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特開2022-109758光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法
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  • 特開-光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法 図1
  • 特開-光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法 図2A
  • 特開-光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法 図2B
  • 特開-光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法 図2C
  • 特開-光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法 図3A
  • 特開-光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109758
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20220721BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005254
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信敏
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA02
2H036LA03
2H036LA08
2H036MA02
2H036NA05
(57)【要約】
【課題】光ファイバの位置決め固定に際して光ファイバを溝に容易に挿入することができる光ファイバの固定装置を提供する。
【解決手段】光ファイバの固定装置1は、光ファイバFが配置される溝21を有する載置台2と、載置台2に対して移動可能であり、溝21を覆うことが可能な上蓋3と、上蓋3の下面31に設けられた弾性体4と、を備える。溝21は、光ファイバFを溝21に配置したときに光ファイバFが溝21から突出しないように形成されている。上蓋3が溝21を覆う位置に配されたときに、弾性体4が載置台2に押し付けられ、弾性体4の一部が弾性変形して溝21の内側に進入することで、溝21に配置された光ファイバFに接触する。
【選択図】図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが配置される溝を有する載置台と、
前記載置台に対して移動可能であり、前記溝を覆うことが可能な上蓋と、
前記上蓋の下面に設けられた弾性体と、を備え、
前記溝は、前記光ファイバを前記溝に配置したときに前記光ファイバが前記溝から突出しないように形成され、
前記上蓋が前記溝を覆う位置に配されたときに、前記弾性体が前記載置台に押し付けられ、前記弾性体の一部が弾性変形して前記溝の内側に進入することで、前記溝に配置された前記光ファイバに接触するように構成されている、光ファイバの固定装置。
【請求項2】
前記溝は、前記溝の長手方向に直交する断面においてV字状に形成されている請求項1に記載の光ファイバの固定装置。
【請求項3】
前記上蓋が前記溝を覆う位置に配されたときに、前記上蓋と前記載置台とが対向する方向を上下方向とし、前記溝の長手方向および前記上下方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記載置台は、前記直交方向において前記溝を挟む2つの平坦面を有している、請求項1又は2に記載の光ファイバの固定装置。
【請求項4】
前記上蓋は、支持部と、前記上蓋の下面を含み、前記支持部に対して揺動可能に取り付けられた揺動部と、を有する請求項3に記載の光ファイバの固定装置。
【請求項5】
前記載置台は、前記溝を含む複数の溝を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の光ファイバの固定装置。
【請求項6】
光ファイバを載置台の溝に配置する配置工程と、
前記配置工程後に、弾性体を前記載置台に押し付け、前記弾性体の一部を弾性変形させることにより前記溝の内側に進入させて前記光ファイバに接触させる固定工程と、を備える光ファイバの固定方法。
【請求項7】
前記弾性体が前記溝を覆う位置に配されたときに、前記弾性体と前記載置台とが対向する方向を上下方向とし、前記溝の長手方向および前記上下方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、
前記載置台は、前記直交方向において前記溝を挟む2つの平坦面を有し、
前記配置工程と前記固定工程との間で、前記弾性体を前記2つの平坦面に接触させて前記弾性体によって前記溝の開口を閉塞する閉塞工程を行う、請求項6に記載の光ファイバの固定方法。
【請求項8】
前記閉塞工程の後に、前記光ファイバを前記溝の長手方向に動かす位置調整工程を行う、請求項7に記載の光ファイバの固定方法。
【請求項9】
前記配置工程と前記固定工程との間で、前記弾性体を前記載置台に接触させて前記弾性体によって前記溝の開口を閉塞する閉塞工程を行い、
前記閉塞工程の後に、前記弾性体を第1の力で前記載置台に押し付ける仮固定工程を行い、
前記仮固定工程後に、前記光ファイバを前記溝の長手方向に動かす位置調整工程を行い、
前記位置調整工程後に、前記弾性体を前記第1の力よりも大きな第2の力で前記載置台に押し付ける前記固定工程を行う、請求項6から8のいずれか1項に記載の光ファイバの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの固定装置及び光ファイバの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバを位置決め固定するために、光ファイバを基台に形成された位置決め用の溝(V溝)に挿入し、押さえ部によって光ファイバを溝の内面に押し付ける手法が開示されている。特許文献1においては、光ファイバが溝の内面に接触した状態で光ファイバの一部が溝の外側に突出するように、溝が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-144327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では光ファイバの細径化が進んでいる。特許文献1のように、溝に挿入された光ファイバの一部を溝の外側に突出させるためには、光ファイバの細径化に伴って、溝の幅寸法及び深さ寸法を小さくする必要がある。しかしながら、溝の幅寸法及び深さ寸法を小さくすると、光ファイバを溝に挿入しにくく作業性が低下する、という課題が生じる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、光ファイバの位置決め固定に際して、光ファイバを位置決め用の溝に容易に挿入できる光ファイバの固定装置または光ファイバの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光ファイバの固定装置は、光ファイバが配置される溝を有する載置台と、前記載置台に対して移動可能であり、前記溝を覆うことが可能な上蓋と、前記上蓋の下面に設けられた弾性体と、を備え、前記溝は、前記光ファイバを前記溝に配置したときに前記光ファイバが前記溝から突出しないように形成され、前記上蓋が前記溝を覆う位置に配されたときに、前記弾性体が前記載置台に押し付けられ、前記弾性体の一部が弾性変形して前記溝の内側に進入することで、前記溝に配置された前記光ファイバに接触するように構成されている。
【0007】
本発明の一態様に係る光ファイバの固定方法は、光ファイバを載置台の溝に配置する配置工程と、前記配置工程後に、弾性体を前記載置台に押し付け、前記弾性体の一部を弾性変形させることにより前記溝の内側に進入させて前記光ファイバに接触させる固定工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、光ファイバの位置決め固定に際して光ファイバを溝に容易に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る光ファイバの固定装置を示す上面図である。
図2A図1のII-II断面矢視図であり、配置工程後の状態を示している。
図2B図1のII-II断面矢視図であり、閉塞工程後の状態を示している。
図2C図1のII-II断面矢視図であり、固定工程後の状態を示している。
図3A】本発明の第二実施形態に係る光ファイバの固定装置を示す断面図であり、閉塞工程後の状態を示している。
図3B図3Aの固定装置における固定工程後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
以下、第一実施形態に係る光ファイバの固定装置および光ファイバの固定方法について、図面を参照して説明する。
図1及び図2Aに示すように、本実施形態に係る光ファイバの固定装置(以下、単に固定装置1と呼ぶ。)は、2本の光ファイバF(第1の光ファイバF1および第2の光ファイバF2)を位置決め固定する装置である。固定装置1は、載置台2と、上蓋3と、弾性体4と、を備える。なお、固定装置1は、1本の光ファイバF(第1の光ファイバF1および第2の光ファイバF2のいずれか一方)のみを固定するように構成されてもよい。
【0011】
載置台2は、各光ファイバF1、F2が配置される単一の溝21を有する。溝21は、載置台2の上面22から窪むように形成されている。すなわち、溝21は載置台2の上面22に開口している。上面22は、例えば湾曲する面であったり、凹凸を有する面であったりしてよい。本実施形態において、載置台2の上面22は平坦に形成されている。溝21は、直線状に延びている。上蓋3は、溝21を覆う位置(以下、閉塞位置という)と、溝21を開放する位置(以下、開放位置という)と、の間で、載置台2に対して移動可能となっている。図2Aは上蓋3が開放位置にある場合を示す。図2B図2Cは上蓋3が閉塞位置にある場合を示す。
【0012】
(方向定義)
本実施形態では、溝21が延びる方向を長手方向Xと呼ぶ。上蓋3が閉塞位置にあるときに、上蓋3と載置台2とが対向する方向を上下方向Zと呼ぶ。長手方向Xおよび上下方向Zの双方に直交する方向を直交方向Yと呼ぶ。上下方向Zのうち、上蓋3側(+Z側)を上方と呼び、その反対側(-Z側)を下方と呼ぶ。
【0013】
溝21は、長手方向Xにおける載置台2の全長にわたって延びている。溝21は、長手方向Xにおける載置台2の両端に開口している。溝21には、2本の光ファイバFを長手方向Xに並べて配置することができる。溝21は、図2Aに示すように、光ファイバFが溝21の内面に接触するように配置されたときに光ファイバFが溝21から突出しないように形成されている。すなわち、上下方向Zにおける溝21の寸法(深さ寸法)は、光ファイバFの直径より大きい。また、直交方向Yにおける溝21の寸法(幅寸法)は、光ファイバFの直径より大きい。
【0014】
溝21は、長手方向Xに直交する断面においてV字状に形成されている。すなわち、溝21の幅寸法は、下方に向かうにしたがって小さくなっている。
前述したように、溝21は載置台2の平坦な上面22に開口している。したがって、載置台2の上面22は、直交方向Yにおいて溝21を挟む2つの平坦面23A,23Bを含む。平坦面23A、23Bは直交方向Yに平行であることが好ましいが、平行でなくてもよい。平坦面23A、23Bは同一の平面上に位置してもよい。また、平坦面23A、23Bは、断面視(図2A)において、溝21の中心線を基準として対称であってもよい。
【0015】
弾性体4は、上蓋3の下面31に設けられている。上蓋3が閉塞位置に配された状態では、上蓋3と載置台2とが上下方向Zにおいて対向する。上蓋3の下面31は、少なくとも上蓋3が閉塞位置に配された状態で、載置台2の上面22に対向する面である。
【0016】
図1及び図2Aに示すように、本実施形態の上蓋3は、2つの支持部32と、揺動部33と、を有する。図1に示すように、2つの支持部32は、長手方向Xにおいて互いに離れて配置されている。この2つの支持部32が揺動部33を支持することで、揺動部33が安定して支持され、長手方向Xにおいてより均等に弾性体4を上面22に押し当てることができる。
【0017】
各支持部32は、載置台2に対して移動可能に取り付けられている。具体的に、支持部32は棒状に形成されている。支持部32の第1端部32Aは、第1回転軸34を介して載置台2に接続されている。第1回転軸34は、載置台2の上方に位置し、載置台2に固定されている。これにより、支持部32は、第1回転軸34を中心として載置台2に対して回転可能である。支持部32が載置台2に対して回転すると、支持部32の第2端部32Bは、載置台2の上面22に対して離れたり近づいたりする。
【0018】
揺動部33は上蓋3の下面31を含んでいる。揺動部33は、支持部32に対して揺動可能に取り付けられている。具体的に、支持部32の第2端部32Bには第2回転軸35が固定されている。第2回転軸35を介して、揺動部33が支持部32に接続されている。これにより、揺動部33は、第2回転軸35を中心として支持部32に対して揺動可能である。さらに、先述の通り、弾性体4は下面31に設けられている。したがって、弾性体4も揺動部33とともに揺動する。
【0019】
弾性体4は、弾性変形可能な材料(例えば、スチレン系エラストマー架橋発泡体)によって形成されている。図2A図2B及び図2Cに示すように、弾性体4は、上蓋3の下面31に固定されているため、上蓋3とともに閉塞位置と開放位置との間で移動可能となっている。弾性体4は、図2B及び図2Cに示すように上蓋3及び弾性体4が閉塞位置に配されたときに、載置台2の上面22に接触し、溝21の開口を閉塞する。図2Cに示すように、弾性体4が載置台2の上面22に押し付けられることで、弾性体4の一部が弾性変形して溝21の内側に進入する。また、溝21の内側に進入した弾性体4の一部は、溝21に配置された光ファイバFに接触する。弾性体4は、上蓋3及び弾性体4が閉塞位置に配された状態で溝21及び載置台2の上面22に接する対向面41を有する。本実施形態において、弾性体4の対向面41は、対向面41に外力が作用していない状態で平坦に形成されている。ただし、対向面41は必ずしも平坦でなくてもよい。対向面41の形状としては、後述の固定工程において光ファイバFに接触することができれば、任意の形状を採用できる。
【0020】
図1に示すように、上記した上蓋3及び弾性体4は、長手方向Xに2つ並べて配置されている。2つの上蓋3(第1の上蓋3A、第2の上蓋3B)及び2つの弾性体4(第1の弾性体4A、第2の弾性体4B)は、それぞれ長手方向Xにおいて溝21に並べて配置された2本の光ファイバFを個別に対応している。すなわち、第1の上蓋3A及び第1の弾性体4Aが第1の光ファイバF1に対応し、第2の上蓋3B及び第2の弾性体4Bが第2の光ファイバF2に対応している。
【0021】
次に、第一実施形態に係る光ファイバの固定方法(以下、単に固定方法と呼ぶ。)について説明する。ここでは、上記した固定装置1を用いて、1本の光ファイバFを固定する方法について説明する。
【0022】
本実施形態の固定方法では、はじめに図2Aに示すように、光ファイバFを載置台2の溝21の内側に配置する配置工程を行う。配置工程においては、上蓋3及び弾性体4を開放位置に配しておく。配置工程後において、光ファイバFは、例えば図2Aに示すように、溝21の内面に接触して溝21の外側に突出しないように配置されてよい。また、例えば光ファイバFの曲がり癖などに起因して、配置工程後における光ファイバFの一部が溝21の内面に接触しなかったり、溝21の外側に突出してもよい。
【0023】
配置工程後に、図2Bに示すように、上蓋3及び弾性体4を閉塞位置に移動させて、弾性体4によって溝21の開口を閉塞する閉塞工程を行う。閉塞工程では、弾性体4の対向面41を、溝21の両側に位置する載置台2の2つの平坦面23A,23Bに接触させる。ここで、揺動部33及び弾性体4は支持部32に対して揺動可能となっているため、弾性体4を確実に2つの平坦面23A,23Bに接触させることができる。
閉塞工程の後、弾性体4を比較的小さい第1の力で載置台2に押し付ける、仮固定工程を行ってもよい。第1の力は、弾性体4を載置台2の上面22に押し付けても、光ファイバFが弾性体4によって溝21の内面に押し付けられない程度の大きさの力である。なお、閉塞工程において弾性体4が載置台2を押す力が、第1の力であってもよい。つまり、閉塞工程が仮固定工程を兼ねてもよい。
【0024】
閉塞工程後または仮固定工程後に、光ファイバFを長手方向Xに動かす位置調整工程を行ってもよい。本実施形態の閉塞工程(固定工程の前)では、前述したように光ファイバFが弾性体4によって溝21の内面に押し付けられないため、光ファイバFが溝21の内側に位置した状態で、光ファイバFを長手方向Xに動かすことができる。位置調整工程を行うことで、光ファイバFが溝21の内側に位置する状態で、長手方向Xにおける光ファイバFの位置を所望の位置に移動させることができる。位置調整工程を行う際、弾性体4が光ファイバFに接していなくてもよいし、接していてもよい。
【0025】
位置調整工程後に、図2Cに示すように、弾性体4を載置台2に押し付け、弾性体4の一部を弾性変形させることにより溝21の内側に進入させて光ファイバFに接触させる固定工程を行う。固定工程では、弾性体4を第1の力よりも大きな第2の力で載置台2に押し付ける。第2の力は、第1の力よりも大きい。具体的に、第2の力の大きさは、載置台2に押し付けられた弾性体4の一部が弾性変形して溝21の内側に進入し、光ファイバFに押し付けられる程度である。固定工程では、溝21に配置された光ファイバFが、溝21の内側に進入した弾性体4の一部によって、溝21の内面に押し付けられる。これにより、溝21に配置された光ファイバFが位置決め固定される。固定工程後の状態では、長手方向X、直交方向Y、および上下方向Zにおける光ファイバFの移動が規制される。
上記の固定工程が終了することで、本実施形態の固定方法が完了する。
【0026】
本実施形態の固定装置1では、2本の光ファイバFをそれぞれの外周面を基準として位置決め固定し、互いに調心された状態で、2本の光ファイバFを突き合せるように接続することができる。以下、2本の光ファイバFを接続する方法の一例について説明する。
【0027】
2本の光ファイバFを接続するためには、はじめに、第1の光ファイバF1に対して配置工程、閉塞工程及び固定工程を順番に行う。なお、閉塞工程と固定工程との間に、第1の光ファイバF1に対して位置調整工程を行ってもよい。第1の光ファイバF1に対して固定工程を行った状態では、第1の光ファイバF1が固定装置1(載置台2)に対して位置決め固定される。
【0028】
第1の光ファイバF1に対する固定工程の後に、第2の光ファイバF2に対して配置工程、閉塞工程、位置調整工程及び固定工程を順番に行う。なお、第2の光ファイバF2に対する配置工程及び閉塞工程は、例えば第1の光ファイバF1に対する固定工程よりも前に実施されてもよい。第1の光ファイバF1に対する固定工程の後に、第2の光ファイバF2に対する位置調整工程を行うことで、図1に示すように、第2の光ファイバF2を第1の光ファイバF1に突き合わせることができる。図1における符号CPは、第1、第2の光ファイバF1,F2を突き合わせた部位(以下、当接点CPという)を示している。
その後、第2の光ファイバF2に対する固定工程を行うことで、第1、第2の光ファイバF1,F2が互いに突き合わされた状態で固定される。当接点CPの近傍を加熱することで、第1、第2の光ファイバF1、F2を融着接続してもよい。
【0029】
なお、2本の光ファイバFを接続する方法では、例えば、第1、第2の光ファイバF1,F2に対して配置工程及び閉塞工程を順番に行った後に、第1、第2の光ファイバF1,F2に対して位置調整工程を行い、その後、第1、第2の光ファイバF1,F2に対して固定工程を行ってもよい。この場合でも、第1、第2の光ファイバF1,F2が互いに突き合わされた状態で固定することができる。
【0030】
上記の通り、本実施形態の固定装置1若しくは固定方法は、2本の光ファイバFを融着接続する際に用いることができる。また、本実施形態の固定装置1若しくは固定方法を、融着接続以外の用途に用いてもよい。例えば、融着接続を行わずに光ファイバF1、F2を対向して配置させ、第1の光ファイバF1から第2の光ファイバF2に向けて光を出射させることで、2本の光ファイバFの接続性能を測定してもよい。この場合、固定装置1は、光ファイバFの測定装置の一部となる。あるいは、1本の光ファイバF(第1の光ファイバF1または第2の光ファイバF2)のみを固定し、その光ファイバFから出射された光を光検出器によって検出することで、その光ファイバFの性能を測定してもよい。
【0031】
本実施形態の固定装置1若しくは固定方法が、測定装置または融着接続機など(以下、「各種装置」という)に適用される場合、弾性体4は、使用環境に応じた耐性を有することが好ましい。例えば、測定装置において、2本の光ファイバF同士を突き合せる際に、当接点CPに生じる隙間を埋めるためにマッチングオイルが用いられる場合がある。マッチングオイルとは、上記隙間に充填されることで、当接点CPにおける屈折率の変化を緩和するための液体である。弾性体4がスチレン系エラストマー架橋発泡体によって形成されている場合、このようなマッチングオイルに対する耐性を弾性体4に付与することができる。また、固定装置1が融着接続機に用いられる場合には、弾性体4には耐熱性が求められる。耐熱性を有する弾性体4としては、例えばポリイミド発泡体を採用できる。なお、弾性体4の具体的な材質は、スチレン系エラストマー架橋発泡体あるいはポリイミド発泡体に限定されず、固定装置1の用途等に応じて適宜選択可能である。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の固定装置1は、光ファイバFが配置される溝21を有する載置台2と、載置台2に対して移動可能であり、溝21を覆うことが可能な上蓋3と、上蓋3の下面31に設けられた弾性体4と、を備え、溝21は、光ファイバFを溝21に配置したときに光ファイバFが溝21から突出しないように形成され、上蓋3が溝21を覆う位置(閉塞位置)に配されたときに、弾性体4が載置台2に押し付けられ、弾性体4の一部が弾性変形して溝21の内側に進入することで、溝21に配置された光ファイバFに接触するように構成されている。
【0033】
また、本実施形態の光ファイバFの固定方法は、光ファイバFを載置台2の溝21に配置する配置工程と、配置工程後に、弾性体4を前記載置台2に押し付け、弾性体4の一部を弾性変形させることにより溝21の内側に進入させて光ファイバFに接触させる固定工程と、を備える。
【0034】
このような固定装置1若しくは固定方法によれば、溝21の内側に進入する弾性体4の一部によって光ファイバFを溝21の内面に押し付けることで、光ファイバFを位置決め固定することができる。これにより、従来のように光ファイバを溝から突出させる場合と比較して、溝の幅寸法および深さ寸法を大きくすることができる。したがって、従来の構成よりも光ファイバを溝に容易に配置することができる。
【0035】
また、本実施形態の溝21は、長手方向Xに直交する断面においてV字状に形成されている。このため、溝21が有する2つの内面に光ファイバFを当接させることで、溝21に配置された光ファイバFをより確実に位置決めすることができる。
【0036】
また、本実施形態の載置台2は、直交方向Yにおいて溝21を挟む2つの平坦面23A,23Bを有する。閉塞工程において弾性体4を2つの平坦面23A,23Bに接触させ、弾性体4の姿勢を整えたうえで、固定工程において弾性体4を押し込むことで、溝21の内側に弾性体4の一部をより安定して進入させることができる。
【0037】
また、本実施形態の上蓋3は、支持部32と、支持部32に対して揺動可能に取り付けられた揺動部33と、を有し、揺動部33が上蓋3の下面31を含んでいる。この構成により、閉塞工程において弾性体4を確実に2つの平坦面23A,23Bに接触させてから、固定工程において弾性体4の一部を溝21の内側に向けて弾性変形させることができる。
【0038】
また、配置工程と固定工程との間で、弾性体4を載置台2に接触させて弾性体4によって溝21の開口を閉塞する閉塞工程を行い、閉塞工程後に、光ファイバFを長手方向Xに動かす位置調整工程を行ってもよい。
また、閉塞工程の後に、弾性体4を第1の力で載置台2に押し付ける仮固定工程を行い、仮固定工程後に、位置調整工程を行い、位置調整工程後に、弾性体4を第1の力よりも大きな第2の力で載置台2に押し付ける固定工程を行ってもよい。このような固定方法を採用した場合、光ファイバFが溝21の内側に位置する状態で、光ファイバFを長手方向Xにおける任意の位置に移動させることができる。すなわち、固定工程を行う前に、長手方向Xにおける光ファイバFの位置を調整することができる。
【0039】
なお、本実施形態の固定装置1は、光ファイバF1を固定するための上蓋3Aおよび弾性体4Aと、光ファイバF2を固定するための上蓋3Bおよび弾性体4Bと、を備えていた。しかしながら、載置台2の溝21に配置された2本の光ファイバFが、同一の上蓋3及び同一の弾性体4によって位置決め固定されてもよい。あるいは、同一の上蓋3の下面
31に、光ファイバF1を固定するための弾性体4Aと、光ファイバF2を固定するための弾性体4Bと、が設けられてもよい。つまり、固定装置1が備える上蓋3の数および弾性体4の数は、それぞれ1つであってもよいし2つであってもよい。あるいは、固定装置1が2つの載置台2を有し、2つの載置台2の各溝21が調心されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態の溝21の断面形状はV字形であったが、溝21の断面形状は適宜変更可能である。例えば溝21の断面形状は、底部が平坦である台形であってもよい。あるいは、溝21の断面形状はU字状などであってもよい。
【0041】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、第1実施形態と基本的な構成は同様である。このため、同様の構成には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0042】
図3Aに、本実施形態に係る固定装置1Dを示す。固定装置1Dは、載置台2D、上蓋3、および弾性体4を備える。載置台2Dは、溝21の数が複数である点を除き、第1実施形態の載置台2と同様である。複数の溝21は、直交方向Yに並べて配置されている。直交方向Yにおいて複数の溝21を間に挟むように、2つの平坦面23A、23Bが設けられている。図3Aでは、隣り合う溝21同士の間に、平坦面が設けられていない。ただし、溝21同士の間に平坦面が設けられていてもよい。
【0043】
本実施形態の固定装置1Dでは、第一実施形態と同様の固定方法によって、複数の光ファイバFを位置決め固定することができる。例えば、閉塞工程では、図3Aに示すように弾性体4によって複数の溝21が閉塞される。固定工程では、図3Bに示すように弾性体4が載置台2Dに押し付けられることで、弾性体4の一部が弾性変形して複数の溝21の内側にそれぞれ進入する。このため、複数の溝21に個別に配置された複数の光ファイバFは、溝21の内側に進入した弾性体4の一部によって、それぞれ溝21の内面に押し付けられて位置決め固定される。
【0044】
本実施形態によれば、複数の溝21に複数の光ファイバFを個別に配置することで、複数の光ファイバF(例えばテープ心線)を一括して位置決め固定することができる。
【0045】
図3A図3Bでは、全ての溝21がV字状に形成されているが、複数の溝21は互いに異なる断面形状を有してもよい。
【0046】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0047】
例えば、固定装置1、1Dでは、揺動部33が第2回転軸35を介して支持部32に取り付けられていた。しかしながら、例えばボールジョイント等を介して、揺動部33が支持部32に取り付けられてもよい。この場合、揺動部33はボールジョイントの球体部分を中心に支持部32に対して揺動可能となる。
【0048】
また、固定装置1、1Dでは、支持部32が第1回転軸34回りに回転可能となっていた。しかしながら、例えば支持部32が載置台2に対して上下方向Zにスライド移動可能であってもよい。
【0049】
また、本実施形態の光ファイバの固定方法では、配置工程と閉塞工程と固定工程とを順番に行い、位置調整工程を行わなくてもよい。
また、固定工程の後に位置調整工程を行ってもよい。この場合、第2の力(固定工程において弾性体4を押し付ける力)の大きさは、上下方向Zおよび直交方向Yにおける位置を固定しながら光ファイバFを長手方向Xに移動可能な程度に設定される。
【符号の説明】
【0050】
1,1D…固定装置 2,2D…載置台 3…上蓋 4…弾性体 21…溝 23A,23B…平坦面 31…下面 32…支持部 33…揺動部 F…光ファイバ X…長手方向 Y…直交方向 Z…上下方向
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B