(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109714
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/20 20060101AFI20220721BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20220721BHJP
A61J 15/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61M39/20
A61M39/02
A61J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005178
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047NN16
4C066AA01
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF01
4C066JJ03
4C066JJ05
4C066NN01
(57)【要約】
【課題】コネクタの衛生状態を良好に保つことが可能なキャップを提供する。
【解決手段】キャップ1は、オスコネクタ200の接続部201が内部に挿入されて接続される筒状のメスコネクタ110の開口を塞ぐキャップにおいて、メスコネクタ110の内部に挿入されてメスコネクタ110の内周面111と嵌合する嵌合部11を備え、嵌合部11は、メスコネクタ110の内周面111と嵌合した状態における挿入量D1が、メスコネクタ110と接続した状態のオスコネクタ200における接続部201の挿入量D2以上となるように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オスコネクタの接続部が内部に挿入されて接続される筒状のメスコネクタの開口を塞ぐキャップにおいて、
前記メスコネクタの内部に挿入されて前記メスコネクタの内周面と嵌合する嵌合部を備え、
前記嵌合部は、前記メスコネクタの内周面と嵌合した状態における挿入量が、前記メスコネクタと接続した状態の前記オスコネクタにおける前記接続部の挿入量以上となるように構成されることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記嵌合部が突設される底部と、
前記嵌合部の外周を囲むように前記底部に突設される筒状の外筒部と、を備え、
前記嵌合部は、前記底部からの突出量が前記外筒部の前記底部からの突出量以上となるように構成されることを特徴とするキャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のキャップにおいて、
前記嵌合部は、前記メスコネクタの内周面と密着する密着部と、前記密着部よりも先端側に設けられる先端部と、を有し、
前記密着部は、全体が前記外筒部の内側に位置し、
前記先端部は、少なくとも一部が前記外筒部の外側に位置することを特徴とするキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のメスコネクタの開口を閉塞するキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食事を口から摂取することが困難になった患者に対して栄養補給を行う方法として、患者の消化管内に挿入したカテーテルを通じて栄養剤等の液状物を消化管内に直接投入する経腸栄養法(経管栄養法)が用いられている。このようなカテーテルは、ISO80369-3に準拠したコネクタを介して経腸栄養ラインのシリンジやチューブ等と接続される。
【0003】
経腸栄養ラインでは、内周面にメスルアーテーパ部を有する筒状のメスコネクタが上流側のシリンジ等に設けられている。そして、外周面にオスルアーテーパ部を有する筒状の接続部を備え、この接続部がメスコネクタ内に挿入されて嵌合するオスコネクタが下流側のカテーテル等に設けられている。そして、このようなコネクタは、内部の衛生状態を保つために、非接続時においてはキャップが取り付けられ、開口が閉塞されるようになっている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-158656号公報
【特許文献2】特開2015-54137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のキャップは、メスコネクタ内における液状物の貯留について考慮されていないという問題があった。特に経腸栄養ラインにおいては、予め栄養剤等の液状物が充填される上流側のシリンジ等にメスコネクタが設けられることから、キャップを取り付けた状態のメスコネクタ内の残存空間に液状物が入り込みやすくなっている。このため、キャップを取り外してメスコネクタ内にオスコネクタを挿入する際に、メスコネクタ内に貯留していた液状物が漏出し、オスコネクタに付着する場合があった。
【0006】
一般にISO80369-3に準拠したオスコネクタは、内周面に雌ネジを有する筒状のロック部が接続部の外周を囲んでいるため、このロック部と接続部の間に液状物が付着した場合、除去が難しいだけでなく、付着の有無も確認することが難しい。従って、特に患者に留置されるカテーテル等のオスコネクタでは、付着した液状物が留置期間中そのまま放置され、細菌が繁殖する等して不衛生な状態となる可能性があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑み、コネクタの衛生状態を良好に保つことが可能なキャップを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るキャップは、オスコネクタの接続部が内部に挿入されて接続される筒状のメスコネクタの開口を塞ぐキャップにおいて、前記メスコネクタの内部に挿入されて前記メスコネクタの内周面と嵌合する嵌合部を備え、前記嵌合部は、前記メスコネクタの内周面と嵌合した状態における挿入量が、前記メスコネクタと接続した状態の前記オスコネクタにおける前記接続部の挿入量以上となるように構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、オスコネクタの接続時にメスコネクタ内に貯留した液状物が外部に漏出する可能性を低減することができる。
【0010】
具体的には、オスコネクタを接続した状態でのメスコネクタ内の残存空間(オスコネクタ内の流路を除く空間)の容積を、キャップを取り付けた状態(嵌合部を嵌合させた状態)でのメスコネクタ内の残存空間の容積以上とすることが可能となる。すなわち、キャップを取り付けた状態で残存空間内に液状物が充満していた場合にも、この液状物がオスコネクタの接続時に挿入される接続部によって押し出されないようにすることが可能となるため、オスコネクタの接続時にメスコネクタ内の液状物が外部に漏出する可能性を低減することができる。
【0011】
また、嵌合部の先端部がメスコネクタ内に貯留した液状物と接触しやすいようにすることができるため、嵌合部に液状物を付着させた状態でキャップを取り外すことにより、メスコネクタ内に貯留した液状物の一部をメスコネクタ内から取り除くことが可能となる。すなわち、オスコネクタを接続するためにキャップを取り外す際に、メスコネクタ内の液状物の量を減少させることが可能となるため、オスコネクタの接続時にメスコネクタ内の液状物が外部に漏出する可能性を低減することができる。
【0012】
オスコネクタの接続時にメスコネクタ内の液状物が外部に漏出する可能性を低減することで、オスコネクタまたはメスコネクタの思わぬ場所に液状物が付着する可能性を低減することができる。これにより、オスコネクタまたはメスコネクタにおける細菌の繁殖を抑制し、オスコネクタおよびメスコネクタの衛生状態を良好に保つことができる。
【0013】
また、本発明のキャップにおいて、前記嵌合部が突設される底部と、前記嵌合部の外周を囲むように前記底部に突設される筒状の外筒部と、を備え、前記嵌合部は、前記底部からの突出量が前記外筒部の前記底部からの突出量以上となるように構成されることが好ましい。
【0014】
これによれば、嵌合部の先端部に付着した液状物の確認および拭き取りを容易化することが可能となる。また、嵌合部の存在を目立たせ、キャップについても清掃が必要なことを使用者に認識させることが可能となる。従って、キャップに付着した液状物に起因して、オスコネクタまたはメスコネクタの衛生状態が損なわれるのを防止することができる。
【0015】
また、本発明のキャップにおいて、前記嵌合部は、前記メスコネクタの内周面と密着する密着部と、前記密着部よりも先端側に設けられる先端部と、を有し、前記密着部は、全体が前記外筒部の内側に位置し、前記先端部は、少なくとも一部が前記外筒部の外側に位置することが好ましい。
【0016】
これによれば、先端部に付着した液状物の確認および拭き取りをより容易化すると共に、嵌合部の存在をより目立たせながらも、密着部を外筒部によって保護し、密着部に傷等が生じるのを防止することが可能となる。従って、密着部の傷等に起因する嵌合不良の発生、およびこれに伴う液状物のメスコネクタ内からの漏出を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るキャップによれば、コネクタの衛生状態を良好に保つことが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】Aは本発明の第1の実施形態に係るキャップの正面図である。Bは
図1AのI-I線断面図である。
【
図2】Aは第1の実施形態に係るキャップの平面図である。Bは第1の実施形態に係るキャップの底面図である。
【
図3】Aは第1の実施形態に係るキャップの取付状態の一例を示した断面図である。Bはメスコネクタにオスコネクタを接続した状態の一例を示した断面図である。
【
図4】Aは本発明の第2の実施形態に係るキャップの断面図である。Bは第2の実施形態に係るキャップの底面図である。
【
図5】Aは本発明の第3の実施形態に係るキャップの断面図である。Bは第3の実施形態に係るキャップの底面図である。
【
図6】Aは第2の実施形態に係るキャップの取付状態の一例を示した断面図である。Bは第3の実施形態に係るキャップの取付状態の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の各図における寸法は、必ずしも正確なものではない。
【0020】
図1Aは本発明の第1の実施形態に係るキャップ1の正面図であり、
図1Bは
図1AのI-I線断面図である。また、
図2Aはキャップ1の平面図であり、
図2Bはキャップ1の底面図である。
【0021】
本実施形態のキャップ1は、経腸栄養法用のコネクタの規格であるISO80369-3に準拠したメスコネクタに取り付けて(接続して)使用されるものである。具体的にキャップ1は、メスコネクタの開口を閉塞することで内部の液状物(栄養剤等)の漏出を防止すると共に、内部を外気から隔絶して衛生状態を保つためのものである。キャップ1はまた、メスコネクタを適宜に覆うことで保護する機能も有している。キャップ1は、例えばポリプロピレンやポリエチレン等の適宜の樹脂から構成され、嵌合部11と、底部12と、外筒部13と、から構成されている。
【0022】
嵌合部11は、メスコネクタの内部に挿入され、メスコネクタの内周面と嵌合することで、メスコネクタの開口を密閉する部分である。嵌合部11は、底部12の中心部において軸方向(
図1AおよびBにおける上下方向)に突設されている。本実施形態では、底部12の中心部を部分的に突出させることで、嵌合部12を先端側が閉塞された有底円筒状に構成している。
【0023】
嵌合部11の外周面11aの基端側(
図1AおよびBにおける上側)には、先端側(
図1AおよびBにおける下側)に向けて外径が漸次縮径する第1テーパ部11a1(本発明の密着部)が設けられている。また、嵌合部11の外周面の11a先端側、すなわち第1テーパ部11a1と先端面11bの間には、第1テーパ部11a1よりも大きい縮径率で先端側に向けて外径が漸次縮径する第2テーパ部11a2が設けられている。
【0024】
第1テーパ部11a1は、メスコネクタの内周面に設けられたメスルアーテーパ部と嵌合して密着する部分である。従って、本実施形態では、第1テーパ部11a1をISO80369-3に規定されるオスコネクタのオスルアーテーパ部と同様の構成としている。第2テーパ部11a2は、嵌合部11のメスコネクタ内への挿入を容易にするための部分である。
【0025】
嵌合部11は、上述のように有底円筒状に構成されており、全域に亘って肉厚がほぼ一定の中空構造となっている。嵌合部11をこのように構成することで、樹脂成形におけるヒケやボイド等の成形不良を防止し、メスコネクタとの嵌合時の密閉性を高めることが可能となる。
【0026】
底部12は、メスコネクタの先端側を覆って保護する部分であり、円盤状に構成されている。底部12の中心部には、嵌合部11の内周面11cと連続する円形状の孔部12aが設けられている。また、底部12の肉厚は、嵌合部11の肉厚と同等となっており、成形性が高められている。
【0027】
外筒部13は、メスコネクタの外周側を覆って保護する部分であり、円筒状に構成されている。また、外筒部13の内周面13aには、メスコネクタの雄ネジと螺合する雌ネジ部13bが設けられている。この雌ネジ部13bは、ISO80369-3に規定されるオスコネクタのロック用の雌ネジ部と同様の構成となっている。従って、外筒部13は、キャップ1のメスコネクタへの取り付け(接続)をロックするロック部としても機能している。
【0028】
外筒部13の開口側には、底部13側の部分よりも肉厚および外径を拡大した厚肉部13cが設けられている。また、外筒部13の外周面13dには、この厚肉部13cから底部12側に向けて軸方向に延出する複数(本実施形態では、8つ)のリブ13eが設けられている。この厚肉部13cおよびリブ13eは、キャップ1の成形性を高めるべく、外筒部13の肉厚を増大させずに補強するものである。また、リブ13eは、雌ネジ部13bをメスコネクタの雄ネジと螺合させる際の滑り止めとしても機能している。
【0029】
外筒部13の開口側端面13fには、底面視で円弧状の形状を有する複数(本実施形態では、6つ)の回り止め凹部13gが設けられている。この回り止め凹部13gは、樹脂成形の離型において、雌ネジ部13bを形成するコアピンを回転させながら離脱させる際にキャップ1が共回りしないように、金型と係合する部分である。
【0030】
本実施形態では、嵌合部11の底部12からの突出量P1を外筒部13の底部12からの突出量P2よりも大きくしている。従って、嵌合部11の先端部、具体的には第2テーパ部11a2および先端面11bは、外筒部13の開口側端面13fよりも軸方向に突出した状態となっている。
【0031】
本実施形態ではさらに、第1テーパ部11a1の先端の軸方向における位置が、外筒部13の開口側端面13fと略同一となるようにし、第2テーパ部11a2および先端面11bのみを外筒部13から突出させるようにしている。すなわち、本実施形態では、メスコネクタと嵌合する第1テーパ部11a1の全体を外筒部13内に収容して保護し、第1テーパ部11a1に生じた傷等に起因する嵌合不良の発生、およびこれに伴う液状物のメスコネクタ内からの漏出を防止している。嵌合部11の先端部を外筒部13から突出させることによる効果については、後述する。
【0032】
図3Aは、キャップ1の取付状態の一例を示した断面図である。この例では、キャップ1をシリンジ100の先端側に設けられたメスコネクタ110に取り付けた場合を示している。
【0033】
メスコネクタ110は、ISO80369-3に準拠したものであり、円筒状に構成されている。メスコネクタ110の内周面111の先端側(
図3Aにおける上側)には、基端側(
図3Aにおける下側)に向けて内径が漸次縮径するメスルアーテーパ部111aが設けられている。また、メスコネクタ110の内周面111の基端側には、メスルアーテーパ部111aよりも大きい縮径率で基端側に向けて内径が漸次縮径する基端側テーパ部111bと、基端側テーパ部111bから略一定の内径を維持してシリンジ100の内部に繋がる等径部111cと、が設けられている。
【0034】
メスコネクタ110の外周面112は、外径が略一定に構成されている。また、メスコネクタ110の外周面112の先端側には、2つの羅状突起113が互いに相反する位置に設けられている。この羅状突起113は、螺旋状のネジ山を部分的に設けたものであり、雄ネジとして機能するものである。螺状突起113よりも先端側の外周面112には、先端側に向けて外径が漸次縮径する先端側テーパ部112aが設けられている。
【0035】
キャップ1のメスコネクタ110への取り付けは、嵌合部11の先端部をメスコネクタ110内に挿入した後にキャップ1(または、シリンジ100およびメスコネクタ110)を軸心周りに回転させ、雌ネジ部13bを螺状突起113と螺合させることで行われる。雌ネジ部13bと螺状突起113の螺合の進行に伴って、嵌合部11のメスコネクタ110内への挿入量は徐々に増大することなる。
【0036】
そして、嵌合部11の挿入量が所定の挿入量D1となった場合に、嵌合部11の第1テーパ部11a1がメスルアーテーパ部111aと適切に密着して嵌合する。ここで、挿入量D1とは、
図3Aに示されるように、メスコネクタ110の先端面114から嵌合部11の先端面11bまでの軸方向の距離である。
【0037】
第1テーパ部11a1とメスルアーテーパ部111aが適切に密着して嵌合することで、メスコネクタ110の開口が閉塞され、メスコネクタ110およびシリンジ100の内部が外気から隔絶されることとなる。これにより、メスコネクタ110およびシリンジ100の内部の衛生状態が良好に維持される。また、底部12および外筒部13がメスコネクタ110を覆うことで、メスコネクタ110に何かが衝突する等した場合にも、メスコネクタ110に傷や変形等が生じるのを防止することができる。
【0038】
なお、第1テーパ部11a1がメスルアーテーパ部111aに嵌合した状態では、第2テーパ部11a2および先端面11bは、メスコネクタ110の内周面と接触しないようになっている。
【0039】
メスコネクタ110からキャップ1を取り外す場合は、まずキャップ1(または、シリンジ100およびメスコネクタ110)を取り付け時とは反対方向に回転させて雌ネジ13bと螺状突起113の螺合を解除する。これにより、嵌合部11がメスコネクタ110から離隔するように軸方向に移動し、第1テーパ部11a1とメスルアーテーパ部111aの嵌合が解除される。そして、螺状突起113が雌ネジ13bから外れたならば、キャップ1をメスコネクタ110から分離させることが可能となる。
【0040】
図3Bは、メスコネクタ110にオスコネクタ200を接続した状態の一例を示した断面図である。この例のオスコネクタ200は、ISO80369-3に準拠したものであり、カテーテル等の上流側端部に設けられるものである。
【0041】
オスコネクタ200は、メスコネクタ110の内部に挿入される円筒状の接続部201を備えている。接続部201の外周面201aの基端側(
図3Bにおける上側)には、先端側(
図3Bにおける下側)に向けて外径が漸次縮径するオスルアーテーパ部201a1が設けられている。また、接続部201の外周面201aの先端側には、オスルアーテーパ部201a1よりも大きい縮径率で先端側に向けて外径が漸次縮径する先端側テーパ部201a2が設けられている。
【0042】
また、接続部201には、軸方向に貫通する接続流路202が設けられている。この接続流路202は、オスコネクタ200の基端側に接続されたカテーテル等(図示省略)に連通すると共に、接続時にメスコネクタ110の内部と連通するように設けられている。シリンジ100内の液状物は、シリンジ100内からメスコネクタ110内に流入し、メスコネクタ110内からこの接続流路202内を通過してカテーテル内に流入することとなる。
【0043】
オスコネクタ200はまた、接続部201の外周を囲むように設けられた円筒状のロック部203を備えている。ロック部203の内周面203aには、メスコネクタ110の螺状突起113と螺合する雌ネジ部204が設けられている。すなわち、オスコネクタ200は、ネジ締結によってメスコネクタ110への接続強度を高めるように構成されている。
【0044】
メスコネクタ110へのオスコネクタ200の接続は、接続部201の先端部をメスコネクタ110内に挿入し、オスコネクタ200(または、シリンジ100およびメスコネクタ)を軸心周りに回転させて雌ネジ部204を螺状突起113と螺合させることで行われる。雌ネジ部204と螺状突起113の螺合の進行に伴って接続部201のメスコネクタ110内への挿入量は徐々に増大し、接続部201の挿入量が所定の挿入量D2となった場合に、オスルアーテーパ部201a1がメスルアーテーパ部111aと適切に密着して嵌合する。
【0045】
ここで、挿入量D2とは、
図3Bに示されるように、メスコネクタ110の先端面114から接続部201の先端面201bまでの軸方向の距離である。接続部201が挿入量D2だけ挿入されることで、オスコネクタ200がメスコネクタ110に液密に接続されることとなる。すなわち、シリンジ100内の液状物をメスコネクタ110およびオスコネクタ200を介してカテーテル等へ送出可能な状態となる。
【0046】
メスコネクタ110とオスコネクタ200の接続は、キャップ1をメスコネクタ110から取り外した後に行われる。キャップ1を取り付けた状態でメスコネクタ110内に液状物が溜まっていた場合、オスコネクタ200の接続時にこの液状物が接続部201に押し出されてメスコネクタ110の外部に漏出する可能性が考えられる。
【0047】
漏出した液状物が、例えばオスコネクタ200の接続部201とロック部203の間の狭隘部に付着した場合、雌ネジ部204の存在によって付着の有無の確認や清掃が困難であるため、そのまま放置されて細菌が繁殖し、オスコネクタ200の衛生状態が損なわれる可能性がある。そして、オスコネクタ200が患者に留置されたカテーテルの端部に設けられたものである場合、繁殖した細菌により患者に重篤な感染症を引き起こす危険性がある。
【0048】
キャップ1では、嵌合部11の嵌合時の挿入量D1が、オスコネクタ200の接続時の接続部201の挿入量D2以上(D2≦D1)となるように設定することで、オスコネクタ200の接続時にメスコネクタ110内の液状物が外部に漏出する可能性を低減している。
【0049】
具体的には、嵌合部11の挿入量D1を接続部201の挿入量D2以上(D2≦D1)とすることで、キャップ1を取り付けた状態(嵌合部11を嵌合させた状態)でのメスコネクタ110内の残存空間Sの容積V1を、オスコネクタ200を接続した状態でのメスコネクタ110内の残存空間Sの容積V2以下(V1≦V2)とすることが可能となる。
【0050】
すなわち、キャップ1の取り付け時にメスコネクタ110内に貯留され得る量の液状物を収容可能な容積(V1以上の容積)の残存空間Sを、オスコネクタ200の接続時に確保することができる。これにより、キャップ1を取り付けた状態で残存空間S内に液状物が充満していた場合にも、オスコネクタ200を接続する際に液状物が接続部201によって押し出されないようにすることができる。なお、残存空間Sに接続流路202内が含まれないことは言うまでもない。
【0051】
また、嵌合部11の挿入量D1を接続部201の挿入量D2以上とすることで、キャップ1を取り付けた状態において液状物が貯留可能な量を減少させるだけでなく、嵌合部11の先端部(第1テーパ部11a2よりも先端側に設けられ、メスコネクタ110の内周面111と接触しない第2テーパ部11a2および先端面11b)がメスコネクタ110内の液状物と接触しやすいようにすることができる。
【0052】
これにより、メスコネクタ110内の液状物の一部を嵌合部11の先端部に付着させた状態でキャップ1を取り外すことが可能となる。すなわち、嵌合部11に付着した液状物をメスコネクタ110内から取り除くことが可能となるため、オスコネクタ200の接続時にメスコネクタ110内に存在する液状物の量をさらに減少させ、液状物が漏出する可能性を低減することができる。
【0053】
このように、キャップ1は、オスコネクタ200の接続時にメスコネクタ110内の液状物が外部に漏出する可能性を低減しているため、オスコネクタ200における狭隘部や隅部等への液状物の付着を防止し、オスコネクタ200の衛生状態を良好に保つことができる。また、メスコネクタ110の外周面112や螺状突起113等への液状物の付着も防止されるため、メスコネクタ110の衛生状態も良好に保つことができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、嵌合部11の先端部(第2テーパ部11a2および先端面11b)を外筒部13の外側に突出させているため、使用者は、嵌合部11の先端部における液状物の付着を容易に確認することが可能となっている。使用者はまた、嵌合部11の先端部に付着した液状物を容易に拭き取ることができる。
【0055】
また、嵌合部11の先端部を外筒部13の外側に突出させることで、嵌合部11の存在を目立たせ、キャップ1についてもオスコネクタ200等と同様に清掃が必要なことを使用者に認識させることができる。すなわち、キャップ1によれば、キャップ1に付着した液状物に起因してメスコネクタ110またはオスコネクタ200が不衛生な状態となることも防止することが可能となっている。
【0056】
なお、嵌合部11の挿入量D1は、接続部201の挿入量D2よりも大きいことが好ましいが、少なくとも挿入量D2と同一であればよい。また、キャップ1の取付時の残存空間Sの容積V1は、オスコネクタ200の接続時の残存空間Sの容積V2と同一または容積V2よりも小さいことが好ましいが、例えば嵌合部11の先端部への付着による液状物の除去が十分に見込めるような場合には、容積V2よりも大きくてもよい。
【0057】
また、嵌合部11の先端部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば液状物をより積極的に付着させるような形状や、液状物を収容する凹部を有する形状等に嵌合部11の先端部を構成するようにしてもよい。また、嵌合部11は、先端部がメスコネクタ110の等径部111c内やシリンジ100内に進入するように構成されるものであってもよい。
【0058】
また、嵌合部11の先端部は、第1テーパ部11a1とメスルアーテーパ部111aの嵌合を阻害しないように、メスコネクタ110と接触しないものであることが好ましいが、嵌合部11の先端部を部分的にメスコネクタ110と接触させるようにしてもよい。
【0059】
また、嵌合部11は、第1テーパ部11a1の先端側の一部が外筒部13から軸方向に突出するように構成されるものであってもよいし、第2テーパ部11a2の基端側の一部が外筒部13内に収容されるように構成されるものであってもよい。また、嵌合部11の底部12からの突出量P1と外筒部13の底部12からの突出量P2の比率が特に限定されないことは、言うまでもない。
【0060】
図4Aは本発明の第2の実施形態に係るキャップ2の断面図であり、
図4Bはキャップ2の底面図である。また、
図5Aは本発明の第3の実施形態に係るキャップ3の断面図であり、
図5Bはキャップ3の底面図である。なお、
図4Aおよび
図5Bは、
図1AのI-I線断面図に相当する断面図である。
【0061】
キャップ2および3は、ロードーズ(低用量)用のメスコネクタに対応させたものである。キャップ2および3では、嵌合部11の先端側を開口させると共に、底部12から孔部12aを省略している。従って、キャップ2および3では、嵌合部11および底部12によってメスコネクタの開口が閉塞されるようになっている。
【0062】
キャップ2および3では、嵌合部11の内周面11cはオスコネクタ200の接続流路202と略同一の内径に構成されている。また、キャップ3では、嵌合部11の先端部において第2テーパ部11a2を省略すると共に、外周面11aと先端面11bの間に丸み部11a3を設け、内周面11cと先端面11bの間に丸み部11c1を設けている。
【0063】
キャップ3ではまた、外筒部13の底部12からの突出量P2を、嵌合部11の底部12からの突出量P1と略同一に設定している。従って、キャップ3の嵌合部11の先端面11bは、外筒部13の開口側端面13fと略同一平面上に位置している。キャップ2および3におけるその他の構成は、キャップ1と同一であるため、説明を省略する。
【0064】
図6Aはキャップ2の取付状態の一例を示した断面図であり、
図6Bはキャップ3の取付状態の一例を示した断面図である。これらの例では、キャップ2または3をシリンジ100の先端側に設けられたロードーズ用のメスコネクタ120に取り付けた場合を示している。
【0065】
メスコネクタ120は、円筒状の内筒121を内部に備えている。この内筒121は、オスコネクタ200が接続された場合にオスコネクタ200の接続流路202に挿入される部分である。そして、内筒121には、軸方向に貫通して基端側がシリンジ100内と連通する小径流路121aが設けられている。従って、シリンジ100内の栄養剤等の液状物は、この小径流路121a内を通過してオスコネクタ200の接続流路202内に流入する。
【0066】
キャップ2および3のメスコネクタ120への取り付けは、キャップ1と同様の手順で行われる。まず、嵌合部11をメスコネクタ120内に挿入すると共に、内筒121を嵌合部11内に挿入する。そして、雌ネジ部13bと螺状突起113の螺合を進行させて、嵌合部11の挿入量が所定の挿入量D1となった場合に、嵌合部11の第1テーパ部11a1がメスルアーテーパ部111aと適切に密着して嵌合する。
【0067】
このとき、内筒121は、基端側の一部を除いて嵌合部11内に収容された状態となる。本実施形態では、嵌合部11の内周面11cは、内筒121の外周面121bとの間に僅かに隙間が生じるようにしている。すなわち、第1テーパ部11a1とメスルアーテーパ部111aの適切な密着が、嵌合部11の内周面11cと内筒121の外周面121bの接触によって阻害されないようにしている。
【0068】
メスコネクタ120においても、内周面111aと内筒121の外周面121bの間に液状物が貯留した場合、この貯留した液状物がオスコネクタ200の接続時に押し出されて外部に漏出する可能性がある。
【0069】
キャップ2および3においても、嵌合部11の嵌合時の挿入量D1が、オスコネクタ200の接続時の接続部201の挿入量D2以上(D2≦D1)となるように設定することで、オスコネクタ200の接続時にメスコネクタ110内の液状物が外部に漏出する可能性を低減している。
【0070】
なお、キャップ2を取り付けた状態(嵌合部11を嵌合させた状態)でのメスコネクタ120内の残存空間Sの容積V1は、オスコネクタ200を接続した状態でのメスコネクタ120内の残存空間Sの容積V2以下(V1≦V2)となる。また、キャップ3を取り付けた状態(嵌合部11を嵌合させた状態)でのメスコネクタ120内の残存空間Sの容積V1は、先端部の形状により、オスコネクタ200を接続した状態でのメスコネクタ120内の残存空間Sの容積V2よりも小さく(V1<V2)なる。
【0071】
ここで、キャップ2を取り付けた状態での残存空間Sには、小径流路121a内および嵌合部11の内部は含まれない。また、キャップ3を取り付けた状態での残存空間Sには、小径流路121a内および嵌合部11における丸み部11c1内より基端側の内部は含まれない。同様に、オスコネクタ200を接続した状態での残存空間Sには、小径流路121a内および接続流路202内は含まれない。
【0072】
また、キャップ2および3では、嵌合部11の内部空間を小径流路121aから漏出した液状物を保持する保持空間S´として活用している。すなわち、メスコネクタ120にキャップ2または3を取り付けた状態で液状物が内筒121の先端から漏出した場合、この液状物を嵌合部11の内周面11c等に付着させて留めることで、メスコネクタ120の基端側の残存空間S内まで進入させないようにしている。また、嵌合部11の内周面11c等に付着した液状物は、キャップ2または3の取り外しに伴ってメスコネクタ120内から除去されることとなるため、オスコネクタ200の接続時に残存空間S内に存在する液状物の量を減少させることができる。
【0073】
さらに、キャップ2では、キャップ1と同様に、嵌合部11の底部12からの突出量P1を、外筒部13の底部12からの突出量P2より大きく設定しているため、付着した液状物の確認および拭き取りが容易であると共に、嵌合部11の存在が目立つようになっている。一方、キャップ3では、篏合部11の底部12からの突出量P1と外筒部13の底部12からの突出量P2と略同一に設定しているが、この場合にも、付着した液状物の確認および拭き取りを容易にすると共に、嵌合部11の存在を目立たせることが可能である。従って、キャップ2および3においても、自身に付着した液状物に起因してメスコネクタ120またはオスコネクタ200が不衛生な状態となるのを防止することが可能となっている。
【0074】
なお、キャップ2において、嵌合部11の底部12からの突出量P1を、外筒部13の底部12からの突出量P2と略同一に設定するようにしてもよい。また、キャップ3において、嵌合部11の底部12からの突出量P1を、外筒部13の底部12からの突出量P2より大きく設定するようにしてもよい。また、キャップ2および3において、嵌合部11の内部に適宜の凹凸形状を設け、液状物が付着しやすくしたり、液状物の流動を阻害したりするようにしてもよい。また、キャップ1の説明において示した変形例をキャップ2および3にも適用可能であることは言うまでもない。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のキャップは、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、キャップ1~3は、経腸栄養法用のコネクタに取り付けられるものに限定されず、例えば輸液用や麻酔用のコネクタ等、その他のコネクタに取り付けられるものであってもよい。
【0076】
また、キャップ1~3の各部の形状および配置は、上述の実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。また、キャップ1~3は、雌ネジ部13bを備えないものであってもよいし、雌ネジ部13bおよび外筒13を備えないものであってもよいし、雌ネジ部13b、外筒13および底部12を備えないものであってもよい。また、キャップ1~3は、螺状突起113に対して螺合ではなく係合または係止する係合部または係止部を備えるものであってもよい。
【0077】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0078】
1~3 キャップ
11 嵌合部
11a1 第1テーパ部
11a2 第2テーパ部
11b 嵌合部の先端面
12 底部
13 外筒部
110、120 メスコネクタ
111 メスコネクタの内周面
200 オスコネクタ
201 接続部
D1 嵌合部の挿入量
D2 接続部の挿入量
P1 嵌合部の突出量
P2 外筒部の突出量