(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022109833
(43)【公開日】2022-07-28
(54)【発明の名称】補助装置及び車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/14 20060101AFI20220721BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20220721BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61G5/14 711
A61G5/12 701
A61H1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021005392
(22)【出願日】2021-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】大畑 智則
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健一
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA28
4C046AA42
4C046BB07
4C046CC04
4C046DD02
4C046DD26
4C046DD34
4C046DD45
4C046EE03
4C046FF11
(57)【要約】
【課題】被補助者が着座状態から立ち上がり状態に移行する過程における被補助者の立ち上がり意図を的確に把握し、これを反映させた被補助者の適切な立ち上がり支援を行うことが可能な補助装置及び車椅子を提供すること。
【解決手段】補助装置1は、被補助者が着座可能な着席部100と、着席部100に設けられ、被補助者の着座状態を取得する状態取得部110と、状態取得部110で取得した前記着座状態に基づいて、前記被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定する推定部120と、を有している。また、補助装置1は、着席部100を昇降させる昇降駆動部60と、昇降駆動部60を制御可能な制御部30とを有している。制御部30は、前記遷移状態に基づき、昇降駆動部60を制御して、着席部100を昇降させることができる。これらにより、補助装置1は、被補助者の立ち上がりを支援する。また、補助装置1は、車椅子1に搭載することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被補助者の立ち上がりを支援する補助装置であって、
前記被補助者が着座可能な着席部と、
前記着席部に設けられ、前記被補助者の着座状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部で取得した前記着座状態に基づいて、前記被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定する推定部と、
前記着席部を昇降させる昇降駆動部と、
前記昇降駆動部を制御可能な制御部と、を有し、
前記推定部は、前記被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を段階的に推定可能であり、
前記制御部は、前記遷移状態の各段階に基づき、前記昇降駆動部を段階的に制御して、前記着席部を昇降させること、を特徴とする補助装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記遷移状態の段階毎に設定された所定の時間を経過した場合において、前記昇降駆動部を制御して前記着席部の昇降を停止又は下降させること、を特徴とする請求項1に記載の補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助装置及び車椅子に関する。さらに詳しくは、要介護者等の立ち上がりを支援する補助装置及び当該補助装置を有する車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子に着座した被補助者の立ち上がりを支援する補助システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明に係る補助システムは、補助椅子の着座部に着座した被補助者の膝関節の角度を膝角度センサで検出し、検出された膝角度に基づいて、補助椅子の着座部における座面を押し上げ制御している。また、特許文献1の発明に係る補助システムは、座面荷重センサ、肘掛け荷重センサ、及び足置き荷重センサの少なく とも1つの荷重センサを備えており、前記荷重センサにより検出される荷重の増減に基づいて被補助者が立ち上がろうとしているか否かを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述するような被補助者の着座部からの立ち上がりを支援するには、被補助者が着座状態から立ち上がり状態に移行する過程において、被補助者の立ち上がりの意図をより的確に把握する必要がある。また、被補助者の立ち上がりの意図を反映させた被補助者の適切な立ち上がりの支援を行う必要がある。しかしながら、上述した特許文献1の発明に係る補助システムは、被補助者の着座状態から立ち上がり状態に移行する過程毎の意図を的確に判断するものではない。また、特許文献1の発明に係る補助システムは、被補助者の立ち上がりの意図を判定し、被補助者の立ち上がりの前段階(これから立ち上がろうとする段階)までを補助するものであり、被補助者の立ち上がりが完了するまでの全体的な立ち上がり動作を補助するものとはなっていない。また、特許文献1の発明に係る補助システムは、補助椅子として提供されるものであり、移動可能な車椅子に適用されるものではない。
【0005】
そこで、本発明は、被補助者が着座状態から立ち上がり状態に移行する過程における被補助者の立ち上がり意図を的確に把握し、これを反映させた被補助者の適切な立ち上がり支援を行うことが可能な補助装置及び車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の補助装置は、被補助者の立ち上がりを支援する補助装置であって、前記被補助者が着座可能な着席部と、前記着席部に設けられ、前記被補助者の着座状態を取得する状態取得部と、前記状態取得部で取得した前記着座状態に基づいて、前記被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定する推定部と、前記着席部を昇降させる昇降駆動部と、前記昇降駆動部を制御可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記遷移状態に基づき、前記昇降駆動部を制御して、前記着席部を昇降させること、を特徴とするものである。
【0007】
上述した本発明の補助装置は、状態取得部で取得した被補助者の着座状態に基づいて、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定することができる。そのため、被補助者の立ち上がり動作における姿勢変化を遷移状態に応じて精度良く推定することができる。また、本発明の補助装置は、推定部により推定した遷移状態に基づいて、着席部の昇降動作を制御することができる。これにより、被補助者の立ち上がり意図を精度良く反映させた適切な立ち上がり支援を行うことができる。
【0008】
(2)上述した本発明の補助装置は、前記推定部が、前記被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を段階的に推定可能であり、前記制御部は、前記遷移状態の各段階に基づき、前記昇降駆動部を段階的に制御して、前記着席部を昇降させると良い。
【0009】
かかる構成によれば、段階毎の各遷移状態に適した着席部の昇降制御を行うことができる。これにより、被補助者の立ち上がり支援の制御を迅速に行うことができるので、被補助者の立ち上がり意図をより精度良く反映させた立ち上がり支援の制御を行うことができる。
【0010】
ここで、被補助者が着座状態から立ち上がり状態に移行する際に、被補助者が途中で立ち上がり動作を止めたり、途中で立ち上がり動作の時間がかかり過ぎたりすることが考えられる。かかる場合は、着席部の昇降を停止又は下降させることが望ましいと考えられる。
【0011】
(3)かかる知見に基づき、本発明の補助装置は、前記制御部が、前記遷移状態の段階毎に設定された所定の時間を経過した場合において、前記昇降駆動部を制御して前記着席部の昇降を停止又は下降させると良い。
【0012】
かかる構成によれば、被補助者が意図しない立ち上がり支援動作が行われることを抑制することができる。これにより、被補助者が姿勢を崩すことを抑制できる。
【0013】
ここで、被補助者が着座状態から立ち上がり状態に移行する際には、着席部が被補助者から受ける圧力(荷重)の変化は、着席部に対して前後方向の列毎に順次変化していくものと考えられる。
【0014】
(4)かかる知見に基づき、本発明の補助装置は、前記状態取得部が、前記着席部の少なくとも幅方向に沿って複数設けられており、前記推定部は、複数の前記状態取得部のうち、幅方向に沿って設けられた前記状態取得部のそれぞれの取得値を演算処理することにより、前記遷移状態を推定すると良い。
【0015】
上述した補助装置は、着席部の幅方向に沿って設けられた複数の状態取得部のそれぞれの取得値を取得でき、前記取得値を演算処理することができる。ここで、演算処理は、幅方向に沿って得られたそれぞれの取得値を列方向に加算処理するものとすれば良い。これにより、着席部が被補助者から受ける圧力(荷重)の変化を着席部の幅方向に沿って強調して取得することができる。これにより、被補助者の立ち上がり動作における微弱な姿勢変化を適切に把握することができる。また、これを反映させた精度の良い立ち上がり支援動作の提供が可能な補助装置を提供することができる。ここで、状態取得部は、例えば圧力センサや、荷重センサなどの各種のセンサを用いれば良い。また、状態取得部は、着席部の幅方向に沿って列を形成するように設けられ、前記状態取得部の列が、着席部の奥行方向(前後方向)に、複数列形成されていると良い。
【0016】
(5)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車椅子は、上述した補助装置を有すること、を特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、上述した補助装置が搭載された車椅子を提供することができる。そのため、被補助者の立ち上がり支援を移動体である車椅子においても利用することができる。
【0018】
(6)上述した本発明の車椅子は、フットレストと、前記フットレストの収納を検知する収納検知部と、を有し、前記制御部は、前記収納検知部が、前記フットレストの収納を検知した場合に、前記被補助者の立ち上がり動作の開始意図があると判断すると共に前記昇降駆動部の制御を開始すると良い。
【0019】
かかる構成によれば、車椅子が移動動作を行っている際に立ち上がり支援が行われることを抑制することができる。これにより、被補助者が意図しない立ち上がり支援を抑制でき、被補助者が姿勢を崩すことを抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被補助者が着座状態から立ち上がり状態に移行する過程における被補助者の立ち上がり意図を的確に把握し、これを反映させた被補助者の適切な立ち上がり支援を行うことが可能な補助装置及び車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る補助装置を採用した車椅子の斜視図である。
【
図4】本発明の補助装置を構成する状態取得部の構成図である。
【
図5】本発明の補助装置を構成する状態取得部での取得値の演算例を示す説明図である。
【
図6】(a1)は、MODE=0における着座パターン1の状態取得部の検知状態を示す説明図であり、(a2)は、MODE=0における被補助者の着座状態を示す説明図である。(b1)は、MODE=1における着座パターン1の状態取得部の検知状態を示す説明図であり、(b2)は、MODE=1における被補助者の着座状態(2パターン)を示す説明図である。
【
図7】(c1)は、MODE=2における着座パターン2の状態取得部の検知状態を示す説明図であり、(c2)は、MODE=2における被補助者の着座状態を示す説明図である。(d1)は、MODE=3における着座パターン3の状態取得部の検知状態を示す説明図であり、(d2)は、MODE=3における被補助者の着座状態を示す説明図である。
【
図8】(e1)は、MODE=4における着座パターン4の状態取得部の検知状態を示す説明図であり、(e2)は、MODE=4における被補助者の着座状態を示す説明図である。(f1)は、MODE=5における着座パターン5の状態取得部の検知状態を示す説明図であり、(f2)は、MODE=5における被補助者の着座状態を示す説明図である。
【
図9】
図6~
図8における判定状態の基準を示す説明図である。
【
図10】本発明の補助装置における遷移パターンの一例(MODE=3~4)についての説明図である。
【
図11】本発明の補助装置の動作の一例を示すフロー図(メインルーチン)である。
【
図14】本発明の補助装置を構成する状態取得部における着座パターンの判別(サブルーチン)についてのフロー図である。
【
図16】本発明の補助装置におけるカウンターチェックについてのフロー図(サブルーチン)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る補助装置1の一実施形態について、
図1~
図9を参照しつつ以下に詳細を説明する。本実施形態では、補助装置1が、電動車椅子1(車椅子1とも称する)に組み込まれている場合を例として説明する。
【0023】
≪車椅子1の構成について≫
図1及び
図2に示すように、車椅子1は、車椅子1の本体となる車体2を有している。車体2は、後方側に立設された後方支持部材2aと、車体後方側に回転可能に支持された駆動輪としての一対の車輪3L,3R(駆動輪3L,3Rとも称する)と、車体前方側に回転可能に支持された従動輪としての一対の全方向車輪4,4等が設けられている。なお、
図1において車輪3Rは、車体2に隠れているため図示していない。
【0024】
車体2は、要介護者等の被補助者が着座して搭乗が可能な着席部100と、着席部100に設けられた状態取得部110と、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定する推定部120等を備えている。また、車体2は、例えば、介護者等(操作者とも称する)に操作される一対の操作部10L,10Rと、前記操作者による操作力を検出する操作量取得部20と、着席部100の前端側下方に設けられ、車体2の前端側に設けられた固定軸(図示せず)を中心に回転可能なフットレスト70等が設けられている。
【0025】
また、車体2は、上述した構成に加えて、車輪駆動部40L,40Rと、車輪回転数検知部50と、着席部100を昇降させる昇降駆動部60と、昇降駆動部60や車椅子1の各種の制御を行う制御部30等を備えている。なお、
図1及び
図2において、車輪駆動部40Rは、図示していない。
【0026】
操作部10L,10Rは、後方支持部材2aの車幅方向両端側に設けられている。操作部10L,10Rは、棒状の部材によって構成されている。操作部10L,10Rは、その一端側において車体2に揺動可能に支持され、他端側が自由端とされている。操作部10L,10Rは、中途において屈曲しており、車体2側に支持される部分が後方支持部材2aの側面に沿って延びるように形成されている。また、操作部10は、操作者が車体2の後方側において把持して操作しやすいように、後方支持部材2aから車体2の後方側に向けて延び、所定の角度で傾斜するように形成されている。操作部10L,10Rの操作側は、端部がそれぞれ対向するように車幅方向に沿って離間配置されている。また、操作部10L,10Rの支持側は、後方支持部材2aに対して揺動可能に支持されている。そのため、操作部10L,10Rは、それぞれ独立して揺動操作することができる。
【0027】
図3に示すように、操作部10L,10Rの支持側には、操作量取得部20がそれぞれ設けられている。操作量取得部20は、例えば、ロードセルからなる一対の圧力センサ22,22と、圧力センサ22,22で検知した信号を増幅する信号増幅器23と、信号増幅器23でのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器24等を有している。操作量取得部20は、操作部10L,10Rに加わる操作力を、それぞれの圧力センサ22,22により、独立して取得することができる。
【0028】
制御部30には、車輪駆動部40L,40Rと、車輪回転数検知部50と、昇降駆動部60と、状態取得部110に接続された推定部120と、フットレスト70の収納状態を検知する収納検知部71等が接続されている。制御部30は、昇降駆動部60を制御することにより、着席部100を昇降させることができる。昇降駆動部60の制御についての詳細は後述する。また、制御部30は、操作部10L,10Rにおいて取得された操作量の差に基づいて設定値(例えば、回転数)を後述する車輪駆動部40L,40Rに出力する。制御部30は、収納検知部71におけるフットレスト70の収納状態に応じた車椅子1の制御を行うことができる。また、制御部30は、前記の他、車椅子1における各種の制御を行うことができる。なお、制御部30は、単体で構成されるものだけではなく、構成する部材に応じて複数で構成されるものであっても良い。
【0029】
車輪駆動部40は、例えば、インホイールモータと、モータドライバ等で形成されており、車輪3L,3Rのそれぞれに接続されている。車輪駆動部40L,40Rは、車輪3L,3Rをそれぞれ独立して回転させることができる。車輪駆動部40L,40Rは、制御部30から出力される設定値(例えば、回転数)に基づいて、それぞれ独立した駆動制御が行われる。これにより、車椅子1は、車輪駆動部40L,40Rによる車輪3L,3Rの駆動により進行し、全方向車輪4,4(
図1参照)によって、各方向に旋回することが可能である。
【0030】
車輪回転数検知部50は、駆動輪としての車輪3L,3Rに設けられ、車輪3L,3Rのそれぞれの車輪回転数を検知することができる。車輪回転数検知部50には、例えば、角度を検知するエンコーダ等が用いられる。また、車輪回転数検知部50は、例えば、車輪軸に設けたり、車輪駆動部40に設けたりするものなど、車輪3の回転数を検知できる位置であれば、各種の場所に設けることができる。
【0031】
昇降駆動部60は、
図2に示すように着席部100の下方側に設けられている。昇降駆動部60は、着席部100を昇降駆動するモータと、後方支持部材2aの上下方向に沿って設けられたレール(図示せず)と、着席部100に設けられ、前記レールに摺動自在なスライダ61等を有している。また、昇降駆動部60は、制御部30と接続されており、制御部30の指令に応じて制御される。昇降駆動部60は、下端側のポジション1(P1とも称する)と、上端側のポジション4(P4とも称する)との間で着席部100を昇降させることができる。なお、本実施形態では、ポジション1とポジション4との間に、後述するポジション2(P2とも称する)及びポジション3(P3とも称する)が設定されている(
図7参照)。
【0032】
また、昇降駆動部60は、着席部100の昇降に伴い、アームレスト部103を座面部101と一体的に昇降させることができる。従って、被補助者の立ち上がり動作において、座面部101及びアームレスト部103により、被補助者に掛かる負荷を分散させることができるので、被補助者が立ち上がりやすくなる効果を奏する。
【0033】
フットレスト70は、車体2の前端側に設けられた固定軸(図示せず)を中心に回転可能に支持されている。フットレスト70は、収納状態となる跳ね上げ状態と、被補助者が足を載せる状態となる平坦状態との間で回転が可能である。フットレスト70の揺動動作は、被補助者又は介助者によって行うことができる。また、フットレスト70には、収納検知部71となるセンサが設けられており、フットレスト70が収納されたこと(跳ね上げ状態とされたこと)を検知することができる。本実施形態では、フットレスト70が収納されたことを検知した場合に、車椅子1の操作部10による駆動支援を行わないようにしている。また、本実施形態では、収納検知部71でフットレスト70が収納されたことを検知した場合に、被補助者の立ち上がり動作の開始意図があると判断すると共に昇降駆動部60の制御を開始することができる。
【0034】
次に、被補助者が着座する着席部100の詳細について、
図4に基づいて説明する。着席部100は、被補助者が腰掛けする座面部101と、被補助者の背中を支持する背もたれ部102と、被補助者の肘置きとなるアームレスト部103R,103L(アームレスト部103)等を有している。また、座面部101と、背もたれ部102と、アームレスト部103とには、それぞれに対して状態取得部110が複数設けられている。それぞれの状態取得部110は、推定部120に接続されている。
【0035】
状態取得部110は、例えば、圧力センサ等のセンサから構成されている。また、状態取得部110は、前記センサで検知した信号を増幅する信号増幅器111と、信号増幅器111でのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器112等を有している。状態取得部110は、被補助者が着座した際に掛かる荷重(圧力)を検出することができる。なお、以下の説明において、状態取得部110は、配置されている位置に応じて、センサa,b,sと称することがある。また、センサa,b,sは、それぞれ配置されている位置に応じて、アルファベットの記号に数字を付けて称することがある。
【0036】
座面部101には、センサsが複数配置されている。座面部101には、車椅子1の幅方向(図示縦方向)に沿って、それぞれ列をなしたセンサs11~s41、s12~s42、及びs13~s43が設けられている。センサs11~s41、s12~s42、及びs13~s43の各センサ列は、座面部101の前端側から後端側(前後方向又は奥行方向とも称する)に向けて順次整列して配置されている。
【0037】
背もたれ部102には、センサbが複数配置されている。背もたれ部102には、車椅子1の幅方向に沿って、それぞれ列をなしたセンサb11及びb21と、センサb12及びb22とが、背もたれ部102の下端側から上端側に向けて順次整列して配置されている。
【0038】
アームレスト部103Rには、センサa11及びa12が車椅子1の前後方向に沿って配置されている。また、アームレスト部103Lには、センサa21及びa22が車椅子1の前後方向に沿って配置されている。ここで、センサa11及びa21並びにセンサa12及びa22は、車椅子1の幅方向に沿って、それぞれ列を形成している。
【0039】
推定部120は、上述したそれぞれのセンサa,b,sと接続されている。推定部120は、各センサa,b、sで取得した取得値から、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を段階的に推定することができる。また、推定部120は、制御部30と接続されており、推定した遷移状態を制御部30に送信する。なお、推定する遷移状態は、段階的なものでなく連続的なものとしても良い。また、推定部120は、別途の装置としても良いし、制御部30によって行うものとしても良い。
【0040】
次に、状態取得部110の各センサa,b,sでの出力値(取得値)の演算処理、及び被補助者の着座状態の判定に用いられる閾値について、
図5を参照しながら説明する。
【0041】
≪各センサでの出力値の演算処理及び閾値について≫
まず、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定するにあたり、状態取得部110における各センサa,b,sでの出力値が取得される。前記出力値は、被補助者の立ち上がり動作に伴い、車椅子1の進行方向後方側から前方側に向けて変化することが、本発明者等の鋭意検討の結果、判明している。
【0042】
そこで、本発明の補助装置1(車椅子1)においては、座面部101の幅方向に沿って形成されたセンサ前列s11~s41の合計S1、センサ中列s12~s42の合計S2、及びセンサ後列s13~s43の合計S3が求められる。また、背もたれ部102においては、幅方向に沿って形成されたセンサ下列b11及びb21の合計B1と、センサ上列b12及びb22の合計B2とが求められる。また、アームレスト部103R,103Lにおいては、幅方向に沿って形成されたセンサ前列a11及びa21の合計A1と、センサ後列a12及びa22の合計A2が求められる。以下、具体的な演算処理の方法と閾値の設定についての詳細を説明する。
【0043】
座面部101におけるセンサ出力値の合計S1、S2及びS3は、以下の(式1)、(式2)及び(式3)によって、それぞれ求められる。
【0044】
S1=s11+s21+s31+s41・・・(式1)
S2=s12+s22+s32+s42・・・(式2)
S3=s13+s23+s33+s43・・・(式3)
【0045】
合計S1に対しては、着座状態判定閾値S1thrと、高押圧判定閾値S1Hthrとが設定される。合計S2に対しては、着座状態判定閾値S2thrが設定され、合計S3に対しては、着座状態判定閾値S3thrが設定される。
【0046】
また、両アームレスト部103R,103Lにおけるセンサ出力値の合計A1及びA2は、以下の(式4)及び(式5)によって、それぞれ求められる。
【0047】
A1=a21+a11・・・(式4)
A2=a22+a12・・・(式5)
【0048】
合計A1に対しては、着座状態判定閾値A1thrと、高押圧判定閾値A1Hthrとが設定される。また、合計A2に対しては、着座状態判定閾値A2thrが設定される。
【0049】
また、背もたれ部102におけるセンサ出力値の合計B1及びB2は、以下の(式6)及び(式7)によって、それぞれ求められる。
【0050】
B1=b21+b11・・・(式6)
B2=b22+b12・・・(式7)
【0051】
合計B1に対しては、着座状態判定閾値B1thrが設定され、合計B2に対しては、着座状態判定閾値B2thrが設定される。ここで、上述した着座状態判定閾値とは、被補助者が着座していることを判定するための閾値であり、着座時には、各列のセンサ出力値の加算値が十分に前記閾値以上となる。また、高押圧判定閾値とは、被補助者の立ち上がり動作において着座時以上に、より強く各センサに圧力が加わったことを検出するための閾値である。
【0052】
従って、座面部101の前列では、着座状態判定閾値S1thr及び高押圧判定閾値S1Hthrの関係が、着座状態判定閾値S1thr<高押圧判定閾値S1Hthrとなる。また、アームレスト部103の前列では、着座状態判定閾値A1thr及び高押圧判定閾値A1Hthrの関係が、着座状態判定閾値A1thr<高押圧判定閾値A1Hthrとなる。
【0053】
上述したように本発明の補助装置1は、着席部100の幅方向に沿って設けられた複数のセンサs,a,bのそれぞれの取得値を着席部100の幅方向に沿うセンサ列毎に加算して取得できる。そのため、着席部100が被補助者から受ける圧力(荷重)の変化を着席部100の幅方向に沿って強調して取得することができる。これにより、被補助者の立ち上がり動作における微弱な姿勢変化を適切に把握することができる。また、着席部100の前後方向(奥行方向)に沿って変化する被補助者から受ける圧力の変化を複数のセンサ列毎に順次把握することができるので、被補助者の立ち上がり動作における姿勢変化を適切に把握することができる。
【0054】
次に、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態の推定について、
図6~
図9を参照しながら詳細を説明する。
図6~
図8の各図において、上段側に示す(a1)~(f1)は、各着座パターン1~4における各センサs,a,bの状態を示す説明図である。また、
図6~
図8の各図において、下段側に示す(a2)~(f2)は、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態の各段階(MODE=0~5)を示す説明図である。
【0055】
また、
図9は、
図6~
図8の各図における各センサs,a、bの基準となる出力の状態と、着座圧の判定に用いられる閾値とを示す説明図である。図示において、各センサs,a,bの出力状態は、ハッチングの密度で表されており、ハッチングの密度が高い程、センサの出力が高いことを表している。また、破線で囲まれたセンサの出力値は、判定に関与させないもの(無関与)としている。これは、遷移状態の推定に影響を及ぼさないためである。また、各センサs,a,bの出力値は、上述したように各列毎に加算して出力される。また、着座圧の判定は、各列毎のセンサ出力値の合計S1~S3、A1~A2、B1~B2と、閾値との比較により行われる。
【0056】
図6(a2)は、被補助者が車椅子1の着席部100に着席している遷移状態を表しており、当該遷移状態は、MODE=0(MODE0とも称する)として設定される。MODE0においては、座面部101における各センサsが、
図6(a1)に示すような着座パターンの着座圧(
図9参照)を出力する。MODE0における着座圧パターンは、着座パターン1として設定される。着座パターン1では、座面部101における全てのセンサ出力値が着座圧状態(
図9参照)として出力される。なお、着座パターン1~4における着席部100の着座状態の判定は、着座状態判定閾値S1thr~S3thr,A1thr,A2thr,B1thr,B2thr、及び高押圧判定閾値S1Hthr,A1Hthrに基づいて行われる。具体的な判定は、後述する動作フローにおいて説明する。
【0057】
図6(b2)における図示左側の遷移状態は、車椅子1のフットレスト70が収納された状態を表しており、図示右側の遷移状態は、被補助者の立ち上がり開始の遷移状態(背もたれ部102から被補助者の背中が離れた状態)を表している。これらの遷移状態は、共にMODE=1(MODE1とも称する)として設定される。MODE1においては、座面部101における各センサsが
図6(b1)に示すような着座パターンの着座圧(
図9参照)を出力する。MODE1で出力された着座パターンは、着座パターン1として設定される。着座圧状態の判定は、上述と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
図7(c2)は、被補助者が立ち上がり動作を開始し、アームレスト部103の前列におけるセンサa11及びa21に圧力が加わった遷移状態を表している。また、着席部100がポジション1(P1)からポジション2(P2)に昇降された遷移状態を表している。当該遷移状態は、MODE=2(MODE2とも称する)として設定される。MODE2においては、座面部101における各センサsが、
図7(c1)に示すような着座パターンの着座圧(
図9参照)を出力する。また、アームレスト部103におけるセンサa11及びa22が、
図7(c1)に示すような着座パターンの着座圧を出力する。MODE2で出力された着座パターンは、着座パターン2として設定される。着座パターン2では、座面部101における全てのセンサ出力値が着座圧状態(
図9参照)として出力されると共にアームレスト部103における前列のセンサa11及びa21の出力値が着座圧状態として出力される。
【0059】
図7(d2)は、被補助者が立ち上がり動作の途上にあり、アームレスト部103の前列におけるセンサa11及びa21に強く圧力が加わった遷移状態を表している。また、着席部100がポジション2(P2)からポジション3(P3)に昇降された遷移状態を表している。当該遷移状態は、MODE=3(MODE3とも称する)として設定される。MODE3においては、座面部101における各センサsが、
図7(d1)に示すような着座パターンの着座圧を出力する。また、アームレスト部103におけるセンサa11及びa22が、
図7(d1)に示すような着座パターンの着座圧を出力する。MODE3で出力された着座パターンは、着座パターン3として設定される。着座パターン3では、座面部101及びアームレスト部103における前列のセンサ出力値が高押圧状態(
図9参照)として出力され、座面部101の前後方向中央列におけるセンサ出力値が着座圧状態として出力される。
【0060】
図8(e2)は、被補助者が立ち上がり動作の終盤にあり、座面部101の前端側に腰掛けると共にアームレスト部103の前端側に強く手を掛けた遷移状態を表している。すなわち、座面部101及びアームレスト部103の前端側に強く圧力が加わった遷移状態を表している。このとき、座面部101におけるセンサ列s11~s41、及びアームレスト部103におけるセンサa11及びa21に強く圧力が加わっている。また、着席部100がポジション3からポジション4に昇降された遷移状態を表している。当該遷移状態は、MODE=4(MODE4とも称する)として設定される。MODE4においては、座面部101における各センサsが、
図8(e1)に示すような着座パターンの着座圧を出力する。また、アームレスト部103におけるセンサa11及びa22が、
図8(e1)に示すような着座パターンの着座圧を出力する。MODE4で出力された着座パターンは、着座パターン4として設定される。着座パターン4では、座面部101における前端側のセンサ列s11~s41、及びアームレスト部103における前列のセンサa11及びa21の出力値が高押圧状態(
図9参照)として出力される。
【0061】
図8(f2)は、被補助者が立ち上がり動作の完了直前にあり、アームレスト部103の前端側に軽く手を掛けた遷移状態を表している。すなわち、アームレスト部103の前端側に軽く圧力が加わった遷移状態を表している。このとき、アームレスト部103におけるセンサa11及びa21に軽く圧力が加わっている。また、着席部100がポジション4に位置した遷移状態を表している。当該遷移状態は、MODE=5(MODE5とも称する)として設定される。MODE5においては、アームレスト部103におけるセンサa11及びa22が、
図8(f1)に示すような着座パターンの着座圧を出力する。MODE5で出力された着座パターンは、着座パターン5として設定される。着座パターン5では、アームレスト部103における前列のセンサa11及びa21の出力値が着座圧状態(
図9参照)として出力される。
【0062】
上述したように、本発明の補助装置1は、状態取得部110で取得した被補助者の着座状態に基づいて、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を推定することができる。そのため、被補助者の立ち上がり動作における姿勢変化を遷移状態に応じて精度良く推定することができる。また、本発明の補助装置1は、推定部120により推定した遷移状態に基づいて、着席部100の昇降動作を制御することができる。これにより、被補助者の立ち上がり意図を精度良く反映させた適切な立ち上がり支援を行うことができる。
【0063】
≪MODE3~MODE4への遷移の例示≫
次に、MODEの移行の具体例について、MODE3~MODE4への移行を例に、
図10を参照しながら説明する。図示上段側3段は、MODE3~MODE4へ移行するパターンが3パターンあることを示している。また、図示中段は、時間経過に伴うカウンター値の変化を示している。また、図示下段は、時間経過に伴う座面部101(シート101とも称する)のポジションの変化を示している。
【0064】
≪シート上昇中にMODE遷移する場合≫
まず、シート101が上昇中(P2~P3)にMODE3~MODE4に移行する場合について説明する。MODE3がスタートすると、時間経過と共にシート101がP2からP3に向けて比例的に上昇する。また、カウンター値が0から3に向けて増加する。ここで、カウンター値3は、MODE4において所定の時間を経過した際のタイムオーバー値となる。また、シート101が、P2からP3に上昇していくに伴い、着座パターン3が着座パターン4に移行する。着座パターン3から着座パターン4への移行に伴い、MODE3がMODE4に切り替えられる。前記MODEの切り替えは、推定部120により行われる。MODEの切り替えは、制御部30で行っても良い。
【0065】
≪シート上昇完了後にMODE遷移する場合≫
次に、シート101がP3に上昇した後にMODE3~MODE4に移行する場合について説明する。MODE3がスタートすると、時間経過と共にシート101がP2からP3に向けて比例的に上昇する。また、カウンター値が0から3に向けて増加する。また、シート101のP3への上昇が完了した後、着座パターン3が着座パターン4へ移行するのに伴って、MODE3がMODE4に切り替えられる。前記MODEの切り替えは、推定部120により行われる。MODEの切り替えは、制御部30で行っても良い。
【0066】
≪タイムアップ後にMODE遷移する場合≫
次に、シート101がP3に上昇した後、所定の時間を経過(タイムアップ)した場合のMODEの移行について説明する。MODE3がスタートすると、時間経過と共にシート101がP2からP3に向けて比例的に上昇する。シート101がP3に到達した後、所定時間が経過すると、カウンター値3がセット(設定)される。カウンター値3にセットされるとMODE3が初期状態(MODE0)に戻される。すなわち、シート101がP3からP1に下降し、カウンター値が0に戻される。なお、シート101を下降させずに、シート101が停止するようにしても良い。前記MODEの切り替えは、推定部120により行われる。MODEの切り替えは、制御部30で行っても良い。このように、シート101が所定のポジションに達して所定の時間が経過した場合に、シート101を下降又は停止させるようにすることにより、被補助者が姿勢を崩すことを抑制することができる。
【0067】
以上が、MODE3~MODE4への切り替えの例であるが、当該例示は、他のMODEの切り替えにおいても、同様の手法により実行される。次に、本発明の補助装置1(車椅子1)の動作について、
図11~
図16のフロー図を参照しながら詳細を説明する。
【0068】
≪動作フローについて≫
図11に示すように、補助装置1の制御が開始されると、まずステップS100において、着座パターンの判別(サブルーチンS100)が行われる。以下、まず、サブルーチンS100での処理について、
図14を参照しながら説明する。
【0069】
≪着座パターンの判別(サブルーチンS100)≫
着座パターンの判別が開始されると、状態取得部110におけるセンサ値の取得が行われる(ステップS101)。続いて、着座パターンのフラグが初期化(リセット)される(ステップS102)。ここでは、例えば、着座パターンが0とされる。
【0070】
続いて、座面部101の前列の各センサs11~s41のセンサ出力が(式1)に基づいて加算され、合計S1が求められる(ステップS103)。また、座面部101の中列の各センサs12~s42のセンサ出力が(式2)に基づいて加算され、合計S2が求められる(ステップS104)。また、座面部101の後列の各センサs13~s43のセンサ出力が(式3)に基づいて加算され、合計S3が求められる(ステップS105)。
【0071】
また、アームレスト部103の前列の各センサa11及びa21のセンサ出力が(式4)に基づいて加算され、合計A1が求められる(ステップS106)。また、アームレスト部103の後列の各センサa12及びa22のセンサ出力が(式5)に基づいて加算され、合計A2が求められる(ステップS107)。
【0072】
また、背もたれ部102の下列の各センサb11及びb21のセンサ出力が(式6)に基づいて加算され、合計B1が求められる(ステップS108)。また、背もたれ部102の上列の各センサb12及びb22のセンサ出力が(式7)に基づいて加算され、合計B2が求められる(ステップS109)。ステップS109の処理が実行されると、
図15に示すステップS120に処理が進められる。
【0073】
ステップS120においては、ステップS103~S109で求めた各センサ列の出力に基づいて、着座パターンの具体的な判別が行われる。すなわち、ステップS120においては、まず、座面部101の前列におけるセンサ出力の状態が判定される。また、ステップS120では、合計S1と、各閾値との比較が行われる。具体的には、S1thr<S1<S1Hthr、S1Hthr<S1、S1<S1thrの3つの条件に従って場合分けが行われる。S1thr<S1<S1Hthrの条件においては、着座パターン1又は2が設定される。また、S1thr<S1の条件においては、着座パターン3又は4が設定される。また、S1<S1thrの条件においては、着座パターン5が設定される。以下、上記の3つの条件について、場合分けしながら説明する。
【0074】
≪S1thr<S1<S1Hthr(着座パターン1又は2の設定)≫
ステップS120において、S1thr<S1<S1Hthrであると判定された場合は、S2thr<S2及びS3thr<S3であるか否かの判定が行われる(ステップS130)。すなわち、S2及びS3が着座状態判定閾値(
図9参照)を超えているか否かの判定が行われる。ここで、S2及びS3が着座状態判定閾値を超えている場合は、ステップS131として、着座パターンフラグ1がセット(設定とも称する)される(
図6(a1)参照)。ステップS130において、S2及びS3が着座状態判定閾値を超えていない場合は、
図11に示すメインルーチンに戻る。
【0075】
続いて、アームレスト部103におけるセンサ出力についてA1thr<A1<A1Hthr及びA2<A2thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS132)。ここで、A1及びA2が前記条件を満たさない場合は、
図11に示すメインルーチンに戻る。A1及びA2が前記条件を満たす場合は、背もたれ部102におけるセンサ出力についてB1<B1thr及びB2<B2thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS133)。ここで、B1及びB2が、前記条件を満たす場合は、ステップS134として、着座パターンフラグ2がセットされる(
図7(c1)参照)と共に
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。ステップS133において、前記条件を満たさない場合も、
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。
【0076】
≪S1Hthr<S1(着座パターン3又は4の設定)≫
ステップS120において、S1Hthr<S1である(S1が高押圧判定閾値を超えている)と判定された場合には、アームレスト部103のセンサ出力がA1Hthr<A1及びA2<A2thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS140)。ここで、A1及びA2が、前記条件を満たす場合は、背もたれ部102におけるセンサ出力について、B1thr<B1及びB2<B2thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS141)。ステップS140において、前記条件を満たさない場合は、
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。
【0077】
ステップS141において、B1及びB2が、前記条件を満たす場合は、座面部101の中列のセンサ出力がS2thr<S2の条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS142)。すなわち、ステップS141においては、合計S2が、着座状態判定閾値を超えているか否かの判定が行われる。ステップS142において、前記条件を満たす場合は、座面部101の後列のセンサ出力が、S3<S3thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS143)。すなわち、合計S3が、着座状態判定閾値を超えていないか否かの判定が行われる。
【0078】
ステップS143において、前記条件を満たす場合は、ステップS144として着座パターンフラグ3がセットされる(
図7(d1)参照)と共に
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。ステップS143において、前記条件を満たさない場合は、
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。
【0079】
ステップS142において、前記条件を満たさない場合は、座面部101の後列のセンサ出力が、S3<S3thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS145)。すなわち、合計S3が、着座状態判定閾値を超えていないか否かの判定が行われる。
【0080】
ステップS145において、前記条件を満たす場合は、ステップS146として着座パターンフラグ4がセットされる(
図8(e1)参照)と共に
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。ステップS145において、前記条件を満たさない場合は、
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。
【0081】
≪S1<S1thr(着座パターン5の設定)≫
ステップS120において、S1<S1thrであると判定された場合は、S2<S2thr及びS3<S3thrであるか否かの判定が行われる(ステップS150)。すなわち、S2及びS3が着座状態判定閾値を超えていないか否かの判定が行われる。ここで、S2及びS3が着座状態判定閾値を超えていない場合は、アームレスト部103におけるセンサ出力についてA1thr<A1<A1Hthr及びA2<A2thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS151)。ここで、A1及びA2が前記条件を満たさない場合は、
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。
【0082】
ステップS151において、A1及びA2が前記条件を満たす場合は、背もたれ部102におけるセンサ出力についてB1<B1thr及びB2<B2thrの条件を満たすか否かの判定が行われる(ステップS152)。ここで、B1及びB2が、前記条件を満たす場合は、ステップS153として、着座パターンフラグ5がセットされる(
図8(f1)参照)と共に
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。ステップS152において、前記条件を満たさない場合は、
図11に示すメインルーチン(ステップS100)に戻る。
【0083】
以上が、サブルーチンとしてのステップS100における着座パターンの判別の詳細であり、次にメインルーチンにおけるステップS100に続くフローについて、
図11を参照しながら説明する。
【0084】
ステップS100におけるサブルーチンでの処理が完了すると、着座パターン1であるか否かが判定される(ステップS1)。ステップS1において、着座パターン1ではない場合は、ステップS100での着座パターンの判別が実行される。ステップS1において、着座パターン1であると判定された場合は、MODE0(
図6(a2)参照)がセットされる(ステップS2)。
【0085】
続いて、MODEの判定が行われる(ステップS3)。ステップS3においては、MODEが0~4の何れであるか否かの判定と、カウンター5であるか否かの判定が行われる。以下、上述の各条件の判定について、場合分けしながら詳細を説明する。
【0086】
≪判定結果がMODE0の場合≫
ステップS3において、MODE0(
図6(a2)参照)である場合は、フットレスト70(
図1参照)が収納されているか否かの判断が、収納検知部71(
図1参照)により行われる(ステップS10)。ステップS10において、フットレスト70が収納されていると判断された場合は、MODE1(
図6(b2)参照)がセットされる(ステップS11)。
【0087】
続いて、走行アシスト禁止フラグがセットされる(ステップS12)。ここで、走行アシスト禁止フラグとは、車椅子1における操作部10の操作支援(駆動補助)を行わないようにするための条件変数である。走行アシスト禁止フラグのセットにより、被補助者の立ち上がり動作の開始意図があると判断でき、車椅子1の走行に対する操作支援が停止される。従って、立ち上がり支援が行われている際に車椅子1の走行支援が行われることを抑制することができる。これにより、被補助者が意図しない車椅子1の走行支援がおこなわれることを抑制でき、被補助者が姿勢を崩すことを抑制できる。
【0088】
ステップS12が実行されると、再びステップS3に戻ってMODEの判定が行われる。このとき、ステップS3におけるMODE判定では、既にMODE1がセットされているので、結果的に以降の動作において、昇降駆動部60の制御が開始される。一方、ステップS10において、フットレスト70が収納されていないと検知した場合は、再びステップS3に戻ってMODEの判定が行われる。すなわち、フットレスト70が収納されていない状態では、車椅子1の走行に対する操作支援が継続される。
【0089】
≪判定結果がMODE1の場合≫
ステップS3において、MODE1(
図6(b2)参照)である場合は、サブルーチンとしてのステップS100(着座パターン判別)に処理が進められる。ステップS100の処理は、上述のとおりであるので、説明を省略する。
【0090】
ステップS100における処理が完了すると、着座パターン2(
図7(c1)参照)であるか否かの判定が行われる(ステップS20)。ステップS20において、着座パターン2であると判定された場合は、MODE2(
図7(c2)参照)がセットされる(ステップS21)。
【0091】
続いて、シート101の上昇が開始される(ステップS22)。また、カウンター2(
図10参照)が開始される(ステップS23)。ステップS23が実行されると、再びステップS3に戻って、MODEの判定が行われる。このとき、ステップS3におけるMODE判定では、既にMODE2がセットされているので、結果的に以降の動作において、MODE2の処理が開始される。
【0092】
≪判定結果がMODE2の場合≫
ステップS3において、MODE2(
図7(c2)参照)である場合は、
図12に示すように、シート101の位置がポジション2(P2)に到達したか否かの判定が行われる(ステップS30)。シート101の位置がP2に到達した場合は、シート101を停止させる(ステップS31)。ステップS31が実行されると、サブルーチンとしてのステップS100(着座パターン判別)に処理が進められる。ステップS100の処理は、上述のとおりであるので説明を省略する。一方、ステップS30において、シート101の位置がP2に達していない場合も、サブルーチンとしてのステップS100に処理が進められる。
【0093】
ステップS100における処理が完了すると、着座パターン3(
図7(d1)参照)であるか否かの判定が行われる(ステップS32)。ステップS32において、着座パターン3であると判定された場合は、MODE3(
図7(d2)参照)がセットされる(ステップS33)。
【0094】
続いて、シート101の上昇が開始される(ステップS34)。また、カウンター3(
図10参照)が開始される(ステップS35)。ステップS35が実行されると、サブルーチンとしてカウンター2であるか否かのチェックが行われる(ステップS200)。サブルーチンとしてのステップS200における処理は後述する。一方、ステップS32において、着座パターン3ではないと判定された場合も、サブルーチンとしてのステップS200の処理が行われる。ステップS200の処理が完了すると、再びステップS3(
図11参照)に戻ってMODEの判定が行われる。
【0095】
≪判定結果がMODE3の場合≫
ステップS3において、MODE3(
図7(d2)参照)である場合は、
図12に示すように、シート101の位置がポジション3(P3)に到達したか否かの判定が行われる(ステップS40)。シート101の位置がP3に到達した場合は、シート101を停止させる(ステップS41)。ステップS41が実行されると、サブルーチンとしてのステップS100(着座パターン判別)に処理が進められる。ステップS100の処理は、上述のとおりであるので説明を省略する。一方、ステップS40において、シート101の位置がP3に達していない場合も、サブルーチンとしてのステップS100に処理が進められる。
【0096】
ステップS100における処理が完了すると、着座パターン4(
図8(e1)参照)であるか否かの判定が行われる(ステップS42)。ステップS42において、着座パターン4であると判定された場合は、MODE4(
図8(e2)参照)がセットされる(ステップS43)。
【0097】
続いて、シート101の上昇が開始される(ステップS44)。また、カウンター4が開始される(ステップS45)。ステップS45が実行されると、サブルーチンとしてカウンター3(
図10参照)であるか否かのチェックが行われる(ステップS200)。サブルーチンとしてのステップS200における処理は後述する。一方、ステップS42において、着座パターン4ではないと判定された場合も、サブルーチンとしてのステップS200の処理が行われる。ステップS200の処理が完了すると、再びステップS3(
図11参照)に戻ってMODEの判定が行われる。
【0098】
≪判定結果がMODE4の場合≫
ステップS3において、MODE4(
図8(e2)参照)である場合は、
図13に示すように、シート101の位置がポジション4(P4)に到達したか否かの判定が行われる(ステップS50)。シート101の位置がP4に到達した場合は、シート101を停止させる(ステップS51)。ステップS51が実行されると、サブルーチンとしてのステップS100(着座パターン判別)に処理が進められる。ステップS100の処理は、上述のとおりであるので、説明を省略する。一方、ステップS50において、シート101の位置がP4に達していない場合も、サブルーチンとしてのステップS100に処理が進められる。
【0099】
ステップS100における処理が完了すると、着座パターン5(
図8(f1)参照)であるか否かの判定が行われる(ステップS52)。ステップS52において、着座パターン5あると判定された場合は、MODE5(
図8(f2)参照)がセットされる(ステップS53)。
【0100】
続いて、シート101の上昇が開始される(ステップS54)。また、カウンター5が開始される(ステップS55)。ステップS55が実行されると、サブルーチンとしてカウンター4であるか否かのチェックが行われる(ステップS200)。サブルーチンとしてのステップS200における処理は後述する。一方、ステップS52において、着座パターン5ではないと判定された場合も、サブルーチンとしてのステップS200の処理が行われる。ステップS200の処理が完了すると、再びステップS3(
図11参照)に戻ってMODEの判定が行われる。
【0101】
≪判定結果がMODE5の場合≫
ステップS3において、MODE5(
図8(f2)参照)である場合は、
図13に示すように、サブルーチンとしてカウンター5であるか否かのチェックが行われる(ステップS200)。サブルーチンとしてのステップS200における処理は後述する。ステップS200の処理が完了すると、再びステップS3(
図11参照)に戻ってMODEの判定が行われる。
【0102】
以上が、MODE0~5における処理の内容であり、次にMODE0~5におけるカウンターチェックに係るステップS200(サブルーチン)のフローについて、
図16を参照しながら以下に説明する。
【0103】
≪ステップS200(サブルーチン)の処理≫
ステップS200が開始されると、カウンターがタイムオーバー値に到達したか否かが判定される(ステップS201)。カウンターがタイムオーバー値に到達していない場合は、カウントアップが行われる(ステップS202)。ステップS202が実行されると、各MODEにおけるメインルーチンのステップS200に戻って、ステップS200に続く処理が行われる。
【0104】
ステップS201において、カウンターがタイムオーバー値に到達している場合は、例えば「シートが下がります。」といった警告音が発報される(ステップS203)。すなわち、被補助者が、立ち上がり動作を一定時間停止している場合に警告音が発報される。これにより、被補助者の意図しない立ち上がり支援が行われることを抑制することができる。
【0105】
続いて、シート101の下降が開始される(ステップS204)。ステップS204が実行されると、シート101の位置がポジション1(P1)に到達したか否かが判断される(ステップS205)。ステップS205において、シート101の位置がP1に到達している場合は、シート101を停止させる(ステップS206)。ステップS206が実行されると、再び
図11に示す開始に戻って、処理が繰り返し行われる。一方、ステップS205において、シート101の位置がP1に到達していない場合は、ステップS205が繰り返し実行される。すなわち、シート101の位置がP1に達するまで、シート101の下降が行われる。
【0106】
以上が、本発明の補助装置1の実施形態であるが、本発明の補助装置1は、上述の実施形態に限定されるものではなく、各種の変形を行うことができる。
【0107】
本実施形態では、補助装置1が車椅子である場合を例示したが、補助装置1は、車椅子に搭載されるものだけではなく、椅子やベッドなど各種のものに利用することができる。また、補助装置1は、車椅子、電動車両、自動走行車両などの各種の車両に利用しても良い。
【0108】
本実施形態では、車椅子1が、フットレスト70と、フットレスト70の収納を検知する収納検知部71と、を有するものとしたが、車椅子1がフットレスト70や収納検知部71を有しないものとしても良い。また、本実施形態では、収納検知部71が、フットレスト70の収納を検知した場合に、制御部30が、被補助者の立ち上がり動作の開始意図があると判断すると共に昇降駆動部60の制御を開始するようにしているが、本発明は、これに限定されるものではなく、フットレスト70の収納検知以外の各種の機構や装置により、前記開始意図を判断することが可能である。例えば、着席部100に設けられたスイッチを操作することにより、被補助者の立ち上がり動作の開始意図が判断されるようにしても良い。
【0109】
着席部100は、被補助者の体形等に応じて、各種の形状や大きさのものとすることができる。また、本実施形態では、着席部100が、座面部101と、背もたれ部102と、アームレスト部103とを有しているが、これらは、被補助者の体形等に応じて、一体的に構成されていても良い。
【0110】
状態取得部110は、上述したセンサに限定されるものではなく、被補助者の姿勢変化を検知できるものであれば各種のものを用いることができる。また、本実施形態では、状態取得部110が、座面部101と、背もたれ部102と、アームレスト部103とのそれぞれに対して複数配置されているが、各部に対して状態取得部110が単数配置されるものであっても良い。また、状態取得部110におけるセンサの配置は、被補助者の姿勢変化を検知できるものであれば各種の位置に配置することができる。例えば、センサの配置が、列をなしていなくても良い。
【0111】
本実施形態では、推定部120により、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態をMODE0~5に分けて段階的に推定するようにしているが、MODEの段数は前記のものに限定されるものではない。例えば、MODEが6以上の段数を備えるものやMODEが5以下の段数を備えるものでも良い。また、本実施形態では、推定部120により、被補助者の立ち上がり動作における遷移状態を段階的に推定するようにしているが、前記遷移状態が段階的ではなく、連続的に推定されるものであっても良い。かかる場合は、制御部30が、連続的な遷移状態に基づき、昇降駆動部60を連続的に制御して、着席部100を昇降させるようにすれば良い。また、本実施形態では、複数の状態取得部110のうち、幅方向に沿って設けられた状態取得部110のそれぞれの取得値を演算処理することにより、遷移状態を推定するようにしているが、演算処理の手法は、上述したものに限定されず、各種の手法で行うことができる。
【0112】
本実施形態における昇降駆動部60は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の昇降機構を採用することができる。また、本実施形態では、前記遷移状態の段階毎に設定された所定の時間を経過した場合において、制御部30が、昇降駆動部60を制御して着席部100の昇降を停止又は下降させるようにしているが、着席部100の昇降を停止又は下降させないものとしても良い。以上が、本発明の補助装置1の実施形態と変形例である。
【0113】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の補助装置は、被補助者の立ち上がりの支援が必要な椅子等の各種のものや装置に利用することができる。また、本発明の補助装置は、車椅子等の各種の車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 :補助装置(車椅子)
2 :車体
2a:後方支持部材
3 :車輪(駆動輪)
3L:車輪(駆動輪)
3R:車輪(駆動輪)
4 :全方向車輪(従動輪)
10 :操作部
10L:操作部
10R:操作部
20 :操作量取得部
30 :制御部
40 :車輪駆動部
40L:車輪駆動部
40R:車輪駆動部
50 :車輪回転数検知部
60 :昇降駆動部
70 :フットレスト
71 :収納検知部
100 :着席部
101 :座面部(シート)
102 :背もたれ部
103 :アームレスト部
103L:アームレスト部
103R:アームレスト部
110 :状態取得部(センサ)
120 :推定部