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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109751
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】抗ウイルス性異形成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20220721BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20220721BHJP
   A01N 41/04 20060101ALI20220721BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A01N25/10
A01P1/00
A01N41/04 Z
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005232
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】井上 一機
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 博文
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA08A
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA18A
4F100CA23A
4F100DE01A
4F100EH17B
4F100EJ24
4F100EJ42
4F100GB31
4F100GB66
4F100JC00
4F100JC00A
4F100YY00A
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB07
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA08
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗ウイルス性能が高く、黄色又は褐色に変色しにくい抗ウイルス性異形成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100重量部と、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤が3~100重量部担持されている抗ウィルス性粒子1~100重量部からなる塩化ビニル系樹脂フィルムを、塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に積層して積層シートを得た後、得られた積層シートを真空・圧空成形することを特徴とする抗ウィルス性異形成形体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100重量部と、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤が3~100重量部担持されている抗ウィルス性粒子1~100重量部からなる塩化ビニル系樹脂フィルムを、塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に積層して積層シートを得た後、得られた積層シートを真空・圧空成形することを特徴とする抗ウィルス性異形成形体の製造方法。
【請求項2】
抗ウィルス剤がスルホン酸系界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の抗ウィルス性異形成形体の製造方法。
【請求項3】
塩化ビニル系樹脂プレートを押出成形し、得られた塩化ビニル系樹脂プレ-トが軟化されている状態で、塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に塩化ビニル系樹脂フィルムを積層して積層シートを得ることを特徴とする請求項1又は2記載の抗ウィルス性異形成形体の製造方法。
【請求項4】
更に、塩化ビニル系樹脂プレ-トが軟化されている状態で積層シートを真空・圧空成形することを特徴とする請求項3記載の抗ウィルス性異形成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性の優れた異形成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重症呼吸器感染症(SARS)ウイルス、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス等のウイルスが次々と社会問題となっている。これらウイルスは容易に人から人に伝染するため、人が多く集まる場所で使用する製品、例えば、電車の座席のひじ掛けや背もたれ、吊り手、窓枠、病院のドアの取っ手、椅子、机などの各種合成樹脂製成形品等の抗ウイルスの向上が望まれている。
【0003】
そのため、多くの抗ウイルス性の優れた抗ウイルス性材料が提案されている。例えば、「抗菌性および抗ウィルス性のポリマー材料であって、イオンの銅の微視的粒子を有しており、該粒子が該ポリマー材料に封入され、かつその表面から突出している、ポリマー材料、及び、それを成形したフィルム、繊維、糸等。」(例えば、特許文献1参照。)、「樹脂と、抗ウイルス剤と、カチオン系界面活性剤からなる表面電位制御剤と、を含む抗ウイルス性樹脂部材であって、前記表面電位制御剤は前記抗ウイルス性樹脂部材の表面の電位を前記樹脂単体の表面の電位よりもプラス方向に変化させることを特徴とする抗ウイルス性樹脂部材、及び、それを成形した繊維や、ハウス用フィルム、トンネルハウス用フィルムなどの農業資材、クリアフォルダ、ラベルテープなどの文房具、シート、椅子、ソファー、外壁材、サッシ、ドア、ブラインド、天井板、床板、窓などの建装材、壁紙、カーペット、樹脂タイルなどの内装材、車両用内装材、衣類、インナーウェア、靴下、手袋、靴カバー、靴等の履物、パジャマ、マット、シーツ、枕、枕カバー、毛布、タオルケット、蒲団および蒲団カバーなどの寝装材、帽子、ハンカチ、タオル、絨毯、カーテン、空気清浄機やエアコン、換気扇、電気掃除機、扇風機などのフィルター、生簀や定置網などの漁網、水処理用のフィルター、飲料水用フィルター、バラスト水処理用のフィルター、配管内のライニング材、湾岸構造物表面に接着剤や粘着剤で付着させたフィルム状部材、漁船やタンカーなどの船舶表面にシート状として接着させた部材、発電所の取水口内壁へのシート状部材、取水口用プレフィルター、取水口内面、プレートクーラー、排水管、給水管など、様々な接水面用部材または防虫網やスクリーン印刷用メッシュなどの繊維構造体の製品。」(例えば、特許文献2参照。)、「合成樹脂に、無機充填剤100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤3~100重量部を担持された合成樹脂添加用の抗ウイルス剤を添加した抗ウイルス性合成樹脂組成物、及び、それを成形したシート、床材、壁紙、フィルム、衣服用生地、容器、パイプ、玩具、診断用器具、体外循環用器具、防護品、臨床検査器具、病院用器具、医療消耗品、在宅医療器具、衛生材料、保健衛生具、病院建物、食品製造工場、食品包装材等。」(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記抗ウイルス性材料は、押出成形や射出成形により、合成樹脂を高温で加熱し、溶融混錬して押出成形、射出成形等により成形しているので、成形の際に、抗ウイルス剤も加熱されるため、抗ウイルス性能が低下する、製品が黄色又は褐色に変色するという欠点があった。特に、機械的強度が高い肉厚の成形体を製造する場合及びこの成形体を変形して異形成形体を製造する場合は、成形体を製造する時間が長くなり、それに従って抗ウイルス剤の加熱時間が長くなり、上記欠点もより顕著になるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-129188号公報
【特許文献2】特開2013-522479号公報
【特許文献3】特開2017-218516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、抗ウイルス性能が高く、黄色又は褐色に変色しにくい抗ウイルス性異形成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
[1]塩化ビニル系樹脂100重量部と、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤が3~100重量部担持されている抗ウィルス性粒子1~100重量部からなる塩化ビニル系樹脂フィルムを、塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に積層して積層シートを得た後、得られた積層シートを真空・圧空成形することを特徴とする抗ウィルス性異形成形体の製造方法、
[2]抗ウィルス剤がスルホン酸系界面活性剤であることを特徴とする上記[1]記載の抗ウィルス性異形成形体の製造方法、
[3]塩化ビニル系樹脂プレートを押出成形し、得られた塩化ビニル系樹脂プレ-トが軟化されている状態で、塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に塩化ビニル系樹脂フィルムを積層して積層シートを得ることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の抗ウィルス性異形成形体の製造方法、及び、
[4]更に、塩化ビニル系樹脂プレ-トが軟化されている状態で積層シートを真空・圧空成形することを特徴とする上記[3]記載の抗ウィルス性異形成形体の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗ウィルス性異形成形体の製造方法の構成は上述の通りであり、得られた抗ウイルス性異形成形体は黄色又は褐色に着色しておらず、抗ウイルス性能が高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の抗ウィルス性異形成形体の製造方法は、塩化ビニル系樹脂100重量部と、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤が3~100重量部担持されている抗ウィルス性粒子1~100重量部からなる塩化ビニル系樹脂フィルムを、塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に積層して積層シートを得た後、得られた積層シートを真空・圧空成形することを特徴とする。
【0010】
上記塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル単独重合体及び塩化ビニル単量体を50重量%以上含み、塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であり、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0011】
又、上記塩化ビニル系樹脂には塩素化塩化ビニル系樹脂も含まれる。塩素化塩化ビニル系樹脂は、上記塩化ビニル系樹脂を塩素化することにより得られた樹脂であり、塩素含有量は60~72重量%が好ましい。
【0012】
塩化ビニル系樹脂の平均重合度は一般に600~2000であり、好ましくは800~1200である。又、塩化ビニル系樹脂の粒子径は小さくなると取り扱いが難しくなり、大きくなると加熱成形に時間がかかるので、平均粒子径は100~200μmが好ましい。
【0013】
上記塩化ビニル系樹脂フィルムは、塩化ビニル系樹脂100重量部と、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤が3~100重量部担持されている抗ウィルス性粒子1~100重量部からなる。
【0014】
上記無機充填剤としては、塩化ビニル系樹脂の無機充填剤として一般に使用されている任意の無機充填剤が使用でき、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、クレー等が挙げられる。
【0015】
無機充填剤の大きさには特に限定されず、製造された異形成形体の用途等に応じて適宜設定すればよいが、一般に、平均粒子径が0.01~100μmが好ましく、塩化ビニル系樹脂に添加した際の分散性が優れているのが好ましく0.02~30μmがより好ましく、更に、0.02~10μmが最も好ましい。
【0016】
上記抗ウィルス剤は、抗ウィルス性を有すればよく、従来公知の任意の抗ウィルス剤が使用可能であり、例えば、Cu、Ag、Sb、Ir、Ge、Sn、Tl、Pt、Pd、Bi、Au、Fe、Co、Ni、Zn、In、Hgなどの周期律表の第4周期から第6周期かつ8族から15族の元素のヨウ化物、1価の銅の塩化物、酢酸化合物、硫化物、ヨウ化物、臭化物、過酸化物、酸化物、チオシアン化物である銅化合物、界面活性剤等が挙げられる。
【0017】
上記ヨウ化物としては、例えば、CuI、AgI、SbI、IrI、GeI、GeI、SnI、SnI、TlI、PtI、PtI、PdI、BiI、AuI、AuI、FeI、CoI、NiI、ZnI、HgI、InI等が挙げられる。
【0018】
又、上記銅化合物としては、例えば、CuCl、Cu(CHCOO)、CuBr、CuI、CuSCN、CuS、CuO等が挙げられる。
【0019】
又、上記界面活性剤としては、抗ウィルス性を有する、従来公知の任意の界面活性剤が挙げられ、例えば、スルホン酸系界面活性剤が好適に挙げられる。
【0020】
上記スルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物及びそのナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられ、抗ウイルス性に優れているアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物及びアルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に、抗ウイルス性に優れているアルキルベンゼンスルホン酸系化合物及びその金属塩がより好ましい。
【0021】
上記抗ウィルス性粒子は、無機充填剤に抗ウィルス剤が担持されているが、無機充填剤に抗ウィルス剤を担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、無機充填剤の水懸濁液に、抗ウィルス剤を添加する湿式処理方法、無機充填剤の粉体と抗ウィルス剤を攪拌混合する乾式処理方法等が挙げられる。
【0022】
無機充填剤に抗ウィルス剤を担持させる量は、無機充填剤100重量部に対し抗ウィルス剤3~100重量部であり、好ましくは5~70重量部であり、より好ましくは6~50重量部である。3重量部未満では抗ウイルス性が乏しくなり、100重量部以上では担持させるのが困難となる。
【0023】
塩化ビニル系樹脂フィルムにおける抗ウイルス剤の添加量は、少なくなると抗ウイルス性が低下し、多くなると、成形性が低下したり、塩化ビニル系樹脂フィルムから抗ウイルス剤がマイグレーションし漏出したり、剥離脱落して得られた異形成形体の表面性が低下するので、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し1~50重量部であり、好ましくは2~50重量部である。
【0024】
又、上記塩化ビニル系樹脂プレート及び塩化ビニル系樹脂フィルムには、従来から塩化ビニル系樹脂成形体の成形の際に一般に使用されている熱安定剤、滑剤、耐衝撃改良剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、光安定剤、無機充填剤、着色剤、可塑剤等が添加されてもよい。
【0025】
上記熱安定剤としては、塩化ビニル系樹脂の熱安定剤として一般に使用されている任意の熱安定剤が使用でき、例えば、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウムステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系熱安定剤;ジメチル錫ジメルカプト、ジブチル錫ジメルカプト、ジオクチル錫ジメルカプト、ジメチル錫ジマレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジマレート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの錫系熱安定剤;ハイドロタルサイト系熱安定剤、ゼオライト系熱安定剤等が挙げられる。
【0026】
上記滑剤としては、塩化ビニル系樹脂の滑剤として一般に使用されている任意の滑剤が使用でき、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの高級脂肪酸系滑剤、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールと高級脂肪酸とのエステルであるペンタエリスリトール系滑剤;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコール系滑剤;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールとモンタン酸とのエステルであるモンタン酸ワックス系滑剤等が挙げられる。
【0027】
上記耐衝撃改良剤としては、塩化ビニル系樹脂の耐衝撃改良剤として一般に使用されている任意の耐衝撃改良剤が使用でき、例えば、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)等が挙げられる。
【0028】
上記加工助剤としては、塩化ビニル系樹脂の加工助剤として一般に使用されている任意の加工助剤が使用でき、例えば、メチルメタクリレートを主体とするアクリル系加工助剤、熱可塑性ポリエステルを主体とするポリエステル系加工助剤等が挙げられる。
【0029】
上記着色剤としては、塩化ビニル系樹脂の着色剤として一般に使用されている任意の着色剤が使用でき、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、染料レーキ系などの有機顔料;酸化物系、水酸化物系、硫化物系、燐酸塩系、炭酸塩系無機顔料等が挙げられる。
【0030】
上記可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂の可塑剤として一般に使用されている任意の可塑剤が使用でき、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ-2エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸系可塑剤;オクチルトリメリテートなどのトリメリット酸系可塑剤;オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤等が挙げられる。
【0031】
上記塩化ビニル系樹脂フィルムの製造方法は特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、ロール成形法、プレス成形法、溶融押出法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられ、溶融押出法及びインフレーション成形法が好ましい。
【0032】
又、塩化ビニル系樹脂フィルムの厚さは、特に限定されず、得られた異形成形体に抗ウィルス性を付与できれば良いが、薄くなりすぎると製造の際に取り扱いにくくなり、厚くなっても抗ウィルス性がより向上することはなく、使用する抗ウィルス剤の添加量が多くなり経済性が低下するので、一般に5~100μmであり、好ましくは、10~100μmである。
【0033】
上記塩化ビニル系樹脂プレートの製造方法は特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、ロール成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、溶融押出成形法等が挙げられ、溶融押出成形法が好ましい。
【0034】
又、塩化ビニル系樹脂プレートの厚さは、特に限定されず、得られる異形成形体の形状や要求される機械的強度に従って決定されればよいが、真空・圧空成形されるのであるから、一般に、0.5~10mmである。
【0035】
本発明においては、上記塩化ビニル系樹脂フィルムを、上記塩化ビニル系樹脂プレートの少なくとも一面に積層して積層シートを得た後、得られた積層シートを真空・圧空成形する。
【0036】
上記積層シートの製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の積層方法が採用されてよいが、上記塩化ビニル系樹脂プレートが製造され、軟化されている状態又は溶融している状態で塩化ビニル系樹脂プレートの片面又は両面に上記塩化ビニル系樹脂フィルムを積層するのが好ましい。即ち、上記塩化ビニル系樹脂プレートを押出成形した直後に得られた塩化ビニル系樹脂プレートの片面又は両面に上記塩化ビニル系樹脂フィルムを重ね合わせ、加圧ロールに供給し加圧して、所謂、インラインで積層するのが好ましい。
【0037】
本発明においては、得られた積層シートを真空・圧空成形するのであるが、真空・圧空成形は、従来公知の任意の真空成形法及び圧空成形法が採用されればよい。真空成形法とは、加熱して軟化した上記積層シートを金型に供給するか、上記積層シートを金型に供給した後金型内で加熱軟化し、次いで、上記積層シ-トと金型の間の空間を真空状態して、上記積層シートを金型に密着させて成形して所定の形状の異形成形体を得る方法である。又、圧空成形法とは、加熱して軟化した上記積層シートを金型に供給するか、上記積層シートを金型に供給した後金型内で加熱軟化し、次いで、上記積層シ-トを空気で加圧し、上記積層シートを金型に密着させて成形して所定の形状の異形成形体を得る方法である。
【0038】
尚、上記積層シートの製造及び真空・圧空成形の際に、上記塩化ビニル系樹脂フィルムは加熱されるが、加熱温度が高かったり、加熱時間が長くなると抗ウィルス剤の抗ウィルス性能が低下するので、塩化ビニル系樹脂プレートが製造され、軟化されている状態又は溶融されている状態で、積層シートの製造及び真空・圧空成形を連続して、所謂、インラインで行うのが好ましい。
【実施例0039】
次に、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
抗ウィルス性粒子の製造
無機充填剤である炭酸カルシウム(白石工業社製、粒子径0.08μm)100重量部の水懸濁液にスルホン酸系界面活性剤であるアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ50重量部を添加し撹拌した後に乾燥して無機充填剤にスルホン酸系界面活性剤を担持させた抗ウィルス性粒子を得た。
【0041】
塩化ビニル系樹脂フィルムの製造
塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、重合度800)100重量部、上記得られた抗ウィルス性粒子15重量部、耐衝撃改良剤であるMBS樹脂(カネカ社製)15重量部、安定剤(日東化成社製)3重量部、滑剤(アデカ社製)3重量部、加工助剤(日東化成社製)5重量部及び顔料(大日精化社製)3重量部をフェンシェルミキサーに供給し、120℃で5分間撹拌し、次にクーリングミキサーで撹拌しながら50℃まで冷却して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0042】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を二軸押出機(カワタ社製)に供給して、170℃で溶融混錬して押出成形し、厚さ60μmの塩化ビニル系樹脂フィルムを得た。
【0043】
積層シートの製造
塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製、重合度800)100重量部、耐衝撃改良剤であるMBS樹脂(カネカ社製)10重量部、滑剤(アデカ社製)3重量部、安定剤(日東化成社製)3重量部、加工助剤(三菱ケミカル社製)3重量部及び顔料(大日精化社製)3重量部をフェンシェルミキサーに供給し、120℃で5分間撹拌し、次にクーリングミキサーで撹拌しながら50℃まで冷却して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
【0044】
得られた塩化ビニル系樹脂組成物を二軸押出機(カワタ社製)に供給して、170℃で溶融混錬して押出成形し、厚さ3mmの塩化ビニル系樹脂プレートを得た。押出成形直後であって、得られた塩化ビニル系樹脂プレ-トが軟化されている状態で、得られた塩化ビニル系樹脂プレ-トの一面に上記塩化ビニル系樹脂フィルムを積層し、三本ロールに供給して押圧することにより、塩化ビニル系樹脂プレ-トと塩化ビニル系樹脂フィルムが一体化された厚さ3mmの積層シートを得た。
【0045】
異形成形体の製造
得られた積層シートを真空成型機(布施真空社製)に供給し、380℃に加熱された遠赤外線ヒータで積層シートの両面を約130秒間加熱し、積層シートが軟化しているのを確認して、積層シートと金型の間の空間を減圧し真空成型して、異形成形体を得た。得られた異形成形体は全く黄変していなかった。
【0046】
抗ウイルス性試験
得られた異形成形体を切り出して、5cm×5cmの正方形の板状体を試験サンプルとした。
試験ウイルスは、インフルエンザ Aウイルス A/Hong Kong /8/68/(H3N2)株を使用した。
【0047】
上記試験サンプルと試験ウイルスを使用し、ISO 21702 に準拠して抗ウイルス性試験したところ、抗ウイルス活性値(Log(Vb)―Log(Vc))は4.2であり、抗ウイルス効果が高いことが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の抗ウィルス性異形成形体の製造方法は上記の通りであり、得られた異形成形体は抗ウイルスが高く、黄変することもない。従って、電車、自動車等の乗り物や病院のような清潔性が要求される場所の内装材や部品として好適に使用される。