介して、基板20の表面20A側から放熱器200に締結される固定ねじ90とを備え、押さえ金具70は、固定ねじ90によって放熱器200に締結されることにより位置決め用ホルダー40に保持された半導体素子30を放熱器200に押圧する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面側に発熱部品を実装し、前記発熱部品から発生する熱を放熱器を介して放熱させる基板モジュールであって、
前記発熱部品の放熱面を露出させて保持する位置決め部材と、
前記位置決め部材を前記基板の裏面側に位置決めする位置決め部と、
前記位置決め部材に収容され前記発熱部品を前記放熱器側に押圧する押圧部材と、
前記基板の表裏面を貫通する第1の貫通部と、
前記位置決め部材に設けられ、前記第1の貫通部に連通する第2の貫通部と、
前記第1の貫通部および前記第2の貫通部を介して、前記基板の前記表面側から前記放熱器に締結される締結部材とを備え、
前記押圧部材は、前記締結部材によって前記放熱器に締結されることにより前記位置決め部材に保持された前記発熱部品の放熱面を前記放熱器に向けて押圧することを特徴とする基板モジュール。
【請求項2】
前記発熱部品を保持した前記位置決め部材を前記基板の裏面側に固定する固定部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の基板モジュール。
【請求項3】
前記位置決め部材と前記固定部材とが一体化され前記位置決め部材が前記固定部材として機能することを特徴とする請求項2に記載の基板モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板モジュールに関し、パワー半導体素子等の発熱部品を実装した基板モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電システムや家庭用燃料電池を利用する上で、発電された電気を家庭などの環境下で使用できるように変換するパワーコンディショナーがある。この種のパワーコンディショナーなどの電力変換装置においては、電力変換に用いられる半導体素子の発熱を効率的に放熱器へ逃がすことが求められている。
【0003】
放熱効率を向上させる目的から、従来、放熱器に対して半導体素子を直接固定する構成が考えられており、当該固定方法として、押圧部材を用いて半導体素子を放熱器にねじ止めする構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、予め平面放熱板によって基板上に半導体素子を挟み込んだ後に、これを放熱器に取り付ける構成が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-243264号公報
【特許文献2】特開2015-228400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の構成では、半導体素子を放熱器に固定した後にその上から半導体素子の位置に合わせて基板を取付け、半田付けする作業が必要になり、位置決めおよび半田付け作業が困難になる問題があった。
【0007】
また、特許文献2のように、予め平面放熱板によって基板上に半導体素子を挟み込んだ後に、これを放熱器に取り付ける構成では、放熱器とは別体の平面放熱板を用いる分、半導体素子と放熱器との間に熱的な抵抗が生じるため、放熱効率が悪化する問題があった。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、作業効率および放熱効率を向上させ得る、放熱器に実装可能な基板モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基板モジュールは、基板の裏面側に発熱部品を実装し、前記発熱部品から発生する熱を放熱器を介して放熱させる基板モジュールであって、前記発熱部品の放熱面を露出させて保持する位置決め部材と、前記位置決め部材を前記基板の裏面側に位置決めする位置決め部と、前記位置決め部材に収容され前記発熱部品を前記放熱器側に押圧する押圧部材と、前記基板の表裏面を貫通する第1の貫通部と、前記位置決め部材に設けられ、前記第1の貫通部に連通する第2の貫通部と、前記第1の貫通部および前記第2の貫通部を介して、前記基板の前記表面側から前記放熱器に締結される締結部材とを備え、前記押圧部材は、前記締結部材によって前記放熱器に締結されることにより前記位置決め部材に保持された前記発熱部品の放熱面を前記放熱器に向けて押圧することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、基板の裏面側に位置決め部材に保持された発熱部品を実装した後に、第1および第2の貫通部を介して基板の表面側から締結部材を放熱器に締結する作業を行って、裏面側に放熱器を取り付けることができることにより、作業効率を向上させることができる。また、位置決め部材に収容された押圧部材を用いて発熱部品の放熱面を放熱器に向けて押圧することにより、放熱効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の基板モジュールは、上記構成において、前記発熱部品を保持した前記位置決め部材を前記基板の裏面側に固定する固定部材を備えることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、位置決め部材によって発熱部品を位置決めした状態で半田付け作業等を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の基板モジュールは、上記構成において、前記位置決め部材と前記固定部材とが一体化され位置決め部材が固定部材として機能することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、位置決め部材と保持部材を別体とする場合に比べて、部品点数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、作業効率および放熱効率を向上させ得る、放熱器を介して発熱部品から発生する熱を放熱させる基板モジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基板モジュールを用いた半導体素子の実装工程の説明に供する分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る基板モジュールの説明に供する分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る基板モジュールの構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る基板モジュールの放熱器への取付方法の説明に供する断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る基板モジュールを示す斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る基板モジュールを示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る基板モジュールを用いた半導体素子の実装工程の説明に供する分解斜視図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る基板モジュールに用いられる位置決め用ホルダーを示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る基板モジュールの放熱器への取付方法の説明に供する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1および
図2に示すように、本実施形態に係るパワー半導体素子(半導体素子30)を実装した基板モジュール100は、図示しないパワーコンディショナーの筐体背面に配置されるメイン放熱器200に向けて、発熱部品である半導体素子30の放熱面を押圧するとともに、半導体素子30をメイン放熱器200に対して必要に応じて伝熱シートを介した状態で均一に接触させることによって、発熱効率を高めるものである。
【0018】
この基板モジュール100においては、半導体素子30を基板20に実装した後にメイン放熱器200に組み付ける製造方法を採ることができることにより、メイン放熱器に対して半導体素子を固定した後に基板を組み付ける製造方法に比べて、作業効率を向上させることができる。このような製造方法を実現するため、本実施形態の基板モジュール100においては、本発明の「位置決め部材」として機能する位置決め用ホルダー40および本発明の「固定部材」として機能するフック付ホルダー50によって半導体素子30を基板20の実装位置に固定する構成となっている。
【0019】
以下、基板モジュール100について詳細に説明する。
図1に示すように、基板モジュール100は、プリント基板等の基板20と、基板20の裏面20Bの取付位置に半導体素子30を位置決めするための位置決め用ホルダー40と、位置決め用ホルダー40によって位置決めされた半導体素子30のリード31を基板20の挿通孔21に差し込んだ状態で保持するためのフック付きホルダー50とを備えている。
【0020】
半導体素子30は90°の曲げ加工が施されたリード31を有し、このリード31を基板20の裏面20Bから挿通孔21に挿入し半田付けすることにより半導体素子30を基板20の裏面20Bに実行するようになっている。
【0021】
このように半導体素子30の基板20への取付け位置はリード31を挿通孔21に差し込むことが可能な位置であり、正確な位置決め精度が要求されるため、位置決め用ホルダー40を用いて半導体素子30の水平方向および高さ方向の位置決めを行う。
【0022】
具体的には、位置決め用ホルダー40は、基板20の裏面20Bに当接される基板当接面43に2つの突起部41(本発明の「位置決め部」に相当)が設けられており、この突起を基板20の位置決め孔23に差し込むことにより、位置決め用ホルダー40の水平方向の位置決め(基板20の裏面20Bにおける位置決め)を行うことができる。なお、位置決め用ホルダー40およびフック付きホルダー50(後述)の材質としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド:熱可塑性樹脂でスーパーエンプラと呼ばれる高性能エンジニアリングプラスチック(ガラス入り))、高耐熱PA(ガラス入り耐熱ナイロン)、高耐熱PC(ガラス入りポリカーボネート)などの耐熱性の樹脂材が用いられる。
【0023】
また、
図2に示すように、位置決め用ホルダー40の基板当接面43の裏面側(すなわち、メイン放熱器200側)には、メイン放熱器200側に開口する凹部形状の保持部42が設けられており、この保持部42に半導体素子30のパッケージ部32を挿入してパッケージ部32の表面(放熱面)を露出させた状態で保持することができる。なお、半導体素子30を保持部42に収納する場合、半導体素子30のパッケージ部32と保持部42との間には、絶縁シート80を介して押さえ金具70(後述)が介挿される。
【0024】
保持部42に保持された半導体素子30のリード31は、保持部42の側縁切欠き部44から位置決め用ホルダー40の側方に引き出され、その90°折り曲げられた先端部は、基板20の挿通孔21に差し込まれるようになっている。
【0025】
位置決め用ホルダー40の保持部42に半導体素子30を保持した状態でリード31の先端部を基板20の挿通孔21に差し込みながら、位置決め用ホルダー40の突起部41を基板20の位置決め孔23に差し込むようにして位置決め用ホルダー40を基板20の裏面20Bにおける所定位置に位置決めする。
【0026】
図2に示すように、基板20の裏面20B上に位置決め用ホルダー40を位置決め配置し、保持部42に押さえ金具70、絶縁シート80および半導体素子30を乗せた状態でフック付きホルダー50を基板20の裏面20B側に取り付けることにより、押さえ金具70、絶縁シート80および半導体素子30を内部に有する位置決め用ホルダー40を基板に仮保持することができる。
【0027】
具体的には、フック付きホルダー50は、梯子状の本体部51と、当該本体部51から取付け対象である基板20方向に突出する取付脚54と、取付脚54の先端に設けられたフック55とを備える。また、本体部51は、平行な2本の支柱52と、当該支柱52間に架け渡された横桟53A、53B、53Cおよび53Dとを備える。
【0028】
内部に押さえ金具70、絶縁シート80および半導体素子30を乗せた位置決め用ホルダー40を基板20に位置決めした状態において当該位置決め用ホルダー40を覆うようにフック付きホルダー50を被せ、その取付脚54を基板20の取付孔22に差し込むことにより、
図3に示すように、位置決め用ホルダー40を挟んだ状態でフック付きホルダー50を基板20に固定することができる。
【0029】
この状態において、フック付きホルダー50の横桟53A、53Dが半導体素子30のリード31の付け根部分を基板20方向に押さえることにより、基板20の挿通孔21に差し込まれたリード31が浮き上がることを防止することができる。
【0030】
このようにして、位置決め用ホルダー40およびフック付きホルダー50によって基板20の裏面20Bの所定位置に半導体素子30を位置決め保持した状態において、基板20の挿通孔21に差し込まれた半導体素子30のリード31を基板20に半田付けすることにより、基板モジュール100(
図3)が完成する。
【0031】
フック付きホルダー50には、支柱52および横桟53A、53Bによって囲まれた第1開口部56Aと、支柱52および横桟53B、53Cによって囲まれた第2開口部56Bと、支柱52および横桟橋53C、53Dによって囲まれた第3開口部56Cとが設けられており、基板モジュール100においては、第1開口部56Aおよび第3開口部56Cを介して、位置決め用ホルダー40に保持された2つの半導体素子30のパッケージ部32が各々露出するようになっている。また、第2開口部56Bを介して、位置決め用ホルダー40内の押さえ金具70が露出するようになっている。
【0032】
このような基板モジュール100をメイン放熱器200に取り付ける。以下、基板モジュール100のメイン放熱器200への取付構造について説明する。
【0033】
位置決め用ホルダー40内に保持される押さえ金具70は、帯状の金属板を折曲して形成しており、伝熱シート60(
図1)を介してメイン放熱器200に当接される平面状の当接部71と、当該当接部71の両側部から起立する起立部73と、起立部73の先端部から左右へ所定角度の傾斜をもって伸延する押さえ部74とを有する。押さえ部74の先端は絶縁シート80を介して半導体素子30のパッケージ部32に当接する。
【0034】
当接部71を固定ねじ90(本発明の「締結部材」に相当)によってメイン放熱器200にねじ止めすると、押さえ部74は金属板の弾性によって板ばねのように作用して、その先端部によって半導体素子30のパッケージ部32をメイン放熱器200に押圧するようになっている。このように本実施形態では押さえ金具70が本発明の「押圧部材」として機能する。
【0035】
具体的には、位置決め用ホルダー40の中央部には貫通孔45が設けられており、これに対応する基板20の所定位置にも貫通孔25が設けられている。位置決め用ホルダー40に乗せられた押さえ金具70は、切欠き部46(
図2)によって押さえ部74が位置決めされ、その当接部71が貫通孔45、25に対向する位置に保持される。これにより、押さえ金具70の当接部71に設けられたねじ孔72は、基板20の貫通孔25および当該貫通孔25に連通する位置決め用ホルダー40の貫通孔45を介して、基板20の表面20A側に露出した状態となる。このように本実施形態では、基板20の貫通孔25が本発明の「第1の貫通部」に相当し、位置決め用ホルダー40の貫通孔45が本発明の「第2の貫通部」に相当する。
【0036】
従って、基板モジュール100をメイン放熱器200に取り付ける場合、位置決め用ホルダー40に保持された半導体素子30のパッケージ部32をメイン放熱器200に当接させ、メイン放熱器200のねじ孔202に対して、伝熱シート60の貫通孔65と押さえ金具70のねじ孔72とを位置合わせすることにより、メイン放熱器200のねじ孔202、伝熱シート60の貫通孔65、押さえ金具70のねじ孔72、位置決め用ホルダー40の貫通孔45、基板20の貫通孔25が連通した状態となる。
【0037】
この状態において、
図4(a)に示すように、固定ねじ90を基板20の表面20A側からメイン放熱器200のねじ孔202へ螺合し、さらに固定ねじ90を矢印A方向にねじ込むことにより、
図4(b)に示すように、押さえ金具70の当接部71をメイン放熱器200に当接させた状態に締結することができる。この状態において、押さえ金具70の押さえ部74はそのばねの付勢力によって半導体素子30のパッケージ部32を100~200Nの力でメイン放熱器200へ押圧することができる。
【0038】
なお、フック付きホルダー50が半導体素子30等を保持する力は、フック55を人力で基板20の取付孔22に挿脱し得る程度の1~5N程度となっていることにより、固定ねじ90によって押さえ金具70をメイン放熱器200に締結する際に、押さえ部74によってメイン放熱器200方向に付勢された半導体素子30がそのリード31を半田付けした基板20を同時にメイン放熱器200方向に付勢することになるが、この場合でもフック55が取付孔25内に対して挿脱される力が押さえ部74によるパッケージ部32の押圧力よりも格段に小さいことにより、フック付きホルダー50による半導体素子30の保持が、押さえ金具70による半導体素子30のメイン放熱器200への締結の妨げになることはない。
【0039】
このようにして、メイン放熱器200に基板モジュール100を取り付けた後、基板20を筐体(図示せず)にねじ止めすることにより、パワーコンディショナー等の機器への取付が完了する。
【0040】
以上の構成においては、位置決め用ホルダー40によって半導体素子30を基板20の実装面(裏面20B)の実装位置に位置決めした状態でフック付きホルダー50によって保持し、この状態で半導体素子30のリード31を基板20に半田付けすることで半導体素子30を実装した基板モジュール100(
図3)を製造することができる。
【0041】
この状態において、半導体素子30を実装した基板20の裏面20B側をメイン放熱器200に向けると、当該裏面20Bに実装された半導体素子30の主放熱部となるパッケージ部32が露出した状態となる。
【0042】
この状態において、押さえ金具70の貫通孔72とメイン放熱器200のねじ孔202を位置合わせする。この場合、基板20の貫通孔25を介して基板20の表面20A側から固定ねじ90をねじ孔202に螺合することができる。すなわち、半導体素子30を実装した基板モジュール100を組み立てた後に、固定ねじ90を基板20の表面20A側から押さえ金具70を介してメイン放熱器200に螺合し、当該押さえ金具70を締め付けることで、押さえ金具70のばねの付勢力によって半導体素子30をメイン放熱器200に押圧することができる。
【0043】
このように、基板モジュール100を完成させた後に、基板20に形成された貫通孔25を介して、基板20の表面20A側から半導体素子30をメイン放熱器200に押圧させる作業を行うことができることにより、半導体素子を放熱器に固定した後に当該半導体素子のリードを基板に固定するといった従来の構成に比べて、裏面20Bに実装される半導体素子30の位置決めを基板20の表面20A側から行う必要がなくなり、作業性を格段に向上させることができる。
【0044】
また、押さえ金具70のばねの付勢力によって半導体素子30をメイン放熱器200に押圧可能な構成としたことにより、半導体素子30の高さにばらつきがあっても、均一な押圧力をもってメイン放熱器200に当接させることができ、放熱効率を均一にすることができる。
【0045】
そして、半導体素子30を伝熱シート60を介して直接メイン放熱器200に当接させることができるため、放熱効率を向上させることができると共に、例えば基板上に半導体素子を実装した後にメイン放熱器200とは別体の平面放熱板を乗せる従来の構成に比べて、当該平面放熱板を用いない分、半導体素子30とメイン放熱器200との間に熱的な抵抗が生じることを抑制することができ、この分、放熱効率が低下することを抑制することができる。
【0046】
また、修理等により分割する必要がある場合には、固定ねじ90を外すだけでメイン放熱器200から基板モジュール100を取り外すことができることにより、従来のように半田を溶かすといった煩雑な分解工程が不要となる。
【0047】
なお、上述の実施形態では、基板20に1つの位置決め用ホルダー40を取り付けた基板モジュール100について述べたが、例えば
図5に示すように、基板20の裏面20Bに複数の位置決め用ホルダー40を取り付けることができる。この場合、
図6に示すように、基板20の表面20Aに、コンデンサ等の種々の素子110を実装することもできる。
【0048】
このように、複数の位置決め用ホルダー40を実装した基板モジュール100においては、複数の半導体素子30のリード31を基板20に位置決めし半田付けする作業があるため、半導体素子30をメイン放熱器200に固定する工程の後に基板20を被せることとした場合には、位置決め作業が困難になるが、本実施形態の基板モジュール100においては、半導体素子30を基板20に実装する工程を、メイン放熱器200に取り付ける工程の前に実行できるため、作業効率を格段に向上させることができる。
【0049】
また、基板20の表面20Aにコンデンサ等の種々の素子110(
図6)を実装した状態の基板モジュールを組み立てた後に、メイン放熱器200への取付けを行うことができることにより、メイン放熱器200へ取り付けた後に種々の素子110を実装するといった後工程が不要となり、製造工程全体としての作業効率を向上させることができる。
【0050】
(第2実施形態)
図1~
図6との対応部分に同一符号を付して示す
図7~
図11は、第2実施形態に係る基板モジュール300の説明に供する図である。
【0051】
第2実施形態に係る基板モジュール300は、第1実施形態に係る基板モジュール100における位置決め用ホルダー40およびフック付きホルダー50を一体化すると共に、メイン放熱器200にスペーサー401を設け、このスペーサー401によって押さえ金具370の当接部71の高さを位置決めしている点が異なる。スペーサー401の頂部には固定ねじ90が螺合する程度のねじ孔202が形成されている。第2実施形態の押さえ金具370は、これらの構成に適応させるために、第1実施形態の押さえ金具70とは異なる形状を有している。具体的には、押さえ金具370は、固定ねじ90を受けるとともに固定ねじ90をメイン放熱器200のねじ孔202に螺合することでメイン放熱器200に設けられたスペーサー401に当接する当接部71と、当該当接部71から左右に伸延する押さえ部74を備える。当接部71には、上方に折り曲げられた起立部377が設けられており、基板20の貫通孔25に形成された切欠き部25Aに差し込まれることで、押さえ金具370が基板20に対して位置決めされる。これにより、位置決め用ホルダー340の内部空間に置かれているのみで位置決め用ホルダー340に固定されていない押さえ金具370は、位置決め用ホルダー340が基板20に取り付けられた状態において、基板20に対して位置決めされるようになっている。
【0052】
図7および
図8に示すように、位置決め用ホルダー340は、第1実施形態の位置決め用ホルダー40に比べて、全体が枠体342によって環状に形成されており、半導体素子30を保持する2つの保持部42と保持部42の間に設けられた貫通孔45が連通して1つの貫通部を形成している。
【0053】
また、保持部42に保持される半導体素子30と基板20の裏面20Bとの間の電気的な絶縁を保つために絶縁シート380が設けられる。
【0054】
位置決め用ホルダー340には、先端にフック55を有する取付脚54が設けられており、この取付脚54を絶縁シート380の貫通孔382を介して基板20の取付孔22に差し込むことで、フック55によって位置決め用ホルダー340を基板20の裏面20Bに取り付けることができる。
【0055】
位置決め用ホルダー340の基板20への位置決めは、第1実施形態と同様にして、位置決め用ホルダー340の突起部41を絶縁シート380の貫通孔381を介して基板20の位置決め孔23に差し込むことにより行われるが、第2実施形態の場合、位置決め用ホルダー340に取付脚54が直接設けられていることにより、当該取付脚54を基板20の取付孔22に差し込むことにより位置決めされるため、突起部41(および位置決め孔23)を省略することもできる。このように第2実施形態では、位置決め用ホルダー340が本発明の「位置決め部材」に相当するとともに「固定部材」としても機能し、取付脚54、フック55が本発明の「位置決め部」として機能する。
【0056】
基板20の裏面20Bに対して、絶縁シート380、押さえ金具370、位置決め用ホルダー340および絶縁シート80を取り付けた状態において、半導体素子30を位置決め用ホルダー340の保持部42に挿入するとともに半導体素子30のリード31を基板20の挿通孔21に差し込み、リード31を基板20に半田付けすることにより、基板20の裏面20Bの所定位置に半導体素子30が実装された基板モジュール300を完成させることができる。
【0057】
このようにして、メイン放熱器200に取り付ける前の基板20の裏面20Bに対して、位置決め用ホルダー340を用いて半導体素子30を実装することができる。
【0058】
基板モジュール300をメイン放熱器200に取り付ける場合、位置決め用ホルダー340に位置決めされ基板20にリード31が半田付けされた半導体素子30のパッケージ部32を伝熱シート60を介してメイン放熱器200に当接させ、メイン放熱器200のねじ孔202に対して、伝熱シート60の貫通孔65と押さえ金具370のねじ孔72とを位置合わせすることにより、メイン放熱器200のねじ孔202、伝熱シート60の貫通孔65、押さえ金具370のねじ孔72、位置決め用ホルダー340の貫通孔45、基板20の貫通孔25が連通した状態となる。
【0059】
この状態において、
図9(a)に示すように、固定ねじ90を基板20の表面20A側からメイン放熱器200のねじ孔202へ螺合し、さらに固定ねじ90を矢印A方向にねじ込むことにより、
図9(b)に示すように、押さえ金具370の当接部71をメイン放熱器200に設けられたスペーサー401に当接させた状態に締結することができる。この状態において、押さえ金具370の押さえ部74は、スペーサー401の高さHに応じたばねの付勢力によって半導体素子30のパッケージ部32を所定の押圧力でメイン放熱器200へ押圧することができる。このように、本実施形態では、スペーサー401を用い、その高さに応じた押圧力で半導体素子30をメイン放熱器200に押圧することができる。
【0060】
このようにして、メイン放熱器200に基板モジュール300を取り付けた後、基板20を筐体(図示せず)にねじ止めすることにより、パワーコンディショナー等の機器への取付が完了する。
【0061】
以上の構成においては、基板20の裏面20Bに対して位置決め用ホルダー340を取付けることにより、位置決め用ホルダー340に保持された半導体素子30が基板20に実装され、基板モジュール300が完成する。すなわち、基板モジュール300をメイン放熱器200に取り付ける前に、半導体素子30が実装された基板モジュール300を完成させることができる。
【0062】
完成した基板モジュール300においては、基板20の貫通孔25を介して、基板20の表面20A側に押さえ金具370の当接部71(ねじ孔72)が露出した状態となるため、このねじ孔72に対して基板20の表面20A側から固定ねじ90を挿入することができる。当接部71(ねじ孔72)の下方において、スペーサー401の頂部に形成されたねじ孔202を連通する状態に位置決めすることにより、半導体素子30が実装された裏面20B側にメイン放熱器200を取り付けることができる。
【0063】
すなわち、半導体素子30を実装した状態の基板モジュール300を半導体素子30が実装された裏面20B側からメイン放熱器200に取り付けることができる。
【0064】
位置決め用ホルダー340に位置決めされ基板20に実装された複数の半導体素子30は、押さえ金具370の押さえ部74によって所定の押圧力で均一にメイン放熱器200に当接する。
【0065】
このように、本実施形態の基板モジュール300においては、基板20の裏面20B側に半導体素子30を実装した後に、当該基板モジュール300をメイン放熱器200に取り付けることができることにより、半導体素子を放熱器に固定した後に当該半導体素子のリードを基板に固定するといった従来の構成に比べて、裏面20Bに実装される半導体素子30の位置決めを基板20の表面20A側から行う必要がなくなり、作業性を格段に向上させることができる。
【0066】
また、押さえ金具370のばねの付勢力によって半導体素子30をメイン放熱器200に押圧可能な構成としたことにより、半導体素子30の高さにばらつきがあっても、均一な押圧力をもってメイン放熱器200に当接させることができ、放熱効率を均一にすることができる。
【0067】
また、半導体素子30を伝熱シート60を介して直接メイン放熱器200に当接させることができるため、放熱効率を向上させることができると共に、例えば基板上に半導体素子を実装した後にメイン放熱器200とは別体の平面放熱板を乗せる従来の構成に比べて、当該平面放熱板を用いない分、半導体素子30とメイン放熱器200との間に熱的な抵抗が生じることを抑制することができ、この分、放熱効率が低下することを抑制することができる。
【0068】
また、修理等により分割する必要がある場合には、固定ねじ90を外すだけでメイン放熱器200から基板モジュール300を取り外すことができることにより、従来のように半田を溶かすといった煩雑な分解工程が不要となる。
【0069】
なお、上述の実施形態では、基板20に1つの位置決め用ホルダー340を取り付けた基板モジュール300について述べたが、第1実施形態において
図5に示したように、基板20の裏面20Bに複数の位置決め用ホルダーを取り付けることができる。この場合、
図6に示したように、基板20の表面20Aには、コンデンサ等の種々の素子110を実装することができる。
【0070】
また、基板20の表面20Aにコンデンサ等の種々の素子110(
図6)を実装した状態の基板モジュールを組み立てた後に、メイン放熱器200への取付けを行うことができることにより、メイン放熱器200へ取り付けた後に種々の素子110(
図6)を実装するといった後工程が不要となり、製造工程全体としての作業効率を向上させることができる。
【0071】
(他の実施形態)
なお、上述の実施形態においては、押さえ金具70をメイン放熱器200に締結する締結部材として固定ねじ90を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限られず、例えば、樹脂製のピンをメイン放熱器200の孔部に圧入する等、他の締結部材を適用することができる。
【0072】
また、上述の実施形態においては、半導体素子を基板20に実装してなる基板モジュール100、300について述べたが、本発明はこれに限られず、他の種々の電子部品を実装する基板モジュールに適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
20 基板
20A 表面
20B 裏面
21 挿通孔
25 貫通孔(第1の貫通部)
30 半導体素子(発熱部品)
31 リード
40、340 位置決め用ホルダー(位置決め部材)
41 突起部(位置決め部)
45 貫通孔(第2の貫通部)
50 フック付きホルダー(固定部材)
54 取付脚(位置決め部)
55 フック(位置決め部)
60 伝熱シート
70 押さえ金具(押圧部材)
71 当接部
74 押さえ部
80 絶縁シート
100、300 基板モジュール
200 メイン放熱器
202 ねじ孔
401 スペーサー