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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109747
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】排圧配管
(51)【国際特許分類】
   E03F 3/02 20060101AFI20220721BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20220721BHJP
   E03C 1/122 20060101ALI20220721BHJP
   F16L 55/07 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
E03F3/02
E03C1/12 Z
E03C1/122 Z
F16L55/07 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005223
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】庭野 資士
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】岩原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】土屋 竹志
(72)【発明者】
【氏名】根本 隆之
(72)【発明者】
【氏名】矢島 朋幸
【テーマコード(参考)】
2D061
2D063
【Fターム(参考)】
2D061AA05
2D061AB03
2D061AD01
2D063BA15
(57)【要約】
【課題】少数の圧力開放手段によって建物内の封水破壊を効率的に抑制できる排圧配管を提供する。
【解決手段】排水設備から下水道へと至る配管本体部10と、配管本体部10に設けられた複数の立上り管20,20・・と、配管本体部10内の内圧を外部に開放する圧力開放手段30と、を備えている。圧力開放手段30は、複数の立上り管20,20・・のうち、配管本体部10で高まった内圧の逆流に対向する対向端壁部13を備えた圧上昇発生部12に位置する立上り管20に設置されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水設備から下水道へと至る配管本体部と、前記配管本体部に設けられた複数の立上り管と、前記配管本体部内の内圧を外部に開放する圧力開放手段と、を備えており、
前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記配管本体部で高まった内圧の逆流に対向する対向端壁部を備えた圧上昇発生部に位置する前記立上り管に設置されている
ことを特徴とする排圧配管。
【請求項2】
前記圧力開放手段は、
前記複数の立上り管のうち、前記配管本体部の最上流部に位置する前記立上り管に設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の排圧配管。
【請求項3】
前記配管本体部は、下流管と、前記下流管から互いに異なる方向に分岐する分岐管とを備えており、
前記分岐管は、前記下流管と沿った方向に分岐する第一分岐管と、前記下流管と交差する方向に分岐する第二分岐管とを備え、
前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記第一分岐管の最上流部に位置する前記立上り管に設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の排圧配管。
【請求項4】
前記配管本体部は、下流管と、前記下流管から互いに異なる方向に分岐する分岐管とを備えており、
前記分岐管は、前記下流管と交差する方向に分岐する第一分岐管と、前記下流管および前記第一分岐管と交差する方向に分岐する第二分岐管とを備え、
前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記第一分岐管の最上流部に位置する立上り管、および前記第二分岐管の最上流部に位置する立上り管のそれぞれに設置される
ことを特徴とする請求項1に記載の排圧配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高まった配管内の内圧を外部に開放可能な排圧配管に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲリラ豪雨や台風などに起因して下水側の管路の一部が満水等により閉塞すると、空気および排水が宅地内に逆流する場合がある。これによって押し出される空気は、建物内のトラップへと至り、封水破壊や吹き出しの原因となる。そのため、近年では建物内の排水設備から下水配管に至る間に、排圧可能な装置の設置が求められている。配管の一部に設けられる排圧可能な装置としては、例えば、圧力開放蓋が知られている(例えば、特許文献1参照)。圧力開放蓋は、マスの立ち上がり部に設置され、配管内の圧力上昇時にその一部が浮上することによって、配管内の圧力を外部に開放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-231397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧力開放蓋は、排水設備から下水配管に至る配水管のうち、下水配管に一番近い最下流のマスに設けられている。この場合、最下流のマスの下方を通過した圧力は、建物内のトラップへ到達し、封水破壊や吹き出しが発生する虞があった。
【0005】
また、特許文献1のような圧力開放蓋は、通常の密閉蓋に比べて価格が高く、また、その設置場所によっては、うまく圧力を解放できない場合があった。非特許文献1では、最下流のマスよりも建物寄りのマスに圧力開放蓋を設けることが記載されているが、どのマスに設置するかは述べられていない。
【0006】
そこで、本発明者は上記の課題に鑑み、少数の圧力開放手段によって建物内の封水破壊を効率的に抑制できる排圧配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明者らは、排圧配管を構成するうえでの圧力開放手段の設置位置について鋭意研究を行い、本発明を完成するに至った。本発明は、排水設備から下水道へと至る配管本体部と、前記配管本体部に設けられた複数の立上り管と、前記配管本体部内の内圧を外部に開放する圧力開放手段と、を備えており、前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記配管本体部で高まった内圧の逆流に対向する対向端壁部を備えた圧上昇発生部に位置する前記立上り管に設置されていることを特徴とする排圧配管である。
【0008】
本発明における「対向端壁部」とは、配管本体部の長手方向の上流側端部に位置する側壁部であって、「圧上昇発生部」とは、配管本体部内を逆流した内圧の上昇分が逃げる流路がない部分を言う。なお、配管本体部の上流側端部には、建物からの排水配管が接続されるが、排水配管は、配管本体部に対して小径であるので、高まった内圧が逃げる流路がないと見なす。本発明の排圧配管によれば、圧上昇発生部に位置する立上り管に設置された圧力開放手段に向かって配管内で加圧された圧力が対向端壁部に当たって立上り管内を上昇するので、圧力開放手段が作動し易くなり、効率的に配管本体部内の圧力を外部に逃がすことができる。したがって、少数の圧力開放手段によって建物内の封水破壊を効率的に抑制することができる。
【0009】
本発明の排圧配管においては、前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記配管本体部の最上流部に位置する前記立上り管に設置されるものが好ましい。このような構成によれば、配管本体部の最上流部の端部の対向端壁部に、配管内で加圧された圧力が当たって立上り管内を上昇するので、圧力開放手段が作動し易くなり、効率的に配管本体部内の圧力を外部に逃がすことができる。
【0010】
本発明の排圧配管においては、前記配管本体部は、下流管と、前記下流管から互いに異なる方向に分岐する分岐管とを備えており、前記分岐管は、前記下流管と沿った方向に分岐する第一分岐管と、前記下流管と交差する方向に分岐する第二分岐管とを備え、前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記第一分岐管の最上流部に位置する前記立上り管に設置されるものが好ましい。このような構成によれば、分岐管の分岐部において、配管内で加圧された圧力は、下流管からその向きに沿って第一分岐管に移動する。その後、その圧力は、第一分岐管の最上流部の端部の対向端壁部に当たって立上り管内を上昇するので、圧力開放手段が作動し易くなり、効率的に配管本体部内の圧力を外部に逃がすことができる。
【0011】
本発明の排圧配管においては、前記配管本体部は、下流管と、前記下流管から互いに異なる方向に分岐する分岐管とを備えており、前記分岐管は、前記下流管と交差する方向に分岐する第一分岐管と、前記下流管および前記第一分岐管と交差する方向に分岐する第二分岐管とを備え、前記圧力開放手段は、前記複数の立上り管のうち、前記第一分岐管の最上流部に位置する立上り管、および前記第二分岐管の最上流部に位置する立上り管のそれぞれに設置されるものが好ましい。このような構成によれば、分岐管の分岐部において、配管内で加圧された圧力は、下流管から第一分岐管および第二分岐管に移動する。そして、分岐した圧力のうち、一方は第一分岐管の最上流部の端部の対向端壁部に当たって立上り管内を上昇し、他方は第二一分岐管の最上流部の端部の対向端壁部に当たって立上り管内を上昇するので、それぞれの圧力開放手段が作動し易くなり、効率的に配管本体部内の圧力を外部に逃がすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る排圧配管によれば、少数の圧力開放手段によって建物内の封水破壊を効率的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る排圧配管を示した斜視図である。
図2】(a)は本発明の第一実施形態に係る排圧配管の圧力開放手段の閉塞状態を示した断面図、(b)は開放状態を示した断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る排圧配管の試験状態を示した平面図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る排圧配管を示した斜視図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る排圧配管の試験状態を示した平面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る排圧配管を示した斜視図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る排圧配管の試験状態を示した平面図である。
図8】変形例に係る排圧配管を示した概略図であって、(a)は開弁状態を示した図、(b)は閉弁状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第一実施形態に係る排圧配管について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、図1に示すように、排圧配管1を戸建て住宅2に接続した場合を例に挙げて説明する。排圧配管1は、戸建ての住宅2の図示しない浴室やトイレやキッチン等の水回りから延在する排水手段と、敷地外の下水配管3とに接続されており、住宅2の生活排水を下水配管3に排水する。排圧配管1は敷地内に埋設され、下水配管3は敷地外の道路に埋設されている。
【0015】
本実施形態に係る排圧配管1は、配管本体部10と、立上り管20と、圧力開放手段30とを備えている。
【0016】
配管本体部10は、排水手段から下水道へと至る円筒状の配管である。排水手段は、住宅2の水回りから延在する排水配管11であり、配管本体部11よりも小径である。配管本体部10は、上流側から下流側に向かって所定の排水勾配を持って配置されている。本実施形態では、配管本体部10は、直線状に形成され、戸建て住宅2の側面に沿って延在している。なお、配管本体部10の形状は、一例であって、設置される建物の形状や、水回りの配置位置に応じて適宜決定される。
【0017】
立上り管20は、配管本体部10に複数(本実施形態では7つ)設けられており、住宅2から延在する排水配管11の接続位置にそれぞれ設けられている。立上り管20は、円筒状に形成され、地中の配管本体部10から地表面に向かって立ち上がっており、これにより配管内部およびマス内部の点検を可能にしている。立上り管20の上端部は、地表面と面一で露出されている。立上り管20の上端には、蓋部材21または圧力開放手段30が着脱可能に取り付けられている。蓋部材21または圧力開放手段30は、立上り管20の上端部に装着されており、蓋部材21または圧力開放手段30を取り外すことで、立上り管20内部を点検することが可能となっている。
【0018】
圧力開放手段30は、配管本体部10の内圧を外部に開放するものである。本実施形態では、圧力開放手段30は、立上り管20の上端部に装着される圧力開放蓋にて構成されている。圧力開放蓋は、図2に示すように、外枠部31と内枠部32と昇降部33とを備えている。
【0019】
外枠部31は、立上り管20の上端部に着脱可能に固定される部位である。外枠部31は、円筒状を呈しており、内側に内枠部32が挿通されている。外枠部31の外周面には雄ねじ部が形成されており、立上り管20の上端部の内周面の雌ねじ部に前記雄ねじ部を螺合することで、外枠部31が立上り管20の上端部に気密状態で固定される。外枠部31の内周面には、下側が縮径する段部34が形成されている。段部34には、内枠部32が載置されるようになっている。
【0020】
内枠部32は、昇降部33を昇降可能に保持する部位である。内枠部32は、円筒状を呈しており、内側に昇降部33が挿通されている。内枠部32の外周上端部には、外側に広がる鍔部35が形成されている。鍔部35が外枠部31の段部34に載置されることで、内枠部32が外枠部31に対して落下不能に係止される。鍔部35の下側には、環状のシール材36が装着されており、内枠部32が外枠部31の内側に気密状態で嵌合されるようになっている。内枠部32の内周上端部には、下方に向かうにつれて縮径する傾斜面部37が形成されている。傾斜面部37の上方において、昇降部33が載置されるようになっている。傾斜面部37の下方には、昇降部33が上昇した際に昇降部33を係止する係止部38が設けられている。係止部38は、内側に向かって張り出して形成されている。
【0021】
昇降部33は、内枠部32に対して昇降する部位であって、下降した状態で圧力開放蓋が閉塞され(図2の(a)参照)、上昇した状態で圧力開放蓋が開放される(図2の(b)参照)。昇降部33は、蓋板39と軸部40とを備えている。蓋板39は、円盤形状を呈し、下面外周縁部は、内枠部32の傾斜面部37と略沿った形状となっている。蓋板39の下面外周縁部には、環状のシール材41が設けられており、シール材41が傾斜面部37に密着することで、圧力開放蓋の内外の気密性を確保できる。軸部40は、蓋板39の中心部から下方に垂下している。軸部40の下端部は、内枠部32の係止部38よりも下方に延在している。軸部40の下端部には、外側に突出するストッパ43が形成されている。ストッパ43は、昇降部33が内枠部32から抜け出るのを防止する部位であって、昇降部33が上昇した際に、係止部38の下端において、係止部38の下側を係止する。
【0022】
このような構成の圧力開放手段30は、直線状に配置された複数の立上り管20,20・・のうち、圧上昇発生部12に位置する立上り管20に設置されている。圧上昇発生部12は、配管本体部10で高まった内圧の逆流(配管本体部10内で内圧が上昇したときに発生する空気の流れであって、上流側に流れる逆流)が逃げる流路がなく、立上り管20の上方に向かって上昇し易くなる部分である。圧上昇発生部12は、内圧の逆流に対向する対向端壁部13を備えている。対向端壁部13は、配管本体部の長手方向の上流側端部に位置する側壁部である。本実施形態では、直線状の配管本体部10の上流側端部に位置する端壁が、対向端壁部13となる。つまり、複数の立上り管20,20・・のうち、配管本体部10の最上流部に位置する立上り管20に圧力開放手段30が設置されている。圧上昇発生部12では、内圧の逆流が対向端壁部13に衝突して向きが変えられて、立上り管20の上方に向かって上昇する。これによって、立上り管20の上端部に設けられた圧力開放手段30が開放され易くなっている。なお、配管本体部10の上流側端部には、住宅2からの排水配管11が接続されているが、排水配管11は、配管本体部10に対して小径であるので、圧上昇発生部12では、高まった内圧が逃げる流路がないと見なす。
【0023】
前記構成の排圧配管1について、所定位置の立上り管20に圧力開放手段30を設置し、配管本体部10の内圧を高めて、立上り管20に繋がる封水トラップにおいて封水破壊が発生するか否かの実験を行った。実験に用いた排圧配管1は、呼び径100mmのストレート配管を、勾配2/100で設置している。立上り管20は、呼び径150mmの配管である。圧力開放手段30は、前澤化成工業株式会社製の圧力開放蓋(CW-AIライト150)を用い、その他の立上り管20には、前澤化成工業株式会社製の密閉蓋(C-AIライト150)を設置している。図3に示すように、直線状の配管本体部10の上流端部から、4m,2m,2m,3m,4m,4mの間隔をあけて立上り管20が配置されている。立上り管20の設置位置は、下流側から、A1,B1,C1,D1,E1、F1、G1となっている。最下流の立上り管20(A1)から下流側に2m離れた位置には、内圧の逆流を形成するための逆流発生装置50が設置されている。なお、「逆流」とは、前記勾配による自然流下の方向とは逆向きに流れることを言う。
【0024】
逆流発生装置50は、配管本体部10内に所定圧での逆流を生じさせるものである。逆流条件は、例えばゲリラ豪雨を想定し、トラップ内の水の跳ねだしが起こる程度の逆流を再現するものとする。
【0025】
本実施形態では、設置位置C1に設置された立上り管20に第一の封水トラップ51a(トラップA)を接続し、設置位置G1に設置された立上り管20に第二の封水トラップ51b(トラップB)を設置している。各封水トラップ51a,51bに水を入れ、圧力開放手段30の設置位置を適宜変えながら、逆流発生装置50を用いた配管本体部10内の圧力上昇によるトラップ内の水の跳ねだし量を計測した。以下の表1に実験結果を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すように、圧力開放蓋(圧力開放手段30)を設置しない場合(NO1)には、トラップA、トラップBともにトラップ内の水が全て跳ねだし、跳ねだし量が計測不能(封水破壊が生じた)であった(表1では「跳ねだし」と表示している)。
【0028】
圧力開放蓋を設置位置A1の立上り管20に設置した場合(NO2)には、トラップA、トラップBともにトラップ内の水が全て跳ねだし、跳ねだし量が計測不能(封水破壊が生じた)であった。
【0029】
圧力開放蓋を設置位置B1の立上り管20に設置した場合(NO3)にも、トラップA、トラップBともにトラップ内の水が全て跳ねだし、跳ねだし量が計測不能(封水破壊が生じた)であった。
【0030】
圧力開放蓋を設置位置C1の立上り管20に設置した場合(NO4)には、トラップBでは、水が全て跳ねだし、跳ねだし量が計測不能であったものの、トラップAでは、水の跳ねだし量(トラップ内の満水状態の水位から下がった水位の高さ)は22mmで済んだ。これは、設置位置C1において圧力が圧力開放蓋に分散されて、トラップAにおける圧力上昇が減ったためと考えられる。
【0031】
圧力開放蓋を設置位置B1およびC1の立上り管20にそれぞれ設置した場合(NO5)には、トラップBでは、水が全て跳ねだし、跳ねだし量が計測不能であったものの、トラップAでは、水の跳ねだし量は20mmで済んだ。これは、設置位置C1において圧力が圧力開放蓋に分散されて、トラップAにおける圧力上昇が減ったためと考えられる。また、設置位置B1にも圧力開放蓋を設けたことで、配管本体部10内の全体の圧力が下がり、トラップAの水の跳ねだし量がNO4よりも減っていると考えられる。
【0032】
圧力開放蓋を設置位置G1(圧上昇発生部12)の立上り管20に設置した場合(NO6)には、トラップAの水の跳ねだし量は8mm、トラップBの水の跳ねだし量は7mmであり、他の設置位置と比較して、水の跳ねだし量が大幅に軽減された。これは、配管本体部10内を上流側へ逆流した上昇圧力が、配管本体部10の上流側端部の端壁(対向端壁部13)に衝突して向きが変えられ、立上り管20の上方に向かって上昇し、立上り管20の上端部に設けられた圧力開放手段30の開放により、配管本体部10の圧力が効率的に外部に排圧され、圧力上昇が抑えられ、トラップA,Bでの水の跳ねだし量が減ったと考えられる。
【0033】
以上の結果より、直線状の配管本体部10においては、最上流部の立上り管20に圧力開放手段30を設置することで、最も効率よく配管本体部10の内圧を排圧できることが分かった。つまり、本実施形態の排圧配管1によれば、配管内で加圧された圧力が配管本体部10の最上流部の端壁(対向端壁部13)に当たって立上り管20内を上昇するので、立上り管20の上端部に設置された圧力開放手段30に向かって流れる。これによって、圧力開放手段30が作動し易くなり、効率的に配管本体部10内の圧力を外部に逃がすことができる。したがって、少数(上流側端部の一つ)の圧力開放手段30によって、配管本体部10の内圧の上昇を抑えることができ、住宅2内の水回りの封水破壊を効率的に抑制することができる。また、従来圧力開放蓋が設けられていた最下流の立上り管23に圧力開放蓋を設けなくて済む。
【0034】
さらに、本発明に係る排圧配管1は、既存の排水配管であっても、立上り管20の上端部に設けられた蓋部材を圧力開放蓋に交換することで形成することができる。
【0035】
次に、本発明の第二実施形態に係る排圧配管1aについて、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る排圧配管1aは、図4に示すように、配管本体部10aが、下流側から上流側に向かって分岐されており、住宅2を三方向から囲むように配置されている。具体的には、配管本体部10aは、分岐部15と、下流管16aと、下流管16aから互いに異なる方向に分岐する第一分岐管16bと第二分岐管16cとを備えている。
【0036】
分岐部15は、T字型の分岐配管にて構成されており、T字の上側左右両端部と下端部にそれぞれ配管が接続されている。下流管16aは、配管本体部10aの下流側に位置し、下水配管3に繋がる配管である。下流管16aは、分岐部15のT字の左右方向の一端部に接続されている。
【0037】
第一分岐管16bは、下流管16aから上流に向かって分岐した分岐管の一方であって、分岐部15のT字の左右方向の他端部に接続されている。つまり、第一分岐管16bは、分岐部15から下流管16aと沿った方向に向かって分岐している。第一分岐管16bは、平面視L字形状を呈し、住宅2の二辺に沿って延在している。立上り管20は、第一分岐管16bのL字の屈曲部の一か所と、屈曲部よりも上流側の直線部の略中間部と上流端部の二か所に設けられている。
【0038】
第二分岐管16cは、下流管16aから上流に向かって分岐した分岐管の他方であって、分岐部15のT字の下端部に接続されている。つまり、第二分岐管16cは、下流管16aと交差する方向(本実施形態では直交方向)に向かって分岐している。第二分岐管16cは、直線状に形成されており、住宅2の一辺に沿って延在している。立上り管20は、分岐部15の一か所と、分岐部15よりも上流側の直線部の略中間部と上流端部の二か所に設けられている。
【0039】
圧力開放手段30は、第一実施形態と同様の圧力開放蓋にて構成されている。圧力開放手段30は、複数の立上り管20,20・・のうち、圧上昇発生部12に位置する立上り管20に設置されている。本実施形態では、第一分岐管16bの上流側端部に位置する端壁と、第二分岐管16cの上流側端部に位置する端壁とが、内圧の逆流に対向するが、第一分岐管16bの上流側端部の端壁を請求項1における対向端壁部13とし、第一分岐管16bの上流側端部を圧上昇発生部12とする。そして、第一分岐管16bの上流側端部に設けられた立上り管20に圧力開放手段30が設けられている。
【0040】
これは、以下の理由による。つまり、下流管16aから逆流した内圧上昇の流れは、分岐部15において、下流管16aに沿って直線状になっている第一分岐管16bに多く流れ、下流管16aと直交する第二分岐管16cに少し流れる。第一分岐管16bに多く流れた逆流は、第一分岐管16bの上流側端部に位置する端壁に衝突して向きが変えられて、立上り管20の上方に向かって上昇するため、立上り管20の上端部に設けられた圧力開放手段30によって、排圧され易くなっている。要するに、第一分岐管16bの最上流部に位置する立上り管20に圧力開放手段30を設けることで、最も効率的に配管本体部10の内圧を排圧することができるためである。
【0041】
前記構成の排圧配管1aについて、所定位置の立上り管20に圧力開放手段30を設置し、配管本体部10aの内圧を高めて、立上り管20に繋がる封水トラップにおいて封水破壊が発生するか否かの実験を行った。実験に用いた配管や逆流発生装置50等は、第一実施形態の実験棟同等の機材を用いた。図5に示すように、立上り管20の設置位置は、分岐部15をA2とし、A2から第一分岐管16bの上流側に4m離れた屈曲部をB2とし、B2から第一分岐管16bの上流側に2m離れた地点をC2とし、C2から第一分岐管16bの上流側に2m離れた第一分岐管16bの上流側端部をD2とする。さらに、A2から第二分岐管16cの上流側に2m離れた屈曲部をE2とし、E2から第二分岐管16cの上流側に2m離れた第二分岐管16cの上流側端部をF2とする。
【0042】
本実施形態では、設置位置F2に設置された立上り管20に第一の封水トラップ51a(トラップA)を接続し、設置位置D2に設置された立上り管20に第二の封水トラップ51b(トラップB)を設置している。以下の表2に実験結果を示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示すように、圧力開放蓋(圧力開放手段30)を設置しない場合(NO1)には、トラップA、トラップBともにトラップ内の水が全て跳ねだした。
【0045】
圧力開放蓋を設置位置A2の立上り管20に設置した場合(NO2)には、トラップBでは、水が全て跳ねだしたものの、トラップAでは、水の跳ねだし量は1mmで済んだ。これは、設置位置A2において圧力が圧力開放蓋に分散されており、第二分岐管16c側に流れる圧力上昇の逆流は元から少なく、トラップAにおける圧力上昇が減ったためと考えられる。
【0046】
圧力開放蓋を設置位置B2の立上り管20に設置した場合(NO3)には、トラップAの水の跳ねだし量は2mm、トラップBの水の跳ねだし量は1mmであり、封水破壊が抑止された。これは、下流管16aから逆流した内圧上昇の流れが多く流れる第一分岐管16b内に圧力開放手段30を設けたことと、屈曲部の壁面に圧力上昇の逆流が衝突してその一部が上方に流れたことで、配管内の圧力が圧力開放蓋から排圧されたためと考えられる。
【0047】
圧力開放蓋を設置位置C2の立上り管20に設置した場合(NO4)には、トラップAの水の跳ねだし量は2mm、トラップBの水の跳ねだし量は2mmであり、封水破壊が抑止された。これは、下流管16aから逆流した内圧上昇の流れが多く流れる第一分岐管16b内に圧力開放手段30を設けたことで、配管内の圧力が圧力開放蓋から排圧されたためと考えられる。B2と比較すると、屈曲部の壁面への圧力上昇の逆流の衝突がない分、トラップBの跳ねだし量が多くなっている。
【0048】
圧力開放蓋を設置位置D2の立上り管20に設置した場合(NO5)には、トラップAの水の跳ねだし量は1mm、トラップBの水の跳ねだし量は0mmであり、跳ねだし量が一番少なく、封水破壊が抑止された。これは、下流管16aから逆流した内圧上昇の流れが多く流れる第一分岐管16b内に圧力開放手段30を設けたことと、第一分岐管16bの最上流部の壁面に圧力上昇の逆流が衝突して上方に流れたことで、配管内の圧力の大部分が圧力開放蓋から排圧されたためと考えられる。
【0049】
圧力開放蓋を設置位置E2の立上り管20に設置した場合(NO6)には、トラップBでは、水が全て跳ねだしたものの、トラップAでは、水の跳ねだし量は2mmで済んだ。これは、分岐部15において圧力が圧力開放蓋に分散されており、第二分岐管16c側に流れる圧力上昇の逆流は元から少ない上に圧力開放蓋が設けられているため、トラップAにおける圧力上昇が減ったためと考えられる。一方、第一分岐管16b側に流れる圧力上昇の逆流は多いところ圧力開放蓋が設けられていないため、トラップBでは全ての水が跳ねだしている。
【0050】
圧力開放蓋を設置位置F2の立上り管20に設置した場合(NO7)には、トラップBでは、水が全て跳ねだしたものの、トラップAでは、水の跳ねだし量は0mmで済んだ。これは、分岐部15において圧力が圧力開放蓋に分散されており、第二分岐管16c側に流れる圧力上昇の逆流は元から少ない上に、第二分岐管16cの最上流部に圧力開放蓋が設けられているため、トラップAにおける大幅に圧力上昇が減ったためと考えられる。一方、第一分岐管16b側に流れる圧力上昇の逆流は多いところ圧力開放蓋が設けられていないため、トラップBでは全ての水が跳ねだしている。
【0051】
以上の結果より、第二実施形態の配管本体部10aにおいては、第一分岐管16bの最上流部の立上り管20に圧力開放手段30を設置することで、最も効率よく配管本体部10aの内圧を排圧できることが分かった。つまり、本実施形態の排圧配管1aによれば、配管内で加圧された圧力の大部分が第一分岐管16bの最上流部の端壁(対向端壁部13)に当たって立上り管20内を上昇するので、その立上り管20の上端部に設置された圧力開放手段30に向かって流れる。これによって、圧力開放手段30が作動し易くなり、効率的に配管本体部10a内の圧力を外部に逃がすことができる。要するに、流路が分岐する場合、逆流の多くが流れる側の第一分岐管16bに圧力開放手段30を設ければ、第二分岐管16cに圧力開放手段30を設けなくても、内圧を効率的に排圧することができる。したがって、少数(第一分岐管16bの上流側端部の一つ)の圧力開放手段30によって、配管本体部10aの内圧の上昇を抑えることができ、住宅2内の水回りの封水破壊を効率的に抑制することができる。また、従来圧力開放蓋が設けられていた最下流の立上り管23に圧力開放蓋を設けなくて済む。
【0052】
次に、本発明の第三実施形態に係る排圧配管1bについて、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る排圧配管1bは、図6に示すように、配管本体部10bが、下流側から上流側に向かって分岐されており、住宅2を三方向から囲むように配置されている。具体的には、配管本体部10bは、分岐部17と、下流管18aと、下流管18aから互いに異なる方向に分岐する第一分岐管18bと第二分岐管18cとを備えている。
【0053】
分岐部17は、T字型の分岐配管にて構成されており、T字の上側左右両端部と下端部にそれぞれ配管が接続されている。下流管18aは、配管本体部10bの下流側に位置し、下水配管3に繋がる配管である。下流管18aは、分岐部17の下端部に接続されている。
【0054】
第一分岐管18bは、下流管18aから上流側に向かって分岐した分岐管の一方であって、分岐部17のT字の左右方向の一端部に接続されている。つまり、第一分岐管18bは、分岐部17から下流管18aと交差する方向(本実施形態では直交方向)に向かって分岐している。第一分岐管18bは、平面視L字形状を呈し、住宅2の二辺に沿って延在している。立上り管20は、第一分岐管18bのL字の屈曲部と、屈曲部から延在した上流側の直線部の上流端部の二か所に設けられている。
【0055】
第二分岐管18cは、下流管18aから上流側に向かって分岐した分岐管の他方であって、分岐部17のT字の左右方向の他端部に接続されている。つまり、第二分岐管18cは、下流管18aと交差する方向(本実施形態では直交方向)に向かって分岐している。第二分岐管18cの基端部は、第一分岐管18bの基端部と直線状に繋がっており、第一分岐管18bと第二分岐管18cとは、下流管18aに対して、左右対称に分岐している。第二分岐管18cは、平面視L字形状を呈し、住宅2の二辺に沿って延在している。立上り管20は、第二分岐管18cのL字の屈曲部と、屈曲部から延在した上流側の直線部の上流端部の二か所に設けられている。
【0056】
圧力開放手段30は、第一実施形態と同様の圧力開放蓋にて構成されている。圧力開放手段30は、複数の立上り管20,20・・のうち、圧上昇発生部12に位置する立上り管20に設置されている。本実施形態では、第一分岐管18bの上流側端部に位置する端壁と、第二分岐管18cの上流側端部に位置する端壁とが、内圧の逆流に対向するが、両方の端壁を対向端壁部13とし、第一分岐管18bの上流側端部および第二分岐管18cの上流側端部を、それぞれ圧上昇発生部12とする。そして、第一分岐管18bの上流側端部および第二分岐管18cの上流側端部に設けられた立上り管20に、圧力開放手段30がそれぞれ設けられている。
【0057】
これは、以下の理由による。つまり、下流管18aから逆流した内圧上昇の流れは、分岐部17において、第一分岐管18bと第二分岐管18cとに均等に分離して流れる。そして、第一分岐管18bに流れた逆流は、第一分岐管18bの上流側端部に位置する端壁に衝突して向きが変えられて、そこの立上り管20の上方に向かって上昇するため、立上り管20の上端部に設けられた圧力開放手段30が開放され易くなっている。また、第二分岐管18cに流れた逆流は、第二分岐管18cの上流側端部に位置する端壁に衝突して向きが変えられて、そこの立上り管20の上方に向かって上昇するため、立上り管20の上端部に設けられた圧力開放手段30によって、排圧され易くなっている。このことより、第一分岐管18bの上流側端部と、第二分岐管18cの上流側端部との両方に圧力開放手段30を設けることで、最も効率的に配管本体部10の内圧を排圧することができるためである。
【0058】
前記構成の排圧配管1bについて、所定位置の立上り管20に圧力開放手段30を設置し、配管本体部10aの内圧を高めて、立上り管20に繋がる封水トラップにおいて封水破壊が発生するか否かの実験を行った。実験に用いた配管や逆流発生装置50等は、第一実施形態の実験棟同等の機材を用いた。図7に示すように、立上り管20の設置位置は、分岐部17をA3とし、A3から第一分岐管16bの上流側に2m離れた屈曲部をB3とし、B3から第一分岐管18bの上流側に2m離れた第一分岐管18bの上流側端部をC3とする。さらに、A3から第二分岐管18cの上流側に4m離れた屈曲部をD3とし、D3から第二分岐管18cの上流側に4m離れた第二分岐管16cの上流側端部をE3とする。
【0059】
本実施形態では、設置位置C3に設置された立上り管20に第一の封水トラップ51a(トラップA)を接続し、設置位置E3に設置された立上り管20に第二の封水トラップ51b(トラップB)を設置している。以下の表3に実験結果を示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示すように、圧力開放蓋(圧力開放手段30)を設置しない場合(NO1)には、トラップA、トラップBともにトラップ内の水が全て跳ねだした。
【0062】
圧力開放蓋を設置位置A3の立上り管20に設置した場合(NO2)には、トラップA、トラップBともにトラップ内の水が全て跳ねだした。これは、設置位置A3においても逆流する圧力が立上り管20側に分散されるが、圧力の多くは、第一分岐管18bと第二分岐管18cに流れるため、トラップAおよびトラップBにおいて、跳ねだしが発生したと考えられる。
【0063】
圧力開放蓋を設置位置B3の立上り管20に設置した場合(NO3)には、トラップAの水の跳ねだし量は3mmで、トラップBでは全ての水が跳ねだした。これは、分岐部17から第一分岐管18b内に流れた逆流は圧力開放蓋から排圧されるので、トラップAの跳ねだしが抑止されているが、第二分岐管18c内に流れた逆流は、第二分岐管18cに圧力開放蓋がないため、外部に逃げることができず、トラップBで跳ねだしが発生したと考えられる。
【0064】
圧力開放蓋を設置位置C3の立上り管20に設置した場合(NO4)には、トラップAの水の跳ねだし量は2mmで、トラップBでは全ての水が跳ねだした。これは、分岐部17から第一分岐管18b内に流れた逆流は圧力開放蓋から排圧されるので、トラップAの跳ねだしが抑止されているが、第二分岐管18c内に流れた逆流は、第二分岐管18cに圧力開放蓋がないため、外部に逃げることができず、トラップBで跳ねだしが発生したと考えられる。C3は第一分岐管18bの上流側端部であるので、内圧の排圧が効率的に行われ、B3に圧力開放蓋を設けた場合(NO3)よりも跳ねだし量が少なくなっている。
【0065】
圧力開放蓋を設置位置D3の立上り管20に設置した場合(NO5)には、トラップAでは全ての水が跳ねだし、トラップBの水の跳ねだし量は2mmであった。これは、分岐部17から第二分岐管18c内に流れた逆流は圧力開放蓋から排圧されるので、トラップBの跳ねだしが抑止されているが、第一分岐管18b内に流れた逆流は、第一分岐管18bに圧力開放蓋がないため、外部に逃げることができず、トラップAで跳ねだしが発生したと考えられる。
【0066】
圧力開放蓋を設置位置E3の立上り管20に設置した場合(NO6)には、トラップAでは全ての水が跳ねだし、トラップBの水の跳ねだし量は4mmであった。これは、分岐部17から第二分岐管18c内に流れた逆流は圧力開放蓋から排圧されるので、トラップBの跳ねだしが抑止されているが、第一分岐管18b内に流れた逆流は、第一分岐管18bに圧力開放蓋がないため、外部に逃げることができず、トラップAで跳ねだしが発生したと考えられる。
【0067】
圧力開放蓋を設置位置C3およびE3の立上り管20にそれぞれ設置した場合(NO7)には、トラップAの水の跳ねだし量は0mm、トラップBの水の跳ねだし量は7mmであり、封水破壊が抑止された。これは、第一分岐管18bと第二分岐管18cにそれぞれ圧力開放蓋を設けたので、第一分岐管18bと第二分岐管18cとのそれぞれで、上昇した内圧が圧力開放蓋から排圧されるので、トラップBの跳ねだしが抑止されていると考えられる。C3は第一分岐管18bの上流側端部であり、E3は第二分岐管18cの上流側端部であるので、ともに内圧の排圧が効率的に行われ、後記するB3およびD3に圧力開放蓋を設けた場合(NO8)よりも跳ねだし量が少なくなっている。
【0068】
圧力開放蓋を設置位置B3およびD3の立上り管20にそれぞれ設置した場合(NO8)には、トラップAの水の跳ねだし量は1mm、トラップBの水の跳ねだし量は9mmであり、封水破壊が抑止された。これは、第一分岐管18bと第二分岐管18cにそれぞれ圧力開放蓋を設けたので、第一分岐管18bと第二分岐管18cとのそれぞれで、上昇した内圧が圧力開放蓋から排圧されるので、トラップBの跳ねだしが抑止されていると考えられる。B3およびD3は、分岐管の上流側端部ではないが、屈曲部に設けられているので、屈曲部の壁面に圧力上昇の逆流が衝突してその一部が上方に流れる。そのため、直線部に圧力開放蓋を設ける場合よりも、トラップにおける水の跳ねだし量を減らすことができる。
【0069】
以上の結果より、第三実施形態の配管本体部10bにおいては、第一分岐管18bの最上流部の立上り管20と、第二分岐管18cの最上流部の立上り管20の両方に圧力開放手段30を設置することで、最も効率よく配管本体部10bの内圧を排圧できることが分かった。つまり、本実施形態の排圧配管1bによれば、配管内で加圧された圧力は分岐部17で均等に分離されるが、一方の逆流は第一分岐管18bの最上流部の端壁(対向端壁部13)に当たって立上り管20内を上昇するので、その立上り管20の上端部に設置された圧力開放手段30に向かって流れる。さらに他方の逆流は第二分岐管18cの最上流部の端壁(対向端壁部13)に当たって立上り管20内を上昇するので、その立上り管20の上端部に設置された圧力開放手段30に向かって流れる。これによって、各圧力開放手段30が作動し易くなり、効率的に第一分岐管18bと第二分岐管18cの両方の圧力を外部に逃がすことができる。したがって、少数(第一分岐管18bの上流側端部と第二分岐管18cの上流側端部の二つ)の圧力開放手段30によって、配管本体部10bの内圧の上昇を抑えることができ、住宅2内の水回りの封水破壊を効率的に抑制することができる。また、従来圧力開放蓋が設けられていた最下流の立上り管23に圧力開放蓋を設けなくて済む。
【0070】
以上、本発明を実施する形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。記実施形態では、住宅2の水回り設備に接続される排水配管を例に挙げたが、住宅以外の建築物や構造物であっても適用することができるのは勿論である。
【0071】
前記実施形態では、圧力開放手段30の昇降部33が蓋体の中央部に一つ設けられているがこれに限定されるものではない。昇降部は、蓋体の中央からずれていてもよい。また、蓋体中に複数の昇降部を備えるものや、蓋体自体が所定距離だけ上昇し、蓋体と蓋枠から排圧する構造など、排圧可能な構造でもよい。
また、圧力開放手段は、空気だけでなく、逆流した排水を開放する排圧構造であってもよい。例えば、蓋体の中央部に設けた排気機構(圧力開放手段30の昇降部33)により配管内の圧を逃がす空気開放機構と、逆流してきた排水圧を受けた蓋体が上昇し、蓋体と蓋枠との間で排水を排水し、配管内の圧力を開放する2段階での排圧構造でもよい。
【0072】
前記実施形態では、配管本体部10の上流部の端壁を「対向端壁部」としているが、これに限定されるものではない。図8に示すように、配管本体部10の途中に設けられた立上り管20の下部の上流側に逆流防止弁60を設けて、対向端壁部としてもよい。逆流防止弁60は、排水が順方向(水勾配の下側に流れる方向)に流れる場合は開弁し(図8の(a)参照)、逆方向に流れる場合は閉弁する(図8の(b)参照)ように設置されている。逆流防止弁60は、図8の(b)に示すように、排水が逆流した際に閉弁し、配管本体部10の上流側を閉鎖する。これによって、逆流防止弁60本体が壁となり逆流に対向する対向端壁部となり、逆流防止弁60を設けた部分が圧上昇発生部となる。逆流防止弁60が設けられた立上り管20の上端には、圧力開放手段30が設置されており、その他の立上り管20の上端には、蓋部材21が設置されている。
【0073】
このような構成においては、配管本体部10で逆流が発生すると、逆流防止弁が閉弁し、内圧の逆流が逆流防止弁60に衝突して向きが変えられて、立上り管20の上方に向かって上昇する。これによって、立上り管20の上端部に設けられた圧力開放手段30が開放されて、排圧される。
【0074】
前記実施形態における配管本体部10の形状や立上り管20の設置位置は一例であって、前記構成に限定されるものではない、配管本体部10の形状や立上り管20の設置位置は、接続される建物の形状や水回りの配置位置に応じて適宜決定されるものである。
【0075】
前記第二実施形態および第三実施形態では、分岐部15,17はT字状の分岐配管が用いられていたが、Y字状等の他の形状の分岐管を用いてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 排圧配管
1a 排圧配管
1b 排圧配管
10 配管本体部
10a 配管本体部
10b 配管本体部
12 圧上昇発生部
13 対向端壁部
15 分岐部
16a 下流管
16b 第一分岐管
16c 第二分岐管
17 分岐部
18a 下流管
18b 第一分岐管
18c 第二分岐管
20 立上り管
21 蓋部材
30 圧力開放手段
50 逆流発生装置
51a 封水トラップ
51b 封水トラップ
60 逆流防止弁(対向端壁部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8