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特開2022-109708電波伝搬推定装置、電波伝搬推定方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109708
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】電波伝搬推定装置、電波伝搬推定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/391 20150101AFI20220721BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20220721BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20220721BHJP
   G06F 16/906 20190101ALI20220721BHJP
【FI】
H04B17/391
H04B17/309
H04W16/18 110
G06F16/906
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005169
(22)【出願日】2021-01-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【テーマコード(参考)】
5B175
5K067
【Fターム(参考)】
5B175FA03
5B175FB04
5K067EE16
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】各区域の地理データに応じた電波伝搬モデルによって電波伝搬特性を推定することを図る。
【解決手段】複数の区域の地理データに基づいて複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリング部と、クラスタ毎に電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成部と、各クラスタの電波伝搬モデルを評価するモデル評価部と、電波伝搬モデルの評価結果に基づいて複数の区域を再クラスタリングする再クラスタリング部と、推定対象区域が属するクラスタの電波伝搬モデルを使用して当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定部と、を備え、電波伝搬モデル生成部は複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に電波伝搬モデルを再生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の区域の地理データに基づいて、前記複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリング部と、
前記複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成部と、
各クラスタの前記電波伝搬モデルを評価するモデル評価部と、
各クラスタの前記電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、前記複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する再クラスタリング部と、
推定対象区域が属するクラスタの前記電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定部と、を備え、
前記電波伝搬モデル生成部は、前記複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に前記電波伝搬モデルを再生成する、
電波伝搬推定装置。
【請求項2】
所定のモデル生成終了条件を満たすまで、クラスタの再構成と電波伝搬モデルの再生成とを繰り返す、
請求項1に記載の電波伝搬推定装置。
【請求項3】
前記モデル評価部は、一の区域の地理データ及び電波の伝搬特性の実測データを使用して全てのクラスタの電波伝搬モデルを評価する、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の電波伝搬推定装置。
【請求項4】
前記再クラスタリング部は、一の区域についての前記全てのクラスタの電波伝搬モデルの評価結果及び地理データを、当該一の区域のクラスタリング入力データに使用する、
請求項3に記載の電波伝搬推定装置。
【請求項5】
前記再クラスタリング部は、一の区域についての前記全てのクラスタの電波伝搬モデルの評価結果のみを、当該一の区域のクラスタリング入力データに使用する、
請求項3に記載の電波伝搬推定装置。
【請求項6】
電波伝搬推定装置が、複数の区域の地理データに基づいて、前記複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリングステップと、
前記電波伝搬推定装置が、前記複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成ステップと、
前記電波伝搬推定装置が、各クラスタの前記電波伝搬モデルを評価するモデル評価ステップと、
前記電波伝搬推定装置が、各クラスタの前記電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、前記複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する再クラスタリングステップと、
前記電波伝搬推定装置が、前記複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に前記電波伝搬モデルを再生成する電波伝搬モデル再生成ステップと、
前記電波伝搬推定装置が、推定対象区域が属するクラスタの前記電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定ステップと、
を含む電波伝搬推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
複数の区域の地理データに基づいて、前記複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリングステップと、
前記複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成ステップと、
各クラスタの前記電波伝搬モデルを評価するモデル評価ステップと、
各クラスタの前記電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、前記複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する再クラスタリングステップと、
前記複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に前記電波伝搬モデルを再生成する電波伝搬モデル再生成ステップと、
推定対象区域が属するクラスタの前記電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波伝搬推定装置、電波伝搬推定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電波伝搬特性の推定技術として例えば特許文献1が知られている。特許文献1に記載された電波伝搬特性推定技術では、畳み込みニューラルネットワークを地図データに適用することによって電波の障害となり得る構造を表す第1パラメータを地図データから抽出し、抽出された第1パラメータと無線通信システムの構成を表す第2パラメータとに全結合ニューラルネットワークを適用することによって電波の伝搬特性を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-122008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1に記載された電波伝搬特性の推定技術では、多様な都市構造に対して1つのモデルで学習していることから、学習に長時間を要したり、地勢の違いによる推定誤差のバラつきが発生したりする。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、各区域の地理データに応じた電波伝搬モデルによって電波伝搬特性を推定することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、複数の区域の地理データに基づいて、前記複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリング部と、前記複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成部と、各クラスタの前記電波伝搬モデルを評価するモデル評価部と、各クラスタの前記電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、前記複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する再クラスタリング部と、推定対象区域が属するクラスタの前記電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定部と、を備え、前記電波伝搬モデル生成部は、前記複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に前記電波伝搬モデルを再生成する、電波伝搬推定装置である。
(2)本発明の一態様は、所定のモデル生成終了条件を満たすまで、クラスタの再構成と電波伝搬モデルの再生成とを繰り返す、上記(1)の電波伝搬推定装置である。
(3)本発明の一態様は、前記モデル評価部は、一の区域の地理データ及び電波の伝搬特性の実測データを使用して全てのクラスタの電波伝搬モデルを評価する、上記(1)又は(2)のいずれかの電波伝搬推定装置である。
(4)本発明の一態様は、前記再クラスタリング部は、一の区域についての前記全てのクラスタの電波伝搬モデルの評価結果及び地理データを、当該一の区域のクラスタリング入力データに使用する、上記(3)の電波伝搬推定装置である。
(5)本発明の一態様は、前記再クラスタリング部は、一の区域についての前記全てのクラスタの電波伝搬モデルの評価結果のみを、当該一の区域のクラスタリング入力データに使用する、上記(3)の電波伝搬推定装置である。
【0007】
(6)本発明の一態様は、電波伝搬推定装置が、複数の区域の地理データに基づいて、前記複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリングステップと、前記電波伝搬推定装置が、前記複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成ステップと、前記電波伝搬推定装置が、各クラスタの前記電波伝搬モデルを評価するモデル評価ステップと、前記電波伝搬推定装置が、各クラスタの前記電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、前記複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する再クラスタリングステップと、前記電波伝搬推定装置が、前記複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に前記電波伝搬モデルを再生成する電波伝搬モデル再生成ステップと、前記電波伝搬推定装置が、推定対象区域が属するクラスタの前記電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定ステップと、を含む電波伝搬推定方法である。
【0008】
(7)本発明の一態様は、コンピュータに、複数の区域の地理データに基づいて、前記複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成するクラスタリングステップと、前記複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する電波伝搬モデル生成ステップと、各クラスタの前記電波伝搬モデルを評価するモデル評価ステップと、各クラスタの前記電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、前記複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する再クラスタリングステップと、前記複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に前記電波伝搬モデルを再生成する電波伝搬モデル再生成ステップと、推定対象区域が属するクラスタの前記電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する推定ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各区域の地理データに応じた電波伝搬モデルによって電波伝搬特性を推定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る電波伝搬推定装置の構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係る電波伝搬モデル生成方法の概略説明図である。
図3】一実施形態に係る電波伝搬モデル生成方法の詳細説明図である。
図4】一実施形態に係る電波伝搬特性推定方法の説明図である。
図5】一実施形態に係るクラスタリング方法の説明図である。
図6】一実施形態に係るクラスタリング方法の説明図である。
図7】一実施形態に係る再クラスタリング方法の説明図である。
図8】一実施形態に係る再クラスタリング方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る電波伝搬推定装置の構成例を示すブロック図である。図1において、電波伝搬推定装置10は、クラスタリング部11と、電波伝搬モデル生成部12と、モデル評価部13と、再クラスタリング部14と、推定部15とを備える。
【0012】
電波伝搬推定装置10の各機能は、電波伝搬推定装置10がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、電波伝搬推定装置10として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、電波伝搬推定装置10は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、電波伝搬推定装置10の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、電波伝搬推定装置10は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は電波伝搬推定装置10の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0013】
クラスタリング部11は、複数の区域の地理データに基づいて、当該複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成する。ある区域の地理データは、当該区域の地勢および都市構造を示すデータである。地勢は、地形の高低や傾斜、谷、川、湖等の配置などの土地のありさまである。都市構造は、建物の高さや広さ等の建物に関するものや、道路の幅や交通量等の道路に関するものである。地理データとして、例えば標高データや建物データや衛星画像などが利用可能である。クラスタリングアルゴリズムとして、例えばk-means法やWard法やDBSCAN法などが利用可能である。
【0014】
電波伝搬モデル生成部12は、複数の区域のクラスタリングにより構成されたクラスタ毎に、推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定するための電波伝搬モデルを生成する。電波の伝搬特性(電波伝搬特性)は、例えば受信電力や伝搬損失(パスロス)等である。
【0015】
モデル評価部13は、各クラスタの電波伝搬モデルを評価する。再クラスタリング部14は、各クラスタの電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する。電波伝搬モデル生成部12は、複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に電波伝搬モデルを再生成する。
【0016】
推定部15は、推定対象区域が属するクラスタの電波伝搬モデルを使用して、当該推定対象区域の地理データから当該推定対象区域の電波の伝搬特性を推定する。
【0017】
図2は、本実施形態に係る電波伝搬モデル生成方法の概略説明図である。図3は、本実施形態に係る電波伝搬モデル生成方法の詳細説明図である。
【0018】
図2を参照して本実施形態に係る電波伝搬モデル生成方法の概略を説明する。
(ステップS1)電波伝搬推定装置10は、複数の区域の地理データに基づいて、当該複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成する。図2の例では、各区域が各区域の地理データの特徴量に基づいて特徴空間にマッピングされて、4個のクラスタ#1-#4が構成される。
【0019】
(ステップS2)電波伝搬推定装置10は、クラスタ毎に電波伝搬モデルを生成する。図2の例では、各クラスタ#1-#4の電波伝搬モデル#1-#4が生成される。
【0020】
(ステップS3)電波伝搬推定装置10は、各区域の実測データを使用して、各クラスタの電波伝搬モデルを評価する。図2の例では、各電波伝搬モデル#1-#4の誤差指標が算出される。
【0021】
(ステップS4)電波伝搬推定装置10は、各クラスタの電波伝搬モデルの評価結果に基づいて、複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する。図2の例では、各クラスタ#1-#4の電波伝搬モデル#1-#4の誤差指標に基づいて、4個のクラスタ#1’-#4’が再構成される。
【0022】
(ステップS5)電波伝搬推定装置10は、複数の区域の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に電波伝搬モデルを再生成する。図2の例では、再構成された各クラスタ#1’-#4’の電波伝搬モデル#1’-#4’が再生成される。
【0023】
電波伝搬推定装置10は、上記したステップS4-S5について、所定のモデル生成終了条件を満たすまで、クラスタの再構成と電波伝搬モデルの再生成とを繰り返す。モデル生成終了条件は、例えば、誤差指標が所定の誤差基準を満たすことである。また、モデル生成終了条件は、クラスタの再構成と電波伝搬モデルの再生成との繰り返し回数の上限値であってもよい。
【0024】
図3を参照して本実施形態に係る電波伝搬モデル生成方法の詳細を説明する。
【0025】
(ステップS1)クラスタリング部11は、地理クラスタデータベース101からクラスタリング対象の複数の区域の地理データを取得する。次いでクラスタリング部11は、当該複数の区域の地理データに基づいて、当該複数の区域をクラスタリングしてクラスタを構成する。次いでクラスタリング部11は、各クラスタに属する区域の地理データに対して該当クラスタの識別子(クラスタID)を関連付けて地理クラスタデータベース101に登録する。図2の例では、クラスタ#1に属する区域の地理データに対してクラスタ#1のクラスタIDが関連付けられて、またクラスタ#2に属する区域の地理データに対してクラスタ#2のクラスタIDが関連付けられて、クラスタ#3に属する区域の地理データに対してクラスタ#3のクラスタIDが関連付けられて、クラスタ#4に属する区域の地理データに対してクラスタ#4のクラスタIDが関連付けられて、地理クラスタデータベース101に登録される。
【0026】
(ステップS2)電波伝搬モデル生成部12は、クラスタ毎に電波伝搬モデルを生成する。図2の一例(クラスタ#1)を挙げて具体的に説明する。電波伝搬モデル生成部12は、地理クラスタデータベース101からクラスタ#1に属する区域の地理データを取得する。また電波伝搬モデル生成部12は、送信諸元データベース103からクラスタ#1に属する区域の送信諸元を取得する。送信諸元は、送信局の情報であって、無線周波数や送信電力やアンテナ高などの情報である。クラスタ#1に属する区域の地理データ及び送信諸元は、クラスタ#1に属する区域の特徴量を含む情報である。また電波伝搬モデル生成部12は、測定データベース102からクラスタ#1に属する区域の受信電力等の電波伝搬特性の実測データを取得する。クラスタ#1に属する区域の実測データは、クラスタ#1に属する区域の教師データである。
【0027】
電波伝搬モデル生成部12は、クラスタ#1について、地理データ及び送信諸元を学習データに使用して、また電波伝搬特性の実測データを教師データに使用して、機械学習を行い、機械学習の結果として電波伝搬モデル#1を得る。機械学習アルゴリズムとして、例えばRandomForest法や勾配ブースティング法やDeepLearning法などが利用可能である。
【0028】
電波伝搬モデル生成部12は、各クラスタの電波伝搬モデルを電波伝搬モデルデータベース110に格納する。図2の例では、各クラスタ#1-#4の電波伝搬モデル#1-#4が電波伝搬モデルデータベース110に格納される。
【0029】
(ステップS3)モデル評価部13は、各区域の実測データを使用して、各クラスタの電波伝搬モデルを評価する。電波伝搬モデルの評価において、モデル評価部13は、一の区域の地理データ及び電波伝搬特性の実測データを使用して全てのクラスタの電波伝搬モデルを評価する。図2の例では、クラスタリング対象の複数の区域(ここでは、説明の便宜上、5つの区域A,B,C,D,Eとする)及び4個のクラスタ#1-#4の電波伝搬モデル#1-#4について、区域Aの地理データ及び電波伝搬特性の実測データを使用して各電波伝搬モデル#1-#4を評価し、また区域Bの地理データ及び電波伝搬特性の実測データを使用して各電波伝搬モデル#1-#4を評価し、また区域Cの地理データ及び電波伝搬特性の実測データを使用して各電波伝搬モデル#1-#4を評価し、また区域Dの地理データ及び電波伝搬特性の実測データを使用して各電波伝搬モデル#1-#4を評価し、また区域Eの地理データ及び電波伝搬特性の実測データを使用して各電波伝搬モデル#1-#4を評価する。
【0030】
図2の一例(区域A,B,C,D,E、クラスタ#1の電波伝搬モデル#1)を挙げて電波伝搬モデル評価方法を具体的に説明する。モデル評価部13は、区域Aの地理データ及び送信諸元を電波伝搬モデル#1に入力して、電波伝搬モデル#1から電波伝搬特性の推定値を得る。次いで、モデル評価部13は、電波伝搬モデル#1について、区域Aの電波伝搬特性の推定値と区域Aの電波伝搬特性の実測データとの間の誤差を示す誤差指標#1_Aを算出する(誤差評価)。同様にして、モデル評価部13は、区域Bの地理データ、送信諸元及び電波伝搬特性の実測データを使用して、電波伝搬モデル#1の誤差指標#1_Bを算出する。またモデル評価部13は、区域Cの地理データ、送信諸元及び電波伝搬特性の実測データを使用して、電波伝搬モデル#1の誤差指標#1_Cを算出する。またモデル評価部13は、区域Dの地理データ、送信諸元及び電波伝搬特性の実測データを使用して、電波伝搬モデル#1の誤差指標#1_Dを算出する。またモデル評価部13は、区域Eの地理データ、送信諸元及び電波伝搬特性の実測データを使用して、電波伝搬モデル#1の誤差指標#1_Eを算出する。このようにして図2の例(区域A,B,C,D,E、クラスタ#1-#4の電波伝搬モデル#1-#4)では、クラスタ#1の電波伝搬モデル#1の誤差指標#1_A,#1_B,#1_C,#1_D,#1_Eと、クラスタ#2の電波伝搬モデル#2の誤差指標#2_A,#2_B,#2_C,#1_D,#1_Eと、クラスタ#3の電波伝搬モデル#3の誤差指標#3_A,#3_B,#3_C,#1_D,#1_Eと、クラスタ#4の電波伝搬モデル#4の誤差指標#4_A,#4_B,#4_C,#1_D,#1_Eとが算出される。これらの算出された誤差指標は、次のステップS4(再クラスタリング)で使用される。
【0031】
(ステップS4)再クラスタリング部14は、各クラスタの電波伝搬モデルの評価結果(誤差指標)に基づいて、複数の区域を再クラスタリングしてクラスタを再構成する。図2の例(区域A,B,C,D,E、クラスタ#1-#4)を挙げて再クラスタリング方法を具体的に説明する。再クラスタリング部14は、区域A,B,C,D,E毎に、誤差指標に基づいた再クラスタリング用特徴量を生成する。例えば区域Aについて、再クラスタリング部14は、区域Aの誤差指標#1_A,#2_A,#3_A,#4_Aに基づいた再クラスタリング用特徴量Aを生成する。同様にして区域B,C,D,Eの再クラスタリング用特徴量B,C,D,Eが生成される。なお、再クラスタリング部14は、ある区域の再クラスタリング用特徴量の生成において、当該区域の誤差指標及び地理データに基づいた再クラスタリング用特徴量を生成してもよい。
【0032】
次いで再クラスタリング部14は、各区域A,B,C,D,Eの再クラスタリング用特徴量A,B,C,D,Eに基づいて、当該区域A,B,C,D,Eをクラスタリングしてクラスタを再構成する。次いでクラスタリング部11は、各クラスタに属する区域の地理データに対して該当クラスタの識別子(クラスタID)を関連付けて地理クラスタデータベース101に登録する。図2の例では、各クラスタ#1-#4の電波伝搬モデル#1-#4の誤差指標に基づいて、4個のクラスタ#1’-#4’が再構成される。クラスタ#1’に属する区域の地理データに対してクラスタ#1’のクラスタIDが関連付けられて、またクラスタ#2’に属する区域の地理データに対してクラスタ#2’のクラスタIDが関連付けられて、クラスタ#3’に属する区域の地理データに対してクラスタ#3’のクラスタIDが関連付けられて、クラスタ#4’に属する区域の地理データに対してクラスタ#4’のクラスタIDが関連付けられて、地理クラスタデータベース101に登録される。
【0033】
(ステップS5)電波伝搬モデル生成部12、ステップS4の再クラスタリングにより再構成されたクラスタ毎に、ステップS2と同様にして電波伝搬モデルを再生成する。電波伝搬モデル生成部12は、各クラスタの電波伝搬モデルを電波伝搬モデルデータベース110に格納する。図2の例では、再構成された各クラスタ#1’-#4’の電波伝搬モデル#1’-#4’が電波伝搬モデルデータベース110に格納される。
【0034】
上記したステップS4-S5については、所定のモデル生成終了条件を満たすまで、クラスタの再構成と電波伝搬モデルの再生成とが繰り返される。
【0035】
次に図4を参照して本実施形態に係る電波伝搬特性推定方法を説明する。図4は、本実施形態に係る電波伝搬特性推定方法の説明図である。
【0036】
(ステップS11)地理クラスタデータベース101には、クラスタリング結果として、各区域の地理データに対してクラスタIDが関連付けて登録されている。推定部15は、地理クラスタデータベース101内のクラスタリング結果に基づいて、推定対象区域の地理データがどのクラスタに該当するか分類(クラス分類)する。推定部15は、当該分類の結果のクラスタのクラスタIDを推定対象区域の地理データに付加する。クラス分類アルゴリズムとして、例えばk-nearest neighbors法やSupportVectorMachine法やRandomForest法や勾配ブースティング法などが利用可能である。
【0037】
(ステップS12)電波伝搬モデルデータベース110には、各クラスタの電波伝搬モデルがクラスタIDに関連付けて格納されている。推定部15は、推定対象区域の地理データに付加されたクラスタIDに関連付けられた電波伝搬モデル(推定対象区域電波伝搬モデル)を電波伝搬モデルデータベース110から取得する。
【0038】
(ステップS13)推定対象区域の地理データ及び送信諸元は、推定対象区域の特徴量を含む情報である。推定部15は、推定対象区域の地理データ及び送信諸元を推定対象区域電波伝搬モデルに入力して、推定対象区域電波伝搬モデルから電波伝搬特性の推定値を得る。図4の例では、電波伝搬特性の推定値として受信電力推定値が得られる。
【0039】
[クラスタリング方法]
本実施形態に係るクラスタリング方法について説明する。図5図6は、本実施形態に係るクラスタリング方法の説明図である。
【0040】
(クラスタリング方法の例1)
図5は、本実施形態に係るクラスタリング方法の例1の説明図である。図5において、クラスタリング対象の区域の地理データは、区域内が一定の範囲(グリッド)に区切られたグリッドデータである。グリッドデータは、2次元配列のデータ構造である。クラスタリング部11は、クラスタリング対象の区域毎に、地理データ(グリッドデータ)を、2次元配列から1次元配列の地理特徴ベクトル(d次元ベクトル)へ変換(フラット化)する(ステップS21)。次いでクラスタリング部11は、当該地理特徴ベクトルを使用してクラスタリングを行う(ステップS22)。
【0041】
(クラスタリング方法の例2)
図6は、本実施形態に係るクラスタリング方法の例2の説明図である。図5において、クラスタリング対象の区域の地理データは、区域内が一定の範囲(グリッド)に区切られたグリッドデータである。グリッドデータは、2次元配列のデータ構造である。クラスタリング部11は、クラスタリング対象の区域毎に、地理データ(グリッドデータ)を、2次元配列から1次元配列(d次元ベクトル)へ変換(フラット化)する(ステップS31)。次いでクラスタリング部11は、当該1次元配列(d次元ベクトル)に対して次元削減を行う(ステップS32)。次元削減アルゴリズムとして、例えば主成分分析(PCA)が利用可能である。次いでクラスタリング部11は、当該次元削減によりd次元よりも少ない次元数である地理特徴ベクトルを使用してクラスタリングを行う(ステップS33)。
【0042】
[再クラスタリング方法]
本実施形態に係る再クラスタリング方法について説明する。図7図8は、本実施形態に係る再クラスタリング方法の説明図である。
【0043】
(再クラスタリング方法の例1)
図7は、本実施形態に係る再クラスタリング方法の例1の説明図である。図7において、区域Aの地理データは、上記した図5と同様に、区域内が一定の範囲(グリッド)に区切られたグリッドデータ(2次元配列)であり、2次元配列から1次元配列の地理特徴ベクトル(d次元ベクトル)へ変換される。次いで、区域Aの地理特徴ベクトル(d次元ベクトル)を使用して、各クラスタ(k個)の電波伝搬モデル#1-#kにより電波伝搬特性の各推定値A1-Akが得られる。次いで、区域Aの実測データと各推定値A1-Akとの間の誤差を示す誤差指標A1-Ak(k次元)が算出される(誤差評価)。次いで再クラスタリング部14は、区域Aの地理特徴ベクトル(d次元)と誤差指標A1-Ak(k次元)とをマージして、区域Aの再クラスタリング用特徴量A((d+k)次元)を生成する。再クラスタリング部14は、区域Aの再クラスタリング用特徴量A((d+k)次元)を区域Aのクラスタリング入力データとして再クラスタリングに使用する。なお、再クラスタリング部14は、再クラスタリングの前処理として、再クラスタリング用特徴量((d+k)次元)の次元削減を行って、再クラスタリング用特徴量の次元数を削減してもよい。
【0044】
(再クラスタリング方法の例2)
図8は、本実施形態に係る再クラスタリング方法の例2の説明図である。図8において、区域Aの地理データは、上記した図5と同様に、区域内が一定の範囲(グリッド)に区切られたグリッドデータ(2次元配列)であり、2次元配列から1次元配列の地理特徴ベクトル(d次元ベクトル)へ変換される。次いで、区域Aの地理特徴ベクトル(d次元ベクトル)を使用して、各クラスタ(k個)の電波伝搬モデル#1-#kにより電波伝搬特性の各推定値A1-Akが得られる。次いで、区域Aの実測データと各推定値A1-Akとの間の誤差を示す誤差指標A1-Ak(k次元)が算出される(誤差評価)。次いで再クラスタリング部14は、誤差指標A1-Ak(k次元)をマージして、区域Aの再クラスタリング用特徴量A(k次元)を生成する。再クラスタリング部14は、区域Aの再クラスタリング用特徴量A(k次元)を区域Aのクラスタリング入力データとして再クラスタリングに使用する。なお、再クラスタリング部14は、再クラスタリングの前処理として、再クラスタリング用特徴量(k次元)の次元削減を行って、再クラスタリング用特徴量の次元数を削減してもよい。
【0045】
[誤差評価方法]
本実施形態に係る誤差評価方法について説明する。モデル評価部13は、所定の誤差指標算出式を使用して誤差指標を算出する。誤差指標算出式の3つの例として、次の(1)式、(2)式及び(3)式が挙げられる。
【0046】
【数1】
【0047】
【数2】
【0048】
【数3】
【0049】
【数4】
【0050】
(4)式は、(1)式、(2)式及び(3)式の各変数を示す。(1)式で算出される誤差指標RMSEは、「Root Mean Squared Error」である。(2)式で算出される誤差指標MAEは、「Mean Absolute Error」である。誤差指標RMSE及び誤差指標MAEは、値が0に近いほど精度が高い指標である。(3)式で算出される誤差指標Rは、「決定係数」である。誤差指標Rは、値が1に近いほど精度が高い指標である。
【0051】
モデル評価部13は、(1)式、(2)式及び(3)式のうちのいずれかの誤差指標算出式を使用して誤差指標を算出する。
【0052】
本実施形態によれば、各区域の地理データが分類されたクラスタ毎に電波伝搬モデルが生成されるので、各区域の地理データに応じた電波伝搬モデルによって電波伝搬特性を推定することができる。これにより、電波伝搬モデルの学習時間の短縮や電波伝搬特性の推定精度の改善を図る効果が得られる。
【0053】
また本実施形態によれば、実測データによる電波伝搬モデルの誤差評価に基づいた再クラスタリングにより、地理データのみでなく、実際の電波伝搬特性の情報も加味した電波伝搬モデルの最適化を自動的に行うことができる。
【0054】
なお、これにより、例えば無線ネットワークにおける総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0056】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0057】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…電波伝搬推定装置、11…クラスタリング部、12…電波伝搬モデル生成部、13…モデル評価部、14…再クラスタリング部、15…推定部、101…地理クラスタデータベース、102…測定データベース、103…送信諸元データベース、110…電波伝搬モデルデータベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8